(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20221221BHJP
【FI】
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2018108863
(22)【出願日】2018-06-06
【審査請求日】2021-04-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 祐介
(72)【発明者】
【氏名】田浦 善弘
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-164046(JP,A)
【文献】特開2011-186541(JP,A)
【文献】特開2009-104560(JP,A)
【文献】特開2001-249974(JP,A)
【文献】特開2005-050111(JP,A)
【文献】特開2011-048822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H10/00-80/00
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間における被保険者である対象者の柔道整復施術を行う施設を利用した日数を示す第1情報と、前記所定期間における前記対象者の前記施設での療養費を示す第2情報と、前記対象者の住所と前記施設との間の距離又は前記対象者の勤務地と前記施設との間の距離を示す第3情報と、を取得する取得部と、
前記柔道整復施術を適切に受けた第1被保険者及び前記柔道整復施術を適切に受けていない第2被保険者の夫々についての、前記第1情報、前記
第2情報、及び前記第3情報
を含む情報である中間データ
に対する回帰分析を行い、前記中間データにおける各情報に係るデータのジニ係数の減少量を算出し、算出したジニ係数の減少量に基づいて、前記中間データのうち前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報を特定し、特定した前記判別を特徴づける情報と、前記中間データとに基づいて教師データを生成し、
前記生成した教師データに基づいて機械学習により得られる学習モデルと、前記対象者の
中間データにおける前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定する判定部と、
を含むことを特徴とする判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の判定装置であって、
前記取得部は、前記対象者の年齢に関する第4情報を更に取得し、
前記判定部は、前記柔道整復施術を適切に受けた第1被保険者及び前記柔道整復施術を適切に受けていない第2被保険者の夫々についての、前記第1情報、前記
第2情報、前記第3情報、及び前記第4情報
を含む情報である中間データ
に対する回帰分析を行い、前記中間データにおける各情報に係るデータのジニ係数の減少量を算出し、算出したジニ係数の減少量に基づいて、前記中間データのうち前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報を特定し、特定した前記判別を特徴づける情報と、前記中間データとに基づいて教師データを生成し、
前記生成した教師データに基づいて機械学習により得られる学習モデルと、前記対象者の中間データにおける前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、
を特徴とする判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の判定装置であって、
前記取得部は、前記対象者の前記施設での施術期間に関する第5情報を更に取得し、
前記判定部は、前記柔道整復施術を適切に受けた第1被保険者及び前記柔道整復施術を適切に受けていない第2被保険者の夫々についての、前記第1情報、前記
第2情報、前記第3情報、前記第4情報、及び前記第5情報
を含む情報である中間データ
に対する回帰分析を行い、前記中間データにおける各情報に係るデータのジニ係数の減少量を算出し、算出したジニ係数の減少量に基づいて、前記中間データのうち前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報を特定し、特定した前記判別を特徴づける情報と、前記中間データとに基づいて教師データを生成し、
前記生成した教師データに基づいて機械学習により得られる学習モデルと、前記対象者の中間データにおける前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、
を特徴とする判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の判定装置であって、
前記取得部は、前記対象者の健康保険の加入期間に関する第6情報を更に取得し、
前記判定部は、前記柔道整復施術を適切に受けた第1被保険者及び前記柔道整復施術を適切に受けていない第2被保険者の夫々についての、前記第1情報、前記
第2情報、前記第3情報、前記第4情報、前記第5情報、及び前記第6情報
を含む情報である中間データ
に対する回帰分析を行い、前記中間データにおける各情報に係るデータのジニ係数の減少量を算出し、算出したジニ係数の減少量に基づいて、前記中間データのうち前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報を特定し、特定した前記判別を特徴づける情報と、前記中間データとに基づいて教師データを生成し、
前記生成した教師データに基づいて機械学習により得られる学習モデルと、前記対象者の中間データにおける前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、
を特徴とする判定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の判定装置であって、
前記取得部は、前記対象者が属する世帯の被保険者数を示す第7情報を更に取得し、
前記判定部は、前記柔道整復施術を適切に受けた第1被保険者及び前記柔道整復施術を適切に受けていない第2被保険者の夫々についての、前記第1情報、前記
第2情報、前記第3情報、前記第4情報、前記第5情報、前記第6情報、及び前記第7情報
を含む情報である中間データ
に対する回帰分析を行い、前記中間データにおける各情報に係るデータのジニ係数の減少量を算出し、算出したジニ係数の減少量に基づいて、前記中間データのうち前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報を特定し、特定した前記判別を特徴づける情報と、前記中間データとに基づいて教師データを生成し、
前記生成した教師データに基づいて機械学習により得られる学習モデルと、前記対象者の中間データにおける前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、
を特徴とする判定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の判定装置であって、
前記取得部は、前記対象者の属性を示す第8情報を更に取得し、
前記判定部は、前記柔道整復施術を適切に受けた第1被保険者及び前記柔道整復施術を適切に受けていない第2被保険者の夫々についての、前記第1情報、前記
第2情報、前記第3情報、前記第4情報、前記第5情報、前記第6情報、前記第7情報、及び前記第8情報
を含む情報である中間データ
に対する回帰分析を行い、前記中間データにおける各情報に係るデータのジニ係数の減少量を算出し、算出したジニ係数の減少量に基づいて、前記中間データのうち前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報を特定し、特定した前記判別を特徴づける情報と、前記中間データとに基づいて教師データを生成し、
前記生成した教師データに基づいて機械学習により得られる学習モデルと、前記対象者の中間データにおける前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、
を特徴とする判定装置。
【請求項7】
演算装置、メモリ、及び記憶装置を備える判定システムが、
所定期間における被保険者である対象者の柔道整復施術を行う施設を利用した日数を示す第1情報と、前記所定期間における前記対象者の前記施設での療養費を示す第2情報と、前記対象者の住所と前記施設との間の距離又は前記対象者の勤務地と前記施設との間の距離を示す第3情報と、を取得するステップと、
前記柔道整復施術を適切に受けた第1被保険者及び前記柔道整復施術を適切に受けていない第2被保険者の夫々についての、前記第1情報、前記
第2情報、及び前記第3情報
を含む情報である中間データ
に対する回帰分析を行い、前記中間データにおける各情報に係るデータのジニ係数の減少量を算出し、算出したジニ係数の減少量に基づいて、前記中間データのうち前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報を特定し、特定した前記判別を特徴づける情報と、前記中間データとに基づいて教師データを生成し、
前記生成した教師データに基づいて機械学習により得られる学習モデルと、前記対象者の
中間データにおける前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定するステップと、
を含むプログラムを実行することを特徴とする判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被保険者のデータを分析する装置、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康保険に加入している被保険者は、一般的な医療機関だけでなく、柔道整復師の施術所で健康保険を使用することがある。また、特許文献1には、柔道整復師が行った施術の療養費の支給申請書を作成するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、柔道整復師等が行う施術には、医療保険の対象となるものと、ならないものとがある。そして、被保険者によっては、医療保険の対象とならない、例えば単なる肩こりに対する施術を、医療保険の対象である施術として、繰り返し施術を受ける者もいる。しかしながら、特許文献1のシステムでは、被保険者が医療保険の対象とならない症状に不適切な施術を受けた者であるかを判定することはできず、保険者の負担が増加してしまうことがある。
【0005】
そこで本発明の目的は、柔道整復師の施術所に通う被保険者のうち、医療保険の対象とならない症状に医療保険を用いる不適切な施術を受けた者を判定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の判定装置は、所定期間における被保険者である対象者の柔道整復施術を行う施設を利用した日数を示す第1情報と、前記所定期間における前記対象者の前記施設での療養費を示す第2情報と、前記対象者の住所と前記施設との間の距離又は前記対象者の勤務地と前記施設との間の距離を示す第3情報と、を取得する取得部と、前記柔道整復施術を適切に受けた第1被保険者及び前記柔道整復施術を適切に受けていない第2被保険者の夫々についての、前記第1情報、前記第2情報、及び前記第3情報を含む情報である中間データに対する回帰分析を行い、前記中間データにおける各情報に係るデータのジニ係数の減少量を算出し、算出したジニ係数の減少量に基づいて、前記中間データのうち前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報を特定し、特定した前記判別を特徴づける情報と、前記中間データとに基づいて教師データを生成し、前記生成した教師データに基づいて機械学習により得られる学習モデルと、前記対象者の中間データにおける前記第1被保険者と前記第2被保険者との判別を特徴づける情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定する判定部と、含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、柔道整復師の施術所に通う被保険者のうち、医療保険の対象とならない症状に医療保険を用いる不適切な施術を受けた者を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】記憶装置52に記憶される情報の一例を示す図である。
【
図4】演算装置50aに実現される機能ブロックを示す図である。
【
図5】学習モデルを生成する処理を示すフローチャートである。
【
図6】中間データ73の特徴量の重要度を説明するための図である。
【
図7】教師データ74として選択されるデータを説明するための図である。
【
図8】演算装置50bに実現される機能ブロックを示す図である。
【
図9】対象者が不適切な施術を受けた者かを判定するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
---判定システム10---
図1は、判定システム10の構成を示す図である。判定システム10は、医療保険者の組合員のうち、柔道整復師の施術所(以下、「柔整施術所」とする)において医療保険の対象とならない症状に医療保険を用いる不適切な施術を受けた者を判定するためのシステムである。なお、「柔整施術所」は、例えば、接骨院、整骨院、ほねつぎとも言う。
【0010】
ここで「適切な施術」とは、医療保険の対象となる症状に対し施され、診療報酬(施術に係る療養費)が正しく請求された際の施術である。また、「不適正な施術(適切でない施術)」とは、医療保険の対象とならない症状を、医療保険の対象である症状として施され、診療報酬が不正に請求された際(医療保険が不正に用いられた際)の施術である。このため、「適切な施術」には、例えば、脱臼や捻挫に対する施術が含まれる。一方、「不適正な施術(適切でない施術)」には、例えば、医療保険が適用されない単なる「肩こり」を、医療保険が適用される「打撲」等であるとして施された施術が含まれる。
【0011】
また、「適切な施術を受けた者(施術を適切に受けた者)」とは、診療報酬が正しく請求された施術を受けた者であり、「不適切な施術を受けた者(施術を適切に受けていない者)」とは、診療報酬が正しく請求されていない施術(診療報酬が不正請求された施術)を受けた者である。
【0012】
判定システム10は、例えば、医療保険者(以下、「保険者」とする)の施設内に設置されたシステムであり、記憶装置20、及び判定装置21を含んで構成される。
【0013】
記憶装置20は、例えばハードディスク等の不揮発性の記憶手段領域であり、データや各種情報が格納される。記憶装置20には、個人情報データ30、レセプトデータ31、及び柔整データ32が記憶される。
【0014】
個人情報データ30は、保険者の組合員である被保険者の「被保険者番号」、「氏名」、「被保険者の住所」、「居住都道府県のコード」、「生年月日(年齢)」、「性別」、「資格取得年」、「資格喪失年」、「1世帯あたりの被保険者数」、被保険者の属性に関する情報(「属性」、「職種」、「続柄」などを示すコード)の情報を含む。
【0015】
レセプトデータ31は、被保険者の「レセプト(被保険者ごとの診療報酬明細書、調剤報酬明細書)」の記載項目を示すデータであり、例えば、「診療開始日(年月日)」、「診療実日数」、「医療機関コード」、「疾病名」、「処置」、「請求点数」等の情報を含む。
【0016】
柔整データ32は、被保険者ごとの柔道整復師等の施術にかかる療養費の明細情報であり、「診察開始日」、「療養費の申請年月」、「柔整施設の住所」などの情報を含む。
【0017】
なお、本実施形態では、保険者の複数の組合員(被保険者)ごとに、個人情報データ30、レセプトデータ31、及び柔整データ32が対応して、記憶装置20に格納されている。
【0018】
判定装置21は、所定の学習モデル(後述)を生成するとともに、保険者の組合員である被保険者から不適切な施術を受けた者を判定する装置である。判定装置21は、演算装置50、メモリ51、記憶装置52、入力装置53、表示装置54、及び通信装置55を
含んで構成される。
【0019】
演算装置50は、メモリ51や記憶装置52に格納されたプログラムを実行することにより、様々機能を実現する。
【0020】
メモリ51は、例えばRAM(Random Access Memory)等であり、プログラムやデータ等の一時的な記憶領域として用いられる。
【0021】
記憶装置52は、例えばハードディスク等の不揮発性の記憶手段領域であり、プログラムやデータ等の様々な情報が格納される。本実施形態の記憶装置52は、
図2に示すように、生成プログラム70、判定プログラム71、初期データ72、中間データ73、教師データ74、学習モデル75、及び判定データ76を含む。
【0022】
生成プログラム70は、学習モデル75を生成する際に実行されるプログラムであり、判定プログラム71は、不適切な施術を行う者を判定する際に実行されるプログラムである。
【0023】
初期データ72は、
図3に示すように、所定の健康保険に加入する被保険者に関するデータであり、被保険者ごとに、個人情報データ30、レセプトデータ31、及び柔整データ32の全てが対応付されている。具体的には、例えば、被保険番号“10001”の「山田一郎」に対しては、「山田一郎」の「性別」、「住所」等が含まれる。なお、ここでは便宜上、「性別」及び「住所」しか記載していないが、個人情報データ30、レセプトデータ31、及び柔整データ32に含まれる他の情報も含む。
【0024】
また、本実施形態では、一部の被保険者に関するデータに対し、一部の被保険者が適切な柔道整復施術(以下、「柔整施術」とする)を受けたか否かを示す情報が付加されている。具体的には、被保険者のデータに基づいて、被保険者が適切な「柔整施術」を受けた者であると判断された場合、適切な者であることを示す情報(“1”)が付され、被保険者が不適切な「柔整施術」を受けた者であると判断された場合、不適切な者であることを示す情報(“0”)が付される。
【0025】
例えば、被保険番号“10001”の「山田一郎」に対しては、「山田一郎」が、適切な施術を受けた者であることを示す情報“1”が付されている。一方、被保険番号“10002”の「佐藤太郎」に対しては、「佐藤太郎」が不適切な施術を受けた者であることを示す情報“0”が付されている。なお、被保険者が適切な施術を受けた者であるか否かは、例えば、システム管理者により判断される。そして、初期データ72は、記憶装置52に格納される。
【0026】
中間データ73は、初期データ72に基づいて生成され、教師データ74の元となるデータである。なお、中間データ73の詳細については後述する。
【0027】
教師データ74は、中間データ73に基づいて生成され、学習モデル75を生成する際に用いられるデータである。なお、詳細は後述するが、教師データ74は、中間データ73に含まれるデータ(「特徴量」)うち、被保険者が適切な施術を受けた者か否かを判定する際に重要なデータ(「特徴量」)が選択されたものである。
【0028】
学習モデル75は、被保険者が、柔整施術を適切に受けた者であるか否かを判定するために用いられる学習モデルである。
【0029】
判定データ76は、被保険者が、柔整施術を適切に受けた者であるか否かの判定結果を
示すデータである。
【0030】
入力装置53は、例えばタッチパネルやキーボードであり、利用者の操作結果や入力を受け付ける装置である。また、表示装置54は、例えばディスプレイであり、操作結果や処理結果等を表示する。
【0031】
通信装置55は、ネットワークインターフェイスなどの通信手段であって、ネットワークを介して記憶装置20や他の機器(不図示)との間でデータの送受信を行う。
【0032】
---学習モデル75の生成について---
<<演算装置50aに実現される機能ブロック>>
図4は、演算装置50が、学習モデル75を生成するための生成プログラム70を実行した際に、演算装置50aに実現される機能ブロックを示す図である。
【0033】
演算装置50aには、取得部100、データ処理部101、分析部102、特定部103、教師データ生成部104、及び学習モデル生成部105が実現される。
【0034】
取得部100は、記憶装置52に格納された初期データ72のうち、情報“0”及び“1”が付されたデータを取得する。
【0035】
データ処理部101は、取得部100が取得したデータに所定の処理を施すことにより、中間データ73を生成する。具体的には、例えばデータ処理部101は、被保険者ごとに、被保険者の月単位の柔整施設の「利用日数」や、月単位の柔整施設の「療養費」を計算する。また、データ処理部101は、被保険者ごとに、被保険者の「住所」と、被保険者が施術を受けた「柔整施設の住所」とに基づいて、両者の「距離A」を計算する。さらに、データ処理部101は、被保険者の「住所」と、被保険者の勤務先の「住所」とに基づいて、両者の「距離B」を計算する。
【0036】
この結果、例えば中間データ73は、n個のデータと、情報“0”または“1”の何れかを含み、(x1,x2,x3,・・・,xn,“0”)または(x1,x2,x3,・・・,xn,“1”)と表現される。なお、ここでは、“x1”~“xn”のそれぞれは、「被保険者の生年(年齢)」、月単位の「利用日数」、月単位の「療養費」、「距離A」、「距離B」等である。
【0037】
分析部102は、情報“0”が付された中間データ73(不適切な者のデータ)に対して、ランダムフォレストに基づくアルゴリズムを使用する非線形回帰分析を実行する。なお、本実施形態では、分析部102は、ランダムフォレストを用いることとしたが、他の回帰分析のアルゴリズム(例えば、サポートベクター回帰、決定木)や、線形回帰のアルゴリズムを用いても良い。
【0038】
特定部103は、分析部102の分析結果に基づいて、中間データ73のうち、被保険者が適切な施術を受けた者か否かを判定する際に重要なデータ(「特徴量」)を特定する。
【0039】
教師データ生成部104は、中間データ73と、特定部103の分析結果に基づいて、教師データ74を生成する。
【0040】
学習モデル生成部105は、教師データ74に基づいて、被保険者が、柔整施術を適切に受けた者であるか否かを判定するために用いられる学習モデル75を生成する。
【0041】
<<学習モデル75の生成処理について>>
図5を参照しつつ、学習モデル75の生成する処理S10について説明する。まず、取得部100は、記憶装置52に格納された初期データ72のうち、情報“0”及び“1”が付されたデータを取得する(S20)。
【0042】
そして、データ処理部101は、処理S20で取得されたデータに対し、所定の処理を施して、中間データ73を生成する(S21)。この結果、中間データ73として、n個のデータと、情報“0”または“1”の何れかを含む(x1,x2,x3,・・・,xn,“0”)または(x1,x2,x3,・・・,xn,“1”)とのデータがそれぞれ複数得られることになる。
【0043】
分析部102は、不適切な被保険者の中間データ73(x1,x2,x3,・・・,xn,“0”)を選択し、ランダムフォレストに基づく分析を実行する(S22)。
図6は、中間データ73に含まれるデータ(「特徴量」)の重要度を示す図であり、データに対するジニ係数の減少量(Mean Decrease Gini)が表されている。また、
図7は、中間データ73に含まれるデータのうち、重要な特徴量に相当する14個のデータD1~D10cを説明する図である。
図6から明らかなように、不適切な被保険者か否かを判別するためのデータ(「特徴量」)としては、データD1が最も重要である。また、以下、不適切な被保険者か否かを判別するためのデータ(「特徴量」)としては、データD2~D10cの順に重要となる。
【0044】
ここで、データD1(第1情報)は、「被保険者の月単位(所定期間)の柔整の利用日数」であり、データD2(第2情報)は、「被保険者の月単位の柔整の療養費」であり、データD3(第3情報)は、「被保険者の居住都道府県のコード」である。
【0045】
データD4(第4情報)は、「被保険者の年齢(生年)」であり、データD5a,5b(第5情報)のそれぞれは、「柔整の療養費申請年月」、「柔整での診察開始年月」である。また、データD6a,6b(第6情報)のそれぞれは、「保険資格取得年」、「保険資格喪失年」であり、データD7は、「被保険者の住所から柔整施設までの距離」であり、データD8は、「被保険者の住所から勤務先までの距離」である。
【0046】
さらに、データD9は、「1世帯の被保険者数」であり、データD10a~10c(第10情報)のそれぞれは、「被保険者の属性コード」、「被保険者の職制コード」、「被保険者の続柄コード」である。
【0047】
そして、特定部103は、n個のデータを含む中間データ73から、上述した14個のデータD1~D10cを、教師データを使用する際に用いるデータとして特定する(S23)。
【0048】
教師データ生成部104は、特定部103で特定された14個のデータD1~D10cと、中間データ73に基づいて、教師データ74を生成する(S24)。具体的には、教師データ生成部104は、被保険者が適切な者(第1被保険者)である情報(“1”)が付され、14個のデータD1~D10cを含む、複数の教師データ74aと、被保険者が不適切な者(第2被保険者)である情報(“0”)が付され、14個のデータD1~D10cを含む、複数の教師データ74bと、を生成する。
【0049】
そして、学習モデル生成部105は、教師データ74a,74bを用いて機械学習を行い、被保険者が、柔整施術を適切に受けた者であるか否かを判定するために用いられる学習モデル75を生成する(S25)。なお、学習モデル生成部105は、生成した学習モデル75を、記憶装置52に格納する。
【0050】
なお、生成された学習モデル75は、対象者の14個のデータD1~D10cが入力されると、対象者が、適切な施術を受けた者か否を推定するためのモデル。具体的には、学習モデル75は、14個のデータD1~D10cの値が入力される所定の関数f(D1,D2,~D10c)であり、対象者が、適切な施術を受けた者か否かを示す情報(例えば、“0”または“1”)を出力する。
【0051】
---対象者が不適切な者か否かを判定する処理について---
<<演算装置50bに実現される機能ブロック>>
図8は、不適切な施術を受けた者を判定する判定プログラム71が実行された際に、演算装置50に実現される機能ブロックを示す図である。
【0052】
演算装置50bには、データ処理部120、取得部121、判定部122、及び判定結果処理部123が実現される。
【0053】
データ処理部120は、判定の対象となる対象者の初期データ72を取得し、中間データ73(x1,x2,x3,・・・,xn)を生成する。
【0054】
取得部121は、データ処理部120で生成された、対象者の中間データ73から、14個のデータD1~D10cを取得し、入力データDiとする。
【0055】
判定部122は、入力データDiと、学習モデル75とに基づいて、対象者が不適切な者であるか否かを判定する。
【0056】
判定結果処理部123は、判定部122の判定結果を記憶装置52に格納するとともに、表示装置54の画面(不図示)に表示させる。
【0057】
<<判定処理S11について>>
図9は、被保険者である「対象者X」が、医療保険の対象とならない不適切な施術を受けた者であるか否かを判定する判定処理S11を示すフローチャートである。
【0058】
まず、データ処理部120は、判定の対象となる「対象者X」の初期データ72を取得し、「対象者X」の中間データ73を生成する(S40)。そして、取得部121は、処理S40で生成された「対象者X」の中間データ73に含まれる14個のデータD1~D10cを、入力データDiとして取得する(S41)。
【0059】
また、判定部122は、入力データDiと、記憶装置52に格納された学習モデル75とに基づいて、「対象者X」が、不適切な施術を受けた者であるか否かを判定する(S42)。具体的には、上述のように、入力データDiの14個のデータが、学習モデル75を示す関数f(D1,D2,~,D10c)に用いられると、関数fは、「対象者X」が、適切な施術を受けた者か否かを示す情報(例えば、“0”または“1”)を出力する。
【0060】
そして、判定結果処理部123は、処理S42で得られる判定結果を、記憶装置52に格納するとともに、表示装置54の画面(不図示)に表示させる。この結果、利用者は、「対象者X」が、医療保険の対象とならない不適切な施術を受けた者であるか否かを把握することができる。なお、本実施形態では、例えば、判定結果を画面に表示させることとしたが、これに限られない。例えば、判定結果を、「対象者X」の携帯電話等の端末に送信し、注意を喚起しても良い。
【0061】
---まとめ---
以上、本実施形態の判定システム10について説明した。本実施形態では、中間データ73に含まれる14個のデータD1~D10cを用いて学習モデル75を生成し、判定処理を実行したが、これに限られない。例えば、対象者が不適切な者であるか否かを判定する際に、重要度の高い3つのデータD1~D3(第1~第3情報)を用いて学習モデル75を生成し、判定処理を実行しても良い。このような場合であっても、複数の被保険者から、医療保険の対象とならない不適切な施術を受けた者を判定することができる。
【0062】
また、本明細書の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。すなわち、前記取得部は、前記対象者の年齢に関する第4情報を更に取得し、前記判定部は、前記第1及び第2保険者の夫々の前記第1~4情報に基づいて前記機械学習により得られる前記学習モデルと、前記対象者の前記第1~4情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、としても良い。
【0063】
このような場合、学習モデル75は、データD4「被保険者の年齢(生年)」を考慮して生成されるため、より精度良く、医療保険の対象とならない不適切な施術を受けた者を判定することができる。
【0064】
また、前記取得部は、前記対象者の前記施設での施術期間に関する第5情報を更に取得し、前記判定部は、前記第1及び第2保険者の夫々の前記第1~5情報に基づいて前記機械学習により得られる前記学習モデルと、前記対象者の前記第1~5情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、としても良い。
【0065】
このような場合、学習モデル75は、データD5a「柔整の療養費申請年月」、データD5b「柔整での診察開始年月」を考慮して生成されるため、より精度良く、医療保険の対象とならない不適切な施術を受けた者を判定することができる。
【0066】
また、前記取得部は、前記対象者の健康保険の加入期間に関する第6情報を更に取得し、前記判定部は、前記第1及び第2保険者の夫々の前記第1~6情報に基づいて前記機械学習により得られる前記学習モデルと、前記対象者の前記第1~6情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、としても良い。
【0067】
このような場合、学習モデル75は、データD6a「保険資格取得年」、データD6b「保険資格喪失年」を考慮して生成されるため、より精度良く、医療保険の対象とならない不適切な施術を受けた者を判定することができる。
【0068】
また、前記取得部は、前記対象者の住所から前記施設までの距離を示す第7情報を更に取得し、前記判定部は、前記第1及び第2保険者の夫々の前記第1~7情報に基づいて前記機械学習により得られる前記学習モデルと、前記対象者の前記第1~7情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、としても良い。
【0069】
このような場合、学習モデル75は、データD7「被保険者の住所から柔整施設までの距離」を考慮して生成されるため、より精度良く、医療保険の対象とならない不適切な施術を受けた者を判定することができる。
【0070】
また、前記取得部は、前記対象者の住所から勤務先までの距離を示す第8情報を更に取得し、前記判定部は、前記第1及び第2保険者の夫々の前記第1~8情報に基づいて前記機械学習により得られる前記学習モデルと、前記対象者の前記第1~8情報と、に基づい
て、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、としても良い。
【0071】
このような場合、学習モデル75は、データD8「被保険者の住所から勤務先までの距離」を考慮して生成されるため、より精度良く、医療保険の対象とならない不適切な施術を受けた者を判定することができる。
【0072】
また、前記取得部は、前記対象者が属する世帯の被保険者数を示す第9情報を更に取得し、前記判定部は、前記第1及び第2保険者の夫々の前記第1~9情報に基づいて前記機械学習により得られる前記学習モデルと、前記対象者の前記第1~9情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、としても良い。
【0073】
このような場合、学習モデル75は、データD9「1世帯の被保険者数」を考慮して生成されるため、より精度良く、医療保険の対象とならない不適切な施術を受けた者を判定することができる。
【0074】
また、前記取得部は、前記対象者の属性を示す第10情報を更に取得し、前記判定部は、前記第1及び第2保険者の夫々の前記第1~10情報に基づいて前記機械学習により得られる前記学習モデルと、前記対象者の前記第1~10情報と、に基づいて、前記対象者が前記柔道整復施術を適切に受けた者であるか否かを判定すること、としても良い。
【0075】
このような場合、学習モデル75は、データD10a~10c「被保険者の属性コード」、「被保険者の職制コード」、「被保険者の続柄コード」を考慮して生成されるため、より精度良く、医療保険の対象とならない不適切な施術を受けた者を判定することができる。
【0076】
なお、上記実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0077】
例えば、本実施形態では、学習モデル75が生成される処理S10と、判定処理S11とが、同じ判定システム10で実施されたが、これに限られない。例えば、学習モデル75が生成される処理S10と、判定処理S11とが異なる装置で実施されても良い。
【0078】
また、学習モデル75を記憶する記憶装置に対して、対象者の情報がインターネットを介して送信される場合、対象者の情報のうち、個人情報に関しては匿名化の処理が施されても良い。このような処理が施されることにより、個人情報をやりとりする際の安全性を高めることができる。
【0079】
また、本実施形態の取得部121は、データ処理部120で生成された、対象者の中間データ73から所定のデータを取得したが、これに限られない。例えば、対象者の中間データ73が記憶装置52に格納されている場合、記憶装置52から、所定のデータを取得しても良い。また、取得部121は、記憶装置52に記憶された所定のデータが送信され、取得部121が受信しても良い。このような場合も、取得部121は、所定のデータ(例えば、14個のデータ)を取得(受信)することになる。
【0080】
また、実行可能なプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium with
an executable program thereon)を用いて、コンピュ
ータにプログラムを供給することも可能である。なお、非一時的なコンピュータの可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、CD-ROM(Read Only Memory)等がある。
【符号の説明】
【0081】
10 判定システム
20,52 記憶装置
21 判定装置
30 個人情報データ
31 レセプトデータ
32 柔整データ
50 演算装置
51 メモリ
53 入力装置
54 表示装置
55 通信装置
70 生成プログラム
71 判定プログラム
72 初期データ
73 中間データ
74 教師データ
75 学習モデル
76 判定データ
100,121 取得部
101,120 データ処理部
102 分析部
103 特定部
104 教師データ生成部
105 学習モデル生成部
122 判定部
123 判定結果処理部