IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新明和工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-機械式駐車設備 図1
  • 特許-機械式駐車設備 図2
  • 特許-機械式駐車設備 図3
  • 特許-機械式駐車設備 図4
  • 特許-機械式駐車設備 図5
  • 特許-機械式駐車設備 図6
  • 特許-機械式駐車設備 図7
  • 特許-機械式駐車設備 図8
  • 特許-機械式駐車設備 図9
  • 特許-機械式駐車設備 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】機械式駐車設備
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/06 20060101AFI20221221BHJP
   E04H 6/18 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
E04H6/06 V
E04H6/06 D
E04H6/18 603
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018120997
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020002569
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康平
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-065436(JP,A)
【文献】特開平03-247866(JP,A)
【文献】特開平06-158896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2列、3段の格納スペースを備え、入出庫する自動車を搭載するパレットを前記格納スペースの間で車高方向に昇降させ、車幅方向に横行させる機械式駐車設備であって、
前記格納スペースには、少なくとも1箇所に前記パレットが配置されていない空スペースが備えられ、
前記格納スペースの各段には、前記パレットを個別に横行させる横行装置が備えられ、
前記格納スペースの各列には、前記パレットを昇降させる昇降装置が備えられ、
前記パレットは、昇降時に支持される支持部を有し、
前記昇降装置は、索状体を最下段と最上段との間で昇降駆動する昇降駆動機と、前記索状体に設けられ前記パレットの前記支持部に係合させる係合部と、前記係合部を前記支持部に向けて進出又は前記支持部から後退させる進退部と、を有し、
前記進退部は、前記係合部を前記支持部から後退させた状態を保つ付勢部と、前記係合部を前記付勢部の付勢力に抗して前記支持部に向けて進出させる進出駆動部と、を有しており
記索状体の上昇に伴って前記進出駆動部と当接した前記係合部を所定の前記パレットの前記支持部に向けて進出させる制御装置を備えており、
前記横行装置に支持された所定の前記パレットに対して、前記索状体を上昇させるとともに、前記進退部及び前記制御装置を介して、前記係合部を前記支持部に係合させて、所定の前記パレットを前記横行装置から持ち上げてから上昇又は下降させる、
ことを特徴とする機械式駐車設備。
【請求項2】
前記係合部は、前記支持部に係合させる係合フックを有し、
前記係合フックは、前記支持部に係合させたフック先端部が回動軸を中心に前記付勢部で下向きに回動して後退するように構成されている、
請求項に記載の機械式駐車設備。
【請求項3】
前記索状体は、最上段に設けられた上部スプロケットと最下段に設けられた下部スプロケットとの間に掛けられた2本の昇降チェーンで構成され、
前記係合部は、2本の前記昇降チェーンの間に設けられ、前記進退部によって前記昇降チェーンの間から前記支持部に向けて進出又は前記支持部から後退するように構成されている、
請求項1又は2に記載の機械式駐車設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2列、3段の格納スペースを備えた機械式駐車設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械式駐車設備は、設置条件等により複数列多段式が採用される場合がある。複数列多段式の駐車設備は、設置スペースと格納台数の条件に応じて左右方向の列数と上下方向の段数とを設定することで、小さい設置スペースでも複数台の格納スペースを縦方向に設けることができる。
【0003】
この種の先行技術として、例えば、本出願人が先に出願した機械式駐車設備がある(例えば、特許文献1参照)。この機械式駐車設備では、複数列、複数段の格納スペースを備え、格納スペースのパレットが配置されていない空スペースを利用して、入出庫部から入出庫する自動車を搭載するパレットを、格納スペースの間で昇降、横行させて格納する。この機械式駐車設備では、各列に配置されている全てのパレットを一緒に昇降させ、最上段と最下段とに配置されているパレットを個別に横行させることで、任意のパレットを任意の格納スペースに移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-65436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1では、各列のパレットを一緒に昇降させているため、任意のパレットを移動させるときに複数のパレットを一緒に昇降させる必要がある。このため、任意のパレットを目的位置まで移動させるために時間を要する場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、複数列、複数段の格納スペースの間で任意のパレットを、状況に応じて目的位置まで円滑に移動させることができる機械式駐車設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る機械式駐車設備は、少なくとも2列、3段の格納スペースを備え、入出庫する自動車を搭載するパレットを前記格納スペースの間で車高方向に昇降させ、車幅方向に横行させる機械式駐車設備であって、前記格納スペースには、少なくとも1箇所に前記パレットが配置されていない空スペースが備えられ、前記格納スペースの各段には、前記パレットを個別に横行させる横行装置が備えられ、前記格納スペースの各列には、前記パレットを昇降させる昇降装置が備えられ、前記パレットは、昇降時に支持される支持部を有し、前記昇降装置は、索状体を最下段と最上段との間で昇降駆動する昇降駆動機と、前記索状体に設けられ前記パレットの前記支持部に係合させる係合部と、前記係合部を前記支持部に向けて進出又は前記支持部から後退させる進退部と、を有し、前記昇降装置による前記パレットの昇降時に、前記進退部で前記係合部を所定の前記パレットの前記支持部に向けて進出させる制御装置を備えている。
【0008】
この構成により、昇降させるパレットの支持部に向けて進退部で係合部を進出させる。これにより、各列における任意のパレットの支持部に係合部を係合させて、パレットを索状体で昇降させることができる。しかも、昇降させる重量が減ることで昇降速度を上げることができ、パレットを円滑に昇降移動させることができる。そして、各段で任意のパレットを横行させることができる。よって、任意のパレットを複数列、複数段の格納スペースの間で円滑に昇降移動及び横行移動させることができる。
【0009】
また、前記進退部は、前記係合部を前記支持部から後退させた状態を保つ付勢部と、前記係合部を前記付勢部の付勢力に抗して前記支持部に向けて進出させる進出駆動部と、を有していてもよい。
【0010】
このように構成すれば、索状体に設けられた係合部を支持部から後退させた状態を付勢部で保つことができる。よって、通常時は係合部が後退した状態を保ち、昇降させるパレットに係合部を係合させるときのみ、進出駆動部で係合部を進出させてパレットの支持部に係合させるようにできる。
【0011】
また、前記係合部は、前記支持部に係合させる係合フックを有し、前記係合フックは、前記支持部に係合させたフック先端部が回動軸を中心に前記付勢部で下向きに回動して後退するように構成されていてもよい。
【0012】
このように構成すれば、係合部の係合フックは、付勢部によって回動軸を中心に下向きに回動して後退させられる。パレットを上昇させるときには、係合フックを進出駆動部によって回動軸を中心に下向きに回動さることで、パレットの支持部に向けて進出させることができる。
【0013】
また、前記索状体は、最上段に設けられた上部スプロケットと最下段に設けられた下部スプロケットとの間に掛けられた2本の昇降チェーンで構成され、前記係合部は、2本の前記昇降チェーンの間に設けられ、前記進退部によって前記昇降チェーンの間から前記支持部に向けて進出又は前記支持部から後退するように構成されていてもよい。
【0014】
このように構成すれば、パレットを昇降させる係合部が2本の昇降チェーンの間に設けられているため、パレットの大荷重を2本の昇降チェーンで適切に支持して昇降させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数列、複数段の格納スペースの間で、状況に応じて任意のパレットを円滑に移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る機械式駐車設備を示す正面図である。
図2図2は、図1に示す機械式駐車設備の1列分を示す正面図である。
図3図3は、図2に示す1列分の斜視図である。
図4図4は、図3に示す横行装置の横行レール部分を示す側面図である。
図5図5は、図3に示す昇降装置の正面図である。
図6図6は、図5に示す昇降装置の側面図である。
図7図7(A)~(D)は、昇降装置における係合フックの動作説明図である。
図8図8は、図5に示す昇降装置によるパレットの持上げ時における動作を示す側面図である。
図9図9は、係合フックと進退部が異なる例を示す側面図である。
図10図10(A)~(K)は、図1に示す機械式駐車設備におけるパレットの移動動作例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、3段、3列の格納スペース7を有する機械式駐車設備1を例に説明する。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における上下左右方向の概念は、図1に示す機械式駐車設備1に向かった状態における上下左右方向の概念と一致するものとする。また、この明細書及び特許請求の範囲の書類中において、「進出」は枠体5側から内方の昇降路9に向けて突出することをいい、「後退」は、昇降路9から外方の枠体5側に退避することをいう。また、各段を「階」という場合もある。
【0018】
(機械式駐車設備の構成)
図1は、一実施形態に係る機械式駐車設備1を示す正面図である。図2は、図1に示す機械式駐車設備1の1列分を示す拡大正面図である。図3は、図2に示す1列分の斜視図である。図4は、横行装置30の横行レール部分を示す側面図である。図3では、自動車Vの図示を省略し、パレット50の一部の図示を省略している。
【0019】
図1に示すように、この実施形態の機械式駐車設備1は、1階部分が地上Gの乗入れ階となった例である。機械式駐車設備1は、前後位置で鉛直に設けられた柱材2と、この柱材2を前後方向に連結する前後梁材3(図3)と、左右方向に連結する左右梁材4とが設けられた枠体5を備えている。機械式駐車設備1は、最下段の1段目F1から、2段目F2、3段目F3と、左端列の1列目L1、中央の2列目L2、右端列の3列目L3とを有する3段×3列の格納スペース7を備えた複数列多段式となっている。この例では、格納スペース7の内の1箇所がパレット50のない空スペース8となっており、自動車Vを搭載するパレット50は8個設けられている。1列目L1~3列目L3の各列において、パレット50が昇降する上下方向の空間が昇降路9である。1段目F1のパレット50に地上Gから乗入れができるように、枠体5はピット60内に設けられている。
【0020】
図示する1列目L1~3列目L3の各列では、昇降装置10によって、最下段の1段目F1と最上段の3段目F3の間で、各パレット50を矢印Hで示すように上下方向に昇降させることができる。昇降装置10は各列に設けられ、この昇降装置10によってパレット50を自動車Vの車高方向に昇降させる。
【0021】
昇降装置10は、上部スプロケット12と下部スプロケット13との間に掛けられた索状体たる昇降チェーン11と、上部スプロケット12を回転駆動する昇降駆動機14(図2)と、昇降チェーン11に設けられた係合部たる係合フック15(図6)とを有している。係合フック15は、各列の左右位置における前後位置にそれぞれ設けられている(図3)。左右位置の上部スプロケット12は、軸で連結されている。昇降駆動機14によって上部スプロケット12を回転駆動することで、下部スプロケット13との間で昇降チェーン11が回転させられる。昇降チェーン11を回転させて、所定位置に設けられた係合フック15を各パレット50の支持部たる支持部材52(図6)に係合させる。そして、昇降チェーン11の回転によって、パレット50を前部と後部における左右位置の四隅を支持して昇降させる。
【0022】
また、図2,3にも示すように、1段目F1~3段目F3の各段では、横行装置30によって、各パレット50を個別に矢印Wで示すように左右方向に横行させることができる。横行装置30は、パレット50の下面に設けられた横行レール51(図4)を支持する複数の横行ローラ32が設けられた横行ユニット31を有している。横行ローラ32は、左右方向に所定間隔で設けられており、各横行装置30に設けられた横行駆動機33によって回転させられる。横行ローラ32を回転させる構成は、例えば、横行駆動機33によって全ての横行ローラ32と同軸に設けられたスプロケットに掛けられた横行チェーン(図示略)を回転させる構成などにできる。横行ローラ32の回転は、他の公知の手段を用いることができる。
【0023】
横行装置30は、各段の各列に設けられ、それぞれの横行装置30に支持されたパレット50は、個別に横行させることができる。横行装置30によるパレット50の横行は、パレット50を支持している格納スペース7の横行装置30と、パレット50の横行先の格納スペース7の横行装置30とを駆動することでスムーズに行うことができる。各パレット50の横行移動は、1列毎の順次動作でも、複数列の同時動作でもよい。
【0024】
一方、2段目F2と3段目F3とに設けられた横行装置30は、横行ユニット31を昇降路9に進出させて配置することでパレット50を支持する状態と、昇降装置10によってパレット50を昇降させるときに昇降路9から後退させて退避させた状態とにできる。
【0025】
図4(A)、(B)に示すように、2段目F2と3段目F3の横行装置30は、横行ローラ32が設けられた横行ユニット31を昇降路9に進出又は昇降路9から後退させることができる。横行ユニット31は、左右端部に水平方向に延びるガイドレール35が設けられており、枠体5に設けられたガイド板40(図5)に備えられたガイドローラ41に沿って水平方向に進出又は後退させることができる。横行ユニット31の進出又は後退は、進退駆動機36によって行われる。この実施形態の進退駆動機36は、横行ユニット31のガイドレール35をガイドローラ41に沿って水平方向に進退させるアクチュエータとなっている。進退駆動機36は、枠体5に設けられている。進退駆動機36を枠体5に設ける構成は、図示を省略している。進退駆動機36は、例えば、リンク機構を介して横行ユニット31のガイドレール35をガイドローラ41に沿って水平方向に進退させる構成などにすることができる。横行ユニット31を進退させる機構は、これらの機構に限定されない。
【0026】
図4(A)に示すように、横行ユニット31を進退駆動機36で昇降路9に進出させた状態では、横行ローラ32によってパレット50の横行レール51を支持することができる。図4(B)に示すように、横行ユニット31を進退駆動機36で昇降路9から後退させた状態では、パレット50は横行ユニット31に干渉することなく上下方向に移動させることができる。
【0027】
さらに、図1に示すように、機械式駐車設備1には制御装置6が備えられている。制御装置6は、各パレット50を横行させる横行装置30、各パレット50を昇降させる昇降装置10の駆動制御もする。制御装置6は、パレット50の昇降時に横行装置30の横行ユニット31を進退させる制御も行う。制御装置6は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。
【0028】
この機械式駐車設備1によれば、制御装置6によって昇降装置10と横行装置30とを後述するように駆動制御することで、各パレット50を各列で昇降させ、各段で横行させることができる。よって、格納スペース7の間で、昇降装置10により任意のパレット50を昇降方向に搬送し、また横行装置30により任意のパレット50を横行させる一連の動作により、パレット50をいわゆるパズル動作で昇降、横行させて目的位置まで円滑に移動させることができる。
【0029】
また、各パレット50を各列で昇降させ、各段で横行させることができるので、パレット50の搬送経路上の任意の格納スペース7を入庫口、出庫口とすることができる。
【0030】
(昇降装置の詳細な構成)
図5は、図3に示す昇降装置10の正面図である。図6は、図5に示す昇降装置10の側面図である。図6は、係合フック15でパレット50を持ち上げる前の状態を示している。図7(A)~(D)は、昇降装置10における係合フック15の動作説明図である。これらの図に基づいて、昇降チェーン11に設けられた1つの係合フック15(係合部)について説明する。
【0031】
図5,6に示すように、昇降チェーン11は2列で設けられている。昇降チェーン11の対向する内側部分には、所定位置にフック支持板17が設けられている。フック支持板17の間に、係合フック15の回動軸たるフック支持ピン16が設けられている。このフック支持ピン16に、側面視がL字状の上記係合フック15が支持されている。
【0032】
係合フック15は、枠体5に設けられた進出駆動部たるソレノイド20によって昇降路9に向けて進出させることができる。ソレノイド20は、2列の昇降チェーン11の間に設けられた係合フック15を昇降路9の方向に進出させるように枠体5に設けられている。ソレノイド20を枠体5に設ける構成は、図示を省略している。ソレノイド20は、進退部の進部である。ソレノイド20には、ロッド21の先端部に回転ローラ22が設けられている。係合フック15は、ソレノイド20によって、昇降路9から後退させられた状態から昇降路9に向けて進出させた状態にすることができる。
【0033】
図7(A)、(B)に示すように、係合フック15は、昇降チェーン11の中心線に対して昇降路9の方向にずれて設けられた上記フック支持ピン16に支持されている。係合フック15は、このフック支持ピン16の周りでフック先端部15aが下向きに回動するようになっている。また、フック支持ピン16には、係合フック15を、常時、後退した状態に付勢する付勢部たるバネ材18が設けられている。付勢部としては、ねじりコイルバネの他、引張りバネ、圧縮バネや板バネをはじめとする各種弾性体、及び係合部重心の偏りにより付勢するものなどでもよい。バネ材18は、進退部の退部である。バネ材18には、ねじりコイルバネが用いられており、バネ材18の一端はフック支持板17に設けられた第1ピン17aに係止され、他端は係合フック15に設けられた第2ピン15bに係止されている。このバネ材18により、係合フック15は常に矢印Rの方向に付勢されている。よって、係合フック15は、常にバネ材18の付勢力によってフック先端部15aが昇降路9から後退させられている。図示するソレノイド20のロッド21を縮めた状態では、係合フック15は回転ローラ22と所定の隙間を有する状態で昇降する。図7(C)、(D)に示すように、係合フック15は、ソレノイド20のロッド21を伸長することで、バネ材18の付勢力に抗してフック支持ピン16の周りで下向きに回動させられる。これにより、フック先端部15aを昇降チェーン11から昇降路9に向けて進出させることができる。このように、係合フック15は、鉛直方向に配置された2本の昇降チェーン11の間に配置されており、バネ材18の付勢力によって昇降路9から後退させた状態と、ソレノイド20によって昇降路9に進出させた状態とにできる。なお、係合フック15を支持するフック支持ピン16の位置は、昇降チェーン11の中心線上であっても、ソレノイド20の方向にずれていてもよい。
【0034】
また、昇降チェーン11には、フック支持ピン16を中心に後退させた係合フック15を所定位置で止める止めピン19が設けられている。よって、係合フック15は、付勢部たるバネ材18の付勢力に抗して昇降路9の方向に進出させられていない状態では、昇降路9から後退させられて止めピン19に当接した状態となっている。止めピン19は、フック支持板17に設けてもよい。
【0035】
さらに、この実施形態では、固定側である枠体5に横行装置30と昇降装置10を備えさせ、パレット50には横行ローラ32上を横行する横行レール51とともに係合フック15を係合させる支持部材52が設けられた構成としている。よって、格納スペース7の間で移動するパレット50には可動部分がなく、パレット50を簡単な構成にできる。
【0036】
また、係合フック15は、下部スプロケット13の部分を旋回するときには後退させられて昇降チェーン(索状体)11から大きく突出しない状態で旋回させられる。よって、係合フック15を旋回させるスペースを確保するためにピット60(図1)を掘り下げる量を少なくできる。すなわち、後退させた状態の係合フック15を下部スプロケット13の位置で回転させるときは旋回半径が小さくなるので、ピット60の深さを浅くできる。
【0037】
なお、この実施形態では、昇降チェーン11に複数の係合フック15が設けられた例を説明したが、昇降チェーン11に1つの係合フック15が設けられた構成にすることもできる。複数の係合フック15を設ければ、複数のパレット50を同時に昇降させることができる。1つの係合フック15を設ければ、1つで任意のパレット50を昇降させることができる。例えば、格納スペース7の高さが段によって異なる場合でも、任意のパレット50を適切に昇降させることができる。係合フック15の数は一例であり、段数などの条件に応じて設定すればよい。
【0038】
(昇降装置の動作例)
図8は、図5に示す昇降装置10によるパレット50の持上げ時における動作を示す側面図である。横行装置30によって支持されたパレット50を持ち上げる場合、昇降チェーン11に設けられた係合フック15がパレット50の所定位置下方まで上昇してきた段階でソレノイド20のロッド21が伸長させられる。係合フック15の位置は、例えば、図示しないセンサ等によって検出することができる。これにより、ソレノイド20のロッド21の先端に設けられた回転ローラ22が、昇降チェーン11によって上昇させられる係合フック15の上端部に当接する。その後、昇降チェーン11によって係合フック15が上昇させられると、係合フック15はフック支持ピン16を中心に下向きに回動させられる。この時、回転ローラ22が転動し、係合フック15はスムーズに回動させられる。
【0039】
そして、係合フック15は、フック支持ピン16を中心に下向きに回動させられたフック先端部15aが2本の昇降チェーン11の間から昇降路9に向けて進出させられる。これにより、係合フック15のフック先端部15aがパレット50の支持部材52に係合させられる。パレット50の支持部材52に係合させられた係合フック15は、昇降チェーン11によって上昇させられて、パレット50が横行ローラ32から上方に持ち上げられる。二点鎖線で図示するこの状態では、係合フック15にパレット50の荷重が作用するため、フック先端部15aの内面部15cがパレット50の側面に当接する。これにより、係合フック15によるパレット50の係合状態が安定して保たれる。この状態では、フック先端部15aの内面部15cが係止部となっている。
【0040】
そして、パレット50を上部階の横行装置30の位置よりも所定高さ上方まで上昇させた状態で、上部階の横行装置30の横行ユニット31を昇降路9に進出させる。その後、昇降チェーン11を反対方向に回転させることでパレット50を下降させる。これにより、パレット50の横行レール51が横行ユニット31の横行ローラ32に支持される。その後、さらに昇降チェーン11で係合フック15を下降させることで、フック先端部15aがパレット50の支持部材52から外れる。これにより、係合フック15はバネ材18の付勢力によって昇降路9から後退させられる。このようにして、任意のパレット50を係合フック15で支持して上部階に上昇させることができる。
【0041】
一方、2段目F2又は3段目F3の横行装置30に支持されたパレット50を下降させる場合は、上記したようにソレノイド20によって係合フック15でパレット50の支持部材52を支持し、パレット50を横行ローラ32から所定高さまで持ち上げる。そして、横行ユニット31を後退させた後、昇降チェーン11を反対方向に回転させることで支持したパレット50を下降させることができる。このようにして、任意のパレット50を係合フック15で支持して下降させることができる。
【0042】
(係合フックの異なる例)
図9は、係合フック65と進退部が異なる例を示す側面図である。なお、図8と同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。また、横行装置30に関する構成は図示を省略する。この例の係合フック65は、昇降チェーン11に対して水平方向にスライドして、フック先端部65aを昇降路9に進出、又は昇降路9から後退させるように構成されている。係合フック65のフック先端部65aは、上向きに屈曲してパレット50の支持部材52に係合するように形成されている。係合フック65は、フック先端部65aから反昇降路の方向に延びるスライド部65bと、スライド部65bの後端部で上向きに突出するバネ受け部65cとを有している。バネ受け部65cの昇降路9と反対方向の面は、昇降路側から下向きに傾斜する傾斜面65dに形成されている。
【0043】
一方、昇降チェーン11の対向する内側部分には、フック支持部材66が設けられている。フック支持部材66は、矩形状のフックスライド孔66aと昇降路側で上向きに突出するバネ受け部66bとを有している。フックスライド孔66aには、係合フック65のスライド部65bが挿入されており、係合フック65はフック支持部材66のフックスライド孔66aに沿って水平方向にスライドするようになっている。また、係合フック65のバネ受け部65cとフック支持部材66のバネ受け部66bとの間には、バネ材68が設けられている。バネ材68は、進退部の退部である。バネ材68には、圧縮コイルバネが用いられている。バネ材68のバネ力により、係合フック65は常に昇降路9と反対方向に付勢されている。
【0044】
この構成によれば、昇降チェーン11に設けられた係合フック65がパレット50の所定位置下方まで上昇してきた段階で進退部の進部であるソレノイド20のロッド21が伸長させられる。これにより、ロッド21の先端に設けられた回転ローラ22が、昇降チェーン11によって上昇させられる係合フック65の傾斜面65dに当接する。その後、昇降チェーン11によって係合フック65が上昇させられると、係合フック65は傾斜面65dが回転ローラ22に沿って移動することで水平方向にスライドさせられ、フック先端部65aが昇降路9に向けて進出させられる。そして、昇降路9に進出させられた係合フック15のフック先端部15aがパレット50の支持部材52に係合させられる。その後、昇降チェーン11の上昇により、パレット50は係合フック65によって横行ユニット31(図8)から上方に持ち上げられる。また、昇降チェーン11が下降してパレット50が横行ユニット31(図8)に支持された後は、係合フック65はバネ材68の付勢力によって昇降路9から後退させられる。なお、係合フック65は、図9の紙面直交方向(自動車Vの前後方向)に進退する構成としてもよい。
【0045】
(機械式駐車設備のパレット移動動作例)
図10(A)~(K)は、図1に示す機械式駐車設備1におけるパレット50の移動動作例を示す概略図である。なお、この図では、昇降装置10及び横行装置30の記載を省略している。この図に基づいて、図1に示す状態の配置から、1列目L1、3段目F3の所定のパレット50(自動車Vを太線で示す)を、3列目L3の1段目F1の目的位置(入出庫部等)まで移動させる動作を説明する。
【0046】
図10(A)に示すように、図1に示す3列目L3の1段目F1の空スペース8に向けて3列目L3の2段目F2と3段目F3のパレット50を下降させる。この下降は、3列目L3の昇降装置10(図1)によって、2段分のパレット50を同時に下降させることができる。次に、図10(B)に示すように、2列目L2、3段目F3のパレット50を、空スペース8に向けて横行させるとともに、1列目L1の所定のパレット50も右方向に横行させる。この横行動作は、3段目F3の横行装置30(図1)を全て駆動することで、2列目L2のパレット50と1列目L1のパレット50を同時に横行させることができる。次に、図10(C)に示すように、1列目L1、2段目F2のパレット50を、1列目L1の昇降装置10(図1)によって、3段目F3の空スペース8に向けて上昇させる。このパレット50の上昇は、1つのパレット50を上昇させるため、速い速度で上昇させることができる。
【0047】
次に、図10(D)に示すように、2列目L2、2段目F2のパレット50を、2列目L2と1列目L1の横行装置30(図1)によって、1列目L1の空スペース8に向けて横行させる。次に、図10(E)に示すように、2列目L2、3段目F3の所定のパレット50を、2列目L2の昇降装置10(図1)によって、2段目F2の空スペース8に向けて下降させる。次に、図10(F)に示すように、3列目L3、3段目F3のパレット50を、3列目L3と2列目L2の横行装置30(図1)によって、2列目L2、3段目F3の空スペース8に向けて左方向に横行させる。
【0048】
次に、図10(G)に示すように、3列目L3、2段目F2のパレット50を、3列目L3の昇降装置10(図1)によって、3段目F3の空スペース8に向けて上昇させる。このパレット50の上昇は、1つのパレット50を上昇させるため、速い速度で上昇させることができる。次に、図10(H)に示すように、2列目L2、2段目F2のパレット50を、2列目L2と3列目L3の横行装置30(図1)によって、3列目L3の空スペース8に向けて横行させる。次に、図10(I)に示すように、2列目L2、1段目F1のパレット50を、2列目L2の昇降装置10(図1)によって、2段目F2の空スペース8に向けて上昇させる。このパレット50の上昇は、1つのパレット50を上昇させるため、速い速度で上昇させることができる。
【0049】
次に、図10(J)に示すように、3列目L3、1段目F1のパレット50を、3列目L3と2列目L2の横行装置30(図1)によって、2列目L2の空スペース8に向けて横行させる。次に、図10(K)に示すように、3列目L3、2段目F2の所定のパレット50を、3列目L3の昇降装置10(図1)によって、1段目F1の空スペース8に向けて下降させる。このようにして、所定のパレット50を目的位置まで移動させることができる。
【0050】
したがって、上記機械式駐車設備1によれば、任意のパレット50を縦方向に配置された複数列、複数段の格納スペース7の間で上下方向と左右方向に1つずつ移動させる、いわゆるパズル動作をさせることが可能となるため、少ない移動回数で所定のパレット50を目的位置まで円滑に移動させることができる。しかも、1つのパレット50を上昇させる動作で移動方向を変更することができるので、持上げるパレット50の数を少なくすることで移動させる荷重が少なくなり、それに応じた速度でパレット50を迅速に移動させることができる。その上、パレット50を移動させる回数を少なくすることで、省エネルギを図ることが可能となる。
【0051】
また、常に1つのパレット50を移動させるように動作制御することで、昇降駆動機14の容量を小さくすることもできる。さらに、一部の横行装置30が故障した場合でも、空スペース8を増やすことで、故障した格納スペース7を使用しないようにして運転を続けることができる。さらに、各段F1~F3の任意のパレット50に係合フック15を係合させることができるので、1段目F1と2段目F2の格納高さを異ならせることが可能となる。このようにすれば、例えば、車高の高い自動車Vを格納する階と、車高の低い自動車Vを格納する階とを混在させることが可能となる。
【0052】
(総括)
以上のように、上記機械式駐車設備1によれば、任意の格納スペース7の間でパレット50の横行、昇降が可能となるため、パレット50の移動経路を種々の設置条件を満足するように柔軟に適応させることが可能となる。しかも、パレット50を自動車Vの車幅方向に横行させ、車高方向に昇降させるので、循環時間を短くできる。よって、任意のパレット50を目的位置まで最短ルートで効率良く移動させることができ、円滑性が高く、呼び時間の短縮などを図ることが可能な機械式駐車設備1を構成することが可能となる。
【0053】
また、上昇時にパレット50の持上げ枚数を選択することで、動力及び負荷に応じた速度での上昇動作が可能となり、このようにしても円滑性を向上させることが可能となる。
【0054】
(その他の変形例)
機械式駐車設備1の列数及び段数は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、3列、3段以上であれば、より効率良くパレット50を移動させることができるので、より好ましい。また、全ての列において段数が同一でない構成も可能であり、例えば、一部の列が5段で他の列が3段の構成などでもよく、列数及び段数の形態も上記した実施形態に限定されるものではない。
【0055】
また、パレット50を昇降させる索状体として、上記実施形態では2列の昇降チェーン11を各格納スペース7の四隅に配置しているが、ワイヤなどでパレット50の四隅を昇降させる構成としてもよく、索状体の構成は上記実施形態に限定されるものではない。
【0056】
さらに、上記した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲で種々の構成を変更してもよく、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 機械式駐車設備
5 枠体
6 制御装置
7 格納スペース
8 空スペース
9 昇降路
10 昇降装置
11 昇降チェーン(索状体)
14 昇降駆動機
15 係合フック(係合部)
15a フック先端部
16 フック支持ピン(回動軸)
17 フック支持板
18 バネ材(付勢部)
19 止めピン
20 ソレノイド(進出駆動部)
22 回転ローラ
30 横行装置
31 横行ユニット
32 横行ローラ
33 横行駆動機
35 ガイドレール
36 進退駆動機
40 ガイド板
41 ガイドローラ
50 パレット
51 横行レール
52 支持部材(支持部)
60 ピット
V 自動車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10