IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-自車位置検出装置 図1
  • 特許-自車位置検出装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】自車位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20221221BHJP
   G01S 19/42 20100101ALI20221221BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G01C21/28
G01S19/42
G09B29/10 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018126133
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020003458
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】財前 元希
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154131(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/008082(WO,A1)
【文献】特開2017-211193(JP,A)
【文献】特開2017-058235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0021229(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G09B 29/00 - 29/14
G01S 19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星測位システムを用いた測位を行う衛星航法部および地図情報を出力する地図情報出力部を備える車両に搭載され、前記衛星航法部の測位結果および前記地図情報に基づいて、前記車両が走行中である車線の中心線に対する前記車両の横方向の位置を示す対車線横位置を算出する自車位置検出装置であって、
前記衛星航法部の測位誤差が所定の閾値以下である期間中は、前記衛星航法部による測位結果と前記地図情報との直接的な比較結果に基づき前記対車線横位置を算出し、
前記衛星航法部の測位誤差が所定の閾値を超えている期間中は、該測位誤差が所定の閾値以下の状態で最後に算出された前記対車線横位置を基準位置とし、該基準位置に、前記衛星航法部による測位結果から求められる前記車両の相対的な横移動量を積分した結果を加算して前記対車線横位置を算出する
ことを特徴とする自車位置検出装置。
【請求項2】
前記相対的な横移動量が、異常値であると判定された場合、前記相対的な横移動量を0に置き換える
ことを特徴とする請求項1に記載の自車位置検出装置。
【請求項3】
前記相対的な横移動量が、前記車線の中心線に対する自車両のヨー角である対車線ヨー角を維持して前記基準位置から現在の位置まで前記自車両が走行するとした場合に予想される横移動量を越えている場合、前記相対的な横移動量が前記異常値であると判定される
ことを特徴とする請求項2に記載の自車位置検出装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星航法および地図情報を用いて車線に対する自車位置を検出する自車位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転支援に用いられる技術として、例えば特開2007-85909号公報に開示されているように、GNSS等の衛星航法を用いた測位技術が知られている。また、高精度な衛星航法による測位を用いれば、地図情報と測位結果との比較結果に基づき車線に対する自車位置を検出することができるため、車両の操舵支援や自動運転を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-85909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衛星航法は、信号を受信可能な衛星の数の変化により測位誤差が大きく変化する場合がある。このため、衛星航法による測位結果のみを用いて車線に対する自車位置を検出する場合には、測位誤差の変化の影響を抑制する必要がある。
【0005】
本発明は前述した問題を解決するものであり、衛星航法の測位結果に含まれる誤差の大きさが変化することに対応する自車位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の自車位置検出装置は、衛星測位システムを用いた測位を行う衛星航法部および地図情報を出力する地図情報出力部を備える車両に搭載され、前記衛星航法部の測位結果および前記地図情報に基づいて、前記車両が走行中である車線の中心線に対する前記車両の横方向の位置を示す対車線横位置を算出する自車位置検出装置であって、前記衛星航法部の測位誤差が所定の閾値以下である期間中は、前記衛星航法部による測位結果と前記地図情報との直接的な比較結果に基づき前記対車線横位置を算出し、前記衛星航法部の測位誤差が所定の閾値を超えている期間中は、該測位誤差が所定の閾値以下の状態で最後に算出された前記対車線横位置を基準位置とし、該基準位置に、前記衛星航法部による測位結果から求められる前記車両の相対的な横移動量を積分した結果を加算して前記対車線横位置を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衛星航法の測位結果に含まれる誤差の大きさが変化することに対応する自車位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】走行制御システムの構成図である。
図2】対車線横位置を算出する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0010】
図1において、符号1は、自動車等の車両の走行制御システムであり、車両の自律的な自動運転を含む走行制御を実施する。以下では、走行制御システム1が搭載される車両のことを自車両と称する。
【0011】
自車両は、運転者が運転操作を行うための操作部201を備える。操作部201は、アクセルペダル201a、ブレーキペダル201bおよびステアリングホイール201sを含む。操作部201には、自車両の手動運転と自動運転を切り替える操作を行うスイッチが含まれていてもよい。
【0012】
走行制御システム1は、走行制御装置100を中心として、状態量検出装置10、外部環境認識装置20、加減速制御装置30、操舵制御装置40、操作検出装置50、警報制御装置60、地図情報出力部70および自車位置検出装置80等が情報通信ネットワーク150を介して互いに接続されて構成されている。
【0013】
状態量検出装置10は、車速センサ、加速度センサ、角速度センサおよび舵角センサ等を備え、自車両の車速、前後方向の加速度、ヨーレート、舵角等の状態量を検出する。なお、状態量検出装置10に含まれる複数のセンサの少なくとも一部は、自車両が備える他の装置に付属するセンサを共用する形態であってもよい。例えば、状態量検出装置10に含まれる自車両のヨーレートを検出する角速度センサは、自車両が備える横滑り防止装置が備える角速度センサと共用であってもよい。
【0014】
外部環境認識装置20は、自車両の外部環境を認識するカメラやセンサ等からの情報に基づいて自車両前方の道路形状、および自車両の周囲に存在する物体の位置や形状を認識し、当該認識結果を出力する。外部環境認識装置20は、例えば自車両の前方を撮像するステレオカメラを備え、ステレオカメラにより撮像された画像に基づき、自車両が走行中である道路の車線(走行レーン)を認識し、当該車線の形状と、当該車線に対する自車両の相対的な位置および姿勢と、を検出する。
【0015】
加減速制御装置30は、運転者による操作部201の操作および後述する走行制御装置100から出力される指示に基づき、自車両が備える原動機および制動装置の動作を制御する電子制御装置である。加減速制御装置30は、自車両の加速および減速と発進および停止を制御する。言い換えれば、加減速制御装置30は、自車両の前後方向の運動を制御する。
【0016】
自車両が備える原動機は、1つまたは複数の内燃機関であってもよいし、1つまたは複数の電動モータであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。また、制動装置は、自車両の運動エネルギーを熱エネルギーに変換して制動力を発生する形態に限られず、自車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する形態のものであってもよい。
【0017】
なお、実際の加減速制御装置30は、原動機を制御する電子制御装置および制動装置を制御する電子制御装置等の複数の電子制御装置を含み、これらが情報通信ネットワーク150等を介して協調動作することにより実現されている。
【0018】
操舵制御装置40は、運転者による操作部201の操作および後述する走行制御装置100から出力される指示に基づき、自車両が備える操舵装置の動作を制御する電子制御装置である。なお、操舵装置は、舵角の変更によって自車両にヨーモーメントを付加する形態の装置に加えて、左右輪における制動力差または駆動力差の発生によって自車両にヨーモーメントを付加する形態の装置をさらに備えていてもよい。操舵制御装置40は、操舵装置の動作により発生する自車両のヨーモーメントを制御する。すなわち、操舵制御装置40は、自車両の左右方向の運動を制御する。
【0019】
操作検出装置50は、運転者による操作部201の操作を検出する。操作検出装置50は、アクセルペダル201aの操作を検出するアクセルペダルセンサ50a、ブレーキペダル201bの操作を検出するブレーキペダルセンサ50b、およびステアリングホイール201sの操作を検出するステアリングセンサ50sを含む。操作検出装置50の一部または全部の構成は、状態量検出装置10の構成を兼ねていてもよい。
【0020】
アクセルペダルセンサ50aは、例えばアクセルペダル201aの踏み込み量を検出するセンサである。また、ブレーキペダルセンサ50bは、例えばブレーキ液圧を検出するセンサである。また、ステアリングセンサ50sは、例えば、運転者がステアリングホイール201sに加えるトルクを検出する操舵トルクセンサである。
【0021】
なお、ブレーキペダルセンサ50bは、自車両のブレーキランプの点灯を制御するためのブレーキペダル201bの操作を検出するスイッチを含んでいてもよい。また、ステアリングセンサ50sは、ステアリングホイール201sに設けられたタッチセンサを含んでいてもよい。
【0022】
警報制御装置60は、運転者に向けた警報を発生する報知装置を制御する電子制御装置である。報知装置は、例えば画像や文字を表示する表示装置、光を発する発光装置、音を発するスピーカ、振動を発するアクチュエータ、またはこれらの組み合わせ、を含む。
【0023】
地図情報出力部70は、道路の形状を示す地図情報を記憶し出力する。地図情報出力部70は、予め用意された所定の国や地域内の地図情報を記憶している形態であってもよいし、自車両の外に存在するサーバに記憶されている地図情報の一部を、自車両が走行する予定の経路に応じて路車間通信や移動体通信ネットワーク等を介して受信し、これを一時的に記憶する形態であってもよい。
【0024】
地図情報出力部70が記憶する地図情報は、自車両の自動運転を行う際に必要とされる車線データを含む。車線データは、例えば車線中心の座標(緯度および経度)、車線の幅、および車線の方位角等を含む。
【0025】
自車位置検出装置80は、衛星航法を用いて自車両の現在位置情報を算出する。また、自車位置検出装置80は、算出した自車両の現在位置情報と、地図情報出力部70が記憶する地図情報とに基づいて、地図情報上における自車両の現在位置の情報を算出して出力する。自車位置検出装置80が出力する地図情報上における自車両の現在位置の情報には、自車両が走行中である車線の形状と、前記車線の中心線に対する自車両の横方向(幅方向)の位置と、前記車線の中心線に対する自車両のヨー方向の傾き(角度)と、の情報が含まれる。
【0026】
車線の中心線に対する自車両の横方向の位置は、自車両を真上から見た場合における、自車両に固定された基準点の、車線の中心線に対する横方向への離間距離と離間方向により表される。また、車線の中心線に対する自車両のヨー方向の傾きは、自車両を真上から見た場合における、前記基準点を通過し自車両の前後方向に平行な軸と、車線の中心線との間の角度により表される。
【0027】
以下では、地図情報上における車線の中心線に対する自車両の横方向の位置のことを、対車線横位置Exと称する。また、地図情報上における車線の中心線に対する自車両のヨー方向の傾きのことを対車線ヨー角Eθと称する。対車線横位置Exおよび対車線ヨー角Eθの値は、走行制御装置100による車両の操舵制御に用いられる。例えば、ExおよびEθが共にゼロであれば、自車両に固定された基準点が車線の中心線上に位置しており、かつ自車両が車線の中心軸と平行に走行していることになる。
【0028】
より詳細に、自車位置検出装置80は、衛星航法部82および自車位置推定部85を含む。また、自車位置検出装置80は、所定のプログラムを実行するプロセッサを備えたコンピュータを含む。
【0029】
衛星航法部82は、一般に、GNSS、GPS等と称される衛星測位システムを用いた測位を行い、自車両の現在位置情報を検出する。衛星測位システムは公知の技術であるため、詳細な説明は省略する。なお、衛星航法部82は、衛星から送信される信号に加えて、地上に固定された施設から送信される信号を併用して測位を行う形態であってもよい。
【0030】
また、衛星航法部82は、測位結果に含まれる誤差の見積り値を算出し、測位結果と共に出力する。以下では、測位結果に含まれる誤差の見積り値のことを、測位誤差と称する。測位誤差は、水平方向の測位誤差の情報を少なくとも含む。水平方向の測位誤差は、例えば誤差円の半径として表される。測位誤差の値は、測位信号を受信可能な衛星の数の変化や、衛星航法部82のアンテナと各衛星との位置の変化等に応じて変化する。
【0031】
自車位置推定部85は、衛星航法部82が検出した自車両の現在位置情報と地図情報出力部70が記憶する地図情報とをマッチングする。そして自車位置推定部85は、自車両の現在位置情報および地図情報に基づき、自車両が走行中である車線の形状と、対車線横位置Exおよび対車線ヨー角Eθを算出し、出力する。自車位置推定部85による、対車線横位置Exを算出する処理の詳細については後述する。
【0032】
なお、自車位置検出装置80は、自律航法を行う構成も有しているが、詳細な説明は省略する。
【0033】
走行制御装置100は、加減速制御装置30および操舵制御装置40を制御する電子制御装置であり、自車両の走行制御を行う。走行制御装置100は、状態量検出装置10、外部環境認識装置20、地図情報出力部70、自車位置検出装置80および操作検出装置50から出力される情報に基づき、加減速制御装置30および操舵制御装置40を制御する。
【0034】
走行制御装置100は、手動運転モードおよび運転支援モードを備え、これらを選択的に実行して自車両の走行制御を行う。手動運転モードは、運転者が、操作部201を用いて、自車両の加減速および操舵の一方または両方を制御する運転モードである。運転支援モードは、走行制御装置100が、自車両の加減速および操舵の制御の一部または全部を実行する運転モードである。
【0035】
運転支援モードの選択時には、走行制御装置100は、外部環境認識装置20および自車位置検出装置80により検出される車線形状の情報と、車線に対する自車両の相対的な位置および姿勢の情報と、に基づいて、自車両の走行制御を自動的に行う。
【0036】
次に、自車位置検出装置80が備える自車位置推定部85において実行される、対車線横位置算出処理について説明する。図2は、対車線横位置算出処理のフローチャートである。自車位置推定部85は、図2に示す対車線横位置算出処理を、所定の周期で繰り返し実行する。
【0037】
対車線横位置算出処理では、まずステップS10において、自車位置推定部85は、衛星航法部82を用いた測位を実行する。ステップS10の実行により、自車位置推定部85は、自車両の現在位置(緯度および経度)と進行方位を取得する。また、ステップS10では、取得した測位結果と、測位を実行した時刻を、記憶部85aに記憶する。
【0038】
次に、ステップS20において、自車位置推定部85は、衛星航法部82による測位誤差が所定の閾値以下であるか否かを判定する。
【0039】
ステップS20の判定において、衛星航法部82による測位誤差が所定の閾値以下である場合には、自車位置推定部85は、ステップS30に移行する。ステップS30では、自車位置推定部85は、ステップS10において取得した自車両の現在位置および進行方位と、地図情報出力部70が記憶している地図情報に含まれる車線データと、を直接的に比較する。そして、当該比較の結果に基づいて、対車線横位置Exおよび対車線ヨー角Eθの値を算出する。
【0040】
次に、ステップS40において、自車位置推定部85は、ステップS30で算出した対車線横位置Exおよび対車線ヨー角Eθの値と、を記憶部85aに一時記憶する。次に、ステップS50において、記憶部85aに記憶しているフラグを0とする。
【0041】
当該フラグは、記憶部85aに記憶されている最新の対車線横位置Exおよび対車線ヨー角Eθの値が、ステップS30の実行により算出されたものであるか否かを示す。フラグの値は0または1である。すなわち、フラグが0の場合は、最新の対車線横位置Exおよび対車線ヨー角Eθの値は、衛星航法部82による測位結果と地図情報との直接的な比較により算出されたものである。フラグが1の場合は、最新の対車線横位置Exおよび対車線ヨー角Eθの値は、衛星航法部82による測位結果と地図情報との直接的な比較により算出されたものではない。
【0042】
言い換えれば、フラグが0の場合は、最新の対車線横位置Exおよび対車線ヨー角Eθの値が、衛星航法部82による測位誤差が所定の閾値以下の状態で算出されたものである。また、フラグが1の場合は、最新の対車線横位置Exおよび対車線ヨー角Eθの値が、衛星航法部82による測位誤差が所定の閾値を超えている状態で算出されたものである。
【0043】
ステップS50の実行後、自車位置推定部85は、対車線横位置算出処理を終了する。
【0044】
一方、ステップS20の判定において、衛星航法部82による測位誤差が所定の閾値を超えている場合には、自車位置推定部85は、ステップS100に移行する。ステップS100では、自車位置推定部85は、記憶部85aに記憶されているフラグを参照し、フラグの値が0であるか否かを判定する。
【0045】
すなわち、ステップS100では、自車位置推定部85は、前回行われた対車線横位置算出処理が、衛星航法部82による測位誤差が所定の閾値以下の状態で実行されたか否かを判定する。
【0046】
ステップS100において、フラグの値が0であると判定した場合には、自車位置推定部85は、ステップS110に移行する。ステップS100において、フラグの値が1であると判定した場合には、自車位置推定部85は、ステップS110をスキップしてステップS120に移行する。
【0047】
ステップS110では、自車位置推定部85は、記憶部85aに記憶されている最新の対車線横位置Exを、基準位置Ex0として記憶部85aに記憶する。また、ステップS110では、自車位置推定部85は、記憶部85aに記憶されている最新の対車線ヨー角EΘを、基準ヨー角EΘ0として記憶部85aに記憶する。また、ステップS110では、自車位置推定部85は、記憶部85aに記憶されている最新の対車線横位置Exを算出するための測位を実行した時刻を、基準時刻T0として記憶部85aに記憶する。
【0048】
ステップS120において、自車位置推定部85は、衛星航法部82による最新の測位結果と前回の測位結果とを比較することにより、前回の測位から今回の測位までの期間における自車両の横方向の相対的な移動量ΔExを算出し、記憶部85aに記憶する。以下では、ΔExを相対横移動量と称する。
【0049】
次に、ステップS130において、最新の相対横移動量ΔExの値が異常値であるか否かを判定する、異常値判定処理を実行する。異常値判定処理の方法は特に限定されない。本実施形態では一例として、異常値判定処理では、最新の相対横移動量ΔExが、基準時刻T0から現在までに自車両が基準ヨー角EΘ0を維持して走行した場合に予想される横移動量を超えている場合に、異常値であると判定する。
【0050】
より具体的には、ステップS130において、以下の式が成り立つ場合に、自車位置推定部85は、最新の相対横移動量ΔExの値が異常値であると判定する。
ΔEx > sin(Eθ0+0.2)・L
ここで、Lとは、基準時刻T0から現在までの自車両の走行距離である。
【0051】
ステップS130において、最新の相対横移動量ΔExの値が異常値であると判定した場合には、自車位置推定部85は、最新の相対横移動量ΔExの値を0に置き換える。なお、ステップS130における異常値判定処理は、例えば自車両が備えるジャイロセンサの検出結果から算出される自車両の横移動量との比較に基づき行われてもよい。
【0052】
次に、ステップS140において、自車位置推定部85は、基準時刻T0から現在までの相対横移動量ΔExを積分し、当該積分結果と基準位置Ex0を加算した結果を対車線横位置Exとする。
【0053】
次に、ステップS150において、自車位置推定部85は、ステップS120で算出した相対横移動量ΔExの値を記憶部85aに一時記憶する。次に、ステップS160において、記憶部85aに記憶しているフラグを1とする。ステップS160の実行後、自車位置推定部85は、対車線横位置算出処理を終了する。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態の自車位置検出装置80は、衛星航法部82の測位誤差が所定の閾値以下である期間中は、衛星航法部82による測位結果と地図情報との直接的な比較結果に基づき対車線横位置Exを算出する。
【0055】
また、本実施形態の自車位置検出装置80は、衛星航法部80の測位誤差が所定の閾値を超えている期間中は、衛星航法部80による測位結果から求められる自車両の相対的な横移動量ΔExを積分した結果に基づき対車線横位置Exを算出する。
【0056】
一般に、衛星航法において信号を受信する衛星の数が変化した場合、測位誤差が大きくなり、かつ測位結果が一方向にシフトする測位誤差が発生しやすい。このような場合において、本実施形態の自車位置検出装置80は、対車線横位置Exの算出に測位結果と地図情報との直接的な比較結果を用いることを停止する。このため、本実施形態の自車位置検出装置80によれば、衛星航法部82による測位誤差が大きくなった場合において、自車位置検出装置80が算出する対車線横位置Exが、実際の自車両の位置から大きく乖離してしまうことを防止することができる。
【0057】
また本実施形態の自車位置検出装置80は、衛星航法部82による測位誤差が大きくなった場合において、測位誤差の変動が発生した後における衛星航法部82よる連続した測位結果から算出される自車両の相対的な横移動量を積分することにより、対車線横位置Exを算出する。衛星航法において信号を受信する衛星の数が変化した場合、前述のように測位結果の一方向へのシフトが発生するが、その後の測位結果の変動幅は比較的小さい範囲内に留まる場合が多い。このため、本実施形態の自車位置検出装置80によれば、衛星航法部82による測位誤差が大きくなった後においても、実際の自車両の挙動を対車線横位置Exの値に比較的正確に反映させることができる。
【0058】
以上に説明したように、本実施形態の自車位置検出装置80は、衛星航法の測位結果に含まれる誤差の大きさが変化したとしても、対車線横位置Exの値を高精度に算出することができる。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の走行制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 走行制御システム、
10 状態量検出装置、
20 外部環境認識装置、
30 加減速制御装置、
40 操舵制御装置、
50 操作検出装置、
50a アクセルペダルセンサ、
50b ブレーキペダルセンサ、
50s ステアリングセンサ、
60 警報制御装置、
70 地図情報出力部、
80 自車位置検出装置、
82 衛星航法部、
85 自車位置推定部、
85a 記憶部、
100 走行制御装置、
150 情報通信ネットワーク、
201 操作部、
201a アクセルペダル、
201b ブレーキペダル、
201s ステアリングホイール。
図1
図2