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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
A61B17/29
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018159339
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020031774
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】戸次 翔太
(72)【発明者】
【氏名】臼木 優
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 健二
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0217457(US,A1)
【文献】特開平07-064191(JP,A)
【文献】特表2012-504016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/29
A61B 34/30 - A61B 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、
基部と、
処置具と、
近位端が前記基部に配置され、遠位端に前記処置具が配置された細長いシャフトと、
前記基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、前記処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、
前記被駆動部材は、
前記回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、
一端近傍に溝部を有し、他端に前記貫通孔よりも大きい頭部を有しており、前記複数の回転部材の前記貫通孔に前記一端側から挿入されるシャフト部材と、
前記シャフト部材の前記溝部に係合し、前記複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え
前記シャフト部材の前記一端は、直線状の辺を有する形状を有する、手術器具。
【請求項2】
前記複数の回転部材は、隣接する前記回転部材同士が対向する面に凹凸が形成されており、各々の対向する前記面同士が係合するように構成されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記被駆動部材は、前記止め輪の前記他端側に隣接して設けられ、前記止め輪と共に、前記複数の回転部材を固定するための座金を備える、請求項1または2に記載の手術器具。
【請求項4】
前記基部を覆うように設けられたカバー部を備え、
前記カバー部は、緊急時に前記被駆動部材の前記シャフト部材の前記一端を操作して前記処置具を操作するための緊急時操作用開口部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の手術器具。
【請求項5】
前記シャフト部材の前記一端は、6角柱形状を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の手術器具。
【請求項6】
ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、
基部と、
処置具と、
近位端が前記基部に配置され、遠位端に前記処置具が配置された細長いシャフトと、
前記基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、前記処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、
前記被駆動部材は、
前記回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、
一端近傍に溝部を有し、他端に前記貫通孔よりも大きい頭部を有しており、前記複数の回転部材の前記貫通孔に前記一端側から挿入されるシャフト部材と、
前記シャフト部材の前記溝部に係合し、前記複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え、
前記被駆動部材は、第1の被駆動部材と第2の被駆動部材とを含み、
前記シャフト部材の前記一端は、前記第1の被駆動部材と前記第2の被駆動部材とにおいて互いに異なる形状を有する、手術器具。
【請求項7】
ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、
基部と、
処置具と、
近位端が前記基部に配置され、遠位端に前記処置具が配置された細長いシャフトと、
前記基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、前記処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、
前記被駆動部材は、
前記回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、
一端近傍に溝部を有し、他端に前記貫通孔よりも大きい頭部を有しており、前記複数の回転部材の前記貫通孔に前記一端側から挿入されるシャフト部材と、
前記シャフト部材の前記溝部に係合し、前記複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え、
前記被駆動部材は、第1の被駆動部材と第2の被駆動部材とを含み、
前記シャフト部材の前記頭部は、前記第1の被駆動部材と前記第2の被駆動部材とにおいて互いに異なる長さを有する、手術器具。
【請求項8】
前記第1の被駆動部材の前記シャフト部材は、前記シャフト部材の前記頭部が前記貫通孔から突出しない長さを有し、
前記第2の被駆動部材の前記シャフト部材は、前記シャフト部材の前記頭部が前記貫通孔から突出する長さを有する、請求項7に記載の手術器具。
【請求項9】
ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、
基部と、
処置具と、
近位端が前記基部に配置され、遠位端に前記処置具が配置された細長いシャフトと、
前記基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、前記処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、
前記被駆動部材は、
前記回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、
一端近傍に溝部を有し、他端に前記貫通孔よりも大きい頭部を有しており、前記複数の回転部材の前記貫通孔に前記一端側から挿入されるシャフト部材と、
前記シャフト部材の前記溝部に係合し、前記複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え、
前記被駆動部材の前記基部の貫通孔内に設けられる部分の第1の長さは、前記第1の長さと、前記被駆動部材の前記基部の表面に突出している部分の第2の長さとの合計の長さの1/4以上である、手術器具。
【請求項10】
前記第1の長さは、前記合計の長さの1/3以上である、請求項9に記載の手術器具。
【請求項11】
前記第1の長さは、前記合計の長さの略1/2である、請求項10に記載の手術器具。
【請求項12】
ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、
基部と、
前記基部を覆うように設けられたカバー部と、
処置具と、
近位端が前記基部に配置され、遠位端に前記処置具が配置された細長いシャフトと、
前記基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、前記処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、
前記被駆動部材は、
前記回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、
一端近傍に溝部を有し、他端に前記貫通孔よりも大きい頭部を有しており、前記複数の回転部材の前記貫通孔に前記一端側から挿入されるシャフト部材と、
前記シャフト部材の前記溝部に係合し、前記複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え、
前記カバー部は、緊急時に前記被駆動部材を操作して前記処置具を操作するための緊急時操作用開口部を含む、手術器具。
【請求項13】
前記緊急時操作用開口部は、前記カバー部において、前記被駆動部材の前記シャフト部材の前記一端に対向するように設けられている、請求項12に記載の手術器具。
【請求項14】
前記カバー部は、前記緊急時操作用開口部から前記被駆動部材の前記シャフト部材の前記一端近傍まで延びる筒状部を含む、請求項13に記載の手術器具。
【請求項15】
ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、
基部と、
処置具と、
近位端が前記基部に配置され、遠位端に前記処置具が配置された細長いシャフトと、
前記基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、前記処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、
前記被駆動部材は、
前記回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、
一端近傍に溝部を有し、他端に前記貫通孔よりも大きい頭部を有しており、前記複数の回転部材の前記貫通孔に前記一端側から挿入されるシャフト部材と、
前記シャフト部材の前記溝部に係合し、前記複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え、
前記基部は、貫通孔を有しており、前記複数の回転部材は、前記基部の貫通孔内に回転可能に設けられる第1の回転部材と、前記基部の貫通孔の外部に設けられる第2および第3の回転部材を含む、手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手術器具に関し、特に、ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、手術を支援するためのロボット手術システムが知られている。このようなロボット手術システムは、一般的に、ロボットアームを含む患者側装置と、患者側装置を遠隔操作するための遠隔操作装置とを備える。患者側装置のロボットアームには、内視鏡や、たとえば鉗子を含む手術器具が取り付けられている。医師は、内視鏡による手術患者の画像を確認しつつ、遠隔操作装置を操作して、患者側装置のロボットアームにより患者に対して内視鏡手術を行う。ロボット手術システムでは、手術時に患者の皮膚を切開した傷口を小さくすることができるので、患者への負担を抑えた低侵襲手術を行うことができる。
【0004】
上記特許文献1には、このようなロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される外科用器具(手術器具)が開示されている。この外科用器具は、たとえば鉗子であるエンドエフェクタと、エンドエフェクタを操作するためのケーブルが巻かれるキャプスタンとを備える。エンドエフェクタは、細長いシャフトの遠位端に配置されており、キャプスタンは、シャフトの近位端側に配置されている。また、シャフトは、ケーブルを挿通可能に中空に形成されている。キャプスタンには、シャフト内を挿通されたケーブルが巻かれている。この外科用器具は、キャプスタンを回転させてケーブルを動かすことによって、シャフトの遠位端に配置されたエンドエフェクタを動かす操作が可能なように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第8151661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記特許文献1に記載されたキャプスタンは、一端が手術器具の基体に支持されており、他端が基体上に設けられた支持部材によって支持されている。医療現場からは上記特許文献1に記載された手術ロボット用の外科用器具の小型化が要望されており、キャプスタンを支持する構造を小型化する必要がある。また、キャプスタンは、回転軸方向に隣接する複数の回転部材に分割されるように構成され、上部と下部のそれぞれにケーブルが巻かれるように構成されている場合がある。この場合、キャプスタンの複数の回転部材同士を互いに固定する構造を含めて小型化の検討を行う必要がある。また、患者に対する手術に用いた手術器具は、洗浄、滅菌を行って繰返し使用されるため、超音波洗浄する際に、緩みが生じないようにする必要がある。キャプスタンの複数の回転部材同士を互いに固定するためにねじを用いる場合、超音波洗浄する際に、緩みが生じるという問題点や、ねじにより固定する部分を設ける必要がある分、キャプスタンが大型化するため、手術器具が大型化するという問題点もある。
【0007】
この発明は、超音波洗浄時の緩みを抑制することが可能で、かつ、小型化することが可能な手術器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の局面による手術器具は、ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、基部と、処置具と、近位端が基部に配置され、遠位端に処置具が配置された細長いシャフトと、基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、被駆動部材は、回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、一端近傍に溝部を有し、他端に貫通孔よりも大きい頭部を有しており、複数の回転部材の貫通孔に一端側から挿入されるシャフト部材と、シャフト部材の溝部に係合し、複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え、シャフト部材の一端は、直線状の辺を有する形状を有する。
この発明の第2の局面による手術器具は、ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、基部と、処置具と、近位端が基部に配置され、遠位端に処置具が配置された細長いシャフトと、基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、被駆動部材は、回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、一端近傍に溝部を有し、他端に貫通孔よりも大きい頭部を有しており、複数の回転部材の貫通孔に一端側から挿入されるシャフト部材と、シャフト部材の溝部に係合し、複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え、被駆動部材は、第1の被駆動部材と第2の被駆動部材とを含み、シャフト部材の一端は、第1の被駆動部材と第2の被駆動部材とにおいて互いに異なる形状を有する。
この発明の第3の局面による手術器具は、ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、基部と、処置具と、近位端が基部に配置され、遠位端に処置具が配置された細長いシャフトと、基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、被駆動部材は、回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、一端近傍に溝部を有し、他端に貫通孔よりも大きい頭部を有しており、複数の回転部材の貫通孔に一端側から挿入されるシャフト部材と、シャフト部材の溝部に係合し、複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え、被駆動部材は、第1の被駆動部材と第2の被駆動部材とを含み、シャフト部材の頭部は、第1の被駆動部材と第2の被駆動部材とにおいて互いに異なる長さを有する。
この発明の第4の局面による手術器具は、ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、基部と、処置具と、近位端が基部に配置され、遠位端に処置具が配置された細長いシャフトと、基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、被駆動部材は、回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、一端近傍に溝部を有し、他端に貫通孔よりも大きい頭部を有しており、複数の回転部材の貫通孔に一端側から挿入されるシャフト部材と、シャフト部材の溝部に係合し、複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え、被駆動部材の基部の貫通孔内に設けられる部分の第1の長さは、第1の長さと、被駆動部材の基部の表面に突出している部分の第2の長さとの合計の長さの1/4以上である。
この発明の第5の局面による手術器具は、ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、基部と、基部を覆うように設けられたカバー部と、処置具と、近位端が基部に配置され、遠位端に処置具が配置された細長いシャフトと、基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、被駆動部材は、回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、一端近傍に溝部を有し、他端に貫通孔よりも大きい頭部を有しており、複数の回転部材の貫通孔に一端側から挿入されるシャフト部材と、シャフト部材の溝部に係合し、複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え、カバー部は、緊急時に被駆動部材を操作して処置具を操作するための緊急時操作用開口部を含む。
この発明の第6の局面による手術器具は、ロボット手術システムのロボットアームに取り外し可能に接続される手術器具であって、基部と、処置具と、近位端が基部に配置され、遠位端に処置具が配置された細長いシャフトと、基部に対して回転軸を中心に回転可能に設けられ、処置具を操作するための細長要素が巻かれる被駆動部材と、を備え、被駆動部材は、回転軸を中心に回転し、貫通孔を有する複数の回転部材と、一端近傍に溝部を有し、他端に貫通孔よりも大きい頭部を有しており、複数の回転部材の貫通孔に一端側から挿入されるシャフト部材と、シャフト部材の溝部に係合し、複数の回転部材を固定するための止め輪と、を備え、基部は、貫通孔を有しており、複数の回転部材は、基部の貫通孔内に回転可能に設けられる第1の回転部材と、基部の貫通孔の外部に設けられる第2および第3の回転部材を含む。
【0009】
この発明の第1~第6の局面による手術器具では、上記のように構成することによって、被駆動部材の複数の回転部材同士を止め輪により互いに固定することができるので、被駆動部材の複数の回転部材同士をねじにより互いに固定する場合と異なり、超音波洗浄時の緩みを抑制することができる。また、被駆動部材の複数の回転部材同士を互いに固定するためにねじを用いる必要がないので、被駆動部材の複数の回転部材同士をねじにより互いに固定する場合に比べて、ねじにより固定する部分を設ける必要がない分、被駆動部材を小型化することができる。これにより、手術器具を小型化することができる。これらの結果、超音波洗浄時の緩みを抑制することが可能で、かつ、小型化することが可能な手術器具を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、超音波洗浄時の緩みを抑制することが可能で、かつ、小型化することが可能な手術器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態によるロボット手術システムの概略を示した図である。
図2】一実施形態によるロボット手術システムの制御的な構成を示したブロック図である。
図3】一実施形態によるロボットアームにアダプタを介して手術器具が取り付けられた状態を示した斜視図である。
図4】一実施形態によるロボットアームからアダプタおよび手術器具を取り外した状態を示した斜視図である。
図5】一実施形態によるアダプタおよび手術器具をZ2方向側から見た斜視図である。
図6】一実施形態による手術器具の基体からカバー部を取り外した状態を示した斜視図である。
図7】一実施形態による手術器具の基体からカバー部を取り外した状態をZ1方向側から見た図である。
図8】一実施形態による手術器具の処置具を示した斜視図である。
図9】一実施形態による手術器具の被駆動部材を示した断面図である。
図10】一実施形態による手術器具の被駆動部材を示した分解斜視図である。
図11】一実施形態による手術器具の基体にカバー部を取り付けた状態をZ1方向側から見た図である。
図12】一実施形態による手術器具の基体のカバー部の緊急時操作用開口部の近傍を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(ロボット手術システムの構成)
図1および図2を参照して、一実施形態によるロボット手術システム100の構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、ロボット手術システム100は、遠隔操作装置10と、患者側装置20と、を備えている。遠隔操作装置10は、患者側装置20に設けられた医療器具(medical equipment)を遠隔操作するために設けられている。患者側装置20によって実行されるべき動作態様指令が術者(surgeon)である操作者Oにより遠隔操作装置10に入力されると、遠隔操作装置10は、動作態様指令をコントローラ26を介して患者側装置20に送信する。そして、患者側装置20は、遠隔操作装置10から送信された動作態様指令に応答して、ロボットアーム21に取り付けられた手術器具(surgical instrument)40、内視鏡50等の医療器具を操作する。これにより、低侵襲手術が行われる。
【0015】
患者側装置20は、患者Pに対して手術を行うインターフェースを構成する。患者側装置20は、患者Pが横たわる手術台30の傍らに配置される。患者側装置20は、複数のロボットアーム21を有し、このうち1つのロボットアーム21(21b)に内視鏡50が取り付けられ、その他のロボットアーム21(21a)に手術器具40が取り付けられる。各ロボットアーム21は、プラットホーム23に共通に支持されている。複数のロボットアーム21は複数の関節を有し、それぞれの関節には、サーボモータを含む駆動部と、エンコーダ等の位置検出器とが設けられている。ロボットアーム21は、コントローラ26を介して与えられた駆動信号によりロボットアーム21に取り付けられた医療器具が所望の動作を行うように制御されるように構成されている。
【0016】
プラットホーム23は、手術室の床の上に載置されたポジショナ22に支持されている。ポジショナ22は、鉛直方向に調整可能な昇降軸を有する柱部24が、車輪を備え床面を移動可能なベース25に連結されている。
【0017】
ロボットアーム21aには、先端部に医療器具としての手術器具40が着脱可能に取り付けられる。手術器具40は、ロボットアーム21aに取り付けられる基体43(図4参照)と、細長形状のシャフト42(図4参照)と、シャフト42の先端部に設けられた処置具41(エンドエフェクタ)(図4参照)とを備えている。処置具41として、例えば、把持鉗子、シザーズ、フック、高周波ナイフ、スネアワイヤ、クランプ、ステイプラーが挙げられるがこれに限られるものではなく、各種の処置具を適用することができる。患者側装置20を用いた手術において、ロボットアーム21aは、患者Pの体表に留置したカニューラ(トロッカ)を介して患者Pの体内に手術器具40を導入する。そして、手術器具40の処置具41は、手術部位の近傍に配置される。
【0018】
ロボットアーム21bには、先端部に医療器具としての内視鏡50が着脱可能に取り付けられる。内視鏡50は、患者Pの体腔内を撮影するものであり、撮影した画像は、遠隔操作装置10に対して出力される。内視鏡50として、3次元画像を撮影することができる3D内視鏡若しくは2D内視鏡が用いられる。患者側装置20を用いた手術において、ロボットアーム21bは、患者Pに体表に留置したトロッカを介して患者Pの体内に内視鏡50を導入する。そして、内視鏡50が手術部位の近傍に配置される。
【0019】
遠隔操作装置10は、操作者Oとのインターフェースを構成する。遠隔操作装置10は、ロボットアーム21に取り付けられた医療器具を操作者Oが操作するための装置である。すなわち、遠隔操作装置10は、操作者Oによって入力された手術器具40および内視鏡50によって実行されるべき動作態様指令をコントローラ26を介して患者側装置20へ送信可能に構成されている。遠隔操作装置10は、たとえば、マスタの操作をしながらも患者Pの様子がよく見えるように手術台30の傍らに設置される。なお、遠隔操作装置10は、例えば動作態様指令を無線で送信するようにし、手術台30が設置された手術室とは別室に設置することも可能である。
【0020】
手術器具40によって実行されるべき動作態様とは、手術器具40の動作(一連の位置及び姿勢)及び手術器具40個別の機能によって実現される動作の態様である。たとえば、手術器具40が把持鉗子である場合には、手術器具40によって実行されるべき動作態様とは、処置具41の手首のロール回転位置及びピッチ回転位置と、ジョーの開閉を行う動作である。また、手術器具40が高周波ナイフである場合には、手術器具40によって実行されるべき動作態様とは、高周波ナイフの振動動作、具体的には高周波ナイフに対する電流の供給であり得る。また、手術器具40がスネアワイヤである場合には、手術器具40によって実行されるべき動作態様とは、束縛動作および束縛状態の解放動作であり得る。また、バイポーラやモノポーラに電流を供給することによって手術対象部位を焼き切る動作であり得る。
【0021】
内視鏡50によって実行されるべき動作態様とは、たとえば、内視鏡50先端の位置及び姿勢、又はズーム倍率の設定である。
【0022】
遠隔操作装置10は、図1および図2に示すように、操作ハンドル11と、操作ペダル部12と、表示部13と、制御装置14と、を備えている。
【0023】
操作ハンドル11は、ロボットアーム21に取り付けられた医療器具を遠隔で操作するために設けられている。具体的には、操作ハンドル11は、医療器具(手術器具40、内視鏡50)を操作するための操作者Oによる操作を受け付ける。操作ハンドル11は、水平方向に沿って2つ設けられている。つまり、2つの操作ハンドル11のうち一方の操作ハンドル11は、操作者Oの右手により操作され、2つの操作ハンドル11のうち他方の操作ハンドル11は、操作者Oの左手により操作される。
【0024】
また、操作ハンドル11は、遠隔操作装置10の後方側から、前方側に向かって延びるように配置されている。操作ハンドル11は、所定の3次元の操作領域内で動かすことができるように構成されている。すなわち、操作ハンドル11は、上下方向、左右方向、および前後方向に動かすことができるように構成されている。
【0025】
遠隔操作装置10と患者側装置20とは、ロボットアーム21aおよびロボットアーム21bの動作の制御においては、マスタスレーブ型のシステムを構成する。すなわち、操作ハンドル11は、マスタスレーブ型のシステムにおけるマスタ側の操作部を構成し、医療器具が取り付けられたロボットアーム21aおよびロボットアーム21bはスレーブ側の動作部を構成する。そして、操作ハンドル11を操作者Oが操作すると、操作ハンドル11の動きをロボットアーム21aの先端部(手術器具40の処置具41)またはロボットアーム21bの先端部(内視鏡50)がトレースして移動するようにロボットアーム21aまたはロボットアーム21bの動作が制御される。
【0026】
また、患者側装置20は、設定された動作倍率に応じてロボットアーム21aの動作を制御するよう構成されている。たとえば、動作倍率が1/2倍に設定されている場合、手術器具40の処置具41は、操作ハンドル11の移動距離の1/2の移動距離を移動するよう制御される。これによって、精細な手術を精確に行うことができる。
【0027】
操作ペダル部12は、医療器具に関する機能を実行するための複数のペダルを含んでいる。複数のペダルは、凝固ペダルと、切断ペダルと、カメラペダルと、クラッチペダルと、を含んでいる。また、複数のペダルは、操作者Oの足により操作される。
【0028】
凝固ペダルは、手術器具40を用いて手術部位を凝固させる操作を行うことができる。具体的には、凝固ペダルは、操作されることにより、手術器具40に凝固用の電圧が印加されて、手術部位の凝固が行われる。切断ペダルは、手術器具40を用いて手術部位を切断させる操作を行うことができる。具体的には、切断ペダルは、操作されることにより、手術器具40に切断用の電圧が印加されて、手術部位の切断が行われる。
【0029】
カメラペダルは、体腔内を撮像する内視鏡50の位置及び姿勢を操作するために用いられる。具体的には、カメラペダルは、内視鏡50の操作ハンドル11による操作を有効にする。つまり、カメラペダルが押されている間は、操作ハンドル11により内視鏡50の位置および姿勢を操作することが可能である。たとえば、内視鏡50は、左右の操作ハンドル11の両方を用いることにより操作される。具体的には、左右の操作ハンドル11の中間点を中心に左右の操作ハンドル11を回動させることにより、内視鏡50が回動される。また、左右の操作ハンドル11を共に押し込むことにより、内視鏡50が奥に進む。また、左右の操作ハンドル11を共に引っ張ることにより、内視鏡50が手前に戻る。また、左右の操作ハンドル11を共に上下左右に移動させることにより、内視鏡50が上下左右に移動する。
【0030】
クラッチペダルは、ロボットアーム21と、操作ハンドル11との操作接続を一時切断し手術器具40の動作を停止させる場合に用いられる。具体的には、クラッチペダルが操作されている間は、操作ハンドル11を操作しても、患者側装置20のロボットアーム21が動作しない。たとえば、操作により操作ハンドル11が移動可能な範囲の端部近傍に来た場合に、クラッチペダルが操作されることにより、操作接続を一時切断して、操作ハンドル11を中央位置付近に戻すことができる。そして、クラッチペダルの操作を中止するとロボットアーム21と操作ハンドル11とが再び接続され、中央付近で操作ハンドル11の操作を再開することができる。
【0031】
表示部13は、内視鏡50が撮像した画像を表示することができるものである。表示部13は、スコープ型表示部または非スコープ型表示部からなる。スコープ型表示部とは、たとえば、覗き込むタイプの表示部である。また、非スコープ型表示部とは、通常のパーソナルコンピュータのディスプレイのような覗き込むタイプではない平坦な画面を有する開放型の表示部を含む概念である。
【0032】
スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置20のロボットアーム21bに取り付けられた内視鏡50により撮像された3D画像が表示される。非スコープ型表示部が取り付けられた場合にも、患者側装置20に設けられた内視鏡50により撮像された3D画像が表示される。なお、非スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置20に設けられた内視鏡50により撮像された2D画像が表示されてもよい。
【0033】
図2に示すように、制御装置14は、例えば、CPU等の演算器を有する制御部141と、ROMおよびRAM等のメモリを有する記憶部142と、画像制御部143とを含んでいる。制御装置14は、集中制御する単独の制御装置により構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御装置により構成されてもよい。制御部141は、操作ハンドル11により入力された動作態様指令を、操作ペダル部12の切替状態に応じて、ロボットアーム21aによって実行されるべき動作態様指令であるか、または、内視鏡50によって実行されるべき動作態様指令であるかを判定する。そして、制御部141は、操作ハンドル11に入力された動作態様指令が手術器具40によって実行されるべき動作態様指令であると判断すると、動作態様指令をロボットアーム21aに対して送信する。これによって、ロボットアーム21aが駆動され、この駆動によってロボットアーム21aに取り付けられた手術器具40の動作が制御される。
【0034】
また、制御部141は、操作ハンドル11に入力された動作態様指令が内視鏡50によって実行されるべき動作態様指令であると判定すると、当該動作態様指令をロボットアーム21bに対して送信する。これによって、ロボットアーム21bが駆動され、この駆動によってロボットアーム21bに取り付けられた内視鏡50の動作が制御される。
【0035】
記憶部142には例えば手術器具40の種類に応じた制御プログラムが記憶されていて、取り付けられた手術器具40の種類に応じて制御部141がこれらの制御プログラムを読み出すことにより、遠隔操作装置10の操作ハンドル11及び/又は操作ペダル部12の動作指令が個別の手術器具40に適合した動作をさせることができる。
【0036】
画像制御部143は、内視鏡50が取得した画像を表示部13に伝送する。画像制御部143は、必要に応じて画像の加工修正処理を行う。
【0037】
(手術器具、アダプタ、ドレープおよびロボットアームの構成)
図3図12を参照して、一実施形態による手術器具40、アダプタ60、ドレープ70およびロボットアーム21の構成について説明する。
【0038】
〈取り付け状態〉
図3図5に示すように、手術器具40は、ロボットアーム21にアダプタ60を介して取り外し可能に接続される。アダプタ60は、ロボットアーム21を覆うための滅菌処理されたドレープ70をロボットアーム21との間に挟み込むためのドレープアダプタである。手術器具40は、Z2方向側に配置された基体43の取付面40aがアダプタ60に取り付けられる。また、アダプタ60は、Z1方向側に配置された取付面60aに手術器具40が取り付けられる。また、アダプタ60は、Z2方向側に配置された取付面60bがロボットアーム21に取り付けられる。また、ロボットアーム21は、Z1方向側に配置された取付面211にアダプタ60が取り付けられる。
【0039】
ロボットアーム21は、清潔区域において使用されるため、ドレープ70により覆われる。ここで、手術室では、手術により切開した部分および医療機器が病原菌や異物などにより汚染されることを防ぐため、清潔操作が行われる。この清潔操作においては、清潔区域および清潔区域以外の区域である汚染区域が設定される。手術部位は、清潔区域に配置される。操作者Oを含む手術チームのメンバーは、手術中、清潔区域に殺菌されている物体のみが位置するよう配慮し、かつ、汚染区域に位置している物体を清潔区域に移動させるときは、この物体に滅菌処理を施す。同様に、操作者Oを含む手術チームのメンバーがその手を汚染区域に位置させたときは、清潔区域に位置している物体に直接接触する前に、手の滅菌処理を行う。清潔区域において用いられる器具は、滅菌処理が行われる、または、滅菌処理されたドレープ70により覆われる。
【0040】
ドレープ70は、ロボットアーム21を覆う本体部71と、ロボットアーム21とアダプタ60との間に挟み込まれる取付部72とを備えている。本体部71は、フィルム状に形成された可撓性フィルム部材により構成されている。可撓性フィルム部材は、熱可塑性ポリウレタンやポリエチレンなどの樹脂材料からなる。本体部71には、ロボットアーム21とアダプタ60とが互いに係合可能なように、開口部が設けられている。本体部71の開口部には、開口部を塞ぐように取付部72が設けられている。取付部72は、樹脂成形部材により構成されている。樹脂成形部材は、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料からなる。取付部72は、本体部71に比べて硬く(撓みにくく)形成されている。取付部72は、ロボットアーム21とアダプタ60とが互いに係合可能なように、開口部が設けられている。取付部72の開口部は、ロボットアーム21とアダプタ60との係合する部分ごとに対応するように設けられていてもよい。また、取付部72の開口部は、ロボットアーム21とアダプタ60との複数の係合する部分に対応するように設けられていてもよい。
【0041】
〈処置具の駆動に関する構成〉
図5図7に示すように、手術器具40は、基体43に対してZ方向に延びる回転軸を中心に回転可能に設けられた複数(4つ)の被駆動部材44を備えている。複数の被駆動部材44は、処置具41を操作(駆動)するためのワイヤW(図7参照)が巻かれる複数(3つ)の被駆動部材441a~cと、処置具41を操作(駆動)するためのギア部442aを有する1つの被駆動部材442とを含んでいる。なお、被駆動部材441a~cの詳細な構成は、後述する。また、ワイヤWは、特許請求の範囲の「細長要素」の一例である。
【0042】
ワイヤWは、ワイヤWの中央の折り返し部である遠位端側(Y1方向側)が処置具41の可動部に固定されており、中空のシャフト42内をY方向に延びるように通って、2本の近位端側(Y2方向側)が被駆動部材441a(441b、441c)に巻かれている。なお、シャフト42は、近位端42aが基体43に配置され、遠位端42bに処置具41が配置されている。具体的には、ワイヤWは、略U字状の折り曲げ形状を有しており、遠位端側の部分である折り返し部分に設けられた留め具(図示せず)が処置具41に固定されるように構成されている。また、ワイヤWは、近位端側の部分である2つの端部がそれぞれ被駆動部材441a(441b、441c)に巻かれている。被駆動部材441a~cの回転に応じてワイヤWが駆動されるとともに、ワイヤWの駆動に応じて処置具41が操作される。ワイヤWは、ステンレス鋼やタングステンなどの金属材料からなる。また、ワイヤWは、処置具41の種類に応じた数のワイヤを含んでいる。たとえば、ワイヤWは、処置具41の一対のジョー41aおよび41b(図8参照)の開閉操作を行うためのワイヤW1(W1a,W1b)およびW2(W2a,W2b)と、処置具41の手首部41c(図8参照)の回転操作を行うためのワイヤW3(W3a,W3b)とを含んでいる。
【0043】
たとえば、図7および図8に示すように、被駆動部材441aには、プーリ45aを介してワイヤW1aおよびW1bが巻かれている。この場合、被駆動部材441aは、回転軸を中心に回転することにより、処置具41の一対のジョー41aおよび41bのうちのジョー41aを操作する。具体的には、被駆動部材441aは、C1方向(図7参照)に回転することにより、ジョー41aをジョー41aが開く方向であるC1a方向(図8参照)に駆動する。また、被駆動部材441aは、C1方向とは反対方向であるC2方向(図7参照)に回転することにより、ジョー41aをジョー41aが閉じる方向であるC2a方向(図8参照)に駆動する。
【0044】
また、たとえば、被駆動部材441bには、プーリ45bを介してワイヤW2aおよびW2bが巻かれている。この場合、被駆動部材441bは、回転軸を中心に回転することにより、処置具41の一対のジョー41aおよび41bのうちのジョー41bを操作する。具体的には、被駆動部材441bは、C3方向(図7参照)に回転することにより、ジョー41bをジョー41bが開く方向であるC3a方向(図8参照)に駆動する。また、被駆動部材441bは、C3方向とは反対方向であるC4方向(図7参照)に回転することにより、ジョー41bをジョー41bが閉じる方向であるC4a方向(図8参照)に駆動する。
【0045】
また、たとえば、被駆動部材441cには、プーリ45cを介してワイヤW3aおよびW3bが巻かれている。この場合、被駆動部材441cは、回転軸を中心に回転することにより、処置具41の手首部41cを操作する。具体的には、被駆動部材441cは、C5方向(図7参照)に回転することにより、手首部41cをC5a方向(図8参照)に駆動する。また、被駆動部材441cは、C5方向とは反対方向であるC6方向(図7参照)に回転することにより、手首部41cをC5a方向とは反対方向であるC6a方向(図8参照)に駆動する。
【0046】
ギア部442aを有する被駆動部材442は、シャフト42の近位端42aに接続されたギア部45とギア部442aが係合した状態で、回転軸を中心に回転することにより、シャフト42を操作して、処置具41を操作する。具体的には、被駆動部材442は、C7方向(図7参照)に回転することにより、シャフト42をC7a方向(図8参照)に駆動して、処置具41をC7a方向に駆動する。また、被駆動部材442は、C8方向(図7参照)に回転することにより、シャフト42をC7a方向とは反対方向であるC8a方向(図8参照)に駆動して、処置具41をC8a方向に駆動する。
【0047】
図4および図5に示すように、ロボットアーム21は、手術器具40の処置具41を駆動するための駆動力を発生させ、手術器具40にアダプタ60を介して伝達する。具体的には、ロボットアーム21は、手術器具40の複数(4つ)の被駆動部材44に対応するように設けられた複数(4つ)の駆動部材212を備えている。駆動部材212は、モータを含み駆動部材212を駆動するアクチュエータ212aと、アクチュエータ212aによりZ方向に延びる回転軸を中心に回転される係合凸部212bとを含んでいる。係合凸部212bは、駆動部材212のZ1方向側の表面からアダプタ60側(Z1方向側)に向かって突出しており、アダプタ60の後述する駆動伝達部材61の係合凹部611に対応するように設けられている。
【0048】
アダプタ60は、手術器具40の複数(4つ)の被駆動部材44に対応するように設けられ、Z方向に延びる回転軸を中心に回転可能な複数(4つ)の駆動伝達部材61を備えている。駆動伝達部材61は、ロボットアーム21の係合凸部212bと係合する係合凹部611(図5参照)を含んでいる。係合凹部611は、駆動伝達部材61のロボットアーム21側(Z2方向側)に、駆動伝達部材61のZ2方向側の表面からロボットアーム21側とは反対側(Z1方向側)に向かって窪むように形成されている。また、駆動伝達部材61は、手術器具40の被駆動部材44の後述する係合凸部44aと係合する係合凹部612(図4参照)を含んでいる。係合凹部612は、駆動伝達部材61の手術器具40側(Z1方向側)に、駆動伝達部材61のZ1方向側の表面から手術器具40側とは反対側(Z2方向側)に向かって窪むように形成されている。
【0049】
手術器具40の被駆動部材44は、駆動伝達部材61の係合凹部612と係合する係合凸部44aを含んでいる。係合凸部44aは、被駆動部材44のZ2方向側の表面からアダプタ60側(Z2方向側)に向かって突出するように設けられている。ロボットアーム21の駆動部材212がアダプタ60の駆動伝達部材61に係合し、アダプタ60の駆動伝達部材61が手術器具40の被駆動部材44に係合した状態で、アダプタ60の駆動伝達部材61は、ロボットアーム21のアクチュエータ212aによる駆動力を手術器具40の被駆動部材44に伝達する。
【0050】
なお、係合凹部612は、Y1方向側の駆動伝達部材61と、Y2方向側の駆動伝達部材61とにおいて、互いに異なる形状を有する。また、係合凹部612と係合する係合凸部44aも、係合凹部612に対応するように、Y1方向側の被駆動部材44とY2方向側の被駆動部材44とにおいて、互いに異なる形状を有する。これにより、手術器具40の基体43をY1方向にスライドさせつつアダプタ60に取り付ける際、Y1方向側の被駆動部材44の係合凸部44aと、Y2方向側の駆動伝達部材61の係合凹部612とが係合して引っ掛かることを抑制可能である。その結果、手術器具40をアダプタ60に容易に取り付け可能である。
【0051】
〈手術器具の被駆動部材の構成〉
図6図7図9および図10を参照して、手術器具40の被駆動部材441a~cの構成について説明する。なお、被駆動部材441a~cは、略同様の構成を有しているため、以下では、被駆動部材441aの構成を例に説明する。
【0052】
図9および図10に示すように、被駆動部材441aは、Z方向に延びる回転軸を中心に回転する複数(3つ)の回転部材443、444および445を備えている。言い換えると、被駆動部材441aは、複数の回転部材443、444および445に回転軸方向(Z方向)に分割された構造を有している。回転部材443、444および445は、Z2方向側からZ1方向側に向かって、この順に組み付けられている。回転部材443、444および445は、金属製である。なお、回転部材443、444および445は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1の回転部材」、「第2の回転部材」および「第3の回転部材」の一例である。
【0053】
回転部材443は、アダプタ60の駆動伝達部材61と係合する係合凸部44aを有し、アダプタ60を介したロボットアーム21からの駆動力を受けるロータ部である。回転部材443は、Z方向に延びる筒状の筒部443aと、筒部443aのZ2方向側の端部に設けられたフランジ状の被伝達部443bとを含んでいる。筒部443aの上端部および下端部には、それぞれ、回転部材443を回転可能に保持するベアリング部45dおよび45eが設けられている。被駆動部材441aは、ベアリング部45dおよび45eを介して、基体43に取り付けられている。被伝達部443bには、係合凸部44aが設けられている。
【0054】
回転部材444は、略U字状に折り曲げられたワイヤW1の一方側のW1bが巻かれるロータプーリ部である。回転部材444は、Z方向に延びるとともにワイヤW1bが巻き止められる筒状のプーリ筒部444aと、プーリ筒部444aのZ2方向側の端部に設けられたフランジ状のプーリフランジ部444bとを含んでいる。プーリ筒部444aの外周面には、ワイヤW1bを螺旋状に巻きつけるための螺旋状の凹凸が形成されている。
【0055】
回転部材445は、略U字状に折り曲げられたワイヤWの他方側のW1aが巻かれるロータプーリ部である。なお、回転部材444および445は、同一の部材であり、Z方向に互いに逆向きに取り付けられる。これにより、手術器具40を構成する部材の種類を削減することができるので、製造性を向上可能である。回転部材445は、Z方向に延びるとともにワイヤW1aが巻き止められる筒状のプーリ筒部445aと、プーリ筒部445aのZ1方向側の端部に設けられたフランジ状のプーリフランジ部445bとを含んでいる。プーリ筒部445aの外周面には、ワイヤW1aを螺旋状に巻きつけるための螺旋状の凹凸が形成されている。
【0056】
また、回転部材443、444および445は、隣接する回転部材同士が回転軸方向(Z方向)に対向する面に凹凸(後述するフェースギア部)が形成されており、各々の対向する面同士が係合するように構成されている。これにより、隣接する回転部材同士をねじなどの部材により固定する必要がないので、隣接する回転部材同士をねじなどの部材により固定する場合に比べて、部品点数を削減することができるとともに、被駆動部材441aを小型化することができる。
【0057】
回転部材443の筒部443aのZ1方向側の端面には、フェースギア部443cが設けられている。回転部材444のプーリフランジ部444bのZ2方向側の端面には、フェースギア部443cと係合するフェースギア部444cが設けられている。また、回転部材444のプーリ筒部444aのZ1方向側の端面には、フェースギア部444dが設けられている。また、プーリ筒部444a表面の螺旋状の凹凸の下端にはワイヤW1bの端部を固定する固定部444fが設けられている。回転部材445のプーリ筒部445aのZ2方向側の端面には、フェースギア部444dと係合するフェースギア部445cが設けられている。また、回転部材445のプーリフランジ部445bのZ1方向側の端面には、組み付け時に用いる治具と係合するフェースギア部445dが設けられている。また、プーリ筒部445a表面の螺旋状の凹凸の上端にはワイヤW1aの端部を固定する固定部445fが設けられている。回転部材443、444および445は、各々の回転軸方向(Z方向)に対向するフェースギア部同士が係合することにより、回転方向に互いに固定されている。このため、回転部材443、444および445は、一体的に回転する。
【0058】
また、回転部材443、444および445は、それぞれ、Z方向に延びる貫通孔443d、444eおよび445eを有している。回転部材443、444および445が互いに組み付けられた状態で、貫通孔443d、444eおよび445eは、Z方向に直線状に並んで単一の貫通孔を形成する。貫通孔443d、444eおよび445eには、後述する金属製のシャフト部材446が挿入されている。貫通孔443dのZ1方向側の部分である第1部分443da、貫通孔444eおよび貫通孔445eは、Z方向から見て略円形状に形成されており、略同一の径(大きさ)を有している。貫通孔443dのZ2方向側の部分である第2部分443dbは、第1部分443daよりも大きく膨らんでおり、シャフト部材446の後述する頭部446dを挿入可能なように、シャフト部材446の頭部446dに対応する形状を有している。
【0059】
また、被駆動部材441aは、Z方向に延びるシャフト部材446を備えている。シャフト部材446は、回転部材443、444および445の貫通孔443d、444eおよび445eに、一端446a側(Z1方向側)から(一端446aを先頭として)挿入されるように構成されている。具体的には、シャフト部材446は、本体部446bと、他端446cに設けられ本体部446bよりも大きく膨らんだ頭部446dとを含んでいる。本体部446bは、略円柱形状を有し、貫通孔443dの第1部分443da、貫通孔444eおよび貫通孔445eに挿入されている。また、本体部446bは、シャフト部材446の一端446aが貫通孔445eからZ1方向側に突出して露出するように構成されている。頭部446dは、貫通孔443dの第1部分443da、貫通孔444eおよび貫通孔445eよりも大きく、貫通孔443dの第2部分443dbに挿入されている。頭部446dは、回転軸方向(Z方向)から見て横長形状(角丸長方形状)の柱形状を有し、貫通孔445eの第2部分443dbに係合している。このため、シャフト部材446と回転部材443、444および445とは、一体的に回転する。
【0060】
また、シャフト部材446は、一端446aの近傍に溝部446eを有している。溝部446eは、本体部446bの貫通孔445eから突出して露出した部分に設けられている。具体的には、溝部446eは、本体部446bの貫通孔445eから突出して露出した部分のうちの貫通孔445e側(Z2方向側)の部分に設けられている。また、溝部446eは、本体部446bの外周面に沿って、径方向の内側に窪むように設けられている。
【0061】
ここで、本実施形態では、図6図7および図9に示すように、被駆動部材441aは、シャフト部材446の溝部446eに係合し、回転部材443、444および445を回転軸方向(Z方向)に固定するための止め輪447を備えている。これにより、被駆動部材441aの複数の回転部材443、444および445同士を止め輪447により互いに固定することができるので、被駆動部材441aの複数の回転部材443、444および445同士をねじにより互いに固定する場合と異なり、超音波洗浄時の緩みを抑制することができる。また、被駆動部材441aの複数の回転部材443、444および445同士を互いに固定するためにねじを用いる必要がないので、被駆動部材441aの複数の回転部材443、444および445同士をねじにより互いに固定する場合に比べて、ねじにより固定する部分を設ける必要がない分、被駆動部材441aを小型化することができる。これにより、手術器具40を小型化することができる。
【0062】
止め輪447は、Z1方向側の回転部材445のZ1方向側に隣接するように設けられている。止め輪447は、溝部446eに係合した状態で、Z1方向側の回転部材445をZ2方向側に押さえるように設けられている。また、止め輪447が溝部446eに係合した状態で、シャフト部材446の頭部446dは、Z2方向側の回転部材443をZ1方向側に押さえるように設けられている。つまり、止め輪447およびシャフト部材446の頭部446dは、回転部材443、444および445を回転軸方向に挟み込むことにより、回転部材443、444および445を回転軸方向に固定するように設けられている。また、止め輪447は、扁平な形状を有し、回転軸方向(Z方向)と略直交する方向から溝部446eに挿入されて係合されている。止め輪447は、たとえば、E形止め輪である。また、止め輪447は、C形止め輪であってもよい。止め輪447は、金属製である。
【0063】
また、本実施形態では、被駆動部材441aは、止め輪447のシャフト部材446の他端446c側(回転部材445側、Z2方向側)に隣接して設けられた座金448を備えている。座金448は、止め輪447と共に、回転部材443、444および445を回転軸方向(Z方向)に固定するために設けられている。これにより、座金448により止め輪447と回転部材445との間の隙間を埋めることができるので、止め輪447と回転部材445との間の隙間に起因して、回転部材443、444および445にがたつきが生じることを抑制することができる。
【0064】
座金448は、円環形状を有し、シャフト部材446の一端446a側に挿入されている。座金448は、シャフト部材446に挿入された状態で、回転部材445のZ1方向側の端面上(フェースギア部445d上)に配置されている。座金448は、止め輪447と回転部材445との間に挟み込まれるように設けられている。また、座金448は、止め輪447と回転部材445との間の隙間を埋めるように設けられている。また、座金448は、回転軸方向(Z方向)から見て、止め輪447の全体と重なるように設けられている。また、座金448は、金属製である。なお、回転部材443、444および445にがたつきが生じることをより抑制するために、座金448に加えて、シムなどのスペーサ(図示せず)を止め輪447と回転部材445との間にさらに設けてもよい。
【0065】
また、詳細な説明は省略するが、ギア部442aを有する被駆動部材442は、概略的には、被駆動部材441aの回転部材444および445の代わりにギア部442aを設けた構成である。つまり、被駆動部材442も、被駆動部材441a~cと同様に、回転部材443と、シャフト部材446と、止め輪447と、座金448とを備えている。
【0066】
また、本実施形態では、図6および図7に示すように、シャフト部材446の一端446aは、Y2方向側の被駆動部材44(441a、441b)とY1方向側の被駆動部材44(441c、442)とにおいて互いに異なる形状を有している。これにより、Y2方向側の被駆動部材44に用いるシャフト部材446と、Y1方向側の被駆動部材44に用いるシャフト部材446とを容易に識別することができるので、組み付け作業時にシャフト部材446の組み付けミスが生じることを抑制することができる。なお、被駆動部材441aおよび441bは、特許請求の範囲の「第1の被駆動部材」の一例である。また、被駆動部材441cは、特許請求の範囲の「第2の被駆動部材」の一例である。
【0067】
Y1方向側の被駆動部材44(441c、442)のシャフト部材446の一端446aは、互いに同じ形状を有している。具体的には、Y1方向側の被駆動部材44(441c、442)のシャフト部材446の一端446aは、略円柱形状を有している。また、Y2方向側の被駆動部材44(441a、441b)のシャフト部材446の一端446aは、互いに同じ形状を有している。具体的には、Y2方向側の被駆動部材44(441a、441b)のシャフト部材446の一端446aは、直線状の辺を有する形状を有している。これにより、シャフト部材446の一端446aを工具T(図12参照)により回転操作しやすい形状にすることができる。
【0068】
より具体的には、Y2方向側の被駆動部材44(441a、441b)のシャフト部材446の一端446aは、6角柱形状を有している。これにより、シャフト部材446の一端446aをより工具Tにより回転操作しやすい形状にすることができる。Y2方向側の被駆動部材44(441a、441b)は、工具Tによりシャフト部材446の一端446aを保持して回転させることにより、ユーザが手動で回転可能に構成されている。なお、工具Tは、たとえばソケットレンチであり、先端部にシャフト部材446の一端446aに対応する形状の係合部T1を有している。
【0069】
また、本実施形態では、図5に示すように、シャフト部材446の頭部446dは、Y2方向側の被駆動部材44(441a、441b)とY1方向側の被駆動部材44(441c、442)とにおいて互いに異なる長さを有している。これによっても、Y2方向側の被駆動部材44に用いるシャフト部材446と、Y1方向側の被駆動部材44に用いるシャフト部材446とを容易に識別することができるので、組み付け作業時にシャフト部材446の組み付けミスが生じることを抑制することができる。具体的には、シャフト部材446の頭部446dの長さは、Y2方向側の被駆動部材44(441a、441b)よりもY1方向側の被駆動部材44(441c、442)の方が大きい。
【0070】
より具体的には、Y2方向側の被駆動部材44(441a、441b)のシャフト部材446は、シャフト部材446の頭部446dが回転部材443の貫通孔443dから突出しない長さを有し、Y1方向側の被駆動部材44(441c、442)のシャフト部材446は、シャフト部材446の頭部446dが回転部材443の貫通孔443dから突出する長さを有している。これにより、Y2方向側の被駆動部材44に用いるシャフト部材446と、Y1方向側の被駆動部材44に用いるシャフト部材446との形状を明確に異ならせることができる。また、Y2方向側の被駆動部材44(441a、441b)のシャフト部材446の頭部446dは、駆動力を伝達されるために係合する係合凸部44aの一部を構成しない一方、Y1方向側の被駆動部材44(441c、442)のシャフト部材446の頭部446dは、駆動力を伝達されるために係合する係合凸部44aの一部を構成している。これにより、シャフト部材446を利用して、Y1方向側の被駆動部材44とY2方向側の被駆動部材44とにおいて、係合凸部44aの形状を容易に異ならせることができるので、Y1方向側の被駆動部材44とY2方向側の被駆動部材44とにおいて、係合凸部44aの形状を異ならせる場合にも、構造が複雑化することを抑制可能である。
【0071】
また、図9に示すように、被駆動部材441aは、基体43の樹脂製の基部431に設けられたZ方向に基部431を貫通する貫通孔431aに設けられている。具体的には、被駆動部材441aは、ベアリング部45dおよび45eを介して、基体43の基部431の貫通孔431aに取り付けられている。また、被駆動部材441aのロータ部である回転部材443は、基体43の基部431の貫通孔431a内に回転可能に設けられており、被駆動部材441aのロータプーリ部である回転部材444および445は、基体43の基部431の貫通孔431aの外部に設けられている。回転部材444および445は、基体43の基部431のZ1方向側の表面に突出している(貫通孔431aからZ1方向側に突出している)。
【0072】
本実施形態では、被駆動部材441aの基体43の基部431の貫通孔431a内に設けられる部分の回転軸方向(Z方向)の長さL1は、長さL1と、被駆動部材441aの基体43の基部431のZ1方向側の表面に突出している部分の回転軸方向の長さL2との合計の長さLの1/4以上である。これにより、被駆動部材441aの基体43の基部431の貫通孔431a内に設けられる部分の長さL1を長く形成することができる。言い換えると、被駆動部材441aの基体43の基部431への取付部分の長さを長く形成することができるので、基体43の基部431に取り付けた被駆動部材441aに傾きやがたつきが生じることを抑制することができる。好ましくは、長さL1は、合計の長さLの1/3以上である。これにより、基体43の基部431に取り付けた被駆動部材441aに傾きやがたつきが生じることをより抑制することができる。より好ましくは、長さL1は、合計の長さの略1/2である。これにより、基体43の基部431に取り付けた被駆動部材441aに傾きやがたつきが生じることをより一層抑制することができる。なお、長さL1およびL2は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1の長さ」および「第2の長さ」の一例である。
【0073】
長さL1は、たとえば、回転軸方向(Z方向)における、Z1方向側のベアリング部45dの上端部からZ2方向側のベアリング部45eの下端部までの長さである。つまり、長さL1は、回転軸方向における、回転部材443の筒部443aの上端部から下端部までの長さと略同じ長さである。また、長さL2は、たとえば、回転部材445の上端部から回転部材444の下端部までの長さである。
【0074】
また、図4図5および図11に示すように、基体43は、基部431を覆うように設けられた樹脂製のカバー部432を含んでいる。カバー部432は、基体43内が外部に露出しないように、Z1方向側から基部431を覆うように設けられている。つまり、カバー部432は、基部431に設けられた複数の被駆動部材44などの基体43内の部材をZ1方向側から覆うように設けられている。また、本実施形態では、カバー部432は、緊急時に被駆動部材441bを操作して処置具41を操作するための単一の緊急時操作用開口部432aを含んでいる。これにより、ユーザは、緊急時操作用開口部432aを介して、緊急時に被駆動部材441bを手動で操作して、処置具41を操作することができる。なお、図3および図4では、緊急時操作用開口部432aの図示を省略している。
【0075】
緊急時操作用開口部432aは、処置具41の開閉操作を行うための被駆動部材441bに対応するように設けられている。つまり、処置具41の開閉操作を行うための被駆動部材441bは、ユーザが工具T(図12参照)を用いてシャフト部材446の一端446aを手動で回転させることにより、緊急時に処置具41の開閉操作を行うことが可能なように構成されている。なお、緊急時操作用開口部432aは、被駆動部材441aに対応するように設けられていてもよい。
【0076】
図11および図12に示すように、緊急時操作用開口部432aは、カバー部432の天面部432bに設けられている。緊急時操作用開口部432aは、カバー部432の天面部432bにおいて、被駆動部材441bのシャフト部材446の一端446aにZ方向に対向するように設けられている。これにより、ユーザは、緊急時操作用開口部432aを介して、被駆動部材441bのシャフト部材446の一端446aを操作することができるので、緊急時には、被駆動部材441bのシャフト部材446の一端446aを工具Tにより保持して、被駆動部材441bを回転させることができる。緊急時操作用開口部432aは、Z方向に見て、略円形状を有しており、シャフト部材446の一端446aよりも大きい径(大きさ)を有している。また、緊急時操作用開口部432aは、シャフト部材446の一端446aを操作(回転)するための工具Tを挿入可能な径(大きさ)を有している。緊急時操作用開口部432aは、工具Tにより操作可能なように、シャフト部材446の一端446aをZ1方向側に露出させている。
【0077】
また、本実施形態では、カバー部432は、緊急時操作用開口部432aから被駆動部材441bのシャフト部材446の一端446aの近傍までZ2方向に延びる筒状部432cを含んでいる。これにより、筒状部432cにより緊急時操作用開口部432aとカバー部432内とを仕切ることができるので、緊急時操作用開口部432aを設けた場合にも、カバー部432内に異物が侵入することを効果的に抑制することができる。筒状部432cは、略円筒形状を有し、緊急時操作用開口部432aと連続するように設けられている。また、筒状部432cは、緊急時操作用開口部432aの縁部に沿って設けられている。筒状部432cは、緊急時操作用開口部432aの縁部から、被駆動部材441bのシャフト部材446の一端446aを取り囲む位置まで、Z2方向に延びるように設けられている。
【0078】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0079】
たとえば、上記実施形態では、手術器具に、細長要素が巻かれる被駆動部材が3つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、手術器具に、細長要素が巻かれる被駆動部材が1つだけ設けられていてもよいし、細長要素が巻かれる被駆動部材が3つ以外の複数設けられていてもよい。細長要素が巻かれる被駆動部材の数は、処置具の可動部の数に応じた数であればよい。
【0080】
また、上記実施形態では、被駆動部材が、3つの回転部材を備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被駆動部材が、3つ以外の複数の回転部材を備えていてもよい。
【0081】
また、上記第実施形態では、回転部材同士を回転方向に互いに固定するために、回転部材の隣接する回転部材同士が対向する面に、凹凸としてのフェースギア部が形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回転部材同士を回転方向に互いに固定可能であれば、回転部材の隣接する回転部材同士が対向する面に、フェースギア部以外の凹凸が形成されていてもよい。また、凹凸以外の構成により、回転部材同士を回転方向に互いに固定してもよい。たとえば、ねじなどの固定用の部材を用いて、隣接する回転部材同士を回転方向に固定してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、被駆動部材が、複数の回転部材を固定するための座金を備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被駆動部材が、複数の回転部材を固定するための座金を必ずしも備えていなくてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、シャフト部材の一端が、6角柱形状を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シャフト部材の一端が、6角柱形状以外の角柱形状を有していてもよい。また、シャフト部材の一端が、角柱形状以外の形状を有していてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、シャフト部材の一端が、Y2方向側の被駆動部材(第1の被駆動部材)とY1方向側の被駆動部材(第2の被駆動部材)とにおいて互いに異なる形状を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シャフト部材の一端が、第1の被駆動部材と第2の被駆動部材とにおいて互いに同じ形状を有していてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、シャフト部材の頭部が、Y2方向側の被駆動部材(第1の被駆動部材)とY1方向側の被駆動部材(第2の被駆動部材)とにおいて互いに異なる長さを有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シャフト部材の頭部が、第1の被駆動部材と第2の被駆動部材とにおいて互いに同じ長さを有していてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、被駆動部材の基体の貫通孔内に設けられる部分の長さL1が、長さL1と、被駆動部材の基体の表面に突出している部分の長さL2との合計の長さの1/4以上である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被駆動部材の基体の貫通孔内に設けられる部分の長さL1が、長さL1と、被駆動部材の基体の表面に突出している部分の長さL2との合計の長さの1/4未満であってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、カバー部が、単一の緊急時操作用開口部を含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、カバー部が、複数の緊急時操作用開口部を含んでいてもよい。たとえば、カバー部が、被駆動部材441aおよび441bに対応するように、2つの緊急時操作用開口部を含んでいてもよい。また、カバー部が、緊急時操作用開口部を必ずしも含んでいなくてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、カバー部が、緊急時操作用開口部から被駆動部材のシャフト部材の一端近傍まで延びる筒状部を含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、カバー部が、緊急時操作用開口部から被駆動部材のシャフト部材の一端近傍まで延びる筒状部を必ずしも含んでいなくてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、アダプタとドレープとが、互いに独立して設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アダプタとドレープとが、一体的に設けられてもよい。つまり、アダプタは、ドレープが一体化されたアダプタであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
21:ロボットアーム、40:手術器具、41:処置具、42:シャフト、42a:近位端、42b:遠位端、43:基体、44:被駆動部材、100:ロボット手術システム、441a、441b:被駆動部材(第1の被駆動部材)、441c:被駆動部材(第2の被駆動部材)、431a:貫通孔、432:カバー部、432a:緊急時操作用開口部、432c:筒状部、443:回転部材(第1の回転部材)、444:回転部材(第2の回転部材)、445:回転部材(第3の回転部材)、443d、444e、445e:貫通孔、446:シャフト部材、446a:一端、446c:他端、446d:頭部、446e:溝部、447:止め輪、448:座金、L:合計の長さ、L1:長さ(第1の長さ)、L2:長さ(第2の長さ)、W、W1、W2、W3:ワイヤ(細長要素)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12