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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】基材処理装置および検出方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 26/02 20060101AFI20221221BHJP
   B65H 23/032 20060101ALI20221221BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B65H26/02
B65H23/032
B41J11/42
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018176424
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020045233
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 充宏
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0046033(US,A1)
【文献】特開2018-016412(JP,A)
【文献】特開2017-167130(JP,A)
【文献】特開2017-065869(JP,A)
【文献】特開2000-055619(JP,A)
【文献】特開2014-095631(JP,A)
【文献】特開平04-027570(JP,A)
【文献】特開2016-055570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 26/00
B65H 23/00
B41J 11/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の基材を所定の搬送経路に沿って長手方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送経路上の上流側検出位置において、基材のエッジの幅方向の位置を連続的または断続的に検出することにより、上流側検出結果を取得する上流側検出部と、
前記搬送経路上の前記上流側検出位置よりも下流側の下流側検出位置において、基材のエッジの幅方向の位置を連続的または断続的に検出することにより、下流側検出結果を取得する下流側検出部と、
前記上流側検出結果に含まれるデータ区間である上流側データ区間ごとに、前記下流側検出結果に含まれるデータ区間である複数の下流側データ区間のうち、一致性の高い前記下流側データ区間を特定し、特定した結果に基づいて、基材の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を算出するずれ量算出部と、
を備え、
前記ずれ量算出部は、前記上流側検出結果から取り出した所定の周波数帯の信号と、前記下流側検出結果から取り出した前記所定の周波数帯の信号とを比較した結果を用いて、前記上流側データ区間ごとに、一致性の高い前記下流側データ区間を特定し、
前記所定の周波数帯の信号は、基材の少なくとも一部の組成物の形状に相当する周波数帯の信号を含む、基材処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基材処理装置であって、
基材は紙であり、
前記所定の周波数帯の信号は、基材の前記組成物であるセルロースファイバの長さまたは幅に相当する周波数帯の信号を含む、基材処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基材処理装置であって、
前記所定の周波数帯の信号は、基材のエッジの形状に相当する周波数帯の信号を含む、基材処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の基材処理装置であって、
前記ずれ量算出部は、前記上流側検出結果に含まれるデータ区間に対応する前記下流側検出結果のデータ区間を推定し、推定された前記データ区間の近傍において、前記上流側検出結果の前記データ区間と一致性の高い前記下流側検出結果のデータ区間を特定する、基材処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の基材処理装置であって、
前記ずれ量算出部は、前記上流側データ区間に含まれ、かつ、前記上流側データ区間よりも短い区間である上流側サブデータ区間と、前記下流側データ区間に含まれ、かつ、前記下流側データ区間よりも短い区間である下流側サブデータ区間との間の一致性を算出する、基材処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の基材処理装置であって、
前記ずれ量算出部は、さらに、前記上流側データ区間との一致性が高いとして特定された前記下流側データ区間と前記上流側データ区間との間の一致性と、前記複数の下流側データ区間のうち前記特定された下流側データ区間を除く少なくとも1つの下流側データ区間と前記上流側データ区間との間の一致性とを比較する、基材処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の基材処理装置であって、
前記上流側検出部および前記下流側検出部から得られる信号に基づいて、基材の幅方向の位置のずれ量を検出する機能をさらに有する、基材処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の基材処理装置であって、
前記搬送経路上の処理位置において、基材を処理する処理部
をさらに備え、
前記処理部は、基材の表面にインクを吐出して画像を記録する画像記録部である、基材処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基材処理装置であって、
前記処理部は、前記上流側検出位置と前記下流側検出位置との間において、基材の表面にインクを吐出する、基材処理装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の基材処理装置であって、
前記画像記録部は、前記搬送方向に沿って配列された複数の記録ヘッドを有し、
前記複数の記録ヘッドは、互いに異なる色のインクを吐出する、基材処理装置。
【請求項11】
長尺帯状の基材を所定の搬送経路に沿って長手方向に搬送しつつ、基材の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を検出する検出方法であって、
a)前記搬送経路上の上流側検出位置において、基材のエッジの幅方向の位置を連続的または断続的に検出することにより、上流側検出結果を取得する工程と、
b)前記搬送経路上の前記上流側検出位置よりも下流側の下流側検出位置において、基材のエッジの幅方向の位置を連続的または断続的に検出することにより、下流側検出結果を取得する工程と、
c)前記上流側検出結果に含まれるデータ区間である上流側データ区間ごとに、前記下流側検出結果に含まれるデータ区間である複数の下流側データ区間のうち、一致性の高い前記下流側データ区間を特定し、特定した結果に基づいて、基材の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を算出する工程と、
を有し、
前記工程c)では、前記上流側検出結果から取り出した所定の周波数帯の信号と、前記下流側検出結果から取り出した前記所定の周波数帯の信号とを比較した結果を用いて、前記上流側データ区間ごとに、一致性の高い前記下流側データ区間を特定し、
前記所定の周波数帯の信号は、基材の少なくとも一部の組成物の形状に相当する周波数帯の信号を含む、検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺帯状の基材を搬送しつつ処理する基材処理装置において、基材の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺帯状の印刷用紙を長手方向に搬送しつつ、複数の記録ヘッドからインクを吐出することにより、印刷用紙に画像を記録するインクジェット方式の画像記録装置が知られている。画像記録装置は、複数のヘッドから、それぞれ異なる色のインクを吐出する。そして、各色のインクにより形成される単色画像の重ね合わせによって、印刷用紙の表面に多色画像を記録する。従来の画像記録装置については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-55570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の画像記録装置は、複数のローラにより、印刷用紙を一定の速度で搬送するように設計される。しかしながら、ローラの表面と印刷用紙との間のスリップや、インクによる印刷用紙の伸びによって、記録ヘッドの下方における印刷用紙の搬送速度が、理想的な搬送速度からずれる場合がある。そうすると、印刷用紙の表面における各色のインクの吐出位置が搬送方向にずれる、いわゆる見当ずれが生じる。
【0005】
このような見当ずれを抑制するために、従来、印刷用紙の表面には、レジスターマーク等の基準画像が形成される。画像記録装置は、基準画像の位置を検出し、その検出結果に基づいて、各記録ヘッドからのインクの吐出位置を補正する。しかしながら、基準画像は、印刷用紙の搬送方向に所定の間隔で形成される。このため、基準画像に基づいて、印刷用紙の位置ずれを連続的に検知することは困難であった。また、印刷用紙の表面に基準画像を形成すると、目的とする印刷画像を記録するためのスペースが狭くなるという問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、長尺帯状の基材を長手方向に搬送しつつ処理する基材処理装置において、基材の表面に形成されたレジスターマーク等の画像に依存することなく、基材の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を高精度に検出できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、長尺帯状の基材を所定の搬送経路に沿って長手方向に搬送する搬送機構と、前記搬送経路上の上流側検出位置において、基材のエッジの幅方向の位置を連続的または断続的に検出することにより、上流側検出結果を取得する上流側検出部と、前記搬送経路上の前記上流側検出位置よりも下流側の下流側検出位置において、基材のエッジの幅方向の位置を連続的または断続的に検出することにより、下流側検出結果を取得する下流側検出部と、前記上流側検出結果に含まれるデータ区間である上流側データ区間ごとに、前記下流側検出結果に含まれるデータ区間である複数の下流側データ区間のうち、一致性の高い前記下流側データ区間を特定し、特定した結果に基づいて、基材の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を算出するずれ量算出部と、を備え、前記ずれ量算出部は、前記上流側検出結果から取り出した所定の周波数帯の信号と、前記下流側検出結果から取り出した前記所定の周波数帯の信号とを比較した結果を用いて、前記上流側データ区間ごとに、一致性の高い前記下流側データ区間を特定し、前記所定の周波数帯の信号は、基材の少なくとも一部の組成物の形状に相当する周波数帯の信号を含む
【0009】
本願の第発明は、第発明の基材処理装置であって、基材は紙であり、前記所定の周波数帯の信号は、基材の前記組成物であるセルロースファイバの長さまたは幅に相当する周波数帯の信号を含む。
【0010】
本願の第発明は、第1発明または第2発明の基材処理装置であって、前記所定の周波数帯の信号は、基材のエッジの形状に相当する周波数帯の信号を含む。
【0015】
本願の第発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の基材処理装置であって、前記ずれ量算出部は、前記上流側検出結果に含まれるデータ区間に対応する前記下流側検出結果のデータ区間を推定し、推定された前記データ区間の近傍において、前記上流側検出結果の前記データ区間と一致性の高い前記下流側検出結果のデータ区間を特定する。
【0016】
本願の第発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の基材処理装置であって、前記ずれ量算出部は、前記上流側データ区間に含まれ、かつ、前記上流側データ区間よりも短い区間である上流側サブデータ区間と、前記下流側データ区間に含まれ、かつ、前記下流側データ区間よりも短い区間である下流側サブデータ区間との間の一致性を算出する。
【0017】
本願の第発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の基材処理装置であって、前記ずれ量算出部は、さらに、前記上流側データ区間との一致性が高いとして特定された前記下流側データ区間と前記上流側データ区間との間の一致性と、前記複数の下流側データ区間のうち前記特定された下流側データ区間を除く少なくとも1つの下流側データ区間と前記上流側データ区間との間の一致性とを比較する。
【0018】
本願の第発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の基材処理装置であって、前記上流側検出部および前記下流側検出部から得られる信号に基づいて、基材の幅方向の位置のずれ量を検出する機能をさらに有する。
【0019】
本願の第発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の基材処理装置であって、前記搬送経路上の処理位置において、基材を処理する処理部をさらに備え、前記処理部は、基材の表面にインクを吐出して画像を記録する画像記録部である。
【0020】
本願の第発明は、第発明の基材処理装置であって、前記処理部は、前記上流側検出位置と前記下流側検出位置との間において、基材の表面にインクを吐出する。
【0021】
本願の第10発明は、第発明または第発明の基材処理装置であって、前記画像記録部は、前記搬送方向に沿って配列された複数の記録ヘッドを有し、前記複数の記録ヘッドは、互いに異なる色のインクを吐出する。
【0022】
本願の第11発明は、長尺帯状の基材を所定の搬送経路に沿って長手方向に搬送しつつ、基材の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を検出する検出方法であって、a)前記搬送経路上の上流側検出位置において、基材のエッジの幅方向の位置を連続的または断続的に検出することにより、上流側検出結果を取得する工程と、b)前記搬送経路上の前記上流側検出位置よりも下流側の下流側検出位置において、基材のエッジの幅方向の位置を連続的または断続的に検出することにより、下流側検出結果を取得する工程と、c)前記上流側検出結果に含まれるデータ区間である上流側データ区間ごとに、前記下流側検出結果に含まれるデータ区間である複数の下流側データ区間のうち、一致性の高い前記下流側データ区間を特定し、特定した結果に基づいて、基材の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を算出する工程と、を有し、前記工程c)では、前記上流側検出結果から取り出した所定の周波数帯の信号と、前記下流側検出結果から取り出した前記所定の周波数帯の信号とを比較した結果を用いて、前記上流側データ区間ごとに、一致性の高い前記下流側データ区間を特定し、前記所定の周波数帯の信号は、基材の少なくとも一部の組成物の形状に相当する周波数帯の信号を含む
【発明の効果】
【0025】
本願の第1発明~第13発明によれば、上流側データ区間と一致性の高い下流側データ区間を、高精度に特定できる。これにより、基材の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を高精度に検出できる。また、ずれ量算出部における演算量を抑制できるため、コスト削減に繋がる。
【0026】
特に、本願の第発明~第発明によれば、上流側検出結果から取り出した基材の形状に相当する周波数帯の信号と、下流側検出結果から取り出した基材の形状に相当する周波数帯の信号とを比較した結果を用いて、上流側データ区間ごとに、一致性の高い下流側データ区間を特定する。これにより、基材の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を高精度に検出できる。
【0029】
特に、本願の第発明によれば、上流側検出結果および下流側検出結果において、印刷用紙の同一のエッジを検出した箇所をより詳細に特定できる。これにより、印刷用紙の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量をより高精度に検出できる。
【0030】
特に、本願の第発明によれば、上流側検出結果および下流側検出結果において、印刷用紙の同一のエッジを検出した箇所が正しく特定されたか否かを再確認することができる。この結果、印刷用紙の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量をより正確に検出できる。
【0031】
特に、本願の第発明によれば、インクの吐出により基材の搬送方向の長さが伸びることによって生じる搬送方向の位置ずれ量を検出できる。
【0032】
特に、本願の第10発明によれば、各記録ヘッドにより形成される単色画像の相互の位置ずれを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1実施形態に係る画像記録装置の構成を示した図である。
図2】第1実施形態に係る画像記録部付近における画像記録装置の部分上面図である。
図3】第1実施形態に係るエッジセンサの構造を模式的に示した図である。
図4】第1実施形態に係る制御部内の機能を、概念的に示したブロック図である。
図5A】第1実施形態に係る上流側検出結果の例を示したグラフである。
図5B】第1実施形態に係る下流側検出結果の例を示したグラフである。
図6A】第1実施形態に係る上流側検出結果に含まれる低周波数帯の信号の例を示したグラフである。
図6B】第1実施形態に係る上流側検出結果に含まれる高周波数帯の信号の例を示したグラフである。
図6C】第1実施形態に係る上流側検出結果に含まれる所定の周波数帯の信号の例を示したグラフである。
図7】第1実施形態に係る下流側検出結果に含まれる所定の周波数帯の信号の例を示したグラフである。
図8】第1実施形態に係る上流側検出結果に含まれる所定の周波数帯の信号および下流側検出結果に含まれる所定の周波数帯の信号の例を重ね合わせたグラフである。
図9】第2実施形態に係るエッジセンサの構造を模式的に示した図である。
図10】第3実施形態に係る画像記録部付近における画像記録装置の部分上面図である。
図11】変形例に係る画像記録部付近における画像記録装置の部分上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
<1.第1実施形態>
<1-1.画像記録装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る基材処理装置の一例となる画像記録装置1の構成を示した図である。この画像記録装置1は、長尺帯状の基材である印刷用紙9を搬送しつつ、複数の記録ヘッド21~24から印刷用紙9へ向けてインクを吐出することにより、印刷用紙9に画像を記録するインクジェット方式の印刷装置である。図1に示すように、画像記録装置1は、搬送機構10、画像記録部20、2つのエッジセンサ30、および制御部40を備えている。
【0036】
搬送機構10は、印刷用紙9をその長手方向に沿う搬送方向に搬送する機構である。本実施形態の搬送機構10は、巻き出しローラ11、複数の搬送ローラ12、および巻き取りローラ13を含む複数のローラを有する。印刷用紙9は、巻き出しローラ11から繰り出され、複数の搬送ローラ12により構成される所定の搬送経路に沿って、例えば、1m/秒で搬送される。各搬送ローラ12は、水平軸を中心として回転することによって、印刷用紙9を搬送経路の下流側へ案内する。また、搬送後の印刷用紙9は、巻き取りローラ13へ回収される。これらの複数のローラは、後述する制御部40の駆動部45によって回転駆動される。
【0037】
図1に示すように、印刷用紙9は、複数の記録ヘッド21~24の下方において、複数の記録ヘッド21~24の配列方向と略平行に移動する。このとき、印刷用紙9の記録面(表面)は、上方(記録ヘッド21~24側)に向けられている。また、印刷用紙9は、張力が掛かった状態で、複数の搬送ローラ12に掛け渡される。これにより、搬送中における印刷用紙9の弛みや皺が抑制される。
【0038】
画像記録部20は、搬送機構10により搬送される印刷用紙9に対して、インクの液滴(以下「インク滴」と称する)を吐出する処理部である。本実施形態の画像記録部20は、第1記録ヘッド21、第2記録ヘッド22、第3記録ヘッド23、および第4記録ヘッド24を有する。第1記録ヘッド21、第2記録ヘッド22、第3記録ヘッド23、および第4記録ヘッド24は、印刷用紙9の搬送方向に沿って配列されている。
【0039】
図2は、画像記録部20付近における画像記録装置1の部分上面図である。4つの記録ヘッド21~24は、それぞれ、印刷用紙9の幅方向(搬送方向に直交し、かつ水平な方向)の全体を覆っている。また、図2中に破線で示したように、各記録ヘッド21~24の下面には、印刷用紙9の幅方向と平行に配列された複数のノズル201が設けられている。各記録ヘッド21~24は、複数のノズル201から印刷用紙9の上面へ向けて、多色画像の色成分となるK(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色のインク滴を、それぞれ吐出する。
【0040】
すなわち、第1記録ヘッド21は、搬送経路上の第1処理位置P1において、印刷用紙9の上面に、K色のインク滴を吐出する。第2記録ヘッド22は、第1処理位置P1よりも下流側の第2処理位置P2において、印刷用紙9の上面に、C色のインク滴を吐出する。第3記録ヘッド23は、第2処理位置P2よりも下流側の第3処理位置P3において、印刷用紙9の上面に、M色のインク滴を吐出する。第4記録ヘッド24は、第3処理位置P3よりも下流側の第4処理位置P4において、印刷用紙9の上面に、Y色のインク滴を吐出する。本実施形態では、第1処理位置P1、第2処理位置P2、第3処理位置P3、および第4処理位置P4は、印刷用紙9の搬送方向に沿って、等間隔に配列されている。
【0041】
4つの記録ヘッド21~24は、インク滴を吐出することによって、印刷用紙9の上面に、それぞれ単色画像を記録する。そして、4つの単色画像の重ね合わせにより、印刷用紙9の上面に、多色画像が形成される。したがって、仮に、4つの記録ヘッド21~24から吐出されるインク滴の印刷用紙9上における搬送方向の位置が相互にずれていると、印刷物の画像品質が低下する。このような、印刷用紙9上における単色画像の相互の位置ずれ(いわゆる「見当ずれ」)を許容範囲内に抑えることが、画像記録装置1の印刷品質を向上させるための重要な要素となる。
【0042】
なお、記録ヘッド21~24の搬送方向下流側に、印刷用紙9の記録面に吐出されたインクを乾燥させる乾燥処理部が、さらに設けられていてもよい。乾燥処理部は、例えば、印刷用紙9へ向けて加熱された気体を吹き付けて、印刷用紙9に付着したインク中の溶媒を気化させることにより、インクを乾燥させる。ただし、乾燥処理部は、ヒートローラ、または光照射等の他の方法で、インクを乾燥させるものであってもよい。
【0043】
2つのエッジセンサ30は、印刷用紙9のエッジ91(幅方向の端部)の幅方向の位置を検出する検出部である。本実施形態では、搬送経路上の第1処理位置P1よりも上流側の上流側検出位置Paと、第4処理位置P4よりも下流側の下流側検出位置Pbとに、エッジセンサ30が配置されている。
【0044】
図3は、各エッジセンサ30の構造を模式的に示した図である。図3に示すように、2つのエッジセンサ30はそれぞれ、印刷用紙9のエッジ91の上方に位置する投光器301と、エッジ91の下方に位置するラインセンサ302とを有する。投光器301は、下方へ向けて平行光を照射する。ラインセンサ302は、幅方向に配列された複数の受光素子320を有する。図3のように、印刷用紙9のエッジ91よりも外側においては、投光器301から照射された光が受光素子320に入射し、受光素子320が光を検出する。一方、印刷用紙9のエッジ91よりも内側においては、投光器301から照射された光が印刷用紙9に遮られるため、受光素子320は光を検出しない。エッジセンサ30は、このような複数の受光素子320における光検出の有無に基づいて、印刷用紙9のエッジ91の幅方向の位置を検出する。
【0045】
図1および図2に示すように、以下では、上流側検出位置Paに配置されたエッジセンサ30を、上流側エッジセンサ31と称する。また、下流側検出位置Pbに配置されたエッジセンサ30を、下流側エッジセンサ32と称する。上流側エッジセンサ31は、本発明における「上流側検出部」の一例である。上流側エッジセンサ31は、上流側検出位置Paにおいて、印刷用紙9のエッジ91の幅方向の位置を、断続的に検出する。これにより、上流側検出位置Paにおけるエッジ91の幅方向の位置の経時変化を示す検出結果(以下、「上流側検出結果R1」とする。)を取得する。そして、得られた上流側検出結果R1を示す検出信号を、制御部40へ出力する。下流側エッジセンサ32は、本発明における「下流側検出部」の一例である。下流側エッジセンサ32は、下流側検出位置Pbにおいて、印刷用紙9のエッジ91の幅方向の位置を、断続的に検出する。これにより、下流側検出位置Pbにおけるエッジ91の幅方向の位置の経時変化を示す検出結果(以下、「下流側検出結果R2」とする。)を取得する。そして、得られた下流側検出結果R2を示す検出信号を、制御部40へ出力する。
【0046】
制御部40は、画像記録装置1内の各部を動作制御するための手段である。図1中に概念的に示したように、制御部40は、CPU等のプロセッサ401、RAM等のメモリ402、およびハードディスクドライブ等の記憶装置403を有するコンピュータにより構成されている。記憶装置403内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムCPが、記憶されている。また、図1中に破線で示したように、制御部40は、上述した搬送機構10、4つの記録ヘッド21~24、および2つのエッジセンサ30と、それぞれ電気的に接続されている。制御部40は、コンピュータプログラムCPに従って、これらの各部を動作制御する。これにより、画像記録装置1における印刷処理が進行する。
【0047】
<1-2.検出および補正処理について>
制御部40は、印刷処理の実行時に、上流側エッジセンサ31から、上流側検出結果R1を示す検出信号を取得するとともに、下流側エッジセンサ32から、下流側検出結果R2を示す検出信号を取得する。そして、得られた検出信号に基づいて、印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量を検出する。また、検出された位置ずれ量に基づいて、4つの記録ヘッド21~24からのインク滴の吐出タイミングを補正する。これにより、上述した見当ずれを抑制する。
【0048】
図4は、このような検出および補正処理を実現するための制御部40内の機能を、概念的に示したブロック図である。図4に示すように、制御部40は、ずれ量算出部41、吐出補正部42、印刷指示部43、および駆動部45を有する。ずれ量算出部41、吐出補正部42、印刷指示部43、および駆動部45の各機能は、コンピュータプログラムCPに基づいて、プロセッサ401が動作することにより実現される。なお、ずれ量算出部41、吐出補正部42、印刷指示部43、および駆動部45は、FPGA等の専用回路により実現されてもよい。また、駆動部45は、巻き出しローラ11、複数の搬送ローラ12、および巻き取りローラ13を含む複数のローラの少なくとも1つを一定の回転速度で回転駆動することによって、印刷用紙9を搬送経路に沿って搬送する。
【0049】
ずれ量算出部41は、上流側エッジセンサ31から得られる上流側検出結果R1と、下流側エッジセンサ32から得られる下流側検出結果R2とに基づいて、印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量を算出する。なお、ずれ量算出部41は、上流側エッジセンサ31から取得した上流側検出結果R1を示す検出信号と、下流側エッジセンサ32から取得した下流側検出結果R2を示す検出信号とを、一時的に記憶する記憶部410を備えている。記憶部410の機能は、例えば、上述したメモリ402または記憶装置403により実現される。ずれ量算出部41は、記憶部410から上流側検出結果R1に含まれる信号および下流側検出結果R2に含まれる信号を読み出しつつ、各処理を実行する。
【0050】
図5Aは、上流側検出結果R1の例を示したグラフである。図5Bは、下流側検出結果R2の例を示したグラフである。図5Aおよび図5Bのグラフにおいて、横軸は時刻を示し、縦軸はエッジ91の幅方向の位置を示す。なお、図5Aおよび図5Bのグラフの横軸は、左端が現在時刻であり、右側へ向かうほど時刻が古くなる。したがって、図5Aおよび図5B中のデータ線は、時間の経過とともに、白抜き矢印のように右側へ移動する。このため、例えば、図5A中のデータ線の右端の値は、図5A中のデータ線の中で最も早い時刻に上流側エッジセンサ31を通過した部位の印刷用紙9のエッジ91の幅方向位置を示している。また、図5B中のデータ線の右端の値は、図5B中のデータ線の中で最も早い時刻に下流側エッジセンサ32を通過した部位の印刷用紙9のエッジ91の幅方向位置を示している。
【0051】
上流側エッジセンサ31および下流側エッジセンサ32は、予め設定された極微小な時間ごとに(例えば50μ秒ごとに)、印刷用紙9のエッジ91の幅方向の位置を検出する。これにより、図5Aおよび図5Bに示すように、印刷用紙9のエッジ91の幅方向の位置の経時変化を示すデータが得られる。図5Aに示す上流側検出結果R1は、上流側検出位置Paを通過する印刷用紙9のエッジ91の形状を反映したデータとなる。図5Bに示す下流側検出結果R2は、下流側検出位置Pbを通過する印刷用紙9のエッジ91の形状を反映したデータとなる。
【0052】
図5に示す上流側検出結果R1と図5Bに示す下流側検出結果R2にはそれぞれ、ノイズが含まれている。図6Aおよび図6Bはそれぞれ、上流側検出結果R1に含まれるノイズの例を示したグラフである。特に、図6Aは、上流側検出結果R1に含まれる低周波数帯の信号R1Lの例を示している。低周波数帯の信号R1Lは、例えば、印刷用紙9が搬送される際に生じる蛇行に相当する信号であり、2000μm以上の波長を有する。図6Bは、上流側検出結果R1に含まれる高周波数帯の信号R1Hの例を示している。高周波数帯の信号R1Hは、例えば、印刷用紙9に加わる搬送機構10による振動または上流側エッジセンサ31の電気特性上の振れに相当する信号であり、100μm未満の波長を有する。ずれ量算出部41は、バンドパスフィルタを用いて、上流側検出結果R1に、低周波数帯の信号R1Lおよび高周波数帯の信号R1Hを除くフィルタリング処理を行う。これにより、ずれ量算出部41は、上流側検出結果R1から、図6Cに例を示す所定の周波数帯の信号R1Mを取り出す。
【0053】
また、ずれ量算出部41は、同様に、バンドパスフィルタを用いて、下流側検出結果R2に、低周波数帯の信号および高周波数帯の信号を除くフィルタリング処理を行う。これにより、ずれ量算出部41は、下流側検出結果R2から、図7に例を示す所定の周波数帯の信号R2Mを取り出す。なお、バンドパスフィルタによるフィルタリングの範囲については、印刷用紙9の搬送速度等を考慮して、事前に設定することが望ましい。
【0054】
印刷用紙9のエッジ91には、微細な凹凸が存在する。当該凹凸には、まず、印刷用紙9を形成している組成物の形状に由来するものが含まれる。例えば、印刷用紙9が細く柔らかい繊維状のセルロースファイバによって組成された紙である場合、印刷用紙9のエッジ91(幅方向の端部)に位置するセルロースファイバの向きによって凹凸が形成される。つまり、セルロースファイバの長さまたは幅(例えば、20μm)に由来する凹凸が形成される。また、印刷用紙9の代わりに硬質のフィルムまたは金属箔等によって基材が組成される場合、エッジ91(幅方向の端部)には、エッジ91を切断するための切断工具の刃の形状に由来する凹凸が形成される。このような、印刷用紙9を形成している組成物の形状に由来するエッジ91の形状、および切断工具の刃の形状に由来するエッジ91の形状は、上述の低周波数帯の信号R1Lおよび高周波数帯の信号R1Hとは異なり、エッジ91の部位ごとに現れる特有のものである。
【0055】
本実施形態において、上流側検出結果R1から取り出された所定の周波数帯の信号R1Mおよび下流側検出結果R2から取り出された所定の周波数帯の信号R2Mはそれぞれ、主にこのような、印刷用紙9の少なくとも一部の組成物の形状に相当する周波数帯の信号(例えば、印刷用紙9である紙の組成物であるセルロースファイバの長さまたは幅に相当する周波数帯の信号)、または、切断処理が施された印刷用紙9等のエッジ91の形状に相当する周波数帯の信号を含む。
【0056】
次に、ずれ量算出部41は、上流側検出結果R1から取り出した所定の周波数帯の信号R1Mと、下流側検出結果R2から取り出した所定の周波数帯の信号R2Mとを比較する。そして、上流側検出結果R1と下流側検出結果R2とで、印刷用紙9の同一のエッジ91を検出した箇所を特定する。具体的には、上流側検出結果R1から取り出した所定の周波数帯の信号R1Mに含まれるデータ区間(一定の時間範囲)ごとに、下流側検出結果R2から取り出した所定の周波数帯の信号R2Mに含まれる複数のデータ区間(一定の時間範囲)のうち、一致性の高いデータ区間を特定する。以下では、図6Cに示すように、上流側検出結果R1から取り出した所定の周波数帯の信号R1Mに含まれるデータ区間を、上流側データ区間D1と称する。また、図7に示すように、下流側検出結果R2から取り出した所定の周波数帯の信号R2Mに含まれるデータ区間を、下流側データ区間D2と称する。
【0057】
一致性の高いデータ区間の特定には、例えば、相互相関や残差平方和等のマッチング手法が用いられる。ずれ量算出部41は、上流側データ区間D1ごとに、複数の下流側データ区間D2を、対応するデータ区間の候補として選択する。また、選択された候補である複数の下流側データ区間D2のそれぞれについて、上流側データ区間D1との一致性を示す評価値を算出する。そして、評価値が最も高くなる下流側データ区間D2を、上流側データ区間D1に対応する(上流側データ区間D1と最も一致性が高い)下流側データ区間D2として特定する。ただし、上流側データ区間D1と、複数の下流側データ区間D2のそれぞれとの間の差分値を算出し、算出した差分値を比較することによって、上流側データ区間D1と最も一致性が高い下流側データ区間D2を特定してもよい。また、上流側データ区間D1に含まれる複数のサンプル点と、複数の下流側データ区間D2のそれぞれに含まれる複数のサンプル点との間の絶対差分値をそれぞれ算出し、さらに当該絶対差分値の和の平均を算出する(絶対平均誤差法(MAE))ことによって、上流側データ区間D1と最も一致性が高い下流側データ区間D2を特定してもよい。
【0058】
ここで、上流側データ区間D1に対応するデータ区間の候補として複数の下流側データ区間D2を選択する方法について、説明する。以下では、印刷用紙9が搬送される際、搬送機構10のローラの表面と印刷用紙9との間のスリップ、またはインクの吐出による印刷用紙9の伸び等が生じない場合に、上流側検出位置Paから下流側検出位置Pbまでにかかる時間を「理想的な搬送時間」とする。この場合、上流側検出結果R1と下流側検出結果R2との時間差は、上流側検出位置Paから下流側検出位置Pbまでの印刷用紙9の理想的な搬送時間から大幅にずれることはない。このため、ずれ量算出部41は、上流側データ区間D1から理想的な搬送時間だけ経過した時刻の近傍に位置するデータ区間が、上流側データ区間D1に対応する下流側データ区間D2であると推定し、推定された下流側データ区間D2の近傍に位置する複数の下流側データ区間D2を、上流側データ区間D1に対応するデータ区間の候補とすればよい。
【0059】
このように、ずれ量算出部41は、上流側データ区間D1に対応する下流側データ区間D2を推定し、推定されたデータ区間の近傍のみにおいて、上流側データ区間D1と一致性の高い下流側データ区間D2を探索してもよい。このようにすれば、下流側データ区間D2の探索範囲が狭まる。したがって、ずれ量算出部41の演算処理負担を軽減できる。
【0060】
その後、ずれ量算出部41は、上流側データ区間D1の検出時刻(図6C中の時刻T1)と、上流側データ区間D1と最も一致性の高い下流側データ区間D2の検出時刻(図7中の時刻T2)との時間差に基づいて、上流側検出位置Paから下流側検出位置Pbまでの印刷用紙9の搬送にかかる実際の搬送時間ΔT(時刻T2と時刻T1との間の時間差)を算出する。また、算出した搬送時間ΔTから、画像記録部20の下方における印刷用紙9の実際の搬送速度を算出する。実際の搬送速度は、上流側検出位置Paから下流側検出位置Pbまでの距離を、搬送時間ΔTで除することによって、算出できる。図8は、上流側検出結果R1から取り出した所定の周波数帯の信号R1Mの例と、搬送時間ΔTの経過後の下流側検出結果R2から取り出した所定の周波数帯の信号R2Mの例を重ね合わせたグラフである。図8では、上流側データ区間D1に対応する下流側データ区間D2の検出時刻T2が上流側データ区間D1の検出時刻T1に重なるように、上述の所定の周波数帯の信号R2Mの例を示したグラフを水平方向に移動させた上で、上述の所定の周波数帯の信号R1Mの例を示したグラフに重ね合わせて表示している。
【0061】
印刷用紙9の実際の搬送速度が算出されると、ずれ量算出部41は、算出された搬送速度に基づいて、印刷用紙9の各部が、第1処理位置P1、第2処理位置P2、第3処理位置P3、および第4処理位置P4に実際に到達する時刻を、算出する。これにより、理想的な搬送速度で搬送される場合に対する、印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量が算出される。なお、印刷用紙9の各部が、第1処理位置P1、第2処理位置P2、第3処理位置P3、および第4処理位置P4に実際に到達する時刻は、上流側検出位置Paから第1処理位置P1、第2処理位置P2、第3処理位置P3、および第4処理位置P4までの距離を、それぞれ実際の搬送速度で除することによって、算出できる。また、印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量は、第1処理位置P1、第2処理位置P2、第3処理位置P3、および第4処理位置P4を含む複数の地点の各位置において、印刷用紙9が理想的な搬送速度で搬送される場合に到達すると想定される時刻と、実際に到達する時刻との差分に、当該実際の搬送速度を掛けることにより、算出される。
【0062】
なお、第1処理位置P1、第2処理位置P2、第3処理位置P3、および第4処理位置P4における印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量は、別の方法で算出してもよい。例えば、下流側検出位置Pbにおいて、印刷用紙9が理想的な搬送速度で搬送される場合に到達すると想定される時刻と、実際に到達する時刻との差分に、当該実際の搬送速度を掛けることにより、下流側検出位置Pbにおける印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量を算出してもよい。そして、下流側検出位置Pbにおける印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量を、各処理位置P1~P4と、上流側検出位置Paおよび下流側検出位置Pbとの位置関係から割り振る(位置関係に基づいて案分する)ことによって算出してもよい。例えば、4つの処理位置P1~P4と2つの検出位置Pa,Pbの、合わせて6つの位置が互いに等間隔に配列されている場合、下流側検出位置Pbに最も近い第4処理位置P4における印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量は、下流側検出位置Pbにおける印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量に5分の4を乗じた大きさであると推定できる。
【0063】
さらに、例えば、下流側検出位置Pbが第4処理位置P4の極めて近くに設けられている場合、第4処理位置P4における位置ずれ量は、下流側検出位置Pbにおける印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量と同じであるとみなしてもよい。
【0064】
このように、本実施形態の画像記録装置1は、印刷用紙9のエッジ91の形状を、上流側検出位置Paと下流側検出位置Pbの2箇所で検出し、それらの検出結果に基づいて、印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量を算出する。このため、印刷用紙9の表面に形成されるレジスターマーク等の画像に依存することなく、印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量を検出できる。
【0065】
特に、本実施形態において、ずれ量算出部41は、複雑な波形を有する上流側検出結果R1から周期的なノイズを除去して取り出した所定の周波数帯の信号R1Mと、複雑な波形を有する下流側検出結果R2から周期的なノイズを除去して取り出した所定の周波数帯の信号R2Mとを比較した結果を用いて、上流側データ区間D1ごとに、一致性の高い下流側データ区間D2を特定する。所定の周波数帯の信号R1Mおよび所定の周波数帯の信号R2Mは、主にエッジ91の部位ごとに現れる特有の形状に由来する信号を含む。これにより、ずれ量算出部41は、相関または補間等の追加の演算をすることなく、上流側データ区間D1と一致性の高い下流側データ区間D2を、高精度かつ容易に特定できる。この結果、印刷用紙9の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を高精度かつリアルタイムに検出し、さらに後述のとおり補正できるため、見当ずれの少ない高品質な印刷画像を得ることができる。また、ずれ量算出部41における演算量を抑制できるため、コスト削減に繋がる。
【0066】
また、本実施形態では、上流側検出位置Paと下流側検出位置Pbとの間において、画像記録部20の各記録ヘッド21~24から、印刷用紙9の表面にインク滴が吐出される。このため、インクの付着によって印刷用紙9の搬送方向の長さが局所的に伸びた場合でも、その伸びに起因する搬送方向の位置ずれ量を、上流側検出位置Paおよび下流側検出位置Pbの検出結果から求めることができる。
【0067】
なお、ずれ量算出部41は、上流側データ区間D1に対応する下流側データ区間D2を特定した後、これらの互いに対応する上流側データ区間D1と下流側データ区間D2との中で、特に一致性が高い箇所をさらに特定してもよい。例えば、ずれ量算出部41は、上流側データ区間D1を複数個の上流側サブデータ区間に分割し、下流側データ区間D2を複数個の下流側サブデータ区間に分割し、複数個の上流側サブデータ区間のうちの1つと複数個の下流側サブデータ区間のうちの1つとの間の一致性を順に算出してもよい。すなわち、ずれ量算出部41は、上流側データ区間D1に含まれ、かつ、上流側データ区間D1よりも短い区間である上流側サブデータ区間と、下流側データ区間D2に含まれ、かつ、下流側データ区間D2よりも短い区間である下流側サブデータ区間との間の一致性を順に算出してもよい。そして、互いに最も一致性が高い上流側サブデータ区間の検出時刻と下流側サブデータ区間の検出時刻との時間差に基づいて、上流側検出位置Paから下流側検出位置Pbまでの印刷用紙9の搬送にかかる実際の搬送時間ΔTを算出してもよい。これにより、印刷用紙9の同一のエッジ91を検出した箇所をより詳細に特定できる。したがって、印刷用紙9の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量をより高精度に検出できる。
【0068】
さらに、ずれ量算出部41は、上流側データ区間D1に対応する下流側データ区間D2を特定した後、下流側検出結果R2から取り出した所定の周波数帯の信号R2Mに含まれる複数の下流側データ区間D2のうち、当該上流側データ区間D1との一致性が最も高いとして特定された下流側データ区間D2を除く少なくとも1つの下流側データ区間D2(以下、「他の下流側データ区間D2」とする)と当該上流側データ区間D1との間の一致性の評価値を算出してもよい。そして、ずれ量算出部41は、当該上流側データ区間D1との一致性が最も高いとして特定された下流側データ区間D2と当該上流側データ区間D1との間の一致性、および他の下流側データ区間D2と当該上流側データ区間D1との間の一致性を、互いに比較してもよい。これにより、上流側検出結果R1および下流側検出結果R2において、印刷用紙9の同一のエッジ91を検出した箇所が正しく特定されたか否かを再確認することができる。この結果、印刷用紙9の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量をより正確に検出できる。
【0069】
図4に戻る。吐出補正部42は、ずれ量算出部41により算出された印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量に基づいて、各記録ヘッド21~24からのインク滴の吐出タイミングを補正する。例えば、印刷用紙9の画像を記録すべき部分が各処理位置P1~P4に到達する時刻が、理想的な時刻よりも遅れる場合には、吐出補正部42は、各記録ヘッド21~24からのインク滴の吐出タイミングを遅らせる。また、印刷用紙9の画像を記録すべき部分が各処理位置P1~P4に到達する時刻が、理想的な時刻よりも早くなる場合には、吐出補正部42は、各記録ヘッド21~24からのインク滴の吐出タイミングを早める。なお、インク滴の吐出タイミングの補正量は、例えば、各処理位置P1~P4における印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量を、印刷用紙9の実際の搬送速度で除することにより算出すればよい。
【0070】
印刷指示部43は、入稿された画像データIに基づいて、各記録ヘッド21~24からのインク滴の吐出動作を制御する。このとき、印刷指示部43は、吐出補正部42から出力される吐出タイミングの補正量を参照する。そして、当該補正量に従って、画像データIに基づく本来の吐出タイミングをずらす。これにより、各処理位置P1~P4において、印刷用紙9上の搬送方向の適切な箇所に、各色のインク滴が吐出される。したがって、各色のインクにより形成される単色画像の相互の位置ずれが抑制される。その結果、見当ずれの少ない高品質な印刷画像を得ることができる。
【0071】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態に係る画像記録装置の構成について説明する。第2実施形態の画像記録装置は、搬送機構、画像記録部、2つのエッジセンサ30B、および制御部を備えている。なお、第2実施形態の画像記録装置における2つのエッジセンサ30B以外の部位については、第1実施形態の画像記録装置1における2つのエッジセンサ30以外の部位と同等の構造を有するため、重複説明を省略する。
【0072】
図9は、各エッジセンサ30Bの構造を模式的に示した図である。図9に示すように、本実施形態の上流側エッジセンサ31Bの投光器301Bは、印刷用紙9Bの幅方向に対して1~10°程度傾斜している。また、下流側エッジセンサ32Bの投光器301Bは、印刷用紙9Bの幅方向に対して1~10°程度傾斜している。そして、上流側エッジセンサ31Bおよび下流側エッジセンサ32Bはそれぞれ、傾斜した光軸300Bに沿って投光された光によって、印刷用紙9Bのエッジ91Bの幅方向の位置を検出する。ただし、上流側エッジセンサ31Bの投光器301Bの光軸300Bと下流側エッジセンサ32Bの投光器301Bの光軸300Bとは、印刷用紙9Bの幅方向に対して互いに同じ角度で傾斜することが望ましい。
【0073】
上流側エッジセンサ31Bの光軸300Bと下流側エッジセンサ32Bの光軸300Bとが傾斜することにより、投光器301Bから照射された光が、印刷用紙9Bのエッジ91Bを形成する端面(側面)に当たる。すなわち、光軸300Bの傾斜が無い状態では光が当たらない部分に、光が当たる。これにより、エッジ91Bの幅方向の位置をより詳細かつ高精度に検出できる。したがって、印刷用紙9Bの同一のエッジ91Bを検出した箇所をより高精度で特定できる。なお、上流側エッジセンサ31Bの投光器301Bおよび下流側エッジセンサ32Bの投光器301Bはそれぞれ、印刷用紙9Bの搬送方向に対して傾斜してもよい。すなわち、上流側エッジセンサ31Bの投光器301Bおよび下流側エッジセンサ32Bの投光器301Bは、搬送方向および幅方向の少なくとも一方に対して傾斜していればよい。そして、上流側エッジセンサ31Bおよび下流側エッジセンサ32Bはそれぞれ、印刷用紙9Bの搬送方向および幅方向の少なくとも一方に対して傾斜した光軸300Bに沿って投光された光により検出を行えばよい。ただし、上流側エッジセンサ31Bの投光器301Bの光軸300Bと下流側エッジセンサ32Bの投光器301Bの光軸300Bとは、印刷用紙9Bの搬送方向に対しても、互いに同じ角度で傾斜することが望ましい。
【0074】
<3.第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態に係る画像記録装置の構成について説明する。第3実施形態の画像記録装置は、搬送機構、画像記録部、2つのエッジセンサ30C、および制御部を備えている。なお、第3実施形態の画像記録装置における2つのエッジセンサ30C以外の部位については、第1実施形態の画像記録装置1における2つのエッジセンサ30以外の部位と同等の構造を有するため、重複説明を省略する。
【0075】
図10は、第3実施形態に係る画像記録部付近における画像記録装置の部分上面図である。図10の例では、上流側エッジセンサ31Cは、第1エッジセンサ311Cと第2エッジセンサ312Cとを含む。第1エッジセンサ311Cおよび第2エッジセンサ312Cは、上流側検出位置Paにおいて、印刷用紙9Cの搬送方向に沿って、互いに隣接し、または微小な間隔を隔てつつ接近して配置される。また、第1エッジセンサ311Cおよび第2エッジセンサ312Cは、それぞれ印刷用紙9Cのエッジ91Cの幅方向の位置を、断続的に検出する。
【0076】
第1エッジセンサ311Cは、エッジ91Cの幅方向の位置の経時変化を示す第1検出結果を取得する。そして、取得した第1検出結果を示す検出信号を、制御部へ出力する。第2エッジセンサ312Cは、エッジ91Cの幅方向の位置の経時変化を示す第2検出結果を取得する。そして、取得した第2検出結果を示す検出信号を、制御部へ出力する。
【0077】
ここで、第1エッジセンサ311Cによるエッジ91Cの検出のタイミングと第2エッジセンサ312Cによるエッジ91Cの検出のタイミングとは、互いに異なる。そして、制御部は、互いに異なるタイミングで検出された第1検出結果と第2検出結果とに基づいて、上流側検出結果R1を生成する。例えば、制御部は、第1検出結果と第2検出結果とを足し合わせることによって、上流側検出結果R1を生成する。これにより、上流側検出結果R1に含まれる、上流側検出位置Paを通過する印刷用紙9Cのエッジ91Cの幅方向の位置のデータの数が増加する。この結果、第1エッジセンサ311Cおよび第2エッジセンサ312Cのスペック(各センサが単位時間あたりに取得できるデータ数)を変えずに、上流側検出位置Paを通過する印刷用紙9Cのエッジ91Cの幅方向の位置の経時変化をより詳細に示したデータを得ることができる。なお、第1エッジセンサ311Cによるエッジ91Cの検出のタイミングと第2エッジセンサ312Cによるエッジ91Cの検出のタイミングとは、互いに同じであってもよい。そして、第1検出結果と第2検出結果との平均値を算出してもよい。さらに、第1エッジセンサ311Cによるエッジ91Cの検出箇所と第2エッジセンサ312Cによるエッジ91Cの検出箇所とを互いに搬送方向または幅方向にずらしてもよい。
【0078】
また、下流側エッジセンサ32Cは、第3エッジセンサ321Cと第4エッジセンサ322Cとを含む。第3エッジセンサ321Cおよび第4エッジセンサ322Cは、下流側検出位置Pbにおいて、印刷用紙9Cの搬送方向に沿って、互いに隣接し、または微小な間隔を隔てつつ接近して配置される。また、第3エッジセンサ321Cおよび第4エッジセンサ322Cは、それぞれ印刷用紙9Cのエッジ91Cの幅方向の位置を、断続的に検出する。
【0079】
第3エッジセンサ321Cは、エッジ91Cの幅方向の位置の経時変化を示す第3検出結果を取得する。そして、取得した第3検出結果を示す検出信号を、制御部へ出力する。第4エッジセンサ322Cは、エッジ91Cの幅方向の位置の経時変化を示す第4検出結果を取得する。そして、取得した第4検出結果を示す検出信号を、制御部へ出力する。
【0080】
ここで、第3エッジセンサ321Cによるエッジ91Cの検出のタイミングと第4エッジセンサ322Cによるエッジ91Cの検出のタイミングとは、互いに異なる。そして、制御部は、互いに異なるタイミングで検出された第3検出結果と第4検出結果とに基づいて、下流側検出結果R2を生成する。例えば、制御部は、第3検出結果と第4検出結果とを足し合わせることによって、下流側検出結果R2を生成する。これにより、下流側検出結果R2に含まれる、下流側検出位置Pbを通過する印刷用紙9Cのエッジ91Cの幅方向の位置のデータの数が増加する。この結果、第3エッジセンサ321Cおよび第4エッジセンサ322Cのスペック(各センサが単位時間あたりに取得できるデータ数)を変えずに、下流側検出位置Pbを通過する印刷用紙9Cのエッジ91Cの幅方向の位置の経時変化をより詳細に示したデータを得ることができる。なお、第3エッジセンサ321Cによるエッジ91Cの検出のタイミングと第4エッジセンサ322Cによるエッジ91Cの検出のタイミングとは、互いに同じであってもよい。そして、第3検出結果と第4検出結果との平均値を算出してもよい。さらに、第3エッジセンサ321Cによるエッジ91Cの検出箇所と第4エッジセンサ322Cによるエッジ91Cの検出箇所とを互いに搬送方向または幅方向にずらしてもよい。
【0081】
<4.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0082】
上述の実施形態では、吐出補正部42は、ずれ量算出部41により算出された印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量に基づいて、各記録ヘッド21~24からのインク滴の吐出タイミングを補正していた。しかしながら、インク滴の吐出タイミングを補正する代わりに、ずれ量算出部41により算出された印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量に基づいて、複数のローラのうちの少なくとも1つの駆動を補正することによって、印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量を補正してもよい。例えば、印刷用紙9の画像を記録すべき部分が各処理位置P1~P4に到達する時刻が、理想的な時刻よりも遅れる場合には、ローラの回転数を調節して、印刷用紙9の搬送速度を速めるように変化させる。これにより、印刷用紙9上の搬送方向の適切な箇所に、各色のインク滴が吐出されるように補正できる。
【0083】
上述の実施形態では、吐出補正部42は、入稿された画像データI自体を補正することなく、記録ヘッド21~24からのインク滴の吐出タイミングを補正していた。しかしながら、吐出補正部42は、ずれ量算出部41により算出された印刷用紙9の搬送方向の位置ずれ量に基づいて、画像データIを補正してもよい。その場合、印刷指示部43は、補正後の画像データIに従って、各記録ヘッド21~24からのインク滴の吐出を行えばよい。
【0084】
また、上述の図2では、各記録ヘッド21~24において、ノズル201が幅方向に一列に配置されていた。しかしながら、各記録ヘッド21~24において、ノズル201が2列以上に配置されていてもよい。
【0085】
また、上述の実施形態では、上流側検出位置Paと下流側検出位置Pbの2箇所のみに、エッジセンサ30を配置していた。しかしながら、印刷用紙9の搬送経路上に配置されるエッジセンサ30の数は、3つ以上であってもよい。例えば、図11のように、搬送経路上の第1処理位置P1よりも上流側の上流側検出位置Paと、第2処理位置P2と第3処理位置P3との間の中間検出位置Pcと、第4処理位置P4よりも下流側の下流側検出位置Pbとの3箇所に、エッジセンサ30Dを配置してもよい。この場合、3つのエッジセンサ30Dの検出結果に基づいて、印刷用紙9Dの搬送方向の位置ずれ量を、より精度よく算出できる。例えば、第1処理位置P1および第2処理位置P2と、第3処理位置P3および第4処理位置P4とで、インクの付着量の差によって、印刷用紙9Dの搬送方向の位置ずれ量が異なる場合であっても、各処理位置における位置ずれ量を適切に検出できる。
【0086】
また、エッジセンサは、記録ヘッドの下方位置に設けられていてもよい。例えば、エッジセンサは、4つの記録ヘッドの各々の下方位置に、設けられていてもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、印刷用紙の幅方向の一端側のみに、エッジセンサが設けられていた。しかしながら、印刷用紙の幅方向の両側に、エッジセンサが設けられていてもよい。そうすれば、印刷用紙の幅方向の両側のエッジの検出結果に基づいて、印刷用紙の搬送方向の位置ずれ量を検出できる。したがって、位置ずれ量の検出精度を、より向上させることができる。
【0088】
また、上述の実施形態の画像記録装置は、エッジセンサから得られる信号に基づいて、印刷用紙の搬送速度を算出し、算出された搬送速度に基づいて、印刷用紙の搬送方向の位置ずれ量を算出していた。しかしながら、画像記録装置は、印刷用紙の搬送速度のずれ量に基づき、記録ヘッドからのインク滴の吐出タイミングの補正またはローラの駆動の補正を行ってもよい。すなわち、ずれ量算出部は、印刷用紙の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を算出するものであればよい。
【0089】
また、画像記録装置は、上流側エッジセンサ(上流側検出部)および下流側エッジセンサ(下流側検出部)から得られる信号に基づいて、印刷用紙の幅方向の位置ずれ量を検出し、補正する機能を有していてもよい。また、画像記録装置は、印刷用紙の幅方向の位置ずれ量に基づいて、印刷用紙の蛇行、斜行変化、走行位置、または幅方向の寸法変化を検出し、補正する機能を有していてもよい。このようにすれば、印刷用紙の搬送方向の位置ずれ量を検出するためのエッジセンサと、印刷用紙の幅方向の位置ずれ量を検出するためのエッジセンサとを、別々に設ける必要がない。したがって、画像記録装置の部品点数を抑制できる。
【0090】
また、上述の実施形態では、上流側検出部および下流側検出部に、透過式のエッジセンサを用いていた。しかしながら、上流側検出部および下流側検出部の検出方式は、他の方式であってもよい。例えば、反射式の光学センサや、CCDカメラなどを用いてもよい。上流側検出部および下流側検出部は、印刷用紙のエッジの位置を、搬送方向および幅方向の二次元において検出するものであってもよい。また、上流側検出部および下流側検出部による検出動作は、上述の実施形態のように断続的であってもよく、連続的であってもよい。また、上述の第3実施形態における上流側エッジセンサ(上流側検出部)に含まれる第1エッジセンサと第2エッジセンサによる検出動作は、それぞれ断続的であってもよく、連続的であってもよい。また、上述の第3実施形態における下流側エッジセンサ(下流側検出部)に含まれる第3エッジセンサと第4エッジセンサによる検出動作は、それぞれ断続的であってもよく、連続的であってもよい。
【0091】
また、上述の実施形態において、印刷用紙の搬送時間や各地点への到達時刻を計測する際、例えば、画像記録装置とは別途設置されたクロックやカウンタを用いることができる。ただし、これらを用いる代わりに、搬送機構において一定の回転速度で回転駆動するローラに接続するロータリーエンコーダ(図示省略)の信号に基づいて、時間を計測してもよい。
【0092】
また、上述の実施形態では、画像記録装置内に4つの記録ヘッドが設けられていた。しかしながら、画像記録装置内の記録ヘッドの数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。例えば、K,C,M,Yの各色に加えて、特色のインクを吐出する記録ヘッドが設けられていてもよい。また、これらの記録ヘッドは等間隔に配置されていなくてもよい。
【0093】
また、本発明は、印刷用紙の表面に形成されるレジスターマーク等の基準画像に基づいて、印刷用紙の位置ずれ量を検出することを、排除するものではない。例えば、レジスターマーク等の基準画像の検出結果と、上述のようなエッジセンサによるエッジの検出結果とを併用して、印刷用紙の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を検出してもよい。
【0094】
また、上述の画像記録装置は、インクジェット方式で印刷用紙に画像を記録するものであった。しかしながら、本発明の基材処理装置は、インクジェット以外の方法(例えば、電子写真方式や露光など)で、印刷用紙に画像を記録する装置であってもよい。また、上述の画像記録装置は、基材としての印刷用紙に印刷処理を行うものであった。しかしながら、本発明の基材処理装置は、一般的な紙以外の長尺帯状の基材(例えば、樹脂製のフィルム,金属箔など)に、所定の処理を行うものであってもよい。すなわち、本発明の基材処理装置における処理部は、搬送経路上の処理位置において、基材を処理するものであればよい。
【0095】
また、上述の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 画像記録装置
9,9B,9C,9D 印刷用紙
10 搬送機構
11 巻き出しローラ
12 搬送ローラ
13 巻き取りローラ
20 画像記録部
21 第1記録ヘッド
22 第2記録ヘッド
23 第3記録ヘッド
24 第4記録ヘッド
30,30B,30C,30D エッジセンサ
31,31B,31C 上流側エッジセンサ
32,32B,32C 下流側エッジセンサ
40 制御部
41 ずれ量算出部
42 吐出補正部
43 印刷指示部
45 駆動部
91,91B,91C エッジ
300B 光軸
301,301B 投光器
311C 第1エッジセンサ
312C 第2エッジセンサ
321C 第3エッジセンサ
322C 第4エッジセンサ
D1 上流側データ区間
D2 下流側データ区間
I 画像データ
P1 第1処理位置
P2 第2処理位置
P3 第3処理位置
P4 第4処理位置
Pa 上流側検出位置
Pb 下流側検出位置
Pc 中間検出位置
R1 上流側検出結果
R1H 高周波数帯の信号
R1L 低周波数帯の信号
R1M 所定の周波数帯の信号
R2 下流側検出結果
R2M 所定の周波数帯の信号
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11