(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ジェット燃料油基材及びジェット燃料油組成物
(51)【国際特許分類】
C10L 1/04 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
C10L1/04
(21)【出願番号】P 2018182893
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 靖智
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-162592(JP,A)
【文献】特開2005-344001(JP,A)
【文献】特表2013-501136(JP,A)
【文献】特表平10-503804(JP,A)
【文献】特開2007-153934(JP,A)
【文献】特開昭57-139186(JP,A)
【文献】特開2012-197354(JP,A)
【文献】特開2012-197355(JP,A)
【文献】PEC石油基盤技術研究所,3.民生用(家庭用)燃料油の多様化に関する技術開発(将来型家庭用燃料油の品質設計),民生およびオフロード燃料多様化・高度熱利用技術開発に関する成果報告書,PEC-2008L-04,日本,財団法人石油産業活性化センター,2009年03月,57-93,平成20年度 石油燃料次世代環境対策技術開発事業
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
90%留出温度が230℃以上、15℃における密度が0.8428g/cm
3以上0.85g/cm
3以下であり、かつ熱分解装置から留出した灯油留分の高度水素化処理油であり、
前記高度水素化処理油の全容量に対する二環ナフテン化合物の含有量が、34容量%以下であり、
前記高度水素化処理油の全容量に対する三環ナフテン化合物の含有量が、6.5容量%~15容量%であり、
前記高度水素化処理油の全容量に対する二環ナフテン化合物の含有量に対する前記高度水素化処理油の全容量に対する三環ナフテン化合物の含有量の比が0.20以上である、ジェット燃料油基材。
【請求項2】
請求項1に記載のジェット燃料油基材を、組成物の全容量に対して、20容量%以上含有する、ジェット燃料油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェット燃料油基材及びジェット燃料油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用燃料油(「航空タービン燃料油」とも称する場合がある。)は、ジェットエンジンに用いられる燃料油(以下、「ジェット燃料油」ともいう。)であり、通常、原油の常圧蒸留で得られる灯油留分(以下、直留灯油という)を水素化脱硫して得た燃料油基材(以下、「灯油基材」ともいう。)が主に用いられる。
【0003】
ところで一般に、灯油の需要は冬場に多くなり、また軽油においても冬場には灯油留分の配合割合を増加させて、低温流動性能を向上させることが求められるため、冬場には航空機用燃料油の需給が逼迫するおそれがある。
【0004】
一方で、近年の資源の有効活用や環境対策から、原油中の重質留分やバイオマス由来の油分、非石油原料由来の合成油等についても有効活用するべく検討が進められており、例えば原油中の重質留分については各種分解処理後に高度水素化処理を行うことで、燃料油として有効な成分を抽出し活用することが進められている。
【0005】
化石燃料以外の資源からエネルギーを提供するため、バイオマスから誘導可能で、現在のインフラの特別な変更を伴わない液体燃料を提供するべく、C1+O1+炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を準備する段階と、前記酸素化炭化水素を脱酸素触媒の存在下にて接触反応させ、C1+O1-3炭化水素を含む酸素化物を生成する段階と;前記酸素化物を縮合触媒の存在下に縮合温度及び縮合圧力にて接触反応させ、C4+化合物を生成する段階を含む方法により製造される成分の蒸留留分を含有するガソリン組成物、ディーゼル燃料組成物、ケロシン組成物から選択される液体燃料を製造することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
さらに、航空機用燃料油は、ASTM D 1665、JIS K 2209等で規定されている航空タービン燃料油規格を満たすことが求められている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
合計ナフテン系化合物の含有量が30質量%より多く、ナフテン系化合物のイソパラフィン炭化水素種に対する質量比が1より大きく15未満であり、15℃における密度が0.775g・cm-3より大きく0.850g・cm-3未満であり、芳香族炭化水素の含有量が8質量%より多く20質量%未満であり、凝固点が-47℃未満であり、潤滑性BOCLE WSD値が0.85mm未満である、全合成の航空燃料又は航空燃料成分が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-159597号公報
【文献】特表2013-501136号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】JET A-1 共同利用貯油施設向け統一規格(Issue 29)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1において、上記C1+O1+炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素から誘導される成分の中間留分を、直留ケロシン、脱硫ケロシン、水素化処理又は水素化精製ケロシン、及び高度水素化処理ケロシンの製油所流から選択される少なくとも1種の燃料成分と混合することによりケロシン組成物(ジェット燃料)を製造した場合、この高度水素化処理した基材をジェット燃料油基材として用いると、水素化脱硫灯油と比較して、潤滑性に劣る場合がある。
このような事情より、航空機用燃料の中でも、共同利用貯油施設向け統一規格では、高度水素化処理された燃料を20%含む場合は、非水素化処理燃料を5%以上配合するか、若しくはBOCLE試験において一定以上の潤滑性が求められる。そのため、高度水素化処理油の有効利用に対して制約がある。
また、上記共同利用貯油施設向け統一規格に適合するように潤滑性を向上させる添加剤の使用も考えられるが、ジェット燃料油の水分離性の悪化が知られている。また、添加剤を使用した場合、燃料油としてのコスト上昇となる。
水素化脱硫灯油の一部(あるいは全部)を上記代替基材に置き換えることが考えられるが、その場合、代替基材の性状から、国際的な規格上、特にジェット燃料油の潤滑性に問題が生じることが懸念される。
そこで、特許文献2に記載の方法とは別の手法によりに基づき代替基材の潤滑性の向上が求められている。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、高度水素化処理油を代替基材として用いた場合であっても、潤滑性に優れるジェット燃料油基材及びジェット燃料油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、上記課題を解決するため検討した結果、特定の性状を有し、かつ、二環ナフテン化合物の含有量に対する三環ナフテン化合物含有量の比が0.15以上である高度水素化処理油を含むジェット燃料油基材では、潤滑性に優れることを見出した。
【0013】
すなわち、上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 90%留出温度が230℃以上、15℃における密度が0.85g/cm3以下である高度水素化処理油であり、
上記高度水素化処理油の全容量に対する二環ナフテン化合物の含有量に対する上記高度水素化処理油の全容量に対する三環ナフテン化合物の含有量の比が0.15以上である、ジェット燃料油基材。
<2> 上記<1>に記載のジェット燃料油基材を、組成物の全容量に対して、20容量%以上含有する、ジェット燃料油組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高度水素化処理油を代替基材として用いた場合であっても、潤滑性に優れるジェット燃料油基材及びジェット燃料油組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。
なお、本明細書中、数値範囲を表す「~」は、その上限及び下限としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、「~」で表される数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も同じ単位であることを意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。 また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である
【0016】
本明細書において、ジェット燃料油とは、主にジェットエンジンに用いられる燃料油を意味し、上記ジェット燃料油にはレシプロエンジンに用いられる燃料油は含まれない。
【0017】
(ジェット燃料油基材)
本発明に係るジェット燃料油基材は、90%留出温度が230℃以上、15℃における密度が0.85g/cm3以下である高度水素化処理油を含み、上記高度水素化処理油の全容量に対する二環ナフテン化合物の含有量に対する上記高度水素化処理油の全容量に対する三環ナフテン化合物の含有量の比(以下、「三環ナフテン/二環ナフテン」ともいう。)が0.15以上である。
【0018】
本発明に係るジェット燃料油基材は、特定の性状を有する高度水素化処理油を含み、三環ナフテン/二環ナフテンが0.15以上であるので潤滑性に優れる。そのため、本発明に係るジェット燃料油基材を、通常ジェット燃料油基材として用いられる灯油の代替基材として用いた場合であっても潤滑性に優れるので、国際的に利用可能なジェット燃料油の基材として用いることが可能である。
【0019】
本明細書において、「潤滑性」に優れるとは、BOCLE試験における摩耗痕径(WSD値;mm)が0.85mm以下であることを意味する。
なお、BOCLE試験における摩耗痕径は、ASTM D5001“Standard Test Method for Measurement of Lubricity of Aviation Turbine Fuels by the Ball-on-Cylinder Lubricity Evaluator (BOCLE)”で測定される値を意味する。
【0020】
高度水素化処理油のBOCLE試験における摩耗痕径が0.85mm以下であれば、高度水素化処理油を基材としてジェット燃料油組成物に、燃料油組成物の全容量に対して、20容量%以上含有させた場合であっても、そのジェット燃料油組成物は、BOCLE試験における摩耗痕径が0.85mm以下となり、BOCLE試験に合格するので、国際的に利用可能なジェット燃料油の基材として用いることが可能であると判断することができる。
【0021】
<高度水素化処理油>
本発明に係るジェット燃料油基材である高度水素化処理油は、90%留出温度が230℃以上、15℃における密度が0.85g/cm3以下であり、三環ナフテン/二環ナフテンが0.15以上である。
潤滑性に更に優れる観点から、三環ナフテン/二環ナフテンとしては、0.16以上であることが好ましく、より好ましくは、0.20以上である。
【0022】
三環ナフテン/二環ナフテン、並びに、後述の二環ナフテン化合物の含有量及び三環ナフテン化合物の含有量は、以下の方法により測定し算出して求める。
より詳細には、まず、高度水素化処理油試料をASTM D 2459に記載の測定方法を参照して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により飽和分と芳香族分とに分取する。次いで、各分取物をガスクロマトグラフ-水素炎イオン化型検出器(GC-FID)を用いて測定し、飽和分と芳香族分との密度が同一と見なし、飽和分のピーク面積と芳香族分のピーク面積との合計に対するそれぞれのピーク面積比を、試料全体に対する飽和分の容量比率(容量%)として求める。
また、上記各分取物はガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて測定し、得られた値を飽和分はASTM D 2786に記載の計算式に代入して、飽和分に対する、アルカン化合物、一環ナフテン化合物、二環ナフテン化合物、三環ナフテン化合物及び四環ナフテン化合物の容量比率(容量%)をそれぞれ算出する。
試料全体に対する上記飽和分の容量比率(容量%)と、上記飽和分に対する各容量比率と、の積から、試料全体に対する二環ナフテン化合物及び三環ナフテン化合物の含有量(容量%)をそれぞれ求めることができる。
【0023】
二環ナフテン化合物の含有量としては、潤滑性により優れる観点から、少ないほど好ましいが、高度水素化処理油の全容量に対して、34容量%以下であることが好ましく、33容量%以下であることがより好ましい。
【0024】
三環ナフテン化合物の含有量としては、潤滑性により優れる観点から、高度水素化処理油の全容量に対して、5容量%~20容量%であることが好ましく、6.5容量%~15容量%であることがより好ましい。
【0025】
高度水素化処理油において、潤滑性により優れる観点から、二環ナフテン化合物の含有量が高度水素化処理油の全容量に対して、34容量%以下であり(より好ましくは、33容量%以下)、かつ、三環ナフテン化合物の含有量が、高度水素化処理油の全容量に対して5容量%~20容量%(より好ましくは、6.5容量%~15容量%)であることが好ましい。
【0026】
本明細書において、「高度水素化処理」とは、Defence standard 91-91におけるTable1-NOTE8の記載された方法であり、具体的には水素分圧7MPa以上で処理を行うことを意味する。高度水素化処理では、脱硫や異性化、分解反応等が行われる。
高度水素化処理は、灯油留分単独に対して行ってもよく、その他留分との混合物に対して行ってもよい。本発明に係るジェット燃料油基材において、上記高度水素化処理によって特定の性状となれば、高度水素化処理によって行われる反応、高度水素化処理に供される原料等などの製造方法は特に制限されない。
【0027】
高度水素化処理に用いられる留分としては、常圧蒸留装置から留出した灯油留分(直留灯油)、熱分解装置から留出した灯油留分が挙げられるが、熱分解装置から留出した灯油留分を好適に用いることができる。
【0028】
<<ジェット燃料油基材の性状>>
ジェット燃料油基材の15℃における密度が0.85g/cm3以下である。15℃における密度が0.85g/cm3以下であると、BOCLE試験における摩耗痕径が0.85mm以下とすることができ、ジェット燃料油基材の潤滑性に優れる。
上記観点から、ジェット燃料油基材の15℃における密度としては、0.84g/cm3以下であることが好ましい。
なお、15℃における密度は、JIS K 2249(2011)「原油及び石油製品-密度試験方法」によって測定できる。
【0029】
ジェット燃料油基材の90%留出温度が230℃以上である。90%留出温度が230℃以上であると、BOCLE試験における摩耗痕径が0.85mm以下とすることができ、ジェット燃料油基材の潤滑性に優れる。上記観点から、ジェット燃料油基材の90%留出温度としては、236℃以上であることが好ましい。
なお、90%留出温度はJIS K 2254「石油製品-蒸留試験方法(常圧法)」によって測定できる。
【0030】
ジェット燃料油基材の硫黄分は、ジェット燃料油基材の全質量に対して、好ましくは10質量ppm以下である。硫黄分が、10質量ppm以下に脱硫処理されることにより、ジェット燃料油基材を所定量配合したジェット燃料油組成物の安定性がより改善される傾向がある。
硫黄分は、JIS K 2541(2003)の微量電量滴定式酸化法により測定できる。
【0031】
<ジェット燃料油組成物>
本発明に係るジェット燃料油組成物は、本発明に係るジェット燃料油基材を組成物の全体積に対して、20容量%以上含有し、好ましくは80容量%以上、より好ましくは80容量%~99.9容量%である。
また、本発明に係るジェット燃料油組成物では、本発明に係るジェット燃料油基材を含有した分、直留灯油を水素化脱硫して得た留分等の、従来のジェット燃料油基材として用いられる灯油留分の配合量を低減することが可能となる。
【0032】
本発明に係るジェット燃料油組成物は、従来のジェット燃料油基材をさらに含有してもよい。
【0033】
<その他の燃料油基材>
本発明に係るジェット燃料油組成物は、燃料油基材として、本発明に係るジェット燃料油基材、灯油基材以外の燃料油基材(以下、「その他の燃料油基材」ともいう。)を含んでいてもよい。
その他の燃料油基材としては、原油を常圧蒸留して得られるナフサ留分、灯油留分及びそれらを脱硫した脱硫ナフサ、脱硫灯油を用いることができる。また、灯油留分を脱蝋処理した留分や、水素化脱硫装置や水素化分解装置、接触分解装置、熱分解装置などから得られるナフサから灯油までの留分を用いることもできるし、それらを直接水素化処理した基材や、処理原油を常圧蒸留して得られるナフサから灯油までの留分を混合したものに、更に脱硫処理などの処理を施した基材も利用できる。更に、各種原料をガス化して得られる合成ガス(一酸化炭素(CO)及び水素)からフィッシャー・トロプシュ(FT)反応により合成したナフサ、灯油留分なども利用できる。本発明の航空機用燃料油組成物の製造には、各種燃料油基材を任意に用いることができる。
その他の燃料油基材は、1種単独で用いてもよく、又は、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
<<添加剤>>
本発明に係るジェット燃料油組成物は本発明に係るジェット燃料油基材、灯油基材、及び、その他の燃料油基材の他に、必要に応じて、各種の添加剤を適宜配合することができる。
このような添加剤としては、氷結防止剤、酸化防止剤、金属不活性剤、静電気防止剤、潤滑性向上剤、導電度調整剤、腐食防止剤等の公知の燃料添加剤が挙げられる。
これらの添加剤は、1種単独で用いてもよく、又は、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
[ジェット燃料油組成物の製造方法]
本発明に係るジェット燃料油組成物の製造方法は、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。製造方法としては、例えば、特定の性状を有する本発明に係るジェット燃料油基材を、組成物の全体積に対して、例えば、20容量%以上含有するように配合して、各航空タービン燃料油規格を満たすように調製すればよい。
【実施例】
【0036】
以下に本発明の内容を実施例及び比較例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0037】
(実施例1及び2並びに比較例1)
表1に示す性状の基材1~3を、実施例1及び2並びに比較例1のジェット燃料油基材とした。
なお、上記基材1~3は、以下の高度水素化処理により得られた基材である。
【0038】
原油の減圧蒸留残渣を主とする熱分解原料油を熱分解処理し、得られた熱分解油を水素分圧14MPaで水素化脱硫処理を行い、高度水素化処理油を分留することで、常圧蒸留初留点が184℃、90%留出温度が255℃である留分(基材1)、90%留出温度が242℃である留分(基材2)及び90%留出温度が230℃である留分(基材3)をそれぞれ得た。
【0039】
-評価-
(潤滑性)
上記の実施例1及び2並びに比較例1のジェット燃料油基材について、BOCLE試験を行い、潤滑性を評価した。
なお、BOCLE試験において、摩耗痕径(WSD値)が0.85mm以下であると、潤滑性に優れるといえる。結果を表1に示す。
【0040】
【0041】
表1中、「T90」とは、90%留出温度を意味する。
【0042】
表1に示すように、実施例1及び実施例2のジェット燃料油基材は比較例1と比べて、潤滑性に優れていることが分かった。
また、実施例1及び実施例2のジェット燃料油基材は、BOCLE試験における摩耗痕径(WSD値)が0.85mm以下であるので、これらのジェット燃料油基材を含ませた燃料油組成物を用いた場合でも潤滑性に優れているといえる。
【0043】
以上より、本発明に係るジェット燃料油基材は、90%留出温度が230℃以上、15℃における密度が0.85g/cm3以下である高度水素化処理油であり、かつ、三環ナフテン/二環ナフテンの比が0.15以上の高度水素化処理油であるので、ジェット燃料油の代替基材として用いた場合であっても潤滑性に優れ、航空用タービンエンジンに用いる燃料油(航空タービン燃料油)などの航空機用燃料油基材として好適に用いることができる。