(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ドライバ装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/16 20060101AFI20221221BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20221221BHJP
H03K 5/12 20060101ALI20221221BHJP
H02P 29/68 20160101ALI20221221BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H03K17/16 H
H03K17/687 A
H03K5/12
H02P29/68
H02M1/08 A
(21)【出願番号】P 2018186415
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大和 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 登
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222681(JP,A)
【文献】特開2013-115931(JP,A)
【文献】特開2014-160928(JP,A)
【文献】特開2017-118807(JP,A)
【文献】特開2012-200092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 4/00
H03K 99/00
H02M1/00-H02M1/44
H02P25/08-H02P31/00
H03K5/00-H03K5/26
H03K17/00-H03K17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対し直列に接続されるべき
トランジスタをスイッチング駆動するドライバ装置において、
前記トランジスタは第1対象トランジスタ及び第2対象トランジスタを含み、
当該ドライバ装置は、
各対象トランジスタのゲート電圧を制御する回路であって、
各対象トランジスタのゲート電圧を変化させる際の
各対象トランジスタのゲート電圧のスルーレートを
個別に複数段階で変更可能に形成されたゲート駆動回路と、
前記第1対象トランジスタの温度である第1対象温度に応じた第1温度信号に基づき前記第1対象トランジスタのゲート電圧のスルーレートを可変設定し、且つ、前記第2対象トランジスタの温度である第2対象温度に応じた第2温度信号に基づき前記第2対象トランジスタのゲート電圧のスルーレートを可変設定するスルーレート設定回路と、を備え、
前記ゲート駆動回路及び前記スルーレート設定回路を含む回路群が半導体集積回路として構成され、前記半導体集積回路の筐体に第1出力端子、第2出力端子、第1温度信号用端子及び第2温度信号用端子を含む複数の外部端子が設けられ、
前記第1対象温度及び前記第2対象温度を測定するための測温回路並びに各対象トランジスタは、前記半導体集積回路の外部に設けられ、
前記ゲート駆動回路は、前記第1出力端子を介して前記第1対象トランジスタのゲートに接続され、前記第2出力端子を介して前記第2対象トランジスタのゲートに接続され、
前記測温回路が前記第1温度信号用端子及び前記第2温度信号用端子に接続されて、前記測温回路からの前記第1温度信号及び前記第2温度信号が前記第1温度信号用端子及び前記第2温度信号用端子に入力され、
前記第1温度信号用端子及び前記第2温度信号用端子は互いに隣接する2つの外部端子であり、
前記ゲート駆動回路は、前記対象トランジスタごとに、前記スルーレートを、第1レート及び前記第1レートよりも大きな第2レートを含む複数のレートの間で変更可能であり、
前記スルーレート設定回路は、前記対象トランジスタごとに、対応するスルーレートが前記第1レートに設定されている状態において、対応する対象温度の上昇を示す特定の変化が対応する温度信号に生じたとき、対応するスルーレートを前記第2レートに変更し、
前記ゲート駆動回路は、前記対象トランジスタごとに、定電流にて前記対象トランジスタのゲートに対し電荷を供給する又は前記対象トランジスタのゲートから電荷を引き抜くことで、前記対象トランジスタの状態をオフ状態及びオン状態間で切り替え、前記対象トランジスタごとに、前記定電流の値が可変とされることで、対応するスルーレートが変更可能とされる
、ドライバ装置。
【請求項2】
前記第1温度信号は前記第1対象温度に応じた電圧を有し、前記第2温度信号は前記第2対象温度に応じた電圧を有し、
前記スルーレート設定回路は、前記対象トランジスタごとに、対応する温度信号の電圧と所定の基準電圧との比較結果に基づき、対応するスルーレートを可変設定する
、請求項1に記載のドライバ装置。
【請求項3】
フルブリッジ回路と、
前記フルブリッジ回路を駆動するドライバ装置と、
直流モータと、を備えたモータ駆動システムであって、
前記ドライバ装置として、請求項1又は2に係るドライバ装置が用いられ、
前記フルブリッジ回路は、互いに直列接続された第1出力トランジスタ及び第3出力トランジスタと、互いに直列接続された第2出力トランジスタ及び第4出力トランジスタと、を有し、
前記第1出力トランジスタ及び前記第3出力トランジスタ間の第1接続ノードと、前記第2出力トランジスタ及び前記第4出力トランジスタ間の第2接続ノードとの間に直流モータが接続され、
前記ドライバ装置により各出力トランンジスタをスイッチング駆動することを通じ、前記直流モータに電流を供給し、
前記第1対象トランジスタ及び前記第2対象トランジスタは、前記第1出力トランジスタ~前記第4出力トランジスタの内の何れか2つである
、モータ駆動システム。
【請求項4】
前記直流モータにて所定部品の冷却用ファンが駆動される
、請求項3に記載のモータ駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の負荷に対して直列接続される出力トランジスタを有し、出力トランジスタをスイッチング駆動することを通じて負荷に電力を供給するシステムにおいて(例えば特許文献1参照)、出力トランジスタのゲート電圧のスルーレートが調整されることがある。
【0003】
スルーレートを低く抑えることで、EMI(Electro Magnetic Interference)に関わる電波輻射の抑制等が図られる。一方で、スルーレートの低下は出力トランジスタの損失増加に繋がる。これらを比較考量して、スルーレートを所望レートに設定するといった手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記手法において、一旦設定されたスルーレートは固定値を持つため、出力トランジスタの発熱量は一定となる。しかし、スルーレートを固定することが適切にならないこともある。例えば、常温環境において適切なスルーレートを高温環境下にもそのまま適用したとき、出力トランジスタの温度が高くなりすぎて出力トランジスタが破損するおそれがある、又は、安全のため出力トランジスタのスイッチング駆動を停止せざるを得ないことがある。ゲート電圧のスルーレートを適正化できる技術の開発が望まれる。
【0006】
本発明は、温度に関連してゲート電圧のスルーレートの適正化に寄与するドライバ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るドライバ装置は、負荷に対し直列に接続されるべき対象トランジスタをスイッチング駆動するドライバ装置において、前記対象トランジスタのゲート電圧を制御する回路であって、前記ゲート電圧を変化させる際の前記ゲート電圧のスルーレートを複数段階で変更可能に形成されたゲート駆動回路と、前記対象トランジスタの温度と相関関係を持つ対象温度に応じた温度信号に基づき前記スルーレートを可変設定するスルーレート設定回路と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
具体的には例えば、前記ドライバ装置において、前記ゲート駆動回路は、前記スルーレートを、第1レート及び前記第1レートよりも大きな第2レートを含む複数のレートの間で変更可能であり、前記スルーレート設定回路は、前記スルーレートが前記第1レートに設定されている状態において、前記対象温度の上昇を示す特定の変化が前記温度信号に生じたとき、前記スルーレートを前記第2レートに変更すると良い。
【0009】
また例えば、前記ドライバ装置において、前記ゲート駆動回路は、定電流にて前記対象トランジスタのゲートに対し電荷を供給する又は前記対象トランジスタのゲートから電荷を引き抜くことで、前記対象トランジスタの状態をオフ状態及びオン状態間で切り替え、前記定電流の値が可変とされることで前記スルーレートが変更可能とされると良い。
【0010】
また具体的には例えば、前記ドライバ装置において、前記対象トランジスタの温度が上昇、低下したとき、それに伴って前記対象温度も上昇、低下する、或いは、前記対象温度が上昇、低下したとき、それに伴って前記対象トランジスタの温度も上昇、低下すると言える。
【0011】
また具体的には例えば、前記ドライバ装置において、前記対象温度は、前記対象トランジスタの温度又は当該ドライバ装置の周辺温度であって、前記温度信号は、当該ドライバ装置に接続された又は当該ドライバ装置に設けられた、前記対象温度を測定するための測温回路を用いて得られると良い。
【0012】
この際例えば、前記ドライバ装置において、前記ゲート駆動回路及び前記スルーレート設定回路を含む回路群が半導体集積回路として構成され、前記半導体集積回路の筐体に、出力端子及び温度信号用端子を含む複数の外部端子が設けられ、前記対象トランジスタ及び前記測温回路は前記半導体集積回路の外部に設けられ、前記ゲート駆動回路は前記出力端子を介して前記対象トランジスタのゲートに接続され、前記測温回路は前記温度信号用端子に接続されると良い。
【0013】
そして例えば、前記ドライバ装置において、前記対象温度に応じた電圧を有する原温度信号が前記測温回路から前記温度信号用端子に入力され、前記スルーレート設定回路は、前記温度信号用端子に入力された前記原温度信号の電圧と所定の基準電圧との比較結果に基づき、前記スルーレートを可変設定すると良い。
【0014】
或いは例えば、前記ドライバ装置において、前記ゲート駆動回路、前記スルーレート設定回路及び前記対象トランジスタを含む回路群が半導体集積回路として構成され、前記測温回路と前記対象トランジスタが共通の筐体内に設けられても良い。
【0015】
また例えば、当該ドライバ装置は、前記負荷としての直流モータに対するフルブリッジ回路を駆動可能に構成され、前記フルブリッジ回路を形成する4つの出力トランジスタの夫々が前記対象トランジスタとして機能し、前記対象温度と各出力トランジスタの温度との間に相関関係があり、前記ゲート駆動回路は、各出力トランジスタのゲート電圧を制御し、前記スルーレート設定回路は、前記対象温度に応じた前記温度信号に基づき各出力トランジスタのゲート電圧のスルーレートを可変設定しても良い。
【0016】
また例えば、前記ドライバ装置において、前記負荷は直流モータであって良い。
【0017】
また例えば、前記ドライバ装置において、前記直流モータにて所定部品の冷却用ファンが駆動されても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、温度に関連してゲート電圧のスルーレートの適正化に寄与するドライバ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の基本実施形態に係るモータ駆動システムの構成図である。
【
図2】本発明の基本実施形態に係るドライバICの概略的な外観図である。
【
図3】本発明の基本実施形態に係り、駆動制御信号(PWM信号)と2つのゲート電圧のタイミングチャート図である。
【
図4】本発明の基本実施形態に係り、1つの個別駆動回路の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の基本実施形態に係り、スルーレートの調整範囲を示す図である。
【
図6】本発明の基本実施形態に係り、スルーレートの設定の流れを示すである。
【
図7】本発明の基本実施形態に係り、測温素子の配置位置の説明図である。
【
図8】本発明の基本実施形態に係り、対象温度と原温度信号との関係図である。
【
図9】本発明の基本実施形態に係り、測温回路の構成例を示す図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係り、温度判定回路の構成例を示す図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係り、対象温度、原温度信号、判定温度信号及び実スルーレートの関係を示すタイミングチャート図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係り、対象温度、原温度信号、判定温度信号及び実スルーレートの関係を示すタイミングチャート図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係り、測温回路の内部構成と、測温回路及び温度判定回路の入出力信号を示す図である。
【
図14】本発明の第4実施形態に係り、測温回路の内部構成と、測温回路及び温度判定回路の入出力信号を示す図である。
【
図15】本発明の第5実施形態に係り、複数の出力トランジスタと複数のモータとの接続関係を示す図である。
【
図16】本発明の第6実施形態に係るモータ駆動システムの構成図である。
【
図17】本発明の第7実施形態に係り、車両にモータ駆動システムが搭載される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“G[1]”によって参照されるゲート接続端子は(
図1参照)、ゲート接続端子G[1]と表記されることもあるし、端子G[1]と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0021】
まず、本実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、0V(ゼロボルト)の基準電位を有する導電部を指す又は基準電位そのものを指す。各実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。ラインは配線と同義である。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
【0022】
[基本実施形態]
本発明の基本実施形態を説明する。
図1は、本発明の基本実施形態に係るモータ駆動システム1の構成図である。モータ駆動システム1は、ドライバIC10、MPU(micro-processing unit)20、測温回路30、モータ40及び出力トランジスタM[1]~M[4]を備える。MPU20、測温回路30及び出力トランジスタM[1]~M[4]は、ドライバIC10の外部に設けられてドライバIC10に対し外付け接続される。モータ40は、ドライバIC10の負荷としてのブラシ付き直流モータである。
【0023】
ドライバIC10は、制御ロジック11、ゲート駆動回路12及び温度判定回路13を備える。この他にも、ドライバIC10には、必要な電圧を生成するためのチャージポンプ回路や、各出力トランジスタでの過電流の発生有無を検出する回路などが設けられるが、それらの図示は省略している。
【0024】
図2はドライバIC10の概略的な外観図である。ドライバIC10は、半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品であり、その半導体集積回路では、制御ロジック11、ゲート駆動回路12及び温度判定回路13を含む回路群が半導体にて集積化されている。ドライバIC10の筐体には、ドライバIC10の外部に対して露出した外部端子が複数設けられている。尚、
図2に示されるドライバIC10の外部端子の数は例示に過ぎない。
【0025】
ドライバIC10に設けられる複数の外部端子には、ゲート接続端子G[1]~G[4]と、ソース接続端子S[1]~S[2]及びSCOMと、原温度信号Saを受けるための外部端子TM1(温度信号用端子)と、駆動制御信号PWM1及びPWM2を受けるための外部端子TM2及びTM3と、通信用端子TM4と、直流の所定の電源電圧VCC(例えば5V)を受けるための電源入力端子TM5と、が含まれる。この他にも、リセット信号を受けるための外部端子や、グランドに接続されるべき外部端子などがドライバIC10には設けられる。通信用端子TM4は複数の外部端子から構成される。制御ロジック11及び温度判定回路13は電源電圧VCCに基づき駆動する。
【0026】
出力トランジスタM[1]~M[4]は、夫々、Nチャネル型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)として構成されている。図示されていないが、各出力トランジスタを構成するMOSFETにおいて、MOSFETのソースからドレインに向かう方向を順方向とする寄生ダイオードがMOSFETに対して並列に形成及び接続される。尚、出力トランジスタM[1]及びM[2]をPチャネル型のMOSFETにて構成する変形も可能である。
【0027】
図1の構成では、出力トランジスタM[1]~M[4]にてモータ40に対するフルブリッジ回路(Hブリッジ回路)が構成されており、この際、出力トランジスタM[1]及びM[2]がハイサイドトランジスタとして機能し、出力トランジスタM[3]及びM[4]がローサイドトランジスタとして機能する。
【0028】
詳細には、出力トランジスタM[1]及びM[2]の各ドレインは所定の正の電源電圧VPWR(例えば12V)が加わる電源ラインに接続され、出力トランジスタM[3]及びM[4]の各ソースはグランドに接続される。出力トランジスタM[1]のソースと出力トランジスタM[3]のドレインはノードNDaにて共通接続され、出力トランジスタM[2]のソースと出力トランジスタM[4]のドレインはノードNDbにて共通接続される。ノードNDa及びNDb間にモータ40が接続される。ノードNDaからモータ40を介しノードNDbに向かう電流が流れるとき、モータ40は第1回転方向に回転し(この回転を正転と称する)、ノードNDbからモータ40を介しノードNDaに向かう電流が流れるとき、モータ40は第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転する(この回転を逆転と称する)。出力トランジスタM[1]~M[4]のゲートは、夫々、ドライバIC10のゲート接続端子G[1]~G[4]に接続される。出力トランジスタM[1]及びM[2]のソースは、夫々、ドライバIC10のソース接続端子S[1]及びS[2]に接続される。出力トランジスタM[3]及びM[4]のソースはソース接続端子SCOMに共通接続される。
【0029】
ゲート駆動回路12は、出力トランジスタM[1]~M[4]のゲートを駆動する回路であって、それらを個別に駆動するための個別駆動回路12[1]~12[4]を備える。個別駆動回路12[1]~12[4]の夫々は、対応するゲート接続端子及びソース接続端子に接続される。個別駆動回路12[1]~12[4]に対応するゲート接続端子は夫々ゲート接続端子G[1]~G[4]である。個別駆動回路12[1]及び12[2]に対応するソース接続端子は夫々ソース接続端子S[1]及びS[2]であり、個別駆動回路12[3]及び12[4]に対応するソース接続端子はソース接続端子SCOMである。
【0030】
個別駆動回路12[1]~12[4]は、夫々、制御ロジック11の制御の下で、出力トランジスタM[1]~M[4]のゲートを駆動する。出力トランジスタM[1]~M[4]のゲート電圧を、夫々、VG[1]~VG[4]にて表す。個別駆動回路12[1]~12[4]は、対応するゲート電圧VG[1]~VG[4]をローレベル及びハイレベル間で切り替えることで、出力トランジスタM[1]~M[4]をスイッチング駆動することができる。
【0031】
個別駆動回路12[1]及び12[2]にはハイサイド駆動用電圧として内部電源電圧VCPが供給され、個別駆動回路12[3]及び12[4]にはローサイド駆動用電圧として内部電源電圧Vregが供給される。内部電源電圧VCPは、ドライバIC10に対して供給された所定の直流電圧をチャージポンプ回路等を利用して昇圧することで生成される。内部電源電圧Vregは上記直流電圧そのものである、或いは、その直流電圧からドライバIC10内で生成される。内部電源電圧VCPは電源電圧VPWRよりも高く、且つ、電圧VCP及びVPWR間の差は出力トランジスタM[1]及びM[2]のゲート閾値電圧よりも十分に大きい。故に、個別駆動回路12[1]及び12[2]は電圧VCPを用いて出力トランジスタM[1]及びM[2]をオンにすることができる。電圧Vregは出力トランジスタM[3]及びM[4]のゲート閾値電圧よりも十分に大きい。故に、個別駆動回路12[3]及び12[4]は電圧Vregを用いて出力トランジスタM[3]及びM[4]をオンにすることができる。
【0032】
制御ロジック11は、通信用端子TM4を介しMPU20と双方向通信が可能である。制御ロジック11及びMPU20間の双方向通信は、例えばSPI(Serial Peripheral Interface)により実現される。
【0033】
また、MPU20から制御ロジック11に対し駆動制御信号PWM1及びPWM2が供給される。駆動制御信号PWM1は、出力トランジスタM[1]及びM[3]から成る第1ハーフブリッジ回路に対するPWM信号(パルス幅変調信号)であり、駆動制御信号PWM2は、出力トランジスタM[2]及びM[4]から成る第2ハーフブリッジ回路に対するPWM信号(パルス幅変調信号)である。
【0034】
個別駆動回路12[1]及び12[3]により、駆動制御信号PWM1に従って出力トランジスタM[1]及びM[3]がPWM駆動され、個別駆動回路12[2]及び12[4]により、駆動制御信号PWM2に従って出力トランジスタM[2]及びM[4]がPWM駆動される。駆動制御信号PWM1及びPWM2の夫々は、ローレベル又はハイレベルをとるデジタル信号である。
【0035】
駆動制御信号PWM1がハイレベルであるとき、個別駆動回路12[1]及び12[3]によりゲート電圧VG[1]、VG[3]が夫々ハイレベル、ローレベルとされることで出力トランジスタM[1]及びM[3]が夫々オン、オフとなる。駆動制御信号PWM1がローレベルであるとき、個別駆動回路12[1]及び12[3]によりゲート電圧VG[1]、VG[3]が夫々ローレベル、ハイレベルとされることで出力トランジスタM[1]及びM[3]が夫々オフ、オンとなる。但し、駆動制御信号PWM1がローレベルからハイレベルに切り替わったとき、その切り替わりのタイミングから所定の遅延時間が経たのちに、ゲート電圧VG[1]のローレベルからハイレベルへの切り替え及びゲート電圧VG[3]のハイレベルからローレベルへの切り替えが行われる。同様に、駆動制御信号PWM1がハイレベルからローレベルに切り替わったとき、その切り替わりのタイミングから所定の遅延時間が経たのちに、ゲート電圧VG[1]のハイレベルからローレベルへの切り替え及びゲート電圧VG[3]のローレベルからハイレベルへの切り替えが行われる。
【0036】
駆動制御信号PWM2がハイレベルであるとき、個別駆動回路12[2]及び12[4]によりゲート電圧VG[2]、VG[4]が夫々ハイレベル、ローレベルとされることで出力トランジスタM[2]及びM[4]が夫々オン、オフとなる。駆動制御信号PWM2がローレベルであるとき、個別駆動回路12[2]及び12[4]によりゲート電圧VG[2]、VG[4]が夫々ローレベル、ハイレベルとされることで出力トランジスタM[2]及びM[4]が夫々オフ、オンとなる。但し、駆動制御信号PWM2がローレベルからハイレベルに切り替わったとき、その切り替わりのタイミングから所定の遅延時間が経たのちに、ゲート電圧VG[2]のローレベルからハイレベルへの切り替え及びゲート電圧VG[4]のハイレベルからローレベルへの切り替えが行われる。同様に、駆動制御信号PWM2がハイレベルからローレベルに切り替わったとき、その切り替わりのタイミングから所定の遅延時間が経たのちに、ゲート電圧VG[2]のハイレベルからローレベルへの切り替え及びゲート電圧VG[4]のローレベルからハイレベルへの切り替えが行われる。
【0037】
ゲート電圧VG[1]及びVG[2]のハイレベルは、内部電源電圧VCPのレベルと一致する。ゲート電圧VG[1]及びVG[2]がハイレベルであるとき、夫々、出力トランジスタM[1]及びM[2]はオン状態となる。ゲート電圧VG[1]及びVG[2]のローレベルは、夫々、ソース接続端子S[1]及びS[2]のレベルと一致する。ゲート電圧VG[1]及びVG[2]がローレベルであるとき、夫々、出力トランジスタM[1]及びM[2]はオフ状態となる。
【0038】
ゲート電圧VG[3]及びVG[4]のハイレベルは、内部電源電圧Vregのレベルと一致する。ゲート電圧VG[3]及びVG[4]がハイレベルであるとき、夫々、出力トランジスタM[3]及びM[4]はオン状態となる。ゲート電圧VG[3]及びVG[4]のローレベルは、夫々、ソース接続端子S[3]及びS[4]のレベル(即ちグランドのレベル)と一致する。ゲート電圧VG[3]及びVG[4]がローレベルであるとき、夫々、出力トランジスタM[3]及びM[4]はオフ状態となる。
【0039】
図3に駆動制御信号PWM1とゲート電圧VG[1]及びVG[3]との関係を示す。駆動制御信号PWM1がローレベルであって且つゲート電圧VG[1]及びVG[3]が夫々ローレベル及びハイレベルである状態を起点として、タイミングt
1にて駆動制御信号PWM1がローレベルからハイレベルに切り替わったとする。このとき、タイミングt
1から所定の遅延時間t
DLY1が経過したタイミングt
2より、ゲート電圧VG[1]のローレベルからハイレベルへの遷移動作VG
UP[1]が開始されると共にゲート電圧VG[3]のハイレベルからローレベルへの遷移動作VG
DWN[3]が開始される。尚、出力トランジスタM[1]及びM[3]を介した貫通電流が発生するのを抑止するべく、遷移動作VG
DWN[3]の開始から若干遅れて遷移動作VG
UP[1]が開始されるようにしても良い。
【0040】
遷移動作VGUP[1]の開始後、ゲート電圧VG[1]のスルーレートに応じた時間が経過すると遷移動作VGUP[1]が完了して、ゲート電圧VG[1]のハイレベルへの遷移が完了する。遷移動作VGDWN[3]の開始後、ゲート電圧VG[3]のスルーレートに応じた時間が経過すると遷移動作VGDWN[3]が完了して、ゲート電圧VG[3]のローレベルへの遷移が完了する。その後、ゲート電圧VG[1]及びVG[3]が夫々ハイレベル及びローレベルであるタイミングt3にて、駆動制御信号PWM1がハイレベルからローレベルに切り替わったとする。このとき、タイミングt3から所定の遅延時間tDLY2が経過したタイミングt4より、ゲート電圧VG[1]のハイレベルからローレベルへの遷移動作VGDWN[1]が開始されると共にゲート電圧VG[3]のローレベルからハイレベルへの遷移動作VGUP[3]が開始される。尚、出力トランジスタM[1]及びM[3]を介した貫通電流が発生するのを抑止するべく、遷移動作VGDWN[1]の開始から若干遅れて遷移動作VGUP[3]が開始されるようにしても良い。
【0041】
遷移動作VGDWN[1]の開始後、ゲート電圧VG[1]のスルーレートに応じた時間が経過すると遷移動作VGDWN[1]が完了して、ゲート電圧VG[1]のローレベルへの遷移が完了する。遷移動作VGUP[3]の開始後、ゲート電圧VG[3]のスルーレートに応じた時間が経過すると遷移動作VGUP[3]が完了して、ゲート電圧VG[3]のハイレベルへの遷移が完了する。
【0042】
図3を参照して駆動制御信号PWM1とゲート電圧VG[1]及びVG[3]との関係を説明したが、駆動制御信号PWM2とゲート電圧VG[2]及びVG[4]との関係についても同様である(
図3の説明に関わる“PWM1”、“[1]”、“[3]”を、夫々、“PWM2”、“[2]”、“[4]”に読み替えれば足る)。
【0043】
故に例えば、1、2、3及び4の何れかを示す整数iを用いたとき、ゲート電圧VG[i]のローレベルからハイレベルへの遷移動作は“VGUP[i]”にて表され、ゲート電圧VG[i]のハイレベルからローレベルへの遷移動作は“VGDWN[i]”にて表される。個別駆動回路12[i]による遷移動作VGUP[i]では、ゲート電圧VG[i]が所定のスルーレートにてローレベルの電位からハイレベルの電位へと徐々に上昇してゆき、ゲート電圧VG[i]がハイレベルの電位(VCP又はVreg)に達した時点で遷移動作VGUP[i]が完了する。個別駆動回路12[i]による遷移動作VGDWN[i]では、ゲート電圧VG[i]が所定のスルーレートにてハイレベルの電位からローレベルの電位へと徐々に低下してゆき、ゲート電圧VG[i]がローレベルの電位(対応する出力トランジスタのソース電位に相当)に達した時点で遷移動作VGDWN[i]が完了する。ゲート電圧VG[i]のスルーレートは、ゲート電圧VG[i]がローレベル及びハイレベル間で切り替わる際のゲート電圧VG[i]の変化率(変化の傾き)を指す。
【0044】
ここで、個別駆動回路12[1]~12[4]は、夫々、ゲート電圧VG[1]~VG[4]のスルーレートを複数段階で変更可能に構成されている。測温回路30、温度判定回路13及び制御ロジック11は、スルーレートの設定に関与するが、それらの説明は後に設けることとし、先に個別駆動回路12[1]~12[4]の構成を説明する。個別駆動回路12[1]~12[4]は互いに同一の構成を有する。故に、1、2、3及び4の何れかを示す整数iを用い、個別駆動回路12[i]の構成例を説明する。
【0045】
図4は個別駆動回路12[i]の等価回路図である。個別駆動回路12[i]は、内部電源電圧を元にソース側定電流I
A0~I
A4を生成する5個の定電流源から成るソース側電流回路121と、内部電源電圧を元にシンク側定電流I
B0~I
B4を生成する5個の定電流源から成るシンク側電流回路122と、を有する。個別駆動回路12[1]及び12[2]にとっての内部電源電圧は電圧VCPであり、個別駆動回路12[3]及び12[4]にとっての内部電源電圧は電圧Vregである。
【0046】
また、個別駆動回路12[i]は、自身に対応するゲート接続端子G[i]とソース側電流回路121との間に直列に挿入されたソース側スイッチ群123と、自身に対応するゲート接続端子G[i]とシンク側電流回路122との間に直列に挿入されたシンク側スイッチ群124と、を有する。個別駆動回路12[i]において、ソース側スイッチング群123は回路121及び端子G[i]間に設けられた複数のスイッチから成り、シンク側スイッチ群124は端子G[i]及び回路122間に設けられた複数のスイッチから成る。任意のスイッチは1以上のFET(電界効果トランジスタ)にて構成される。
【0047】
個別駆動回路12[i]において、シンク側電流回路122及びシンク側スイッチ群124は、対応するゲート接続端子G[i]と対応するソース接続端子(S[i]又はSCOM)との間に直列に挿入される。上述したように、個別駆動回路12[1]~12[4]に対応するゲート接続端子は夫々ゲート接続端子G[1]~G[4]である。個別駆動回路12[1]及び12[2]に対応するソース接続端子は夫々ソース接続端子S[1]及びS[2]であり、個別駆動回路12[3]及び12[4]に対応するソース接続端子はソース接続端子SCOMである。
【0048】
定電流IA0及びIB0の値は所定の基準値である。定電流IA1、IA2、IA3、IA4の値は、夫々、基準値の2倍、4倍、8倍、16倍に設定されている。定電流IB1、IB2、IB3、IB4の値も、夫々、基準値の2倍、4倍、8倍、16倍に設定されている。
【0049】
個別駆動回路12[i]による、ゲート電圧VG[i]をローレベルからハイレベルへ遷移させるための遷移動作VGUP[i]を説明する。遷移動作VGUP[i]において、ソース側定電流IA0~IA4の内の何れか1以上の定電流による電荷(正の電荷)がソース側電流回路121からゲート接続端子G[i]及び出力トランジスタM[i]のゲートに供給される。これによってゲート電圧VG[i]のレベルがハイレベルに向けて上昇してゆき、ゲート電圧VG[i]のレベルがハイレベル(内部電源電圧VCPのレベル)に達するとゲート電圧VG[i]の上昇は停止する。
【0050】
遷移動作VG
UP[i]において、シンク側スイッチ群124の機能により、ゲート接続端子G[i]及び出力トランジスタM[i]のゲートはシンク側電流回路122に対して非接続とされ、故に、シンク側定電流I
B0~I
B4は流れない。また、個別駆動回路12[i]において、遷移動作VG
UP[i]が開始された後、次に遷移動作VG
DWN[i]が開始されるまでは、シンク側スイッチ群124の機能により、ゲート接続端子G[i]及び出力トランジスタM[i]のゲートはシンク側電流回路122に対して非接続とされ、故に、シンク側定電流I
B0~I
B4は流れない。即ち例えば、個別駆動回路12[1]に関して言えば(
図3参照)、駆動制御信号PWM1のローレベルからハイレベルへの遷移に伴って遷移動作VG
UP[1]が開始された後、駆動制御信号PWM1のハイレベルからローレベルへの遷移に伴って遷移動作VG
DWN[1]が開始されるまでは、シンク側スイッチ群124の機能により、ゲート接続端子G[1]及び出力トランジスタM[1]のゲートはシンク側電流回路122に対して非接続とされ、故に、シンク側定電流I
B0~I
B4は流れない。
【0051】
遷移動作VGUP[i]では、ソース側スイッチ群123の機能により、ソース側定電流IA0~IA4を生成する5個の定電流源の内、何れか1つ、何れか2つ、何れか3つ、何れか4つ又は全ての定電流源が選択的にゲート接続端子G[i]に接続され、結果、定電流IA0~IA4の内、何れか1つ、何れか2つの和電流、何れか3つの和電流、何れか4つの和電流又は全ての定電流の和電流が、選択的に、ゲート接続端子G[i]に向けて供給される。
【0052】
遷移動作VGUP[i]にてソース側電流回路121からソース側スイッチ群123を介しゲート接続端子G[i]に向けて供給される電流を記号“ISOURCE”にて参照する。ここでは、説明の具体化ため、定電流IA0の値が1mAであるとする。そうすると、定電流IA0~IA4の組み合わせにより、遷移動作VGUP[i]において、1mA~31mAまでの範囲内の電流ISOURCEをゲート接続端子G[i]に供給することができ、その電流ISOURCEは1mA刻みで変更可能となる。遷移動作VGUP[i]において、電流ISOURCEがn倍になればゲート電圧VG[i]のスルーレートもn倍になる(nは整数又は分数)。
【0053】
電流ISOURCEの値は、制御ロジック11から個別駆動回路12[i]に供給されるスルーレート制御信号SOURCE[4:0]にて指定及び設定される。スルーレート制御信号SOURCE[4:0]は5ビットのデジタル信号から成る。電流ISOURCEの値の設定を通じて遷移動作VGUP[i]でのゲート電圧VG[i]のスルーレートが設定される。
【0054】
個別駆動回路12[i]による、ゲート電圧VG[i]をハイレベルからローレベルへ遷移させるための遷移動作VGDWN[i]を説明する。遷移動作VGDWN[i]において、シンク側定電流IB0~IB4の内の何れか1以上の定電流による電荷(正の電荷)がシンク側電流回路122により出力トランジスタM[i]のゲートから引き抜かれる。これによってゲート電圧VG[i]のレベルがローレベルに向けて低下してゆき、ゲート電圧VG[i]のレベルがローレベル(対応する出力トランジスタのソース電位に相当)に達するとゲート電圧VG[i]の低下は停止する。
【0055】
遷移動作VG
DWN[i]において、ソース側スイッチ群123の機能により、ゲート接続端子G[i]及び出力トランジスタM[i]のゲートはソース側電流回路121に対して非接続とされ、故に、ソース側定電流I
A0~I
A4は流れない。また、個別駆動回路12[i]において、遷移動作VG
DWN[i]が開始された後、次に遷移動作VG
UP[i]が開始されるまでは、ソース側スイッチ群123の機能により、ゲート接続端子G[i]及び出力トランジスタM[i]のゲートはソース側電流回路121に対して非接続とされ、故に、ソース側定電流I
A0~I
A4は流れない。即ち例えば、個別駆動回路12[3]に関して言えば(
図3参照)、駆動制御信号PWM1のローレベルからハイレベルへの遷移に伴って遷移動作VG
DWN[3]が開始された後、駆動制御信号PWM1のハイレベルからローレベルへの遷移に伴って遷移動作VG
UP[3]が開始されるまでは、ソース側スイッチ群123の機能により、ゲート接続端子G[3]及び出力トランジスタM[3]のゲートはソース側電流回路121に対して非接続とされ、故に、ソース側定電流I
A0~I
A4は流れない。
【0056】
遷移動作VGDWN[i]では、シンク側スイッチ群124の機能により、シンク側定電流IB0~IB4を生成する5個の定電流源の内、何れか1つ、何れか2つ、何れか3つ、何れか4つ又は全ての定電流源が選択的にゲート接続端子G[i]に接続され、結果、定電流IB0~IB4の内、何れか1つ、何れか2つの和電流、何れか3つの和電流、何れか4つの和電流又は全ての定電流の和電流が、選択的に、出力トランジスタM[i]のゲートからソースに向けて流れる。
【0057】
遷移動作VGDWN[i]にて出力トランジスタM[i]のゲートから、ゲート接続端子G[i]、ソース側スイッチ群124、シンク側電流回路122及び対応するソース接続端子(S[i]又はSCOM)を介し、出力トランジスタM[i]のソースに向けて流れる電流を記号“ISINK”にて参照する。ここでは、説明の具体化ため、定電流IB0の値が1mAであるとする。そうすると、定電流IB0~IB4の組み合わせにより、遷移動作VGDWN[i]において、1mA~31mAまでの範囲内の電流ISINKを、出力トランジスタM[i]のゲートからソースに向けて流すことができ、その電流ISINKは1mA刻みで変更可能となる。遷移動作VGDWN[i]において、電流ISINKがn倍になればゲート電圧VG[i]のスルーレートもn倍になる(nは整数又は分数)。
【0058】
電流ISINKの値は、制御ロジック11から個別駆動回路12[i]に供給されるスルーレート制御信号SINK[4:0]にて指定及び設定される。スルーレート制御信号SINK[4:0]は5ビットのデジタル信号から成る。電流ISINKの値の設定を通じて遷移動作VGDWN[i]でのゲート電圧VG[i]のスルーレートが設定される。
【0059】
図5(a)及び(b)に示す如く、遷移動作VG
UP[i]及びVG
DWN[i]でのゲート電圧VG[i]のスルーレートの候補として第1~第31レート(第1~第31候補レート)がある。スルーレート制御信号SOURCE[4:0]に基づき、遷移動作VG
UP[i]でのゲート電圧VG[i]のスルーレートが第1~第31レートの何れかに設定され、スルーレート制御信号SINK[4:0]に基づき、遷移動作VG
DWN[i]でのゲート電圧VG[i]のスルーレートが第1~第31レートの何れかに設定される。ここで、第(j+1)レートは第jレートよりも大きい。jは任意の自然数を表す。
【0060】
スルーレート制御信号SOURCE[4:0]に基づき、電流ISOURCEは1mA~31mAの範囲内において1mA刻みで指定され、電流ISOURCEが、(1×j)mAであるときに、遷移動作VGUP[i]でのゲート電圧VG[i]のスルーレートは第jレートとなる。同様に、スルーレート制御信号SINK[4:0]に基づき、電流ISINKは1mA~31mAの範囲内において1mA刻みで指定され、電流ISINKが、(1×j)mAであるときに、遷移動作VGDWN[i]でのゲート電圧VG[i]のスルーレートは第jレートとなる。尚、ゲート電圧VG[i]の実際のスルーレートを、以下では、実スルーレートと称することがある。
【0061】
また、遷移動作VGUP[1]~VGUP[4]における実スルーレートを記号“SRUP”にて表す。個別駆動回路12[1]~12[4]間で実スルーレートSRUPが互いに異なり得るように、ドライバIC10を構成することも可能ではあるが、ここでは、遷移動作VGUP[1]~VGUP[4]における実スルーレートSRUPが共通のスルーレート制御信号SOURCE[4:0]にて指定されて互いに共通であるとする。遷移動作VGDWN[1]~VGDWN[4]における実スルーレートを記号“SRDWN”にて表す。個別駆動回路12[1]~12[4]間で実スルーレートSRDWNが互いに異なり得るように、ドライバIC10を構成することも可能ではあるが、ここでは、遷移動作VGDWN[1]~VGDWN[4]における実スルーレートSRDWNが共通のスルーレート制御信号SINK[4:0]にて指定されて互いに共通であるとする。
【0062】
図6を参照し、制御ロジック11にはレジスタRGが設けられており、MPU20からの指示に基づき、制御ロジック11はレジスタRG内にスルーレート指定データを書き込んで保持する。MPU20からの指示が無い場合、スルーレート指定データは所定の初期データと一致する。スルーレート指定データは電流I
SOURCE及びI
SINKを指定するデータであり、電流I
SOURCE及びI
SINKにて実スルーレートSR
UP及びSR
DWNが定まるため、スルーレート指定データは実スルーレートSR
UP及びSR
DWNを指定するデータであるとも言える。原則として、制御ロジック11は、スルーレート指定データに基づきスルーレート制御信号SOURCE[4:0]及びSINK[4:0]の内容制御を通じて電流I
SOURCE及びI
SINKを指定する。そうすると、個別駆動回路12[i]は、スルーレート指定データにて指定された電流I
SOURCE及びI
SINKにて(換言すれば、スルーレート指定データにて指定された実スルーレートSR
UP及びSR
DWNにて)遷移動作VG
UP[i]及びVG
DWN[i]を行うことになる。
【0063】
但し、測温回路30(
図1参照)の出力信号によっては、実スルーレートがスルーレート指定データにて指定されたものから高められる。測温回路30について説明する。
【0064】
測温回路30は対象温度を測定するための測温素子31を備え、対象温度に応じた信号を原温度信号Saとして出力する(
図1参照)。原温度信号Saは外部端子TM1に入力される。対象温度は対象トランジスタの温度との間で相関関係を持つ温度であり、対象トランジスタの温度を指すと解しても良い。対象トランジスタは、出力トランジスタM[1]~M[4]の内、少なくとも1つの出力トランジスタを含み、ここでは出力トランジスタM[1]~M[4]の夫々が対象トランジスタであるとする。対象トランジスタの温度とは、対象トランジスタの所定箇所における温度であり、対象トランジスタのチャネル温度や対象トランジスタの筐体の温度であって良い。
【0065】
対象温度と対象トランジスタの温度との間には相関関係があるため、対象トランジスタの温度が上昇したとき、それに連動して対象温度も上昇し、対象トランジスタの温度が低下したとき、それに連動して対象温度も低下する。例えば、
図7(a)に示す如く、測温素子31が位置PS1に配置され、測温回路30は位置PS1における温度を対象温度として測定する。位置PS1は出力トランジスタM[1]~M[4]の配置位置の中心位置又は重心位置である。この場合、測温回路30は対象トランジスタの温度を対象温度として測定する回路であると言え、対象トランジスタ(M[1]~M[4])の温度が上昇、低下したとき、それに伴って対象温度も上昇、低下する。
【0066】
或いは、測温回路30はドライバ装置の周辺温度を対象温度として測定する回路であっても良い。本発明に係るドライバ装置はドライバIC10そのものである。但し、本発明に係るドライバ装置はトライバIC10を少なくとも含み、出力トランジスタM[1]~M[4]、MPU20及び測温回路30の全部又は一部を更に含む装置であると考えることも可能である。例えば、
図7(b)に示す如く、測温素子31が位置PS2に配置され、測温回路30は位置PS2における温度を対象温度として測定する。位置PS2は、例えばドライバIC10及び出力トランジスタM[1]~M[4]が実装される基板上の任意の位置であり、位置PS2での温度はドライバ装置の周辺温度と一致する。対象温度としてのドライバ装置の周辺温度が上昇したとき、それに連動して対象トランジスタ(M[1]~M[4])の温度も上昇し、ドライバ装置の周辺温度が低下したとき、それに連動して対象トランジスタ(M[1]~M[4])の温度も低下する。つまり、それらの温度間に相関関係がある。
【0067】
測温素子31は対象温度の変化に対して自身の電気的特性が変化する素子であれば任意であり、測温回路30は対象温度に応じた信号を原温度信号Saとして生成及び出力する回路であれば任意である。例えば、測温素子31として、測温抵抗体、リニア抵抗、サーミスタ又はダイオードを利用でき、半導体集積化回路として構成された温度センサを測温回路30として利用しても良い。
【0068】
但し、ここでは説明の具体化のため、原温度信号Saはアナログの電圧信号であって、
図8に示す如く、対象温度の上昇に伴って原温度信号Saの電圧が単調に低下するものとする(但し、その逆であっても良い)。
図8では、対象温度の変化に対し原温度信号Saの変化が線形性を有している例が示されているが、それらの関係は非線形であり得る。また、以下では、特に記述無き限り、対象温度は対象トランジスタの温度であると考える。
【0069】
図9に、測温回路30の例である測温回路30aを示す。測温回路30aは、測温素子31としてのサーミスタ31aと、固定された抵抗値を有する抵抗32aとの直列回路から成る。抵抗32aの一端に電源電圧VCCが印加され、サーミスタ31aの一端はグランドに接続される。抵抗32a及びサーミスタ31aの他端同士が共通接続され、抵抗32a及びサーミスタ31aの他端同士の接続ノードでの信号が原温度信号Saとなる。サーミスタ31aとして負の温度特性を有するNTCサーミスタを用いれば、
図8に示したような特性が得られる。但し、正の温度特性を有するPTCサーミスタを測温素子31として用いる変形も可能である。
【0070】
温度判定回路13(
図1参照)は、外部端子TM1に接続されて、測温回路30からの原温度信号Saを受ける。温度判定回路13はアナログの原温度信号Saに基づいてデジタルの判定温度信号Sbを生成し、判定温度信号Sbを制御ロジック11に送る。制御ロジック11は、判定温度信号Sbに基づき、必要に応じて、実スルーレートをスルーレート指定データにて指定されたものより高める高温対応動作を実行する。
【0071】
以下、高温対応動作を実現するための構成例、高温対応動作の具体例、ドライバIC10の変形技術などを説明する実施形態として、複数の実施形態を説明する。上述の基本実施形態にて述べた事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施形態に適用され、後述の各実施形態において、基本実施形態で述べた事項と矛盾する事項については各実施形態での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施形態の内、任意の実施形態に記載した事項を、他の任意の実施形態に適用することもできる(即ち複数の実施形態の内の任意の2以上の実施形態を組み合わせることも可能である)。
【0072】
尚、以下の説明において、実スルーレートとは、実スルーレートSRUP及びSRDWNの双方を指すものと解される。
【0073】
[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態を説明する。
図10は第1実施形態に係る温度判定回路13aの回路図である。温度判定回路13aを
図1の温度判定回路13として用いることができる。温度判定回路13aは、比較器131と所定の基準電圧V
REFを生成する基準電圧源132とを有する。比較器131の非反転入力端子に原温度信号Saが入力され、比較器131の反転入力端子に基準電圧V
REFが入力される。比較器131の出力信号が判定温度信号Sbとなる。判定温度信号Sbはローレベル又はハイレベルをとる二値信号である。
【0074】
図11に第1実施形態に係る高温対応動作を示す。
図11において“SR
REF”は、スルーレート指定データにより指定されるスルーレート(SR
UP、SR
DWN)を表し、これを基準スルーレートと称する。基準スルーレートSR
REFは、第31レートよりも低いスルーレートであるものとする(
図5(a)及び(b)参照)。スルーレート指定データにより指定されるスルーレートには、遷移動作VG
UPにおけるスルーレートSR
UPと遷移動作VG
DWNにおけるスルーレートSR
DWNとがあり、それらは互いに一致することもあるし、互いに不一致となることもあるが、以下では、特に断りなき限り、説明の簡略上、それらが一致すると考える。
【0075】
対象温度が所定の判定温度TTHよりも低いとき、原温度信号Saの電圧が基準電圧VREFよりも高くなることから判定温度信号Sbはハイレベルとなり、対象温度が判定温度TTHよりも高いとき、原温度信号Saの電圧が基準電圧VREFよりも低くなることから判定温度信号Sbはローレベルとなる。但し、比較器131にはヒステリシスが設定されており、対象温度が判定温度TTHを上回ったことに対応して判定温度信号Sbが一旦ローレベルとなった後には、対象温度が判定温度TTHよりも所定温度ΔTだけ低い温度(TTH-ΔT)以下となるまで(温度判定回路13aにとっては、原温度信号Saの電圧が基準電圧VREFよりも所定電圧ΔVだけ高い電圧(VREF+ΔV)以上となるまで)、判定温度信号Sbのローレベルは維持されるものとする。尚、判定温度TTHは後述のシャットダウン温度よりも低い。
【0076】
制御ロジック11は、判定温度信号Sbがハイレベルであるときには、高温対応動作を非実行にして原則通り、基準スルーレートSRREFを実スルーレートに設定するが、判定温度信号Sbがローレベルであるときには、高温対応動作を実行して強制スルーレートSRFORCEを実スルーレートに設定する。ここで、強制スルーレートSRFORCEは基準スルーレートSRREFよりも大きい。強制スルーレートSRFORCEは基準スルーレートSRREFを元に定められて良く、基準スルーレートSRREFが第jレートであるならば、強制スルーレートSRFORCEは第(j+k)レートとされて良い(但し、kは1以上の任意の整数であって且つ(j+k)≦31)。或いは、強制スルーレートSRFORCEは、予め定められたレート(例えば最大のスルーレートである第31レート)であっても良い。
【0077】
スルーレートを低く抑えることで、EMI(Electro Magnetic Interference)に関わる電波輻射の抑制等が図られる。一方で、スルーレートの低下は出力トランジスタの損失増加に繋がる。これらを比較考量して、MPU20から、ゲート電圧VG[i]のスルーレートを適切なものに指定することができる。一方、出力トランジスタの温度上昇が所定のシャットダウン温度に達するような状況下では、安全のため出力トランジスタのスイッチングを停止して、モータ40の駆動を停止する必要がある。但し、モータ40の駆動停止は可能な限り回避されるべきである。これを考慮し、本実施形態では、対象温度(出力トランジスタの温度)が相応に高くなったとき、ゲート電圧VG[i]のスルーレートを高いものへと強制的に変更する。この結果、電波輻射の増大が発生するが、出力トランジスタの発熱量が低下して、高温下でも限界までモータ40の駆動を継続することが可能となる。
【0078】
ドライバIC10内の回路として又はドライバIC10に外部接続される回路として、モータ駆動システム1内に、シャットダウン回路(不図示)が設けられていると良い。シャットダウン回路は、対象温度を監視して対象温度が所定のシャットダウン温度に達したとき、駆動制御信号PWM1及びPWM2に関わらず、出力トランジスタM[1]~M[4]を強制的にオフに維持する。本発明に係るドライバ装置はシャットダウン回路を有していると考えても良い。
【0079】
尚、基準電圧VREFは可変電圧であっても良く、MPU20が基準電圧VREFの値を指定できても良い。この場合、基準電圧VREFの変更を通じて判定温度TTHを変更することができる。
【0080】
また、温度判定回路13にてヒステリシスを設けないことも可能ではある(後述の他の実施形態でも同様)。但し、対象温度が判定温度TTHの近辺にあるときに、実スルーレートが頻繁に切り替わるのを防止するために、ヒステリシスを設けた方が好ましい。
【0081】
また、基準スルーレートSRREFが第31レートである場合には、判定温度信号Sbのレベルに関係なく高温対応動作は実行されない(後述の他の実施形態でも同様)。
【0082】
[第2実施形態]
本発明に係る第2実施形態を説明する。第1実施形態では、対象温度に応じて実スルーレートが2段階で可変設定されているが、対象温度に応じて実スルーレートが3段階以上で可変設定されるように良い。
【0083】
図12に対象温度に応じて実スルーレートが3段階で可変設定されるときの動作例を示す。
図12において、基準スルーレートSR
REFは、第30レートよりも低いスルーレートであるものとする(
図5(a)及び(b)参照)。
図12に示す動作例において、判定温度信号Sbは“2”、“1”、“0”の値をとるデジタル信号である。特に図示しないが、第2実施形態に係る温度判定回路13は、所定の基準電圧V
REF1及びV
REF2を生成する基準電圧源と、原温度信号Saの電圧を所定の基準電圧V
REF1及びV
REF2の夫々と比較する比較器とを備え、原温度信号Saの電圧と基準電圧V
REF1及びV
REF2との大小関係に基づき、“2”、“1”又は“0”の値を持つ判定温度信号Sbを出力する。ここで、“V
REF1>V
REF2>0”である。また、判定温度T
TH1よりも判定温度T
TH2の方が高く、判定温度T
TH2よりも上述のシャットダウン温度の方が高い。
【0084】
対象温度が判定温度TTH1よりも低いとき、原温度信号Saの電圧は基準電圧VREF1よりも高くなることから判定温度信号Sbの値は“2”となり、対象温度が所定の判定温度TTH1よりも高いが所定の判定温度TTH2よりも低いとき、原温度信号Saの電圧は基準電圧VREF1より低いが基準電圧VREF2よりも高いことから判定温度信号Sbの値は“1”となり、対象温度が判定温度TTH2よりも高いとき、原温度信号Saの電圧は基準電圧VREF2よりも低くなることから判定温度信号Sbの値は“0”となる。
【0085】
但し、温度判定回路13の比較器にはヒステリシスが設定されている。即ち、対象温度が判定温度TTH2を上回ったことに対応して判定温度信号Sbの値が一旦“0”となった後には、対象温度が判定温度TTH2よりも所定温度ΔTだけ低い温度(TTH2-ΔT)以下となるまで(温度判定回路13にとっては、原温度信号Saの電圧が基準電圧VREF2よりも所定電圧ΔVだけ高い電圧(VREF2+ΔV)以上となるまで)、判定温度信号Sbの値は“0”に維持される。また、対象温度が判定温度TTH1を上回ったことに対応して判定温度信号Sbの値が一旦“1”となった後には、対象温度が判定温度TTH1よりも所定温度ΔTだけ低い温度(TTH1-ΔT)以下となるまで(温度判定回路13にとっては、原温度信号Saの電圧が基準電圧VREF1よりも所定電圧ΔVだけ高い電圧(VREF1+ΔV)以上となるまで)、判定温度信号Sbの値の“2”への移行は禁止される。
【0086】
制御ロジック11は、判定温度信号Sbの値が“2”であるときには、高温対応動作を非実行にして原則通り、基準スルーレートSRREFを実スルーレートに設定するが、判定温度信号Sbの値が“1”であるときには、第1高温対応動作を実行して強制スルーレートSRFORCE1を実スルーレートに設定し、判定温度信号Sbの値が“0”であるときには、第2高温対応動作を実行して強制スルーレートSRFORCE2を実スルーレートに設定する。ここで、強制スルーレートSRFORCE1は基準スルーレートSRREFよりも大きく、強制スルーレートSRFORCE2は強制スルーレートSRFORCE1よりも更に大きい。強制スルーレートSRFORCE1及びSRFORCE2は基準スルーレートSRREFを元に定められて良く、基準スルーレートSRREFが第jレートであるならば、強制スルーレートSRFORCE1は第(j+k1)レートとされ且つ強制スルーレートSRFORCE2は第(j+k2)レートとされて良い。ここで、k1は1以上の任意の整数であり、k2はk1よりも大きな2以上の任意の整数であり、且つ、“(j+k2)≦31”が満たされる。或いは、強制スルーレートSRFORCE1及びSRFORCE2は予め定められたレートであっても良い(特に、強制スルーレートに関しては最大のスルーレートである第31レートであっても良い)。
【0087】
第2実施形態によれば、高温時に実スルーレートが必要に応じ段階的に高められるため、実スルーレートの必要以上の増大を抑制しつつ、高温下でも限界までモータ40の駆動を継続することが可能となる。
【0088】
尚、基準電圧VREF1及びVREF2は可変電圧であっても良く、MPU20が基準電圧VREF1及びVREF2の値を指定できても良い。この場合、基準電圧VREF1及びVREF2の変更を通じて判定温度TTH1及びTTH2を変更することができる。
【0089】
[第3実施形態]
本発明に係る第3実施形態を説明する。モータ40は正転及び逆転の何れかを行うものであり、モータ40を正転させる際には、出力トランジスタM[1]及びM[4]にモータ40の駆動用電流が流れるため出力トランジスタM[1]及びM[4]の発熱が大きくなり、モータ40を逆転させる際には、出力トランジスタM[2]及びM[3]にモータ40の駆動用電流が流れるため出力トランジスタM[2]及びM[3]の発熱が大きくなる。
【0090】
これを考慮し、
図13に示す如く、測温素子31として、正転用測温素子31F及び逆転用測温素子31Rを設けるようにしても良い。
【0091】
正転用測温素子31Fは、第1対象トランジスタの温度を第1対象温度として測定するための測温素子であって、例えば第1対象トランジスタに対して熱結合される。故に、第1対象温度と第1対象トランジスタの温度との間には相関関係がある。第1対象トランジスタは出力トランジスタM[1]及びM[4]の何れかであると解することができるが、モータ40の正転時において、モータ40の駆動用電流が流れることに伴って出力トランジスタM[1]及びM[4]の何れか一方が発熱すれば、同程度だけ他方も発熱することが想定されるため、出力トランジスタM[1]及びM[4]の夫々が第1対象トランジスタに相当すると考えても良い。
【0092】
逆転用測温素子31Rは、第2対象トランジスタの温度を第2対象温度として測定するための測温素子であって、例えば第2対象トランジスタに対して熱結合される。故に、第2対象温度と第2対象トランジスタの温度との間には相関関係がある。第2対象トランジスタは出力トランジスタM[2]及びM[3]の何れかであると解することができるが、モータ40の逆転時において、モータ40の駆動用電流が流れることに伴って出力トランジスタM[2]及びM[3]の何れか一方が発熱すれば、同程度だけ他方も発熱することが想定されるため、出力トランジスタM[2]及びM[3]の夫々が第2対象トランジスタに相当すると考えても良い。
【0093】
第3実施形態に係る測温回路30は、第1対象温度に応じた信号を第1原温度信号SaFとして出力すると共に、第2対象温度に応じた信号を第2原温度信号SaFとして出力する。第3実施形態において、外部端子TM1は外部端子TM1F及びTM1Rを含み、信号SaF及びSaRが夫々外部端子TM1F及びTM1Rに入力される。端子TM1F及びTM1Rは互いに隣接した外部端子とすると良い。これにより、ドライバIC10内部及び外部において、信号SaF及びSaRを伝達する配線の引き回しの容易化が期待される。但し、端子TM1F及びTM1R間に他の1以上の外部端子が介在することがあっても良い。
【0094】
第3実施形態に係る温度判定回路13は、第1原温度信号SaFに基づき第1判定温度信号SbFを生成し、第2原温度信号SaRに基づき第2判定温度信号SbRを生成する。第1原温度信号SaFに基づき第1判定温度信号SbFを生成する方法、及び、第2原温度信号SaRに基づき第2判定温度信号SbRを生成する方法は、第1又は第2実施形態に示した原温度信号Saに基づき判定温度信号Sbを生成する方法と同じである。
【0095】
制御ロジック11は、第1又は第2実施形態に示した判定温度信号Sbに基づく実スルーレートの設定方法と同様の方法にて、第1判定温度信号SbFに基づき正転時における実スルーレートを設定して良く、第2判定温度信号SbRに基づき逆転時における実スルーレートを設定して良い。
【0096】
[第4実施形態]
本発明に係る第4実施形態を説明する。測温回路30にて出力トランジスタM[1]~M[4]の温度を個別に測定し、個別の測定結果から、出力トランジスタM[1]~M[4]のゲート電圧VG[1]~VG[4]のスルーレートを個別に制御するようにしても良い。
【0097】
この場合、
図14に示す如く、測温素子31として測温素子31[1]~31[4]を設ける。任意の整数iに関し、測温素子31[i]は第i対象トランジスタとしての出力トランジスタM[i]の温度を第i対象温度として測定するための測温素子であって、例えば出力トランジスタM[i]に対して熱結合される。故に、第i対象温度と出力トランジスタM[i]の温度との間には相関関係がある。
【0098】
第4実施形態に係る測温回路30は、第1~第4対象温度に応じた信号を第1~第4原温度信号Sa[1]~Sa[4]として出力する。第4実施形態において、外部端子TM1は4つの外部端子TM1_[1]~TM1_[4]を含み、信号Sa[1]~Sa[4]が夫々外部端子TM1_[1]~TM1_[4]に入力される。端子TM1_[1]~TM1_[4]は互いに隣接し合う連続した4つの外部端子であって良い。これにより、ドライバIC10内部及び外部において、信号Sa[1]~Sa[4]を伝達する配線の引き回しの容易化が期待される。但し、端子TM1_[1]~TM1_[4]間に他の1以上の外部端子が介在することがあっても良い。
【0099】
第4実施形態に係る温度判定回路13は、原温度信号ごとに判定温度信号を生成する。即ち、1以上4以下の各整数iについて、原温度信号Sa[i]に基づき判定温度信号Sb[i]を生成する。原温度信号Sa[i]に基づき判定温度信号Sb[i]を生成する方法は、第1又は第2実施形態に示した原温度信号Saに基づき判定温度信号Sbを生成する方法と同じである。
【0100】
制御ロジック11は、第1又は第2実施形態に示した判定温度信号Sbに基づく実スルーレートの設定方法と同様の方法にて、出力トランジスタM[i]ごとに、判定温度信号Sb[i]に基づき出力トランジスタM[i]のゲート電圧VG[i]のスルーレートを設定して良い。この際、第1~第4対象温度に応じて、ゲート電圧VG[i]の実スルーレートはゲート電圧VG[1]~VG[4]間で異なり得ることになる。即ち例えば、第1実施形態に示した方法を利用した場合において、原温度信号Sa[1]にて示される第1対象温度が判定温度T
THより低い一方で原温度信号Sa[2]にて示される第2対象温度が判定温度T
THより大きいとき(
図11参照)、制御ロジック11は、ゲート電圧VG[1]及びVG[2]の実スルーレートが夫々基準スルーレートSR
REF及び強制スルーレートSR
FORCEとなるように、個別駆動回路12[1]及び12[2]を制御することができる。
【0101】
[第5実施形態]
本発明に係る第5実施形態を説明する。直流モータをフルブリッジ回路(Hブリッジ回路)で駆動する構成例を上述したが、直流モータの駆動方式はこれに限定されない。例えば、
図15に示す如く、モータ40として4つのモータ40[1]~40[4]を駆動する回路構成が採用されて良い。
【0102】
図15の構成では、1以上4以下の各整数iについて、電源電圧VPWRが加わる端子と出力トランジスタM[i]のドレインとの間にブラシ付き直流モータであるモータ40[i]が直列に挿入される。出力トランジスタM[1]~M[4]の各ソースはグランドに接続されると共にソース接続端子S
COMに接続される。
図15の構成では、個別駆動回路12[1]~12[4]に対する内部電源電圧は全て電圧Vregであって良く、また、個別駆動回路12[1]~12[4]に接続すべきソース接続端子は全てソース接続端子S
COMとなる。
【0103】
尚、
図15の構成では、モータ40[i]から見て低電位側に出力トランジスタM[i]が設けられているが、モータ40[i]から見て高電位側に出力トランジスタM[i]が設けられるようにしても良い。この場合には、出力トランジスタM[i]をPチャネル型のMOSFETとしても良い。何れにせよ、モータ40[i]と出力トランジスタM[i]が直列接続されて、モータ40[i]及び出力トランジスタM[i]の直列回路に対し電源電圧VPWRが印加され、出力トランジスタM[i]がオンとされるときに出力トランジスタM[i]を通じた電流がモータ40[i]に供給されることになる。
【0104】
個別駆動回路12[1]~12[4]は、制御ロジック11の制御の下で、個別に、対応するゲート電圧VG[1]~VG[4]をローレベル及びハイレベル間で切り替えることで、出力トランジスタM[1]~M[4]をスイッチング駆動する。
図15の構成を含む本実施形態で示した構成に対しては特に第4実施形態に示した方法が適用されて良く(
図14参照)、制御ロジック11は、出力トランジスタM[1]~M[4]の温度(対象温度)に応じた信号(原温度信号、判定温度信号)に基づき、出力トランジスタM[1]~M[4]のゲート電圧VG[1]~VG[4]のスルーレートを個別に制御して良い。
【0105】
[第6実施形態]
本発明に係る第6実施形態を説明する。各出力トランジスタが内蔵されているタイプのドライバICを構成しても良い。
図16に、
図1のドライバIC10を変形したドライバIC10Aの構成を示す。ドライバIC10Aは、ドライバIC10の内部に出力トランジスタM[1]~M[4]及び測温回路30を内蔵させた構成を有し、特に述べない事項に関して、ドライバIC10AはドライバIC10と同様である。
【0106】
即ち、ドライバIC10Aは、半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品である。そして、その半導体集積回路では、制御ロジック11、ゲート駆動回路12、温度判定回路13、出力トランジスタM[1]~M[4]及び測温回路30を含む回路群が半導体にて集積化され、その回路群が共通の筐体内に収められる。ドライバIC10Aにおいては、端子G[1]~G[4]、S[1]~S[2]、SCOM及びTM1は、ドライバIC10Aの外部に対して露出した外部端子では無く、ドライバIC10A内に存在する内部端子となる。代わりに、ドライバIC10Aには外部端子TMa及びTMbが設けられ、ドライバIC10Aの外部において外部端子TMa及びTMb間にモータ40が接続される。ドライバIC10Aの内部において、ノードNDa及びNDbが夫々外部端子TMa及びTMbに接続される。
【0107】
ドライバIC10Aにおいて、測温素子31を含む測温回路30は、出力トランジスタM[1]~M[4]の近傍に配置され、出力トランジスタM[1]~M[4]の温度(対象温度)に応じた原温度信号Saを出力することになる。ドライバIC10Aは複数のICチップから構成されていても良く、この場合例えば、出力トランジスタM[1]~M[4]が形成されるICチップと、測温回路30が形成されるICチップは、互いに異なるICチップであっても良い。但し、それらのICチップは共通の筐体内に収められて1つの電子部品を構成する。
【0108】
[第7実施形態]
本発明に係る第7実施形態を説明する。
図17に示す如く、自動車などの車両300に対して本発明の実施形態に係るモータ駆動システム310を搭載することができる。モータ駆動システム310は、
図1のモータ駆動システム1と同じものであって良いし、
図1のモータ駆動システム1に対し、第5実施形態(
図15参照)又は第6実施形態(
図16参照)に示した変形を適用したものであって良い。
【0109】
モータ駆動システム310におけるモータ40は、車両300に搭載され且つモータを必要とする任意の車両部品に用いられ、当該車両部品としては、冷却用ファン、空気調和機、パワーウィンドウ及びスライドドアなどがある。ここにおける冷却用ファンは、車両300に搭載された所定部品(バッテリ等)を冷却するためにあり、高温下でも限界まで冷却用ファンの駆動を継続することが望まれる。当該冷却用ファンにモータ駆動システム310を適用して当該冷却用ファンをモータ40にて駆動すれば、高温下でも限界まで冷却用ファンの駆動を継続することが可能となる。
【0110】
[第8実施形態]
本発明に係る第8実施形態を説明する。第8実施形態では、上述の基本実施形態及び第1~第7実施形態に適用可能な応用技術や変形技術を説明する。
【0111】
図1のモータ駆動システム1において、温度判定回路13をドライバIC10の外部に設けるようにしても良い。この場合、
図1のモータ駆動システム1において、ドライバIC10から温度判定回路13が削除される一方で、ドライバIC10に対して温度判定回路13が外付け接続されることになり、外部端子TM1(温度信号用端子)に対しては、原温度信号Saの代わりに温度判定回路13からの判定温度信号Sbを入力すると良い。
【0112】
実スルーレートを31段階で変更可能な構成を例示したが(
図5(a)及び(b)参照)、実スルーレートの変更可能な段階数は2以上であれば任意である。
【0113】
出力トランジスタM[i]は負荷に対して直列接続され、出力トランジスタM[i]を介して負荷に電流を流すことで、電力が負荷に供給されて負荷が駆動される。上述の各説明では、負荷が主として単相のブラシ付き直流モータ(40)であることが想定されているが、本発明において、負荷は任意であり、例えば、三相直流モータなどの多相直流モータであっても良いし、ブラシレス直流モータであっても良いし、リレーやソレノイドであっても良い。
【0114】
出力トランジスタM[i]はMOSFET以外の種類のトランジスタであっても良く、例えば、接合型FET(電界効果トランジスタ)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として構成されていても良い。但し、出力トランジスタM[i]は、電圧制御型のトランジスタ(即ち、制御電極における電圧に応じて第1及び第2電極間に流れる電流が制御されるトランジスタ)とされると良い。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。
【0115】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。
【0116】
[発明の考察]
上述の各実施形態にて具体化された本発明について考察する。
【0117】
本発明に係るドライバ装置Wは、負荷に対し直列に接続されるべき対象トランジスタをスイッチング駆動するドライバ装置(例えばドライバIC10又は10A)である。ドライバ装置Wは、前記対象トランジスタのゲート電圧を制御する回路であって、前記ゲート電圧を変化させる際の前記ゲート電圧のスルーレートを複数段階で変更可能に形成されたゲート駆動回路(例えば12)と、前記対象トランジスタの温度と相関関係を持つ対象温度に応じた温度信号に基づき前記スルーレートを可変設定するスルーレート設定回路(例えば11)と、を備えたことを特徴とする。
【0118】
これにより、対象温度が相応に高いとき通常よりもスルーレートを高めるといったことが可能となり、結果、高温下でも限界まで負荷の駆動を継続することが可能となる。
【0119】
上述の各実施形態において、ドライバ装置WはドライバIC(10、10A)そのものである。但し、ドライバ装置Wは、ドライバIC(10、10A)を少なくとも含み、出力トランジスタM[1]~M[4]、MPU20及び測温回路30の全部又は一部を更に含む装置であると考えることも可能である。ドライバ装置Wはゲートに対するドライバ装置であると考えることもできるし、負荷に対するドライバ装置であると考えることもできる。上述の各実施形態における制御ロジック11は、ドライバ装置Wにおけるスルーレート設定回路を内包していると考えることができる。但し、ドライバ装置Wにおけるスルーレート設定回路は、制御ロジック11及び温度判定回路13を含む回路であると考えることも可能である。ドライバ装置Wに関する上記温度信号は、上述の各実施形態では原温度信号又は判定温度信号に対応する。
【0120】
より具体的には、ドライバ装置Wにおいて、前記ゲート駆動回路は、前記スルーレートを、第1レート及び前記第1レートよりも大きな第2レートを含む複数のレートの間で変更可能であり、前記スルーレート設定回路は、前記スルーレートが前記第1レートに設定されている状態において、前記対象温度の上昇を示す特定の変化が前記温度信号に生じたとき、前記スルーレートを前記第2レートに変更すると良い。
【0121】
上記特定の変化は、上述の各実施形態の原温度信号又は判定温度信号に生じる特定の変化であり、例えば
図11の動作例では、原温度信号Saの電圧が基準電圧V
REFより高い状態から基準電圧V
REFより低い状態へ移行する変化である、或いは、判定温度信号Sbのハイレベルからローレベルへの変化である。
図11の動作例において、第1レート、第2レートは、夫々、基準スルーレートSR
REF、強制スルーレートSR
FORCEに対応する。
【0122】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0123】
1 モータ駆動システム
10 ドライバIC
11 制御ロジック
12 ゲート駆動回路
13 温度判定回路
30 測温回路
40 モータ
M[1]~M[4] 出力トランジスタ