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特許7198050整定値候補算出装置、電圧調整装置、電圧調整システム、電圧調整方法および配電設備設計支援システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】整定値候補算出装置、電圧調整装置、電圧調整システム、電圧調整方法および配電設備設計支援システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20221221BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20221221BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H02J3/12
H02J3/00 170
H02J3/38 130
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018208847
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020078129
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】友部 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】足立 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】永井 雅彰
(72)【発明者】
【氏名】松田 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】葵木 智之
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-158350(JP,A)
【文献】特開2016-163441(JP,A)
【文献】特開2007-068337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に設置され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整する電圧調整装置に対して、整定値を与える整定値候補算出装置であって、
整定値候補算出装置は、前記配電系統の情報と、太陽光発電装置の連系計画の情報とから、将来太陽光発電装置が配電系統に設置されたときの配電系統のインピーダンスを求め、前記電圧調整装置に対する整定値候補とするインピーダンス導出手段を備え、
前記配電系統の情報とは、前記電圧調整装置の通過電流の有効成分と無効成分、並びに前記電圧調整装置と、複数の前記太陽光発電装置の間の電位差であり、
前記インピーダンス導出手段は、前記電圧調整装置の通過電流の有効成分と無効成分で定まる平面上において、分割区間を決定する平面上分割区間決定手段と、太陽光発電装置の前記連系計画の情報に従い将来太陽光発電装置が設置されたときの配電系統に対して、前記分割区間における前記電位差を求める電圧上昇分加算手段と、前記電圧上昇分加算手段で求めた前記分割区間における前記電位差を用いた重回帰分析を実施し、配電系統のインピーダンスを決定する重回帰分析手段とを備えることを特徴とする整定値候補算出装置。
【請求項2】
請求項1記載の整定値候補算出装置であって、
前記重回帰分析手段において前記分割区間における前記電位差を用いた重回帰分析を実施するに際し、前記分割区間における前記電位差が大きい電位差の情報を選択し、選択した電位差を用いた重回帰分析を実施することを特徴とする整定値候補算出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の整定値候補算出装置であって、
前記電圧調整装置から仮想点までの距離を表す整定値は、この間のインピーダンスまたはインピーダンスに関連する係数であることを特徴とする整定値候補算出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の整定値候補算出装置を備えた電圧調整装置。
【請求項5】
複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に設置され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整する電圧調整装置と、前記電圧調整装置に対して整定値を与える整定値候補算出装置とを備える電圧調整システムであって、
前記整定値候補算出装置は、前記配電系統の情報と、太陽光発電装置の連系計画の情報とから、将来太陽光発電装置が配電系統に設置されたときの配電系統のインピーダンスを求め、前記電圧調整装置に対する整定値候補とするインピーダンス導出手段を備え、
前記配電系統の情報とは、前記電圧調整装置の通過電流の有効成分と無効成分、並びに前記電圧調整装置と、複数の前記太陽光発電装置の間の電位差であり、
前記インピーダンス導出手段は、前記電圧調整装置の通過電流の有効成分と無効成分で定まる平面上において、分割区間を決定する平面上分割区間決定手段と、太陽光発電装置の前記連系計画の情報に従い将来太陽光発電装置が設置されたときの配電系統に対して、前記分割区間における前記電位差を求める電圧上昇分加算手段と、前記電圧上昇分加算手段で求めた前記分割区間における前記電位差を用いた重回帰分析を実施し、配電系統のインピーダンスを決定する重回帰分析手段を備えていることを特徴とする電圧調整システム。
【請求項6】
複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に設置され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整する電圧調整装置の整定値を定める電圧調整方法であって、
前記配電系統の情報と、太陽光発電装置の連系計画の情報とから、将来太陽光発電装置が配電系統に設置されたときの配電系統のインピーダンスを求め、前記電圧調整装置に対する整定値候補とするとともに、
前記配電系統の情報とは、前記電圧調整装置の通過電流の有効成分と無効成分、並びに前記電圧調整装置と、複数の前記太陽光発電装置の間の電位差であり、
前記電圧調整装置の通過電流の有効成分と無効成分で定まる平面上において、分割区間を決定し、太陽光発電装置の前記連系計画の情報に従い将来太陽光発電装置が設置されたときの配電系統に対して、前記分割区間における前記電位差を求め、前記分割区間における前記電位差を用いた重回帰分析を実施し、配電系統のインピーダンスを決定することを特徴とする電圧調整方法。
【請求項7】
複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に直列に設置され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整する複数の電圧調整装置に対して、整定値を与える配電設備設計支援システムであって、
前記配電系統の情報と、太陽光発電装置の連系計画の情報とから、将来太陽光発電装置が配電系統に設置されたときの配電系統のインピーダンスを求め、前記電圧調整装置に対する整定値候補とするインピーダンス導出手段を備え、
前記配電系統の情報とは、前記電圧調整装置の通過電流の有効成分と無効成分、並びに前記電圧調整装置と、複数の前記太陽光発電装置の間の電位差であり、
前記インピーダンス導出手段は、前記電圧調整装置の通過電流の有効成分と無効成分で定まる平面上において、分割区間を決定する平面上分割区間決定手段と、太陽光発電装置の前記連系計画の情報に従い将来太陽光発電装置が設置されたときの配電系統に対して、前記分割区間における前記電位差を求める電圧上昇分加算手段と、前記電圧上昇分加算手段で求めた前記分割区間における前記電位差を用いた重回帰分析を実施し、配電系統のインピーダンスを決定する重回帰分析手段を備えていることを特徴とする配電設備設計支援システム。
【請求項8】
複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に適用され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整するタップ付変圧器と、配電設備設計支援システムを含む電圧調整システムであって、
前記配電設備設計支援システムは、
所定時間帯内に配電系統から得た配電系統の情報に基づいて、当該所定時間帯における当該の配電系統に固有に定まる、タップ付変圧器の整定値であるインピーダンスを求め、前記タップ付変圧器に対する整定値候補とするインピーダンス導出手段を備え、
前記配電系統の情報とは、前記タップ付変圧器の通過電流の有効成分と無効成分、並びに前記タップ付変圧器と複数の前記太陽光発電装置の間の電位差であり、
前記インピーダンス導出手段は、前記タップ付変圧器の通過電流の有効成分と無効成分で定まる平面上において、分割区間を決定する平面上分割区間決定手段と、前記分割区間における前記電位差を求める電圧上昇分加算手段と、前記電圧上昇分加算手段で求めた前記分割区間における前記電位差を用いた重回帰分析を実施し、配電系統のインピーダンスを決定する重回帰分析手段を備え、
前記タップ付変圧器は、基準日射量のときに前記インピーダンス導出手段が求めた前記インピーダンスを抽出するインピーダンス抽出手段と、抽出したインピーダンスを整定値として用いて配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整するタップ調整手段を備えることを特徴とする電圧調整システム。
【請求項9】
請求項8に記載の電圧調整システムであって、
前記配電設備設計支援システムは、前記タップ付変圧器の通過電流と、前記タップ付変圧器と前記太陽光発電装置の設置点間の電位差と、日射量についての計測手段から情報を得、該計測手段からの情報と、対象とする配電系統の構成の情報と、太陽光発電装置の配置・容量の情報と、負荷パタンの情報と、前記タップ付変圧器の配置データの情報を含む蓄積手段を備えていることを特徴とする電圧調整システム。
【請求項10】
複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に設置され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整するタップ付変圧器を備えた電圧調整方法であって、
所定時間帯内に配電系統から得た情報に基づいて、当該所定時間帯における当該の配電系統に固有に定まる、電圧調整装置の整定値であるインピーダンスを求め、前記所定時間帯における日射量を求め、同一の前記所定時間帯における前記インピーダンスと日射量を関連付けて記憶し、関連付けて記憶された前記インピーダンスと日射量を参照し、基準日射量のときの前記インピーダンスを抽出し、抽出したインピーダンスを整定値として用いて配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整するとともに、
前記インピーダンスは、前記タップ付変圧器の通過電流の有効成分と無効成分で定まる平面上において、分割区間を決定し、前記分割区間における電位差を求め、前記分割区間における前記電位差を用いた重回帰分析を実施して配電系統のインピーダンスを決定することを特徴とする電圧調整方法。
【請求項11】
複数の太陽光発電装置と、与えられた整定値に応じて配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整するタップ付変圧器を備えた配電系統に適用され、前記仮想点における電圧を推定するための整定値を与える配電設備設計支援システムであって、
所定時間帯内に配電系統から得た情報として、前記タップ付変圧器の通過電流の有効成分と無効成分、並びに前記タップ付変圧器と、複数の前記太陽光発電装置の間の電位差に基づいて、当該所定時間帯における当該の配電系統に固有に定まる、電圧調整装置の整定値であるインピーダンスを求める時間帯別インピーダンス導出手段と、前記所定時間帯における太陽光発電出力を求める太陽光発電出力入手手段と、同一の前記所定時間帯における前記インピーダンスと太陽光発電出力を関連付けて記憶するデータベースを備え、前記データベースから抽出した前記インピーダンスを前記タップ付変圧器に与える出力手段を備え、
前記時間帯別インピーダンス導出手段は、前記タップ付変圧器の通過電流の有効成分と無効成分で定まる平面上において、分割区間を決定する平面上分割区間決定手段と、前記分割区間における前記電位差を求める電圧上昇分加算手段と、前記電圧上昇分加算手段で求めた前記分割区間における前記電位差を用いた重回帰分析を実施し、配電系統のインピーダンスを決定する重回帰分析手段を備えることを特徴とする配電設備設計支援システム。
【請求項12】
請求項11記載の配電設備設計支援システムであって、
前記タップ付変圧器の通過電流と、前記タップ付変圧器と前記太陽光発電装置の設置点間の電位差と、日射量についての計測手段から情報を得、該計測手段からの情報と、対象とする配電系統の構成の情報と、太陽光発電装置の配置・容量の情報と、負荷パタンの情報と、前記タップ付変圧器の配置データの情報を含む蓄積手段を備えていることを特徴とする配電設備設計支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整定値候補算出装置、電圧調整装置、電圧調整システム、電圧調整方法および配電設備設計支援システムに係り、特に配電系統に設置された太陽光発電装置の出力が抑制される場合に、太陽光発電装置設置点の電圧を下げる制御を可能とする配電系統の整定候補算定装置、電圧調整装置、電圧調整システム、整定値候補算出方法、電圧調整方法および配電設備設計支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の配電系統では太陽光発電装置の系統連系が増大しているが、配電系統では、太陽光発電装置の発電量が増加すると、太陽光発電装置設置点の電圧が上昇するという現象がある。これを回避するために、太陽光発電装置には自端子電圧が規定電圧より上昇した場合に太陽光発電装置の発電量を抑制する機能が備えられている。この機能により、太陽光発電装置の発電量が制限されることになる。
【0003】
他方、配電系統の電圧は、配電用変電所に設置された変圧器(負荷時タップ切替変圧器LRT:Load Ratio Control Transformer)のタップ切替や、配電線上に設置された自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)などのタップ切替によって制御されている。
【0004】
先に述べた太陽光発電装置における発電量の抑制を回避するためには、電圧調整装置(負荷時タップ切替変圧器LRTや自動電圧調整器SVR)で、配電系統の電圧を調整し、出力抑制を回避することが重要となる。そのためには、太陽光発電装置発電量に応じて、タップ制御を適切に行う必要がある。
【0005】
電圧調整装置(負荷時タップ切替変圧器LRTや自動電圧調整器SVR)の制御方法として、次のような手法が知られている。
【0006】
例えば、通常の自動電圧調整器SVRにおいては、自端の二次側電圧と通過電流と力率からタップ値を決定する方法が非特許文献1により知られている。
【0007】
特許文献1には、電圧調整変圧器の送出電圧から最高電圧点の電圧までの電圧上昇幅と、変圧器の送出電圧から最低電圧点の電圧までの電圧下降幅とを加算した電圧変動範囲の中心値が、規定値となるように、電圧調整装置の送出電圧を選定する制御手法が示されている。
【0008】
また、自動電圧調整器SVRの二次側電圧(タップ値)を、系統内の太陽光発電装置発電量に応じて調整し、またその時の太陽光発電装置発電量は、太陽光発電装置と自動電圧調整器SVR間の通信または日射計情報から推測することが知られている。
【0009】
なお、自動電圧調整器SVRの詳細な構成は、非特許文献1にも詳しく記載されている。また重回帰分析の具体的な計算方法についても知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2009-240038号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】「線路電圧調整器の進歩と適用」現代の配電技術、電気書院 128-134頁(1972年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の非特許文献1による自端の二次側電圧と通過電流と力率からタップ値を決定する方法では、太陽光発電装置による電圧上昇、出力抑制を考慮した制御が想定されていない。そのため、自動電圧調整器SVRは太陽光発電装置の出力抑制により電圧上昇が回避されている状況では、電圧調整を行うことができず、太陽光発電装置の出力抑制を回避できない問題がある。
【0013】
また、特許文献1に記載の方法では、太陽光発電装置の出力抑制により電圧上昇が回避されている状況では、電圧調整装置の線路電圧降下補償器の適切な整定を行うことができず、太陽光発電の出力抑制を回避できない問題がある。
【0014】
特に、メガソーラの配電系統末端への連系と低圧側への一般需要家の太陽光発電装置連系の拡大に伴い、太陽光発電装置の端子電圧が上昇し、特定の需要家の太陽光発電装置が出力抑制されてしまうことになり、売電機会の損失が不平等に発生してしまう問題があげられる。このことから、太陽光発電装置の所有者から電力会社へのクレームが増加し、電圧調整業務が煩雑化することが懸念される。
【0015】
さらには、配電系統の計測値全てを用いて太陽光発電装置端の電圧上昇を予測しようとすると、配電系統の負荷の力率や太陽光発電装置の力率の組み合わせや、負荷や太陽光発電装置の配電系統上における分布によっては、太陽光発電装置端における電圧高めの推定精度が低下し、自動電圧調整器SVRが無動作となる。
【0016】
更には、太陽光発電連系量が増加すると、予め電力会社の配電部門において算出した自動電圧調整器SVRなどの電圧調整器の整定値では、適切な電圧調整動作ができなくなり、配電部門における電圧調整業務は一段と困難となることが懸念される。
【0017】
以上のことから本発明は、将来太陽光発電連系量が増加した場合であっても、配電系統に設置された太陽光発電装置の出力が抑制される場合に、太陽光発電装置設置点の電圧を下げて出力抑制を解消するような制御を可能とする、整定値候補算出装置、電圧調整装置、電圧調整システム、整定値候補算出方法、電圧調整方法および配電設備設計支援システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以上のことから本発明の整定値候補算出装置においては、「複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に設置され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整する電圧調整装置に対して、整定値を与える整定値候補算出装置であって、配電系統の情報と、太陽光発電装置の連系計画の情報とから、将来太陽光発電装置が配電系統に設置されたときの配電系統のインピーダンスを求め、電圧調整装置に対する整定値候補とするインピーダンス導出手段を備えていることを特徴とする整定値候補算出装置」としたものである。
【0019】
また本発明の電圧調整システムにおいては、「複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に設置され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整する電圧調整装置と、電圧調整装置に対して整定値を与える整定値候補算出装置とを備える電圧調整システムであって、整定値候補算出装置は、配電系統の情報と、太陽光発電装置の連系計画の情報とから、将来太陽光発電装置が配電系統に設置されたときの配電系統のインピーダンスを求め、電圧調整装置に対する整定値候補とするインピーダンス導出手段を備えていることを特徴とする電圧調整システム」としたものである。
【0020】
また本発明の電圧調整方法においては、「複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に設置され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整する電圧調整装置の整定値を定める電圧調整方法であって、配電系統の情報と、太陽光発電装置の連系計画の情報とから、将来太陽光発電装置が配電系統に設置されたときの配電系統のインピーダンスを求め、電圧調整装置に対する整定値候補とすることを特徴とする電圧調整方法」としたものである。
【0021】
また本発明の配電設備設計支援システムにおいては、「複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に直列に設置され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整する複数の電圧調整装置に対して、整定値を与える配電設備設計支援システムであって、配電系統の情報と、太陽光発電装置の連系計画の情報とから、将来太陽光発電装置が配電系統に設置されたときの配電系統のインピーダンスを求め、電圧調整装置に対する整定値候補とするインピーダンス導出手段を備えているとともに、複数の電圧調整装置に対して、整定値を与えることを特徴とする配電設備設計支援システム」としたものである。
【0022】
また本発明の配電設備設計支援システムは、「複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に適用され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整するタップ付変圧器と、配電設備設計支援システムを含む電圧調整システムであって、配電設備設計支援システムは、所定時間帯内に配電系統から得た情報に基づいて、当該所定時間帯における当該の配電系統に固有に定まる、電圧調整装置の整定値であるインピーダンスを求めるインピーダンス導出手段と、時間帯毎の電圧調整機器の通過電流I、電圧Viの高め電圧データと太陽光発電装置の連系計画から、電圧上昇分を加算する手段と、整定値算出手段と、時間帯毎整定値とを対応付ける手段と、を備え、タップ付変圧器は、基準日射量によりデータベースを参照して基準日射量のときのインピーダンスを求めるインピーダンス抽出手段と、抽出したインピーダンスを整定値として用いて配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整するタップ調整手段を備えることを特徴とする電圧調整システム」としたものである。
【0023】
また本発明の電圧調整方法は、「複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に設置され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整するタップ付変圧器を備えた電圧調整方法であって、所定時間帯内に配電系統から得た情報に基づいて、当該所定時間帯における当該の配電系統に固有に定まる、電圧調整装置の整定値であるインピーダンスを求め、所定時間帯における日射量を求め、同一の前記所定時間帯におけるインピーダンスと日射量を関連付けて記憶し、関連付けて記憶されたインピーダンスと日射量を参照し、基準日射量のときのインピーダンスを抽出し、抽出したインピーダンスを整定値として用いて配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整することを特徴とする電圧調整方法」としたものである。
【0024】
また本発明の配電設備設計支援システムは、「複数の太陽光発電装置と、与えられた整定値に応じて配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整するタップ付変圧器を備えた配電系統に適用され、仮想点における電圧を推定するための整定値を与える配電設備設計支援システムであって、所定時間帯内に配電系統から得た情報として、タップ付変圧器の通過電流の有効成分と無効成分、並びにタップ付変圧器と複数の太陽光発電装置の間の電位差に基づいて、当該所定時間帯における当該の配電系統に固有に定まる、電圧調整装置の整定値であるインピーダンスを求める時間帯別インピーダンス導出手段と、所定時間帯における太陽光発電出力を求める太陽光発電出力入手手段と、同一の所定時間帯におけるインピーダンスと太陽光発電出力を関連付けて記憶するデータベースを備え、データベースから抽出したインピーダンスをタップ付変圧器に与える出力手段を備えることを特徴とする配電設備設計支援システム」としたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の配電系統の整定値候補算出装置、電圧調整装置、電圧調整システム、整定値候補算出方法、電圧調整方法および配電設備設計支援システムにより、太陽光発電などが大量に導入された系統でも、配電系統の電圧逸脱を低減できる。
【0026】
また本発明によれば、特定の太陽光発電の出力抑制量を低減することにより売電機会の損失を低減できる効果がある。さらに本発明によれば、日射量と関連付け電圧調整装置の整定値を選択して用いることで、より高精度に電圧調整が可能となり、太陽光の出力抑制量を低減することが可能となる。さらに本発明によれば、将来の太陽光発電装置連系が拡大した場合にも対応した整定値算出が可能となり、電圧調整業務の効率化が可能となる。
【0027】
また、本発明による、それ以外の効果については、明細書中で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る配電設備設計支援システムの全体構成を示す図。
図2】一般的な配電系統と電圧調整システムの構成例を示す説明図。
図3】自動電圧調整器SVRのタップ制御装置の構成を示す図。
図4】タップ制御部340によるタップ切換指令303の算出の流れを示す処理フロー図。
図5】配電設備設計支援システム400と各種計測手段200との関係を示す図。
図6】設備設計支援システム400を計算機にて構成する場合の構成を示す図。
図7】設備設計支援システム400内の平面上分割区間決定手段440の処理内容を示すフロー図。
図8】設備設計支援システム400内の上位ランクΔV抽出手段460の処理内容を示すフロー図。
図9】太陽光発電連系計画データベースDB5の具体的なデータ事例を示す図。
図10a】電圧上昇分加算手段462の処理フローを示す図。
図10b】太陽光発電連系計画実施後の重回帰分析結果H2を示す図。
図11】設備設計支援システム400内の重回帰分析手段480の処理内容を示すフロー図。
図12図11で得られたαおよびβの幾何学的イメージを示す図。
図13】自動電圧調整器SVR内にSVR整定値決定手段400Aを備えた実施例を示す図。
図14a】自動電圧調整器SVRを介して樹枝状に延伸配置された配電系統の面的なエリア構成例を示す図。
図14b】太陽光発電装置PVにおける出力抑制に相関関係を有する太陽光発電装置PVのみを示す図。
図15】Irsvr、Iisvrと、ΔVによる3次元空間の概念を示す図。
図16】抽出したデータによる重回帰分析手段によりえられる平面の位置関係を示す図。
図17】従来と本発明における提案方式の効果の関係を示す図。
図18】自動電圧調整器SVRにおける整定値選択部345の処理内容を示すフロー図。
図19】負荷時タップ切替変圧器LRTに対する整定値を決めるための全体構成例を示す図。
図20】LRTを含む配電設備設計支援システムの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0030】
図2は、一般的な配電系統と電圧調整システムの構成例を示す図である。図2で示される典型的な配電系統100は、ノード(母線)120およびそれらを接続する配電線路140、ノード120に接続される負荷150や太陽光発電装置PV、配電線路140に設置されるセンサ170、配電用変電所110などで構成されている。ここでは、配電用変電所110のある図示左側をフィーダの送出し側、右側をフィーダの末端側としている。
【0031】
自動電圧調整装置300は、線路140に直列に設置され、線路電圧を調整する電圧調整装置である。自動電圧調整装置300としては、負荷時タップ切替変圧器LRTや自動電圧調整器SVRが例示されるが、ここでは自動電圧調整装置300として自動電圧調整器SVRを配置した例を示している。自動電圧調整器SVRは、配電用変電所における負荷時タップ切替変圧器(LRT:Load Ratio Control Transformer)であってもよいが、図2では例えば自動電圧調整装置300に例示されるように、単巻変圧器とタップチェンジャで構成される変圧器305と、制御部分310を備えた自動電圧調整器SVRを構成し、配電線路に設置されるセンサ170からの信号、配電設備設計支援システム400からの動作整定値350を用いて、タップを操作している。
【0032】
また図2において、400は配電設備設計支援システムであり、センサ170を含む各種の計測手段200から適宜入力を得、自動電圧調整装置300に対して、その動作整定値350を与えている。なお図2は簡便な構成の配電系統100を示しているが、実際には複数のフィーダの各所に適宜自動電圧調整装置300を備えており、配電設備設計支援システム400は各自動電圧調整装置300に対して、夫々の設置場所における最適な動作整定値350を決定して与えている。
【0033】
図2に例示するように本発明における電圧調整システムは、自動電圧調整装置300と配電設備設計支援システム400を含む全体構成のものであるが、本発明の実施例においては、自動電圧調整装置300自体に図1に例示する配電設備設計支援システム400の機能を内包し、電圧調整装置として一体化したものとされてもよい。
【0034】
図1は、本発明に係る配電設備設計支援システムの全体構成を示している。配電設備設計支援システム400は、その内部処理のために、センサ170を含む各種の計測手段200から、自動電圧調整器SVRの通過電流の有効成分Irsvrと無効成分Iisvr(または有効電力Psvrと無効電力Qsvr)、自動電圧調整器SVR設置点と複数の太陽光発電装置PV設置点間の電位差ΔV、日射量などを取得している。
【0035】
配電設備設計支援システム400は、一般には計算機システムとして構成されることになるが、その機能を手段として表すと、平面上分割区間決定手段440、上位ランクΔV抽出手段460、電圧上昇分加算手段462、重回帰分析手段480、データベースDB3、データベースDB4、データベースDB5などで構成される。
【0036】
データベースDB3には、対象とする配電系統における計測したSVR通過電流Irsvr、Iisvrおよび電圧差ΔVから太陽光発電出力抑制に寄与する電圧ΔVlimを潮流計算で算出した各種のデータなどが記憶されている。またデータベースDB3には、入力した時刻ごとの計測値以外に、データベースDB4から対象配電系統、自動電圧調整器SVR配置、太陽光発電装置PVの配置・容量、負荷パタン等が適宜与えられ、記憶されている。
【0037】
なおデータベースDB3、DB4は、通信などを介して配電設備設計支援システム400内に適宜取り込むことができるものであれば、配電設備設計支援システム400の外部に設置されたものであってもよい。
【0038】
配電設備設計支援システム400の主要な機能である平面上分割区間決定手段440、上位ランクΔV抽出手段460、電圧上昇分加算手段462、重回帰分析手段480の具体的な処理内容については、別途図7図8図10aと図10b、図11の処理フローを参照して詳細に説明するが、ごく簡単に述べると以下のようである。
【0039】
まず、図1の平面上分割区間決定手段440では、データベースDB3の情報を取り込んで、自動電圧調整器SVRの通過電流の有効成分Irsvrと無効成分Iisvrで定まる平面上において、分割区間(ΔIrsvr、ΔIisvr)を決定する。上位ランクΔV抽出手段460では、任意の分割区間(Δirsvr、ΔIisvr)の中から上位ランクのΔVとなる(Irsvr、Iisvr、ΔV上位ランク)を抽出する。
【0040】
電圧上昇分加算手段462では、上位ランクΔV抽出手段460で抽出した(Irsvr、Iisvr、ΔV上位ランク)のデータ集合について、太陽光発電計画を実行したときに生じる電圧上昇分を加味して得られる新たなデータ集合を推定する。
【0041】
重回帰分析手段480では、太陽光発電計画を加味して推定された新たな(Irsvr、Iisvr、ΔV上位ランク)のデータ集合による重回帰分析をデータ取得の時間帯ごとに実施して、時間帯ごとにSVR整定値を求める。重回帰分析手段480で求めたSVR整定値は、太陽光発電計画を実行したときに採用される新たなSVR整定値の候補となるものであり、ここではSVR整定値350として記憶され、その後外部出力され、自動電圧調整装置300に対して、SVR整定値350として設定される。
【0042】
これに対し、SVR整定値350を受信する側の自動電圧調整装置300の制御部分は、図2のように配電線路の電気量を測定するセンサ170、変圧器のタップを制御するタップ制御装置310で構成されている。本発明に係る自動電圧調整器SVRの変圧器305と、制御部分の具体的な回路構成例を図3に示している。
【0043】
図3を用いてまずタップ制御の考え方を説明し、その後に配電設備設計支援システム400が与えるSVR整定値350と線路電圧降下補償回路LDCとの関わりについて説明する。図3には、自動電圧調整装置300の主回路である単巻変圧器303、タップチェンジャ302と、制御装置であるタップ制御装置310が記載されている。
【0044】
タップ制御装置310は、計測部320、線路電圧降下補償回路LDC1、LDC2、タップ制御部340、データベースDB1、DB2、整定値選択部345を備え、単巻変圧器303の二次側電圧を所定値に制御すべくタップチェンジャ302を操作している。なお、整定値選択部345については、後述の図18にて説明する。ここで、データベースDB2には、配電設備設計支援システム400が与えるSVR整定値350が保持されている。
【0045】
データベースDB1、DB2には、タップ制御を実行するうえでの各種の動作整定値が記憶されている。これらは、線路電圧降下補償演算(LDC演算)を行う上でのパラメータ(電圧Vref、インピーダンスR、X)、不感帯VE、タイマ時定数τ、動作時定数Tなどを含んでいる。配電設備設計支援システム400がデータベースDB2に与えるSVR整定値350は、これらの全てを含んでいてもよいが、少なくともインピーダンスR、Xは、配電設備設計支援システム400での処理により定められたものである。
【0046】
なお、データベースDB1内のSVR整定値R1、X1は、正の値とする。一方データベースDB2内の、SVR整定値R2、X2は、正の値ばかりではなく、負の値であっても良い。理由は、配電系統における負荷装置と太陽光発電装置PVの配置の関係によっては、自動電圧調整器SVRの通過潮流が逆潮流となる場合であっても、仮想点における電圧が下がる場合があるためである。このように、SVR整定値R2、X2の値として、負の値を許容することで、より確実に電圧調整が可能となるという効果が得られる。
【0047】
タップ制御装置310の計測部320には、配電線路の二次側電流Isvrを測定するセンサCT、および二次側電圧Vsvrを測定するセンサPTが接続される。
【0048】
線路電圧降下補償回路LDC(LDC1、LDC2)では、計測部320で測定された二次側電圧Vsvrが、所定の制限値を逸脱していることを検出し、この状態が所定の計測時間以上継続していることをもって、タップ制御部340を介してタップの切替制御を実行する。
【0049】
なお図3の実施例において、線路電圧降下補償回路LDCとしてLDC1、LDC2を備えているが、このうち線路電圧降下補償回路LDC1は既存の装置であり、線路電圧降下補償回路LDC2は新たに追加された装置である。いずれの線路電圧降下補償回路LDCも、自動電圧調整装置300の二次側情報から配電系統の仮想点における電圧を所定範囲に制御するものであるが、線路電圧降下補償回路LDC1は太陽光発電装置PVにおける問題点について何らの対策手法を有していないのに対し、線路電圧降下補償回路LDC2は太陽光発電装置PVにおける問題点を対策したものである。
【0050】
また線路電圧降下補償回路LDCとしてLDC1、LDC2を備えている点に関して、その双方の設定が太陽光発電装置PVにおける問題点を対策したものとされるように構成されていてもよい。電圧を所定範囲内に制限する場合に、線路電圧降下補償回路LDC1、LDC2を上限、下限を定めるために使用することなどが可能である。
【0051】
なお本発明は必ずしも2系統の線路電圧降下補償回路LDCを必要としないが、2系統の線路電圧降下補償回路LDCを備えた場合には、線路電圧降下補償回路LDC1は太陽光発電装置PVが出力していない夜間や曇天時におけるタップ制御に有効であり、線路電圧降下補償回路LDC2は晴天時におけるタップ制御に有効であるといえる。
【0052】
図4は、タップ制御部340によるタップ切換指令303の算出の流れを示す処理フローである。図4のフローチャートによれば、最初の処理ステップS1において、計測部320で測定された二次側電流Isvr、二次側電圧Vsvrから、有効電力Psvr、無効電力Qsvrを計算する。この処理は、2つの線路電圧降下補償回路LDCのうち、例えば線路電圧降下補償回路LDC1で算出されればよい。なお有効電力Psvr、無効電力Qsvrを直接計測する方式であってもよい。また有効電力Psvr、無効電力Qsvrの代わりに、自動電圧調整器SVRの通過電流の有効成分Irsvrと無効成分Iisvrを求めるものであってもよい。以下の例では有効成分Irsvrと無効成分Iisvrを用いた例を説明する。
【0053】
次の処理ステップS2では、線路電圧降下補償回路LDC1は、データベースDB1に示すパラメータ(インピーダンスとしてR1とX1、電圧Vref1)を読み込み、(1)式を実行する。タップ制御装置310における(1)式の実行により、タップ動作判定基準値Vs1が計算される。
[数1]
Vs1=Vref1+R1・Irsvr+X1・Iisvr (1)
ここで、インピーダンス(R1、X1)、電圧Vref1は、予め設定されデータベースDB1に格納されたパラメータであり、IrsvrとIisvrは、計測した通過電流Isvrと力率cosθから求めた通過電流の実部と、通過電流の虚部である。そして、R1は自動電圧調整器SVRの通過電流の実部Irsvrに対する係数、X1は自動電圧調整器SVRの通過電流の虚部Iisvrに対する係数、Vref1は基準電圧である。
【0054】
なお図4の処理ステップS2の記述は、R1・Irsvrの項を有効電力Psvrと係数Ap1の積として求め、またX1・Iisvr項を無効電力Qsvrと係数Aq1の積として求める計算式の例を記述しているが、これはいずれの手法を採用するものであっても同じ結果が導かれる。
【0055】
同様にして処理ステップS3では、線路電圧降下補償回路LDC2は、データベースDB2に示すパラメータ(インピーダンスとしてR2とX2、電圧Vref2)を読み込み、(2)式を実行する。タップ制御装置310における(2)式の実行により、タップ動作判定基準値Vs2が計算される。
[数2]
Vs2=Vref2+R2・Irsvr+X2・Iisvr (2)
ここで、R2、X2、Vref2は、予め設定されたパラメータであり、IrsvrとIisvrは、計測した通過電流Isvrと力率cosθから求めた通過電流の実部と、通過電流の虚部である。そして、R2は自動電圧調整器SVRの通過電流の実部Irsvrに対する係数、X2は自動電圧調整器SVRの通過電流の虚部Iisvrに対する係数、Vref2は基準電圧である。
【0056】
なお図4の処理ステップS3の記述は、R2・Irsvrの項を有効電力Psvrと係数Ap2の積として求め、またX2・Iisvr項を無効電力Qsvrと係数Aq2の積として求める計算式の例を記述しているが、これはいずれの手法を採用するものであっても同じ結果が導かれる。
【0057】
処理ステップS4では、(1)式で求めた基準値Vs1に対して自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrが、正負の所定の制限値ε1を超えることの確認を行い、所定範囲内にあるとき(処理ステップS4のYES)には処理ステップS1に戻り上記処理を繰り返す。
【0058】
自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrが、基準値Vs1に対して正負の所定の制限値ε1を超えるとき(処理ステップS4のNo)、処理ステップS5では処理ステップS4の条件を満たす時間をタップ制御装置内に設けられたタイマで積算し、処理ステップS6ではその値がTsvr1を超えた場合にタップ切換指令を発行し、タップ切換後に処理ステップS7でTsvr1をリセットする。
【0059】
(1)式の結果に対する上記の処理は、(2)式の結果に対しても同様に実行される。この処理部分が、図4の処理ステップS8からS11に対応している。
【0060】
具体的には、処理ステップS8では、(2)式で求めた基準値Vs2に対して自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrが、正負の所定の制限値ε2を超えることの確認を行い、所定範囲内にあるとき(処理ステップS8のYES)には処理ステップS1に戻り上記処理を繰り返す。
【0061】
自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrが、基準値Vs2に対して正負の所定の制限値ε2を超えるとき(処理ステップS8のNo)、処理ステップS9では処理ステップS8の条件を満たす時間をタップ制御装置内に設けられたタイマで積算し、処理ステップS10ではその値がTsvr2を超えた場合にタップ切換指令を発行し、タップ切換後に処理ステップS11でTsvr2をリセットする。
【0062】
上記の処理判断によれば、自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrが、この基準値Vs1より一定値ε1以上小さい状態で一定時間(例えば、Tsvr1秒)経過すると、自動電圧調整器SVRのタップ302を上げ方向に変更し、二次側電圧を上昇させる。逆に、自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrがこの基準値Vs1より一定値ε1以上大きい状態で一定時間経過すると、自動電圧調整器SVRのタップ302を下げ方向に変更し、二次側電圧を下降させるといった動作をする。
【0063】
また同様に、自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrが、この基準値Vs2より一定値ε2以上小さい状態で一定時間(例えば、Tsvr2秒)経過すると、自動電圧調整器SVRのタップ302を上げ方向に変更し、二次側電圧を上昇させる。逆に、自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrがこの基準値Vs2より一定値ε2以上大きい状態で一定時間経過すると、自動電圧調整器SVRのタップ302を下げ方向に変更し、二次側電圧を下降させるといった動作をする。
【0064】
図5に、配電設備設計支援システム400と各種計測手段200との関係を示す。自動電圧調整器SVRの通過電流の有効成分Irsvrと、無効成分Iisvrは、自動電圧調整器SVR中の計測部320(図3参照)にて計測され、子局190から、専用線191、配電自動化システム600を介して配電設備設計支援システム400に取得される。また、太陽光発電装置PVの端子電圧については、電圧計180からの電圧を子局190から専用線191、配電自動化システム600を介して、配電設備設計支援システム400に取得される。日射量についても、配電系統近傍に設置された日射計185において、子局190から専用線191、配電自動化システム600を介して配電設備設計支援システム400に取得される。日射計185が設置されていない場合であれば、気象庁からの日射量計測データから当該地域の日射量を得る。なお配電設備設計支援システム400から配電自動化システム600、専用線191、子局190を介して自動電圧調整器SVRに整定値350が伝送される。
【0065】
図6に、設備設計支援システム400を計算機にて構成する場合の構成例を示す。設備設計支援システム400は、各種手段の結果得られる計算結果を表示する表示装置11、当システム利用者からの入力を受け付けるための入力手段12、各種手段を実行するためのCPU13、通信手段14、計算過程を保持するためのRAM15、配電系統を構成するデータ群(対象配電系統、日射計測値、太陽光発電装置PV配置・容量、負荷パタン、自動電圧調整器SVR配置)や、計測したSVR通過電流Irsvr、Iisvrおよび差電圧ΔVから太陽光発電出力抑制に寄与する電圧ΔVlimを潮流計算で算出したデータなどを格納するデータベースDB3、LDCパラメータを格納するデータベースDB1、DB2、対象配電系統、自動電圧調整器SVR配置、太陽光発電装置PVの配置・容量、負荷パタン等が格納されたデータベースDB4、から構成されている。
【0066】
次に設備設計支援システム400における具体的な処理内容について、順番に説明する。まず図7を用いて平面上分割区間決定手段440の処理内容を説明する。
【0067】
(Irsvr、Iisvr)平面上の分割区間(ΔIrsvr、ΔIisvr)を決定するフローを示す図7において、最初の処理ステップS441では、有効電力と無効電力の計測値P、Qから力率cosθ、sinθを得、あるいはSVR通過有効電流Irsvr、無効電流Iisvrを直接計測する。次の処理ステップS442では、計測電流の平均値からSVR通過電流Irsvr、Iisvrを算出する。もしくはSVR通過電流Irsvr、Iisvrを得る。なお、この段階までに自動電圧調整器SVRと複数の太陽光発電出力地点間の電位差ΔVi(i=1、2、…n)も得られており、SVR通過電流Irsvr、Iisvrと自動電圧調整器SVRと複数の太陽光発電出力地点間の電位差ΔViは、計測時刻の情報と共に相互に関連付けされて得られるものである。
【0068】
さらに、処理ステップS443では、Irsvr、Iisvrのデータの分布に基づき、Irsvr、Iisvrで構成する座標平面を想定し、この平面を区分化する。平面区分化は、Irsvr、Iisvrの最大値と最小値が±100A程度であれば、区分化の単位としては、ΔIrsvr=ΔIisvr=10Aとすることで、Irsvr、Iisvrの平面を20×20に分割できることになり、後段の処理である重回帰分析を安定的に行うことが可能となる。この区分化の単位は、本システムのユーザが設定可能である。
【0069】
図7の平面上分割区間決定手段440では、上記のようにして、Irsvr、Iisvrで構成する二次元の座標平面を想定し、かつ二次元の座標平面を複数区間に分割して平面の区分化を行う。
【0070】
次に図8を用いて上位ランクΔV抽出手段460の処理内容を説明する。
【0071】
上位ランクΔV抽出手段460の処理フローを示す図8において、処理ステップS461では、SVR通過電流Irsvr、Iisvrと、自動電圧調整器SVRと複数の太陽光発電出力地点間の電位差ΔVによる3次元の空間を想定する。図15は、Irsvr、Iisvrと、ΔVによる3次元空間の概念を示す図である。
【0072】
具体的には、SVR通過電流Irsvr、Iisvrで区分化した各々の区分区間(ΔIrsvr、ΔIisvr)に属する三次元座標(Irsvr、Iisvr、ΔV)において、ΔVの値が大きい順にソーティングする。
【0073】
処理ステップS462では、ΔVの値が大きい順にソーティングした(Irsvr、Iisvr、ΔV)データセットのうち、ΔVの値が上位1位、2位、3位となるデータを選択する。上位何位まで選ぶべきかは、本システムのユーザが設定可能である。
【0074】
このように図15では、SVR通過電流IrsvrとIisvrによる平面座標に対してΔIrsvrとΔIisvrを単位とする平面領域の区分化を実施し、かつ高さ方向に自動電圧調整器SVRと複数の太陽光発電出力地点間の電位差ΔVを採用した3次元空間を想定している。区分化された平面における電位差ΔVを○または●で表示しているが、ここでは電位差ΔVが大きい上位ランクのものを●で表示している。
【0075】
図8の処理ステップS462では、電位差ΔVの値が上位1位、2位、3位となる(Irsvr、Iisvr、ΔV)のデータセットに対して、選択フラグを付与する。この選択フラグの設定有無により、重回帰分析をする際のデータの判別が可能となり、電圧上昇分加算手段462の処理を行った後で、図11に示す重回帰分析手段480の処理を開始する。
【0076】
電圧上昇分加算手段462、および重回帰分析手段480の具体的な処理内容については、図10aと図10b、および図11を参照して詳細に後述することにし、ここでは図16により重回帰分析した時の概念を予め簡便に説明することにする。図16の座標は図15と同じ座標であるが、選択フラグを付与された(Irsvr、Iisvr、ΔV)のデータセットによる重回帰分析結果は、図16の四角で囲まれた平面の領域H1として表現することができる。
【0077】
図16は、選択フラグを付与された(Irsvr、Iisvr、ΔV)のデータセットによる重回帰分析結果H1を示しているが、本発明においては選択フラグを付与された(Irsvr、Iisvr、ΔV)のデータセットに対して、太陽光発電連系計画を考慮した場合に、この重回帰分析結果H1がどのように変更されるかを求めていく。
【0078】
図9は、太陽光発電連系計画データベースDB5の具体的なデータ事例を示している。なお太陽光発電連系計画データベースDB5は、図1において設備計画システム400の外に記載されているが、設備計画システム400と一体であってもよい。太陽光発電連系計画データベースDB5は、太陽光発電連系年月日、太陽光発電容量、連系個所に関する属性から構成され、営業所等の太陽光発電連系審査により、抽出されることで構築できるデータであることを想定している。
【0079】
図10aは、電圧上昇分加算手段462の処理フローを示している。図10aの最初の処理ステップS462-1では、図9の太陽光発電連系計画データベースDB5から得られる将来にわたる太陽光発電連系計画情報に基づき、選択したΔV値(上位1位、2位、3位)に対して、太陽光発電連系により、生じる、太陽光発電出力に基づき、潮流計算にて、将来の電圧上昇分Vαを各区分化されたIrsvr、Iisvrにて算出する。
【0080】
処理ステップS462-2では、算出したVαを選択したΔV値(上位1位、2位、3位)へ加算する。算出されるVαの値は、逆潮流時の電流の符号が負の場合における電圧に対して一律加算してもよい。さらには、時間帯毎に異なる日射量を加味してVαを時間帯、日射量毎に求めたうえで、加算対象のΔVを選択してもよい。
【0081】
図10bは、図15に示した選択フラグを付与された(Irsvr、Iisvr、ΔV)のデータセットによる重回帰分析結果H1に対して、将来の電圧上昇分Vαを加味した選択フラグを付与された(Irsvr、Iisvr、ΔV)のデータセットによる重回帰分析結果H2を合わせて表記した図である。つまり、太陽光発電連系計画実施後の重回帰分析結果H2を示している。
【0082】
このようにして本発明では、太陽光発電連系計画を実行したときにおける重回帰分析結果H2を求め、将来太陽光発電連系計画が実行されたときに採用可能な新たなSVR整定値の候補を重回帰分析結果H2から得ておくものである。
【0083】
配電設備設計支援システムにおける上記の一連の処理は要するに「配電系統の情報と、太陽光発電装置の連系計画の情報とから、将来太陽光発電装置が配電系統に設置されたときの配電系統のインピーダンスを求め、電圧調整装置に対する整定値候補とする」ものである。さらに詳細に述べると、「電圧調整装置の通過電流の有効成分と無効成分、並びに前記電圧調整装置と複数の前記太陽光発電装置の間の電位差を配電系統の情報として求め、電圧調整装置の通過電流の有効成分と無効成分で定まる平面上において、分割区間を決定し、分割区間における前記電位差を用いた重回帰分析を実施し、配電系統のインピーダンスを決定するとともに、将来太陽光発電装置が配電系統に設置されたときの配電系統の情報から将来における配電系統のインピーダンスを求める」ことにしたものである。
【0084】
次に重回帰分析手段480の具体的な処理フローについて図11を用いて説明する。まず、処理ステップS900において重回帰分析をするための単位時間を設定する。例えば、1時間や3時間などである。処理ステップS907では、例えば1日の日中についての1時間または3時間刻みでの全ての時間帯分の計算をすれば終了する。以降の処理は単位時間に含まれるデータセットに対して処理を行う。処理ステップS901において太陽光発電装置PViの組合せを検索し、処理ステップS902で選択フラグ==1である太陽光発電装置PViの組合せを抽出する。選択フラグ==1である太陽光発電装置PViの組合せを見つけたら、処理ステップS903で、そのときの電位差ΔVとSVR通過電流Irsvr、Iisvrとの間で重回帰分析計算を行い、ΔV=α×Irsvr+β×Iisvr+ΔV0となるαを自動電圧調整器SVRのLDC2の整定値R(Ω)とする。
【0085】
さらに処理ステップS904では、このときの電位差ΔVとSVR通過電流Iisvrとの間で重回帰分析を行い、ΔV=α×Irsvr+β×Iisvr+ΔV0となるβを自動電圧調整器SVRのLDC2の整定値X(Ω)とする。処理ステップS905では、もしもすべてのデータ組合せパタンを検索済みでなければ、処理ステップS901へ戻る。もしもすべてのデータ組合せパタンを検索済みであれば、本処理を終了とし、季節・時間帯に紐づけられたSVR整定値R2、X2を決定する。
【0086】
設定した時間帯毎に行われる上記処理により、例えば日照のある朝6時から夜6時までの1時間ごとの時間帯で求められたSVR整定値R2、X2が得られたことになる。これらの時間帯ごとのSVR整定値R2、X2は、SVR整定値候補として記憶され、適宜のタイミングで外部出力される。
【0087】
なおこれらの時間帯ごとのSVR整定値R2、X2は、時間の情報とともに、保持されていくが、このとき重回帰分析手段480で求めた時間帯ごとのSVR整定値と、日射計185で計測した時間帯ごとの日射量を関連づけして記憶するのがよい。
【0088】
図11の処理は、要するに自動電圧調整器SVRのLDC2の整定値R、Xで定める仮想点を定めるに当たり、出力抑制を生じる太陽光発電装置PVを考慮してその位置を定めたものである。自動電圧調整器SVRの傘下に例えば100台の太陽光発電装置PVが存在し、このうち50台が頻繁にあるいは大規模な出力抑制を生じる太陽光発電装置PVであるといった場合に、100台すべてを考慮した仮想点設定を行っていたものが従来であるに対し、本発明では出力抑制を生じる50台の太陽光発電装置PVを主体として仮想点設定を行うものである。
【0089】
このため、出力抑制を生じる太陽光発電装置PVを主体とする仮想点設定の実現手法にはいくつかのものが想定し得、本発明はそのいずれであってもよい。これらの変形手法は、例えば出力抑制程度の高い太陽光発電装置PVに限定して定めるとか、出力抑制から救うことのできる太陽光発電装置PVの台数を極力大きくするように繰り返し計算により定めるとか、出力抑制を生じる太陽光発電装置PVの重み係数を上げて仮想点を定めるとか言ったことが考えられる。
【0090】
図12に、図11で得られたαおよびβの幾何学的イメージを示す。図12はSVR通過電流の有効成分Irsvr、無効成分Iisvr、並びにSVR2次側電圧と太陽光発電装置端子電圧の電位差ΔVで定まる3次元平面(例えば重回帰分析結果H2)を表記したものである。ここでは、電位差ΔVがΔV0である時に、有効成分Irsvrが増加したときの電圧変動分ΔΔVと、無効成分Iiが増加したときの電圧変動分ΔΔV‘が表す領域を表示している。
【0091】
図12のこの関係から、αおよびβは(3)(4)式で表現することができる。この係数αおよびβは季節・時間帯に紐づけられたSVR整定値R2、X2を決定したことに他ならない。
[式3]
α=ΔΔV/ΔIr (3)
[式4]
β=ΔΔV‘/ΔIi (4)
図1に示したように自動電圧調整器SVRと配電設備設計支援システム400を別個に配置して信号伝送を行う事例を示したが、図13は自動電圧調整器SVR内にSVR整定値決定手段400Aを備えた実施例を示している。
【0092】
SVR整定値決定手段400Aは、データベースDB3A、平面上分割区間決定手段440A、上位ランクΔV抽出手段460A、電圧上昇分加算手段462A,重回帰分析手段480A、データベースDB4A、データベースDB5Aを有する。
【0093】
計測手段200によりSVR通過電流IrsvrとIisvr、自動電圧調整器SVRと太陽光発電装置PVi出力地点間の電位差ΔVi、日射量を取得し、平面上分割区間決定手段440A、上位ランクΔV抽出手段460Aにより、太陽光発電装置出力抑制に相関関係を持つデータを選び出したうえで、電圧上昇分加算手段462A、重回帰分析を行う480Aの手段により時間帯ごとのSVR整定値を求める。その後、SVR整定値350はタップ制御310へ設定されることを示している。
【0094】
図1図13で説明した処理の概念を図14a、図14bにより説明する。まず図14aは、変電所110から自動電圧調整器SVRを介して例えば樹枝状に延伸配置された配電系統の面的なエリア構成例を示している。係る配電系統において、「○」の位置に太陽光発電装置PVが配置されている。ここでは既存の装置である線路電圧降下補償回路LDC1の動作整定値R1、X1が定める自動電圧調整器SVR二次側の仮想点の位置がG1であるとする。なお仮想点とは、配電系統の面的なエリア構成におけるインピーダンス分布の重心位置に対応している。従って、この点を電圧制御すれば配電系統全体を適正に電圧制御することが可能である。
【0095】
これに対し図14bは、図1図11の平面上分割区間決定手段440A、上位ランクΔV抽出手段460A、重回帰分析手段480Aにおいて求めた、太陽光発電装置PVにおける出力抑制に相関関係を有する太陽光発電装置PVのみを「●」で示したものである。重回帰分析手段480では、抽出した出力抑制に相関関係を有する太陽光発電装置PVの配置情報を考慮して、特に出力抑制が大きく、SVR2次側電圧と太陽光発電装置PVi端子電圧との電位差ΔViとの相関が大きい太陽光発電装置PViについて、当該配電系統の面的なエリア構成におけるインピーダンス分布の重心位置G2を求めたものである。
【0096】
図16は、平面上分割区間決定手段440A、上位ランクΔV抽出手段460Aにより抽出した●のデータ群を用いて、重回帰分析手段480Aにおいて求めた平面H1を示す図である。この平面H1は●の集合から求めた平面であり、この平面H1から図12に示す係数αおよびβを定める結果として、特に出力抑制が大きく、自動電圧調整器SVR2次側電圧と太陽光発電装置PVi端子電圧との電位差ΔViとの相関が大きい太陽光発電装置PViについて配慮した自動電圧調整器SVRを構成することができる。
【0097】
なお本発明ではさらに、太陽光発電連系計画を考慮した電圧上昇分加算手段462Aの処理により、図16の領域H1から図10bの領域H2を定めることで、将来の太陽光発電連系計画実行後の最適なSVR整定値候補を予め推定可能としたものである。
【0098】
また図17は、図14aと図14bの場合における電位差ΔVの推定精度の関係を示している。図17の上部には、図14aの従来方式(全データにより重回帰分析)の時の電位差の時間変化(細い実線)と従来方式における推定による電位差の時間変化(太い実線)を比較表示している。太い実線が、細い実線と重なれば、電位差の推定が正確に行われたことを意味しており、自動電圧調整器SVRによる制御が良好に行われることを示しているが、特に最大値についての推定がよくないことが明白である。
【0099】
ここで最大値は太陽光発電出力抑制が実施される可能性が高い領域であることから、太い実線は、細い実線の最大値近傍を正確に推定すべきところ、最大値を正確に推定できていないことが従来における問題である。この点について、図17の下部に示す本発明の提案に係る手法によれば、太い実線は、細い実線の最大値近傍を正確に推定できており、太陽光発電出力抑制が実施される可能性が低くなっていることが理解できる。
【0100】
図18は、自動電圧調整器SVRにおける整定値選択部345の処理内容を示す。自動電圧調整器SVRは、処理ステップS1801では、LDC1整定値を選択する。処理ステップS1802では、自動電圧調整器SVRが保持するタイマーから年度を取得し送信する。
【0101】
図1図13では自動電圧調整器SVRに適用する事例を示したが、図19に、負荷時タップ切替変圧器LRTに対する整定値を決めるための全体図を、図20に、負荷時タップ切替変圧器LRTと設備設計支援システムとの関係を示す。負荷時タップ切替変圧器LRTについても線路電圧降下補償演算LDC型であれば、自動電圧調整器SVRと同様に、LDC1、LDC2を整定することが可能となる。負荷時タップ切替変圧器LRTがもしも、プロコン型であれば、予め時間帯毎に用いる整定値を決めておく必要がある。
【0102】
本発明の線路電圧降下補償回路LDC2の動作整定値R2、X2は、重心位置G2を示している。本発明によれば、出力抑制の対象となる太陽光発電装置により近い位置が仮想点として設定されることにより、近傍の電圧が制限値を逸脱しないように自動電圧調整器SVRにおけるタップ制御が配電系統の電圧を調整するので、出力抑制の機会が多かった太陽光発電装置は抑制せずともよい環境下におかれることになる。
【0103】
従来の場合には、一度定めた重心位置G1を制御するのみで太陽光発電装置PVの出力状況が考慮されていないが、本発明では、出力抑制が大きい順に相関関係を有する太陽光発電装置PVのみを抽出し、その都度重心位置G2として反映させているので、出力抑制による売電機会の損失を受けている特定の太陽光発電装置PVの不公平を回避することが可能である。
【0104】
この結果、太陽光発電装置PVの出力が過度に上昇する場合であっても、事前に上流側の自動電圧調整器SVRにおけるタップ制御が配電系統の電圧を調整するので、太陽光発電装置PVの出力抑制に至る機会を削減することが可能である。
【0105】
本発明による以上のような制御により、太陽光発電などが分岐系統等に大量に導入された系統でも、太陽光発電の出力抑制量を低減できる効果がある。また、電圧調整装置が太陽光発電の出力抑制発生時にのみ系統の電圧を調整することで、常時の電圧調整装置の電圧調整能力を向上させることが可能となり、配電系統に連系可能な負荷や太陽光発電量の増加に対する対策設備コストを削減することができる効果がある。
【0106】
また本発明によれば、同じ1日の日照時間帯の中であっても、日照条件が相違することに伴い電力系統の状態が変化しているので、設定すべき整定値を日射量に応じて可変とすることで、よりきめ細かな電力系統制御に貢献することができる。
【0107】
なお、図1などにおいては、上位ランクΔV抽出手段460を設ける場合を想定しているが、本発明は太陽光発電装置の連系計画に沿って、太陽光発電装置を設置した時のインピーダンスを予測することに主眼がある発明であることから、上位ランクΔV抽出手段460が必須の構成要件という訳ではない。配電系統によっては、出力抑制が大きい太陽光発電装置PVを主体に考慮する場合もあれば、従来のように配電系統全体を制御するものにも適用でき、将来予測が可能である
以上説明した本発明はその実施の形態は多様であるが、いずれの場合であっても、「複数の太陽光発電装置を備えた配電系統に設置され、配電系統の仮想点における電圧を設定電圧とすべくタップを調整する電圧調整装置に対して、整定値を与える配電系統の整定値候補算出装置であって、配電系統から得た情報と、太陽光発電装置の連系計画の情報とから、将来太陽光発電装置が配電系統に設置されたときの配電系統のインピーダンスを求め、電圧調整装置に対する整定値候補とするインピーダンス導出手段を備えていることを特徴とする」ものである。
【0108】
なお本発明の場合に、図1図19の400あるいは図13の400Aの部分は、配電設備設計支援システムであるとともに、その機能に着目するなら配電系統の整定値候補算出装置ということができる。また図1図19の400あるいは図13の400Aの部分は将来における配電系統のインピーダンスを予測するインピーダンス導出手段を備えたものということができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
配電系統の電圧を調整する電圧調整装置として活用することができる。また、電圧調整装置である自動電圧調整器SVRや配電用変電所LRTの制御システムとして活用することがきる。また、配電系統において、太陽光発電などの分散電源の増設に対応した、電圧維持対策、配電設備利用率向上対策として活用することが可能となる。
【符号の説明】
【0110】
100:配電系統
110:配電用変電所
120:ノード
PV:太陽光発電装置
140:配電線路
150:負荷
170:センサ
300:自動電圧調整装置
302:タップチェンジャ
303:単巻変圧器
305:変圧器
310:タップ制御装置
CT:電流センサ
PT:電圧センサ
320:制御装置の計測部
LDC1、LDC2:線路電圧降下補償回路
340:タップ制御装置
DB1、DB2、DB3、DB4、DB5:データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15
図16
図17
図18
図19
図20