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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】医療具の搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20221221BHJP
【FI】
A61F2/966
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018220711
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020081403
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】白川 京典
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0024203(US,A1)
【文献】特表2000-517223(JP,A)
【文献】国際公開第2018/005628(WO,A1)
【文献】特開2008-148880(JP,A)
【文献】特開2016-49415(JP,A)
【文献】特表2013-512706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターシースと、該アウターシース内に挿入されるインナーシースとを有しており、前記アウターシースの先端部内周と、前記インナーシースの先端部外周との間に、医療具を収容可能な収容部が設けられており、前記アウターシースと前記インナーシースとを相対移動させることにより、前記収容部に収容された前記医療具を解放可能に構成された医療具の搬送装置において、
前記インナーシースの先端部には先端キャップが取付けられており、この先端キャップは、前記アウターシースの先端側から突出する突出部を有しており、この突出部の基端側が前記アウターシースの先端側に対して離反可能とされており、
前記先端キャップの前記突出部の基端側と、前記アウターシースの先端側との間の、前記アウターシースの軸方向に対して離れる箇所である、境界部には、それらの境界部を少なくとも部分的に覆う挿入ガイド部材が設けられており、
前記挿入ガイド部材は、前記先端キャップの前記突出部の基端側から延びて、前記アウターシースの先端外周に被せられる板状をなした延出部を有しており、
前記延出部は複数設けられており、各延出部は互いに平行に延びていることを特徴とする医療具の搬送装置。
【請求項2】
アウターシースと、該アウターシース内に挿入されるインナーシースとを有しており、前記アウターシースの先端部内周と、前記インナーシースの先端部外周との間に、医療具を収容可能な収容部が設けられており、前記アウターシースと前記インナーシースとを相対移動させることにより、前記収容部に収容された前記医療具を解放可能に構成された医療具の搬送装置において、
前記インナーシースの先端部には先端キャップが取付けられており、この先端キャップは、前記アウターシースの先端側から突出する突出部を有しており、この突出部の基端側が前記アウターシースの先端側に対して離反可能とされており、
前記先端キャップの前記突出部の基端側と、前記アウターシースの先端側との間の、前記アウターシースの軸方向に対して離れる箇所である、境界部には、それらの境界部を少なくとも部分的に覆う挿入ガイド部材が設けられており、
前記挿入ガイド部材は、前記先端キャップの前記突出部の基端側と前記アウターシースの先端側とに連結されて、前記アウターシースと前記インナーシースとの相対移動を規制するように構成されており、
更に前記挿入ガイド部材には、同挿入ガイド部材を破断して、前記アウターシースと前記インナーシースとを相対移動可能とする、易破断部が設けられていることを特徴とする医療具の搬送装置。
【請求項3】
前記挿入ガイド部材は、前記先端キャップの前記突出部の基端側と前記アウターシースの先端側との境界部の外周に配置される筒状部を有し、この筒状部が前記先端キャップの前記突出部の基端側と前記アウターシースの先端側とを連結して、前記アウターシースと前記インナーシースとの相対移動を規制するように構成されており、
前記筒状部には、前記境界部に沿って周方向に複数の孔が所定間隔で設けられており、周方向に隣接する孔と孔との間の部分に、前記易破断部が形成されている請求項2記載の医療具の搬送装置。
【請求項4】
アウターシースと、該アウターシース内に挿入されるインナーシースとを有しており、前記アウターシースの先端部内周と、前記インナーシースの先端部外周との間に、医療具を収容可能な収容部が設けられており、前記アウターシースと前記インナーシースとを相対移動させることにより、前記収容部に収容された前記医療具を解放可能に構成された医療具の搬送装置において、
前記インナーシースの先端部には先端キャップが取付けられており、この先端キャップは、前記アウターシースの先端側から突出する突出部を有しており、この突出部の基端側が前記アウターシースの先端側に対して離反可能とされており、
前記先端キャップの前記突出部の基端側と、前記アウターシースの先端側との間の、前記アウターシースの軸方向に対して離れる箇所である、境界部には、それらの境界部を少なくとも部分的に覆う挿入ガイド部材が設けられており、
前記挿入ガイド部材は、前記アウターシースの先端から筒状をなすように延出すると共に、延出方向の先端側に向けて次第に窄まるような形状をなしており、
前記先端キャップには、前記挿入ガイド部材が挿入可能とされた、環状をなした挿入溝が形成されていることを特徴とする医療具の搬送装置。
【請求項5】
アウターシースと、該アウターシース内に挿入されるインナーシースとを有しており、前記アウターシースの先端部内周と、前記インナーシースの先端部外周との間に、医療具を収容可能な収容部が設けられており、前記アウターシースと前記インナーシースとを相対移動させることにより、前記収容部に収容された前記医療具を解放可能に構成された医療具の搬送装置において、
前記インナーシースの先端部には先端キャップが取付けられており、この先端キャップは、前記アウターシースの先端側から突出する突出部を有しており、この突出部の基端側が前記アウターシースの先端側に対して離反可能とされており、
前記先端キャップの前記突出部の基端側と、前記アウターシースの先端側との間の、前記アウターシースの軸方向に対して離れる箇所である、境界部には、それらの境界部を少なくとも部分的に覆う挿入ガイド部材が設けられており、
前記挿入ガイド部材は、前記アウターシースの先端側に連結された第1嵌合部と、前記先端キャップの突出部の基端側に連結された第2嵌合部とから構成されており、
前記第1嵌合部は、前記先端キャップの基端側に向けて次第に幅狭となると共に、前記アウターシースの内径側に向けて斜め内方に第1嵌合片が延出しており、
前記第1嵌合片は、前記アウターシースの先端部の周方向に所定間隔をあけて複数配置されており、
前記第2嵌合部は、前記アウターシースの先端側に向けて次第に幅狭となると共に、前記インナーシースの内径側に向けて斜め内方に第2嵌合片が延出しており、
前記第2嵌合片は、前記先端キャップの突出部の周方向に所定間隔をあけて複数配置されており、
前記第1嵌合片の間に前記第2嵌合片を嵌合させると共に、前記第2嵌合片の間に前記第1嵌合片を嵌合させることで、前記境界部を覆うことを特徴とする医療具の搬送装置。
【請求項6】
アウターシースと、該アウターシース内に挿入されるインナーシースとを有しており、前記アウターシースの先端部内周と、前記インナーシースの先端部外周との間に、医療具を収容可能な収容部が設けられており、前記アウターシースと前記インナーシースとを相対移動させることにより、前記収容部に収容された前記医療具を解放可能に構成された医療具の搬送装置において、
前記インナーシースの先端部には先端キャップが取付けられており、この先端キャップは、前記アウターシースの先端側から突出する突出部を有しており、この突出部の基端側が前記アウターシースの先端側に対して離反可能とされており、
前記先端キャップの前記突出部の基端側と、前記アウターシースの先端側との間の、前記アウターシースの軸方向に対して離れる箇所である、境界部には、それらの境界部を少なくとも部分的に覆う挿入ガイド部材が設けられており、
前記挿入ガイド部材は、膨潤性材料から形成され、前記先端キャップに環状をなすように付着されていることを特徴とする医療具の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、管状器官等の目的位置にステント等の医療具を留置するための、医療具の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、胆管、尿管、気管、血管等の管状器官の狭窄部や閉塞部に、ステント等の医療具を留置して、当該部分を拡張して胆汁や血液等を流れやすくする等といった、治療が行われている。この際には、例えば、アウターシースと、該アウターシース内に配置されるインナーシースとを備えた、ステントデリバリー装置が用いられる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、アウターシースと、アウターシース内にスライド可能に挿入されるインナーチューブとを有し、インナーチューブの先端部外周とアウターシースの先端部内周との間にステントを収容配置した状態で、アウターシースをインナーチューブに対して基端側にスライドさせることにより、ステントを開放できるように構成された、ステントデリバリー装置が記載されている。
【0004】
前記インナーチューブの先端には、略筒状をなした頭部が連結されている。この頭部は、その軸方向所定箇所に最も拡径した頂部を有しており、この頂部から先端側に向けて、一部又は全体にかけて、次第に縮径する先細テーパ状をなすと共に、前記頂部から基端側に向けて次第に縮径する縮径部を有している。そして、アウターシースの先端部内周縁が頭部に当接することで、インナーチューブの先端部外周と、アウターシースの先端部内周との間が囲まれて、ステントの開放が抑制された状態で収容されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-49415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のステントデリバリー装置では、上述したように、インナーチューブの先端部外周と、アウターシースの先端部内周との間に、ステントを収容する際には、頭部にアウターシースの先端部内周縁が当接するため、頭部基端側の縮径部とアウターシース先端との境界部に、段差が生じていた。
【0007】
そのため、例えば、いわゆる超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(EUS-BD)によって、例えば、胃と胆管との間にステントを留置すべく、胃と胆管とに孔を空けて、これらの孔に、頭部の先端側からアウターシースやインナーチューブを通過しようとする際に、前記段差が、胃や胆管の壁部に引っ掛かって、挿入しにくくなる可能性があった。また、例えば、管状器官が屈曲している場合等においても、前記段差が、管状器官内壁に引っ掛かりやすくなる可能性があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、体内への挿入時に、体内の壁部に引っ掛かりにくくして、体内に挿入しやすくすることができる、医療具の搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、アウターシースと、該アウターシース内に挿入されるインナーシースとを有しており、、前記アウターシースの先端部内周と、前記インナーシースの先端部外周との間に、医療具を収容可能な収容部が設けられており、前記アウターシースと前記インナーシースとを相対移動させることにより、前記収容部に収容された前記医療具を解放可能に構成された医療具の搬送装置において、前記インナーシースの先端部には先端キャップが取付けられており、この先端キャップは、前記アウターシースの先端側から突出する突出部を有しており、この突出部の基端側が前記アウターシースの先端側に対して離反可能とされており、前記先端キャップの前記突出部の基端側と、前記アウターシースの先端側との間の、前記アウターシースの軸方向に対して離れる箇所である、境界部には、それらの境界部を少なくとも部分的に覆う挿入ガイド部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、先端キャップの突出部の基端側と、前記アウターシースの先端側との間の、前記アウターシースの軸方向に対して離れる箇所である、境界部には、それらの境界部を少なくとも部分的に覆う挿入ガイド部材が設けられているので、先端キャップの突出部の基端側とアウターシース先端側との境界部に生じる隙間や段差等が、挿入ガイド部材によって少なくとも部分的に覆われるため、アウターシースやインナーシースを先端側から体内へ挿入する際に、体内の臓器や管状器官の壁部に引っ掛かりにくくすることができ、体内に挿入しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る医療具の搬送装置の、第1実施形態を示す斜視図である。
図2】同搬送装置において、収容部に医療具を収容した状態の、拡大断面図である。
図3図2の状態における要部拡大斜視図である。
図4】同搬送装置において、収容部から医療具を開放する際の、要部拡大断面図である。
図5図4の状態における要部拡大斜視図である。
図6】同搬送装置を用いて、体内に医療具を搬送する際の工程を示しており、(a)はその第1工程の説明図、(b)は第2工程の説明図である。
図7】同搬送装置を用いて、医療具を体内に留置した場合の、概略説明図である。
図8】本発明に係る医療具の搬送装置の、第2実施形態を示しており、その要部拡大斜視図である。
図9】本発明に係る医療具の搬送装置の、第3実施形態を示しており、(a)は、収容部に医療具を収容した状態の拡大断面図、(b)は、収容部から医療具を開放する際の拡大断面図である。
図10】本発明に係る医療具の搬送装置の、第4実施形態を示しており、その要部拡大断面図である。
図11】本発明に係る医療具の搬送装置の、第5実施形態を示しており、(a)はその要部拡大平面図、(b)は(a)のA-A矢示線における断面図、(c)は(a)のB-B矢示線における断面図である。
図12】本発明に係る医療具の搬送装置の、第6実施形態を示しており、(a)は、収容部に医療具を収容して、収容部の先端開口を閉じる前の状態の拡大断面図、(b)は、収容部に医療具を収容して、収容部の先端開口を閉じた状態の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1~7を参照して、本発明に係る医療具の搬送装置の、第1実施形態について説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、この実施形態の医療具の搬送装置10(以下、単に「搬送装置10」ともいう)は、アウターシース20と、このアウターシース20内に移動可能に挿入されるインナーシース30とを有している。また、図2に示すように、アウターシース20の先端部21の内周と、インナーシース30の先端部31の外周との間に、医療具1を収容可能な収容部40が設けられている。そして、前記収容部40に医療具1を収容した状態で、アウターシース20とインナーシース30とを相対移動させることにより、収容部40に収容された医療具1を解放可能に構成されている。
【0014】
なお、この実施形態における医療具1は、例えば、線材を編み及び/又は組んで筒状に形成してなるステントや、金属筒をレーザーカット等でメッシュ状に形成してなるステントであるが、このようなステントに限定されるものではない。
【0015】
また、アウターシース20とインナーシース30とを相対移動させる際には、例えば、インナーシース30を把持固定して、アウターシース20を手元側に引いたり、手元側とは反対側に押したり、アウターシース20を把持固定して、インナーシース30を手元側に引いたり、手元側とは反対側に押したり、或いは、インナーシース30とアウターシース20とを相互に押し引きすることで行うことができる。
【0016】
なお、以下の説明において、「基端部」又は「基端」とは、医療具の搬送装置を使用する使用者の手元に近い方の端部(近位端部)を意味し、「先端部」又は「先端」とは、上記基端部又は基端とは反対側の端部(遠位端部)を意味する。
【0017】
前記アウターシース20は円筒のチューブ状をなしており、その基端部23にアウターシース20を把持するための把持部24が取付けられている。また、アウターシース20の先端部21の外周には、凹状をなした凹部25が全周に沿って形成されている。更に図2図4に示すように、アウターシース20の先端部21側の所定箇所には、例えば、AuやPt等のX線不透過性の金属からなる、マーカー29が埋設されている。
【0018】
一方、インナーシース30は円筒のチューブ状をなしており、その先端部31には、前記アウターシース20の先端27側に配置される、先端キャップ50が取付けられている。なお、この先端キャップ50は、インナーシース30やアウターシース20の体内への挿入時に、先頭となって挿入ガイドとなると共に、アウターシース先端部内周とインナーシース先端部外周との間の収容部40の、先端側開口を閉塞するものである。また、インナーシース30の基端部33には、インナーシース操作用のハブ35が取付けられている。なお、ハブ35には、挿通孔35aが形成されており、インナーシース30の内部空間と連通している。したがって、ハブ35の挿通孔35aを通して、インナーシース30内にガイドワイヤ2(図6参照)を挿通可能となっている。
【0019】
また、上記のようなアウターシース20やインナーシース30は、例えば、ポリエチレン(PE)、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン樹脂、ナイロンエラストマー、ポリエステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド等から形成されている。なお、アウターシースやインナーシースの形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。また、インナーシースの所定箇所に、X線不透過性のマーカーを配置してもよい。
【0020】
上記インナーシース30の先端部31に取付けられる先端キャップ50は、ガイドワイヤ2を挿通させるための挿通孔51を、内部に形成した略筒状をなしている。また、この先端キャップ50は、アウターシース20の先端側から突出する突出部52を有しており、この突出部52の基端側が、アウターシース20の先端側に対して離反可能となっている。より具体的には、図2図4に示すように、この先端キャップ50は、前記アウターシース20の先端側から突出する前記突出部52と、この突出部52の基端側に連設され、前記アウターシース20の先端部21の内周に挿入される挿入部53とを有している。
【0021】
また、この実施形態における前記突出部52は、最も拡径した頂部54から、軸方向の最先端55aに向けて次第に縮径した形状をなした先頭部55と、前記頂部54から軸方向基端側に向けて、頂部54よりも縮径して一定径で延びるガイド配置部57と、このガイド配置部57の基端部側に設けられ、先端キャップ50の軸方向基端側に向けて次第に縮径するテーパ状の段部59とを有している。一方、前記挿入部53は、上記突出部52の段部59を介して、前記ガイド配置部57よりも縮径して、軸方向基端側に向けて一定径で更に延びる形状をなしている。また、上記最先端55aは、エッジがないようにR状に加工されている。なお、最先端55aは、R状加工を施すことが望ましいが、R状加工を施さなくともよい。
【0022】
前記ガイド配置部57は、その外周に、後述する挿入ガイド部材70のキャップ側連結部75が配置されて固着される部分となっている。また、前記段部59は、アウターシース20の先端27に対向して配置され、同先端27が当接可能な部分となっている(図2の拡大図参照)。
【0023】
なお、前記挿入部53の基端部外周には、テーパ面61が形成されており、アウターシース20の先端部21の内周に挿入しやすくなっている。また、挿入部53の内周には、凹溝状をなしたシース取付部62が形成されている。このシース取付部62に、インナーシース30の先端部31を挿入し、シース取付部62内周と先端部31外周とを、接着剤等を介して互いに固着することにより、インナーシース30の先端部31に、先端キャップ50が取付けられるようになっている。
【0024】
なお、上記の先端キャップ50は、例えば、ポリエチレン(PE)、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン樹脂、ナイロンエラストマー、ポリエステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド等から形成されている。なお、先端キャップの形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。すなわち、上記先端キャップ50は、頂部54から一定径のガイド配置部57や段部59を介して、挿入部53が延びる形状をなしているが、例えば、先端キャップとしては、頂部から基端側に向けて次第に縮径する形状をなしていてもよい(このような先端キャップの場合、頂部から次第に縮径する部分のうち、アウターシース先端側内周に挿入される部分が挿入部をなし、それよりも先端側の部分であって、アウターシース先端側から突出する部分が、本発明における「突出部」をなすこととなる)。
【0025】
そして、この搬送装置10は、先端キャップ50の突出部52の基端側と、アウターシース20の先端27側との間の、アウターシース20又はインナーシース30の軸方向に対して離れる箇所である、境界部45(図2参照)には、それらの境界部45を少なくとも部分的に覆う挿入ガイド部材70が設けられている。より具体的には、この実施形態における境界部45は、図2図4に示すように、インナーシース30を固定してアウターシース20を手元側とは反対側に押したり、或いは、アウターシース20を固定してインナーシース30を手元側に引いたりした場合に、先端キャップ50の突出部52の基端側(ここでは段部59を意味する)とアウターシース20の先端側とが互いに当接可能とされて、アウターシース20とインナーシース30との相対移動を規制し、医療具1を収容する収容部40の先端側開口を閉塞すると共に、アウターシース20やインナーシース30の軸方向に対して離れる箇所となっている。
【0026】
この実施形態における境界部45は、アウターシース20の先端27と、この先端27に対して軸方向に対向して配置される、先端キャップ50の突出部52の段部59との、互いに当接可能であり、また、離反可能ともなる箇所を指している。また、図2の拡大図に示すように、この実施形態の境界部45の場合、アウターシース20の先端27と、先端キャップ50の突出部52の段部59との間に形成された、間隙が位置するようなっている。
【0027】
図2及び図3に示すように、この実施形態における挿入ガイド部材70は、先端キャップ50の突出部52の基端側とアウターシース20の先端側との境界部45の外周に配置される、筒状部71を有し、この筒状部71が先端キャップ50の基端側とアウターシース20の先端側とを連結するように構成されている。
【0028】
より具体的に説明すると、この実施形態の筒状部71は略円筒状をなしており、軸方向基端側に配置され、アウターシース20の先端側に連結されるシース側連結部73と、軸方向先端側に配置され、先端キャップ50の突出部52の基端側に連結されるキャップ側連結部75と、これらの連結部73,75の間に配置される中間部77とから構成されている。
【0029】
前記シース側連結部73が、アウターシース20の先端部21に設けた凹部25の外周に配置されて、接着剤等を介して連結される。この連結状態では、図2に示すように、シース側連結部73の外周面が、アウターシース20の先端部21の外周面に対して出っ張らず面一となり、段差が生じないようになっている。
【0030】
一方、前記キャップ側連結部75が、先端キャップ50の突出部52の、ガイド配置部57の外周に配置されて、接着剤等を介して連結される。この連結状態では、図2に示すように、キャップ側連結部75の外周面が、先端キャップ50の外周面に対して出っ張らずに面一となり、段差が生じないようになっている。
【0031】
また、図2に示すように、この実施形態では、挿入ガイド部材70を構成する筒状部71の中間部77が、先端キャップ50の基端側とアウターシース20の先端側との境界部45の全周を覆うようになっている。
【0032】
なお、境界部45を部分的に覆うとは、アウターシース20の先端27の外周側縁部と、先端キャップ50の突出部52の基端側の外周側縁部(ここでは突出部52の段部59の外周側縁部)とが、外部に露出せずにカバーされることを意味する。
【0033】
また、筒状部71の中間部77には、略楕円形状をなした孔79が、境界部45の周方向に沿って所定間隔をあけて複数形成されている。各孔79は、その長軸側が、先端キャップ50の軸方向に沿うように形成されている。また、複数の楕円形状の孔79が、長軸方向を互いに平行となるように配置されているので、筒状部71の周方向に隣接する楕円形状の孔79,79の最大径部分どうしの間が、最も幅が狭い幅狭部となっている。なお、孔79は、楕円形状ではなくとも、例えば、丸孔や、長孔、角形孔等であってもよく、特に限定はされない。また、各孔79は、アウターシース先端部内周とインナーシース先端部外周との間に形成された収容部40に連通している。更に、先端キャップ50の周方向に隣接する孔79と孔79との間の部分(具体的には上記幅狭部)には、ミシン目状をなした切れ目線からなる易破断部81が形成されている。
【0034】
そのため、所定の力で、アウターシース20の先端側をインナーシース30の基端側に対して離れる方向に移動させることで(インナーシース30を固定してアウターシース20を手元側に引いたり、或いは、アウターシース20を固定してインナーシース30を手元側とは反対側に押したりする)、図4図5に示すように、筒状部71の中間部77の、孔79と孔79との間の部分が、易破断部81を介して破断されて、アウターシース20とインナーシース30とを相対移動させることが可能となっている。
【0035】
なお、上記の挿入ガイド部材70は、例えば、ポリエチレン(PE)、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン樹脂、ナイロンエラストマー、ポリエステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド等から形成されている。なお、挿入ガイド部材の形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。
【0036】
また、挿入ガイド部材における、先端キャップ基端側とアウターシース先端側との境界部を、少なくとも部分的に覆う形状や構造としては、上記実施形態のような、先端キャップに筒状部を設けた構造に限定されるものではない。例えば、複数の線状部材を、境界部の外周に沿って配置して覆ったり、板状をなした延出部で覆ったり、アウターシース先端から延出した延出部材で覆ったりしてもよく、特に限定はされない。
【0037】
更に、この実施形態では、挿入ガイド部材は、基端側がアウターシース先端側に連結され、先端側が先端キャップの突出部の基端側に連結されており、軸方向両端が連結されているが、この態様に限定されるものではない。例えば、挿入ガイド部材の先端側のみを、先端キャップの突出部の基端側に連結して、基端側をアウターシース先端側に連結させずに、同アウターシースの先端部外周に配置する構造としたり、或いは、挿入ガイド部材の基端側のみを、アウターシース先端側に連結しておき、先端側を先端キャップの突出部の基端側に連結させずに、同先端キャップの突出部の基端側外周に配置する構造としたりしてもよい。
【0038】
また、この実施形態の挿入ガイド部材70は、切れ目線からなる易破断部81を介して破断可能となっているが、この易破断部としては、例えば、孔と孔との間の部分を、幅狭にしたり(例えば、円形状や楕円形状をなした孔を並列配置した場合、隣接する最大径部分どうしの間を幅狭にできる)、三角溝状や細溝状の切欠きを入れたり、薄肉としたりしてもよく、所定の力で、アウターシース先端側をインナーシース基端側に対して離れる方向に移動させることで、破断可能であればよい。
【0039】
次に、上記構成からなる搬送装置10の使用方法の一例について、図6図7を参照して説明する。
【0040】
図7に示すように、十二指腸3の下部には、乳頭3aが設けられており、この乳頭3aから胆管4や膵管5が分岐して伸びている。また、肝臓7により生成される胆汁は、肝内胆管8を介して胆管4(総胆管)へと供給されて、乳頭3aを通過して十二指腸3へと供給される。ただし、腫瘍等によって胆管4が閉塞されて胆汁を流動させることができない場合がある。このような場合、従来は、図示しない内視鏡を胃6や十二指腸3に挿入して、同内視鏡の先端部を乳頭3a付近に配置した後、ステント等の医療具を収容したカテーテル等の搬送装置を内視鏡に通して、乳頭3aを介して胆管4に挿入して、胆管4に生成された閉塞部に、医療具を留置して拡開させる等といった、治療が行われている。しかし、何らかの理由によって、乳頭3aを介して、搬送装置を挿入できず、胆管4の閉塞部に医療具を留置できない場合がある。このようなケースにおいて、乳頭3aを迂回して、胆汁を胃6に流入させ、胃6を介して十二指腸3に供給するために、胃6と肝内胆管8との間に医療具1を留置してバイパスする、超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(EUS-BD)が知られている。この実施形態の搬送装置10は、このような超音波内視鏡下胆道ドレナージ術に好適に用いることができる。なお、十二指腸3と胆管4との間に医療具1を留置してバイパスする場合にも、好適に用いることができる。
【0041】
まず、先端キャップ50の突出部52の基端側から、アウターシース20の先端27を離反させて、収容部40を開放した状態で、医療具1を縮径させて収容部40に配置し、その後、アウターシース20の先端27を、先端キャップ50の突出部52の基端側に近接させる。この状態で、挿入ガイド部材70のシース側連結部73を、アウターシース20の凹部25の外周に配置して連結させると共に、同挿入ガイド部材70のキャップ側連結部75を、先端キャップ50の突出部52のガイド配置部57の外周に配置して連結させることで、挿入ガイド部材70をアウターシース先端側と先端キャップの突出部基端側との境界部45を覆った状態で取付ける。
【0042】
そして、口から食道を通して、図示しない超音波内視鏡を挿入して、その先端部を胃6の入口付近に配置した後、穿刺針を胃6や肝内胆管8に穿刺して、胃6と肝内胆管8とに孔(穿刺孔6a,8a)を空ける。その後、ガイドワイヤ2を、胃6と肝内胆管8との間に挿通させた後、ダイレータ等の拡張具によって、胃6の壁部や肝内胆管8の壁部に形成された穿刺孔6a,8aを拡径させる。次いで、このガイドワイヤ2の基端側(手元側)を、先端キャップ50の挿通孔51の先端開口から、インナーシース30の挿通孔35a内に挿入する。その後、ガイドワイヤ2でガイドしながら、図6(a)や図6(b)に示すように、アウターシース20及びインナーシース30を、先端キャップ50を先頭にして胃6の穿刺孔6aに挿入していく。
【0043】
この際、この搬送装置10においては、図2図3に示すように、先端キャップ50の突出部52の基端側とアウターシース20の先端側との間の、アウターシース20の軸方向に対して離れる箇所である、境界部45には、それらの境界部45を少なくとも部分的に覆う挿入ガイド部材70が設けられている。そのため、先端キャップ50の突出部52の基端側とアウターシース20の先端側との境界部45に生じる隙間や段差等が、挿入ガイド部材70(ここでは筒状部71)によって覆われた状態で体内へ挿入されることとなる。その結果、アウターシース20やインナーシース30を、その先端側から体内へ挿入する際に、胃6の壁部に形成された穿刺孔6aの周縁や、肝内胆管8の壁部に形成された穿刺孔8aの周縁等、体内の臓器や管状器官の壁部に、先端キャップ50の突出部52の基端側とアウターシース20の先端側との境界部45に生じる隙間や段差等を引っ掛かりにくくすることができ、体内にアウターシース20やインナーシース30を挿入しやすくすることができる。
【0044】
その後、先端キャップ50及びアウターシース20の先端側を、肝内胆管8内に位置させた状態として、プッシャ等を介して医療具1の移動を規制しつつ、インナーシース30を固定してアウターシース20を手元側に引いたり、或いは、アウターシース20を固定してインナーシース30を手元側とは反対側に押したりすることによって、図4図5に示すように、挿入ガイド部材70の筒状部71の中間部77の、孔79と孔79との間の部分が、易破断部81を介して破断されるので、収容部40の先端開口側から医療具1を徐々に拡径させて(図4参照)、収容部40から解放することができ、図7に示すように、胃6と肝内胆管8との間に、医療具1をバイパスした状態で留置することができる。
【0045】
そして、この実施形態では、図2に示すように、挿入ガイド部材70は、先端キャップ50の突出部52の基端側とアウターシース20の先端側とに連結されて、アウターシース20とインナーシース30との相対移動を規制するように構成されているので、収容部40から医療具1を開放するまでは、アウターシース20の先端側から先端キャップ50の突出部52が離れるのを抑制し、先端キャップ50の突出部52の基端側とアウターシース20の先端側との境界部45における間隙を広がりにくくして、段差を生じにくくすることができ、アウターシース20やインナーシース30を体内の所望箇所にスムーズに挿入することができる。
【0046】
また、収容部40から医療具1を開放する際には、インナーシース30を固定してアウターシース20を手元側に引いたり、或いは、アウターシース20を固定してインナーシース30を手元側とは反対側に押したりすることによって、易破断部81を介して、挿入ガイド部材70を破断して、収容部40から医療具1を開放することができるので、体内の所望箇所に医療具1をしっかりと留置することができる。
【0047】
更に、挿入ガイド部材70は、先端キャップ50の突出部52の基端側とアウターシース20の先端側とに連結されており(ここでは筒状部71を構成するキャップ側連結部75が先端キャップ50の突出部52の基端側に連結し、シース側連結部73アウターシース20の先端側に連結している)、その両端部が固定されているので、片側のみが連結された構造と比べて、挿入ガイド部材70をよじれにくくして、境界部45をしっかりと覆うことができる。
【0048】
また、この実施形態においては、図2図3に示すように、挿入ガイド部材70は、境界部45の外周に配置される筒状部71を有しており、この筒状部71が先端キャップ50の基端側とアウターシース20の先端側とを連結して、アウターシース20とインナーシース30との相対移動を規制するように構成されている。そのため、境界部45の全周を筒状部71によって確実に覆うことができると共に、挿入ガイド部材70が筒状部71を有するため、その剛性を確保しやすくすることができ、より一層よじれにくくして、境界部45を更に効果的に覆うことができる。
【0049】
また、筒状部71には、境界部45に沿って周方向に複数の孔79が所定間隔で設けられており、周方向に隣接する孔79と孔79との間の部分に、易破断部81が形成されている。そのため、アウターシース20内周やインナーシース30内周との間に、生理食塩水等の液体を流入して、空気抜きをするいわゆるフラッシュ作業に用いた液体を、複数の孔79からスムーズに流出することができ、フラッシュ作業を行いやすくすることができる。更に孔79と孔79との間の部分に、易破断部81が形成されているので、孔79がいわゆるノッチ(切欠き)として作用するため、易破断部81を破断しやすくすることができる。
【0050】
なお、この実施形態の搬送装置10では、医療具1をステントとして、胃6と肝内胆管8との間をバイパスするために用いたが、例えば、十二指腸3の下部の乳頭3aから、胆管4内にステントを留置する場合や、胆管4以外の膵管5、尿管、気管等の管状器官や、その他の人体の体腔内等、体内に医療具を搬送する際に用いることができ、適用箇所は特に限定されない。ただし、体内の狭い孔や屈曲している部分(屈曲した管状器官等)などに、アウターシースやインナーシースを挿入していく場合等の、先端キャップの突出部基端側とアウターシース先端側との境界部に生じる間隙や段差等が引っ掛かりやすい箇所に、医療具を搬送する場合に好適である。
【0051】
図8には、本発明に係る医療具の搬送装置の、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0052】
この実施形態の医療具の搬送装置10A(以下、単に「搬送装置10A」ともいう)は、挿入ガイド部材70Aの形状や構造が、前記実施形態と異なっている。
【0053】
すなわち、図8に示すように、この実施形態の挿入ガイド部材70Aは、先端キャップ50の突出部52のガイド配置部57に配置固定される、略円筒状をなしたキャップ側連結部75を有している。更に、キャップ側連結部75の基端側からは、アウターシース20の先端部21の外周に被せられる、板状をなした延出部83が延出している。この延出部83は、先端キャップ50の突出部52の基端側とアウターシース20の先端側との境界部45の外周に沿って、周方向に均等な間隔で複数配置されており、かつ、各延出部83は互いに平行となるように延びている。なお、各延出部83は、アウターシース20の先端部21の外周に連結されておらず、先端部21の外周に単に配置されている。
【0054】
そして、この実施形態においては、上述したように、挿入ガイド部材70Aは、先端キャップ50の突出部52の基端側から延びて、アウターシース20の先端部21の外周に被せられる板状をなした延出部83を有しているので、延出部83をよじれにくして、境界部45を周方向に均等に覆うことができると共に、アウターシース20とインナーシース30とを相対移動させやすくすることができる。
【0055】
更にこの実施形態においては、上記延出部83は複数設けられており、各延出部83は互いに平行に延びているので、アウターシース20やインナーシース30の、体内への挿入時において、アウターシース20やインナーシース30の先端部側が屈曲しても、延出部83どうしの隙間を開きにくくして、先端キャップ50の突出部52の基端側とアウターシース20の先端側との境界部45に形成される隙間や段差等をより覆いやすくすることができる。
【0056】
図9には、本発明に係る医療具の搬送装置の、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0057】
この実施形態の医療具の搬送装置10B(以下、単に「搬送装置10B」ともいう)は、挿入ガイド部材70Bの形状や構造が、前記実施形態と異なっている。
【0058】
すなわち、図9に示すように、この実施形態の挿入ガイド部材70Bは、先端キャップ50のテーパ状をなした段部59(アウターシース20の先端27に対向する部分)の外周縁部から、挿入部53に対して所定隙間を空けて、先端キャップ50の基端側に向けて、略円筒状に延出した形状をなしている。また、この挿入ガイド部材70Bは、先端キャップ50と一体的に設けられており、前記挿入部53と併せて二重筒状をなしている。
【0059】
そして、図9(a)に示すように、アウターシース20とインナーシース30とを相対移動させ、アウターシース20の先端27を、挿入部53及び挿入ガイド部材70Bの間に挿入して、先端キャップ50の段部59に当接させることで、収容部40の先端開口が閉じて、収容部40内に医療具1が収容配置される。すなわち、この実施形態では、先端キャップ50のテーパ状の段部59のうち、アウターシース20の先端側内周に挿入される部分が、挿入部53の一部をなし、それよりも先端側の部分が、突出部52の一部をなすこととなる。この状態では、略円筒状をなした挿入ガイド部材70Bが、アウターシース20の先端側と先端キャップ50の突出部52の基端側との境界部45の全周を覆うようになっている。
【0060】
一方、図9(b)に示すように、アウターシース20とインナーシース30とを相対移動させて、アウターシース20の先端部21を、挿入部53及び挿入ガイド部材70Bの間から引き抜くことで、収容部40から医療具1が解放されるようになっている。
【0061】
図10には、本発明に係る医療具の搬送装置の、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0062】
この実施形態の医療具の搬送装置10C(以下、単に「搬送装置10C」ともいう)は、挿入ガイド部材70Cの形状や構造が、前記実施形態と異なっている。
【0063】
すなわち、図10に示すように、この実施形態における挿入ガイド部材70Cは、アウターシース20の先端27から略筒状をなすように延出すると共に、延出方向先端側に向けて次第に窄まるような形状をなしており、アウターシース20と一体的に設けられている。
【0064】
一方、先端キャップ50のテーパ状をなした段部59(アウターシース20の先端27に対向する部分)には、前記挿入ガイド部材70Cが挿入可能とされた、環状をなした挿入溝65が形成されている。
【0065】
そして、図10に示すように、アウターシース20とインナーシース30とを相対移動させ、アウターシース先端から延出した挿入ガイド部材70Cを、先端キャップ50の挿入溝65に挿入することで、収容部40の先端開口が閉じて、収容部40内に医療具1が収容配置される。この状態では、挿入ガイド部材70Cが、アウターシース先端側と先端キャップ基端側との境界部45の全周を覆うようになっている。なお、この実施形態では、先端キャップ50のテーパ状の段部59は、アウターシース20の先端側内周に挿入される挿入部53の一部をなし、頂部54よりも先端側の部分が、突出部52をなしている。また、この状態では、略円筒状をなした挿入ガイド部材70Bが、アウターシース20の先端側と先端キャップ50の突出部52の基端側との境界部45の全周を覆うようになっている。
【0066】
図11には、本発明に係る医療具の搬送装置の、第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0067】
この実施形態の医療具の搬送装置10D(以下、単に「搬送装置10D」ともいう)は、挿入ガイド部材70Dの形状や構造が、前記実施形態と異なっている。
【0068】
すなわち、図11に示すように、この実施形態における挿入ガイド部材70Dは、アウターシース20の先端側に連結された第1嵌合部85と、先端キャップ50の突出部52の基端側に連結された第2嵌合部87との、二部品から構成されている。第1嵌合部85は、その基端側がアウターシース20の先端部21の凹部25の外周に配置固定されており、この固定部分から、先端キャップ基端側に向けて次第に幅狭となると共に、アウターシース20の内径側に向けて斜め内方に嵌合片85aが延出している。また、この嵌合片85aは、アウターシース20の先端部21の周方向に所定間隔をあけて複数配置されている。
【0069】
一方、第2嵌合部87は、その基端側が先端キャップ50の突出部52のガイド配置部57の外周に配置固定されており、この固定部分から、アウターシース先端側に向けて次第に幅狭となると共に、インナーシース30の内径側に向けて斜め内方に嵌合片87aが延出している。また、この嵌合片87aは、先端キャップ50の突出部52の周方向に所定間隔をあけて複数配置されている。なお、先端キャップ50の突出部52の、アウターシース20の先端27との対向部分53bは、基部外周から先端キャップ50の先端側に向けて次第に引き込まれる逆テーパ面状をなしている。
【0070】
そして、図11に示すように、アウターシース20とインナーシース30とを相対移動させ、第1嵌合部85の嵌合片85a,85aの間に、第2嵌合部87の嵌合片87aを嵌合させると共に、第2嵌合部87の嵌合片87a,87aの間に、第1嵌合部85の嵌合片85aを嵌合させる。すなわち、一方の嵌合部の嵌合片どうしの間に、他方の嵌合部の嵌合片を嵌合させることによって、両嵌合部85,87が互いに結合して、挿入ガイド部材70Dを介して、アウターシース20の先端側と先端キャップ50の突出部52の基端側とが連結される。その結果、収容部40の先端開口が閉じて、収容部40内に医療具1が収容配置される。この状態では、挿入ガイド部材70Dが、アウターシース20の先端側と先端キャップ50の突出部52の基端側との境界部45(アウターシース20の先端27と、先端キャップ50の突出部52の対向部分53b)の全周を覆うようになっている。
【0071】
一方、アウターシース20とインナーシース30とを相対移動させて、一方の嵌合部の嵌合片どうしの間から、他方の嵌合部の嵌合片を引き抜くことによって、両嵌合部85,87の結合状態が解除されて、収容部40から医療具1が解放される。
【0072】
そして、この実施形態では、前記第1実施形態における挿入ガイド部材70のように、筒状部71を破断させる必要がなく、上記のように、両嵌合部85,87の結合状態を解除することで、収容部40から医療具1を開放可能となっているため、医療具1の解放時における、アウターシース20やインナーシース30を相対移動させる際の力を軽減できる。
【0073】
図12には、本発明に係る医療具の搬送装置の、第6実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0074】
この実施形態の医療具の搬送装置10E(以下、単に「搬送装置10E」ともいう)は、挿入ガイド部材70Eの形状や構造が、前記実施形態と異なっている。
【0075】
すなわち、この実施形態の挿入ガイド部材70Eは、ハイドロゲル等の、水や血液等の液体で膨潤する膨潤性材料から形成されている。図12(a)に示すように、この挿入ガイド部材70Eは、先端キャップ50のテーパ状をなした段部59に、環状をなすように付着されている。なお、この実施形態では、先端キャップ50のテーパ状の段部59は、アウターシース20の先端側内周に挿入される挿入部53の一部をなし、頂部54よりも先端側の部分が、突出部52をなしている。
【0076】
そして、水や血液等の液体が挿入ガイド部材70Eに浸漬すると、同挿入ガイド部材70Eが膨潤して、アウターシース20の先端27と先端キャップ50の挿入部53の一部をなす段部59との間の境界部45を埋めて、その全周を覆うようになっている。
【0077】
また、この実施形態では、アウターシース20の先端側や、先端キャップ50の突出部52の基端側に、挿入ガイド部材70Eを固定する必要がなく、先端キャップ50のテーパ状の段部59に膨潤性材料からなる挿入ガイド部材70Eを付着するだけでよいので、境界部45を覆う構造を簡素化することができ、また、アウターシース先端側での柔軟性を高めることができ、体内への挿入性を高めることもできる。
【0078】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1 医療具
2 ガイドワイヤ
10,10A,10B,10C,10D,10E 医療具の搬送装置(搬送装置)
20 アウターシース
21 先端部
30 インナーシース
31 先端部
35 ハブ
40 収容部
45 境界部
50 先端キャップ
52 突出部
70,70A,70B,70C,70D,70E 挿入ガイド部材
71 筒状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12