IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社PFUの特許一覧

<>
  • 特許-コンピュータシステム及び制御方法 図1
  • 特許-コンピュータシステム及び制御方法 図2
  • 特許-コンピュータシステム及び制御方法 図3
  • 特許-コンピュータシステム及び制御方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】コンピュータシステム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/26 20060101AFI20221221BHJP
   G06F 1/28 20060101ALI20221221BHJP
   G06F 1/3228 20190101ALI20221221BHJP
   G06F 1/3246 20190101ALI20221221BHJP
【FI】
G06F1/26 303
G06F1/28
G06F1/3228
G06F1/3246
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018228972
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020091703
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 優貴
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-073030(JP,A)
【文献】特開2006-133822(JP,A)
【文献】特開2009-183044(JP,A)
【文献】特表2011-508341(JP,A)
【文献】特開2014-112279(JP,A)
【文献】特開2002-258687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26- 1/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置と、
前記コンピュータ装置に対して、通常稼働モード又は省電力モードで電力を供給する電源装置と、
前記電源装置による電力供給をバックアップするバックアップ電源装置と
を有し、
前記コンピュータ装置は、
前記電源装置に対して、前記省電力モードへの移行を禁止する状態管理部と、
前記コンピュータ装置がシャットダウンするときに、前記バックアップ電源装置に対して、電力供給を禁止する電源管理部と
を含み、
前記電源装置は、コンデンサを含み、外部からの電源供給が停止した場合には、前記コンデンサに蓄えられた電力を、前記通常稼働モードで前記コンピュータ装置に供給する
コンピュータシステム。
【請求項2】
コンピュータ装置と、
前記コンピュータ装置に対して、通常稼働モード又は省電力モードで電力を供給する電源装置と、
前記電源装置による電力供給をバックアップするバックアップ電源装置と
を有し、
前記コンピュータ装置は、
前記電源装置に対して、前記省電力モードへの移行を禁止する状態管理部と、
前記コンピュータ装置がシャットダウンするときに、前記バックアップ電源装置に対して、電力供給を禁止する電源管理部と
を含み、
前記コンピュータ装置は、Advanced Configuration and Power Interface規格に従って、動作し、
前記状態管理部は、前記コンピュータ装置がシャットダウンした後も、State S0のままに維持する
コンピュータシステム。
【請求項3】
前記電源管理部は、前記コンピュータ装置のシャットダウンシーケンス中に、バックアップ動作を禁止するバックアップ抑止信号を前記バックアップ電源装置に通知する
請求項1に記載のコンピュータシステム。
【請求項4】
コンピュータ装置と、
前記コンピュータ装置に対して、通常稼働モード又は省電力モードで電力を供給する電源装置と、
前記電源装置による電力供給をバックアップするバックアップ電源装置と
を有し、
前記コンピュータ装置は、
前記電源装置に対して、前記省電力モードへの移行を禁止する状態管理部と、
前記コンピュータ装置がシャットダウンするときに、前記バックアップ電源装置に対して、電力供給を禁止する電源管理部と
を含み、
前記電源管理部は、前記コンピュータ装置のシャットダウンシーケンス中に、バックアップ動作を禁止するバックアップ抑止信号を前記バックアップ電源装置に通知し、
前記コンピュータ装置は、オペレーティングシステムと、BIOSと、メモリと、チップセットと、監視デバイスとを含み、
前記チップセットは、前記オペレーティングシステムのシャットダウンシーケンスが開始された場合に、前記BIOSにハードウェア割込みを指示し、
前記BIOSは、ハードウェア割込みが指示されると、バックアップ抑止信号を通知するよう前記チップセットに指示し、
前記チップセットは、前記BIOSからの指示に応じて、バックアップ抑止信号を生成し、バックアップ電源装置に通知する
コンピュータシステム。
【請求項5】
前記電源装置は、コンデンサを含み、外部からの電源供給が停止した場合には、コンデンサに蓄えられた電力を前記コンピュータ装置に供給する
請求項4に記載のコンピュータシステム。
【請求項6】
コンピュータ装置と、前記コンピュータ装置に対して、通常稼働モード又は省電力モードで電力を供給する電源装置と、前記電源装置による電力供給をバックアップするバックアップ電源装置とを含むコンピュータシステムにおいて、
前記コンピュータ装置が、前記電源装置に対して、前記省電力モードへの移行を禁止するステップと、
前記コンピュータ装置が、シャットダウンするときに、前記バックアップ電源装置に対して、電力供給を禁止するステップと
を有し、
前記電源装置は、コンデンサを含み、外部からの電源供給が停止した場合には、コンデンサに蓄えられた電力を、前記通常稼働モードで前記コンピュータ装置に供給する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、キャパシター53を介して電源装置2の供給を受けて動作する制御回路10と、電源装置2がオフに切り替えられたことを検出する低電圧検出部55と、低電圧検出部55により電源装置2がオフに切り替えられたことが検出された場合に、制御回路10の消費電力を増大させる制御部としてのCPU11と、を備えるプリンターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-112279
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源の再投入が可能になるまでの時間を短縮したコンピュータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコンピュータシステムは、コンピュータ装置と、前記コンピュータ装置に対して、通常稼働モード又は省電力モードで電力を供給する電源装置と、前記電源装置による電力供給をバックアップするバックアップ電源装置とを有し、前記コンピュータ装置は、前記電源装置に対して、前記省電力モードへの移行を禁止する状態管理部と、前記コンピュータ装置がシャットダウンするときに、前記バックアップ電源装置に対して、電力供給を禁止する電源管理部とを含む。
【0006】
好適には、前記コンピュータ装置は、Advanced Configuration and Power Interface規格に従って、動作し、前記状態管理部は、前記コンピュータ装置がシャットダウンした後も、State S0のままに維持する。
【0007】
好適には、前記電源管理部は、前記コンピュータ装置のシャットダウンシーケンス中に、バックアップ動作を禁止するバックアップ抑止信号を前記バックアップ電源装置に通知する。
【0008】
好適には、前記コンピュータ装置は、オペレーティングシステムと、BIOSと、メモリと、チップセットと、監視デバイスとを含み、前記チップセットは、前記オペレーティングシステムのシャットダウンシーケンスが開始された場合に、前記BIOSにハードウェア割込みを指示し、前記BIOSは、ハードウェア割込みが指示されると、バックアップ抑止信号を通知するよう前記チップセットに指示し、前記チップセットは、前記BIOSからの指示に応じて、バックアップ抑止信号を生成し、バックアップ電源装置に通知する。
【0009】
好適には、前記電源装置は、コンデンサを含み、外部からの電源供給が停止した場合には、コンデンサに蓄えられた電力を前記コンピュータ装置に供給する。
【0010】
また、本発明に係る制御方法は、コンピュータ装置と、前記コンピュータ装置に対して、通常稼働モード又は省電力モードで電力を供給する電源装置と、前記電源装置による電力供給をバックアップするバックアップ電源装置とを含むコンピュータシステムにおいて、前記コンピュータ装置が、前記電源装置に対して、前記省電力モードへの移行を禁止するステップと、前記コンピュータ装置が、シャットダウンするときに、前記バックアップ電源装置に対して、電力供給を禁止するステップとを有する。
【発明の効果】
【0011】
電源の再投入が可能になるまでの時間を短縮したコンピュータシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】組込みコンピュータ2の構成を例示する図である。
図2】本実施形態における組込みコンピュータ2のシャットダウン処理(S10)を説明するフローチャートである。
図3図2のシャットダウン処理(S10)において、組込みコンピュータ2でやり取りされる信号及び状態の変化を示す図である。
図4】比較例1における組込みコンピュータの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、組込みコンピュータ2の構成を例示する図である。組込みコンピュータ2は、本発明に係るコンピュータシステムの一例である。
図1に例示するように、組込みコンピュータ2は、マザーボード20と、ATX電源30と、UPSバッテリ40とを有し、ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)規格に従って動作する。マザーボード20は、本発明に係るコンピュータ装置の一例である。
マザーボード20は、ハードウェア200と、BIOS210と、OS220とを有し、ハードウェア200は、CPU202と、PCH204と、監視デバイス206と、メモリ208とを含む。
【0014】
CPU202は、例えば、中央演算装置である。
PCH204は、例えば、チップセットである。
監視デバイス206は、例えば、マザーボード20の稼働状態、又は、電力供給状態を監視する装置である。
メモリ208は、例えば、揮発性メモリであり、主記憶装置として機能する。
【0015】
BIOS210は、Basic Input Output Systemであり、OS220の起動処理、及び、入出力処理を制御するプログラムである。
OS220は、オペレーティングシステムであり、組込みコンピュータ2を動作させるための基本ソフトウェアである。本例のOS220は、ACPI規格に従って、電源管理を行う。
【0016】
ATX電源30は、本発明に係る電源装置の一例である。例えば、ATX電源30は、コンデンサを含み、ACケーブル300及びコンセント302を介して、外部から供給されるAC電源(一次側電源)をDC電源(二次側電源)に変換して、マザーボード20にDC電源を供給する。本例のATX電源30は、ATX規格に準拠しており、マザーボード20が通常稼働モードである場合に、常駐電源及び非常駐電源を供給し、マザーボード20が省電力モードである場合に、常駐電源のみを供給する。
【0017】
UPSバッテリ40は、本発明に係るバックアップ電源装置の一例である。例えば、UPSバッテリ40は、監視デバイス206の監視結果に応じて、マザーボード20にバックアップ電源を供給する。より具体的には、UPSバッテリ40は、マザーボード20の稼働中又は待機中において、ATX電源30からの電力供給が無くなった場合に、マザーボード20にバックアップ電源を供給し、マザーボード20がシャットダウンした後に、ATX電源30からの電力供給が停止しても、バックアップ電源を供給しないよう構成されている。
【0018】
次に、本発明がなされた背景を説明する。
図4は、比較例1における組込みコンピュータの動作を説明する図である。
組込みコンピュータでは、AC電源の投入/切断により起動/シャットダウンを行う運用を取ることが多い。この運用の実現方法として、AC電源が切断された状態(State G3)から、AC電源を投入することで、組込みコンピュータの電源の自動ON(State S0に移行)を可能とするチップセットを採用している。
組込みコンピュータで主に採用しているATX電源には、内部に大容量コンデンサが搭載しており、AC電源切断後もコンデンサに充電された電荷が放電し切るまでの数十秒間は、常駐電源が二次側に供給され続ける。チップセットは、電源のStateを監視し、システム電源自動ONの制御をするため、上述のコンデンサによる電源保持状態ではAC電源が切断されたこと(State G3に移行したこと)を認識できない。
そのため、AC電源切断からの数十秒間は、AC電源を再投入してもシステム電源自動ONできない。すなわち、 電源の再投入不可時間として時間を空ける運用が必要である。
この再投入不可時間は、装置異常時からの早期復旧を妨げるものであり、運用面で課題となっている。
【0019】
より具体的には、図4に例示するように、通常、OSをシャットダウンすると非常駐電源及び常駐電源の両方が供給される状態(State S0)から、常駐電源のみ供給される状態(State S5)に移行するため、二次側での消費電力が小さくなり、放電時間が長くなる。
そこで、OSシャットダウン後も、State S0のままであるよう設定変更する。この状態でAC電源を切断することで、ATX電源内部のコンデンサに充電された電荷により、常駐電源だけでなく非常駐電源にも供給し続けようとするため、放電時間を短縮することができる。
【0020】
また、UPSバッテリが搭載されている場合も課題が発生する。一般的なUPSバッテリは、停電と、正常なシステム電源断 (OSシャットダウンによるState S5への移行)とを区別するために、OSシャットダウン時にバックアップ抑止信号を制御する。バックアップ抑止信号は、OSシャットダウン(State S5移行)を起点に制御され、正常なOSシャットダウン時には、バッテリバックアップ状態に移行しないよう制御する。State S5が無効に設定された場合(すなわち、OSシャットダウン後も、State S0のままであるよう設定変更された場合)では、バックアップ抑止信号を出すことができず、正常なOSシャットダウンの場合においても、UPSバッテリは、停電発生と誤認識し、バッテリバックアップ状態に移行してしまう。つまり、State S5が無効に設定された場合は、UPSバッテリが使用できないという課題がある。
【0021】
また、常駐電源-GND間に、放電用部品を接続した放電回路を追加し、常駐電源ラインでの消費電流を多くすることで、AC電源切断時のATX電源内部のコンデンサに充電された電荷の放電時間を短縮させることができる。この方式は、アナログの放電部品追加による放電方式のため、バッテリバックアップ制御へは影響を及ぼさない。
しかし、電流が放電用部品に常時流れてしまうため、消費電力が増加すること、放電用部品が異常高温になるため、安全面で問題があること、実装面積の大きな放電用部品を複数追加するためのスペースが必要になること等から、小型の組込みコンピュータには適さない。
【0022】
そこで、本実施形態の組込みコンピュータ2では、マザーボード20が、ATX電源30に対して、省電力モードへの移行を禁止して、OS220のシャットダウン後も通常稼働モードを維持し、OS220がシャットダウンするときに、マザーボード20が、UPSバッテリ40に対して、バックアップ抑止信号を出力して、電力供給を禁止する。
これにより、ATX電源30の内部に充電された電荷の放電が早くなり、組込みコンピュータ2に対する電源再投入が早期に可能になる。
【0023】
図2は、本実施形態における組込みコンピュータ2のシャットダウン処理(S10)を説明するフローチャートである。
図3は、図2のシャットダウン処理(S10)において、組込みコンピュータ2でやり取りされる信号及び状態の変化を示す図である。
なお、組込みコンピュータ2の起動処理時に、BIOS210(状態管理部)は、ACPIを経由して、State S5を無効とする設定情報をメモリ208に格納しており、これにより、OS220に対して、State S5を無効する旨を事前に通知している。
ステップ100(S100)において、組込みコンピュータ2は、ユーザによるシャットダウン操作がなされるまで待機し(S100:No)、ユーザがシャットダウン操作を行うと(S100:Yes)、S105の処理に移行する。
【0024】
ステップ105(S105)において、組込みコンピュータ2のOS220は、シャットダウン処理を開始する。
ステップ110(S110)において、OS220は、シャットダウン実行を契機として、PCH204の制御レジスタにアクセスする。
【0025】
ステップ115(S115)において、PCH204は、制御されたレジスタの状態を受けて、ハードウェア割込み(SMI)を生成し、BIOS210に通知する。
ステップ120(S120)において、BIOS210は、ハードウェア割込みを受け取ったのを契機として、PCH204の制御レジスタにアクセスする。
ステップ125(S125)において、PCH204(電源管理部)は、制御されたレジスタの状態を受けて、バックアップ抑止信号を生成し、生成されたバックアップ抑止信号をUPSバッテリ40に通知する。
【0026】
ステップ130(S130)において、UPSバッテリ40は、PCH204から通知されたバックアップ抑止信号を受けて、バッテリバックアップモードへ移行しないように動作する。
ステップ135(S135)において、マザーボード20は、事前の設定に応じて、State S5への移行を無効とし、State S0で待機する。
【0027】
ステップ140(S140)において、マザーボード20は、OS220のシャットダウンが完了すると、モニター(不図示)に、電源遮断が可能である旨を表示させる。
ステップ145(S145)において、ACケーブル300が抜去されると、ATX電源30の一次側電源の供給が停止する。
ステップ150(S150)において、ATX電源30は、State S0の状態にあるマザーボード20に対して、常駐電源及び非常駐電源を供給して、内部のコンデンサに蓄積された電荷を放電する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の組込みコンピュータ2は、UPSバッテリ40が搭載された状態であっても、省電力モードへの移行を禁止した状態でOS220をシャットダウンし、ATX電源30の内部に充電された電荷を早期に放電することができる。したがって、電源の再投入不可時間が短縮される。
さらに、本組込みコンピュータ2は、State S5無効状態でAC電源を切断しても、バッテリバックアップモードへ誤って移行することなく、電源OFF状態(State G3)へ移行することができる。
【符号の説明】
【0029】
2…組込みコンピュータ
20…マザーボード
200…ハードウェア
210…BIOS
220…OS
30…ATX電源
40…UPSバッテリ
図1
図2
図3
図4