IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマシンフィルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図1
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図2
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図3
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図4
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図5
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図6
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図7
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図8
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図9
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図10
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図11
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図12
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図13
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図14
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図15
  • 特許-フィルタ寿命予測装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】フィルタ寿命予測装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/00 20060101AFI20221221BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20221221BHJP
   G01L 15/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B01D29/00 D
G01L15/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018231947
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020093203
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 順基
【審査官】本間 友孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-518187(JP,A)
【文献】特開2016-074057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054811(US,A1)
【文献】特開平04-104421(JP,A)
【文献】実開平04-124440(JP,U)
【文献】特開2018-066665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00ー35/04、35/08-37/08
G01L 7/00ー23/32、27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を濾過する濾材を有する濾過装置に設けられた差圧検出部であって、前記濾過装置における高圧側と低圧側との圧力差である差圧を連続して検出する差圧検出部と、
前記差圧と前記濾材に付着した塵埃の量である付着塵埃量との関係を示す差圧特性であって、前記濾材の寿命に関する情報を含む差圧特性が記憶された記憶部と、
前記濾過装置が前記液体を濾過している間の時間である第1時間において前記差圧検出部により検出された第1差圧と、前記差圧特性とに基づいて、前記濾材が前記第1時間からどの程度の時間使用可能であるかを示す残ライフを連続して検出した前記差圧に基づいて連続的に求め、当該求められた結果に基づいて前記残ライフを補正する寿命予測部と、
を備え
前記寿命予測部は、
前記残ライフとして、前記濾材が前記第1時間からあとどの程度の時間使用可能であるかを示す第1残ライフと、前記第1時間より前の第2時間に前記差圧検出部により検出された第2差圧と前記差圧特性とに基づいて、前記濾材が前記第2時間からあとどの程度の時間使用可能であるかを示す第2残ライフを求め、
前記差圧特性における前記第2残ライフと前記第1残ライフとの間の経過時間と、前記第2時間と前記第1時間との間の経過時間とに基づいて前記差圧特性を補正し、当該補正した補正後差圧特性に基づいて前記第1残ライフを補正する
ことを特徴とするフィルタ寿命予測装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ寿命予測装置であって、
前記記憶部は、前記液体の流量及び粘度が第1の条件であるときの第1の差圧特性と、前記液体の流量及び粘度が第2の条件であるときの第2の差圧特性を前記差圧特性として記憶し、
前記濾過装置に流入する前記液体の流量及び粘度を取得する取得部を備え、
前記寿命予測部は、前記取得部が取得した流量及び粘度が前記第1の条件又は前記第2の条件のどちらに近いか判定し、前記第1の条件が近いと判定された場合には前記第1の差圧特性を用いて前記残ライフを求め、前記第2の条件が近いと判定された場合には前記第2の差圧特性を用いて前記残ライフを求める
ことを特徴とするフィルタ寿命予測装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフィルタ寿命予測装置であって、
前記差圧特性は、前記液体に塵埃を一定の量ずつ連続的に投入しながら当該液体を前記濾過装置で濾過して前記差圧を測定することで求められた前記差圧と時間との関係を示し、
前記寿命に関する情報は、塵埃が投入される前の前記差圧である初期差圧に所定圧力を加えた終端差圧であるときの前記差圧特性における経過時間であるライフアップ時間であり、
前記寿命予測部は、前記第1差圧のときの前記差圧特性における経過時間と、ライフアップ時間との比に基づいて前記残ライフを求める
ことを特徴とするフィルタ寿命予測装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のフィルタ寿命予測装置であって、
前記差圧検出部は、前記圧力差に応じて変位するスプールと、前記スプールに設けられた磁石と、前記磁石の変位量に基づいて磁束密度の変化を検出し、当該磁束密度の変化に応じた第1電圧を出力する磁束密度検出素子と、前記第1電圧を前記圧力差に対して比例する第2電圧に補正する補正部と、を有し、
前記寿命予測部は、前記第2電圧に基づいて前記残ライフを求める
ことを特徴とするフィルタ寿命予測装置。
【請求項5】
請求項に記載のフィルタ寿命予測装置であって、
前記差圧検出部は、前記磁束密度検出素子の温度を取得する温度取得部を有し、
前記補正部は、前記温度取得部が取得した温度に基づいて前記第1電圧を補正する
ことを特徴とするフィルタ寿命予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ寿命予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フィルタエレメントで隔成された一次側圧と二次側圧との差圧を検知してフィルタエレメントの目詰まりを検出するフィルタ装置の目詰まり警報スイッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平1-61909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の詰まり警報スイッチでは、ある時点での差圧、すなわちフィルタエレメントの目詰まり状態を知ることはできる。しかしながら、フィルタエレメントがどの程度の時間使用できるか(残り時間)は、フィルタエレメントの種類や、フィルタエレメントの使用環境によって変化するため、特許文献1に記載の詰まり警報スイッチでは、残り時間を求めることはできない。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、濾材をどの程度の時間使用することができるか(残り時間)を予測することができるフィルタ寿命予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルタ寿命予測装置は、例えば、液体を濾過する濾材を有する濾過装置に設けられた差圧検出部であって、前記濾過装置における高圧側と低圧側との圧力差である差圧を検出する差圧検出部と、前記差圧と前記濾材に付着した塵埃の量である付着塵埃量との関係を示す差圧特性であって、前記濾材の寿命に関する情報を含む差圧特性が記憶された記憶部と、前記濾過装置が前記液体を濾過している間の時間である第1時間において前記差圧検出部により検出された第1差圧と、前記差圧特性とに基づいて、前記濾材が前記第1時間からどの程度使用可能であるかを示す残ライフを求める寿命予測部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフィルタ寿命予測装置によれば、濾過装置が前記液体を濾過している間の時間である第1時間に、濾過装置における高圧側と低圧側との圧力差である第1差圧を検出し、第1差圧と差圧特性とに基づいて、濾材が第1時間からあとどの程度の時間使用可能であるかを示す残ライフを求める。これにより、濾材をどの程度の時間使用することができるか(残りの時間)を予測することができる。
【0008】
ここで、前記記憶部は、前記液体の流量及び粘度が第1の条件であるときの第1の差圧特性と、前記液体の流量及び粘度が第2の条件であるときの第2の差圧特性を前記差圧特性として記憶し、前記濾過装置に流入する前記液体の流量及び粘度を取得する取得部を備え、前記寿命予測部は、前記取得部が取得した流量及び粘度が前記第1の条件又は前記第2の条件のどちらに近いか判定し、前記第1の条件が近いと判定された場合には前記第1の差圧特性を用いて前記残ライフを求め、前記第2の条件が近いと判定された場合には前記第2の差圧特性を用いて前記残ライフを求めてもよい。これにより、環境の変化等により作動油の流量・粘度が変化しても正確に残ライフを算出することができる。
【0009】
ここで、前記差圧特性は、前記液体に塵埃を一定の量ずつ連続的に投入しながら当該液体を前記濾過装置で濾過して前記差圧を測定することで求められた前記差圧と時間との関係を示し、前記寿命に関する情報は、塵埃が投入される前の前記差圧である初期差圧に所定圧力を加えた終端差圧であるときの前記差圧特性における経過時間であるライフアップ時間であり、前記寿命予測部は、前記第1差圧のときの前記差圧特性における経過時間と、ライフアップ時間との比に基づいて前記残ライフを求めてもよい。このように、実際に測定して得られた差圧特性を用いて残ライフを求めるため、残ライフを正確に予測することができる。
【0010】
ここで、前記差圧検出部は、前記差圧を連続して検出し、前記寿命予測部は、連続して検出した前記差圧に基づいて連続的に前記残ライフを求め、当該求められた結果に基づいて前記残ライフを補正してもよい。これにより、正確な残ライフを求めることができる。
【0011】
ここで、前記寿命予測部は、前記残ライフとして、前記濾材が前記第1時間からあとどの程度の時間使用可能であるかを示す第1残ライフと、前記第1時間より前の第2時間に前記差圧検出部により検出された第2差圧と前記差圧特性とに基づいて、前記濾材が前記第2時間からあとどの程度の時間使用可能であるかを示す第2残ライフを求め、前記差圧特性における前記第2残ライフと前記第1残ライフとの間の経過時間と、前記第2時間と前記第1時間との間の経過時間とに基づいて前記差圧特性を補正し、当該補正した補正後差圧特性に基づいて前記第1残ライフを補正してもよい。このように、異なる時間で測定された差圧に基づいてライフアップ時間を補正することで、使用環境に応じた適切な残ライフを求めることができる。
【0012】
ここで、前記差圧検出部は、前記圧力差に応じて変位するスプールと、前記スプールに設けられた磁石と、前記磁石の変位量に基づいて磁束密度の変化を検出し、当該磁束密度の変化に応じた第1電圧を出力する磁束密度検出素子と、前記第1電圧を前記圧力差に対して比例する第2電圧に補正する補正部と、を有し、前記寿命予測部は、前記第2電圧に基づいて前記残ライフを求めてもよい。これにより、差圧検出部が連続して差圧を検出することができる。また、差圧と第2電圧とを比例させることで、寿命予測部の処理が容易となる。
【0013】
ここで、前記差圧検出部は、前記磁束密度検出素子の温度を取得する温度取得部を有し、前記補正部は、前記温度取得部が取得した温度に基づいて前記第1電圧を補正してもよい。これにより、補正部から出力される電圧を正確にし、その結果、正確に寿命を予測することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、濾材をどの程度の時間使用することができるか(残りの時間)を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】フィルタ寿命予測装置1の概略を示す図である。
図2】差圧検出部5の断面図である。
図3】フィルタ寿命予測装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
図4】磁場の強さと直線性誤差との関係を示すグラフである。
図5】差圧と電圧V2、V3との関係を示す図である。
図6】磁石55とホール素子53との距離を一定に保った状態において、温度と電圧V2との関係を示すグラフである。
図7】差圧と電圧との関係を示す図である。
図8】磁石55とホール素子53との距離と、磁場の強さとの関係を示すグラフである。
図9】磁石55とホール素子53との距離と、電圧V2との関係を示すグラフである。
図10】磁場変化補正部59cが用いる非線形アンプの特性を示すグラフである。
図11】磁石55とホール素子53との距離と、磁場変化補正部59cからの出力電圧との関係を示すグラフである。
図12】差圧特性の一例を示す図である。
図13】電圧V1と差圧との関係を示すグラフである。
図14】残ライフ算出部81bが残ライフを求める方法を説明する図である。
図15】フィルタ寿命予測装置1Aの電気的な構成を示すブロック図である。
図16】残ライフ算出部81cが残ライフを求め、かつ補正する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、フィルタ寿命予測装置1の概略を示す図である。本発明のフィルタ寿命予測装置1は、主として、濾過装置2と、差圧検出部5と、寿命予測部8(図3参照)と、を有する。差圧検出部5は、濾過装置2に設けられている。なお、図1では断面を示すハッチングを一部省略している。
【0017】
濾過装置2は、油、水等の液体に含まれる塵埃等を、フィルタを用いて除去するものであり、例えば油圧アクチュエータを備える重機などの液圧回路に組み込まれている。ここでは、液体として作動油を用いる。
【0018】
濾過装置2は、主として、フィルタエレメント3と、ヘッド4と、ドレン6と、ハウジング7と、を有する。
【0019】
ハウジング7は、一端が略閉塞され、他端が開口する略有底円筒形状の部材である。ハウジング7の下端には、ドレン6が設けられる。なお、ドレン6を設けることは必須ではない。
【0020】
ハウジング7の開口部は、ヘッド4に取り付けられる。ヘッド4には、差圧検出部5が設けられる。差圧検出部5については後に詳述する。ハウジング7の開口部がヘッド4に取り付けられると、ヘッド4に取り付けられたフィルタエレメント3が、ハウジング7内部に収容される。
【0021】
フィルタエレメント3は、主として、内筒11と、濾材12と、濾材12の両端に設けられるプレート13、14と、を有する。
【0022】
内筒11は、両端に開口を有する略中空円筒形状の部材である。内筒11は、耐腐食性の高い材料(例えば、樹脂や金属)を用いて形成される。
【0023】
濾材12は、径方向に厚みを有する略中空円筒形状である。濾材12は、合成樹脂や紙等を用いたシート状のろ紙をひだ折りにし、ひだ折りにしたろ紙の両端を連結して円筒状に丸めることによって形成される。濾材12の一方の端(上端)にはプレート13が設けられ、他方の端(下端)にはプレート14が設けられる。
【0024】
プレート13には、ヘッド4の中央筒42(後に詳述)が挿入される。プレート13と中央筒42との間には、シール部材22(例えば、Oリング)が設けられる。シール部材22により、プレート13と中央筒42との間から液体が外部に漏れないようにシールされる。また、プレート13に内筒11が設けられているため、プレート13に中央筒42が挿入されると、内筒11の内部空間が中央筒42と連通する。プレート14には、内筒11が挿入される。
【0025】
ヘッド4は、主として、本体41と、中央筒42と、流入路43と、流出路44と、取付穴45と、を有する。
【0026】
本体41は、略有底円筒形状の部材であり、例えば耐腐食性の高い材料(例えば金属)で形成される。本体41の開口端近傍の外周には、雄ねじ部41aが形成されている。雄ねじ部41aを、ハウジング7の内周に形成された雌ねじ部2a(図1参照)に螺合させると、ヘッド4がハウジング7に取り付けられる。
【0027】
ハウジング7とヘッド4との間には、シール部材21(例えば、Oリング)が設けられる。シール部材21により、ハウジング7とヘッド4との間から液体が外部に漏れないようにシールされる。
【0028】
中央筒42は、略円筒形状の部材であり、本体41に一体形成される。中央筒42は、本体41の底面略中央から、本体41の側面と同方向に突出している。中央筒42は、プレート13の中空部に挿入される。
【0029】
本体41の側面と中央筒42とにより形成される空間(中央筒42の外部の空間)S1は、流入路43と連通する。また、中央筒42の内部の空間S2は、流出路44と連通する。
【0030】
流入路43を介して、作動油のうちの濾過すべき作動油L1が濾過装置2に供給される。作動油L1は、ハウジング7内に流入し、その後濾材12で濾過されて、内筒11の内部へ流出する。また、内筒11の内部へ流出した濾過された作動油L2は、流出路44から濾過装置2の外部へ排出される。
【0031】
取付穴45は、本体41の底面近傍に形成される。取付穴45には、差圧検出部5が設けられる。取付穴45には雌ねじ(図示省略)が形成されており、これに差圧検出部の雄ねじ51e(図2参照)を螺合することで、取付穴45に差圧検出部5が取り付けられる。取付穴45と差圧検出部5との間には、シール部材23、24(例えば、Oリング、図2参照)が設けられる。シール部材23、24により、取付穴45と差圧検出部5との間から液体が外部に漏れないようにシールされる。
【0032】
取付穴45の底部近傍は、流出路44、すなわち空間S2と連通している。差圧検出部5の底面は開口を有するため、空間S2は、差圧検出部5内部の穴511(図2参照、後に詳述)と連通する。
【0033】
また、取付穴45の雌ねじ部45aは、孔46を介して、空間S1と連通する。空間S1は、差圧検出部5に形成された孔51d(図2参照、後に詳述)を介して、差圧検出部5内部の穴512(図2参照、後に詳述)と連通する。
【0034】
次に、差圧検出部5について詳細に説明する。差圧検出部5は、本発明の差圧検出部に相当する。差圧検出部5は、濾過装置における高圧側と低圧側との圧力差(空間S1と空間S2との圧力差)を連続して検出する。図2は、差圧検出部5の断面図である。図2においては、図を見やすくするため、複数の部品のハッチングを省略する。
【0035】
差圧検出部5は、主として、ケース51と、ホルダ52と、ホール素子53と、スプール54と、磁石55と、ばね56と、を有する。
【0036】
ケース51は、略円筒形状であり、両端にそれぞれ穴51a、51bが形成される。穴51a、51bは、それぞれ略円筒形状である。穴51a、51bは、それぞれの底面が対向する。
【0037】
穴51aは、ケース51の+z側の端に形成される。穴51aの内周面には、雌ねじ部51cが形成される。穴51aの内部には、ホルダ52が設けられる。
【0038】
ホルダ52は、略円筒形状であり、周囲に雄ねじ部52aが形成される。雄ねじ部52aを雌ねじ部51cに螺合させることで、ホルダ52が穴51aの内部に、高さ(z方向の位置)が調整可能に設けられる。
【0039】
ホルダ52の底面(-z側の面)には、ホール素子53を含む基板53aが設けられている。ホルダ52を穴51aの内部に設けた状態において、ホール素子53の中心軸は、ケース51の中心軸axと略同一である。
【0040】
ホルダ52には、ホール素子53に接続された3本のケーブル52c、52d、52eが設けられている。ケーブル52cは電源用(GND)であり、ケーブル52dは電源用(+5V)であり、ケーブル52eはホール素子53の信号出力(電圧V1)用である。
【0041】
穴51bは、ケース51の-z側の端に形成される。穴51bは、主として、穴511と、穴512と、を有する。穴511の直径は、穴512の直径より大きい。穴511、512の中心軸は、ケース51の中心軸axと一致している。
【0042】
穴51bの内部には、スプール54が設けられる。スプール54は、略円筒形状の部材である。スプール54は、主として、先端部54aと、フランジ部54bと、後端部54cと、を有する。
【0043】
先端部54aは、穴512に挿入される。フランジ部54bは、穴511の直径と略同一の直径を有し、穴511に挿入される。スプール54が穴51bの内部に設けられると、先端部54aの中心軸及びフランジ部54bの中心軸は、中心軸axと一致する。
【0044】
スプール54は、穴51bの内部を、中心軸axに沿って(z方向に)摺動する。これにより、スプール54が、穴51bを、穴512とフランジ部54bとにより形成される高圧側の空間S3と、穴511とフランジ部54bとにより形成される低圧側の空間S4とに分割する。
【0045】
高圧側の空間S3は、ケース51に形成された孔51dを介することで、空間S1(図1参照)に連通する。また、低圧側の空間S4は、空間S2(図1参照)に連通する。
【0046】
スプール54には、磁石55が設けられている。スプール54が穴51bの内部に設けられると、磁石55は、スプール54の、穴51bの底面513と対向する面に設けられる。すなわち、磁石55は、底面513をはさんで、ホール素子53と反対側に設けられる。
【0047】
ばね56は、一端が後端部54cに設けられ、他端がEリング56aを介してケース51に固定される。ばね56は、スプール54に、穴511から穴512に向かう方向の力(+z方向の力)を付勢する。スプール54は、ばね56の付勢力により、フランジ部54bが穴512の底面514に当接するまで+z方向に移動可能である。
【0048】
次に、差圧検出部5の作用について説明する。濾材12の目詰まり等が発生せず、空間S1(空間S3)と空間S2(空間S2)との圧力差(以下、差圧という)が閾値以下の場合には、ばね56の付勢力により、スプール54は、磁石55とホール素子53とが最も近くなる位置(図2に示す位置)にある。
【0049】
それに対し、濾材12の目詰まり等により空間S1(空間S3)の圧力が高くなると、ばね56の付勢力に抗して、スプール54が下方(-z方向)に移動する。このように、スプール54は、差圧に応じて変位する。スプール54が下方に移動するのに伴い、磁石55も下方に移動する。
【0050】
ホール素子53は、磁石55の変位量に基づいて磁束密度の変化を検出し、磁束密度の変化に応じた電圧を出力する。ホール素子53の出力信号は、微小なアナログ電圧である。ホール素子53を用いることで、差圧検出部5は連続して差圧を検出することができる。
【0051】
図3は、フィルタ寿命予測装置1の電気的な構成を示すブロック図である。フィルタ寿命予測装置1においては、差圧検出部5と温度・流量取得部25とがそれぞれ寿命予測部8に電気的に接続されている。
【0052】
温度・流量取得部25は、濾過装置2に流入する液体の流量及び温度を取得する。温度・流量取得部25には、例えば、温度測定機能を有する流量センサを用いることができる。温度・流量取得部25により取得された液体の流量及び温度は、寿命予測部8に入力される。
【0053】
差圧検出部5は、主として、ホールセンサIC57と、サーミスタ58と、補正部59と、を有する。ホールセンサIC57及びサーミスタ58は、補正部59にそれぞれ接続されている。ホールセンサIC57と、サーミスタ58と、補正部59は、基板53a(図2参照)に設けられている。
【0054】
ホールセンサIC57は、ホール素子53と信号変換回路をパッケージに組み込んだものであり、基板53aに設けられる。ホールセンサIC57は、ホール素子53が出力した微小なアナログ電圧を整えて増幅する。ホールセンサIC57からの出力(電圧V2とする)は、補正部59に入力される。
【0055】
サーミスタ58は、ホールセンサIC57の温度を取得するものであり、ホールセンサIC57の近傍に設けられる。サーミスタ58が取得した温度は、補正部59に入力される。
【0056】
補正部59は、ホールセンサIC57から入力された電圧V2を、差圧に対して比例する電圧V1に補正する。補正部59は、アナログ回路であってもよいし、記憶部に格納されたプログラムを読み込んで実行するプロセッサであってもよい。補正部59は、主として、出力特性補正部59aと、温度特性補正部59bと、磁場変化補正部59cと、を有する。
【0057】
出力特性補正部59aは、補正部59の基本的な機能部である。磁場の変化が一定であっても、ホール素子53の出力(電圧V2)は曲線的に変化する。この曲線的な変化を直線に補正するのが、出力特性補正部59aである。補正部59をアナログ回路で実現する場合には、出力特性補正部59aには非線形アンプを用いる。
【0058】
図4は、磁場の強さと直線性誤差との関係を示すグラフである。本実施の形態の使用範囲は、60G(ガウス)~340Gである。差圧は、磁石55の位置、すなわち磁場の強さと比例しており、差圧が小さいときは磁石55とホール素子53とが近いため磁場が強く(340G)、差圧が大きいときは磁石55とホール素子53とが遠いため磁場が弱くなる(60G)。
【0059】
図4に示すように、磁場の強さと電圧V2(図4の太線参照)とは比例しておらず、電圧V2は曲線となる。ただし、使用範囲においては直線性誤差は±1%の範囲内に入っている。
【0060】
図5は、差圧と電圧V2、電圧V3(補正後の電圧)との関係を示す図である。図5の太破線が電圧V2であり、実線が電圧V3である。図5においても、図4と同様、電圧V2が曲線となっている。出力特性補正部59aは、曲線状の電圧V2を、差圧に対して比例する電圧V3となるように補正する(図5の白抜き矢印参照)。
【0061】
温度特性補正部59bは、サーミスタ58が取得した温度に基づいて電圧V2を補正する。補正部59をアナログ回路で実現する場合には、温度特性補正部59bには非線形アンプを用いる。
【0062】
図6は、磁石55とホール素子53との距離を一定に保った状態において、温度と電圧V2との関係を示すグラフである。ホールセンサIC57からの出力(電圧V2)は、温度によって変化する。25℃を基準とすると、-25℃の場合は2.7%の誤差があり、115℃の場合は7.5%の誤差がある。使用範囲を-25℃~115℃とすると、誤差は10.2%に及ぶ。
【0063】
図7は、差圧と電圧との関係を示す図である。図7は、出力特性補正部59aにより線形補正された後のグラフである。図7の実線が25℃のときの電圧であり、太破線が115℃のときの電圧であり、太点線が-25℃のときの電圧である。温度特性補正部59bは、基準である25℃のときの電圧となるように、出力特性補正部59aにより線形補正された電圧V3を補正する(図7の白抜き矢印参照)。これにより、補正部59から出力される電圧を正確にし、それにより正確な寿命予測が可能となる。
【0064】
なお、本実施の形態では、温度特性補正部59bは、出力特性補正部59aにより線形補正された電圧V3を補正することで電圧V2を補正したが、直接電圧V2を補正してもよい。
【0065】
磁場変化補正部59cは、磁石55とホール素子53との距離(すなわち、差圧)と、磁場の強さとが比例するように電圧V2を補正する。補正部59をアナログ回路で実現する場合には、磁場変化補正部59cには非線形アンプを用いる。図8は、磁石55とホール素子53との距離と、磁場の強さとの関係を示すグラフである。磁束密度が放射状に広がるため、磁石55の磁場は、磁石55とホール素子53との距離の二乗に反比例する。図9は、磁石55とホール素子53との距離と、ホールセンサIC57からの出力(電圧V2)との関係を示すグラフである。図8に示すグラフと、図9に示すグラフは、反比例の関係にある。
【0066】
図10は、磁場変化補正部59cが用いる非線形アンプの特性を示すグラフである。図10の横軸は入力電圧(電圧V2)であり、図10の縦軸は磁場変化補正部59cからの出力電圧である。非線形アンプは、入力をx、出力をyとすると、関数y=ax+bに従って出力を行うものであり、本実施の形態ではc=2である。図11は、磁石55とホール素子53との距離と、磁場変化補正部59cからの出力電圧との関係を示すグラフである。磁場変化補正部59cは、図9に示すグラフに図10に示す増幅特性を掛け合わせることで、差圧と磁場の強さとが比例するように電圧V2を補正する。
【0067】
補正部59は、電圧V2に対して、出力特性補正部59aによる補正、温度特性補正部59bによる補正、及び磁場変化補正部59cによる補正を行い、電圧V2を差圧に対して比例する電圧V1に補正する。これにより、寿命予測部8での処理が容易となる。補正部59は、電圧V1を寿命予測部8に出力する。
【0068】
ただし、磁場変化補正部59cは必須ではなく、磁場変化補正部59cによる電圧V2の補正も必須ではない。磁場変化補正部59cによる電圧V2の補正は補助的なものであるため、磁場変化補正部59cによる電圧V2の補正がない場合でも、補正部59が補正した電圧V1は差圧に対して比例する。
【0069】
寿命予測部8は、例えばコンピュータなどで構成され、CPUやメモリを含む。寿命予測部8は、主として、制御部81と、記憶部82と、出力部83と、を備える。記憶部82は、メモリであり、揮発性の記憶装置であるRAM(Random Access Memory)や不揮発性の記憶装置であるROM(Read only Memory)からなる。出力部83は、ディスプレイ等の出力装置や、制御部81と他の装置を接続するインターフェース(I/F)を含む。
【0070】
記憶部82には、差圧と濾材に付着した塵埃の量である付着塵埃量との関係を示す差圧特性が記憶されている。図12は、差圧特性の一例を示す図である。図12の差圧特性は、液体に塵埃を一定の量ずつ連続的に投入しながら液体を濾過装置で濾過して差圧を測定することで求められる。この差圧の測定は、JIS B8356-8(ISO 16889) 油圧用フィルタ性能評価方法に定められた方法で行われる。なお、図12の差圧特性は、本実施の形態で使用されるフィルタエレメント3についての差圧特性であり、使用するフィルタエレメントの種類が異なれば差圧特性も異なる。したがって、記憶部82には、濾過装置2の種類に応じた差圧特性を記憶しておく。
【0071】
図12の縦軸は差圧である。図12の横軸は、液体に投入した塵埃の量である。液体に投入した塵埃の量と付着塵埃量は比例するため、図12の横軸は付着塵埃量に相当する。言い換えれば、差圧特性は、差圧と時間との関係を示すグラフである。また、液体に投入した塵埃の量と時間は比例するため、図12の横軸は時間に相当する。
【0072】
付着塵埃量が少ないときは、付着塵埃量の増加に伴って少しずつ差圧が上昇するが、付着塵埃量が増えてくると、付着塵埃量の増加に伴って大きく差圧が上昇する。本実施の形態では、差圧が、塵埃投入前の差圧(初期差圧)に所定圧力(ここでは、100kPa)を加えた終端差圧となる時点をライフアップ(寿命が尽きた=残ライフが0%)とする。差圧特性におけるライフアップまでの経過時間(ライフアップ時間)は、差圧特性に含まれており、記憶部82に記憶されている。なお、所定圧力は100kPaに限られない。
【0073】
差圧特性は、流量、粘度(すなわち、流体の温度)により変化するため、作動油の流量及び温度を一定の条件として差圧特性を取る必要がある。そこで、作動油の流量及び粘度の条件を複数定め、これらの条件下で測定された差圧測定を記憶部82に記憶しておく。図12は、流量が400L(リットル)/分、粘度が22mm/秒(温度が60度)のときの差圧特性である。
【0074】
本実施の形態では、記憶部82には、図12に示す差圧特性(差圧特性Aとする)の他に、流量及び粘度が、差圧特性Aの測定時の流量・粘度の条件(条件Aとする)と異なる条件(条件Bとする)のときの差圧特性Bや、流量及び粘度が条件A、Bと異なる条件Cのときの差圧特性Cが記憶されている。また、条件A、B、Cについても、差圧特性A、B、Cに関連付けて記憶部82に記憶されている。ただし、記憶部82に記憶された差圧特性の数は3個に限られない。
【0075】
また、記憶部82には、電圧V1と差圧との関係を示す情報が記憶されている。図13は、電圧V1と差圧との関係を示すグラフである。電圧V1と差圧とは比例するため、電圧V1に対して差圧が一義的に決まる。ホール素子53のヒステリシスや、ばね56を使用していることにより、圧力上昇時と下降時とで出力に差がある(オーバーライド特性を有する)が、本実施の形態では圧力上昇時(図13の実線参照)の値を用いる。
【0076】
制御部81は、CPU(Central Processing Unit)がROMに格納された所定のプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。制御部81は、主として、付着塵埃量検知部81aと、残ライフ算出部81bと、を有する。
【0077】
付着塵埃量検知部81aは、補正部59から出力された電圧V1、すなわち差圧と、記憶部82に記憶された差圧特性とに基づいて、濾材12に付着した付着塵埃量を検知する。付着塵埃量検知部81aは、温度・流量取得部25により取得された流量及び温度(すなわち、粘度)が、条件A、B、Cのどれに最も近いか判定し、最も近い条件に対応付けられた差圧特性を用いて付着塵埃量を検知する。なお、温度と粘度は比例するため、温度が決まれば粘度も一義的に決まる。
【0078】
例えば、温度・流量取得部25により取得された流量及び粘度が条件Aが最も近い場合に、濾過装置2が作動油を濾過している間の任意の時間にホール素子53で検出され、補正部59から出力された電圧V1が0.6Vの場合を考える。まず、付着塵埃量検知部81aは、図13に示す電圧V1と差圧との関係を示す情報を参照して、電圧V1が0.6Vのときの差圧は0.054MPa(54kPa)であることを取得する。次に、付着塵埃量検知部81aは、図12に示す差圧特性Aを参照して、差圧は0.054MPa(54kPa)のときの横軸の値Pを取得する。
【0079】
残ライフ算出部81bは、付着塵埃量と差圧特性とに基づいて、濾材がどの程度の時間使用可能であるか(残りの時間)を示す残ライフを求める。残ライフ算出部81bは、付着塵埃量検知部81aが選択した差圧特性を用いて残ライフを求める。以下、付着塵埃量検知部81aにおいて、差圧特性Aの横軸の値が取得された場合を例に説明する。
【0080】
図14は、残ライフ算出部81bが残ライフを求める方法を説明する図である。図14のグラフは差圧特性Aと同じである。また、図14において、ライフアップするとき横軸の値(ライフアップ時間)をQとする。残ライフ算出部81bは、図14のグラフにおいて、横軸の値が0と横軸の値Pとの距離IIを求める。また、残ライフ算出部81bは、図14のグラフにおいて、横軸の値が0と横軸の値Qとの距離Iを求める。すでに説明したように、差圧特性Aの横軸は時間に相当するため、距離I、IIは差圧特性における経過時間に相当する。
【0081】
次に、残ライフ算出部81bは、距離Iを100%としたときの距離IIのパーセントを求める。ここでは、距離IIは距離Iの略75%である。したがって、残ライフ算出部81bは、濾材12の残ライフが略25%であると求める。また、残ライフ算出部81bは、残ライフのパーセンテージに基づいて残ライフの時間を求める。例えば、ライフアップ時間が略1000時間である場合には、残ライフ算出部81bは、残ライフ時間(残り使用可能時間)が略250時間(略1000時間×0.25)と求める。
【0082】
つまり、付着塵埃量検知部81aは、差圧特性において差圧に対応する時間を求め、残ライフ算出部81bは、付着塵埃量検知部81aが求めた時間とライフアップ時間との比に基づいて残ライフを求める。
【0083】
本実施の形態によれば、濾過装置2における高圧側と低圧側との圧力差である差圧を用いて残ライフを求めるため、濾材をどの程度の時間使用することができるか(残りの時間)を予測することができる。例えば、リードスイッチを用いた差圧検出装置を用いる場合には、所定の差圧でリードスイッチがON/OFFすることのみであるため、使用者は差圧が所定の圧力になったことしか知ることができない。それに対し、本実施の形態では、ホール素子53を用いて差圧と比例する電圧を連続して得るため、使用者は所定の差圧以外の差圧を得ることができ、それにより細かく残ライフを予測することができる。
【0084】
また、本実施の形態では、差圧検出部5が差圧を連続して検出するため、残ライフを連続的に算出することができる。したがって使用者は、任意のタイミングで残ライフを知ることができ、フィルタエレメント3の在庫管理が容易となる。
【0085】
また、本実施の形態によれば、実際に測定して得られた差圧特性を用いて残ライフを求めるため、残ライフを正確に予測することができる。また、作動油の流量及び粘度が異なる複数の条件下での差圧特性を記憶しておき、濾過装置2が濾過する流体の流量及び温度に最も近い条件における差圧特性を用い残ライフを求めるため、使用環境の変化等により作動油の流量・粘度が変化しても正確に残ライフを算出することができる。
【0086】
<第2の実施の形態>
濾材12のライフアップまでの時間は、濾過装置2が使用された環境によって変わる可能性がある。例えば、塵埃が多い環境で濾過装置2を使用すれば、単位時間当たりの濾材12への付着塵埃量が多くなり、濾材12の寿命は短くなる。また、塵埃が少ない環境で濾過装置2を使用すれば、単位時間当たりの濾材12への付着塵埃量が少なくなり、濾材12の寿命は長くなる。本発明の第2の実施の形態は、使用された環境に応じて残ライフを補正する形態である。以下、第2の実施の形態に係るフィルタ寿命予測装置1Aについて説明する。以下、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0087】
図15は、フィルタ寿命予測装置1Aの電気的な構成を示すブロック図である。フィルタ寿命予測装置1Aにおいては、差圧検出部5と温度・流量取得部25とはそれぞれ寿命予測部8Aと電気的に接続されている。
【0088】
寿命予測部8Aは、例えばコンピュータなどで構成され、CPUやメモリを含む。寿命予測部8Aは、主として、制御部81Aと、記憶部82と、出力部83と、を備える。制御部81Aは、CPU(Central Processing Unit)がROMに格納された所定のプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現され、主として、付着塵埃量検知部81aと、残ライフ算出部81cと、を有する。
【0089】
残ライフ算出部81cは、付着塵埃量と差圧特性とに基づいて、濾材がどの程度の時間使用可能であるか(残りの時間)を示す残ライフを求める。残ライフ算出部81cは、連続して検出した差圧に基づいて残ライフを補正する点で残ライフ算出部81bと異なる。以下、残ライフ算出部81cが、連続して検出した差圧に基づいて残ライフを補正する点について説明する。
【0090】
図16は、残ライフ算出部81cが残ライフを求め、かつ補正する方法を説明する図である。例えば、付着塵埃量検知部81aにおいて、異なる時間(時間T1、T2とする)に差圧特性Aの横軸の値が2つ(P1、P2)取得されたものとする。なお、時間T1、T2は、濾過装置2が作動油を濾過している間の任意の時間であり、時間T1は時間T2より前である。残ライフ算出部81cは、差圧特性Aにおいて、横軸の値が0と横軸の値P1との距離IIIと、横軸の値が0と横軸の値P2との距離IVを求める。また、残ライフ算出部81cは、図14のグラフにおいて、横軸の値が0と横軸の値Qとの距離Iを求める。そして、残ライフ算出部81cは、距離Iを100%としたときの距離III、IVのパーセントを求める。ここでは、距離IIは距離Iの略75%であり、距離IVは距離Iの略80%である。また、残ライフ算出部81cは、時間T1における濾材12の残ライフが略25%であり、時間T2における濾材12の残ライフが略20%であると求める。
【0091】
なお、残ライフ算出部81cは、残ライフを連続的に求めており、時間T1が経過した時点で時間T1における濾材12の残ライフを求め、時間T2が経過した時点で時間T2における濾材12の残ライフを求めている。
【0092】
次に、残ライフ算出部81cは、差圧特性における、時間T1における濾材12の残ライフと、時間T2における濾材12の残ライフとの間の経過時間(差圧特性における時間T1と時間T2との間の経過時間)を求める。ここでは、距離Iを100%としたときの距離IIIと距離IVとの差は5%であるため、ライフアップ時間が略1000時間であるとすると、残ライフ算出部81cは、時間T1と時間T2との間は略50時間であると算出する。
【0093】
残ライフ算出部81cは、差圧特性における時間T1と時間T2との間の経過時間と、実際の時間T1と時間T2との間の経過時間と、を比較した結果に基づいて、差圧特性の横軸、すなわちライフアップ時間を補正する。例えば、実際の時間T1と時間T2が略25時間であり、距離IIIと距離IVとの差から求められた時間が略50時間であるとすると、残ライフ算出部81cは、差圧特性の横軸及びライフアップ時間を半分にする。例えば、ライフアップ時間が略1000時間である場合には、残ライフ算出部81cは、ライフアップ時間を略500時間(略1000時間×1/2)とする。
【0094】
そして、残ライフ算出部81cは、補正された差圧特性(ライフアップ時間)に基づいて時間T2からの残ライフ時間(残り使用可能時間)を補正する。例えば、残ライフ算出部81cは、ライフアップ時間を略500時間と補正した場合には、時間T2からの残ライフ時間を略100時間(略500時間×0.2)と求める。
【0095】
本実施の形態によれば、濾過装置2が使用された環境にかかわらず、正確な残ライフを求めることができる。例えば、塵埃が多い環境で使用された濾過装置2は、単位時間当たりの付着塵埃量が増加するため、ライフアップ時間が短くなる。このように、濾過装置2の使用環境で残ライフは変化するため、異なる時間で測定された差圧に基づいてライフアップ時間を補正することで、使用環境に応じた適切な残ライフを求めることができる。また、濾過装置2の使用環境が変化した後、異なる2つの時間で残ライフを求め、この結果と差圧特性とに基づいて残ライフを補正することで、使用された環境の変化に応じて残ライフを補正することができる。
【0096】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。当業者であれば、実施形態の各要素を、適宜、変更、追加、変換等することが可能である。
【0097】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略平行とは、厳密に平行の場合には限られず、例えば数度程度の誤差を含む概念である。また、例えば、単に平行、直交、一致等と表現する場合において、厳密に平行、直交、一致等の場合のみでなく、略平行、略直交、略一致等の場合を含むものとする。また、本発明において「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、Aの近傍という場合に、Aの近くのある範囲の領域であって、Aを含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0098】
1、1A :フィルタ寿命予測装置
2 :濾過装置
2a :雌ねじ部
3 :フィルタエレメント
4 :ヘッド
5、5A :差圧検出部
6 :ドレン
7 :ハウジング
8、8A :寿命予測部
11 :内筒
12 :濾材
13、14:プレート
21、22、23、24:シール部材
25 :温度・流量取得部
41 :本体
41a :雄ねじ部
42 :中央筒
43 :流入路
44 :流出路
45 :取付穴
46 :孔
51 :ケース
51a、51b:穴
51c :雌ねじ部
51d :孔
52e :雄ねじ部
52 :ホルダ
52a :雄ねじ部
52c、52d、52e:ケーブル
53 :ホール素子
53a :基板
54 :スプール
54a :先端部
54b :フランジ部
54c :後端部
55 :磁石
56 :ばね
56a :Eリング
57 :ホールセンサIC
58 :サーミスタ
59 :補正部
59a :出力特性補正部
59b :温度特性補正部
59c :磁場変化補正部
81 :制御部
81A :制御部
81a :付着塵埃量検知部
81b、81c:残ライフ算出部
82 :記憶部
83 :出力部
100 :差圧検出装置
511、512:穴
514 :底面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16