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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】電力変換装置、並びに電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20221221BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221221BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20221221BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 120
H02J3/38 130
H02J3/38 160
H02J7/35 K
H02J7/34 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018237540
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2020102895
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 佳澤
(72)【発明者】
【氏名】景山 寛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智道
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 雅哉
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/076918(WO,A1)
【文献】特開2012-244828(JP,A)
【文献】特開2011-200084(JP,A)
【文献】特開2012-100487(JP,A)
【文献】特開2015-186308(JP,A)
【文献】特開2018-157647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池の充放電を制御し、電力系統と連系する電力変換器を備え、
前記電力変換器は前記蓄電池からの電力を前記電力系統に出力するとともに、前記電力系統から入力する電力を前記蓄電池に充電する電力変換装置において、
前記電力変換器は、
前記蓄電池の充電状態に応じて、
系統周波数の増加分および減少分の一方に対して、前記蓄電池を充電もしくは放電し、
前記系統周波数の前記増加分および前記減少分の他方に対して、前記蓄電池を充放電せず、
前記電力変換器は、再生可能エネルギー源により発電する発電装置からの電力を電力変換して前記電力系統に出力し、
前記電力変換器は、前記系統周波数の前記増加分および前記減少分の前記一方に対して、前記発電装置の発電量を増減せず、前記系統周波数の前記増加分および前記減少分の前記他方に対して、前記発電装置の前記発電量を増大または抑制することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記電力変換器は、前記蓄電池の前記充電状態が所定の上限に到達する場合、
前記系統周波数の前記減少分に対し、前記蓄電池の放電電力を電力変換して前記電力系統に出力し、かつ前記系統周波数の前記増加分に対し、前記蓄電池を充放電せず、
前記系統周波数の前記減少分に対し、前記発電装置の前記発電量を増減せず、かつ前記系統周波数の前記増加分に対し、前記発電装置の前記発電量を抑制することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記電力変換器は、前記蓄電池の前記充電状態が所定の下限に到達する場合、
前記系統周波数の前記減少分に対し、前記蓄電池を充放電せず、前記系統周波数の前記増加分に対し、前記電力系統からの電力を前記蓄電池に充電し、
前記系統周波数の前記減少分に対し、前記発電装置の前記発電量を増加し、前記系統周波数の前記増加分に対し、前記発電装置の前記発電量を増減しないことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記電力変換器は、
系統電圧振幅の増加分および減少分に対し、それぞれ前記電力変換器が出力する無効電力を減少および増大することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
蓄電池と、
蓄電池を充放電し、電力系統と連系する電力変換器と、
前記電力系統の系統電圧を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器によって検出される前記系統電圧に基づいて、前記電力変換器が、前記蓄電池からの電力を前記電力系統に出力するとともに、前記電力系統から入力する電力を前記蓄電池に充電するように、前記電力変換器を制御する電力制御部と、
を備える電力変換システムにおいて、
前記電力制御部は、
前記系統電圧に基づいて、前記電力系統の系統周波数の増加分および減少分を抽出し、
前記蓄電池の充電状態に応じて、
前記系統周波数の前記増加分および前記減少分の一方に対して、前記蓄電池を充電もしくは放電し、
前記系統周波数の前記増加分および前記減少分の他方に対して、前記蓄電池を充放電しないように、前記電力変換器を制御し、
さらに、再生可能エネルギー源により発電する発電装置を備え、
前記電力制御部は、前記電力変換器が、前記発電装置からの電力を電力変換して前記電力系統に出力するように、前記電力変換器を制御し、
前記電力制御部は、前記電力変換器が、前記系統周波数の前記増加分および前記減少分の前記一方に対して、前記発電装置の発電量を増減せず、前記系統周波数の前記増加分および前記減少分の前記他方に対して、前記発電装置の前記発電量を増大又は抑制するように前記電力変換器を制御することを特徴とする電力変換システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換システムにおいて、
前記電力制御部は、
前記系統電圧に基づいて、前記系統電圧の電圧振幅の増加分および減少分を抽出し、
前記電圧振幅の前記増加分および前記減少分に対し、それぞれ前記電力変換器が出力する無効電力を減少および増大するように、前記電力変換器を制御することを特徴とする電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池などの蓄電装置を備える電力変換装置、並びにそれが用いられる電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電や太陽光発電のような再生可能エネルギー源(Renewable Energy Source;「RES」と略記)による発電は、電力系統に、系統周波数や系統電圧振幅の動揺、すなわち電力動揺を発生させる場合がある。これに対し、蓄電装置を、電力変換器を介して電力系統に連系する電力安定化装置が適用される。
【0003】
このような電力安定化装置に関する従来技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。本技術では、蓄電池の充電状態を示すSOC(State of Charge)を一定に保つように、電力変換器により蓄電池の充放電が制御される。これにより、蓄電池を劣化させることなく、電力安定化装置を運転できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-157364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、SOCが上限値や下限値に近くなると、電力安定化装置の系統安定化動作が難しくなる。
【0006】
そこで、本発明は、SOCに応じて確実に電力動揺を抑制できる電力変換装置ならびに電力変換システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明による電力変換装置は、蓄電池の充放電を制御し、電力系統と連系する電力変換器を備え、電力変換器は蓄電池からの電力を電力系統に出力するとともに、電力系統から入力する電力を蓄電池に充電するものであって、電力変換器は、蓄電池の充電状態に応じて、系統周波数の増加分および減少分の一方に対して、蓄電池を充電もしくは放電し、系統周波数の増加分および減少分の他方に対して、蓄電池を充放電せず、電力変換器は、再生可能エネルギー源により発電する発電装置からの電力を電力変換して電力系統に出力し、電力変換器は、系統周波数の増加分および減少分の一方に対して、発電装置の発電量を増減せず、系統周波数の増加分および減少分の他方に対して、発電装置の発電量を増大または抑制する
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明による電力変換システムは、蓄電池と、蓄電池を充放電し、電力系統と連系する電力変換器と、電力系統の系統電圧を検出する電圧検出器と、電圧検出器によって検出される系統電圧に基づいて、電力変換器が、蓄電池からの電力を電力系統に出力するとともに、電力系統から入力する電力を蓄電池に充電するように、電力変換器を制御する電力制御部と、を備えるものであって、電力制御部は、系統電圧に基づいて、電力系統の系統周波数の増加分および減少分を抽出し、蓄電池の充電状態に応じて、系統周波数の増加分および減少分の一方に対して、蓄電池を充電もしくは放電し、系統周波数の増加分および減少分の他方に対して、蓄電池を充放電しないように、電力変換器を制御し、さらに、再生可能エネルギー源により発電する発電装置を備え、電力制御部は、電力変換器が、発電装置からの電力を電力変換して電力系統に出力するように、電力変換器を制御し、電力制御部は、電力変換器が、系統周波数の増加分および減少分の一方に対して、発電装置の発電量を増減せず、系統周波数の増加分および減少分の他方に対して、発電装置の電量を増大又は抑制するように電力変換器を制御する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蓄電池の充電状態(SOC)に応じて確実に電力動揺を抑制できる。
【0010】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態である電力変換システムの全体構成を示す概略構成図である。
図2】第1実施形態の電力変換システムの第1の具体例を示す。
図3】第1実施形態の電力変換システムの第2の具体例を示す。
図4】第1実施形態の電力変換システムの第3の具体例を示す。
図5】第1実施形態における周波数/振幅検出部の構成を示す機能ブロック図である。
図6】第1実施形態における特定周波数領域抽出部の構成を示す機能ブロック図である。
図7】第1実施形態における電力指令設定部の構成を示す機能ブロック図である。
図8図7における動揺減衰用電力指令設定部の構成を示す機能ブロック図である。
図9】動揺減衰用電力指令設定部における入出力、フラグの時間変化を示す。
図10】動揺減衰用電力指令設定部における無効電力の補正量ΔQを作成する動作を示す図である。
図11】第2実施形態である電力変換システムの全体構成図である。
図12】第2実施形態における電力指令設定部の構成を示す機能ブロック図である。
図13図12における動揺減衰用電力指令設定部の構成を示す機能ブロック図である。
図14】動揺減衰用電力指令設定部における入出力、フラグの時間変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である電力変換システムの全体構成を示す概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、電力変換システム101は、半導体スイッチング素子を含む電力変換主回路を備える電力変換器102と、電力変換器102を制御する電力制御部103とからなる電力変換装置とを備える。
【0014】
電力変換器102は、再生可能エネルギー源による発電装置(以下、「RES」と記す)105から供給される電力および蓄電池106から放電される電力を電力変換して、変換された電力を電力系統104に出力する。また、電力変換器102は、蓄電池106を充放電する。
【0015】
電力制御部103は、電力系統104と電力変換器102との接続点すなわち系統連系点における電流および電圧を含む系統連系点情報108と、蓄電池の充電状態を表すSOC107(SOC:State of Charge)に基づいて、電力変換器102が電力系統104へ出力する電力(P(有効電力),Q(無効電力))を制御するための電力制御指令を作成する。また、電力制御部103は、RES105から電力変換器102が入力する電力を調整(例えば、抑制)したり、SOC検出部150によって検出される蓄電池106のSOC107に応じて蓄電池106の充放電を制御したりするように、電力制御指令を作成する。例えば、電力制御部103は、蓄電池106のSOCが過大もしくは過少にならないように蓄電池の充放電を制御しながら、電力変換器102の出力電力を制御する。
【0016】
SOC検出部150においては、公知のSOC検出手段が適用される。例えば、SOC検出部150は、蓄電池106の開放電圧を検出し、検出される電圧の値と、予めSOC検出部150に設定されている、SOCおよび開放電圧の関係を示すデータとから、SOCを判定する。
【0017】
図2は、本実施形態の電力変換システムの第1の具体例を示す。
【0018】
本具体例において、RES105は、太陽光発電装置(PV)から構成される。また、電力系統104は、ディーゼルエンジン発電機204と、ディーゼルエンジン発電機204から電力が供給される負荷205とから構成される孤立系統である。なお、ディーゼルエンジン発電機204は、三相交流電力を発電する。したがって、図2における電力系統104は、三相交流電力系統である(後述する図3,4,11においても同様)。
【0019】
図2に示すように、電力変換器102は、複数の電力変換器部すなわちDC/DC変換部202,203、DC/AC変換部201とから構成される。
【0020】
DC/DC変換部202は、太陽光発電装置PV(RES105)から入力する直流電力を電圧または電流が異なる直流電力に変換して、変換された直流電力を出力する。
【0021】
DC/DC変換部203は、蓄電池106から入力する放電電力を電圧または電流が異なる直流電力に変換して、変換された直流電力を出力する。
【0022】
DC/AC変換部201は、DC/DC変換部202,203が出力する直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力を、系統連系点において、電力系統104へ出力する。
【0023】
なお、DC/AC変換部201は、電力系統104から入力する交流電力を直流電力に変換して、変換された直流電力を出力する。また、DC/DC変換部203は、DC/AC変換部201もしくはDC/DC変換部202から入力する直流電力を、電圧または電流が異なる直流電力に変換して、変換された直流電力を充電電力として蓄電池106へ出力する。これにより、蓄電池106が充電される。
【0024】
図2に示すように、本具体例において、電力制御部103は、周波数/振幅検出部206、特定周波数領域抽出部207、電力指令設定部208、および変換器制御部209を備える。
【0025】
周波数/振幅検出部206は、系統連系点情報108(本実施形態では、系統連系点における電流および電流の計測値)に基づいて、系統周波数(ω)および電圧振幅(VAMP)を検出する。系統連系点における電圧および電流は、それぞれ、系統連系点に設けられる電圧検出器および電流検出器によって検出される。
【0026】
特定周波数領域抽出部207は、周波数/振幅検出部206によって検出される系統周波数(ω)および電圧振幅(VAMP)に基づいて、ωの変動成分(Δω)と、VAMPの変動成分(ΔVAMP)を抽出する。ΔωおよびΔVAMPは、それぞれωおよびVAMPの定常値からの変動成分、すなわち増加分または減少分である。
【0027】
電力指令設定部208は、特定周波数領域抽出部207によって抽出されるΔωおよびΔVAMPと、SOC検出部150によって検出される蓄電池106のSOC107とに基づいて、PVからの電力の指令値212(P PV)、蓄電池からの電力の指令値213(P BAT)および電力系統への出力電力の指令値214(本実施形態では無効電力指令値Q)を設定する。
【0028】
変換器制御部209は、電力指令設定部208によって設定される指令値212~214に基づいて、DC/DC変換部202、DC/DC変換部203およびDC/AC変換部201に対する制御指令(M PV,M BAT,M ABC)を作成して、これらの変換部へ送信する。制御指令M PVによって、DC/DC変換部202は、DC/DC変換部202の出力電力(PPV)が指令値212(P PV)に一致するように制御される。また、制御指令M BATによって、DC/DC変換部203は、DC/DC変換部203の出力電力(PBAT)が指令値213(P BAT)に一致するように制御される。また、制御指令M ABCによって、DC/AC変換部201は、DC/AC変換部201の出力電力(Q)が指令値214(Q)に一致するように制御される。
【0029】
なお、変換器制御部209は、例えばPWM(Pulse Width Modulation;パルス幅変調)制御によって、制御指令を作成する。
【0030】
なお、DC/DC変換部202、DC/DC変換部203およびDC/AC変換部201の各々は、半導体スイッチング素子を含む電力変換主回路を備え、それぞれ制御指令M PV,M BATおよびM ABCによって、半導体スイッチング素子のオン・オフが制御されることにより動作する。これにより、電力変換器102は、電力系統へ電力を出力するとともに、系統連系点における電力動揺を減衰させる。
【0031】
図3は、本実施形態の電力変換システムの第2の具体例を示す。以下、第1の具体例と異なる点について説明する。
【0032】
図3に示すように、電力変換器102は、DC/AC変換部215,216から構成される。
【0033】
DC/AC変換部215は、太陽光発電装置PV(RES105)から入力する直流電力を交流電力に変換して、変換された交流電力を、系統連系点において、電力系統104へ出力する。
【0034】
DC/AC変換部216は、蓄電池106から入力する放電電力(直流電力)を交流電力に変換し、変換された交流電力を、系統連系点において、電力系統104へ出力する。また、DC/AC変換部216は、電力系統104から入力する交流電力を直流電力に変換して、変換された直流電力を充電電力として蓄電池106へ出力する。
【0035】
図4は、本実施形態の電力変換システムの第3の具体例を示す。以下、第1および第2の具体例と異なる点について説明する。
【0036】
図4に示すように、電力変換器102は、DC/DC変換部202,203およびDC/AC変換部216,217から構成される。
【0037】
DC/DC変換部202は、太陽光発電装置PV(RES105)から入力する直流電力を電圧または電流が異なる直流電力に変換して、変換された直流電力を出力する。
【0038】
DC/DC変換部203は、蓄電池106から入力する放電電力を電圧または電流が異なる直流電力に変換して、変換された直流電力を出力する。
【0039】
DC/AC変換部216は、DC/DC変換部202が出力する直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力を、系統連系点において、電力系統104へ出力する。
【0040】
DC/AC変換部217は、DC/DC変換部203が出力する直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力を、系統連系点において、電力系統104へ出力する。
【0041】
なお、DC/AC変換部217は、電力系統104から入力する交流電力を直流電力に変換して、変換された直流電力を出力する。また、DC/DC変換部203は、DC/AC変換部217から入力する直流電力を、電圧または電流が異なる直流電力に変換して、変換された直流電力を充電電力として蓄電池106へ出力する。これにより、蓄電池106が充電される。
【0042】
図5は、本実施形態における周波数/振幅検出部206の構成を示す機能ブロック図である。
【0043】
図5に示すように、周波数/振幅検出部206においては、系統連系点情報108に含まれる3相系統電圧V,V,Vが、3相/2相変換部301によって、2相電圧Vα,Vβに変換される。さらに、静止座標系における2相電圧Vα,Vβは、dq変換部302によって、同期回転座標系におけるd軸電圧Vおよびq軸電圧Vに変換される。d軸電圧Vは、比例積分制御器304(PI)によって、系統連系点における系統周波数ωに変換される。ωは、周波数/振幅検出部206から出力される。また、ωが積分器305によって積分されることにより、同期回転座標系の回転角θが算出される。
【0044】
なお、dq変換部302と比例積分制御器304および積分器305は、いわゆるSRF-PLL(Synchronous Reference Frame(同期回転座標)Phase Locked Loop(位相同期回路))を構成している。したがって、SRF-PLLを適用することにより、系統連系点情報108から系統周波数ωを算出できる。
【0045】
また、図5に示すように、2相電圧Vα,Vβから、系統電圧の振幅VAMPが算出される。例えば、Vα,Vβの二乗和を算出することにより、この二乗和の平方根によってVAMPを算出できる。
【0046】
図6は、本実施形態における特定周波数領域抽出部207の構成を示す機能ブロック図である。
【0047】
図6に示すように、特定周波数領域抽出部207においては、周波数/振幅検出部206によって検出される系統周波数ωおよび電圧振幅VAMPが、それぞれバンドパスフィルタ401および402に入力される。バンドパスフィルタ401は、入力したωに応じて、系統周波数の変動成分Δω(210)を抽出して出力する。また、バンドパスフィルタ402は、入力したVAMPに応じて、電圧振幅の変動成分ΔVAMP(211)を抽出して出力する。
【0048】
図7は、本実施形態における電力指令設定部208の構成を示す機能ブロック図である。
【0049】
図7に示すように、電力指令設定部208は、電力系統104と電力変換システム101との連系点における電力動揺を減衰するための動揺減衰用電力指令設定部501と、太陽光発電装置(RES105)と電力系統104の連系制御のためのPV発電用電力指令設定部502を有する。
【0050】
PV発電用電力指令設定部502は、蓄電池106のSOCに基づくとともに、公知の最大電力追従制御(MPPT制御;Maximum Power Point Tracking Control)により、PV発電電力基準値P PV0、蓄電池106の充放電電力量の基準値である蓄電電力基準値P BAT0、電力変換器102が出力する無効電力の基準値である無効電力基準値Q を作成する。
【0051】
動揺減衰用電力指令設定部501は、特定周波数領域抽出部207によって抽出された系統周波数の変動成分Δωおよび電圧振幅の変動成分ΔVAMPに基づくとともに、蓄電池106のSOCに基づき、電力動揺を減衰するために、P PV0の補正量ΔP PVと、P BAT0の補正量ΔP BATと、Q の補正量ΔQを設定する。
【0052】
電力指令設定部208は、P PV0、P BAT0、Q に、それぞれΔP PV、ΔP BAT、ΔQを加算して、PV発電電力指令P PV(212)、蓄電電力指令P BAT(213)、無効電力指令Q(214)を作成して出力する。
【0053】
図8は、図7における動揺減衰用電力指令設定部501の構成を示す機能ブロック図である。また、図9は、動揺減衰用電力指令設定部501における入出力、および内部のフラグの時間変化を示す。
【0054】
本実施形態では、電力動揺の減衰が、電力系統における系統周波数および系統電圧振幅の変動に対して逆潮流電力を補償することによってなされる。そのため、以下に説明するように、系統周波数の変動成分および系統電圧振幅の変動成分が、それぞれ有効電力及び無効電力に関わる指令値を作成するために適用される。
【0055】
図8に示すように、動揺減衰用電力指令設定部501においては、蓄電池のSOCを管理しながら電力動揺を減衰するために、系統周波数および系統電圧の動揺を示す情報(系統周波数の変動成分Δω(210),系統電圧振幅の変動成分ΔVAMP(211))および蓄電池のSOC(107)に応じて、電力指令の補正量(ΔP PV,ΔP BAT,ΔQ)が設定される。
【0056】
図8に示すように、Δω(210)およびΔVAMP(211)が、それぞれ制御器KおよびK(いずれも開ループ制御器)に入力される。制御器Kは、Δω(210)に基づいて、上述の逆潮流電力の補償の内、逆潮流有効電力補償(ΔP ideal)601を作成する。また、制御器Kは、ΔVAMP(211)に基づいて、上述の逆潮流電力の補償の内、逆潮流無効電力補償602すなわち無効電力補正量(ΔQ)を作成する。
【0057】
本実施形態では、SOCに応じた動作モードを設定するために、SOCについて、所定の上限値SOCUL(603)と、所定の下限値SOCLL(604)と、所定の不感帯SOCNDが規定されており、この動作モード設定が、これらの規定値によるヒステリシス制御器(606,607)によって実行される。
【0058】
SOCが、上限値SOCUL(603)よりも大きくなったり、下限値SOCLL(604)よりも小さくなったりすると、対応するヒステリシス制御器(606,607)の出力が出力するフラグ(それぞれ、上限フラグFLGUL,下限フラグFLGLL)が「0」から「1」に変わる。
【0059】
上限フラグが「1」になると、電力変換システムは蓄電池を充電することなく動作し、蓄電池電力の下限608が負の無限大「-inf」(下限なし)から「0」に切り替えられる。同時に、PV発電量の上限609が無限大「inf」(上限なし)から「0」に切り替えられる。その結果、逆潮流有効電力補償601が、蓄電池の放電とPVにおける発電量の制限のいずれかによって、生成され得る。
【0060】
このような動作が、図9におけるCase1およびCase2に示される。
【0061】
Case1に示されるように、SOCが所定上限値SOCUL(603)に到達すると、上限フラグ(FLGUL)が「0」から「1」になる。同時に、Δω(210)が示すように系統の周波数動揺が起きると、電力制御部103は、周波数動揺を減衰するために、有効電力補償ΔP ideal(601)を生成する。蓄電池電力下限608およびPV発電量の上限609を制御することによって、蓄電池放電およびPV発電量制限のみの電力指令が設定され得る。
【0062】
なお、Case2は、電力動揺の方向が異なる以外は同様の動作を示す。
【0063】
このように、SOCが所定上限値SOCUL(603)に到達すると(この時、蓄電池電力の基準値P BAT0=0)、Δω<0(系統周波数減)の場合、ΔP idealがΔP BAT(>0)になる。すなわち、PV発電量は増やさずに、蓄電池の放電電力によって周波数動揺すなわち電力動揺が抑制される。また、Δω>0(系統周波数増)の場合、ΔP idealがΔP PV(<0)になる。すなわち、蓄電池により系統電力を吸収せずにすなわち蓄電池は充電せずに、PV発電量の抑制によって周波数動揺すなわち電力動揺が抑制される。したがって、電力変換システムは、SOCの大きさを、上限値を超えない適正な範囲に保持しながら、系統連系点における電力動揺を抑制することができる。
【0064】
図8に示すように、SOCが所定の下限値SOCLL(604)よりも小さくなると、下限フラグ(FLGLL)が「1」になる。この場合、電力変換システムは、蓄電池を放電することなく動作し、蓄電池電力の上限610が無限大「inf」(上限なし)から「0」に切り替えられる。同時に、PV発電量の上限609が無限大「inf」(上限なし)から「0」に切り替えられるとともに、負のオフセット(-PPVOFST)が逆潮流有効電力補償601に加えられる。
【0065】
このオフセットの分PVにおける発電電力を制限することにより、PVがMPPT制御されていても(最大電力点においてΔP PV=0)、蓄電池の放電電力によらず、PVにおける発電電力の増加分によって電力動揺を抑えることができる。
【0066】
したがって、逆潮流有効電力補償(量)が、蓄電池の充電およびPVにおける発電量の制限のいずれかによって生成しうる。
【0067】
このような動作は、Fig.9のCase3およびCase4に示される。
【0068】
Case3に示すように、SOCが所定の下限値604(SOCLL)に到達すると、下限フラグ(FLGLL)が「0」から「1」になる。同時に、周波数動揺210(Δω)が起きると、電力制御部(103)は、動揺を減衰するために、有効電力補償(量)を生成しようとする。蓄電池電力の上限およびPV発電量の上限を制御することによって、蓄電池充電およびPVの発電量制限のみの電力指令が設定され得る。
【0069】
Case4は、周波数動揺の方向が異なる以外は同様の動作を示す。
【0070】
このように、SOCが所定下限値SOCLL(604)に到達すると(この時、蓄電池電力の基準値P BAT0=0)、Δω<0(系統周波数減)の場合、ΔP idealがΔP PV(>0)になる。すなわち、蓄電池の放電電力によらず、PVにおける発電電力の増加分によって電力動揺を抑えることができる。ただし、上述のように、ΔP PVは、最大電力点からオフセット分抑制された発電量からの増加分である。また、Δω>0(系統周波数増)の場合、ΔP idealがΔP BAT(<0)になる。すなわち、PV発電量のさらなる抑制によらず、蓄電池による系統電力の吸収すなわち蓄電池の充電によって電力動揺が抑制される。したがって、電力変換システムは、SOCの大きさを、下限値を下回らない適正な範囲に保持しながら、系統連系点における電力動揺を抑制することができる。
【0071】
図10は、図8の動揺減衰用電力指令設定部501における無効電力の補正量ΔQ(602)を作成する動作を示す図である。
【0072】
前述のように、ΔQ(602)は、図8に示した開ループ制御器Kによって、系統電圧動揺を示す電圧振幅の変動成分ΔVAMP(211)に基づいて作成される。図10に示すように、ΔVAMP(211)>0の場合、ΔQ(602)<0であり、ΔVAMP(211)<0の場合、ΔQ(602)>0である。これにより、電力変換システムは、系統連系点における電圧動揺すなわち系統電力動揺を抑制することができる。
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態である電力変換システムの全体構成図である。以下、主に、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0073】
本実施形態において、電力変換器102は、DC/AC変換部217から構成される。DC/AC変換部217は、蓄電池106から入力する放電電力を交流電力に変換して、変換された交流電力を、系統連系点において、電力系統104へ出力する。また、DC/AC変換部217は、電力系統104から入力される交流電力を直流電力に変換して、変換された直流電力によって蓄電池106を充電する。なお、第1実施形態とは異なり、電力変換器には、RES105は接続されない。したがって、第2実施形態における電力変換器102の構成は、図3に示した具体例から、PV発電装置(RES105)およびPV発電装置が接続されるDC/AC変換部215を除いた構成に相当する。
【0074】
電力制御部103における電力指令設定部908は、図3の具体例における電力指令P PV,P BAT,Qの内、P PVは設定せず、P BAT,Qを設定する。
【0075】
図12は、本実施形態(図11)における電力指令設定部908の構成を示す機能ブロック図である。
【0076】
図12に示すように、電力指令設定部908は、電力系統104と電力変換システム101との連系点における電力動揺を減衰するための動揺減衰用電力指令設定部1001と、蓄電池106と電力系統104の連系制御のための蓄電池システム用電力指令設定部1002を有する。
【0077】
蓄電池システム用電力指令設定部1002は、蓄電池106のSOCに基づくとともに、様々な動作形態に応じて、蓄電池106の充放電電力量の基準値である蓄電電力基準値P BAT0、電力変換器102が出力する無効電力の基準値である無効電力基準値Q を作成する。たとえば、ピークシフト(ピークカット)動作や電力バックアップ動作が適用される。
【0078】
動揺減衰用電力指令設定部1001は、第1実施形態と同様に、特定周波数領域抽出部207によって抽出された系統周波数の変動成分Δωおよび電圧振幅の変動成分ΔVAMPに基づくとともに、蓄電池106のSOCに基づき、電力動揺を減衰するために、P BAT0の補正量ΔP BATと、Q の補正量ΔQを設定する。
【0079】
電力指令設定部908は、第1実施形態と同様に、P BAT0、Q に、それぞれΔP BAT、ΔQを加算して、蓄電電力指令P BAT(213)、無効電力指令Q(214)を作成して出力する。
【0080】
図13は、図12における動揺減衰用電力指令設定部1001の構成を示す機能ブロック図である。また、図14は、動揺減衰用電力指令設定部1001における入出力、および内部のフラグの時間変化を示す。
【0081】
図13に示すように、動揺減衰用電力指令設定部1001の構成は、第1実施形態における動揺減衰用電力指令設定部501(図8)から、ΔP PVの作成に関わる機能を除いた構成に相当する。
【0082】
SOCに応じた動揺減衰用電力指令設定部1001の動作は、図14のCase1~4に示される。
【0083】
Case1に示されるように、SOCが所定上限値SOCUL(603)に到達すると、上限フラグ(FLGUL)が「0」から「1」になる。同時に、Δω(210)が示すように系統の周波数動揺が起きると、電力制御部103は、周波数動揺を減衰するために、有効電力補償ΔP ideal(601)を生成する。蓄電池電力下限608を制御することによって、蓄電池放電の電力指令が設定され得る。
【0084】
なお、Case2は、電力動揺の方向が異なる以外は同様の動作を示す。
【0085】
このように、SOCが所定上限値SOCUL(603)に到達すると、Δω<0(系統周波数減)の場合、ΔP ideal(>0)がΔP BAT(>0)になる。すなわち、蓄電池の放電電力によって周波数動揺すなわち電力動揺が抑制される。また、Δω>0(系統周波数増)の場合、ΔP ideal(<0)が生成されるが、ΔP BAT=0として、蓄電池は充放電されない。したがって、電力変換システムは、SOCの大きさを、上限値を超えない適正な範囲に保持しながら、系統連系点における電力動揺を抑制することができる。
【0086】
また、Case3に示すように、SOCが所定の下限値604(SOCLL)に到達すると、下限フラグ(FLGLL)が「0」から「1」になる。同時に、周波数動揺210(Δω)が起きると、電力制御部(103)は、動揺を減衰するために、有効電力補償(量)を生成しようとする。蓄電池電力の上限を制御することによって、蓄電池充電のみの電力指令が設定され得る。
【0087】
Case4は、周波数動揺の方向が異なる以外は同様の動作を示す。
【0088】
このように、SOCが所定下限値SOCLL(604)に到達すると、Δω<0(系統周波数減)の場合、ΔP ideal(>0)が生成されるが、ΔP BAT=0として、蓄電池は充放電されない。また、Δω>0(系統周波数増)の場合、ΔP ideal(<0)がΔP BAT(<0)になる。すなわち、蓄電池による系統電力の吸収すなわち蓄電池の充電によって電力動揺が抑制される。したがって、電力変換システムは、SOCの大きさを、下限値を下回らない適正な範囲に保持しながら、系統連系点における電力動揺を抑制することができる。
【0089】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【符号の説明】
【0090】
101 電力変換システム,102 電力変換器,103 電力制御部,
104 電力系統,105 RES,106 蓄電池,107 SOC,
108 系統連系点情報,150 SOC検出部,201 DC/AC変換部,
202 DC/DC変換部,203 DC/DC変換部,
204 ディーゼルエンジン発電機,205 負荷, 206 周波数/振幅検出部,
207 特定周波数領域抽出部,208 電力指令設定部,209 変換器制御部,
215 DC/AC変換部,216 DC/AC変換部,217 DC/AC変換部,
301 3相/2相変換部,302 dq変換部,304 比例積分制御器,
305 積分器,401 バンドパスフィルタ,402 バンドパスフィルタ,
501 動揺減衰用電力指令設定部,502 PV発電用電力指令設定部,
606 ヒステリシス制御器,607 ヒステリシス制御器,
908 電力指令設定部,1001 動揺減衰用電力指令設定部,
1002 蓄電池システム用電力指令設定部
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