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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】繊維製品用処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20221221BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20221221BHJP
   D06M 23/12 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
D06M15/263
D06M15/643
D06M23/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018242942
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020105642
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 寛也
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 晋
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 15/263
D06M 15/643
D06M 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(a1)で表されるモノマーに由来するモノマー単位と、式(a2)で表されるモノマーに由来するモノマー単位を含有する重合体、

(式(a1)中、R 5 は水素原子又はメチル基であり、R 6 は水素原子であり、
式(a2)中、R 7 は水素原子又はメチル基であり、R 8 は炭素数1~40のアルキル基である。)
(B)シリコーン消泡剤、及び
(C)カプセル香料
を含む、繊維製品用噴霧処理剤組成物。
【請求項2】
(A)成分の配合量が0.1~1.5質量%、
(B)成分の配合量が0.01~0.5質量%、
(C)成分の配合量が0.005~5質量%であり、かつ
(A)成分と(B)成分の含量比率(A)/(B)が0.05~300である、
請求項1記載の繊維製品用噴霧処理剤組成物。
【請求項3】
(A)成分が、カチオン性ポリマーでない、請求項1又は2記載の繊維製品用噴霧処理剤組成物。
【請求項4】
(A)成分が、式(a1)で表されるモノマーに由来するモノマー単位と、式(a2)で表されるモノマーに由来するモノマー単位とからなる共重合体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維製品用噴霧処理剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品用処理剤組成物に関する。詳細には、本発明は、保存安定性及び吐出性が良好で、噴霧後の乾燥性に優れた繊維製品用処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類や布製品用の消臭剤・芳香剤として、従来より対象物へ均一に消臭剤を付着させるために吐出容器(スプレー)が用いられている。また、消臭剤の滞留性向上や消臭効果の持続のために、分散剤を配合したり、悪臭抑制物質(消臭剤)や芳香剤(香料)をマイクロカプセル化する方法が開示されている(特許文献1)。
例えば特許文献1には、マイクロカプセルを十分懸濁し、吐出性を維持するために、分散剤の適切な濃度と非ニュートン粘度特性を与える種類を選択することが重要であると開示されている。
また、高分子の配合により粘度が上昇することで、吐出性や噴霧対象に対して悪影響を及ぼすことが懸念されるが、当該課題に対する改善策も開示されている(特許文献2及び3)。
例えば特許文献2には、噴霧対象に対して悪影響を及ぼさないために、比較的低濃度の分散剤を含有することが開示されている。また、特許文献3には、エタノールを高濃度で含有する、吐出性と滞留性に優れた組成が開示されている。しかし、いずれの方法も噴霧後の布の乾燥性に関する評価はなされていない。
更に、スプレー剤における乾燥性を改善する施策として、シリコーン化合物や溶剤を使用する方法が知られている(特許文献4及び5)。
例えば特許文献4には、シリコーン化合物を配合することで乾燥性が改善することが開示されている。また、特許文献5には、特定の溶剤を使用することで速乾性を付与できることが開示されている。しかし、保存安定性、即ち、特許文献1に記載されるようなカプセル香料の分散安定性については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2005-523078号公報
【文献】特表2007-503516号公報
【文献】特開2018-42934号公報
【文献】特開2005-89882号公報
【文献】特開2008-150498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高分子とシリコーン化合物とカプセル香料とを含む、保存安定性及び吐出性が良好で、噴霧後の乾燥性に優れた組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(A)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含有する重合体、(B)シリコーン消泡剤、及び(C)カプセル香料を含む、繊維製品用処理剤組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、保存安定性が良好な繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
本発明の一態様によれば、吐出性が良好な繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
本発明の一態様によれば、噴霧後の乾燥性に優れた繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
本発明の一態様によれば、保存安定性及び吐出性が良好で、噴霧後の乾燥性に優れた繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[(A)成分]
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、(A)成分としてアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含む重合体を含有する。(A)成分は、構造粘性付与及び/又は保存安定性向上の目的で配合され得る。
ここで、アクリル酸エステルは、例えば、アクリル酸と脂肪族アルコールから得られるエステルであり、メタクリル酸エステルは、例えば、メタクリル酸と脂肪族アルコールから得られるエステルである。脂肪族アルコールは、例えば、炭素数1~40の飽和脂肪族アルコールである。
(A)成分は、例えば、下記式(a2)で表されるモノマーに由来するモノマー単位を含有する重合体であり、さらに下記式(a1)で表されるモノマーに由来するモノマー単位を含有する共重合体であることが好ましい。
式(a1)中、R5は水素原子又はメチル基であり、R6は水素原子である。
式(a2)中、R7は水素原子又はメチル基であり、R8は炭素数1~40のアルキル基である。R8におけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、又は環状の構造(シクロアルキル環または芳香族環)を含んでいてもよい。R8におけるアルキル基の炭素数は1~40であり、炭素数1~20が好ましく、炭素数1~10がより好ましい。
【0008】
式(a1)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位は、式(a1)で表されるモノマーを含むモノマー成分を重合したときに、式(a1)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位である。
式(a1)で表されるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
式(a1)で表されるモノマーは、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
式(a2)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位は、式(a2)で表されるモノマーを含むモノマー成分を重合したときに、式(a2)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位である。
式(a2)で表されるモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イコシル等のアクリル酸エステルや、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イコシル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。
式(a2)で表されるモノマーは、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0009】
(A)成分は、架橋されているものでもよく、架橋されていないものでもよいが、架橋されているものが好ましい。(A)成分の架橋されているものとしては、例えば、架橋剤により架橋されているもの(高分子架橋体)が挙げられる。
前記の架橋剤としては、例えばアリルエーテル化合物が好適に挙げられる。
アリルエーテル化合物としては、アリルエーテル、糖のアリルエーテル、糖アルコールのアリルエーテル等が挙げられる。
糖のアリルエーテルにおける糖としては、例えばスクロース等が挙げられる。
糖アルコールのアリルエーテルにおける糖アルコールとしては、例えばペンタエリスリトール等が挙げられる。
(A)成分は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、(A)成分は、式(a1)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位及び式(a2)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位以外の繰り返し単位(他の繰り返し単位)を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、他のモノマーから誘導された繰り返し単位が挙げられる。他のモノマーとしては、式(a1)で表されるモノマー及び式(a2)で表されるモノマーと共重合可能であれば特に制限されず、1種以上を用いることができる。
(A)成分の平均分子量は、特に限定されないが、例えば、重量平均分子量で1,000~10,000,000であり、好ましくは3,000~5,000,000である。
一実施態様において、(A)成分は、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体であることが好ましい。
【0010】
(A)成分の具体例としては、例えば以下の商品名が挙げられる。
架橋タイプの(A)成分の市販品としては、例えば、Lubrizol社製のアクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である商品名「Carbopol Aqua30」;Lubrizol社製のアクリル酸アルキル(C1~C4及びC8)、メタクリル酸アルキル(C1~C4及びC8)、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である「Carbopol Aqua SF-1」;Lubrizol社製のアクリル酸アルキル(C10~C30)、メタクリル酸アルキル(C10~C30)及びアクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である商品名「Carbopol EZ-4」;DOW社製のアクリル酸アルキルと、アクリル酸又はメタクリル酸とからなる架橋型共重合体である商品名「ACUSOL830」等が挙げられる。
(A)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対し、例えば、0.1~1.5質量%、好ましくは0.1~1.0質量%、より好ましくは0.3~1.0質量%である。(A)成分の含量が0.1質量%以上であると充分な保存安定性が達成でき、1.5質量%以下であると乾燥性への影響を低減できる。(A)成分の含量が0.3~1質量%の範囲内であると、保存安定性の向上、及び乾燥性への影響低減の点で好ましい。
【0011】
[(B)成分]
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、(B)成分としてシリコーン消泡剤を含有する。(B)成分は、乾燥性向上の目的で配合され得る。
(B)成分としては、オイル型消泡剤、コンパウンド型消泡剤、自己乳化型消泡剤、エマルション型消泡剤、粉末型消泡剤及び固形型消泡剤等が挙げられ、この中でも、自己乳化型消泡剤及びエマルション型消泡剤が好ましい。シリコーン消泡剤は、一般に販売されているものを使用することができ、当業者は市販品の中からシリコーン消泡剤を適宜選択して用いることができる。シリコーン消泡剤の具体例としては、東レダウ社製のFS Antifoam93や信越シリコーン社製のKM-90等が挙げられる。
例えば、シリコーン消泡剤としては、ジメチルポリシロキサンが挙げられ、ジメチルポリシロキサンには、オイル、エマルジョン、レジン、粉末等の形状があり、オイル、エマルジョンが配合しやすさの点から好ましい。ジメチルポリシロキサンの具体例としては、東レダウ社製のXIAMETER PMX-200や信越シリコーン社製のKF-96A等が挙げられる。
また、シリコーン消泡剤には、泡膜の界面を不安定化させて消泡するものと、微粒子などにより物理的に泡膜を破泡させて消泡させるものがあり、本発明においてはいずれを用いてもよい。本発明の効果の観点から言えば、シリコーン消泡剤は、微粒子などにより物理的に泡膜を破泡させて消泡させるものであることが好ましい。
(B)成分は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(B)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対し、例えば、0.01~0.5質量%、好ましくは0.01~0.3質量%、より好ましくは0.01~0.1質量%である。(B)成分の含量が0.01質量%以上であると充分な乾燥性が達成でき、0.5質量%以下であると吐出性(スプレー性能)への影響を低減できる。(B)成分の含量が0.01~0.3質量%の範囲内であると、乾燥性の向上、及び吐出性(スプレー性能)への影響低減の点で好ましい。
【0012】
[(C)成分]
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、(C)成分としてカプセル香料を含有する。(B)成分は、香りを持続させる目的で配合され得る。
カプセル香料は、芯物質と、当該芯物質を覆う壁物質とから構成されるマイクロカプセルであり、芯物質は香料や精油を含む。このような芯物質の香料及び精油は、本発明の技術分野において周知の成分を用いることができ、それら1種を単独又は2種以上を適宜併用することができる。
カプセル香料の壁物質は、高分子物質から構成され、繊維製品用処理剤組成物等に含有されるカプセルに一般的に使用される材料を用いることができる。壁物質として、例えば、ゼラチン、寒天等の天然系高分子、油脂、ワックス等の油性膜形成物質、ポリアクリル酸系、ポリビニル系、ポリメタクリル酸系、ポリウレア系、メラミン系、ウレタン系等の合成高分子物質などを挙げることができ、それら1種を単独又は2種以上を適宜併用することができる。壁物質は、カプセルが破壊された際の発香性の観点から、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂或いは尿素-ホルムアルデヒド樹脂からなるアミノプラストポリマー、ポリアクリル酸系或いはポリメタクリル酸系ポリマーであることが好ましい。特に、特開2010-520928号に記載されているようなアミノプラストポリマーが好ましい。具体的には、ポリアミン由来の部分/芳香族ポリフェノール由来の部分/メチレン単位、ジメトキシメチレン及びジメトキシメチレンを有するアルキレンおよびアルキレンオキシ部分からなるターポリマーであることが好ましい。
マイクロカプセルの表面電荷は正電荷、負電荷のどちらでもよく、2種以上を組み合わせても良い。
【0013】
カプセル香料は、市販の製品から適宜選択することができるが、具体的には、フィルメニッヒ社製のBLUEFLOWERPOP「FFMHN2814」、IMPACTPOPSCENT「197593BMHN2911」、及びAPPLEPOPSCENT「113285FBMHN2911」;ジボダン社製のGREEN BREEZE CAPS、ORCHARD GARDEN CAPS、RAINBOW CAPS、VELVET CAPS、AURORACAPS、及びCOSMICCAPS;IFF社製のUNICAP101、及びUNICAP503等が挙げられる。
(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
(C)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対し、例えば、0.005~5質量%、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.01~2質量%である。(C)成分の含量が0.005質量%以上であると充分な発香性が達成でき、5質量以上であってもコスト面から考えてメリットは少ない。(C)成分の含量が0.01~5質量%の範囲内であると、発香性、費用対効果の点で好ましい。
【0014】
[(A)/(B)比率]
(A)成分と(B)成分の含量比率は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、例えば、0.05~300、好ましくは0.05~100、より好ましくは0.1~100であり、特に好ましくは3~50である。(A)成分と(B)成分の含量比率が0.05以上であると十分な保存安定性の向上と吐出性(スプレー性能)の点で好ましく、300以下であると乾燥性の向上、及び吐出性(スプレー性能)の点で好ましい。
【0015】
[任意成分]
繊維製品用処理剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて前記(A)、(B)及び(C)成分以外の任意成分を配合してもよい。
任意成分としては、各種界面活性剤、キレート剤、再汚染防止剤、高分子、防腐剤、抗菌剤、防カビ剤、除しわ剤、忌避剤、天然物などのエキス、分散剤、色素、酸化防止剤、増粘剤、減粘剤、紫外線吸収剤など、安全性が高くしかも通常の繊維製品用処理剤に使用されるものであればどのようなものでもよく、特に限定されるものではない。本発明における任意成分の配合量は、上限が好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合できる。本発明の繊維製品用処理剤組成物の安定性を高めるために、非イオン性界面活性剤が好ましい。
本発明において使用できる非イオン性界面活性剤としては、炭素数10~22のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(C1~3)エステルや、オキシエチレン基の平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン、炭素数8~18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド、オキシエチレン基の平均付加モル数が20~100モルである硬化ヒマシ油、などが挙げられる。中でも、炭素数10~14のアルキル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が5~20モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が30~50モルである硬化ヒマシ油が好ましい。
本発明の繊維製品用処理剤組成物における非イオン性界面活性剤の配合量は、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%である。この範囲にあると、繊維製品用処理剤組成物の分散安定性を高めることができる。
【0016】
例えば、繊維製品上での菌の増殖を抑制し、不快臭の発生を抑制する観点から、有機系防菌防カビ剤、無機系防菌防カビ剤の中から1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。有機系防菌防カビ剤としては、アルコール系、フェノール系、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、ニトリル系、過酸化物・エポキシ系、ハロゲン系、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、イミダゾール・チアゾール系、アニリド系、ビグアナイド系、ジスルフィド系、チオカーバメート系、糖質系、トロポロン系、有機金属系のものが挙げられる。また、無機系防菌防カビ剤としては、金属酸化物、銀系のものが挙げられる。例えばダイクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの抗菌剤或いは除菌剤を繊維製品用処理剤組成物中に0.05~1質量%の範囲で配合することが好ましい。
除しわ剤としては、(B)成分に該当しない変性シリコーン化合物があげられる。シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
また、繊維製品用処理剤組成物中に含まれる成分の保存安定性を確保するために、pH調整剤を繊維製品用処理剤組成物に配合してもよい。酸として、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等のカルボン酸が挙げられる。アルカリとして、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
さらに、繊維製品用処理剤組成物そのもの、または繊維製品用処理剤組成物により処理された繊維製品に香り付けをするために、香料を繊維製品用処理剤組成物に配合してもよい。本発明の分野において通常使用されているいかなる香料が使用でき、例えば特開2008-7872号公報に記載されているような香料成分、溶剤、安定化剤を含有する香料組成物が挙げられる。香料は、繊維製品用処理剤組成物中に0.005~5質量%配合することができ、香り付けの効果と経済性の観点から、0.01~1質量%配合することが好ましい。
【0017】
[繊維製品用処理剤組成物の製造方法]
本発明の繊維製品用処理剤組成物の製造方法は特に限定されず、本発明の繊維製品用処理剤組成物は定法により製造することができる。
例えば、水に(A)成分を加え、pH調整剤を用いて組成物のpHを中性にし、(B)成分及び(C)成分を添加して混合する。その後、任意成分等を添加して混合後、必要であれば水酸化ナトリウムや塩酸、硫酸等のpH調整剤を用い、pHメーター(例えば、Mettler Toledo社製 型番MP230)で、配合物をスターラーにて攪拌したままpHを調整した後、残りの水を添加することにより製造することができる。
本発明の繊維製品用処理剤組成物のpHは、保存安定性を確保するために6以上~9以下であると好ましく、6.5以上~8以下であるとより好ましい。
また、本発明の繊維製品用処理剤組成物の粘度は、200mPa・s以下であることが好ましい。本発明の繊維製品用処理剤組成物をスプレー容器に入れて使用する場合には、150mPa・s以下であることがより好ましい。なお、本明細書で示す粘度はB型粘度計(トキメック社製)を用いて、原液を25℃で測定した場合の数値である。
【0018】
[繊維製品用処理剤組成物の使用方法]
本発明の繊維製品用処理剤組成物を、繊維製品に使用する方法としては、組成物をスプレー容器に収納し、繊維製品に噴霧して使用する方法が好ましい。
スプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧型あるいは蓄圧型)、ディスペンサースプレー容器等が挙げられる。トリガースプレー容器の例としては、特開平9-268473号公報、特開平9-256272号公報、特開平10-76196号公報等に記載のものが挙げられる。ディスペンサースプレー容器の例としては、特開平9-256272号公報等に記載のものが挙げられる。
また、本発明の繊維製品用処理剤組成物は、プラスチック製容器に収納することができる。プラスチック製容器としては、ボトル容器や詰替え用のスタンディングパウチ等が挙げられる。スタンディングパウチとしては、例えば、特開2000-72181号公報に記載のものが挙げられるが、材質としては、内層に100~250μmの線状低密度ポリエチレン、外層に15~30μmの延伸ナイロンの二層構造又は15μmの延伸ナイロンを中間層、15μmの延伸ナイロンを外層にした三層構造のスタンディングパウチが保存安定性の点から好ましい。
本発明の繊維製品用処理剤組成物を使用する対象の繊維製品としては、特に限定されないが、例えば、Yシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ブラウス、チノパン、スーツ、スラックス、スカート、ジャケット、コート、ニット、ジーンズ、パジャマ、テーブルクロス、ランチョンマット、カーテン、クッション、座布団、ソファ、枕カバー、シーツ、ベッドパッド、枕、布団、ベッドカバー、毛布、マットレス、靴、トイレマット、バスマット、玄関マット、カーペット、ラグ、絨毯等が挙げられる。また、対象とする繊維製品の素材も、特に限定されないが、例えば、綿、ウール、麻等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、テンセル、ポリノジック等の再生繊維及びこれら各種繊維の混紡品、混織品、混編品等が挙げられ、その中でも、普段の手入れが困難なウール及びその混紡品において、本発明の組成物の効果が顕著に発揮される。
【実施例
【0019】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例において、成分配合量はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0020】
[(A)成分]
下記のA-1及びA-2を使用した。
・A-1:架橋型アクリル酸系高分子(Carbopol AQUA30 Lubrizol社製)
A-1は、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である。
・A-2:架橋型アクリル酸系高分子(Carbopol AQUA SF-1 Lubrizol社製)
A-2は、アクリル酸アルキル(C1~C4及びC8)、メタクリル酸アルキル(C1~C4及びC8)、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である。
比較例として下記のA-3及びA-4を使用した。
・A-3:キサンタンガム(ラボールガムGC-S DSP五協フード&ケミカル社製)
・A-4:ヒドロキシエチルセルロース(HEC SP600 ダイセル化学工業株式会社製)
【0021】
[(B)成分]
下記のB-1~B-3を使用した。
・B-1:FS Antifoam93(東レダウ製、シリコーンコンパウンド)
・B-2:KM-90(信越シリコーン製、シリコーンコンパウンド)
・B-3:KF-96A 100cs(信越シリコーン製、ジメチルポリシロキサン)
比較例として下記のB-4~B-6を使用した。
・B-4:SH3775M(東レダウ製、POE変性シリコーン)
・B-5:CF1188M(東レダウ製、POE変性シリコーン)
・B-6:BY-893(東レダウ製、アミノ変性シリコーン)
【0022】
[(C)成分]
下記のC-1及びC-2を使用した。
・C-1:VELVET UP(Givaudan社製)
・C-2:GREENBREEZE CAPS(Givaudan社製)
【0023】
[共通成分]
共通成分I
・メチルグリシンジ酢酸3ナトリウム「MGDA」(BASF社製):0.3%
・硫酸亜鉛(II)(関東化学株式会社製):0.3%
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ブラウノン RCW-40、青木油脂工業株式会社製):0.3%
・水酸化ナトリウム(pH調整剤):0.03%
・エタノール:10%
・下記表1で示される香料組成物:0.05%
【表1】
共通成分II
・ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド:0.2%
共通成分III
・ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート:0.2%
【0024】
[繊維製品用処理剤組成物の調製方法]
下記手順に従って、実施例1~15及び比較例1~7の組成物を調製した。
水、メチルグリシンジ酢酸3ナトリウム、硫酸亜鉛(II)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エタノール、表1で示される香料組成物を混合し、その後、(A)成分を混合し、十分に攪拌後、(B)成分、(C)成分、水酸化ナトリウムを混合させた。共通成分IIや共通成分IIIを配合する場合は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合するのと同じタイミングでそれぞれ配合した。
【0025】
[評価方法]
<保存安定性>
上記のとおり調製した繊維製品用処理剤組成物を軽量PSガラスビン(PS-No.11、田沼硝子工業所製)に100mL入れて密栓し、40℃条件下で1ヶ月間保管し、(B)成分(マイクロカプセル)の分散性を以下に示す3段階評価法により目視にて評価した。また、カプセル膜の観察は、光学顕微鏡BX51(OLYMPUS株式会社製)を用いて目視にて評価を行った。商品価値上、○以上を合格とした。結果を下記表2に示す。
≪評価基準≫
◎:香料カプセルの浮遊・沈降が認められない
○:香料カプセルの浮遊・沈降がほとんど認められない
×:香料カプセルの浮遊・沈降がはっきりと認められる
【0026】
<スプレー性(吐出性)>
カラーブロード(青、10cm×10cm)の試験布に対して、20cm離れたところから、上記のとおり調製した繊維製品用処理剤組成物をトリガースプレー(HYGIAスプレー、ライオン(株)製)を用いて、上記試験布の中心部に1回全引き噴霧した。噴霧した際の試験布への均一な噴霧のしやすさを、下記基準に従い評価者4名にて評価を行った。商品価値上、○以上を合格とした。結果を下記表2に示す。
≪評価基準≫
3点・・・試験布の濡れた部分の面積が80%以上
2点・・・試験布の濡れた部分の面積が50%以上80%未満
1点・・・試験布の濡れた部分の面積が20%以上50%未満
0点・・・試験布の濡れた部分の面積が20%未満
≪判定基準≫
◎:平均点が2.5点以上
○:平均点が2点以上2.5点未満
△:平均点が1点以上2点未満
×:平均点が1点未満
【0027】
<乾燥性>
ウールサージ布(15cm×10cm、2.5g)の試験布に対して、上記のとおり調製した繊維製品用処理剤組成物をディスペンサーポンプスプレー(スタイルガード しわもニオイもすっきりスプレー、ライオン(株)製)を用いて、上記試験布に20%o.w.f.となるように噴霧した。20℃、50%RHの恒温室内に吊り干しした状態で放置し、5分毎に重量を測定した。噴霧直後の重量(M)に対し、t分後の重量を(Mt)とし、下記式により乾燥性(K)を測定した。
(K)=(Mt)/(M)×100
測定結果を下記の評価基準に従って評価した。商品価値上、○以上を合格とした。結果を下記表2に示す。
≪評価基準≫
◎:(K)が30以下に達するまでに要する時間(t)が30分未満
○:(K)が30以下に達するまでに要する時間(t)が30分以上60分未満
△:(K)が30以下に達するまでに要する時間(t)が60分以上90分未満
×:(K)が30以下に達するまでに要する時間(t)が90分以上
【0028】
【表2】
表中、各成分の組成における数値は質量%を表す。