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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】複合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/48 20060101AFI20221221BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20221221BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B29C70/48
B29C70/06
B29C70/54
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019012789
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020121414
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 一行
(72)【発明者】
【氏名】塚崎 大和
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0139961(US,A1)
【文献】米国特許第06638466(US,B1)
【文献】特開2014-051014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0203186(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03653371(EP,A1)
【文献】特開昭55-121013(JP,A)
【文献】特開平03-292131(JP,A)
【文献】特開2012-131875(JP,A)
【文献】特開2017-013455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29C 43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の上に第1繊維基材部および第2繊維基材部を含む繊維基材を載置するステップと、
前記第1繊維基材部と前記第2繊維基材部とが接触する領域の一部に離型部材を配置するステップと、
前記第1繊維基材部と前記第2繊維基材部に含浸された樹脂を硬化させ、複合材を成形するステップと、
前記複合材を成形した後に、前記離型部材を除去するステップと、
前記離型部材を除去した後に、前記離型部材が除去された空間にシムを挿入するステップと、
前記シムが挿入された後に、前記複合材と前記シムとを締結部材により締結するステップと、
を含む複合材の製造方法。
【請求項2】
金型の上に第1繊維基材部および第2繊維基材部を含む繊維基材を載置するステップと、
前記第1繊維基材部と前記第2繊維基材部とが接触する領域の一部に離型部材を配置するステップと、
前記第1繊維基材部と前記第2繊維基材部に含浸された樹脂を硬化させ、複合材を成形するステップと、
前記複合材を成形した後に、前記離型部材を除去するステップと、
前記離型部材を除去した後に、前記離型部材が除去された空間に第3繊維基材部を配置するステップと、
前記第3繊維基材部が配置された後に、前記第3繊維基材部に樹脂を含浸および硬化させるステップと、
を含む複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金型の上に第1繊維基材部および第2繊維基材部を含む繊維基材を載置し、第1繊維基材部と第2繊維基材部に含浸された樹脂を加熱硬化させることで、複合材を成形することについて開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-172474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、樹脂は、加熱硬化した際に、硬化収縮し、加熱硬化した樹脂は、冷却した際に、熱収縮する。複合材の成形後、第1繊維基材部は、樹脂により第2繊維基材部と接続されるため、第1繊維基材部における樹脂の収縮率と、第2繊維基材部における樹脂の収縮率が異なると、複合材が意図せず変形するおそれがある。
【0005】
本発明は、複合材の変形を抑制することが可能な複合材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の複合材の製造方法は、金型の上に第1繊維基材部および第2繊維基材部を含む繊維基材を載置するステップと、第1繊維基材部と第2繊維基材部とが接触する領域の一部に離型部材を配置するステップと、第1繊維基材部と第2繊維基材部に含浸された樹脂を硬化させ、複合材を成形するステップと、複合材を成形した後に、離型部材を除去するステップと、離型部材を除去した後に、離型部材が除去された空間にシムを挿入するステップと、シムが挿入された後に、複合材とシムとを締結部材により締結するステップと、を含む。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の複合材の製造方法は、金型の上に第1繊維基材部および第2繊維基材部を含む繊維基材を載置するステップと、第1繊維基材部と第2繊維基材部とが接触する領域の一部に離型部材を配置するステップと、第1繊維基材部と第2繊維基材部に含浸された樹脂を硬化させ、複合材を成形するステップと、複合材を成形した後に、離型部材を除去するステップと、離型部材を除去した後に、離型部材が除去された空間に第3繊維基材部を配置するステップと、第3繊維基材部が配置された後に、第3繊維基材部に樹脂を含浸および硬化させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複合材の変形を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、航空機の概略斜視図である。
図2図2は、航空機の翼の一部を示した概略斜視図である。
図3図3は、航空機の翼の一部を示した概略縦断面図である。
図4図4は、本実施形態の複合材成形装置を説明するための図である。
図5図5は、従来の複合材が変形する問題点を説明するための図である。
図6図6は、本実施形態の繊維基材の構成を示す図である。
図7図7は、本実施形態の繊維基材の樹脂硬化後の状態を示す図である。
図8図8は、前翼桁およびリブがシムを介して締結部材により締結される状態を示す図である。
図9図9は、本実施形態の複合材の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、航空機1の概略斜視図である。図1に示すように、航空機1は、主翼3と、水平尾翼5と、垂直尾翼7(以下、これらを単に翼ともいう)を含んで構成される。図2は、航空機1の翼の一部を示した概略斜視図である。図2に示すように、航空機1の翼は、外板9と、ストリンガ11と、前翼桁13と、後翼桁15と、リブ17とを含んで構成される。
【0012】
外板9は、航空機1の翼の外殻をなす。外板9は、例えば、平板形状である。外板9は、翼の長手方向に沿って延在する。ストリンガ11は、外板9を補強する補強材として使用され、外板9における翼の内部に対応する領域に取り付けられる。ストリンガ11は、翼の長手方向に沿って延在する。ストリンガ11は、外板9に接続する接続部11aと、外板9から離隔する突起部11bとを備える。
【0013】
突起部11bと外板9との間には、中空部11cが形成される。ストリンガ11は、例えば、ハット型のハットストリンガや、波型のコルゲートストリンガである。図2では、ストリンガ11がコルゲートストリンガである例を示すが、これに限定されず、ストリンガ11は、ハットストリンガであってもよい。
【0014】
前翼桁13は、外板9に対し略直角に立設する。前翼桁13は、翼の内部に位置し、翼の前縁を支持する。前翼桁13は、例えば、平板形状である。前翼桁13は、翼の長手方向に沿って延在する。
【0015】
後翼桁15は、外板9に対し略直角に立設する。後翼桁15は、翼の内部に位置し、翼の後縁を支持する。後翼桁15は、例えば、平板形状である。後翼桁15は、翼の長手方向に沿って延在する。
【0016】
リブ17は、外板9に対し略直角に立設する。リブ17は、翼の内部に位置し、前翼桁13および後翼桁15を支持する。リブ17は、例えば、平板形状である。また、リブ17は、翼の長手方向に対し直交して配される。したがって、リブ17は、ストリンガ11、前翼桁13、および、後翼桁15が延在する方向に対し直交して配されることとなる。
【0017】
図3は、航空機1の翼の一部を示した概略縦断面図である。図3に示すように、リブ17の下端17aには、ストリンガ11と対向する位置に、複数の切り欠き部17bが形成される。リブ17の下端17aは、外板9と接続(接触)し、ストリンガ11と非接続(非接触)である。リブ17の側端17cは、前翼桁13および後翼桁15と接続し、前翼桁13および後翼桁15を連結する。
【0018】
外板9、ストリンガ11、前翼桁13、後翼桁15、および、リブ17は、複合材により構成される。本実施形態では、複合材は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass fiber reinforced plastics)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)である。複合材は、以下で説明する複合材成形装置100により成形される。
【0019】
図4は、本実施形態の複合材成形装置100を説明するための図である。複合材成形装置100は、複合材をVaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法により成形する。図4に示すように、複合材成形装置100は、成形型(金型)101と、フィルム材103と、シール材105と、繊維基材107と、治具109と、樹脂拡散メディア111と、樹脂供給部113と、樹脂排出部115とを備える。
【0020】
成形型101とフィルム材103との間には、空間Sが形成される。空間Sは、成形型101とフィルム材103との間に配されたシール材105により密閉される。空間S内には、繊維基材107と、樹脂拡散メディア111とが配される。
【0021】
繊維基材107は、成形型101の上に載置される。繊維基材107は、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維材が積層されて構成される。なお、繊維基材107は、繊維材に樹脂が含浸されたプリプレグであってもよい。
【0022】
繊維基材107は、外板9に対応する繊維基材部(以下、外板繊維基材部という)107aと、ストリンガ11に対応する繊維基材部(以下、ストリンガ繊維基材部という)107bと、前翼桁13に対応する繊維基材部(以下、前翼桁繊維基材部という)107cと、後翼桁15に対応する繊維基材部(以下、後翼桁繊維基材部という)107dと、リブ17に対応する繊維基材部(以下、リブ繊維基材部)107eとを含んで構成される。なお、以下では、リブ繊維基材部107eを第1繊維基材部ともいい、外板繊維基材部107a、前翼桁繊維基材部107c、および、後翼桁繊維基材部107dをまとめて第2繊維基材部ともいう。
【0023】
本実施形態では、外板繊維基材部107aは、前翼桁繊維基材部107cと一体的に形成されている。外板繊維基材部107aおよび前翼桁繊維基材部107cは、成形型101の上に載置される。また、ストリンガ繊維基材部107b、後翼桁繊維基材部107d、および、リブ繊維基材部107eは、外板繊維基材部107aの上に載置される。ただし、これに限定されず、外板繊維基材部107aは、前翼桁繊維基材部107cと別体に形成されてもよい。
【0024】
治具109は、外板繊維基材部107aとストリンガ繊維基材部107bとの間に配される。治具109は、外板9とストリンガ11の突起部11bとの間に形成される中空部11c(図2参照)と大凡等しい外形形状を備える。治具109は、ストリンガ11の成形後の突起部11b(図2参照)の形状を保持する。治具109の外形形状は、ストリンガ11の突起部11bの内面形状と大凡等しい。
【0025】
治具109は、図4中、奥行き方向に延在している。治具109は、外板繊維基材部107aの上に載置され、治具109の上には、ストリンガ繊維基材部107bが載置される。つまり、治具109は、外板繊維基材部107aとストリンガ繊維基材部107bとの間に配される。
【0026】
樹脂拡散メディア111は、繊維基材107の上に載置される。樹脂拡散メディア111は、例えば、ポリエチレン等のネットが用いられ、供給された樹脂を空間S内に均一に拡散する。
【0027】
樹脂供給部113および樹脂排出部115は、シール材105により密閉された空間Sに接続される。樹脂供給部113は、樹脂を貯蔵する樹脂供給タンク113aを備える。樹脂供給部113は、樹脂供給タンク113a内に貯蔵された樹脂を空間S内に供給する。
【0028】
樹脂排出部115は、空気を吸引して空間S内を真空状態にする真空ポンプ115aと、樹脂を貯蔵する樹脂排出タンク115bとを備える。真空ポンプ115aは、空間S内の空気および樹脂を吸引する。樹脂排出タンク115bは、空間S内から吸引された樹脂(余剰分の樹脂)を貯蔵(回収)する。
【0029】
本実施形態において、樹脂は、熱硬化性樹脂である。しかし、これに限定されず、樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよい。樹脂は、空間S内に供給されると、樹脂供給部113側(図4中、右側)から樹脂排出部115側(図4中、左側)に向かって流れる。治具109は、樹脂が流れる方向(以下、樹脂流動方向という)に沿って複数配される。治具109は、長手方向(延在方向)が、樹脂流動方向と交差(直交)する方向に沿うように配される。ただし、これに限定されず、治具109は、長手方向が樹脂流動方向と平行となるように配されてもよい。
【0030】
つぎに、複合材成形装置100を用いた複合材の製造方法について説明する。まず、ユーザは、成形型101の上に繊維基材107および治具109を載置する。
【0031】
つぎに、ユーザは、繊維基材107の上に樹脂拡散メディア111およびフィルム材103を被せ、繊維基材107の周囲を囲うように、フィルム材103と成形型101との間にシール材105を設ける。これにより、フィルム材103と成形型101との間に密閉された空間Sが形成され、空間S内に樹脂拡散メディア111、繊維基材107、および、治具109が収容される。
【0032】
その後、ユーザは、空間Sに樹脂供給部113および樹脂排出部115を接続させる。樹脂供給部113および樹脂排出部115が空間Sに接続されると、樹脂排出部115は、真空ポンプ115aを駆動させる。真空ポンプ115aは、空間S内の空気を吸引し、空間S内を真空状態にする。空間S内が真空状態になると、樹脂供給部113は、樹脂供給タンク113a内に貯蔵される樹脂を空間S内に供給する。
【0033】
空間S内に供給された樹脂は、樹脂拡散メディア111によって繊維基材107の全面に拡散される。樹脂拡散メディア111によって拡散された樹脂は、繊維基材107に含浸される。繊維基材107を含浸した樹脂の余剰分は、樹脂排出部115の樹脂排出タンク115bに排出される。
【0034】
繊維基材107に樹脂が含浸されると、複合材成形装置100は、不図示の加熱装置により樹脂を加熱させる。樹脂は、不図示の加熱装置により加熱されると硬化する。樹脂が硬化することにより、複合材(外板9、ストリンガ11、前翼桁13、後翼桁15、および、リブ17)が一体的に成形される。
【0035】
複合材が成形された後、治具109は、外板9とストリンガ11の間から引き抜かれる。これにより、図2に示すように、外板9とストリンガ11の突起部11bとの間には、中空部11cが形成される。
【0036】
このように、複合材は、樹脂が加熱硬化することにより成形される。しかし、樹脂は、加熱硬化した際に、硬化収縮し、加熱硬化した樹脂は、冷却した際に、熱収縮する。複合材の成形後、例えば、リブ繊維基材部107eは、樹脂により前翼桁繊維基材部107cおよび後翼桁繊維基材部107dと接続される。そのため、リブ繊維基材部107eにおける樹脂の収縮率と、前翼桁繊維基材部107cおよび後翼桁繊維基材部107dにおける樹脂の収縮率が異なると、複合材が意図せず変形するおそれがある。
【0037】
図5は、従来の複合材が変形する問題点を説明するための図である。図5(a)は、従来の複合材の成形前(すなわち、樹脂硬化前)の状態を示し、図5(b)は、従来の複合材の成形後(すなわち、樹脂硬化後)の状態を示している。図5(b)に示すように、リブ17は、樹脂が硬化収縮および熱収縮することで、図5(b)中、矢印方向に収縮(変形)している。これにより、リブ17の側端17cと樹脂を介して接続される前翼桁13および後翼桁15は、リブ17の収縮量(変形量)に応じて、リブ17と一体的に図5(b)中、矢印方向に変形する。
【0038】
その場合、前翼桁13(後翼桁15)とリブ17との間の接続部には、初期応力が発生し、複合材の強度低下を招く。そこで、本実施形態では、繊維基材107は、リブ繊維基材部(第1繊維基材部)107eと前翼桁繊維基材部(第2繊維基材部)107c、および、リブ繊維基材部(第1繊維基材部)107eと後翼桁繊維基材部(第2繊維基材部)107dとの間の少なくともいずれかに離型シート(離型部材)19を設ける。
【0039】
図6は、本実施形態の繊維基材107の構成を示す図である。図6に示すように、本実施形態の繊維基材107は、離型シート19を備える。離型シート19は、第1繊維基材部(すなわち、リブ繊維基材部107e)が、第2繊維基材部(すなわち、外板繊維基材部107a、前翼桁繊維基材部107c、および、後翼桁繊維基材部107d)と接触する領域の一部に配される。本実施形態では、離型シート19は、リブ繊維基材部107eと前翼桁繊維基材部107cとの間にのみ配される。リブ繊維基材部107eは、リブ繊維基材部107eと前翼桁繊維基材部107cとの間に離型シート19が配されることで、前翼桁繊維基材部107cと非接触状態となる。離型シート19の配置後、上述したように、複合材成形装置100(図4参照)を用いて、繊維基材107に樹脂を含浸させ、樹脂を硬化させる。
【0040】
図7は、本実施形態の繊維基材107の樹脂硬化後の状態を示す図である。図7に示すように、樹脂硬化後の複合材から離型シート19を取り外すと、リブ17と前翼桁13との間には、隙間(空間)SSが形成される。これは、樹脂の硬化収縮および熱収縮によりリブ17が前翼桁13から離隔する方向に収縮(変形)するためである。上述したように、前翼桁繊維基材部107cは、離型シート19によりリブ繊維基材部107eと非接触状態となっているため、リブ17の変形によらず前翼桁繊維基材部107cが配された位置を維持することができる。これにより、リブ17は、前翼桁13と非接続状態となる(前翼桁13から離隔する)。
【0041】
そのため、リブ17と前翼桁13との間には、初期応力が発生しなくなる。また、リブ17は、前翼桁13と非接続状態となるため、リブ17と後翼桁15との間(接続部)に発生する初期応力が低減される。このように、本実施形態では、リブ17が前翼桁13と非接続状態となるため、複合材の変形が抑制される。
【0042】
ただし、この場合、前翼桁13は、リブ17と非接続状態となるため、リブ17により保持されなくなる。そのため、複合材の強度が低下するおそれがある。したがって、本実施形態では、前翼桁13とリブ17との隙間SSに、シム21を配置している。さらに、締結部材23により、前翼桁13とリブ17とをシム21を介して締結させる。
【0043】
図8は、前翼桁13およびリブ17がシム21を介して締結部材23により締結される状態を示す図である。図8に示すように、シム21は、前翼桁13とリブ17の間の隙間SS(図7参照)に配置される。シム21は、前翼桁13とリブ17の間の隙間SSの形状と大凡等しい形状を有する。締結部材23は、シム21を介して前翼桁13とリブ17とを締結する。これにより、前翼桁13は、シム21を介してリブ17と締結され、複合材の強度が補強される。
【0044】
図9は、本実施形態の複合材の製造方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態の複合材の製造方法は、まず、図4に示すように、成形型101の上に繊維基材107を載置する(ステップS901)。
【0045】
つぎに、図6に示すように、リブ繊維基材部(第1繊維基材部)107eと前翼桁繊維基材部(第2繊維基材部)107cとの間に離型シート19を配置する(ステップS903)。そして、離型シート19が配された繊維基材107に樹脂を含浸させる(ステップS905)。
【0046】
その後、繊維基材107に含浸された樹脂を硬化させ、複合材を成形する(ステップS907)。複合材を成形した後、図7に示すように、複合材(前翼桁13とリブ17の間)から離型シート19を除去する(ステップS909)。
【0047】
離型シート19を除去した後、図8に示すように、離型シート19が除去されたリブ17と前翼桁13との間の隙間にシム21を挿入する(ステップS911)。シム21が挿入された後、複合材(前翼桁13およびリブ17)とシム21を締結部材23により締結する(ステップS913)。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、離型シート19は、第1繊維基材部(すなわち、リブ繊維基材部107e)と、第2繊維基材部(すなわち、外板繊維基材部107a、前翼桁繊維基材部107c、および、後翼桁繊維基材部107d)とが接触する領域の一部に配される。これにより、第1繊維基材部と第2繊維基材部とを一体的に成形しながら、複合材の変形を抑制することができる。また、離型シート19が除去された隙間にシム21を挿入し、複合材とシム21を締結部材23により締結するため、複合材の強度低下を抑制することができる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
例えば、図9に示す複合材の製造方法をコンピュータに実行させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0051】
上記実施形態では、離型シート19がリブ繊維基材部107eと前翼桁繊維基材部107cとの間に配される例について説明した。しかし、これに限定されず、離型シート19は、リブ繊維基材部107eと後翼桁繊維基材部107dとの間に配されてもよい。また、離型シート19は、リブ繊維基材部107eと前翼桁繊維基材部107cの間、および、リブ繊維基材部107eと後翼桁繊維基材部107dとの間の双方に配されてもよい。いずれにしても、リブ17と外板9が樹脂により一体成形されるように、離型シート19は、リブ繊維基材部107eと外板繊維基材部107aとの間の少なくとも一部を除く領域に配されればよい。
【0052】
上記実施形態では、リブ17と前翼桁13との間の隙間SSにシム21を挿入し、締結部材23により締結する例について説明した。しかし、これに限定されず、リブ17と前翼桁13との間の隙間SSに、新たな繊維基材(以下、隙間繊維基材部という)を配置し、隙間繊維基材部に樹脂を含浸および硬化させ、リブ17と前翼桁13とを連結するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、複合材の製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
19 離型シート(離型部材)
21 シム
23 締結部材
101 成形型(金型)
107c 前翼桁繊維基材部(第2繊維基材部)
107e リブ繊維基材部(第1繊維基材部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9