(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 58/46 20200101AFI20221221BHJP
D06F 58/02 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
D06F58/46
D06F58/02 Q
(21)【出願番号】P 2019017058
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】神沢 和則
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-254285(JP,A)
【文献】特開2011-010710(JP,A)
【文献】特開平10-146500(JP,A)
【文献】特開2010-082344(JP,A)
【文献】特開2005-073837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/00 - 58/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内の収容室に収容された衣類に対する洗濯運転及び乾燥運転を順に実行する運転制御装置を備える洗濯乾燥機において、
前記本体の周囲の室温を検出する室温センサと、
前記洗濯運転に用いられた水の水温を検出する水温センサとを具備すると共に、
前記運転制御装置は、前記室温センサの検出した室温又は前記水温センサの検出した水温のいずれか一方の温度で、乾燥運転の実行時間を
初期設定し、前記室温又は水温の他方の温度
と前記一方の温度とを比較して前記他方の温度が前記一方の温度より低い場合には前記他方の温度に基づいて前記実行時間を補正して、
前記乾燥運転の実行時間を確定させる洗濯乾燥機。
【請求項2】
前記運転制御装置は、前記室温又は前記水温の前記他方の温度と前記一方の温度とを比較して前記他方の温度が前記一方の温度より低くない場合には、前記初期設定に基づいて前記乾燥運転の実行時間を確定させる請求項1記載の洗濯乾燥機。
【請求項3】
前記運転制御装置は、前記洗濯運転の開始時における前記室温センサの検出した前記室温により前記乾燥運転の実行時間を初期設定する請求項1又は2記載の洗濯乾燥機。
【請求項4】
前記洗濯運転を、温水を用いて実行することが可能とされるものであって、
前記運転制御装置は、
前記洗濯運転に温水が用いられた場合には、
前記洗濯運転のうちすすぎ行程において、前記水温センサの検出した前記水温に基づいて、前記乾燥運転の実行時間の補正を行う請求項3記載の洗濯乾燥機。
【請求項5】
前記運転制御装置は、
前記洗濯運転及び
前記乾燥運転を2回繰り返して実行する場合には、2回目においては、
前記乾燥運転の実行時間を前記室温により
初期設定し、前記水温により前記実行時間を補正して、
前記乾燥運転の実行時間を確定させる請求項1から
4のいずれか一項に記載の洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばドラム式の洗濯乾燥機においては、制御回路により、衣類に対する洗濯運転及び乾燥運転を自動で実行するものが知られている(例えば特許文献1参照)。この洗濯乾燥機では、容量センシングによって検知された洗濯物の容量に加えて、サーミスタにより検知された最初の給水温度(水温)、或いは、サーミスタにより検出された周囲温度(室温)に基づいて、乾燥運転の所要時間が設定される。この場合、水温や室温が比較的高い場合には、衣類が乾きやすいため乾燥時間が短く設定され、水温や室温が比較的低い場合には、衣類が乾きにくいため乾燥時間が長く設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗濯乾燥機においては、温水を用いて洗濯運転を行えるものが供されてきており、また、洗濯乾燥機を設置した室内において、夏季に冷房を使用していたり、冬季に暖房を使用していたりする場合もある。このような場合、水温と室温との対応関係にずれが生じ、衣類の乾きやすさと適合しないケースも生じてくる。そのため、上記従来構成では、乾燥運転時間を必ずしも適切な時間で設定できるとは限らず、乾燥運転終了時の衣類の乾燥具合にばらつきが発生する。その結果、衣類の乾燥が十分になされなくて追加で乾燥運転を行う必要が生じたり、無駄に長い時間乾燥運転を行ってしまったりする虞があった。
【0005】
そこで、洗濯運転及び乾燥運転を自動で実行するものにあって、乾燥運転を適切な実行時間で実行することが可能な洗濯乾燥機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の洗濯乾燥機は、本体内の収容室に収容された衣類に対する洗濯運転及び乾燥運転を順に実行する運転制御装置を備えるものにおいて、前記本体の周囲の室温を検出する室温センサと、前記洗濯運転に用いられた水の水温を検出する水温センサとを具備すると共に、前記運転制御装置は、前記室温センサの検出した室温又は前記水温センサの検出した水温のいずれか一方の温度で、乾燥運転の実行時間を初期設定し、前記室温又は水温の他方の温度と前記一方の温度とを比較して前記他方の温度が前記一方の温度より低い場合には前記他方の温度に基づいて前記実行時間を補正して、前記乾燥運転の実行時間を確定させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態を示すもので、洗濯乾燥機の全体構成を概略的に示す縦断側面図
【
図3】制御装置が実行する乾燥時間決定の処理手順を示すフローチャート
【
図4】衣類の重量ランクと乾燥運転実行時間との関係を示す図
【
図5】第2の実施形態を示すもので、制御装置が実行する乾燥時間決定の処理手順を示すフローチャート
【
図6】第3の実施形態を示すもので、洗濯運転の行程に対する温度検出のタイミングを示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ヒートポンプを備えたドラム式(横軸形)の洗濯乾燥機に適用したいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下に述べる複数の実施形態において、共通する部分については、同一符号を付して、新たな図示や繰り返しの説明を省略することとする。
【0009】
(1)第1の実施形態
図1から
図4を参照しながら、第1の実施形態について述べる。まず、
図1を参照して、本実施形態に係る洗濯乾燥機1の全体構成について述べる。洗濯乾燥機1の本体2は、ほぼ矩形箱状をなし、本体2内には、円筒状の水槽3が後下がりに傾斜した状態で、図示しない弾性支持機構を介して支持されている。前記水槽3内には、衣類(洗濯物)が収容される収容室としての円筒状のドラム4が回転可能に支持されている。このドラム4は、前後方向に延び且つ水平からやや後下がりに傾斜した傾斜軸を中心に回転するように構成されている。
【0010】
このドラム4の周壁部及び後壁部には通水、通気用の多数の孔4aが形成され、また、ドラム4の周壁部の内面には、洗濯物撹拌用の図示しない複数個のバッフルが設けられている。詳しく図示はしないが、このドラム4の前面部には、衣類が出し入れされる円形の開口部が設けられており、前記水槽3の前面部には、前記開口部に連なる投入口3aが形成されている。本体2の前面には、衣類を出し入れするための出入口2aが形成され、その出入口2aを開閉する扉5が設けられている。前記出入口2aと投入口3aとの間がベローズ6を介して連通している。
【0011】
前記水槽3の後部には、駆動機構を構成する例えばアウタロータ形のブラシレスモータからなるドラムモータ8が配置されている。このドラムモータ8の回転軸の先端は、水槽3の背面を貫通して水槽3内に突出し、前記ドラム4の後部中心部に連結固定されている。このような構成により、ドラム4はドラムモータ8により直接的に回転駆動される。この場合、ドラム4は、後述する脱水行程や槽洗浄動作時においては、正転方向例えば正面から見て時計回り方向に連続回転されるようになっている。洗い行程やすすぎ行程においては、ドラム4は正転、反転が繰り返される。
【0012】
詳しく図示はしないが、前記本体2内の上部には、給水源としての水道からの水を前記水槽3内等に給水するための給水機構が設けられている。この給水機構は、周知のように、給水弁9(
図2にのみ図示)を備えると共に、洗剤収容部等を有する注水ケースなどを備えて構成されている。給水弁9の開放動作により、水道水が、注水ケースを介して水槽3に供給されるようになっている。尚、
図2に示すように、本体2の上面部には、操作パネル10が設けられ、また、本体2内には、洗濯乾燥機1の全体の制御を行う制御装置11が設けられている。本体2内の上部には、水槽3内の水位を検出するための水位センサ12(
図2にのみ図示)も設けられている。
【0013】
図1に示すように、前記水槽3の背面側の底部には、排水口15が形成されている。この排水口15には、機内排水ホース16の基端部が接続されている。前記本体2の底部を構成する台板13には、前側部に位置してフィルタユニット17が設けられている。詳しく図示はしないが、このフィルタユニット17は、円筒状のケース内にリントフィルタを収容して構成され、その前面開口部にキャップ18が開閉可能に装着されている。前記リントフィルタは、洗濯水中のリント(糸くず)を捕獲する機能を有する。前記本体2には、キャップ18の前方に位置して出し入れ用の開口部が設けられ、その開口部がカバー2bにより開閉可能に塞がれている。
【0014】
このフィルタユニット17の上部には、ホース接続口17aが設けられ、このホース接続口17aに、前記機内排水ホース16の先端部が接続されている。また、フィルタユニット17の下部には、排水弁19が接続され、この排水弁19の出口側に排水パイプ20が接続されている。この排水パイプ20の先端部は、台板13を通って機外に臨み、図示しない機外排水ホースに接続される。これにて、排水弁19が開放動作されると、水槽3内の洗濯水が、フィルタユニット17を通った後、排水パイプ20から排出される。
【0015】
前記フィルタユニット17の後端部には、循環ポンプ21が設けられている。この循環ポンプ21は、前記フィルタユニット17に臨んで吸入口を有しており、前記水槽3及びドラム4内の水を排水口15、機内排水ホース16及びフィルタユニット17を介して吸引する。この循環ポンプ21の上部には、吐出口21aが設けられ、この吐出口21aに送水ホース22の基端部が接続されている。この送水ホース22は、中間部が前記ベローズ6の周側方から上方へ延びており、その先端部が前記水槽3の投入口3aの上部に形成された噴水ノズル23に接続されている。
【0016】
前記噴水ノズル23は、洗濯水を前記ドラム4の内下部(厳密には正面から見てやや右寄りの下部)に向けて噴射するように構成されている。これにより、循環ポンプ21が駆動されると、前記水槽3内の洗濯水が、排水口15、機内排水ホース16、フィルタユニット17及び送水ホース22を通って、噴水ノズル23からドラム4内にシャワー状に放水される。洗濯水が前記フィルタユニット17を通る際に、リントフィルタにより比較的大きなリントが捕獲されるようになっている。
【0017】
前記フィルタユニット17の前方上部には、エアトラップ24が設けられている。詳しく図示はしないが、このエアトラップ24と前記水位センサ12とが、エアチューブ25によって接続されている。これにて、水位センサ12により、前記水槽3内の水位が、前記機内排水ホース16、フィルタユニット17、エアトラップ24及びエアチューブ25を介して検出される。
【0018】
一方、
図1に示すように、前記水槽3には、前部の上部右寄り部位に、空気を排出する排気口27が設けられていると共に、背面部の上部左寄り部位に乾燥風を供給するための給気口28が設けられている。そして、本体2内部には、ドラム4内に乾燥風(温風)を循環供給して衣類の乾燥運転を実行するための温風供給機構29が設けられている。
【0019】
本実施形態では、温風供給機構29は、水槽3の外部に位置して、循環風路30を備えている。この循環風路30の入口は、水槽3の前記排気口27に接続され、循環風路30の出口が前記給気口28に接続されている。温風供給機構29は、循環風の除湿及び加熱を行って乾燥風を生成するヒートポンプ31を備えている。これと共に、前記排気口27から排出された空気を、循環風路30内を矢印A方向に循環させながら前記給気口28から水槽3ひいてはドラム4内に供給する送風ファン26(
図2参照)を備えている。
【0020】
具体的には、前記循環風路30は、上部ダクト32と、後部排気ダクト33と、ヒートポンプダクト34と、給気ダクト35とを備えている。そのうち上部ダクト32は、前端部が前記排気口27に接続され、後端部が後部排気ダクト33の上端部に接続されている。尚、上部ダクト32の排気口27との接続部分は、ゴム等の可撓性を有する材料から蛇腹状の円筒状に構成されている。上部ダクト32内には、乾燥風から糸くずを捕獲するための周知のユニット式のリントフィルタ36が着脱可能に設けられている。
【0021】
尚、上部ダクト32の後部寄り部分の上端部には、上部ダクト32を通ってきた空気(水槽3内の空気)を、循環風路30外へ排出するための排気口44が設けられている。この排気口44は、本体2の上面に設けられた外側排気口45に連通している。前記排気口44部分には、排気ダンパ46が開閉可能に設けられている。この排気ダンパ46は、例えばモータを駆動源として動作され、後述の制御装置11(
図2参照)により開閉制御されるようになっている。
【0022】
前記後部排気ダクト33は、水槽3の後方を下方に延び、その下端がヒートポンプダクト34の基端部に接続されている。ヒートポンプダクト34は、本体2内の底部後寄り部位を右左方向に延び、その先端側に前記送風ファン26が設けられている。詳しく図示はしないが、送風ファン26のファンケーシングの出口部に、前記給気ダクト35の下端部が接続されている。給気ダクト35は、本体2内の左側の水槽3の後方を上方に延び、その先端部(上端部)が前記給気口28に接続されている。
【0023】
図1に一部のみ示すように、前記ヒートポンプダクト34内には、ヒートポンプ(冷凍サイクル)31を構成する蒸発器37及び凝縮器が配置されている。前記ヒートポンプ31は、圧縮機38と、凝縮器と、減圧手段たる絞り弁と、前記蒸発器37とを、冷媒配管により閉ループ状に接続して構成されている。ヒートポンプ31の内部には、所要量の冷媒が封入され、冷媒配管を循環する。このとき、凝縮器が乾燥風を加熱する加熱手段として機能し、また、蒸発器37が乾燥風から湿気を除去する除湿手段として機能する。
【0024】
このヒートポンプ31は、乾燥運転時において、圧縮機38が駆動されることにより、圧縮機38から吐出された気体冷媒が、凝縮器に流入し、該凝縮器における熱交換により凝縮されて液体冷媒とされる。凝縮器から流出した液体冷媒が絞り弁によって膨張させて霧状とされ、その霧状の冷媒が、蒸発器37に流入される。そして、蒸発器37において、外気との熱交換により冷媒が気化され、その気体冷媒が圧縮機38に戻される。圧縮機38にて冷媒が圧縮されて高温、高圧とされて吐出されるという循環が行われる。
【0025】
このヒートポンプ31の駆動と共に、送風ファン26が駆動されることにより、矢印Aで示すように、水槽3(ドラム4)内の空気が、排気口27から上部ダクト32、後部排気ダクト33を通ってヒートポンプダクト34に至る。このとき、空気が上部ダクト32内を通る際に、リントフィルタ36により、空気に含まれていたリント(糸くず)が捕獲される。
【0026】
そして、後部排気ダクト33を通った空気は、ヒートポンプダクト34内を流れて蒸発器37及び凝縮器を順に通った後、給気ダクト35に流れ、給気口28及び孔4aを通ってドラム4内に供給されるという循環が行われる。この空気の循環により、水槽3(ドラム4)内の衣類から湿気を奪って多量の蒸気を含んだ空気が、ヒートポンプダクト34内の蒸発器37部分を通って冷却されることにより、蒸気が凝縮(あるいは昇華)されて除湿され、その除湿空気が凝縮器部分を通ることにより加熱されて乾いた温風となり、再びドラム4内に供給され、衣類の乾燥に供されるようになる。
【0027】
尚、ヒートポンプ31や循環風路30の要部には、冷媒の温度や乾燥風の温度を検出するための複数個の温度センサ群39(
図2参照)が設けられている。後述する制御装置11は、ヒートポンプ31及び送風ファン26を駆動すると共に、前記ドラムモータ8を制御してドラム4を一方向に回転することにより、乾燥運転を実行する。このとき、制御装置11は、温度センサ群39の検出温度等に基づいて、ヒートポンプ31や送風ファン26を駆動制御するようになっている。
【0028】
さて、
図2は、上記した制御装置11を中心とした、洗濯乾燥機1の電気的構成を示している。前記制御装置11は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータを主体として構成され、洗濯乾燥機1全体を制御して洗濯運転及び乾燥運転の各行程を実行する。このとき、この制御装置11は、前記操作パネル10からの操作信号が入力されると共に、操作パネル10の各表示部の表示を制御する。制御装置11には、前記水位センサ12及び温度センサ群39の検出信号が入力される。
【0029】
また、制御装置11には、ドラムモータ8に流れる電流を検出する電流センサ40が接続され、電流検出信号が入力される。このとき、制御装置11は、洗濯運転の開始時において、ドラム4を短時間回転させる布量検知動作(重量センシング)を実行し、その際の電流センサ40の検出電流値(トルク成分に対するq軸電流値)に基づいて、水分を含まない状態のドラム4内の衣類の布量(給水前の衣類の重量)を判定する。この場合、
図4に示すように、衣類の布量は、0.9kg以下がランク1、1,0kg以上1.9kg以下がランク2というように、重量ランク1~7の7段階で重量判定がなされる。
【0030】
そして、本体2には、本体2の周囲即ち設置場所の室温を検出する室温センサ41が設けられていると共に、洗濯運転時に水槽3内に給水された水の水温を検出する水温センサ42が設けられている。これら室温センサ41及び水温センサ42は、例えば共にサーミスタから構成される。これら室温センサ41及び水温センサ42の検出信号は、制御装置11に入力される。本実施形態では、
図1に示すように、前記室温センサ41は前記台板13部分に取付けられている。また、前記水温センサ42は排水口15の出口側に設けられている。
【0031】
図2に示すように前記、制御装置11は、前記ドラムモータ8を駆動制御すると共に、循環ポンプ21を制御し、前記給水弁9、排水弁19の開閉を制御する。また、ヒートポンプ31、送風ファン26、排気ダンパ46を制御する。以上の構成により、制御装置11は、操作パネル10におけるユーザのコースの設定操作等に応じて、各センサからの入力信号や予め記憶された制御プログラムに基づいて、洗濯乾燥機1の各機構を制御する。これにて、制御装置11は、例えば周知の洗い、すすぎ、脱水の各行程からなる洗濯運転、更には乾燥運転を実行する。従って、制御装置11が運転制御装置として機能する。
【0032】
このとき、本実施形態では、操作パネル10にて洗濯運転後に引続き乾燥運転を行うコースが選択された場合には、制御装置11は、そのソフトウエア構成(制御プログラムの実行)により、乾燥運転について次のような制御を行う。即ち、制御装置11は、前記室温センサ41の検出した室温又は前記水温センサ42の検出した水温のいずれか一方の温度で、乾燥運転の実行時間を暫定的に初期設定し、前記室温又は水温の他方の温度で前記実行時間を補正して、最終的な乾燥運転の実行時間を確定させる。この場合、制御装置11には、
図4に示すような、乾燥運転の実行時間テーブルが記憶されている。
【0033】
具体的には、次の作用説明で詳述するように、本実施形態では、制御装置11は、室温により乾燥運転の実行時間を暫定的に初期設定し、水温により実行時間を補正して、最終的な乾燥運転の実行時間を確定させる。この場合、乾燥運転の実行時間は、衣類の重量ランクと、室温センサ41により洗濯運転開始時に検出された室温とに基づいて、初期設定される。そして、前記室温と、水温センサ42により洗い行程時に検出された水温とが比較され、水温が室温以下である場合には、その水温に基づいて、乾燥運転の実行時間が補正され、最終的な乾燥運転の実行時間が確定されるようになっている。室温が水温よりも高い場合には、最初に設定された実行時間がそのまま確定される。
【0034】
次に、上記構成の洗濯乾燥機1の動作について、
図3及び
図4も参照して説明する。今、ユーザが、衣類に対する洗濯運転及び乾燥運転を順に実行させたい場合、ドラム4内に衣類を投入し、操作パネル10において洗濯乾燥運転のコースを選択設定し、運転をスタートさせる。すると、制御装置11は、以下のように各機構を制御し、洗濯及び乾燥の運転を実行する。即ち、洗濯運転の開始時には、ドラム4内の衣類(乾布)の布量判定が行われ、布量判定に基づいて水位や時間などが決定され、洗い、すすぎ、脱水の各行程が実行される。そして、洗濯運転が終了すると、引続き、乾燥運転が実行される。
【0035】
図3のフローチャートは、洗濯運転及び乾燥運転を順に実行するコースにおける、制御装置11が実行する乾燥工程の実行時間の決定の処理手順を示している。即ち、ステップS1では、室温センサ41により、洗濯運転開始時における室温の検出が行われる。次のステップS2では、検出された室温及びドラム4内の布量に基づいて、乾燥運転の実行時間が初期設定される。このステップS2における、乾燥時間の設定は、布量検知により判定された重量ランクと、例えば6段階に区分された室温とに基づいて、
図4に示すテーブルを参照することに基づいて行われる。
【0036】
上記した室温のランクは、5℃未満がランクA、5℃以上10℃未満がランクB、10℃以上15℃未満がランクC、15℃以上20℃未満がランクD、20℃以上25℃未満がランクE、25℃以上がランクFとされる。この場合、布量が多いほど、乾燥時間が長く設定され、また、室温が低いほど、乾燥時間が長く設定される。一例をあげると、重量ランク4で、室温が22℃つまりランクEの場合には、180分に設定される。同じ布量で、室温が13℃つまりランクCであると、210分に設定される。
【0037】
図3に戻って、次のステップS3では、水温センサ42による、最初の給水時における水温検知がなされる。ステップS4では、検出した水温が室温より小さいかどうかが判断される。室温が水温以上である場合には(ステップS4にてNo)、次のステップS5にて、乾燥運転の実行時間の補正は行われず、ステップS2で室温に基づいて初期設定された時間が、最終的な実行時間とされる。
【0038】
これに対し、水温が室温より小さかった場合には(ステップS4にてYes)、次のステップS6にて、水温による乾燥運転の実行時間の補正、この場合、
図4のテーブルの水温のランクに基づく、乾燥運転の実行時間の上書きが行われる。例を挙げると、重量ランク4で、室温が22℃つまりランクEであっても、水温が例えば9℃つまりランクBであると、乾燥運転の実行時間が260分と、より長くなるように補正(上書き)される。このとき、乾燥運転の実行時間が、初期設定の時間よりもやや長くなるように補正される。このようにして、乾燥運転の実行時間が最終的に確定され、洗濯運転後の乾燥運転では、確定された実行時間で乾燥運転が実行される。
【0039】
ここで、例えば、夏季において、気温が高い場合には室内の温度も高いが(例えば35℃)、水道水の温度はその室温より低くなる(例えば28℃)。冬季においては、室温が低くなり(例えば15℃)、水道水の温度も低くなる(例えば10℃)。この冬季に、室内でエアコン(暖房)を使用している場合には、室温がより高くなり(例えば25℃)、室温と水温との温度差がより大きくなる。この場合、水温が低く室温との温度差が大きい場合と、或いは、水温そのものの値が例えば10℃以下というように十分に低い場合には、冬季であって乾燥に時間がかかる状態であることが予測されるので、乾燥運転の実行時間をより長くする方向に補正することにより、より適切な補正が可能となる。
【0040】
このような本実施形態によれば、室温センサ41及び水温センサ42を備え、制御装置11は、洗濯運転及び乾燥運転を連続して自動で実行させる場合に、室温で暫定的に乾燥運転の実行時間を設定し、水温で補正して最終的な乾燥実行時間を確定させる構成とした。これにより、室温又は水温の一方のみを用いて乾燥運転の実行時間を制御する場合と比べて、より適切な実行時間で乾燥運転を実行することが可能となる。特に本実施形態では、室温で暫定的に乾燥運転の実行時間を初期設定し、水温が室温よりも低い場合には、水温で補正して最終的な乾燥実行時間を確定させるようにした。この結果、水温が低い場合における乾燥運転の実行時間を長くすることにより、より適切な乾燥運転を行うことが可能となる。
【0041】
(2)第2、第3の実施形態、その他の実施形態
図5は、第2の実施形態を示すものであり、以下、上記第1の実施形態と異なる点について述べる。即ち、
図5のフローチャートは、洗濯運転及び乾燥運転を順に実行するコースにおける、運転制御装置としての制御装置11が実行する乾燥工程の実行時間の決定の処理手順を示している。この第2の実施形態では、水温センサ42の検出した水温により乾燥運転の実行時間を暫定的に初期設定し、室温センサ41の検出した室温により、その実行時間を補正して、最終的な乾燥運転の実行時間を確定させるようにしている。また、図示はしないが、本実施形態では、洗濯乾燥機1には、温水生成装置が設けられており、温水を用いて洗濯運転(主として洗い行程)を実行することが可能とされている。
【0042】
図5において、まずステップS11では、水温センサ42による、最初の給水時における水温検知がなされる。次のステップS12では、検出された水温及びドラム4内の布量に基づいて、乾燥運転の実行時間が初期設定される。このステップS12における、乾燥時間の設定は、布量検知により判定された重量ランクと、水温のランクとに基づいて、やはり
図4に示すテーブルを参照することに基づいて行われる。次のステップS13では、室温センサ42による室温検知がなされる。ステップS14では、検出した室温が水温より小さいかどうかが判断される。
【0043】
室温が水温以上である場合には(ステップS14にてNo)、次のステップS15にて、乾燥運転の実行時間の補正は行われず、ステップS12で水温に基づいて初期設定された時間が、最終的な実行時間とされる。これに対し、室温が水温より小さかった場合には(ステップS14にてYes)、次のステップS16にて、室温による乾燥運転の実行時間の補正、この場合、
図4のテーブルの室温のランクに基づく、乾燥運転の実行時間の上書きが行われる。例を挙げると、重量ランク4で、水温が例えば23℃つまりランクEである場合には、乾燥運転の実行時間が200分と初期設定されるが、室温が15℃つまりランクDであると、乾燥運転の実行時間が195分に補正(上書き)される。
【0044】
ここで、例えば夏季においては、エアコン(冷房)が使用されると外気温(例えば35℃)に比べて室内の温度が低くなる(例えば25℃)。しかし、水道水の温度はエアコンの影響を受けないため(例えば28℃)、高いままとなり、室温と水温との上下関係が逆転する。また、特に冬季において、洗濯運転に水道水でなく温水を用いた場合には、室温よりも水温の方が高くなることが考えらえる。このように、水温が比較的高い場合には、室温が低ければ乾燥に長い時間がかかる等、乾燥の仕上がり具合を左右するのはむしろ室温となると考えらえる。
【0045】
この結果、第2の実施形態によれば、室温が水温よりも低い場合には、水温により乾燥運転の実行時間を暫定的に初期設定し、室温で補正して最終的な乾燥実行時間を確定させることにより、より適切な乾燥運転を実行することができる。特に本実施形態では、洗濯運転を温水により行うことを可能としたものにあって、冬季などに、室温よりも温度が高い温水を利用して洗濯運転(洗いのみ温水)を実行した場合に、その分、衣類の温度が比較的高い状態で、乾燥運転を開始することが考えられる。従って、水温により乾燥運転の実行時間を暫定的に初期設定し、室温による補正を行うことにより、より適切な乾燥運転を実行することができる。
【0046】
図6は、第3の実施形態を示すものであり、洗濯運転における各行程と、室温及び水温の検出タイミングとの関係を示している。この第3の実施形態が上記第2の実施形態と異なる点は、水温センサ42による水温検出が、洗濯運転のうち洗い行程において実行されると共に、すすぎ行程においても実行されるように構成されている。そして、制御装置11は、上記第2の実施形態と同様に、洗い行程において検出した水温及び室温に基づいて、乾燥運転の実行時間を設定した後、すすぎ行程において水温センサ42の検出した水温に基づいて、乾燥運転の実行時間の補正(上書き)を行う。
【0047】
これによれば、冬季などに、室温よりも温度が高い温水を利用して洗濯運転を実行する場合に、すすぎ行程では水温の低い水道水を利用した場合と、すすぎ行程も温水も用いて実行した場合とで、乾燥運転開始時に衣類の温度が異なるので、適切な乾燥時間も異なってくる。従って、この第3の実施形態によれば、すすぎ行程における水温によって、補正を行うように構成することにより、より適切な乾燥運転を実行することが可能となる。特に、最終すすぎ時の水温に基づいて補正を行うことにより、乾燥行程開始時の衣類の温度により近い温度を検知でき、効果的となる。
【0048】
尚、図示はしないが、その他の実施形態として、以下のように構成することもできる。即ち、運転制御装置としての制御装置11を、洗濯運転及び乾燥運転を実行するコースを、2回繰り返して実行する場合には、2回目において、乾燥運転の実行時間を室温により暫定的に初期設定し、水温により実行時間を補正して、最終的な乾燥運転の実行時間を確定させるように構成しても良い。これによれば、1回目の乾燥運転終了後は、雰囲気温度が高くなっていることが予測されるため、室温により、乾燥運転の実行時間を設定しただけでは、乾燥時間が必要な時間よりも短くなる虞がある。従って、水温により実行時間を補正して、最終的な乾燥運転の実行時間を確定させることにより、より適切な乾燥運転を実行することが可能となる。
【0049】
図3、
図5に示した乾燥運転の実行時間の補正は、最初の給水時でなく、すすぎ行程や脱水行程における水温や室温の検出に基づいて行うようにしても良い。上記実施形態では、乾燥運転の実行時間の補正の手法として、
図4のテーブルに従って実行時間を上書きするように構成したが、補正の手法としては、例えば、水温(室温)の値そのものや水温と室温の温度差に基づいて、元の実行時間にプラス10分等の補正値を加えるといった方法も可能である。
図4のテーブルに示した乾燥運転の実行時間などの具体的数値についても、一例を示したに過ぎず、様々な変更が可能であることは勿論である。衣類の重量のランク分けの具体的手法や、室温や水温のランク分けの具体的手法(数値や段階)等についても、様々な変形例が考えられる。
【0050】
また、上記第2、第3の実施形態では、温水生成装置を備えたものとしたが、洗濯運転に使用する温水には、温水生成機能により生成される温水は勿論、給湯器からの湯や、ポンプでくみ上げた風呂水なども含む。さらに、洗濯乾燥機のハードウエア構成などについても様々な変更が可能である。例えば、水温センサを給水機構部分に設けたり、室温センサを本体の上部に設けたりする等、水温センサや室温センサを設ける位置としても様々な変更が可能である。ヒートポンプを備えるものとしたが、温風生成用のヒータを備えものでも良い。その他、上面が開口した円筒状の収容室(洗濯槽)を有する縦型の洗濯乾燥機であっても、同様に実施できることは勿論である。
【0051】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
図面中、1は洗濯乾燥機、2は本体、3は水槽、4はドラム(収容室)、10は操作パネル、11は制御装置(運転制御装置)、27は排気口、28は給気口、29は温風供給機構、31はヒートポンプ、41は室温センサ、42は水温センサを示す。