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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20221221BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F25D11/00 101A
F25D23/00 302M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019024468
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020133940
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(72)【発明者】
【氏名】山下 隆典
(72)【発明者】
【氏名】山岸 達矢
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-221160(JP,A)
【文献】特開2008-292134(JP,A)
【文献】特開2001-336871(JP,A)
【文献】特開2007-333324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保存物を貯蔵する貯蔵室と、
前記貯蔵室の背面側に設けられ、冷却板を含み、前記冷却板を冷却することにより前記貯蔵室に自然対流を生じさせる冷却部と、
イオンを発生するイオン発生装置と、
前記貯蔵室の天面に設けられ、前記イオン発生装置から前記冷却部に向かう前記自然対流を規制する仕切り部と、を備え
前記仕切り部は、前記貯蔵室の天面において、前記冷却部が設けられた前記貯蔵室の背面側と反対側である正面側を向く開口部を有し、
前記仕切り部は、前記自然対流する冷気の一部を前記開口部から取り込み、かつ前記開口部から取り込んだ冷気と前記イオンとを前記開口部から放出する、冷蔵庫。
【請求項2】
前記仕切り部は、前記イオン発生装置から前記冷却部に向かう前記自然対流の方向を、前記自然対流とは逆方向に変更する、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記仕切り部は、前記イオン発生装置を収納する、請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記仕切り部は、前記開口部と前記イオン発生装置との間に、前記自然対流と略直交する向きに膨らんだ空間を有する、請求項3に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、貯蔵室を構成する金属製の内ケースを、ペルチェ素子で冷却する冷蔵庫が開示されている。そして、特許文献1における冷蔵庫においては、この貯蔵室における内ケース内にイオンを放出するイオン発生装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-61751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、イオン発生装置で発生したイオンは、金属に引き寄せられやすく、金属に接触すると消滅してしまう性質を持っている。特許文献1における冷蔵庫においては、金属製の内ケースにイオンを放出する構成となっているため、イオンが金属製の内ケースに接触しやすく、イオンの消滅が多くなり、イオンを内ケース内に拡散させることが困難になり得る。
【0005】
そこで、本発明の一態様は、貯蔵室内に拡散させたイオンの減少を低減することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の冷蔵庫は、保存物を貯蔵する貯蔵室と、冷却板を含み、前記冷却板を冷却することにより前記貯蔵室に自然対流を生じさせる冷却部と、イオンを発生するイオン発生装置と、前記イオン発生装置から前記冷却部に向かう前記自然対流を規制する仕切り部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の一例を示す断面図である。
図2図1の冷蔵庫におけるイオン発生装置およびホルダを拡大した断面図である。
図3図1の冷蔵庫におけるイオン発生装置およびホルダを取り外して上方から見た平面図である。
図4】イオン発生装置の別の一例を示す断面図である。
図5】冷蔵庫の別の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、本明細書では、それぞれの実施の形態における冷蔵庫において、扉が設けられる側を「前面側」とし、その反対側を「背面側」とする。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態における冷蔵庫の一例を示す縦断面図である。図2は、本冷蔵庫におけるイオン発生装置およびホルダを拡大した断面図である。図3は、本冷蔵庫におけるイオン発生装置およびホルダを取り外して上方から見た平面図である。本実施の形態では、冷蔵庫の一例として、直冷式の冷蔵庫100を示している。すなわち、冷蔵庫100は、冷気を強制的に循環させるファン等が設けられておらず、冷気の自然対流により庫内を冷却するように構成されている。
【0010】
冷蔵庫100は、図1に示すように、例えば、前面が開放された筐体110と、筐体110の前面を閉塞する扉120とにより外郭を形成している。
【0011】
筐体110には、例えば、貯蔵室130、冷却部140、イオン発生装置150、ホルダ(仕切り部)160が設けられている。
【0012】
貯蔵室130は、例えば、筐体110の内部に設けられ、扉120で閉塞された空間であり、飲食物等が保存される。この貯蔵室130には、例えば、上方が開口した、飲食物等を収納する収納ケース131が設置されている。この収納ケース131は、例えば、扉120を開けた際に、前面側に引き出すことにより、収納された飲食物等を取り出すことができる。貯蔵室130は、筐体110および扉120に設けられた発泡ウレタン等の断熱材により断熱され、貯蔵室130内の温度が保たれるようになっている。
【0013】
冷却部140は、例えば、冷却板141、ペルチェ素子142、放熱部143を含み、貯蔵室130の内部を冷却する。この冷却部140は、貯蔵室130の内部の空気を冷却することにより冷気を生成し、この冷気により、例えば、図1の矢印a1、a2に示す自然対流を貯蔵室130の内部に生じさせる。
【0014】
ペルチェ素子142は、冷却板141および放熱部143に伝熱可能に接合されている。ペルチェ素子142に電源が供給されると、ペルチェ効果によって、ペルチェ素子142の吸熱面に接合された冷却板141を冷却し、ペルチェ素子142の放熱面に接合された放熱部143から外部に放熱する。なお、冷却部140は、上記構成に限定されるものではなく、例えば、冷媒を流通させた冷媒管を蛇行させるように冷却板141に沿わせるように設けて、冷凍サイクル装置などにより冷却板141を冷却するように構成してもよい。
【0015】
冷却板141は、例えば貯蔵室130の内面における背面側を覆うように設けられ、貯蔵室130の空気を冷却し、自然対流を生じさせる。例えば、背面側で冷却された冷気は、密度が高いため、貯蔵室130の背面側で下降する。そして、下降した冷気は、貯蔵室130の底面側を前面側に向かって流れ、次第に暖まりながら、前面側を上昇する(図1の矢印a1)。前面側では、冷却しておらず、また、扉120と筐体110の前面とを閉塞するパッキンからの熱漏洩などがあるため、背面側よりも温度が高くなる傾向があり、背面側よりも空気の密度が低くなって空気が上昇する。さらに、上昇した空気は、天面側を背面側に向かって流れる(図1の矢印a2)。背面側に到達した冷気は、再び背面側の冷却板141により冷却される。このように、背面側のみを冷却することにより、背面側に下降する空気の流れ、前面側に上昇する流れを意図的に作り出すことにより、自然対流を生じさせる。この自然対流により、貯蔵室130内部を、冷気を循環させ、冷却することができる。冷却板141は、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅等の金属などの熱伝導に優れた材料より形成される。冷却板141は、例えば、貯蔵室130の背面の全面に設けてもよく、また、冷却板141の上部を貯蔵室130側に傾斜させるように設けることが好ましい。これにより、貯蔵室130の天面の空気を広い面積の冷却板141で冷却することができ、貯蔵室130の天面に暖かい空気が滞留することを防いで、自然対流をより生じさせやすくなる。さらに、たとえ冷却板141に露が生じたとしても、傾斜により冷却板141に伝わせることにより、飲食物等に冷却板141から露が落ちることを抑制することができる。
【0016】
イオン発生装置150は、例えば、図1~3に示すように、高圧電圧の印加によりイオンを発生する電極151を有する。この電極151は、例えば、交流波形又はインパルス波形から成る電圧の印加によって放電する。具体的には、例えば、電極151の印加電圧が正電圧の場合は主としてH(HO)から成るプラスイオンを発生し、負電圧の場合は主としてO (HO)から成るマイナスイオンを発生する。ここで、n、mは任意の自然数である。H(HO)及びO (HO)は空気中の浮遊菌や臭気成分の表面で凝集してこれらを取り囲む。そして、上記プラスイオンとマイナスイオンとの衝突により活性種である[・OH](水酸基ラジカル)やH(過酸化水素)を微生物等の表面上で凝集生成して浮遊菌や臭気成分を破壊する。従って、プラスイオン及びマイナスイオンを発生して放出することにより、貯蔵室130における殺菌及び脱臭を行うことができる。なお、イオン発生装置150は、貯蔵室130における殺菌、脱臭ができる活性種を発生させるものであればよく、例えば、プラスイオンのみ発生するもの、マイナスイオンのみを発生するものであってもよい。また、イオン発生装置150は、例えば、貯蔵室130の天面における冷却板141の前面側寄り、特に中央付近に設けられることが好ましい。
【0017】
ホルダ(仕切り部)160は、例えば、図1~3に示すように、イオン発生装置150で発生したイオンが流れる方向を規制する。より具体的には、ホルダ160は、例えば、イオン発生装置150を収納し、例えば、自然対流の方向とは逆方向(自然対流と対向する方向、例えば、本実施形態においては前面方向)に開口する開口部161を有する。そして、開口部161から、イオン発生装置150で発生したイオンを、自然対流の方向(矢印a3)と対向する方向(矢印b1)に放出する。なお、矢印b1で示される空気の流れは、矢印a3で示される自然対流する冷気の一部が、開口部161から取り込まれ、イオン発生装置150で方向が変更され、開口部161から放出される流れでもある。このように、自然対流を利用することにより、ファン等を設けることなく、イオン発生装置150で発生したイオンを開口部161から自然対流と逆方向に向けて放出することができる。上記では、イオン発生装置150で自然対流する冷気の方向が変更されと説明したが、イオン発生装置150はホルダ160に収納されているため、イオン発生装置150もホルダ160の一部とみなすことができる。
【0018】
ここで、上記冷却部130により生じる自然対流およびイオン発生装置150で発生したイオンの流れについて、特に図1図2を参照して、より詳細に説明する。
【0019】
イオン発生装置150およびホルダ160を設置した貯蔵室130の天面付近では、上述の通り、前面側から背面側に向かう自然対流が生じている。本実施形態においては、矢印b1で示されるように開口部161から放出されたイオン155は、その自重により下方に落ちようとする。しかしながら、貯蔵室130では自然対流が生じているため、例えば、矢印a2、矢印a3で示される自然対流により、背面側方向に押し戻される。この自然対流により、イオン155は、矢印b2で示されるように、貯蔵室130の背面側方向に押し戻されながら、収納ケース131に拡散されながら落ちていく。これにより、貯蔵室130、特に収納ケース131に、イオンを効率良く拡散させることができ、貯蔵室130、収納ケース131を殺菌、脱臭することができる。
【0020】
本実施形態によれば、自然対流に乗ったイオンが、ホルダ160により冷却板141に向かうことを規制されるため、イオン発生装置150で発生したイオンの冷却板141との接触による消滅を低減できる。そのため、イオン発生装置150で発生したイオンによる、貯蔵室130、収納ケース131の殺菌、脱臭効率の低減を防止することができる。
【0021】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【0022】
例えば、上記ホルダ160は、図4に示すように、開口部161とイオン発生装置150との間に下方に膨らんだ膨らみ部401を有していてもよい。この膨らみ部401により、開口部161とイオン発生装置150との間に自然対流の向きと略直交した方向に膨らんだ空間402が形成される。開口部161から取り込まれる自然対流(矢印a3)と、イオン発生装置150で逆方向に向きが変えられて開口部161に向かう空気(矢印b2)とが、下方に膨らんだ空間402で衝突する可能性が低くなる。そのため、向きが変えられた自然対流によりイオン発生装置150で発生したイオン155をより効率よく開口部161から放出することができる。なお、上記では、空間402は自然対流とは略直交する下方に膨らんだ形状となっているが、これに限らず、上方に膨らんだ形状であってもよい。
【0023】
さらに、例えば、図5に示すように、イオン発生装置150と冷却板141との間に、仕切り板501を設けてもよい。この仕切り板501は、イオン発生装置150から冷却板141へ向かう自然対流を規制する。より具体的には、仕切り板501は、自然対流a2に乗って冷却板141の方向に流れるイオン155が、冷却板141に向かうことを規制するためのものである。つまり、この仕切り板501は、仕切り部に相当する。この仕切り板501により規制されたイオン155は、矢印b3で示されるように、冷却板141に向かう方向から変更されて、例えば、収納ケース131の方向に流れる。これにより、冷却板141にイオンが接触することを抑制することができ、イオンの減少を低減することができる。なお、上記仕切り板501は、冷却板141の方向に向かうイオンの一部を規制できればよく、その構成は特に限定されるものではない。例えば、冷却板141の背後部分には仕切り板501を設け、貯蔵室130の左右両側壁の近傍には仕切り板501を設けない構成として、貯蔵室130の自然対流を妨げにくくしてもよい。また、図5では、仕切り板501を貯蔵室130の天面から下方に伸びるように設けているが、例えば、前面側に仕切り板501の下方部を傾斜させ、自然対流を逆方向に向きを変更するように構成してもよい。また、図5では、ホルダ160を設けているが、このホルダ160を省略した構成であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
100 冷蔵庫、110 筐体、120 扉、130 貯蔵室、131 収納ケース、140 冷却部、141 冷却板、142 ペルチェ素子、143 放熱部、150 イオン発生装置、151 電極、155 イオン、160 ホルダ(仕切り部)、161 開口部、401 膨らみ部、402 空間、501 仕切り板
図1
図2
図3
図4
図5