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特許7198121ブラシレスDCモータ用の駆動装置およびモータシステム
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  • 特許-ブラシレスDCモータ用の駆動装置およびモータシステム 図1
  • 特許-ブラシレスDCモータ用の駆動装置およびモータシステム 図2
  • 特許-ブラシレスDCモータ用の駆動装置およびモータシステム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ブラシレスDCモータ用の駆動装置およびモータシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/20 20160101AFI20221221BHJP
【FI】
H02P6/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019038808
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020145789
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊兵
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135886(JP,A)
【文献】特開2009-124864(JP,A)
【文献】特開2003-111481(JP,A)
【文献】特開2004-282954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、前記ロータを回転させるn相(nは2以上の自然数)の巻き線と、前記ロータに設けられた回転基準の回転位置を所定の位置の間隔で検出する素子と、を備えているブラシレスDCモータを駆動する装置であって、
前記素子から信号を取得する回転位置取得部と、
上位装置および前記回転位置取得部それぞれから信号を取得する波形制御部と、
前記波形制御部からの信号に基づいて前記n相の巻き線に電圧を印加する波形出力部と、を備え、
前記波形制御部は、
回転開始の信号を前記上位装置から取得した後、前記回転基準の回転位置が検出された信号を前記素子から最初に取得するまでの間には、前記ブラシレスDCモータを中間値通電駆動させるための信号を前記波形出力部に出力し、
前記回転基準の回転位置が検出された信号を前記素子から取得した後には、前記ブラシレスDCモータを正弦波通電駆動させるための信号を前記波形出力部に出力し、
前記波形制御部は、前記ブラシレスDCモータを前記中間値通電駆動させるときに、前記n相の巻き線のうち、1つの相の巻き線に角度θM(ただし前記角度θMは、前記素子が検出する回転位置によって区画される複数の回転範囲のうち、前記ロータ停止時に前記回転基準が位置している前記回転範囲に含まれる所定の角度)の正弦値に相当する電圧を印加させ、残りの相の巻き線に、前記角度θMに対して前記正弦波通電駆動時と同様の位相差をもたせた角度の正弦値に相当する電圧を印加させるための信号を出力し、
前記波形制御部は、前記回転開始の信号を前記上位装置から取得した後、前記ロータの停止時に前記回転基準が位置している前記回転範囲を、前記回転位置取得部からの信号に基づいて判定するブラシレスDCモータ用の駆動装置。
【請求項2】
前記複数の回転範囲それぞれでは、前記正弦波通電駆動時にその回転範囲の始点θSから終点θEに至るまでに前記n相の巻き線それぞれに印加される電圧値が、単調増加または単調減少し、
前記角度θMは、前記ロータ停止時に前記回転基準が位置している前記回転範囲の中間角度である請求項1に記載のブラシレスDCモータ用の駆動装置。
【請求項3】
前記n相の巻き線は、3相の巻き線であり、
前記素子は、前記回転基準の回転位置を電気角60°間隔で検出する請求項1又は2に記載のブラシレスDCモータ用の駆動装置。
【請求項4】
前記素子は、ホール素子である請求項1からのいずれか1項に記載のブラシレスDCモータ用の駆動装置。
【請求項5】
ロータと、前記ロータを回転させるn相(nは2以上の自然数)の巻き線と、前記ロータに設けられた回転基準の回転位置を所定の位置の間隔で検出する素子と、を備えているブラシレスDCモータと、
請求項1からのいずれか1項に記載のブラシレスDCモータ用の駆動装置と、を備えるモータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスDCモータ用の駆動装置およびモータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスDCモータの駆動方式として、正弦波通電駆動が知られている。正弦波通電駆動では、矩形波通電駆動に比べて効率が高い。
ところで、ブラシレスDCモータにおけるロータの位置検出素子として、ホール素子が採用される。ホール素子を採用することで、ブラシレスDCモータの低コスト化を図ることができる。
しかしながら、ホール素子を採用したブラシレスDCモータでは、例えば、起動時などの低回転数のときに、通電タイミングにずれ(遅れや進み)が生じる。その結果として、トルクの低下が発生する。
上記課題を解決するため、下記特許文献1に記載されたブラシレスDCモータ駆動装置が知られている。この駆動装置では、モータ起動後に一定回転数になるまで矩形波通電駆動を実施し、一定回転数になった後に正弦波通電駆動を実施する。これにより、トルクの低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-242432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のブラシレスDCモータ用の駆動装置では、低回転数時(矩形波通電駆動時)に騒音や振動が大きくなる。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、低回転数時におけるトルクの低下を抑えつつ、騒音や振動の発生を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係るブラシレスDCモータ用の駆動装置は、ロータと、前記ロータを回転させるn相(nは2以上の自然数)の巻き線と、前記ロータに設けられた回転基準の回転位置を所定の間隔で検出する素子と、を備えているブラシレスDCモータを駆動する装置であって、前記素子から信号を取得する回転位置取得部と、上位装置および前記回転位置取得部それぞれから信号を取得する波形制御部と、前記波形制御部からの信号に基づいて前記n相の巻き線に電圧を印加する波形出力部と、を備え、前記波形制御部は、回転開始の信号を前記上位装置から取得した後、前記回転基準の回転位置が検出された信号を前記素子から最初に取得するまでの間には、前記ブラシレスDCモータを中間値通電駆動させるための信号を前記波形出力部に出力し、前記回転基準の回転位置が検出された信号を前記素子から取得した後には、前記ブラシレスDCモータを正弦波通電駆動させるための信号を前記波形出力部に出力し、前記波形制御部は、前記ブラシレスDCモータを前記中間値通電駆動させるときに、前記n相の巻き線のうち、1つの相の巻き線に角度θM(ただし前記角度θMは、前記素子が検出する回転位置によって区画される複数の回転範囲のうち、前記ロータ停止時に前記回転基準が位置している前記回転範囲に含まれる所定の角度)の正弦値に相当する電圧を印加させ、残りの相の巻き線に、前記角度θMに対して前記正弦波通電駆動時と同様の位相差をもたせた角度の正弦値に相当する電圧を印加させるための信号を出力する。
【0007】
この場合、例えば、ブラシレスDCモータが回転開始時に矩形波通電駆動される場合に比べて、各相の巻き線に印加される電圧値を、出力効率の観点から好適な値に設定することができる。これにより、低回転数時におけるトルクの低下を抑えつつ、騒音や振動の発生を抑えることができる。
【0008】
前記複数の回転範囲それぞれでは、前記正弦波通電駆動時にその回転範囲の始点θSから終点θEに至るまでに前記n相の巻き線それぞれに印加される電圧値が、単調増加または単調減少し、前記角度θMは、前記ロータ停止時に前記回転基準が位置している前記回転範囲の中間角度であってもよい。
【0009】
この場合、ロータの回転基準が、回転範囲内において始点θS側に位置していても終点θE側に位置していても、各相の巻き線に印加される電圧値を、出力効率の観点から好適な値に設定することができる。
なお回転範囲の中間角度は、回転範囲の始点θSおよび終点θEの中央値(すなわち、(θS+θE)/2)に限られない。回転範囲の中間角度は、前記中央値に対して、出力効率の観点から問題ない程度の差分(例えば、(θE-θS)の10%程度)を有していてもよい。
【0010】
前記波形制御部は、前記ロータ停止時に前記回転基準が位置している前記回転範囲を、前記回転位置取得部からの信号に基づいて判定してもよい。
【0011】
この場合、例えば、ロータ停止時に回転基準が位置している回転範囲を予め記憶しておく必要がなく、装置構成(記憶装置)の簡素化を図ること等ができる。
【0012】
前記n相の巻き線は、3相の巻き線であり、前記素子は、前記回転基準の回転位置を電気角60°間隔で検出してもよい。
【0013】
この場合、例えば、駆動装置を一般的な3相2極のブラシレスDCモータに適用すること等ができる。
【0014】
前記素子は、ホール素子であってもよい。
【0015】
この場合、例えば、駆動装置の低価格化を図ること等ができる。
【0016】
本発明の一態様に係るモータシステムは、ロータと、前記ロータを回転させるn相(nは2以上の自然数)の巻き線と、前記ロータに設けられた回転基準の回転位置を所定の間隔で検出する素子と、を備えているブラシレスDCモータと、前記ブラシレスDCモータ用の駆動装置と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低回転数時におけるトルクの低下を抑えつつ、騒音や振動の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るモータシステムの制御ブロック図である。
図2図1に示すモータシステムの駆動電圧を説明するタイムチャートである。
図3図1に示すモータシステムの制御方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るモータシステム10を説明する。
図1に示すように、モータシステム10は、ブラシレスDCモータ20(以下、モータ20という)と、モータ20用の駆動装置30と、を備えている。モータシステム10は、モータ20と駆動装置30とが一体になった構成(いわゆるインテリジェントモータ)であってもよく、モータ20と駆動装置30とが一体でない構成でもよい。
【0020】
モータ20は、ロータ21と、ロータ21と径方向に対向し、ロータ21を回転させるn相(nは2以上の自然数)の巻き線22(コイル)と、ロータ21に設けられた回転基準21aの回転位置を所定の電気角θR間隔で検出するホール素子23(素子)と、を備えている。
【0021】
ロータ21は、2極の磁極を有している。このモータ20では、機械角と電気角とが一致する。ロータ21の回転基準21aは、例えば、2極の磁極の境界とされている。なおロータ21は、4極以上の磁極を有していてもよい。ロータ21は、インナーロータであってもアウターロータであってもよい。ロータ21は、埋込磁石型であっても表面磁石型であってもよい。
【0022】
モータ20は、3相の巻き線22を備えている。言い換えると、前記n=3である。巻き線22は、U相の巻き線22と、V相の巻き線22と、W相の巻き線22と、を備えている。巻き線22は、ステータに巻き回されている。なお、ステータのスロット数(ティースの数)は、例えば、相数(本実施形態では3)の任意の倍数(本実施形態では3、6、9等)に設定することができる。
【0023】
ホール素子23は、ロータ21の回転基準21aの回転位置を電気角60°間隔で検出する。言い換えると、前記θR=60°である。本実施形態では、機械角と電気角とが一致しており、ホール素子23は、ロータ21の回転位置を機械角60°間隔で検出する。ホール素子23がロータ21の回転位置を電気角60°間隔で検出することで、電気角1周360°の間に、60°ごとに6つ(複数)の回転範囲が区画される。
【0024】
駆動装置30は、例えば、マイコンを含む。駆動装置30は、上位装置40からの信号に基づいてモータ20を回転させる。駆動装置30は、回転位置取得部31と、波形制御部32と、波形出力部33と、を備えている。
回転位置取得部31は、ホール素子23から信号を取得する。回転位置取得部31は、例えば、ホールアンプを含む。回転位置取得部31は、ホール素子23からの信号(出力)を増幅して、波形制御部32に出力する。
【0025】
波形制御部32は、例えば、PWM駆動回路およびPWMコンパレータを含む。波形制御部32は、上位装置40および回転位置取得部31それぞれから信号を取得する。波形制御部32は、モータ20の起動/停止を行うためのON/OFF信号、およびモータ20の回転数の目標値となる信号を上位装置40から取得する。波形制御部32は、ロータ21の回転基準21aの回転位置についての信号を回転位置取得部31から取得する。
【0026】
波形制御部32は、上位装置40および回転位置取得部31それぞれからの信号に基づいて、例えば、デューティー比などを決定する。波形制御部32は、上位装置40および回転位置取得部31それぞれからの信号に基づいて、巻き線22に通電させるための信号を波形出力部33に出力する。
波形出力部33は、例えば、プリドライバおよびインバータ回路(ドライバ)を含む。波形出力部33は、波形制御部32からの信号に基づいて3相の巻き線22に電圧を印加し、ロータ21を回転させる。
【0027】
次に、図2および図3を参照し、モータシステム10におけるモータ20の駆動方法(モータシステム10の制御方法)について説明する。この駆動方法では、駆動方式として正弦波通電駆動を基本としている。以下では、まず正弦波通電駆動について説明する。
【0028】
図2の下部に示すように、正弦波通電駆動では、各相の巻き線22に、位相がずらされた正弦波電圧が入力される。図示の例では、U相の巻き線22に印加される正弦波電圧を基準とする。V相の巻き線22には、U相の正弦波電圧に対して位相が電気角-120°ずらされた正弦波電圧が印加される。W相の巻き線22には、U相の正弦波電圧に対して位相が電気角-240°ずらされた正弦波電圧が印加される。なお、これらの正弦波電圧の印加は、例えば、デューティー比が調整されたパルス電圧の印加などにより実現される。
【0029】
図2の上部に示すように、ホール素子23は、3相の巻き線22に対応して3つ設けられている。3つのホール素子23は、ロータ21の回転方向に電気角120°おき(本実施形態では、2極対であるため機械角120°おきでもある)に間隔(等間隔)をあけて配置されている。3つのホール素子23は、U相のホール素子23と、V相のホール素子23と、W相のホール素子23と、を備えている。
【0030】
3つのホール素子23は、ロータ21の回転基準21aの位置に応じて出力値を切り替える。U相のホール素子23は、回転基準21aが30°および210°に位置するときに出力値(図2に示すHu)を切り替える。V相のホール素子23は、回転基準21aが150°および330°に位置するときに出力値(図2に示すHv)を切り替える。W相のホール素子23は、回転基準21aが90°および270°に位置するときに出力値(図2に示すHw)を切り替える。
【0031】
3つのホール素子23の出力値を合成することで、電気角の1周360°を、(1)30°~90°の第1回転範囲R1、(2)90°~150°の第2回転範囲R2、(3)150°~210°の第3回転範囲R3、(4)210°~270°の第4回転範囲R4、(5)270°~330°の第5回転範囲R5、(6)330°~30°(390°)の第6回転範囲R6の6つの回転範囲に区画することができる。なお、これらの第1回転範囲R1から第6回転範囲R6のいずれにおいても、図2の下部に示すように、U相の巻き線22、V相の巻き線22、W相の巻き線22に印加される正弦波電圧の電圧値は、その回転範囲の始点θSから終点θEに至るまで単調増加または単調減少している。
【0032】
次に、図2および図3を参照し、モータ20の駆動方法の流れを説明する。
なお以下では、ロータ21停止時にロータ21の回転基準21aが第1回転範囲R1内の位置P(図2参照)に位置する(属する)場合を前提として説明する。ただし、回転基準21aが他の回転範囲(第2回転範囲R2から第6回転範囲R6)に位置する場合も同様の方法を採用することができる。
【0033】
図3に示すように、波形制御部32は、回転開始の信号(起動信号)を上位装置40から取得した(S1)後、ロータ21の回転基準21aが位置している回転範囲を、回転位置取得部31からの信号に基づいて判定する(S2)。なお回転基準21aが、第1回転範囲R1から第6回転範囲R6のうちのいずれの回転範囲に位置するかは、複数のホール素子23から検出される信号の値の組み合わせに基づいて推定することができる。
回転位置の判定(S2)の後、回転基準21aの回転位置が検出された信号をホール素子23から最初に取得するまでの間(S4:NO)には、モータ20を中間値通電駆動させるための信号を波形出力部33に出力する(S3)。
【0034】
図2に示すように、波形制御部32は、モータ20を中間値通電駆動させるとき(S3)に、3相の巻き線22のうち、1つの相の巻き線22に角度θMの正弦値に相当する電圧を印加させるための信号を出力する。3相の巻き線22のうち、残りの相の巻き線22に、角度θMに対して正弦波通電駆動時と同様の位相差をもたせた角度の正弦値に相当する電圧を印加させるための信号を出力する。このとき本実施形態では、U相の巻き線22にsinθMに相当する定電圧が印加される。V相の巻き線22にsin(θM-120°)に相当する定電圧が印加される。W相の巻き線22にsin(θM-240°)に相当する定電圧が印加される。
【0035】
ここで角度θMは、ロータ21停止時に回転基準21aが位置している回転範囲である第1回転範囲R1に含まれる所定の角度である。具体的には、角度θMは、第1回転範囲R1の中間角度である。第1回転範囲R1の始点θSは30°であり、第1回転範囲R1の終点θEは90°である。本実施形態では、θMは、第1回転範囲R1の始点θSおよび終点θEの中央値、すなわち(θS+θE)/2=60°である。
よって、本実施形態における中間値通電駆動では、U相の巻き線22にはsin60°(=cos30°、図2に示すPu)に相当する定電圧が印加される。V相の巻き線22にはsin(-60°)(=sin300°、図2に示すPv)に相当する定電圧が印加される。W相の巻き線22にはsin(-180°)(=sin180°、図2に示すPw)に相当する定電圧が印加される。
【0036】
図3に示すように、波形制御部32は、回転基準21aの回転位置が検出された信号をホール素子23から取得した後には(S4:YES)、モータ20を正弦波通電駆動させるための信号を波形出力部33に出力する(S5)。波形制御部32は、モータ20を停止させる信号を上位装置40から取得するまで(S6:NO)、モータ20の正弦波通電駆動を継続させる(S5)。
波形制御部32が上位装置40からモータ20の停止信号を取得した後には(S6:YES)、波形出力部33による巻き線22への電圧の印加が停止され、モータ20(ロータ21の回転)が停止する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係るモータシステム10によれば、波形制御部32は、回転開始の信号を上位装置40から取得した後、回転基準21aの回転位置が検出された信号をホール素子23から最初に取得するまでの間に、モータ20を中間値通電駆動させるための信号を波形出力部33に出力する。このとき、3相の巻き線22のうち、1つの相の巻き線22に角度θMの正弦値に相当する電圧が印加される。また3相の巻き線22のうち、残りの相の巻き線22に、角度θMに対して正弦波通電駆動時と同様の位相差をもたせた角度の正弦値に相当する電圧が印加される。したがって、例えば、モータ20が回転開始時に矩形波通電駆動される場合に比べて、各相の巻き線22に印加される電圧値を、出力効率の観点から好適な値に設定することができる。これにより、低回転数時におけるトルクの低下を抑えつつ、騒音や振動の発生を抑えることができる。
【0038】
角度θMが、ロータ21停止時に回転基準21aが位置している回転範囲の中間角度である。したがって、ロータ21の回転基準21aが、回転範囲内において始点θS側に位置していても終点θE側に位置していても、各相の巻き線22に印加される電圧値を、出力効率の観点から好適な値に設定することができる。
なお回転範囲の中間角度は、回転範囲の始点θSおよび終点θEの中央値(すなわち、(θS+θE)/2)に限られない。回転範囲の中間角度は、前記中央値に対して、出力効率の観点から問題ない程度の差分(例えば、(θE-θS)の10%程度)を有していてもよい。本実施形態のように、回転基準21aの回転位置を所定の電気角60°間隔で検出する場合、回転範囲の中間角度が、前記中央値に対して6°程度の差分を有していてもよい。例えば、第1回転範囲R1の中間角度は、54°~66°であってもよく、前記角度θMとして、54°~66°のいずれかの値を好適に採用することができる。
【0039】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0040】
角度θMが、ロータ21停止時に回転基準21aが位置している回転範囲の中間角度でなくてもよい。例えば、角度θMが、ロータ21停止時に回転基準21aが位置している回転範囲に含まれる他の角度であってもよい。
モータ20は、3相2極に限られない。
【0041】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 モータシステム
20 ブラシレスDCモータ
21 ロータ
21a 回転基準
22 巻き線
23 ホール素子
30 駆動装置
31 回転位置取得部
32 波形制御部
33 波形出力部
40 上位装置
図1
図2
図3