(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】暖房給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24D 3/08 20060101AFI20221221BHJP
F24H 1/48 20220101ALI20221221BHJP
F24D 17/00 20220101ALI20221221BHJP
【FI】
F24D3/08 E
F24H1/48
F24D17/00 L
(21)【出願番号】P 2019047543
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 悠也
(72)【発明者】
【氏名】深谷 篤
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-087727(JP,A)
【文献】特開2005-337632(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020805(WO,A1)
【文献】特開2018-185082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0073749(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0314275(US,A1)
【文献】特開平01-273927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/08
F24H 1/48
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の熱媒を用いて、暖房端末に該熱媒を循環させて暖房する暖房運転と、給湯熱交換器に循環させる該熱媒との熱交換で上水を加熱して湯を供給する給湯運転とを実行可能な暖房給湯装置において、
前記熱媒を加熱する加熱手段と、
前記熱媒の温度を検知する温度検知手段と、
前記熱媒を前記暖房端末と前記給湯熱交換器とに振り分ける分配比を切り換え可能な分配手段と、
前記暖房運転や前記給湯運転に応じて前記加熱手段の加熱量を制御し、前記熱媒の温度が所定の停止温度に達すると前記加熱手段による加熱を停止させる制御手段と
を備え、
前記暖房運転中に前記給湯運転の要請があると、前記分配手段が前記分配比の切り換えを開始し、前記制御手段は、前記加熱手段の加熱量を前記給湯運転に応じた加熱量よりも小さく制限しておく制限期間を設定する
ことを特徴とする暖房給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の暖房給湯装置において、
前記制限期間の長さは、前記分配手段が前記分配比を切り換えるのに要する時間である
ことを特徴とする暖房給湯装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の暖房給湯装置において、
前記制御手段は、前記熱媒の温度が前記停止温度よりも低い所定の基準温度未満であれば、前記制限期間を解除する
ことを特徴とする暖房給湯装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の暖房給湯装置において、
前記制御手段は、前記給湯運転に応じた加熱量と前記暖房運転に応じた加熱量との差が所定量未満であれば、前記制限期間を解除する
ことを特徴とする暖房給湯装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の暖房給湯装置において、
前記制御手段は、前記制限期間中の前記加熱手段の加熱量を、前記暖房運転に応じた加熱量に維持する
ことを特徴とする暖房給湯装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の暖房給湯装置において、
前記制御手段は、前記制限期間中の前記加熱手段の加熱量を、前記給湯運転に応じた加熱量に向けて徐々に増加させる
ことを特徴とする暖房給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通の熱媒を用いて、暖房端末に熱媒を循環させて暖房する暖房運転と、給湯熱交換器に循環させる熱媒との熱交換で上水を加熱して湯を供給する給湯運転とを実行可能な暖房給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーナなどの加熱手段で熱媒を加熱し、暖房端末に熱媒を循環させて暖房する暖房運転を実行可能であるとともに、共通の熱媒を給湯熱交換器に循環させ、熱媒との熱交換で上水を加熱して湯を供給する給湯運転を実行可能である暖房給湯装置が知られている(例えば、特許文献1)。こうした暖房給湯装置では、加熱した熱媒を暖房端末と給湯熱交換器とに振り分ける分配比を切り換え可能な三方弁などの分配手段を備えており、暖房運転中に給湯運転の要請があると、分配手段で分配比を切り換える。また、一般に給湯運転では、暖房運転に比べて、要求される加熱量が大きいことから、加熱手段の加熱量(バーナでの燃焼量)を暖房運転に応じた加熱量から給湯運転に応じた加熱量へと増加させる。さらに、熱媒の温度が所定の停止温度に達すると、熱媒の過熱を防ぐために、加熱手段による加熱を停止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のように共通の熱媒を用いて暖房運転と給湯運転とを実行可能な暖房給湯装置では、暖房運転中に給湯運転の要請があった場合に、設定温度での給湯が安定するまでに時間がかかってしまうことがあるという問題があった。これは次のような理由による。まず、加熱手段の加熱量を給湯運転に応じた加熱量に増加させるのに比して、分配手段での分配比の切り換えには時間を要することでタイムラグが生じる。すると、給湯運転に応じた加熱量で加熱された熱媒が暖房端末へと多量に流れることになり、本来は給湯熱交換器で消費されるべき熱媒の熱が消費されないまま循環して熱媒の温度が急上昇する。そして、熱媒の温度が停止温度に達して加熱手段による加熱が停止することにより、加熱手段で加熱を再開した後、設定温度での給湯が安定するまでに時間がかかってしまう。
【0005】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、暖房給湯装置で暖房運転中に給湯運転の要請があった場合に、設定温度での給湯が安定するまでの時間の短縮を図ることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の暖房給湯装置は次の構成を採用した。すなわち、
共通の熱媒を用いて、暖房端末に該熱媒を循環させて暖房する暖房運転と、給湯熱交換器に循環させる該熱媒との熱交換で上水を加熱して湯を供給する給湯運転とを実行可能な暖房給湯装置において、
前記熱媒を加熱する加熱手段と、
前記熱媒の温度を検知する温度検知手段と、
前記熱媒を前記暖房端末と前記給湯熱交換器とに振り分ける分配比を切り換え可能な分配手段と、
前記暖房運転や前記給湯運転に応じて前記加熱手段の加熱量を制御し、前記熱媒の温度が所定の停止温度に達すると前記加熱手段による加熱を停止させる制御手段と
を備え、
前記暖房運転中に前記給湯運転の要請があると、前記分配手段が前記分配比の切り換えを開始し、前記制御手段は、前記加熱手段の加熱量を前記給湯運転に応じた加熱量よりも小さく制限しておく制限期間を設定する
ことを特徴とする。
【0007】
このような本発明の暖房給湯装置では、暖房運転中に給湯運転の要請があった場合に、加熱手段の加熱量を制限しておく制限期間を設定し、熱媒の加熱が給湯運転に応じた加熱量で行われるようになるタイミングを遅らせることにより、熱媒の温度が停止温度に達することを抑制できるため、加熱手段による加熱の不要な停止を挟むことなく、設定温度での給湯が安定するまでの時間の短縮を図ることが可能となる。
【0008】
上述した本発明の暖房給湯装置では、制限期間の長さを、分配手段が分配比を切り換えるのに要する時間としてもよい。
【0009】
熱媒の温度の急上昇は、分配手段が分配比を切り換えている間に、給湯運転に応じた加熱量で加熱された熱媒が暖房端末側に流れることに起因するため、分配手段が切り換えに要する時間を制限期間の長さの最大とすれば、加熱手段の加熱量を給湯運転に応じて増加させるのを必要以上に制限して設定温度での給湯の安定が遅れてしまうことを抑制することができる。
【0010】
こうした本発明の暖房給湯装置では、熱媒の温度が停止温度よりも低い所定の基準温度未満であれば、制限期間を解除してもよい。
【0011】
このようにすれば、熱媒の温度がそれほど高くはなく、給湯運転に応じた加熱量で加熱されても熱媒が高温になり過ぎる(停止温度に達する)蓋然性が低い場合には、制限期間を途中で解除して加熱手段の加熱量を給湯運転に応じた加熱量に移行することにより、設定温度での給湯が安定するタイミングを早めることが可能となる。
【0012】
また、こうした本発明の暖房給湯装置では、給湯運転に応じた加熱量と暖房運転に応じた加熱量との差が所定量未満であれば、制限期間を解除してもよい。
【0013】
このようにすれば、暖房運転に応じた加熱量に比べて給湯運転に応じた加熱量がそれほど大きくない場合は、給湯運転に応じた加熱量で加熱されても熱媒が高温になり過ぎる(停止温度に達する)蓋然性が低いので、制限期間を解除して加熱手段の加熱量を給湯運転に応じた加熱量に移行することにより、設定温度での給湯が安定するタイミングを早めることが可能となる。
【0014】
また、こうした本発明の暖房給湯装置では、制限期間中の加熱手段の加熱量を、暖房運転に応じた加熱量に維持してもよい。
【0015】
このようにすれば、分配手段が分配比の切り換えを開始する前と同じ加熱量を制限期間中も維持するので、熱媒の温度の上昇が抑えられて停止温度に達することはなく、加熱手段による加熱の不要な停止を確実に防止することができる。
【0016】
また、こうした本発明の暖房給湯装置では、制限期間中の加熱手段の加熱量を、給湯運転に応じた加熱量に向けて徐々に増加させてもよい。
【0017】
制限期間中は、分配手段による分配比の切り換えの進行に伴い、給湯熱交換器側へと流れる熱媒が増えていき、給湯熱交換器で上水との熱交換によって熱媒の熱が消費されるので、加熱手段の加熱量を徐々に増加させれば、熱媒の温度が停止温度に達することを抑制することができる。そして、加熱手段の加熱量を制限しつつも徐々に給湯運転に応じた加熱量に近付けることにより、設定温度での給湯が安定するまでの時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施例の暖房給湯装置1の構成を示した説明図である。
【
図3】従来例の暖房給湯装置1で暖房運転中に給湯運転の要請があった場合に、設定温度での給湯が安定するまでに時間がかかる例を示した説明図である。
【
図4】本実施例のコントローラ40が実行する暖房運転中処理のフローチャートである。
【
図5】本実施例の移行処理のフローチャートである。
【
図6】本実施例の暖房給湯装置1で暖房運転中に給湯運転の要請があった場合に、上述した移行処理に従って給湯運転に移行する様子を示した説明図である。
【
図8】変形例の暖房給湯装置1で暖房運転中に給湯運転の要請があった場合に、上述した移行処理に従って給湯運転に移行する様子を示した説明図である。
【
図9】三方弁28を中間状態で停止させた例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施例の暖房給湯装置1の構成を示した説明図である。図示されるように暖房給湯装置1は、ハウジング2で覆われた内部に、燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを燃焼させるバーナ3を内蔵した燃焼ユニット4を備えている。燃焼ユニット4には、燃焼ファン5が接続されており、この燃焼ファン5によって混合ガスが送られる。
【0020】
燃焼ファン5の吸入側には、燃焼用空気を供給する空気供給路7と、燃料ガスを供給するガス供給路8とを合流させる合流部6が設けられている。ガス供給路8には、ガス供給路8を開閉する開閉弁(図示省略)や、上流側から圧送される燃料ガスの圧力を大気圧に下げるゼロガバナ9が設けられている。合流部6には、切換弁が内蔵されており、燃焼ファン5に流入する燃焼用空気と燃料ガスとの比率を調節することが可能になっている。燃焼ファン5を駆動すると、ハウジング2内の空気と、ガス供給路8のゼロガバナ9よりも下流側の燃料ガスとが合流部6を通って所定の比率で燃焼ファン5に吸い込まれ、混合ガスが燃焼ユニット4に送り込まれる。
【0021】
燃焼ユニット4では、内蔵のバーナ3で混合ガスの燃焼が行われる。図示した例では、バーナ3から下方に向けて混合ガスが噴出するようになっており、下向きに炎が形成されると共に、燃焼排気が下方へと送られる。燃焼ファン5は、暖房給湯装置1の全体を制御するコントローラ40と電気的に接続されており、コントローラ40は、必要とされる加熱量に応じて燃焼ファン5の回転数を変更することで、バーナ3での燃焼量を制御する。尚、本実施例のバーナ3は、本発明の「加熱手段」に相当しており、本実施例のコントローラ40は、本発明の「制御手段」に相当している。
【0022】
また、燃焼ユニット4には、高電圧の放電によって火花を飛ばす点火プラグ11や、バーナ3の火炎(着火)を検知するフレームロッド12や、燃焼ユニット4から燃焼ファン5への逆流を阻止する逆止弁13が設けられている。点火プラグ11およびフレームロッド12は、コントローラ40と電気的に接続されている。
【0023】
バーナ3の下方には、第1熱交換器15が設けられており、第1熱交換器15の下方には、第2熱交換器16が設けられている。バーナ3での燃焼によって生じた燃焼排気は、下方へと送られ、第1熱交換器15および第2熱交換器16を通過する。このとき、第1熱交換器15では、燃焼排気から顕熱を回収し、第2熱交換器16では、燃焼排気から潜熱を回収する。
【0024】
そして、第1熱交換器15および第2熱交換器16を通過した燃焼排気は、排気ダクト17を通って、ハウジング2の上部に突出した排気口18から排出される。また、図示した例では、ハウジング2の上部に給気口19が設けられており、給気口19からハウジング2に取り入れられた空気が、空気供給路7を介して燃焼ファン5に吸い込まれる。
【0025】
第1熱交換器15は、上流側が第2熱交換器16の下流側と接続されている。また、第1熱交換器15の下流側は、床暖房などの暖房端末20の上流側と往き通路21を介して接続されており、第2熱交換器16の上流側は、暖房端末20の下流側と戻り通路22を介して接続されている。戻り通路22には、温水などの熱媒を第2熱交換器16に向けて送る循環ポンプ23や、第2熱交換器16に流入する熱媒の温度を検知する戻り温度センサ24が設けられている。循環ポンプ23および戻り温度センサ24は、コントローラ40と電気的に接続されている。
【0026】
前述したように第2熱交換器16では、バーナ3の燃焼排気から潜熱を回収しており、循環ポンプ23の作動によって第2熱交換器16に送られた熱媒は、回収した熱で予備加熱された後、第1熱交換器15へと送られる。第1熱交換器15では、バーナ3の燃焼排気との顕熱の熱交換によって熱媒が加熱され、高温になった熱媒が往き通路21を通って暖房端末20に供給される。往き通路21には、第1熱交換器15から流出する熱媒の温度を検知する往き温度センサ25が設けられており、往き温度センサ25は、コントローラ40と電気的に接続されている。尚、本実施例の戻り温度センサ24や往き温度センサ25は、本発明の「温度検知手段」に相当している。
【0027】
暖房端末20では、蛇行する配管などを熱媒が通過しながら放熱することで周囲を暖める。そして、暖房端末20を通過して冷めた熱媒は、戻り通路22を通って循環ポンプ23まで戻り、再び第2熱交換器16へと送られる。このように暖房端末20に循環させる熱媒は、温水に限られず、シリコーン油などを用いてもよい。
【0028】
また、往き通路21の往き温度センサ25よりも下流側から分岐した分岐通路26が、戻り通路22の循環ポンプ23よりも上流側に接続されている。この分岐通路26には、給湯熱交換器27が設けられており、分岐通路26と戻り通路22との接続部分には、三方弁28が設けられている。三方弁28の構成については別図を用いて後述するが、第1熱交換器15から流出する熱媒を、暖房端末20を通るルートと、給湯熱交換器27を通るルートとに振り分ける分配比を三方弁28で切り換えることが可能である。三方弁28は、コントローラ40と電気的に接続されている。尚、本実施例の三方弁28は、本発明の「分配手段」に相当している。
【0029】
給湯熱交換器27は、液-液熱交換器であって、給水通路30と出湯通路31とが接続されている。給水通路30を通って給湯熱交換器27に供給される上水は、給湯熱交換器27で熱媒との熱交換によって加熱されて湯となり、出湯通路31に流出する。給水通路30には、暖房給湯装置1に流入する上水の流量を計測する水量センサ32や、上水の流量を調節する水量サーボ33や、上水の温度を検知する給水温度センサ34が設けられており、出湯通路31には、給湯熱交換器27から流出した直後の湯の温度を検知する給湯熱交出口温度センサ35が設けられている。これら水量センサ32、水量サーボ33、給水温度センサ34、給湯熱交出口温度センサ35は、コントローラ40と電気的に接続されている。
【0030】
また、本実施例の暖房給湯装置1では、給水通路30と出湯通路31とがバイパス通路36で接続されている。暖房給湯装置1に流入した上水は、一部が給湯熱交換器27に供給されることなくバイパス通路36を通過可能であり、残りが給湯熱交換器27に供給される。そして、給湯熱交換器27で加熱された湯は、バイパス通路36を通った上水と混合されて暖房給湯装置1から流出する。バイパス通路36と出湯通路31との接続部分にはバイパスサーボ37が設けられており、給湯熱交換器27で加熱された湯と、バイパス通路36を通った上水との混合比は、バイパスサーボ37によって変更することが可能である。バイパスサーボ37は、コントローラ40と電気的に接続されている。
【0031】
出湯通路31のバイパスサーボ37よりも下流側には、暖房給湯装置1から流出する湯の温度を検知する出湯温度センサ38が設けられている。上述のように上水の一部がバイパス通路36を通ることにより、出湯温度センサ38での検知温度は、給湯熱交出口温度センサ35での検知温度よりも低くなることから、バイパスサーボ37で混合比を調節することによって、暖房給湯装置1から流出する湯の温度変動を抑制することができる。
【0032】
さらに、コントローラ40には、リモコン41が電気的に接続されており、使用者がリモコン41を操作することで、暖房運転の開始や停止を指示したり、暖房温度を設定したり、給湯運転の運転可能(ON)状態と運転不能(OFF)状態とを切り換えたり、給湯温度を設定したりすることが可能になっている。
【0033】
図2は、三方弁28の構成を例示した断面図である。図示されるように三方弁28の内部には、3方向に通じる弁室50が形成されている。図示した例では、弁室50の左方に分岐通路26が接続され、右方に戻り通路22の暖房端末20側(以下、端末側戻り通路22a)が接続され、上方に戻り通路22の循環ポンプ23側(以下、ポンプ側戻り通路22b)が接続されている。
【0034】
また、弁室50内には、分岐通路26を開閉する給湯側弁体51と、端末側戻り通路22aを開閉する暖房側弁体52とが収容されており、これら給湯側弁体51および暖房側弁体52は、左右方向に往復移動が可能な移動軸53に反対向きに取り付けられている。移動軸53は、駆動モータ54の駆動によって移動するようになっており、本実施例の駆動モータ54にはステッピングモータを用いている。
【0035】
図2(a)には、移動軸53が左方に移動して給湯側弁体51が分岐通路26を閉じ、暖房側弁体52が端末側戻り通路22aを開いた状態が示されている。この状態において、循環ポンプ23の作動によって第1熱交換器15から流出した熱媒は、分岐通路26(給湯熱交換器27)に振り分けられることなく、暖房端末20を循環することから、暖房運転が行われる。
【0036】
一方、駆動モータ54の駆動によって移動軸53が右方に移動すると、
図2(b)に示されるように暖房側弁体52が端末側戻り通路22aを閉じ、給湯側弁体51が分岐通路26を開いた状態となる。この状態において、循環ポンプ23の作動によって第1熱交換器15から流出した熱媒は、暖房端末20に振り分けられることなく、分岐通路26(給湯熱交換器27)を循環することから、給湯運転が行われる。
【0037】
このように共通の熱媒を用いて暖房運転と給湯運転とを実行可能な暖房給湯装置1では、従来、暖房運転中に給湯運転の要請があると、設定温度での給湯が安定するまでに時間がかかってしまうことがあった。
図3は、従来例の暖房給湯装置1で暖房運転中に給湯運転の要請があった場合に、設定温度での給湯が安定するまでに時間がかかる例を示した説明図である。
図3の上段には、三方弁28の状態の時間変化が示されており、下段には、バーナ3による加熱量(燃焼量)の時間変化が模式的に示されている。
【0038】
前述したように、バーナ3による加熱量(燃焼量)は、燃焼ファン5の回転数を変更することによって制御が可能である。また、一般に給湯運転では、暖房運転に比べて、要求される加熱量が大きいことから、要求される熱媒の温度(要求温度)も高くなる。そのため、暖房運転中に給湯運転の要請があると、燃焼ファン5の回転数を上げてバーナ3での燃焼量を増加させる。
【0039】
一方、三方弁28では、駆動モータ54の駆動によって移動軸53が移動し、
図2(a)の暖房運転の状態から、
図2(b)の給湯運転の状態へと切り換わる。このとき、燃焼ファン5の回転数の上昇に比して、駆動モータ54(ステッピングモータ)による移動軸53の移動には時間を要するため、バーナ3による加熱量の増加と三方弁28の切り換えとの間にタイムラグが生じる。
【0040】
このようなタイムラグがあると、給湯運転に応じた加熱量で加熱された要求温度の高い熱媒が暖房端末20側へと多量に流れることになり、本来は給湯熱交換器27で上水との熱交換によって消費されるべき熱媒の熱が消費されないまま循環して熱媒の温度が急上昇する。そして、往き温度センサ25の検知温度が所定の停止温度(本実施例では90度)に達すると、熱媒の過熱(沸騰)を防止するためにバーナ3での燃焼を停止するようになっている。その結果、バーナ3での燃焼を再開した後、設定温度での給湯が安定するまでに時間がかかってしまう。
【0041】
そこで、本実施例の暖房給湯装置1では、暖房運転中に給湯運転の要請があった場合に、設定温度での給湯が安定するまでに要する時間の短縮を図るために、暖房運転中にコントローラ40が以下のような暖房運転中処理を実行するようになっている。
【0042】
図4は、本実施例のコントローラ40が実行する暖房運転中処理のフローチャートである。この暖房運転中処理は、使用者によるリモコン41の操作で暖房運転が開始されると実行される。尚、暖房運転の開始に伴い、三方弁28を
図2(a)の暖房運転の状態として、循環ポンプ23を作動すると共に、バーナ3で混合ガスの燃焼を開始し、バーナ3による加熱量(燃焼量)を、リモコン41での暖房の設定温度に基づいて暖房運転に応じた加熱量(以下、暖房加熱量)に設定する。
【0043】
暖房運転中処理では、まず、往き温度センサ25による熱媒の検知温度(以下、往き温度)が所定の停止温度(90度)以上であるか否かを判断する(STEP1)。前述したように熱媒の過熱(沸騰)を防止するために停止温度が設定されており、往き温度が停止温度以上である場合は(STEP1:yes)、燃料ガスの供給を遮断することでバーナ3での燃焼を強制的に停止して(STEP2)、
図4の暖房運転中処理を終了する。その後、往き温度が停止温度よりも低い所定の点火温度まで下がり、バーナ3での燃焼を再開すると、再び
図4の暖房運転中処理を実行する。
【0044】
一方、往き温度が停止温度未満である場合は(STEP1:no)、次に、暖房運転の停止指示があったか否かを判断する(STEP3)。使用者によるリモコン41の操作で暖房運転の停止指示があった場合は(STEP3:yes)、暖房運転を停止して(STEP4)、
図4の暖房運転中処理を終了する。このSTEP4では、バーナ3での燃焼を停止した後、循環ポンプ23を停止する。その後、使用者によるリモコン41の操作で暖房運転の開始指示があり、暖房運転を再開すると、再び
図4の暖房運転中処理を実行する。
【0045】
これに対して、暖房運転の停止指示がない場合は(STEP3:no)、続いて、給湯運転の要請があったか否かを判断する(STEP5)。本実施例のコントローラ40は、リモコン41の操作による給湯運転の運転可能(ON)状態において、図示しない給湯栓を使用者が開けて水量センサ32で計測される上水の流量が所定量以上になると、給湯運転の要請があったと判断する。そして、給湯運転の要請が未だない場合は(STEP5:no)、暖房運転中処理の先頭に戻り、STEP1以降の処理を再び実行する。その後、給湯運転の要請があった場合は(STEP5:yes)、以下のような移行処理を実行し(STEP6)、移行処理から復帰すると、
図4の暖房運転中処理を終了する。
【0046】
図5は、本実施例の移行処理のフローチャートである。移行処理を開始すると、まず、三方弁28の切り換えを開始する(STEP10)。前述したように三方弁28は、駆動モータ54(ステッピングモータ)の駆動で移動軸53を移動させることにより、
図2(a)の暖房運転の状態から、
図2(b)の給湯運転の状態へと切り換えることが可能である。
【0047】
三方弁28の切り換えを開始すると、バーナ3による加熱量(燃焼量)を給湯運転に応じた加熱量(以下、給湯加熱量)よりも小さく制限しておく制限期間を設定する(STEP11)。本実施例の暖房給湯装置1では、三方弁28を暖房運転の状態から給湯運転の状態へと切り換えるのに要する時間を、制限期間として設定するようになっている。そして、制限期間中は、バーナ3による加熱量を、従前の暖房加熱量のまま維持する(STEP12)。
【0048】
続いて、給湯加熱量と暖房加熱量との差が所定量(本実施例では150kcal/min)以上であるか否かを判断する(STEP13)。給湯加熱量は、水量センサ32で計測される上水の流量や、給水温度センサ34で検知される上水の温度や、リモコン41での給湯の設定温度に基づいて決定され、上水の流量が多かったり、上水の温度が低かったり、給湯の設定温度が高いと、給湯加熱量が大きくなる。給湯加熱量と暖房加熱量との差が所定量以上である場合は(STEP13:yes)、次に、戻り温度センサ24による熱媒の検知温度(以下、戻り温度)が所定の基準温度(本実施例では60度)以上であるか否かを判断する(STEP14)。
【0049】
そして、戻り温度が基準温度以上である場合は(STEP14:yes)、STEP11で設定した制限期間が経過したか否かを判断する(STEP15)。未だ制限期間が経過していない場合は(STEP15:no)、続いて、往き温度が停止温度(90度)以上であるか否かを判断する(STEP16)。往き温度が停止温度以上である場合は(STEP16:yes)、熱媒の過熱異常と判断されるため、バーナ3での燃焼を停止した後(STEP17)、
図5の移行処理から
図4の暖房運転中処理に復帰し、そのまま暖房運転中処理を終了する。その後、往き温度が所定の点火温度まで下がると、バーナ3での燃焼を再開して、給湯運転に移行する。
【0050】
これに対して、往き温度が停止温度未満である場合は(STEP16:no)、STEP14へと戻り、戻り温度が基準温度以上であるか否かの判断(STEP14)、および制限期間が経過したか否かの判断(STEP15)を繰り返すと共に、往き温度を監視する(STEP16)。そして、STEP14~16の処理を繰り返すうちに、戻り温度が基準温度以上のまま(STEP14:yes)、制限期間が経過した場合は(STEP15:yes)、燃焼ファン5の回転数を上げることで、バーナ3による加熱量(燃焼量)を暖房加熱量から給湯加熱量に変更する(STEP18)。その後、
図5の移行処理から
図4の暖房運転中処理に復帰すると、そのまま暖房運転中処理を終了する。こうして暖房運転から給湯運転へと移行した後も、往き温度の監視が行われる。
【0051】
一方、STEP13の判断において、給湯加熱量と暖房加熱量との差が所定量(150kcal/min)未満である場合は(STEP13:no)、現行の暖房加熱量に比べて給湯加熱量がそれほど大きくはなく、給湯加熱量で加熱されても熱媒が高温になり過ぎる(停止温度に達する)蓋然性が低いため、制限期間を解除して(STEP19)、バーナ3による加熱量を暖房加熱量から給湯加熱量に変更する(STEP18)。
【0052】
また、STEP14の判断において、戻り温度が基準温度(60度)未満である場合は(STEP14:no)、熱媒の温度がそれほど高くはなく、給湯加熱量で加熱されても熱媒が高温になり過ぎる(停止温度に達する)蓋然性が低いため、制限期間を解除して(STEP19)、バーナ3による加熱量を暖房加熱量から給湯加熱量に変更する(STEP18)。
【0053】
図6は、本実施例の暖房給湯装置1で暖房運転中に給湯運転の要請があった場合に、上述した移行処理に従って給湯運転に移行する様子を示した説明図である。前述した
図3と同様に、
図6の上段には、三方弁28の状態の時間変化が示されており、下段には、バーナ3による加熱量(燃焼量)の時間変化が模式的に示されている。
【0054】
暖房運転中に給湯運転の要請があると、まず、三方弁28の駆動モータ54(ステッピングモータ)の駆動で移動軸53を移動させることにより、
図2(a)の暖房運転の状態から
図2(b)の給湯運転の状態へと三方弁28の切り換えを開始する。また、三方弁28の切り換えに要する時間を、制限期間として設定する。
【0055】
この制限期間中は、バーナ3による加熱量を給湯加熱量よりも小さく制限しておくようになっており、本実施例の暖房給湯装置1では、従前の暖房加熱量に維持する。そして、三方弁28の切り換えが完了して制限期間が経過すると、燃焼ファン5の回転数を上げることで、バーナ3による加熱量を暖房加熱量から給湯加熱量に切り換える。
【0056】
このように本実施例の暖房給湯装置1では、暖房運転中に給湯運転の要請があった場合に、バーナ3による加熱量を制限しておく制限期間を設定し、熱媒の加熱が給湯加熱量で行われるようになるタイミングを遅らせることにより、往き温度が停止温度に達することを抑制できるため、バーナ3での燃焼の不要な停止を挟むことなく、設定温度での給湯が安定するまでの時間の短縮を図ることが可能となる。
【0057】
特に、本実施例の暖房給湯装置1では、制限期間中のバーナ3による加熱量を、三方弁28の切り換えを開始する前と同じ暖房加熱量に維持するので、他に異常がなければ、熱媒の温度の上昇が抑えられて停止温度に達することはなく、バーナ3での燃焼の不要な停止を確実に防止することができる。
【0058】
また、前述したように熱媒の温度の急上昇(過熱)は、三方弁28が暖房運転の状態から給湯運転の状態に切り換わるまでの間に、給湯加熱量で加熱された要求温度の高い熱媒が暖房端末20側へと流れることに起因する。そこで、本実施例の暖房給湯装置1では、制限期間の長さを、三方弁28の切り換えに要する時間に設定している。これにより、バーナ3による加熱量を給湯運転に応じて増加させるのを必要以上に制限して設定温度での給湯の安定が遅れてしまうことを抑制することができる。
【0059】
加えて、本実施例の暖房給湯装置1では、戻り温度が基準温度(60度)未満であれば、制限期間を途中で解除するようになっている。熱媒の温度がそれほど高くはなく、給湯加熱量で加熱されても熱媒が高温になり過ぎる(停止温度に達する)蓋然性が低い場合には、制限期間を解除して給湯加熱量に移行することにより、設定温度での給湯が安定するタイミングを早めることが可能となる。
【0060】
さらに、本実施例の暖房給湯装置1では、給湯加熱量と暖房加熱量との差が所定量(150kcal/min)未満であれば、制限期間を解除するようになっている。暖房加熱量に比べて給湯加熱量がそれほど大きくない場合は、給湯加熱量で加熱されても熱媒が高温になり過ぎる(停止温度に達する)蓋然性が低いので、制限期間を解除して給湯加熱量に移行することにより、設定温度での給湯が安定するタイミングを早めることが可能となる。
【0061】
上述した本実施例の暖房給湯装置1には、次のような変形例も存在する。以下では、上述の実施例とは異なる点を中心に変形例について説明する。尚、変形例の説明では、上述の実施例と同様の構成についての詳細な説明を省略する。
【0062】
図7は、変形例の移行処理のフローチャートである。変形例の移行処理を開始すると、三方弁28の切り換えを開始して(STEP20)、バーナ3による加熱量を給湯加熱量よりも小さく制限しておく制限期間を設定する(STEP21)。前述した実施例と同様に、変形例の制限期間の長さも、三方弁28の切り換えに要する時間に設定している。そして、バーナ3による加熱量は、暖房加熱量のまま、切り換えを保留しておく(STEP22)。
【0063】
続いて、給湯加熱量と暖房加熱量との差が所定量(150kcal/min)以上であるか否かを判断し(STEP23)、給湯加熱量と暖房加熱量との差が所定量以上である場合は(STEP23:yes)、次に、戻り温度が基準温度(60度)以上であるか否かを判断する(STEP24)。そして、戻り温度が基準温度以上である場合は(STEP24:yes)、STEP21で設定した制限期間が経過したか否かを判断し(STEP25)、未だ制限期間が経過していない場合は(STEP25:no)、制限期間内で単位時間が経過したか否かを判断する(STEP26)。
【0064】
変形例の暖房給湯装置1では、制限期間が複数(例えば10個)の単位時間に区切られており、制限期間内で単位時間が経過する毎にバーナ3での加熱量を給湯加熱量に向けて段階的に増加させるようになっている。そこで、単位時間が経過した場合は(STEP26:yes)、バーナ3による加熱量を1段階増加させる(STEP27)。尚、1段階で増加させる加熱量は、給湯加熱量と暖房加熱量との差を、制限期間を区切った単位時間の個数で割ったものとすることができる。
【0065】
一方、単位時間が経過していない場合は(STEP26:no)、STEP27の処理を省略して、往き温度が停止温度(90度)以上であるか否かを判断し(STEP28)、往き温度が停止温度以上である場合は(STEP28:yes)、バーナ3での燃焼を停止した後(STEP29)、
図7の移行処理から
図4の暖房運転中処理に復帰し、そのまま暖房運転中処理を終了する。
【0066】
これに対して、往き温度が停止温度未満である場合は(STEP28:no)、STEP24へと戻り、戻り温度が基準温度以上であるか否かの判断(STEP24)、および制限期間が経過したか否かの判断(STEP25)を繰り返すと共に、単位時間が経過する毎にバーナ3での加熱量を段階的に増加させながら(STEP26,27)、往き温度を監視する(STEP29)。そして、STEP24~28の処理を繰り返すうちに、制限期間が経過した場合は(STEP25:yes)、
図7の移行処理を終了して、
図4の暖房運転中処理に復帰する。尚、変形例の暖房給湯装置1では、制限期間内で単位時間が経過する毎にバーナ3での加熱量を段階的に増加させることにより、制限期間が経過した時点で、バーナ3による加熱量が給湯加熱量に達している。
【0067】
一方、STEP23の判断において、給湯加熱量と暖房加熱量との差が所定量(150kcal/min)未満である場合や(STEP23:no)、STEP24の判断において、戻り温度が基準温度(60度)未満である場合は(STEP24:no)、制限期間を解除して(STEP30)、バーナ3による加熱量を暖房加熱量から給湯加熱量に変更すると(STEP31)、
図7の移行処理を終了して、
図4の暖房運転中処理に復帰する。
【0068】
図8は、変形例の暖房給湯装置1で暖房運転中に給湯運転の要請があった場合に、上述した移行処理に従って給湯運転に移行する様子を示した説明図である。
図8の上段には、三方弁28の状態の時間変化が示されており、下段には、バーナ3による加熱量(燃焼量)の時間変化が模式的に示されている。暖房運転中に給湯運転の要請があると、三方弁28では、駆動モータ54(ステッピングモータ)の駆動で移動軸53を移動させることにより、暖房運転の状態から給湯運転の状態へと切り換えを開始する。また、三方弁28の切り換えに要する時間を、制限期間として設定する。
【0069】
変形例の制限期間は、複数(例えば10個)の単位時間に区切られており、制限期間内で単位時間が経過する毎にバーナ3での加熱量を給湯加熱量に向けて段階的に増加させるようになっている。そして、三方弁28の切り換えが完了して制限期間が経過すると、その時点で、バーナ3による加熱量が給湯加熱量に達している。
【0070】
このように変形例の暖房給湯装置1では、制限期間中のバーナ3による加熱量を、暖房加熱量に維持するのではなく、給湯加熱量に向けて徐々に増加させるようになっている。制限期間中は、三方弁28の切り換えの進行に伴い、給湯熱交換器27側へと流れる熱媒が増えていき、給湯熱交換器27で上水との熱交換によって熱媒の熱が消費されるので、バーナ3による加熱量を徐々に増加させれば、熱媒の温度の急上昇(過熱)を抑制することができる。そして、バーナ3による加熱量を制限しつつも徐々に給湯加熱量に近付けることにより、設定温度での給湯が安定するまでの時間を短縮することが可能となる。
【0071】
以上、本実施例および変形例の暖房給湯装置1について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0072】
例えば、前述した実施例および変形例では、暖房運転中に給湯運転の要請があると、暖房運転を停止して給湯運転に切り換える(三方弁28を暖房運転の状態から給湯運転の状態へと切り換える)ようになっていた。しかし、
図9に示されるように三方弁28を、暖房運転の状態と給湯運転の状態との中間状態(分岐通路26および端末側戻り通路22aの両方を開いた状態)で停止させることにより、第1熱交換器15から流出した熱媒は、暖房端末20および給湯熱交換器27の両方に振り分けられて循環することから、暖房運転と給湯運転とを同時に行う同時運転が可能である。
【0073】
このような同時運転に応じた加熱量(以下、同時加熱量)は、暖房運転に応じた暖房加熱量に加えて給湯運転に応じた給湯加熱量が必要となることから、一般に暖房加熱量に比べて大きくなる。尚、同時加熱量は、給湯加熱量と同じに設定される場合もある。そのため、暖房運転中に給湯運転の要請があって同時運転に移行する際にも、バーナ3による加熱量の増加と三方弁28の切り換えとの間にタイムラグが生じることにより、熱媒の温度が急上昇してバーナ3での燃焼を停止してしまうことがある。そこで、暖房運転から同時運転に移行する場合においても、前述した実施例や変形例と同様に制限期間を設定し、制限期間中のバーナ3による加熱量を同時運転における給湯加熱量よりも小さく制限しておくことにより、熱媒の温度が急上昇することを抑制できるため、バーナ3での燃焼の不要な停止を挟むことなく、設定温度での給湯が安定するまでの時間の短縮を図ることが可能となる。尚、この場合の制限期間は、三方弁28を暖房運転の状態から中間状態へと切り換えるのに要する時間に設定することができる。
【0074】
また、前述した実施例では、戻り温度が基準温度(60度)未満であると、制限期間を解除するようになっていた。しかし、戻り温度に代えて、往き温度を確認し、所定温度(例えば75度)未満であれば、制限期間を解除するようにしてもよい。こうすれば、第1熱交換器15で加熱された直後の熱媒の温度に基づいて、熱媒が高温になり過ぎる(停止温度に達する)蓋然性をより正確に判断することが可能となる。
【0075】
また、前述した実施例では、制限期間中のバーナ3による加熱量を暖房加熱量に維持し、前述した変形例では、制限期間中のバーナ3による加熱量を給湯加熱量に向けて徐々に増加させるようになっていた。しかし、制限期間中のバーナ3による加熱量は、給湯加熱量よりも小さく制限されていれば、これらに限られない。例えば、給湯加熱量に所定の減少率(例えば0.8)を掛けて制限してもよい。
【0076】
さらに、前述した変形例では、制限期間が複数の単位時間に区切られており、制限期間内で単位時間が経過する毎にバーナ3での加熱量を段階的に増加させるようになっていた。しかし、制限期間中のバーナ3による加熱量の増加は、段階的な増加に限られず、時間経過と共に連続的に増加させてもよい。また、三方弁28の切り換えの進行(駆動モータ54であるステッピングモータに入力したパルス数)と連動させて、制限期間中のバーナ3による加熱量を増加させてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…暖房給湯装置、 2…ハウジング、 3…バーナ、
4…燃焼ユニット、 5…燃焼ファン、 6…合流部、
7…空気供給路、 8…ガス供給路、 9…ゼロガバナ、
11…点火プラグ、 12…フレームロッド、 13…逆止弁、
15…第1熱交換器、 16…第2熱交換器、 17…排気ダクト、
18…排気口、 19…給気口、 20…暖房端末、
21…往き通路、 22…戻り通路、 23…循環ポンプ、
24…戻り温度センサ、 25…往き温度センサ、 26…分岐通路、
27…給湯熱交換器、 28…三方弁、 30…給水通路、
31…出湯通路、 32…水量センサ、 33…水量サーボ、
34…給水温度センサ、 35…給湯熱交出口温度センサ、
36…バイパス通路、 37…バイパスサーボ、 38…出湯温度センサ、
40…コントローラ、 41…リモコン、 50…弁室、
51…給湯側弁体、 52…暖房側弁体、 53…移動軸、
54…駆動モータ。