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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】コイル部品、電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/30 20060101AFI20221221BHJP
   H01F 27/33 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H01F27/30 160
H01F27/30 101C
H01F27/33
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019054113
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020155662
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】日本電産モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】笹木 哲
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】坂口 聖和
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-082268(JP,A)
【文献】特開2016-143818(JP,A)
【文献】国際公開第2003/036665(WO,A1)
【文献】特開昭50-065817(JP,A)
【文献】特開2006-032557(JP,A)
【文献】特開2016-092232(JP,A)
【文献】特開2016-122686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10-41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルの巻回部の一部を覆うようにベースに固定され、前記コイルの巻線に鎖交する磁束の磁路を形成するコアと、
前記コイルの前記巻回部の前記コアからの露出部分に装着され、前記巻回部の各ターンの間隔を確保するスペーサと、を備え、
前記コイルの巻線の端部が前記コイルに電流を流すための給電端子に接続されるコイル部品において、
前記コイルの前記巻回部が前記スペーサに対して接着剤により固定されており、
前記スペーサは、
前記巻回部の各ターン間に挿入される挿入部と、
前記巻回部の両端にある各端ターンを、隣接する中間のターンと反対側から覆う被覆部と、
前記各ターンの外周縁の近傍に設けられ、前記挿入部と前記被覆部とを保持する保持部と、を有し、
前記各ターンが、近接する前記挿入部、前記被覆部、および前記保持部に対して、前記接着剤により固定されている、ことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
請求項に記載のコイル部品において、
前記スペーサは、前記巻回部の前記露出部分の近傍に設けられた突出壁をさらに有し、
前記突出壁は、前記巻回部の周方向に連続しているとともに、前記巻回部から該巻回部の軸方向に突出しており、
前記巻回部の前記露出部分、該露出部分の近傍にある前記コアの近傍部分、および前記突出壁に渡って、接着剤が設けられることにより、前記巻回部の前記露出部分が、前記コアの近傍部分と前記突出壁とに対して固定されている、ことを特徴とするコイル部品。
【請求項3】
請求項に記載のコイル部品において、
前記コアと前記スペーサは、前記ベース上に固定され、
前記スペーサの前記突出壁は、前記巻回部の最上位置にある上端ターンにおける前記コアからの露出部分の近傍に、上方へ突出するように設けられ、
前記上端ターンの前記露出部分、該露出部分の近傍にある前記コアの近傍部分、および前記突出壁に渡って、前記接着剤が設けられている、ことを特徴とするコイル部品。
【請求項4】
請求項または請求項に記載のコイル部品において、
前記突出壁の前記巻回部側の側面に、前記巻回部に向かって傾斜する傾斜部が設けられている、ことを特徴とするコイル部品。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載のコイル部品と、
前記コイル部品に備わる前記コイルの両端部に、一端部がそれぞれ接続された一対の給電端子と、
前記給電端子の他端部がそれぞれ接続され、前記給電端子を介して前記コイルに電流を流すための電気回路と、
前記コイル部品に備わる前記コアを固定するベースと、を備えたことを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルを備えたコイル部品と、コイル部品を備えた電子装置に関し、特にコイルの防振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばチョークコイルやトランスなどのコイル部品には、コイルと、コイルの巻線に鎖交する磁束の磁路を形成するコアとが備わっている(たとえば特許文献1~6)。
【0003】
大電流が流れるコイルは、断面積が広い巻線を所定数巻回することにより形成されている。具体的には、金属板を加工して平角線を形成し、該平角線を短辺側の曲がり難い方向に巻回したエッジワイズコイルなどが、大電流用のコイルとして用いられる。
【0004】
コアは、たとえば、E形コアを2つ組み合わせたり、E形コアとI形コアとを1つずつ組み合わせたりすることで構成される。そして、各コアを組み合わせた状態で、3つの柱体が一列に配列される。そのうち、中央の柱体は、コイルの巻回部の内側に配置され、該中央の柱体の両側にある各柱体は、巻回部の外側に配置される。このため、コイルの巻回部の一部がコアにより覆われる。
【0005】
コイルの巻回部には、該巻回部の各ターンの間隔を確保するスペーサが装着されることがある(特許文献3~6)。たとえば特許文献3および特許文献4に開示されたスペーサは、コアから露出したコイルの巻回部の露出部分に、巻回部の外側から装着されている。また、特許文献5に開示されたスペーサは、コイルの巻回部を巻回軸方向の両側から覆い、かつ該巻回部を所定の直径方向の両側から覆うように、巻回部に装着されている。さらに、特許文献6に開示されているように、コイルの巻回部の内側に挿入されるボビンと一体になった突起状のスペーサもある。
【0006】
コイル部品を備えた電子装置には、他に、ベースと電気回路と給電端子などが備わっている(特許文献4~6)。ベースは、筐体やフレームなどから成る。コイル部品、電気回路、および給電端子は、ベース上に配置される。電気回路には、コイル部品のコイルに電流を流すための給電回路が含まれている。給電端子は、正極用と負極用の2個1対で設けられる。各給電端子の一端部は、コイルの巻線の両端部に接続される。各給電端子の他端部は、給電回路に接続される。このため、給電回路から給電端子を介して、コイルに電流が流れる。コイル部品のコアは、板ばねやねじなどの固定部材によってベースに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-76941号公報
【文献】特開2018-182218号公報
【文献】特開2013-42021号公報
【文献】特開2004-303816号公報
【文献】特許第5598400号公報
【文献】特許第4356928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
たとえば車載用の電子装置には、車体や走行駆動源から振動や衝撃などの外力が加わる。特に、エンジンの近傍に設置された電子装置には、車両の走行時などにエンジンから大きな振動や衝撃などの外力が加わる。このため、それらの電子装置に備わるコイル部品にも大きな外力が加わって、コイル部品のコイルの巻回部が振動するおそれがある。また、コイルの巻回部にスペーサが装着されている場合も、巻回部のターン間の間隔やスペーサの厚みのばらつきにより、巻線とスペーサとの間に隙間が生じるため、外力により巻回部が振動するおそれがある。そして、その巻回部の振動がコイルの巻線の端部と給電端子との接続部分に伝わって、該接続部分に応力が集中し、該接続部分が破断して、コイルに給電することができなくなるおそれがある。特に、平板状の巻線が複数巻回されたエッジワイズコイルなどでは、巻線の可撓性が低いため、大きな外力によって巻回部が振動すると、巻線の両端部と給電端子との接続部分に大きな応力が集中し、該接続部分が破断し易くなる。
【0009】
本発明は、コイル部品のコイルの巻回部の振動を抑制して、コイルと給電端子との接続部分の破断を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のコイル部品は、コイルと、このコイルの巻回部の一部を覆うようにベースに固定され、コイルの巻線に鎖交する磁束の磁路を形成するコアと、コイルの巻回部のコアからの露出部分に装着され、巻回部の各ターンの間隔を確保するスペーサとを備える。コイルの巻線の端部は、コイルに電流を流すための給電端子に接続されており、コイルの巻回部は、スペーサに対して接着剤により固定されている。スペーサは、巻回部の各ターン間に挿入される挿入部と、巻回部の両端にある各端ターンを、隣接する中間のターンと反対側から覆う被覆部と、各ターンの外周縁の近傍に設けられ、挿入部と被覆部とを保持する保持部とを有している。各ターンは、近接する挿入部、被覆部、および保持部に対して、接着剤により固定されている。
【0011】
本発明の電子装置は、上記コイル部品と、上記コイル部品に備わるコイルの両端部に一端部がそれぞれ接続された一対の給電端子と、給電端子の他端部がそれぞれ接続され、給電端子を介してコイルに電流を流すための電気回路と、コイル部品に備わるコアを固定するベースとを備える。
【0012】
上記の構成によると、コイル部品のコイルの巻回部のコアからの露出部分に、巻回部の各ターンの間隔を確保するスペーサが装着され、巻回部がスペーサに対して接着剤により固定されている。このため、外部から大きな振動や衝撃などの外力がコイル部品に加わっても、コイルの巻回部が振動するのをスペーサにより抑制することができる。そして、コイルの巻線の端部と給電端子との接続部分に外力により生じる応力を軽減して、該接続部分の破断を防止することができる。
【0015】
また、本発明において、スペーサは、コイルの巻回部のコアからの露出部分の近傍に設けられた突出壁をさらに有し、この突出壁は、巻回部の周方向に連続しているとともに、巻回部から該巻回部の軸方向に突出しており、巻回部の露出部分、該露出部分の近傍にあるコアの近傍部分、および突出壁に渡って、接着剤が設けられることにより、巻回部の露出部分がコアの近傍部分と突出壁に対して固定されてもよい。
【0016】
また、本発明において、コアとスペーサはベース上に固定され、スペーサの突出壁は、コイルの巻回部の最上位置にある上端ターンにおけるコアからの露出部分の近傍に、上方へ突出するように設けられ、上端ターンの露出部分、該露出部分の近傍にあるコアの近傍部分、および突出壁に渡って、接着剤が設けられてもよい。
【0017】
さらに、本発明において、上記突出壁の巻回部側の側面に、巻回部に向かって傾斜する傾斜部が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コイル部品のコイルの巻回部の振動を抑制して、コイルと給電端子との接続部分の破断を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態による電子装置の要部の斜視図である。
図2図1のコイル部品の近傍の平面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4図2のB-B断面図である。
図5図4のC部の拡大図である。
図6図4のD部の拡大図である。
図7図2のコイルの斜視図である。
図8図2のボビンの斜視図である。
図9図2のスペーサの斜視図である。
図10】本発明の第2実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0021】
図1は、第1実施形態の電子装置100の要部の斜視図である。電子装置100は、たとえば車載用のDC-DCコンバータであり、車両のエンジンの近傍に設置される。電子装置100には、ベース1、基板2、コイル部品3、および給電端子12などが備わっている。
【0022】
ベース1は金属製または樹脂製である。基板2はプリント基板から構成されている。ベース1上には、基板2がねじ11aにより固定されているとともに、コイル部品3が板ばね10とねじ11b、11cにより固定されている。基板2には、コイル部品3のコイルに電流を流すための電気回路2aが形成されている。他にも、DC-DCコンバータを構成する電子部品や電気回路が、ベース1や基板2に設けられている。
【0023】
図2は、コイル部品3の近傍の平面図である。図3は、図2のA-A断面図である。図4は、図2のB-B断面図である。図5は、図4のC部の拡大図である。図6は、図4のD部の拡大図である。
【0024】
コイル部品3は、チョークコイルから構成されている。コイル部品3には、コイル4、コア5a、コア5b、ボビン6、およびスペーサ7が備わっている(図1も参照)。
【0025】
図7は、コイル4の斜視図である。コイル4は、エッジワイズコイルから構成されている。すなわち、金属板を加工して平角線を形成し、該平角線を短辺側の曲がり難い方向に所定数巻回することにより、コイル4は形成されている。コイル4に大電流を安定に流すため、コイル4の巻線(平角線)の断面積は広くなっている。
【0026】
コイル4の巻回部4aの各ターン4a~4aは、所定の間隔で離間している。コイル4の両端部には、コイル4に電流を流すための端子部4bが設けられている。各端子部4bは、巻回部4aから該巻回部4aの径方向Hへ引き出されて、巻回部4aの軸方向Jの一方側(図7で上方)へ突出するように、折り曲げられている。
【0027】
各端子部4bの一端部は、図1図2、および図4に示すように、一対の給電端子12の一端部と溶接またははんだにより接続されている。各給電端子12の他端部は、基板2に形成された電気回路2a(図1図2)に接続されている。このため、電気回路2aから給電端子12を介して、コイル4に電流が流れる。
【0028】
コア5a、5bは、図3に示すように、断面がE形のフェライトコアからそれぞれ構成されている。そのうち、上側に配置されている上コア5aは、基部5cと、基部5cから下方へ突出する3つの凸部5m、5L、5rを有している。下側に配置されている下コア5bは、基部5dと、基部5dから上方へ突出する3つの凸部5m’、5L’、5r’を有している。凸部5m、5L、5rは、上コア5aの長手方向(図3で左右方向)に一列に並んでいる。凸部5m’、5L’、5r’も、下コア5bの長手方向(図3で左右方向)に一列に並んでいる。中央にある凸部5m、5m’に対して、左右にある凸部5L、5L’、5r、5r’の方が、基部5c、5dからの突出量が多くなっている。
【0029】
上コア5aの左右の凸部5L、5rの先端面と、下コア5bの左右の凸部5L’、5r’の先端面とをそれぞれ接触させて、該コア5a、5bは組み合わされている。そしてこの状態で、凸部5m、5L、5r、5m’、5L’、5r’から成る3つの柱体が左右方向に一列に配列されている。そのうち、中央の柱体を構成する凸部5mと凸部5m’との間には、直流重畳特性を高めるため、所定の大きさの隙間が設けられている。これにより、コイル4に大電流を流したときに、所定のインダクタンスが実現される。コア5a、5bの両側の柱体を構成する凸部5Lと凸部5L’ならびに凸部5rと凸部5r’は、それぞれ密着している。
【0030】
下コア5bの基部5dは、ベース1上の所定位置に載置されている。上コア5aには、上方から金属製の板ばね10の中央部が係合されている。板ばね10の両端部は、ねじ11bによりベース1に固定されている。つまり、コア5a、5bは、組み合わされた状態で、板ばね10によってベース1に押し付けるように固定されている。
【0031】
図3および図4に示すように、コア5a、5bの中央の凸部5m、5m’の周囲には、コイル4の巻回部4aが配置されている。すなわち、コア5a、5bの中央の凸部5m、5m’は、コイル4の巻回部4aの内側に配置されている。コア5a、5bの左右の凸部5L、5L’、5r、5r’は、コイル4の巻回部4aの外側に配置されている。このため、図1および図2に示すように、コイル4の巻回部4aの大部分は、コア5a、5bにより覆われている。コイル4の端子部4bは、コア5a、5bの一側方へ引き出されている。コア5a、5bは、コイル4の巻線に鎖交する磁束の磁路を形成する。
【0032】
図8は、ボビン6の斜視図である。ボビン6は、合成樹脂により形成された剛体である。ボビン6の基底部6aの中央には、貫通孔6hが形成されている。貫通孔6hの周縁には、基底部6aから上方へ突出するように、内側壁6bが立設されている。基底部6aの外周縁には、外側壁6cと脚部6dが設けられている。
【0033】
外側壁6cは、基底部6aから上方へ突出するように立設されている。外側壁6cには、開口部6kが形成されている。脚部6dは、貫通孔6hに対して外側壁6cと反対側に左右一対で設けられている。各脚部6dには、貫通孔6jが形成されている。
【0034】
図3および図4に示すように、ボビン6の内側壁6bの内側には、コア5a、5bの中央の凸部5m、5m’が挿入されている。ボビン6の内側壁6bと外側壁6cの間には、コイル4の巻回部4aが挿入されている。コイル4の端子部4bは、ボビン6の開口部6k(図8)から引き出されている。
【0035】
コイル4の巻回部4aは、ボビン6の基底部6aにより下方から支持されている。ボビン6の基底部6aは、下コア5bの基部5dにより下方から支持されている。ボビン6の内側壁6bは、コイル4の巻回部4aとコア5a、5bの中央の凸部5m、5m’との間に介在している。ボビン6の外側壁6cの一部は、コイル4の巻回部4aとコア5a、5bの左右の凸部5L、5L’、5r、5r’との間にそれぞれ介在している。
【0036】
ボビン6の基底部6aに対する内側壁6bと外側壁6cの高さは、コイル4の巻回部4aの高さより高くなっている。コイル4の巻回部4aと上コア5aの基部5cとは離間している。ボビン6は、基底部6a、内側壁6b、および外側壁6cにより、コイル4とコア5a、5bとを絶縁している。
【0037】
図1および図2に示すように、ボビン6の脚部6dは、ベース1により下方から支持されている。脚部6dの両端に設けられた貫通孔6j(図8)にねじ11c(図2)を貫通させて、そのねじ11cをベース1に複数設けられた図示しないねじ孔に螺合することにより、ボビン6はベース1上に固定されている。他の例として、ねじ11c以外に、接着剤や両面テープなどの他の固定部材により、ボビン6をベース1に固定してもよい。
【0038】
図1図2図4、および図5に示すように、ボビン6の一部とコイル4の一部とは、コア5a、5bから露出している。詳しくは、ボビン6の基底部6aの一部、外側壁6cの一部、および脚部6dが、コア5a、5bから露出している。また、コイル4の巻回部4aの一部と端子部4bとが、コア5a、5bから露出している。
【0039】
図1および図2に示すように、ボビン6の外側壁6cのコア5a、5bからの露出部分は、コイル4の巻回部4aのコア5a、5bからの露出部分の外周縁の近傍にあって、巻回部4aの周方向Gに連続し、かつ巻回部4aより軸方向Jに突出している。また、図4に示すように、ボビン6の外側壁6cのコア5a、5bからの露出部分の上端の高さは、上コア5aの基部5cの下面より高くて、基部5cの上面より低くなっている。
【0040】
コイル4の巻回部4aの最上位置にある上端ターン4aは、ベース1から最も離れた位置にあり、かつコイル4の一方の端子部4bからの線長が最も短くなっている。コア5a、5bに対して端子部4bと反対側にある、上端ターン4aの上コア5aからの露出部分は、図4および図5に示すように、該露出部分の近傍にある上コア5aの基部5cの近傍部分に対して、接着剤8により固定されている。
【0041】
上記の上端ターン4aが上コア5aに対して固定されるまでの工程は、以下のとおりである。まず、ベース1上の所定位置にコイル部品3が設置された状態で、コイル部品3の上方から自動機または手作業により、コア5a、5bに対して端子部4bと反対側にある上端ターン4aの上コア5aからの露出部分と、該露出部分の近傍にある上コア5aの基部5cの近傍部分とに渡って、硬化前の接着剤8が塗布される。接着剤8は、塗布時に液状で粘性を有し、硬化後に弾性を有するシリコン系またはゴム系の接着剤から成る。また、接着剤8は絶縁性を有している。塗布された接着剤8が硬化するまでに、コイル4の巻回部4aの径方向Hへ接着剤8が逸脱することが、ボビン6の外側壁6cの上コア5aからの露出部分によって抑止される。その後、接着剤8が硬化することで、上端ターン4aの一部が上コア5aとボビン6の外側壁6cに対して固定される。
【0042】
コイル4の巻回部4aの最下位置にある下端ターン4aは、ベース1から最も近い位置にあり、かつコイル4の他方の端子部4bからの線長が最も短くなっている。コア5a、5bに対して端子部4bと反対側にある、下端ターン4aの下コア5aからの露出部分は、該露出部分に近接するボビン6の基底部6aに対して、接着剤8により固定されている。
【0043】
上記の下端ターン4aがボビン6に対して固定されるまでの工程は、以下のとおりである。まず、ボビン6の貫通孔6hに対して開口部6kと反対側に位置する基底部6aの上面に、硬化前の接着剤8が塗布される。そして、ボビン6の内側壁6bと外側壁6cとの間に、コイル4の巻回部4aが挿入される。すると、下端ターン4aの一部の下コア5bからの露出部分と、該露出部分に近接するボビン6の基底部6aとに渡って、接着剤8が介在する。その後、接着剤8が硬化することで、下端ターン4aの一部がボビン6の基底部6aに対して固定される。
【0044】
図4などに示すように、コイル4の巻回部4aのコア5a、5bからの露出部分のうち、端子部4bに近い方の露出部分には、スペーサ7が装着されている。
【0045】
図9は、スペーサ7の斜視図である。スペーサ7は、合成樹脂により形成されている。スペーサ7は、挿入部7a、被覆部7b、保持部7c、突出壁7d、および傾斜部7eを有している。
【0046】
スペーサ7の挿入部7aは、上下方向に所定の間隔をおいて、複数設けられている。各挿入部7aは、図4および図6に示すように、コイル4の巻回部4aの各ターン4a~4a間に挿入される。
【0047】
被覆部7bは、挿入部7aの上側と下側に所定の間隔をおいて設けられている。各被覆部7bは、巻回部4aの軸方向Jの両端にある各端ターン4a、4aの一部を、それぞれに隣接する中間のターン4a、4aと反対側から被覆する。下側の被覆部7bは、ボビン6の基底部6aにより下方から支持されている。
【0048】
保持部7cは、各ターン4a~4aの外周縁の近傍に設けられ、挿入部7aと被覆部7bとを保持する。スペーサ7は、挿入部7a、被覆部7b、および保持部7cにより、コイル4の巻回部4aの各ターン4a~4aの軸方向Jの間隔を確保する。
【0049】
突出壁7dは、図4および図6で上側にある一方の被覆部7bから、上方に突出するように設けられている。そして、この突出壁7dは、コイル4の巻回部4aのコア5a、5bからの露出部分の外周縁の近傍にあって、巻回部4aの周方向G(図2)に連続し、かつ巻回部4aより軸方向Jに突出している。また、突出壁7dは、上コア5aの基部5cから離間している。
【0050】
突出壁7dの高さは、上コア5aの基部5cの下面より高くて、基部5cの上面より低くなっている。突出壁7dの巻回部4a側の側面には、傾斜部7eが設けられている。傾斜部7eは、下方にある巻回部4aに向かって傾斜している。
【0051】
コア5a、5bに対して端子部4b側にある、コイル4の上端ターン4aの上コア5aからの露出部分は、図4および図6に示すように、該露出部分の近傍にある上コア5aの基部5cの近傍部分とスペーサ7に対して、接着剤8により固定されている。
【0052】
上記の上端ターン4aが上コア5aとスペーサ7に対して固定されるまでの工程は、以下のとおりである。まず、ベース1上の所定位置にコイル部品3が設置された状態で、コイル部品3の上方から自動機または手作業により、スペーサ7の傾斜部7eと、コア5a、5bに対して端子部4b側を向いた上コア5aの基部5cの側面とに渡って、硬化前の接着剤8が塗布される。すると、硬化前の接着剤8が、スペーサ7の傾斜部7eに沿って流れて行って、コア5a、5bに対して端子部4b側にあるコイル4の上端ターン4aの上コア5aからの露出部分と、該露出部部分の近傍にある上コア5aの基部5cの近傍部分とに渡って、接着剤8が塗布された状態となる。また、塗布された接着剤8が硬化するまでに、コイル4の巻回部4aの径方向Hへ接着剤8が逸脱することが、スペーサ7の突出壁7dによって抑止される。その後、接着剤8が硬化することで、端子部4bに最も近い上端ターン4aの一部が上コア5aとスペーサ7に対して固定される。
【0053】
コイル4の上端ターン4aはまた、他のターン4a~4aと同様に、スペーサ7の内部において接着剤8により固定されている。これらの各ターン4a~4aがスペーサ7に対して固定されるまでの工程は、以下のとおりである。まず、スペーサ7の隣接する挿入部7aと被覆部7bとの間、および隣接する挿入部7aと挿入部7aとの間に、硬化前の接着剤8が塗布される。そして、図4および図6に示すように、コア5a、5bに対してコイル4の端子部4b側にある巻回部4aの一部にスペーサ7が装着される。すると、コイル4の端ターン4a、4aと、該端ターン4a、4aを囲むスペーサ7の挿入部7a、被覆部7b、および保持部7cの間に、接着剤8が行き渡る。また、コイル4の中間のターン4a、4aと、該ターン4a、4aを囲むスペーサ7の挿入部7aおよび保持部7cの間に、接着剤8が行き渡る。その後、接着剤8が硬化することで、各ターン4a~4aがスペーサ7の挿入部7a、被覆部7b、および保持部7cに対して固定される。
【0054】
スペーサ7の下側の被覆部7bは、ボビン6の基底部6aに対して接着剤8により固定されている。この下側の被覆部7bがボビン6に対して固定されるまでの工程は、以下のとおりである。まず、ボビン6の貫通孔6hに対して開口部6k側にある基底部6aの上面に、硬化前の接着剤8が塗布される。そして、スペーサ7が装着されたコイル4の巻回部4aが、ボビン6の内側壁6bと外側壁6cとの間に挿入される。すると、スペーサ7の下側の被覆部7bと、これに近接するボビン6の基底部6aとに渡って、接着剤8が介在する。その後、接着剤8が硬化することで、スペーサ7の下側の被覆部7bがボビン6に対して固定される。さらにその後、図1図2に示したように、ボビン6がねじ11cによりベース1上に固定されることで、スペーサ7がボビン6を介してベース1上に固定される。
【0055】
以上の第1実施形態によると、コイル部品3のコア5a、5bから露出したコイル4の巻回部4aの露出部分に、巻回部4aの各ターン4a~4aの間隔を確保するスペーサ7が装着され、巻回部4aがスペーサ7に対して接着剤8により固定されている。このため、外部から大きな振動や衝撃などの外力がコイル部品3に加わっても、コイル4の巻回部4aが振動するのをスペーサ7により抑制することができる。そして、コイル4の巻線の端部にある端子部4bと給電端子12との接続部分に外力により生じる応力を軽減して、該接続部分の破断を防止することができる。
【0056】
また、第1実施形態では、コイル4の巻回部4aの端にあるターン4a、4aが、スペーサ7の被覆部7b、挿入部7a、および保持部7cに対して接着剤8により固定されている。また、中間にあるターン4a、4aが、スペーサ7の挿入部7aおよび保持部7cに対して接着剤8により固定されている。つまり、各ターン4a~4aが、スペーサ7により軸方向Jの両側と径方向Hの外側とから、動かないように拘束されている。このため、各ターン4a~4aが外力によって振動するのを防止して、コイル4の各端子部4bと給電端子12との接続部分にかかる応力を軽減し、該接続部分の破断を一層効果的に防止することができる。また、各ターン4a~4aが外力によって短絡することも防止することができる。
【0057】
また、第1実施形態では、コイル4の上端ターン4aの上コア5aからの露出部分が、スペーサ7の上部に設けられた突出壁7dと、上コア5aの基部5cとに対して、接着剤8により固定されている。このため、コイル4の各ターン4a~4aのうち、最も振動し易い上端ターン4aが外力によって振動するのを確実に防止し、コイル4の巻回部4a全体が外力によって振動するのを一層抑制することができる。その結果、コイル4の一方の端子部4bと一方の給電端子12との接続部分に外力により生じる応力を大幅に軽減して、該接続部分の破断を一層効果的に防止することができる。また、コイル部品3をベース1上に設置してから、上コア5aから露出した上端ターン4aの露出部分と、スペーサ7の突出壁7dと、上コア5aの基部5cとに渡って、接着剤8を容易に塗布することができるので、作業性が向上する。さらに、塗布された接着剤8が、コイル4の巻回部4aの径方向Hへ逸脱するのを、突出壁7dにより抑止することができる。
【0058】
また、第1実施形態では、スペーサ7の突出壁7dの巻回部4a側の側面に、巻回部4aに向かって傾斜する傾斜部7eが設けられている。このため、上方から塗布された接着剤8が、傾斜部7eに沿ってスムーズに流れて行き、コイル4の上端ターン4aの上コア5aからの露出部分の上面と、上コア5aの基部5cの近傍部分との間に、接着剤8が確実に行き渡る。そして、接着剤8が硬化することで、上端ターン4aと上コア5aとスペーサ7とを、接着剤8により確実に固定することができる。
【0059】
さらに、第1実施形態では、コア5a、5bとボビン6が、板ばね10やねじ11b、11cによってベース1上に固定されている。そして、スペーサ7の上部が、上コア5aに対して接着剤8によって固定され、スペーサ7の下部がボビン6に対して接着剤8によって固定されている。つまり、スペーサ7がコア5a、5bやボビン6を介してベース1に固定されている。このため、スペーサ7に固定されたコイル4の巻回部4aの外力による振動をより確実に防止することができる。
【0060】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。
【0061】
たとえば、第1実施形態では、コイル部品3にボビン6を設けた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではなく、ボビン6は省略してもよい。その場合、図10に示す第2実施形態のように、コア5a、5bに対して端子部4bと反対側において、コア5a、5bから露出した巻回部4aの上端ターン4aの露出部分を、その近傍にある上コア5aの基部5cの近傍部分に対して、接着剤8により固定すればよい。また、コア5a、5bから露出した巻回部4aの下端ターン4aの露出部分の下方に近接するように、ベース1上に凸状の剛体1tを設けてもよい。この場合、下端ターン4aのコア5a、5bからの露出部分の下面と、剛体1tの上面とに渡って接着剤8を塗布し、該接着剤8により下端ターン4aを剛体1tに対して固定すればよい。さらに、コア5a、5bに対して端子部4b側において、コア5a、5bから露出したスペーサ7の露出部分の下方に近接するように、ベース1上に凸状の剛体1uを設けてもよい。この場合、スペーサ7の露出部分の下面と、剛体1uの上面とに渡って接着剤8を塗布し、該接着剤8によりスペーサ7を剛体1uに対して固定することで、スペーサ7がベース1に対して固定された状態となる。
【0062】
また、以上の実施形態では、挿入部7a、被覆部7b、保持部7c、突出壁7d、および傾斜部7eを有するスペーサ7を例に示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。たとえば挿入部7aと保持部7cとから構成されたスペーサのような、他の形状のスペーサを用いてもよい。
【0063】
また、以上の実施形態では、コイル4として、金属板を加工した平角線を巻回してなるエッジワイズコイルを例に挙げたが、本発明はこれのみに限定するものではない。コイルは、たとえば断面が円形の導線を巻回したものであってもよいし、その他の断面形状を有する導線を巻回したものであってもよい。
【0064】
また、以上の実施形態では、断面がE形のフェライトコア5a、5bを組み合わせてコアを構成した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。たとえば、断面がE形のフェライトコアと、断面がI形のフェライトコアとを組み合わせてコアを構成してもよい。また、その他の磁性体から成るコアを用いてもよい。
【0065】
また、以上の実施形態では、チョークコイルから成るコイル部品3に対して本発明を適用した例を示したが、トランスなどのような他のコイル部品に対しても本発明は適用することが可能である。
【0066】
さらに、以上の実施形態では、車両のエンジンの近傍に設置される車載用のDC-DCコンバータから成る電子装置100と、該電子装置100に備わるコイル部品3に対して本発明を適用した例を挙げたが、その他の車載用の電子装置や、車載用以外の電子装置や、それらに備わるコイル部品に対しても、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 ベース
2a 電気回路
3 コイル部品
4 コイル
4a 巻回部
4a 上端ターン
4a 下端ターン
4a、4a 中間のターン
4b 端子部
5a 上コア
5b 下コア
7 スペーサ
7a 挿入部
7b 被覆部
7c 保持部
7d 突出壁
7e 傾斜部
8 接着剤
12 給電端子
100 電子装置
G 周方向
J 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10