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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】懸架装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/44 20060101AFI20221221BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20221221BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F16F9/44
F16F1/12 N
F16F9/32 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019054147
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020153467
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】KYBモーターサイクルサスペンション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】秋本 政信
(72)【発明者】
【氏名】岩村 文明
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/089581(WO,A1)
【文献】特開2000-130490(JP,A)
【文献】特開2013-199976(JP,A)
【文献】実開昭60-108503(JP,U)
【文献】特開2002-054677(JP,A)
【文献】特開2019-060386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/12
F16F 9/00-9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブと、前記アウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮する伸縮部材と、
前記伸縮部材の外周に設けられて前記伸縮部材を伸長方向へ付勢する懸架ばねと、
前記アウターチューブと前記ロッドの何れか一方の外周に周方向に回転可能で軸方向に移動可能に装着されて、前記懸架ばねの一端を支持する環状のばね受と、
前記ばね受の装着される前記アウターチューブ又は前記ロッドの外周の、前記ばね受の反懸架ばね側に設けられて、前記ばね受の反懸架ばね側への移動を規制する環状の規制部材と、
前記ばね受と前記規制部材の何れか一方の周方向に120度の位相差をもって設けられる三つのカム部と、
前記ばね受と前記規制部材の何れか他方の周方向に等間隔で設けられる三つの突部とを備え、
前記カム部は、それぞれ、軸方向高さの異なる複数のカム面を有し、
前記カム面は、それぞれ、傾斜角度の等しい傾斜面を含み、
前記突部は、それぞれ、前記傾斜面に沿って傾斜して前記傾斜面に当接可能な当接面を有し、
前記傾斜面と前記当接面がそれぞれ当接した状態で車両における車輪を懸架する
ことを特徴とする懸架装置。
【請求項2】
アウターチューブと、前記アウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮する伸縮部材と、
前記伸縮部材の外周に設けられて前記伸縮部材を伸長方向へ付勢する懸架ばねと、
前記アウターチューブと前記ロッドの何れか一方の外周に周方向に回転可能で軸方向に移動可能に装着されて、前記懸架ばねの一端を支持する環状のばね受と、
前記ばね受の装着される前記アウターチューブ又は前記ロッドの外周の、前記ばね受の反懸架ばね側に設けられて、前記ばね受の反懸架ばね側への移動を規制する環状の規制部材と、
前記ばね受と前記規制部材の何れか一方の周方向に120度の位相差をもって設けられる三つのカム部と、
前記ばね受と前記規制部材の何れか他方の周方向に等間隔で設けられる三つの突部と、
前記アウターチューブの径方向視で前記アウターチューブと重なり合う位置に設けられるタンクとを備え、
前記カム部は、それぞれ、軸方向高さの異なる複数のカム面を有し、
前記カム面は、それぞれ、傾斜角度の等しい傾斜面を含み、
前記突部は、それぞれ、前記傾斜面に沿って傾斜して前記傾斜面に当接可能な当接面を有し、
前記アウターチューブと前記タンクとの間に前記ばね受と前記規制部材の周方向の一部が配置されるとともに、前記規制部材の前記アウターチューブに対する周方向の回転が規制されており、
前記規制部材の外周には、前記タンクを正面に向けて前記アウターチューブを見たとき前記アウターチューブの左右となる位置に、それぞれ目印が設けられており、
前記ばね受には、前記目印と対応する位置に、それぞれ前記突部の当接する前記カム面を示す目盛が設けられており、
前記突部は、前記カム部と一対一の関係で対応しており、
対応関係にない前記突部と前記カム部の組み合わせになるのを防ぐ誤組防止部が設けられる
ことを特徴とする懸架装置。
【請求項3】
前記各カム部を構成する複数の前記カム面の中で、前記懸架ばねから最も離れた位置にある前記カム面を第一のカム面とし、
前記各カム部の前記第一のカム面側の端を始端、前記第一のカム面とは反対側の端を終端とすると、
前記傾斜面は、それぞれ、前記終端へ向かうに従って前記懸架ばねに接近する方向へ傾斜しており、
前記各カム部の前記第一のカム面の始端側には、前記傾斜面とは逆向きに傾斜する逆斜面が設けられており、
前記突部の前記当接面が前記第一のカム面の前記傾斜面に当接した状態で、前記逆斜面と前記突部との間に隙間ができるとともに、隣り合う前記突部の間に設けられる底部と前記カム部との間に隙間ができる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の懸架装置。
【請求項4】
前記アウターチューブの径方向視で前記アウターチューブと重なり合う位置にタンクが設けられ、
前記アウターチューブと前記タンクとの間に、前記ばね受と前記規制部材の周方向の一部が配置されており、
前記規制部材の前記アウターチューブに対する周方向の回転が規制されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項1に従属する請求項3に記載の懸架装置。
【請求項5】
前記規制部材の外周には、前記タンクを正面に向けて前記アウターチューブを見たとき前記アウターチューブの左右となる位置に、それぞれ目印が設けられており、
前記ばね受には、前記目印と対応する位置に、それぞれ前記突部の当接する前記カム面を示す目盛が設けられており、
前記突部は、前記カム部と一対一の関係で対応する
ことを特徴とする請求項に記載の懸架装置。
【請求項6】
前記傾斜面と前記当接面とが平行であって、
前記ばね受と前記規制部材が常に周方向の三カ所で当接する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、懸架装置は、車両において車輪を懸架するのに利用されている。このような懸架装置の中には、アウターチューブと、このアウターチューブに出入りするロッドとを有して、伸縮時に減衰力を発揮するダンパ等の伸縮部材を備えるとともに、伸縮部材の外周に配置され、伸縮部材を伸長方向へ付勢して車体を弾性支持する懸架ばねを備え、懸架ばねのイニシャル荷重をカム機構で調節できるものがある。
【0003】
そのような懸架装置では、懸架ばねの一端を支持するばね受が環状で、アウターチューブ又はアウターチューブ外へ突出するロッドの外周を覆う筒状のカバーの外周に周方向へ回転可能で、軸方向へ移動可能に装着されている。さらに、アウターチューブ又はカバーの外周であってばね受の懸架ばねとは反対側には規制部材が固定され、この規制部材でばね受の反懸架ばね側への移動が規制されている。
【0004】
そして、ばね受の規制部材側の端部には、軸方向高さの異なる複数のカム面を含むカム部が設けられている。その一方、規制部材には、ばね受側へ突出し、その先端が丸みを帯びてカム面の何れかに選択的に当接する突部が設けられている。これにより、ばね受を回転して突部の当接するカム面を変更すると、アウターチューブ又はカバーに対するばね受の軸方向位置が変更されて、懸架ばねのイニシャル荷重を調節できる(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-085378号公報
【文献】実願昭58-205153号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特開2007-085378号公報に記載の懸架装置では、突部の数が一つであり、ばね受と規制部材とが一点で当接する。これにより、懸架ばねのばね力がその一点に集中して作用するので、ばね受と規制部材の耐久性を確保したり、規制部材の接合強度を確保したりするため、ばね受と規制部材を鉄等の強度に優れる金属で形成して規制部材をカバーに溶接しており、ばね受と規制部材の重量が嵩む。
【0007】
また、実願昭58-205153号に記載の懸架装置のように、カム部を含むばね受はアウターチューブの外周に装着されることがあり、このような場合には、規制部材もアウターチューブの外周に固定される。しかし、アウターチューブの内周にピストン、フリーピストン等の摺動部材が摺接する場合等には、アウターチューブに溶接歪みが生じるのを防ぐため、アウターチューブに規制部材を直接溶接できないことがある。この場合、アウターチューブの外周に規制部材を溶接するためのプロテクタチューブを設ける等の対策が必要となって非常に手間がかかる。
【0008】
そこで、本発明は、ばね受と規制部材を従来より強度が低くて軽量な材料で形成できるとともに、規制部材の溶接を不要にできる懸架装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の懸架装置は、懸架ばねの一端を支持する環状のばね受と、そのばね受の反懸架ばね側への移動を規制する環状の規制部材と、ばね受と規制部材の何れか一方の周方向に120度の位相差をもって設けられる三つのカム部と、ばね受と規制部材の何れか他方の周方向に等間隔で設けられる三つの突部とを備え、カム部がそれぞれ軸方向高さの異なる複数のカム面を有し、各カム面がそれぞれ傾斜角度の等しい傾斜面を含み、突部がそれぞれ傾斜面に沿って傾斜して傾斜面に当接可能な当接面を有し、傾斜面と当接面がそれぞれ当接した状態で車両における車輪を懸架する。
【0010】
上記構成によれば、突部とカム部が三つずつ設けられ、ばね受と規制部材の周方向の三カ所に、面接触する当接部ができる。これにより、従来の突部が一つしかない懸架装置と比較して、ばね受と規制部材の接触面積が増え、懸架ばねのばね力が分散して作用するので、懸架ばねのばね力によってばね受と規制部材との当接部に加わる圧力が従来より低減される。
【0011】
さらに、上記構成によれば、ばね受が周方向の三カ所で規制部材に支えられるので、ばね受の規制部材に対するガタツキを防止でき、そのガタツキに起因する異音の発生も防止できる。
【0012】
また、上記懸架装置では、各カム部を構成する複数のカム面の中で、懸架ばねから最も離れた位置にあるカム面を第一のカム面とし、各カム部の第一のカム面側の端を始端、第一のカム面とは反対側の端を終端としたときに、傾斜面がそれぞれ終端へ向かうに従って懸架ばねに接近する方向へ傾斜するとともに、各カム部の第一のカム面の始端側に、傾斜面とは逆向きに傾斜する逆斜面が設けられていて、突部の当接面が第一のカム面の傾斜面に当接した状態で、逆斜面と突部との間に隙間ができるとともに、隣り合う突部の間に設けられる底部とカム部との間に隙間ができていてもよい。このようにすると、突部とカム部に寸法上の誤差が多少生じたとしても、突部と第一のカム面とを確実に当接させられるので、ばね受が周方向の三カ所で規制部材に支えられ、ガタツキに起因する異音の発生を防止できる。
【0013】
また、上記懸架装置では、アウターチューブの径方向視でアウターチューブと重なり合う位置にタンクが設けられるとともに、これらの間にばね受と規制部材の周方向の一部が配置され、規制部材のアウターチューブに対する周方向の回転が規制されていてもよい。このようにすると、作業者がばね受に工具等を引っ掛けて回転した際に、ばね受と規制部材が共回りしないので、工具等を利用してばね受を規制部材に対して容易に回転できる。そして、工具等を利用してばね受を規制部材に対して回転すれば、懸架ばねのイニシャル荷重調整時に、ばね受とタンクとの間、又は規制部材とタンクとの間に作業者の手が引き込まれるのを防止できる。
【0014】
また、上記懸架装置では、規制部材の外周であって、タンクを正面に向けてアウターチューブを見たときアウターチューブの左右となる位置に、それぞれ目印が設けられるとともに、ばね受の各目印と対応する位置に、それぞれ突部の当接するカム面を示す目盛が設けられていて、突部がカム部と一対一の関係で対応してもよい。このようにすると、作業者が目印を視認しやすい。さらに、三つの突部又は三つのカム部をもつばね受と規制部材に、それぞれ二組の目盛と二つの目印を設けても、突部がカム部と一対一の関係で対応しているので、同じ目盛に合せたにも関わらず、懸架ばねのイニシャル荷重が異なる設定となる不具合の発生を防止できる。さらに、上記懸架装置では、傾斜面と当接面とが平行であって、ばね受と規制部材が常に周方向の三カ所で当接するようになっていてもよい。
【0015】
また、上記課題を解決する他の発明の懸架装置は、懸架ばねの一端を支持する環状のばね受と、そのばね受の反懸架ばね側への移動を規制する環状の規制部材と、ばね受と規制部材の何れか一方の周方向に120度の位相差をもって設けられる三つのカム部と、ばね受と規制部材の何れか他方の周方向に等間隔で設けられる三つの突部と、アウターチューブの径方向視でアウターチューブと重なり合う位置に設けられるタンクとを備え、カム部がそれぞれ軸方向高さの異なる複数のカム面を有し、カム面がそれぞれ傾斜角度の等しい傾斜面を含み、突部がそれぞれ傾斜面に沿って傾斜して傾斜面に当接可能な当接面を有し、アウターチューブとタンクとの間にばね受と規制部材の周方向の一部が配置されるとともに規制部材のアウターチューブに対する周方向の回転が規制されており、規制部材の外周にはタンクを正面に向けてアウターチューブを見たときアウターチューブの左右となる位置にそれぞれ目印が設けられており、ばね受には前記目印と対応する位置にそれぞれ突部の当接するカム面を示す目盛が設けられており、突部はカム部と一対一の関係で対応しており、対応関係にない突部とカム部の組み合わせになるのを防ぐ誤組防止部が設けられている。このようにすると、上記本発明の懸架装置と同様の効果を発揮できるとともに、前述のような、同じ目盛に合せたにも関わらず、懸架ばねのイニシャル荷重が異なる設定となる不具合の発生を容易且つ確実に防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る懸架装置によれば、ばね受と規制部材を従来より強度が低くて軽量な材料で形成できるとともに、規制部材の溶接固定を不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る懸架装置であるリアクッション装置を搭載した車両の右側面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る懸架装置であるリアクッション装置の右側面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る懸架装置であるリアクッション装置の上側のばね受及び規制部材を分解して示した斜視図である。
図4図3に示す上側のばね受の平面図である。
図5図3に示す規制部材を斜め下方から見た斜視図である。
図6】(a)は、図3に示す上側のばね受のカム面を含む上端形状を説明する説明図である。(b)は、(a)の部分拡大図である。
図7図3に示す規制部材の当接面を含む下端形状を説明する説明図である。
図8図3に示す上側のばね受と規制部材を組み立てたときの、カム面及び当接面を含む対向面の形状を説明する説明図である。
図9】本発明の一実施の形態に係る懸架装置であるリアクッション装置の上側のばね受と規制部材の変形例を示し、その変形例に係る上側のばね受及び規制部材を分解して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態の懸架装置について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品(部分)か対応する部品(部分)を示す。
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る懸架装置は、自動二輪車1の後輪18を懸架するリアクッション装置Sとして利用されている。以下の説明では、自動二輪車1を構成する各部材において、特別な説明がない限り、各部材の自動二輪車1への取付状態であって、その自動二輪車1のシート16に着座したライダーから見た「上」「下」「左」「右」「前」「後」を、単に「上」「下」「左」「右」「前」「後」という。
【0020】
自動二輪車1は、その車体10の骨格となる車体フレーム11と、その前部にステアリングシャフト12を介して左右方向(図1中紙面手前奥方向)へ回転可能に取り付けられるフロントフォーク13と、その下部に支持される前輪14と、ステアリングシャフト12の上端に連結されるハンドル15と、車体フレーム11に載置されるシート16と、車体フレーム11の後部に上下方向へ揺動可能に連結されるスイングアーム17と、その後部に支持される後輪18と、車体フレーム11とスイングアーム17との間に介装されるリアクッション装置Sと、車体フレーム11に支持されるエンジン19と、エンジン19で発生した駆動力を後輪18へ伝える動力伝達装置(図示せず)とを備える。
【0021】
車体フレーム11は、自動二輪車1の前部に配置されるヘッドパイプ11aと、このヘッドパイプ11aの後部から後方へ、下向きに延びるダウンフレーム11bと、このダウンフレーム11bの下端部から後方へ延びるアンダーフレーム11cと、このアンダーフレーム11cの後端部から後方へ、上向きに延びるリアフレーム11dとを有する。
【0022】
そして、ヘッドパイプ11a内には、ステアリングシャフト12が回転可能に挿入されている。また、リアフレーム11dにシート16が支持されるとともに、リアクッション装置Sが連結されている。さらに、車体フレーム11を覆うようにフロントカバー10aとセンターカバー10bが設けられ、アンダーフレーム11cの下方となる位置に、ライダーが足を置くフットボード10cがセンターカバー10bと連結して設けられている。
【0023】
なお、本発明の一実施の形態の懸架装置であるリアクッション装置Sが搭載される車両は図1に示す自動二輪車1に限られない。また、本発明に係る懸架装置は、例えば、トライク、逆トライク、又はバギー等の自動二輪車以外の鞍乗型車両、或いは、鞍乗型車両以外の車両に利用されていてもよい。さらに、本発明に係る懸架装置を搭載する車両によっては、本発明に係る懸架装置が前輪を懸架するのに利用されていてもよい。
【0024】
つづいて、本発明の一実施の形態に係る懸架装置であるリアクッション装置Sについて説明する。図2に示すように、リアクッション装置Sは、ダンパ2と、その外周に設けられる懸架ばね3とを備える。
【0025】
ダンパ2は、アウターチューブ20と、このアウターチューブ20に出入りして一端がアウターチューブ20から下方へ突出するロッド21と、アウターチューブ20の後方に配置されるタンク22と、アウターチューブ20とタンク22の上端を連結する連結部材23とを備える。連結部材23には、アウターチューブ20をリアフレーム11dに連結する車体側ブラケット24が設けられている。その一方、アウターチューブ20外へ突出するロッド21の下端には、ロッド21をスイングアーム17に連結する車輪側ブラケット25が設けられている。
【0026】
これら車体側ブラケット24と車輪側ブラケット25を介してダンパ2が車体10と後輪18との間に介装される。そして、自動二輪車1が凹凸のある路面を走行する等して後輪18が車体10に対して上下に振動し、スイングアーム17が上下に揺動すると、ロッド21がアウターチューブ20に出入りしてダンパ2が伸縮する。このように、本実施の形態では、ダンパ2が懸架装置における伸縮部材となっている。そして、上記したようにダンパ(伸縮部材)2が伸縮することを、リアクッション装置(懸架装置)Sが伸縮するともいう。
【0027】
また、図示しないが、アウターチューブ20内には作動油等の液体が収容されるとともに、ピストンが摺動可能に挿入されている。このピストンは、アウターチューブ20内に挿入されるロッド21の上端に連結されている。そして、ダンパ2の伸縮時にロッド21がアウターチューブ20に出入りすると、ピストンがアウターチューブ20内を上下(軸方向)に移動する。この際、液体がアウターチューブ20内を移動したり、連結部材23に形成される通路を通ってアウターチューブ20とタンク22との間を移動したりするとともに、その液体の流れに抵抗が付与される。これにより、ダンパ2の伸縮時には、その抵抗に起因する減衰力が発生する。
【0028】
このように、本実施の形態では、伸縮部材であるダンパ2が液圧ダンパとなっている。さらに、そのダンパ2は、片ロッド型で、アウターチューブ20内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド21がピストンの片側に設けられている。また、ダンパ2は、倒立型で、アウターチューブ20が上側(車体側)に、ロッド21が下側(車輪側)に配置されている。
【0029】
しかし、ダンパ2の構成は、適宜変更できる。例えば、ダンパが両ロッド型で、ロッドがピストンの両側に設けられていてもよい。また、ダンパが正立型で、アウターチューブが車輪側に、ロッドが車体側に配置されていてもよい。また、ダンパが、電磁力、摩擦抵抗等を利用して減衰力を発生する液圧ダンパ以外のダンパであってもよい。さらには、伸縮部材は、アウターチューブ20と、これに軸方向へ移動可能に挿入されるロッド21とを備えていれば、ダンパでなくてもよく、例えば、懸架ばねを支えるガイド等であってもよい。
【0030】
つづいて、懸架ばね3は、コイルばねである。この懸架ばね3の軸方向の両端は、上下の環状のばね受4,8で支持される。上側のばね受4は、アウターチューブ20の外周に周方向へ回転可能で軸方向へ移動可能に装着されており、この上側のばね受4のアウターチューブ20に対する上方への移動が規制部材5で規制される。その一方、下側のばね受8は、アウターチューブ20外へ突出するロッド21の下端部外周に、車輪側ブラケット25でロッド21に対する下方への移動が規制された状態で装着されている。
【0031】
このように、懸架ばね3の一端は、上側のばね受4と規制部材5を介してアウターチューブ20に支えられ、懸架ばね3の他端は、下側のばね受8と車輪側ブラケット25を介してロッド21に支えられている。つまり、懸架ばね3は、アウターチューブ20とロッド21との間に介装されているといえる。そして、ダンパ2の伸縮時にロッド21がアウターチューブ20に出入りすると懸架ばね3も伸縮し、その圧縮量に見合ったばね力を発揮する。この懸架ばね3のばね力は、ダンパ2を伸長させる方向へ作用する。これにより、車体10が懸架ばね3によって弾性支持される。
【0032】
上側のばね受4と規制部材5は、それぞれ合成樹脂で形成されていて、これらには、懸架ばね3のイニシャル荷重を調整可能にするカム機構が設けられている。図3,4に示すように、上側のばね受4は、下端に懸架ばね3が当接する環状のシート部40と、このシート部40の内周部から上方へ突出する筒部41とを有し、全体としての形状が概ね環状となっている。また、筒部41の上端には、他の部分よりも高く突出する三つの突部6A,6B,6Cが周方向に等間隔で設けられている。
【0033】
その一方、規制部材5は、環状の基部50と、この基部50の下端外周縁から下方へ突出する筒状のカバー部51と、基部50の外周後部に設けられる二股のフック52とを有し、全体としての形状が概ね環状となっている。また、図5に示すように、カバー部51で囲われる基部50の下端には、軸方向高さの異なる複数のカム面7a,7bを含む三つのカム部7A,7B,7Cが周方向に互いに120度の位相差をもって形成されている。
【0034】
そして、上側のばね受4の筒部41が規制部材5のカバー部51内へ挿入されて、突部6A,6B,6Cの先端が各カム部7A,7B,7Cにおけるカム面7a,7bの何れかに選択的に当接する。このように、突部6A,6B,6Cとカム部7A,7B,7Cとの当接部がカバー部51で覆われるので、突部6A,6B,6Cとカム面7a,7bとの間に異物が噛み込まれるのが防止される。
【0035】
また、規制部材5は、その基部50の上端が連結部材23に当接可能で、フック52が連結部材23に引っ掛け可能となっている。より詳しくは、図2に示すように、連結部材23は、アウターチューブ20の上端部に嵌合する第一の嵌合部23aと、その後方に位置してタンク22の上端部に嵌合する第二の嵌合部23bと、第一、第二の嵌合部23a,23bをつなぐブリッジ部23cとを含む。そして、懸架ばね3のばね力を受けて規制部材5が上側のばね受4とともに押し上げられると、基部50の上端が第一の嵌合部23aに突き当たるとともに、フック52がブリッジ部23cを左右両側(図2中紙面手前奥側)から挟む。
【0036】
これにより、規制部材5は、アウターチューブ20の外周に、周方向の回転と軸方向の移動が規制された状態で装着される。また、上側のばね受4は、前述のように、突部6A,6B,6Cが規制部材5のカム部7A,7B,7Cに当接し、これにより、上側のばね受4のアウターチューブ20に対する上側(反懸架ばね側)への移動が規制される。さらには、作業者が上側のばね受4を規制部材5に対して回転し、突部6A,6B,6Cの当接するカム面7a,7bを変更すれば、上側のばね受4のアウターチューブ20に対する軸方向位置が上下に変わり、これにより、懸架ばね3のイニシャル荷重が変更される。
【0037】
以下、本実施の形態におけるカム部7A,7B,7C及び突部6A,6B,6Cについて、詳細に説明する。以下の説明では、アウターチューブ20に装着された状態での規制部材5及び上側のばね受4の軸方向において、懸架ばね3から遠い方を高い位置、近い方を低い位置とする。
【0038】
前述のように、三つのカム部7A,7B,7Cは、規制部材5における基部50の下端、周方向に互いに120度の位相差をもって配置されている(図5)。また、カム面7a,7bの形成される基部50の下端を縁取ると、各カム部7A,7B,7Cの形状(カム形状)及び高さは同じで、規制部材5を時計回り又は反時計回りに120度回転するごとに、同一形状で同一高さの基部50の下端形状(カム形状)が現れる。
【0039】
各カム部7A,7B,7Cにおける高い位置にあるカム面から順に番号を付けると、各カム部7A,7B,7Cは、第一のカム面7aと、それよりも低い位置にある第二のカム面7bの二つのカム面を含んで構成される。なお、各カム部7A,7B,7Cは、三以上のカム面を含んでいてもよい。この場合、規制部材5の時計回り又は反時計回りに、カム面の高さが順々に低くなるように軸方向高さの異なるカム面を配置すればよい。
【0040】
図6(a)には、規制部材5を周方向の一カ所で切断して展開し、その規制部材5を内周側から見たときの、基部50のカム面7a,7bを含む下端の展開形状(カム形状)が示されている。図6中、二点鎖線Xは、隣り合うカム部7Aとカム部7B、カム部7Bとカム部7C、又はカム部7Cとカム部7Aの境界を示す。
【0041】
図6(b)に示すように、各カム部7A,7B,7Cの周方向において、第一のカム面7a側の端を始端7s、反対側の端を終端7eとすると、第一、第二のカム面7a,7bは、それぞれ、周方向の中央が高くなるように緩やかに湾曲する凹面a,cと、この凹面a,cの終端7e側の端に連なり、終端7eへ向けて緩やかな下り勾配をもつ傾斜面b,dとを含み、山なりとなっている。また、第一、第二のカム面7a,7bの傾斜面b,dは同一勾配をもち、各傾斜面b,dの傾斜角度θ1,θ2が等しい。
【0042】
さらに、各カム部7A,7B,7C(二点鎖線X,X間)において、第一、第二のカム面7a,7bの間は、周方向の中央が低くなるように緩やかに湾曲する凸面7cとなっている。その一方、第一のカム面7aより始端7s側は、その第一のカム面7aの凹面aの始端7s側の端から始端7sへ向けて急な下り勾配をもつ逆斜面7dとなっている。換言すると、逆斜面7dは、傾斜面b,dと逆向きに傾き、その勾配(傾斜角度θ3)は、傾斜面b,dの勾配(傾斜角度θ1,θ2)と比較して格段に大きい。
【0043】
つづいて、前述のように、三つの突部6A,6B,6Cは、上側のばね受4における筒部41の上端に、周方向に等間隔で配置されている(図3,4)。また、筒部41の上端において、突部6A,6B,6Cの形成されていない部分を底部6D,6E,6Fとする。そして、突部6A,6B,6C及び底部6D,6E,6Fの形成される筒部41の上端を縁取ると、各突部6A,6B,6Cの形状と高さ、及び各底部6D,6E,6Fの形状と高さはそれぞれ同じで、上側のばね受4を時計回り又は反時計回りに120度回転するごとに、同一形状で同一高さの筒部41の上端形状が現れる。
【0044】
図7には、上側のばね受4を周方向の一カ所で切断して展開し、その上側のばね受4を内周側から見たときの、突部6A,6B,6C及び底部6D,6E,6Fを含む筒部41の上端の展開形状が示されている。また、図8には、各突部6A,6B,6Cを各カム部7A,7B,7Cの第一のカム面7aに当接させた状態で、上側のばね受4と規制部材5を周方向の一カ所で切断して展開したときの、突部6A,6B,6C及び底部6D,6E,6Fとカム部7A,7B,7Cの対向面の展開形状が示されている。
【0045】
図7に示すように、各突部6A,6B,6Cの上端には、傾斜面b,d(図6)と同一勾配をもつ当接面6aが形成されている。つまり、傾斜面b,dと当接面6aの傾斜角度が等しく、上側のばね受4と規制部材5をアウターチューブ20に装着した状態で、当接面6aが傾斜面b,dに沿うように傾斜する。換言すると、取付状態では、当接面6aと傾斜面b,dとが平行になり、これらが図8に示すように面当たりできる。
【0046】
このように、上側のばね受4の突部6A,6B,6Cと規制部材5のカム部7A,7B,7Cは、面接触する。さらに、突部6A,6B,6Cとカム部7A,7B,7Cは、三つずつ設けられ、上側のばね受4と規制部材5の周方向の三カ所に、面接触する当接部ができる。また、その当接部となる突部6A,6B,6Cとカム部7A,7B,7Cが肉厚である。
【0047】
これにより、上側のばね受4は懸架ばね3のばね力を受けて規制部材5に押し付けられるが、これらの当接部に作用する懸架ばね3のばね力が分散するので、上側のばね受4及び規制部材5を合成樹脂で形成してもその耐久性を確保できる。さらに、上側のばね受4の周方向の三カ所を規制部材5で支えられるので、上側のばね受4の規制部材5に対するガタツキを防止できる。
【0048】
また、本実施の形態において、各突部6A,6B,6Cの周方向の両端に位置する側面6b,6cのうち、当接面6aの高い位置に連なる方を長尺側の側面6bとすると、図8に示すように、突部6A,6B,6Cがカム部7A,7B,7Cの第一のカム面7aにそれぞれ当接した状態で、その長尺側の側面6bと、これに対向する逆斜面7dとの間にそれぞれ隙間ができる。さらに、そのような状態で、カム部7A,7B,7Cと、これに対向する底部6D,6E,6Fとの間にもそれぞれ隙間ができる。これにより、突部6A,6B,6Cとカム部7A,7B,7Cに寸法上の誤差が多少生じても、第一のカム面7aの傾斜面bが突部6A,6B,6Cの当接面6aから完全に浮き上がるのを防止できる。
【0049】
また、長尺側の側面6bの上端は、当接面6aが第一のカム面7aの傾斜面bに当接した状態では凹面a(図6)に当接し、当接面6aが第二のカム面7bの傾斜面dに当接した状態では凹面c(図6)に当接する。このように、同方向へ傾斜する当接面6aと傾斜面b,dが当接した状態で、懸架ばね3のばね力が上側のばね受4と規制部材5に作用すると、上側のばね受4が規制部材5に対して図8中左方へ回転しようとするが、その回転が長尺側の側面6b上端と凹面a,cとの接触により阻止される。
【0050】
とはいえ、第二のカム面7bの凹面cに連なる凸面7cの突出高さは低いので、作業者が上側のばね受4を回転操作すれば、突部6A,6B,6Cが凸面7cを乗り越えられる。また、各突部6A,6B,6Cの側面6b,6cと当接面6aとの間がそれぞれ湾曲面となっていて、各突部6A,6B,6Cの両肩が丸みを帯びた形状となっている。これにより、突部6A,6B,6Cが凸面7cを乗り越えやすい。
【0051】
つまり、傾斜面b,d又は当接面6aから見て、傾斜面b,d又は当接面6aの低い方を正方向、高い方を逆方向とすると、突部6A,6B,6Cが第二のカム面7bに当接している場合、作業者が上側のばね受4を規制部材5に対して逆方向へ回転できる。また、突部6A,6B,6Cが第一のカム面7aに当接している場合には、作業者が上側のばね受4を規制部材5に対して正方向へ回転できる。
【0052】
その一方、第一のカム面7aの凹面aには、逆斜面7dが連なっており、作業者が上側のばね受4を回転操作しようとしても、突部6A,6B,6Cがその逆斜面7dに乗り上がらない。このため、突部6A,6B,6Cがカム部7A,7B,7Cの第一のカム面7aに当接した状態では、上側のばね受4の規制部材5に対する逆方向の回転が阻止される。
【0053】
さらに、詳細は後述するが、規制部材5のカバー部51の内周にリブ53a,53b,53c(図5)が設けられるとともに、上側のばね受4の筒部41の外周にストッパリブ42a,42b,42c(図4)が設けられており、突部6A,6B,6Cがカム部7A,7B,7Cの第二のカム面7bに当接した状態で、上側のばね受4の規制部材5に対する正方向の回転が阻止される。
【0054】
つまり、本実施の形態では、上側のばね受4と規制部材5を組み合わせた状態で、カム部7A,7B,7Cと突部6A,6B,6Cが一対一の関係で対応する。具体的には、突部6Aがカム部7Aに対応し、突部6Bがカム部7Bに対応し、突部6Cがカム部7Cに対応しており、突部6Aがカム部7B,7Cに当接したり、突部6Bがカム部7A,7Cに当接したり、突部6Cがカム部7A,7Bに当接したりしない。
【0055】
つづいて、図5に示すように、規制部材5におけるカバー部51の内周には、軸方向に沿うリブ53a,53b,53bが周方向に等間隔で設けられている。これらのリブ53a,53b,53cのカバー部51から中心側(径方向内側)へ突出する高さをリブ高さとすると、三本のリブ53a,53b,53cのリブ高さは同じである。
【0056】
また、図4に示すように、上側のばね受4における筒部41の外周には、軸方向に沿う三本のストッパリブ42a,42b,42cと三本のガイドリブ43a,43b,43cがそれぞれ等間隔で、周方向に交互に設けられている。これらのストッパリブ42a,42b,42cとガイドリブ43a,43b,43cの筒部41から径方向外側へ突出する高さをリブ高さとする。すると、三本のストッパリブ42a,42b,42cのリブ高さと、三本のガイドリブ43a,43b,43cのリブ高さはそれぞれ同じであるが、ストッパリブ42a,42b,42cのリブ高さの方がガイドリブ43a,43b,43cのリブ高さよりも高い。
【0057】
リブ、ストッパリブ、ガイドリブ等の各リブにおいて、リブ高さの最も高い位置(カバー部51の中心に最も近い位置、又は筒部41の中心から最も離れた位置)を先端とする。すると、上側のばね受4の筒部41を規制部材5のカバー部51の内側に挿入した状態で、各ガイドリブ43a,43b,43cの先端が各リブ53a,53b,53cの先端にそれぞれ摺接可能となっている。また、各リブ53a,53b,53cの先端は、隣り合うストッパリブ42a,42b,42cの間に位置し、これらストッパリブ42a,42b,42cの先端よりも筒部41側(中心側)にある。
【0058】
そして、突部6A,6B,6Cがそれぞれに対応するカム部7A,7B,7Cの第一のカム面7aに当接したり、第二のカム面7bに当接したりする範囲で上側のばね受4を正逆方向へ回転する場合には、ストッパリブ42a,42b,42cがリブ53a,53b,53cに干渉しないので、その回転が許容される。しかし、その範囲を超えて上側のばね受4を回転しようとすると、ストッパリブ42a,42b,42cがリブ53a,53b,53cに干渉して上側のばね受4の回転が規制される。
【0059】
また、本実施の形態では、図3,4に示すように、上側のばね受4の筒部41からシート部40にかけての内周に、軸方向に沿う内周リブ45が周方向に並べて複数形成されており、その内周リブ45がアウターチューブ20の外周に摺接するようになっている。これにより、上側のばね受4は、アウターチューブ20の外周に装着された状態で、そのアウターチューブ20にガイドされつつ回転したり、上下動したりする。
【0060】
さらに、本実施の形態では、図3に示すように、上側のばね受4のシート部40に、側方へ開口する係合孔46が周方向に並べて複数形成されている。これにより、作業者が係合孔46の何れかに工具等を引っ掛けて上側のばね受4を回転できる。なお、上側のばね受4に工具等を引っ掛けるための係合部の構成は、係合孔46に限られず、適宜変更できる。例えば、係合孔46に替えて、シート部40の外周に二面幅を持つ部分を形成したり、切欠を形成したりしてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、対応関係にない突部6A,6B,6Cとカム部7A,7B,7Cの組み合わせになるのを防ぐ誤組防止部が設けられている。
【0062】
より詳しくは、図5に示すように、規制部材5に形成される三本のリブ53a,53b,53cのうちの一本のリブ53cは、他の二本のリブ53a,53bと比較して軸方向に長いリブであり、そのリブ53cの下端は、それよりも短い他のリブ53a,53bの下端より下側に位置する。以下、これらのリブを区別するため、リブ53cを長いリブ53cともいい、リブ53a,53cを短いリブ53a,53bともいう。
【0063】
また、図4に示すように、上側のばね受4における筒部41の外周であって、その根本には、周方向に沿う二本の円弧状の段部44a,44bが設けられている。図3に示すように、これらの段部44a,44bを通る円の円周上では、段部44a,44bが設けられた部分の上面がそれ以外の部分の上面と比較して一段高い位置にある。
【0064】
そして、突部6A,6B,6Cをそれぞれに対応するカム部7A,7B,7Cの第一のカム面7aに当接させた状態では、二本の短いリブ53a,53bの下端が段部44a,44bの上端に対向するが、これらは互いに干渉ない。これに対して、突部6A,6B,6Cを対応しないカム部7A,7B,7Cの第一のカム面7aに当接させようとすると、長いリブ53cの下端が段部44a,44bの何れか一方に突き当たり、第一のカム面7aが突部6A,6B,6Cから浮き上がる。
【0065】
このため、突き当たりまで上側のばね受4の筒部41を規制部材5のカバー部51に挿入した状態で、上側のばね受4のシート部40の下端から規制部材の基部50の上端までの軸方向の距離をセット高さとし、突部6A,6B,6Cをそれぞれに対応するカム部7A,7B,7Cの第一のカム面7aに当接させたときのセット高さを正常値とすると、前述のように、長いリブ53cの下端が段部44a,44bに突き当たった状態では、セット高さが正常値よりも大きくなる。これにより、誤組が検出されて、対応関係にない突部6A,6B,6Cとカム部7A,7B,7Cの組み合わせになるのを防止できる。
【0066】
さらに、本実施の形態では、作業者が突部6A,6B,6Cを第一、第二のカム面7a,7bのどちらに当接させようとしているのか、又は、突部6A,6B,6Cが第一、第二のカム面7a,7bのどちらに当接しているのかをカバー部51の外側から確認できるように、目印54a,54bと、目盛47a,47bが設けられている。
【0067】
より詳しくは、図3,5に示すように、目印54a,54bは、規制部材5におけるカバー部51の外周の左右の両側部にそれぞれ設けられている。また、図3,4に示すように、目盛47,47bは、上側のばね受4のシート部40の上面であって、各目印54a,54bと対応する位置に設けられている。本実施の形態では、各目盛47a,47bは、「1」の数字Lと、「2」の数字Hからなるが、数字L,Hが「1」「2」以外でもよいのは勿論、数字以外のアルファベット、又は記号を目盛47a,47bに利用してもよい。
【0068】
そして、突部6A,6B,6Cをそれぞれに対応するカム部7A,7B,7Cの第一のカム面7aに当接させた状態では、目印54a,54bがそれぞれに対応する目盛47a,47bにおける「1」の数字Lを指す。また、突部6A,6B,6Cをそれぞれに対応するカム部7A,7B,7Cの第二のカム面7bに当接させた状態では、目印54a,54bがそれぞれに対応する目盛47a,47bにおける「2」の数字Hを指す。
【0069】
上記構成によれば、作業者が上側のばね受4と規制部材5をアウターチューブ20に装着する際、目印54a,54bが「1」の数字Lを指すように、上側のばね受4の筒部41を規制部材5のカバー部51内へ挿入する。そして、突き当たりまで筒部41を挿入したらセット高さを確認する。そのセット高さが正常値であれば、上側のばね受4が規制部材5に正しくセットされている、即ち、突部6A,6B,6Cが対応するカム部7A,7B,7Cの第一のカム面7aに当接していると判断できる。
【0070】
このように、目印54a,54bが「1」の数字Lを指した状態から上側のばね受4を正方向へ回転して、目印54a,54bを「2」の数字Hに合せると、突部6A,6B,6Cが対応するカム部7A,7B,7Cの第二のカム面7bに当接する。この第二のカム面7bの位置は、第一のカム面7aの位置よりも低い位置にある。このため、目印54a,54bを「2」の数字Hに合せた場合には、「1」の数字Lに合せた場合と比較して、アウターチューブ20に対する上側のばね受4の位置が下がり、懸架ばね3のイニシャル荷重が大きくなる。
【0071】
また、これとは逆に、目印54a,54bが「2」の数字Hを指した状態から上側のばね受4を逆方向へ回転して、目印54a,54bを「1」の数字Lに合せると、突部6A,6B,6Cが対応するカム部7A,7B,7Cの第一のカム面7aに当接する。この第一のカム面7aの位置は、第二のカム面7bの位置よりも高い位置にある。このため、目印54a,54bを「1」の数字Lに合せた場合には、「2」の数字Hに合せた場合と比較して、アウターチューブ20に対する上側のばね受4の位置が上がり、懸架ばね3のイニシャル荷重が小さくなる。
【0072】
以下に、本発明の一実施の形態に係る懸架装置であるリアクッション装置Sの作用効果について説明する。
【0073】
本実施の形態において、リアクッション装置(懸架装置)Sは、アウターチューブ20と、このアウターチューブ20内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド21とを有して伸縮するダンパ(伸縮部材)2と、このダンパ2の外周に設けられてダンパ2を伸長方向へ付勢する懸架ばね3と、アウターチューブ20の外周に周方向に回転可能で軸方向に移動可能に装着されて懸架ばね3の一端を支持する環状のばね受4と、アウターチューブ20の外周におけるばね受4の反懸架ばね側に設けられて、ばね受4の反懸架ばね側への移動を規制する環状の規制部材5とを備えている。
【0074】
さらに、本実施の形態に係るリアクッション装置Sは、規制部材5の周方向に120度の位相差をもって設けられる三つのカム部7A,7B,7Cと、ばね受4の周方向に等間隔で設けられる三つの突部6A,6B,6Cとを備えている。そして、カム部7A,7B,7Cは、それぞれ、軸方向高さの異なる複数のカム面7a,7bを有している。また、これらのカム面7a,7bは、それぞれ、傾斜角度θ1,θ2の等しい傾斜面b,dを含み、突部6A,6B,6Cは、それぞれ、傾斜面b,dに沿って傾斜して傾斜面b,dに当接可能な当接面6aを有している。傾斜角度が等しいとは、完全一致のみならず、製造上の誤差による微差も含まれる概念である。
【0075】
上記構成によれば、突部6A,6B,6Cの当接するカム面7a,7bを変更すれば、アウターチューブ20に対するばね受4の軸方向位置が変わるので、懸架ばね3のイニシャル荷重を調整できる。
【0076】
また、上記構成によれば、ばね受4の突部6A,6B,6Cと規制部材5のカム部7A,7B,7Cは、当接面6aと何れかの傾斜面b,dにおいて面接触する。さらに、突部6A,6B,6Cとカム部7A,7B,7Cは、三つずつ設けられ、ばね受4と規制部材5の周方向の三カ所に、面接触する当接部ができる。これにより、上記リアクッション装置Sでは、従来の突部が一つしかない懸架装置と比較して、ばね受4と規制部材5の接触面積が増え、懸架ばね3のばね力が分散して作用するので、懸架ばね3のばね力によってばね受4と規制部材5との当接部に加わる圧力を従来より低減できる。
【0077】
このため、本実施の形態のリアクッション装置Sによれば、ばね受4と規制部材5を従来より強度が低くて軽量な材料で形成できるとともに、規制部材5の溶接を不要にできる。つまり、上記構成によれば、ばね受4と規制部材5の材料選択自由度が向上するので、その材料として合成樹脂を選択できる。また、規制部材5の溶接を不要にできるので、規制部材5をアウターチューブ20の外周に設ける場合であっても、プロテクタチューブを不要にできる。さらに、上記構成によれば、ばね受4が周方向の三カ所で規制部材5に支えられるので、ばね受4の規制部材5に対するガタツキを防止でき、そのガタツキに起因する異音の発生も防止できる。
【0078】
また、本実施の形態のように、ばね受4と規制部材5を合成樹脂で形成すると、ばね受4と規制部材5を軽量化し、これにより、リアクッション装置Sを軽量化できる。さらには、ばね受4と規制部材5を合成樹脂で形成する場合、金属で形成する場合と比較してカム部7A,7B,7Cの形成される基部50と、突部6A,6B,6Cの形成される筒部41の外径を大きくしても重くならない。このため、カム部7A,7B,7Cと突部6A,6B,6Cの接触面積を確保しやすい。さらには、各カム面7a,7bの周方向長さを長くして、傾斜面b,dの勾配を緩やかにできるので、ばね受4の規制部材5に対する回転操作を容易にできる。
【0079】
なお、ばね受4と規制部材5の材料となる合成樹脂の種類については、ナイロン、ポリプロピレン等、特に限定されないが、懸架ばね3のばね力が非常に大きくなる場合等には、ガラス繊維等を補強材として加えた繊維強化樹脂を選択してもよい。
【0080】
また、本実施の形態のリアクッション装置Sでは、各カム部7A,7B,7Cを構成する複数のカム面7a,7bの中で、懸架ばね3から最も離れた位置にあるカム面が第一のカム面7aであり、各カム部7A,7B,7Cにおける第一のカム面7a側の端が始端7s、その反対側の端が終端7eであって、傾斜面b,dがそれぞれ終端7eへ向かうに従って低くなる(懸架ばね3に接近する)方向へ傾斜している。また、各カム部7A,7B,7Cにおいて、第一のカム面7aの始端7s側には、傾斜面b,dとは逆向きに傾斜する逆斜面7dが設けられている。
【0081】
そして、突部6A,6B,6Cの当接面6aが第一のカム面7aの傾斜面bに当接した状態では、その逆斜面7dと突部6A,6B,6Cとの間に隙間ができるとともに、隣り合う前記突部6A,6B,6Cの間に設けられる底部6D,6E,6Fとカム部7A,7B,7Cとの間にも隙間ができる。これにより、突部6A,6B,6Cとカム部7A,7B,7Cに寸法上の誤差が多少生じたとしても、突部6A,6B,6Cの当接面6aと第一のカム面7aの傾斜面bとを確実に当接させられる。
【0082】
つまり、上記構成によれば、多少の寸法上の誤差があっても、ばね受4が周方向の三カ所で規制部材5に支えられ、ガタツキに起因する異音の発生を防止できる。さらに、上記構成によれば、ばね受4と規制部材5の多少の寸法上の誤差を許容できるので、成形方法の選択自由度が向上する。これにより、ばね受4と規制部材5を射出成形等の量産性に優れた方法で成形できる。しかし、ばね受4と規制部材5を切削等で形成してもよく、成形方法は適宜変更できる。
【0083】
また、本実施の形態のリアクッション装置Sでは、アウターチューブ20の後方にタンク22が設けられ、アウターチューブ20の径方向視(径方向の一方から見た状態)でアウターチューブ20と重なり合う位置にタンク22が設けられている。さらに、アウターチューブ20とタンク22との間にばね受4と規制部材5の周方向の一部が配置され、規制部材5のアウターチューブ20に対する周方向の回転が規制されている。
【0084】
このように、アウターチューブ20の径方向に沿ってアウターチューブ20とタンク22が並び、これらの間にばね受4と規制部材5の周方向の一部が配置されている場合において、作業者が懸架ばね3のイニシャル荷重を調整するため、ばね受4と規制部材5のそれぞれを両手でつかんで相対回転させようとした場合、その回転時にばね受4とタンク22との間、又は規制部材5とタンク22との間に作業者の手が引き込まれ、挟まれる可能性がある。
【0085】
そこで、本実施の形態のように、規制部材5のアウターチューブ20に対する周方向の回転を規制した状態で装着すれば、作業者がばね受4に工具等を引っ掛けて回転した際に、ばね受4と規制部材5が共回りせず、ばね受4のみを回転できる。つまり、上記構成によれば、工具等を利用してばね受4を規制部材5に対して容易に回転できるので、懸架ばね3のイニシャル荷重調整時に、ばね受4とタンク22との間、又は規制部材5とタンク22との間に作業者の手が挟まれることがなく、操作性も良好にできる。
【0086】
また、本実施の形態のリアクッション装置Sでは、規制部材5の外周の左右に、それぞれ目印54a,54bが設けられるとともに、ばね受4の目印54a,54bと対応する位置に、それぞれ突部6A,6B,6Cの当接するカム面7a,7bを示す目盛47a,47bが設けられている。規制部材5の外周の左右とは、タンク22を正面に向けてアウターチューブ20を見たときに、そのアウターチューブ20の左右となる位置であり、このような位置に目印54a,54bを設けると、目印54a,54bがタンク22で隠れない。
【0087】
さらに、リアクッション装置Sが車体10の左右に設けられる場合であっても、作業者が車体10の左右から目印を確認できる。より具体的には、車体10の右側に搭載されるリアクッション装置Sでは、右側の目印54aを確認できるとともに、車体10の左側に搭載されるリアクッション装置Sでは、左側の目印54bを確認できる。加えて、前述のように、規制部材5はアウターチューブ20に回り止めされているので目印54a,54bの位置も動かず、作業者が目印54a,54bを視認しやすい。
【0088】
とはいえ、本実施の形態のように、120度の位相差をもって配置される三つのカム部7A,7B,7Cと三つの突部6A,6B,6Cに対し、180度の位相差をもって二つの目印54a,54bと二組の目盛47a,47bを設ける場合、カム部7A,7B,7C及び突部6A,6B,6Cに対して、目印54a,54b及び目盛47a,47bの位置が対応しない。
【0089】
具体的には、図4に示すように、ばね受4において、突部6Aと対応する位置に目盛47aの「1」の数字Lが表示され、突部6Bと対応する位置に目盛47bの「2」の数字Hが表示され、突部6Cと対応する位置には目盛がない。その一方、図5に示すように、規制部材5において、カム部7Aの第一のカム面7aと対応する位置に目印54aが有り、カム部7Bの第二のカム面7bと対応する位置に目印54bがあり、カム部7Cの第一、第二のカム面7a,7bと対応する位置には目印がない。
【0090】
このような状況下では、例えば、第一のカム面7aと対応する位置にある目印54aに、突部6Aと対応する位置にある目盛47aの「1」の数字Lを合わせれば、突部6A,6B,6Cが第一のカム面7aに当接して懸架ばね3のイニシャル荷重を小さく設定できる。しかしながら、第二のカム面7bと対応する位置にある目印54bに、突部6Aと対応する位置にある目盛47aの「1」の数字Lを合わせたのでは、突部6A,6B,6Cが第二のカム面7bに当接して懸架ばね3のイニシャル荷重が大きく設定されてしまう。
【0091】
そこで、本実施の形態のように、三つの突部6A,6B,6Cをもつばね受4と三つのカム部7A,7B,7Cをもつ規制部材5に、それぞれ二組の目盛47a,47bと二つの目印54a,54bを設ける場合に、突部6A,6B,6Cとカム部7A,7B,7Cを常に一対一の関係で対応させると、同じ目盛(例えば、「1」の数字L)に合せたにも関わらず、懸架ばね3のイニシャル荷重が異なる設定となる不具合の発生を防止できる。
【0092】
また、本実施の形態のリアクッション装置Sは、対応関係にない突部6A,6B,6Cとカム部7A,7B,7Cの組み合わせになるのを防ぐ誤組防止部として、長さ違いのリブ53a,53b,53cと段部44a,44bとを備えている。これにより、前述のような、同じ目盛に合せたにも関わらず、懸架ばね3のイニシャル荷重が異なる設定となる不具合の発生を容易且つ確実に防止できる。しかし、誤組防止部の構成は、リブ53a,53b,53cと段部44a,44bに限られず、適宜変更できる。
【0093】
また、本実施の形態では、カム部7A,7B,7Cに逆斜面7dを設けたり、ばね受4にストッパリブ42a,42b,42cを設けたりして、突部6A,6B,6Cをカム部7A,7B,7Cに一対一の関係で対応させているが、そのための構成も適宜変更できる。
【0094】
さらに、例えば、リアクッション装置Sがタンク22をもたない、又は、タンク22をもっていても、ばね受4と規制部材5がアウターチューブ20とタンク22との間に配置されない場合など、規制部材5が回転しても目印54a,54bが隠れない場合には、図9に示すように、三つの目印54(図9には、二つの目盛を示す)と三組の目盛47を規制部材5又はばね受4の周方向に等間隔で設けてもよい。このような場合には、カム部7A,7B,7Aと突部6A,6B,6Cを一対一の関係で対応させる必要がなく、誤組防止部を省略できる。
【0095】
また、作業者がばね受4と規制部材5を両手でもって相対回転させても手を挟まれる心配がない場合には、規制部材5をアウターチューブ20の外周に周方向に回転可能に装着してもよく、図9に示すばね受4と規制部材5の外周には、作業者が掴んで回転操作する際に滑り難いように、凹凸が設けられている。
【0096】
また、本実施の形態のリアクッション装置Sでは、三つのカム部7A,7B,7Cが隙間なく並び、各カム部7A,7B,7Cが高さ違いの二つのカム面7a,7bを有している。これにより、懸架ばね3のイニシャル荷重を二段階で調整できるとともに、規制部材5に三つのカム部7A,7B,7Cを設けたとしても、各カム面7a,7bの周方向長さを長くして、傾斜面b,dの勾配を緩やかにできる。このため、カム部7A,7B,7Cと突部6A,6B,6Cの接触面積を確保しやすく、ばね受4の規制部材5に対する回転操作を容易にできる。
【0097】
しかし、前述のように、カム部7A,7B,7Cが三以上のカム面を含んで構成されていて、懸架ばね3のイニシャル荷重を三段階以上で調整してもよい。さらには、隣り合うカム部7Aとカム部7B、カム部7Bとカム部7C、及びカム部7Cとカム部7Aの間に隙間を設けてもよい。
【0098】
また、本実施の形態では、カム部7A,7B,7Cが規制部材5に設けられるとともに、突部6A,6B,6Cがばね受4に設けられているが、これとは逆に、カム部7A,7B,7Cがばね受4に設けられ、突部6A,6B,6Cが規制部材5に設けられていてもよい。
【0099】
さらに、カム部7A,7B,7C又は突部6A,6B,6Cが設けられるばね受4と規制部材5は、アウターチューブ20の外周ではなく、ロッド21の外周に設けられていてもよい。また、カム部7A,7B,7C又は突部6A,6B,6Cを含むばね受4が下側のばね受となっていてもよい。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
b,d・・・傾斜面、S・・・リアクッション装置(懸架装置)、2・・・ダンパ(伸縮部材)、3・・・懸架ばね、4・・・ばね受、5・・・規制部材、6A,6B,6C・・・突部、6D,6E,F・・・底部、6a・・・当接面、7A,7B,7C・・・カム部、7a・・・第一のカム面(カム面)、7b・・・第二のカム面(カム面)、7d・・・逆斜面、7e・・・終端、7s・・・始端、20・・・アウターチューブ、21・・・ロッド、22・・・タンク、44a,44b・・・段部(誤組防止部)、47a,47b・・・目盛、53a,53b,53c・・・リブ(誤組防止部)、54a,54b・・・目印
図1
図2
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図6
図7
図8
図9