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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】シリンダライナ撮影装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20210101AFI20221221BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221221BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20221221BHJP
   G03B 15/03 20210101ALI20221221BHJP
   G03B 37/00 20210101ALI20221221BHJP
   G03B 17/55 20210101ALI20221221BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20221221BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221221BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G03B17/02
G03B15/00 L
G03B15/00 T
G03B15/02 G
G03B15/03
G03B15/00 W
G03B37/00 A
G03B17/55
G02B23/24 B
H04N5/225 600
H04N5/225 100
H04N5/225 430
G01N21/88 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019055261
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020154248
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1(1)ウェブサイトの掲載日 平成30年4月2日 (2)ウェブサイトのアドレス http://www.daitron.co.jp/ http://www.daitron.co.jp/info/index.cgi?y=2018 http://www.daitron.co.jp/info/index.cgi?c=zoom&pk=383 http://www.daitron.co.jp/products/category/?c=zoom&pk=2540&sw=1 (3)公開者 ダイトロン株式会社 (4)公開された発明の内容 ダイトロン株式会社が、上記アドレスのダイトロン株式会社のウェブサイトにて、杉山泰久、中尾弘良、加藤雄太、中谷博司及び山田省吾が発明した「船舶用エンジンシリンダー内部自動撮影装置 きらりNINJA-DS」について公開した。 2(1)展示日 平成30年4月11日~平成30年4月13日 (2)展示会名、開催場所 Sea Japan 2018 東京都江東区有明3-11-1 東京ビッグサイト 東5・6ホール (3)公開者 ダイトロン株式会社 (4)出品内容 ダイトロン株式会社が、Sea Japan 2018にて、杉山泰久、中尾弘良、加藤雄太、中谷博司及び山田省吾が発明した「小型版きらりNINJA」について公開した。 3(1)ウェブサイトの掲載日 平成30年10月1日 (2)ウェブサイトのアドレス http://www.daitron.co.jp/ http://www.daitron.co.jp/info/index.cgi?y=2018 http://www.daitron.co.jp/info/index.cgi?c=zoom&pk=411 http://www.daitron.co.jp/products/category/?c=zoom&pk=2540&sw=1 (3)公開者 ダイトロン株式会社 (4)公開された発明の内容 ダイトロン株式会社が、上記アドレスのダイトロン株式会社のウェブサイトにて、杉山泰久、中尾弘良、加藤雄太、中谷博司及び山田省吾が発明した「船用エンジン内部自動撮影装置 きらりNINJA-DS」について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】518232168
【氏名又は名称】ダイトロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000232818
【氏名又は名称】日本郵船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 泰久
(72)【発明者】
【氏名】中尾 弘良
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】中谷 博司
(72)【発明者】
【氏名】山田 省吾
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218036(JP,A)
【文献】特開2016-208125(JP,A)
【文献】特開2013-088519(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073010(WO,A1)
【文献】特開2017-138374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G03B 15/00-15/03
G03B 17/55
G03B 37/00
G02B 23/24
H04N 5/222-5/257
G01N 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダライナの内面を撮影するシリンダライナ撮影装置であって、
樹脂製のケースと、
前記ケースに取り付けられた照明光源と、
前記ケースに収容され、レンズが上側に露出した状態で上方を自動撮影するカメラ本体と、
前記ケースに収容され、前記カメラ本体に接続されて前記カメラ本体を駆動する駆動回路を有する回路基板と、
前記ケース内に配置され前記照明光源及び前記駆動回路に接続される電池と、
を備え、
前記回路基板は、前記回路基板に接触し放熱性及び弾性を有する絶縁材と、前記ケースの内面に貼り付けられ放熱性を有する放熱シートとを介して、前記ケースに接続されており、
前記カメラ本体は、放熱性及び弾性を有する絶縁材及び放熱シートの何れも介さずに前記ケースに接続されている、
シリンダライナ撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシリンダライナ撮影装置において、
前記放熱シートは、
前記ケースを形成する天板部の内面に貼り付けられた天板シートと、前記ケースを形成する底板部の内面に貼り付けられた底板シートとを含み、
前記絶縁材は、
前記回路基板の前記天板部側に配置され放熱性及び弾性を有する天板絶縁材と、前記回路基板の前記底板部側に配置され放熱性及び弾性を有する底板絶縁材とを含み、
前記回路基板は、前記天板絶縁材及び前記天板シートを介して前記天板部に接続されるとともに、前記底板絶縁材及び前記底板シートを介して前記底板部に接続されている、
シリンダライナ撮影装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシリンダライナ撮影装置において、
前記ケースは、底板部を有する下ケース要素と、天板部を有し前記下ケース要素の上側に結合された上カバーとを含み、
前記下ケース要素は、前記底板部の内面から突出するように前記カメラ本体を挟んで両側に一体形成された2つのボス部を有し、
前記カメラ本体は、前記2つのボス部の先端に形成されたネジ孔を用いてネジ結合され、前記カメラ本体と前記下ケース要素とは、前記カメラ本体と前記ボス部との接触部を除いて接触しない、
シリンダライナ撮影装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシリンダライナ撮影装置において、
前記ケース内に配置され、前記照明光源を操作部の操作に応じて調光する制御回路を備える、
シリンダライナ撮影装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシリンダライナ撮影装置において、
前記操作部は、3つのボタン式のスイッチを含み、
前記制御回路は、前記3つのスイッチのうち、所定の2つの前記スイッチが同時に所定時間以上の長押し操作がされたときに、調光モードを開始し、その後、前記3つのスイッチの残りの前記スイッチが押されるごとに所定レベルまで前記照明光源の光量を1レベルずつ大きくする、
シリンダライナ撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシリンダライナ撮影装置において、
前記3つのスイッチは、オン動作によって遠隔操作装置を用いた撮影操作を可能とするボタン式の通信スイッチと、ボタン式の電源スイッチと、オン動作によって前記カメラ本体での撮影を開始させるボタン式の撮影スイッチとである、
シリンダライナ撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダライナの内面を撮影するシリンダライナ撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶用のエンジンの故障を防止するために、船舶の寄港時においてエンジンが停止した際に、エンジンの構成部品であるシリンダライナの内面を船員などの作業者が目視で観察し、故障の兆候となる異常現象の有無を判断している。例えば、この異常現象には、傷、ひび割れ、腐食、または付着物の有無がある。
【0003】
上記の判断のためにはエンジンの上部のシリンダカバーを取り外し、シリンダライナ内に作業者が立ち入る必要があり、その開放及び復旧に多大な時間と手間を要する。また、エンジン停止後とはいえ比較的高温であるエンジンの内部を目視で点検するという作業は作業者の大きな負担となっている。また、作業者が異常の有無を目視で判断するため、作業者が異常を見逃す等の人為的ミスを生じる可能性がある。
【0004】
特許文献1には、ケースの周囲にLEDライトを配置するとともに、内側にカメラを挿入し、そのカメラのレンズを上側に向けた状態でシリンダライナの内側に配置し、シリンダライナの内面をLEDライトで照射しながらシリンダライナの内面を撮影可能な撮影装置が記載されている。この撮影装置によれば、シリンダカバーを取り外すことなくシリンダライナの内面の明瞭な画像を取得できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-218036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された構成では、カメラケース(内側ケース)を有しカメラ用電源を備えたカメラと、LEDライト用の電源と、保冷剤とを、外側ケースに収容しているので、撮影装置全体の小型化を図る面から改良の余地がある。さらに、外側ケース内でカメラケースが振動等でずれ動くことをより効果的に防止して、明瞭な画像をより安定して取得する面からも改良の余地がある。そこで、本発明者らは撮影装置の小型化を図るために、カメラケースのないカメラの部品を外側ケースに収容し、さらに保冷剤を省略することを考えた。しかしながら、単にその構成を採用した場合には、カメラ本体を駆動する駆動回路の熱がこもって撮影性能が早期に低下する可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、シリンダカバーを取り外すことなくシリンダライナの明瞭な画像をより安定して取得でき、かつ、小型で撮影性能を長期にわたって維持できるシリンダライナ撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシリンダライナ撮影装置は、内燃機関のシリンダライナの内面を撮影するシリンダライナ撮影装置であって、樹脂製のケースと、前記ケースに取り付けられた照明光源と、前記ケースに収容され、レンズが上側に露出した状態で上方を自動撮影するカメラ本体と、前記ケースに収容され、前記カメラ本体に接続されて前記カメラ本体を駆動する駆動回路を有する回路基板と、前記ケース内に配置され前記照明光源及び前記駆動回路に接続される電池と、を備え、前記回路基板は、前記回路基板に接触し放熱性及び弾性を有する絶縁材と、前記ケースの内面に貼り付けられ放熱性を有する放熱シートとを介して、前記ケースに接続されており、前記カメラ本体は、放熱性及び弾性を有する絶縁材及び放熱シートの何れも介さずに前記ケースに接続されている、シリンダライナ撮影装置である。
【0009】
上記の構成によれば、照明光源によりシリンダライナの内面を照射して明るくできる。さらにシリンダライナ内にシリンダライナ撮影装置だけを治具等で差し入れて自動で撮影できる。これによりシリンダカバーを取り外すことなくシリンダライナの明瞭な画像を取得できる。また、ケースの内側に、レンズを有するカメラ本体と、カメラ本体を駆動する駆動回路とを、カメラケースに収容した状態で配置する必要がない。これにより、ケースの内側でカメラ本体がずれ動くことをより効果的に防止できる。このため、シリンダライナの明瞭な画像をより安定して取得できる。また、駆動回路の駆動により発生した熱を、絶縁材及び放熱シートを介してケースに効率的に逃がすことができる。これにより、ケースに保冷剤を入れて駆動回路の温度上昇を抑制する必要がない。また、カメラ本体に、ケースの外側に配置された部材からの熱を伝わりにくくできるので、カメラ本体の保護を図れる。これにより、シリンダライナ撮影装置をさらに小型にでき、かつ、駆動回路の熱がこもることを抑制できるとともにカメラ本体を保護できるので撮影性能を長期間にわたって維持できる。
【0010】
また、本発明に係るシリンダライナ撮影装置において、好ましくは、前記放熱シートは、前記ケースを形成する天板部の内面に貼り付けられた天板シートと、前記ケースを形成する底板部の内面に貼り付けられた底板シートとを含み、前記絶縁材は、前記回路基板の前記天板部側に配置され放熱性及び弾性を有する天板絶縁材と、前記回路基板の前記底板部側に配置され放熱性及び弾性を有する底板絶縁材とを含み、前記回路基板は、前記天板絶縁材及び前記天板シートを介して前記天板部に接続されるとともに、前記底板絶縁材及び前記底板シートを介して前記底板部に接続されている。
【0011】
上記の構成によれば、駆動回路の熱をより効率的にケースに逃がすことができる。
【0012】
また、本発明に係るシリンダライナ撮影装置において、好ましくは、前記ケースは、底板部を有する下ケース要素と、天板部を有し前記下ケース要素の上側に結合された上カバーとを含み、前記下ケース要素は、前記底板部の内面から突出するように前記カメラ本体を挟んで両側に一体形成された2つのボス部を有し、前記カメラ本体は、前記2つのボス部の先端に形成されたネジ孔を用いてネジ結合され、前記カメラ本体と前記下ケース要素とは、前記カメラ本体と前記ボス部との接触部を除いて接触しない。
【0013】
上記の構成によれば、ケースの下側に配置された部材からの熱をカメラ本体により伝わりにくくできることでカメラ本体の保護を図れるとともに、ケースにカメラ本体を取り外し可能に結合できる。
【0014】
また、本発明に係るシリンダライナ撮影装置において、好ましくは、前記ケース内に配置され、前記照明光源を操作部の操作に応じて調光する制御回路を備える。
【0015】
上記の構成によれば、ユーザが好みに応じて、照明光源の光量を容易に調節できる。
【0016】
また、本発明に係るシリンダライナ撮影装置において、好ましくは、前記操作部は、3つのボタン式のスイッチを含み、前記制御回路は、前記3つのスイッチのうち、所定の2つの前記スイッチが同時に所定時間以上の長押し操作がされたときに、調光モードを開始し、その後、前記3つのスイッチの残りの前記スイッチが押されるごとに所定レベルまで前記照明光源の光量を1レベルずつ大きくする。
【0017】
上記の構成によれば、3つのスイッチが調光操作専用でない場合に、他の操作部を設けることなく、3つのスイッチを用いて照明光源の光量を調節できる。
【0018】
また、本発明に係るシリンダライナ撮影装置において、好ましくは、前記3つのスイッチは、オン動作によって遠隔操作装置を用いた撮影操作を可能とするボタン式の通信スイッチと、ボタン式の電源スイッチと、オン動作によって前記カメラ本体での撮影を開始させるボタン式の撮影スイッチとである。
【0019】
上記の構成によれば、調光操作専用の操作部を設けることなく、通信スイッチ、電源スイッチ及び撮影スイッチを用いて照明光源の光量を調節できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るシリンダライナ撮影装置によれば、シリンダカバーを取り外すことなくシリンダライナの明瞭な画像をより安定して取得でき、かつ、小型で撮影性能を長期にわたって維持できるシリンダライナ撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る実施形態のシリンダライナ撮影装置の斜視図である。
図2図1の正面図である。
図3図1の上面図である。
図4図1のA矢視図である。
図5】上カバーと、下ケース要素側の部品とを分けて、それぞれの内面側を示す斜視図である。
図6図5の下ケース要素側の部品を組み付ける場合の第1組み付け状態を示す斜視図である。
図7図5の下ケース要素側の部品を組み付ける場合の第2組み付け状態と、回路基板とを示す斜視図である。
図8図5の下ケース要素側の部品を組み付ける場合の第3組み付け状態と、カメラ本体とを示す斜視図である。
図9】上カバーと、下ケース要素側の部品とを組み付けた状態における、図5のA-A断面に相当する図である。
図10】上カバーと、下ケース要素側の部品とを組み付けた状態における、図5のB-B断面に相当する図である。
図11】上カバーと、下ケース要素側の部品とを組み付けた状態における、図5のC-C断面に相当する図である。
図12】カメラ本体の主要構成を示す図である。
図13】シリンダライナの内側にシリンダライナ撮影装置を設置した状態を、エンジンを部分的に切断して示す図である。
図14】シリンダライナ撮影装置の撮影準備、撮影、及びデータ転送の方法を示すフローチャートである。
図15】本発明に係る実施形態の別例のシリンダライナ撮影装置の斜視図である。
図16】別例のシリンダライナ撮影装置において、光量インジケータの点灯状態の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を用いて本発明に係る実施形態につき、詳細に説明する。以下で説明する形状、個数、材料などは説明のための例示であって、シリンダライナ撮影装置の仕様により変更が可能である。以下では、同様の構成には同一の符号を付して説明する。以下ではシリンダライナ撮影装置で撮影する対象のエンジンをユニフロー型2サイクルディーゼルエンジンとしている。一方、シリンダライナがシリンダライナ撮影装置を挿入するための掃気孔等の貫通部を有するエンジンであれば種々の形式のエンジンに適用可能である。
【0023】
図1は、実施形態のシリンダライナ撮影装置10の斜視図である。図2は、図1の正面図である。図3は、図1の上面図であり、図4は、図1のA矢視図である。以下、シリンダライナ撮影装置10は、単に撮影装置10と記載する。
【0024】
撮影装置10は、ケース30、照明光源である複数の(図示の例では4つの)ライトユニット50a、50b、カメラ本体20、回路基板60(図7図8)、制御基板70(図5)及び電池ユニット80(図5)が一体に組み付けられている。撮影装置10は、1人の作業者が片手で、後述するエンジン100(図13)のシリンダ内に挿入することが可能な大きさを有する。図1から図4ではケースの長手方向をX、幅方向をY、高さ方向をZとしている。図2図3ではライトユニット50a、50bを簡略化して示している。
【0025】
撮影装置10は、後述する図13に示す内燃機関であるエンジン100の運転停止時において、ピストン101の上面に配置される。撮影装置10は、カメラ本体20(図1)によってシリンダライナ102の内面を撮影して画像を記録する。記録された画像は、シリンダライナ102の内面における異常現象の有無を判断するために用いられる。撮影装置10の詳細構造は後で説明する。
【0026】
図13は、シリンダライナ102の内側に撮影装置10を設置した状態を、エンジン100を部分的に切断して示す図である。エンジン100は、貨物船、タンカーなどの大型船に用いられる大型のユニフロー型2サイクルディーゼルエンジンである。例えば、エンジン100は気筒数が6~18のいずれかである直列エンジンである。図13ではエンジン100の1気筒に対応する部分を示している。
【0027】
エンジン100では、複数のシリンダライナ102のそれぞれの内側において、ピストン101が上下に往復運動し、複数のピストン101の下端部にロッド103を介して連結された図示しないクランク軸が回転駆動する。シリンダライナ102の下死点付近には、ピストン101を円周方向に取り囲むように複数の掃気孔104が形成されている。掃気孔104は横方向(水平方向)の幅が小さい縦長の長円形または楕円形の形状である。エンジン100の作動時には、ピストン101が下死点付近に下がった状態において、各掃気孔104を通って外部からシリンダライナ102内に空気が取り込まれる。シリンダライナ102の上端にはシリンダカバー105が取り付けられる。
【0028】
シリンダカバー105には、排気弁孔106と始動弁孔107とが形成されている。排気弁孔106には図示しない排気弁支持部が上側から挿入配置され、排気弁支持部に支持された排気弁(図示せず)で排気弁孔106が開閉される。排気弁支持部には排気管(図示せず)の端部が接続される。始動弁孔107は、エンジン始動時に圧縮空気を送り込むための通路であり、図示しない始動弁で開閉される。
【0029】
図1から図9を用いて、撮影装置10の詳細構造を説明する。図5は、上カバー31と、下ケース要素36側の部品とを分けて、それぞれの内面側を示す斜視図である。図6は、図5の下ケース要素36側の部品を組み付ける場合の第1組み付け状態を示す斜視図である。図7は、図5の下ケース要素36側の部品を組み付ける場合の第2組み付け状態と、回路基板60とを示す斜視図である。図8は、図5の下ケース要素36側の部品を組み付ける場合の第3組み付け状態と、カメラ本体20とを示す斜視図である。図9図11は、それぞれ上カバー31と、下ケース要素36側の部品とを組み付けた状態における、図5のA-A断面に相当する図、図5のB-B断面に相当する図、図5のC-C断面に相当する図である。
【0030】
撮影装置10のケース30は、上カバー31と下ケース要素36とを一体に組み付けることにより形成される。上カバー31は上端のほぼ中央位置に円形の開口31aを有する。図6に示すように下ケース要素36は、略矩形状の底板部37と、底板部37の周囲から全周において立設する周壁部38とを有する。図5に示すように、上カバー31は、黒色等の有色の非透明樹脂製のカバー本体32と、4個の透明樹脂製の窓部33a、33bとを含む。
【0031】
カバー本体32は、矩形状の天板部32aと、天板部32aの周囲に連結された周壁部32bとを有する。周壁部32bの長手方向両端と、幅方向両端との4つの位置には矩形状の開口が形成され、それぞれの開口に窓部33a、33bが嵌めこまれて一体化されている。カバー本体32及び窓部33a、33bは、アクリル樹脂等により形成することができる。
【0032】
各窓部33a、33bは、外側に丸まった断面円弧形で長尺な曲面状である。これにより、後述のように上カバー31の内側に窓部33a、33bに接近して、ライトユニット50a、50bを配置した場合に、ライトユニット50a、50bの光を、窓部33a、33bを通じてケース30の外側に導くことができる。図1図4では、ケース30の黒色などの非透明樹脂部分を砂地で示している。
【0033】
なお、上カバー31は、透明なカバー本体において、図1図4の砂地部に相当する部分に、黒色などの有色の板部材を貼り付けることにより形成されてもよい。
【0034】
上カバー31の周壁部32bの先端(図5の上端)は段差部を介して嵌合筒部32cが形成され、後述の図9に示すように下ケース要素36の周壁部38における嵌合筒部38aの内側に嵌合されることでケース30を形成する。
【0035】
下ケース要素36は、黒色等の有色の非透明樹脂製である。図6図10に示すように、下ケース要素36の底板部37において、後述のカメラ本体20(図20)を配置する部分を挟んでケース30の長手方向(図10の左右方向)両側の2つの位置には、2つのボス部39が一体形成されている。2つのボス部39は、底板部37の内面から上側に突出するように柱部とその両側の板部とを有する。各ボス部39の柱部の先端には、ボス部39の軸方向にネジ孔39aが形成される。各ボス部39は、下ケース要素36にカメラ本体20をネジ結合するために用いられる。
【0036】
下ケース要素36の底板部37の外周縁部には、図5に示すように複数の支持部41を介してライトユニット50a、50bが、下ケース要素36の上端より上側に配置されるように取り付けられている。各ライトユニット50a、50bは、下ケース要素36の上端の外周縁部に沿って直線状に配置されている。各ライトユニット50a、50bは、長方形の金属または樹脂の基板51において長手方向に沿って複数位置にLEDライト52を一列に並んで取り付けることにより一体に形成される。基板51は、上側に向かって下ケース要素36の内側に向かうように傾斜している。各LEDライト52は例えば電気的に直列接続される。各LEDライト52は、例えばLEDチップの周囲を樹脂で封止することにより形成されてもよい。
【0037】
各LEDライト52の発光色は白色である。一方、エンジンに用いられるエンジンオイルの組成など、検査対象となるエンジンの特性によっては、白色の発光色では検査したい傷や破損が見えにくい場合がある。これにより、エンジンの特性に応じて、近赤外光から青色発光色までの異なる波長の複数の発光色の中から、検査したい対象が見えやすい波長の発光色を選択してもよい。
【0038】
各ライトユニット50a、50bは、当該ライトユニット50a、50bの基板51の外側面に対し直交する方向、すなわち、ケース30の底板部37に対し傾斜する方向の光軸L1,L2,L3,L4(図1図2図4)を有する。これにより、光軸L1,L2,L3,L4に沿うLEDライト52の光線が例えば図13の矢印αに1つの光軸について示すように、シリンダライナ102の内周面102aで反射しながら上側に向かう。シリンダライナ102の内面の鏡面度合いが高い場合、この内面での光の拡散が小さい。このようにシリンダライナ102の鏡面度合いが高い場合でも上記のように内周面102aで光線を反射できるので、シリンダライナ102の内面を全体的に明るくするとともに、照度の偏りを抑制できる。なお、LEDライト52の外側に拡散板を配置して照度の偏りをさらに抑制することもできる。
【0039】
さらに、ケース30の長手方向一端部(図1の右上端部、図2図3の右端部、図4の紙面の表側端部)の外側には矩形の鉄板54が取り付けられている。鉄板54は、後述のように治具(図示せず)の磁石で撮影装置10を吸着させるために用いられる。
【0040】
図5図8に示すように、ケース30の下ケース要素36には、カメラ本体20と、回路基板60と、制御基板70と、電池ユニット80とが組み付けられている。カメラ本体20は、下ケース要素36に取り付けられて、後述の撮影スイッチSW1がオンされた後、上方を自動撮影する。
【0041】
図12は、カメラ本体20の主要構成を示す図である。カメラ本体20は、図8図12に示すように、上面側(図8図12の上側)の第1広角レンズ21aと下面側(図12の下側)の第2広角レンズ21bとを持つ全天球型撮像形式である。
【0042】
各広角レンズ21a,21bは、180度より大きい画角θを有する。各広角レンズ21a,21bは、負のメニカスレンズである外側レンズ22から入射した光をプリズム23で反射させ、両凸レンズ等の内側レンズ24に透過させた後、撮像センサ25の受光面上に入射させるように構成される。図1図4に示すように、第1広角レンズ21aの外側レンズ22は、上カバー31の開口31aを通じて上側に突出する。図9図10に示すように、第2広角レンズ21bの外側レンズ22は、下ケース要素36に収容され、ケース30から外側に露出しない。図12に示すように各撮像センサ25の受光面上には物体の像が結像され、各受光面上の像を表す信号が画像処理部27において1つの画像として合成される。合成画像では、立体角が4πラジアンである広範囲の撮影画像となる。この撮影画像では、第1広角レンズ21aで取得された像の周囲に、第2広角レンズ21bで取得された像が配置されるが、第2広角レンズ21bではエンジンの内面を撮影しないので、第2広角レンズ21bは省略してもよい。画像は、内蔵メモリまたはメモリカードなどの記録媒体である内部記録部28に記録される。外側レンズ22及び内側レンズ24はそれぞれ複数のレンズから構成されてもよい。画像処理部27及び内部記録部28は、後述する回路基板60(図8)に形成された回路部に含まれる。カメラ本体20は、後述の電池ユニット80(図5)で駆動される。図9図10では、カメラ本体20の上下2つの外側レンズ22の間に配置される部分の内部構造を省略して示している。
【0043】
図5図8図10に示すように、カメラ本体20の上下方向中間部で、ケース30の長手方向(図10の左右方向)について両側には2つの樹脂製のブロック状の腕部29が突出している。2つの腕部29の上面において、幅方向(図10の紙面の表裏方向)中間部には溝部29aが形成され、溝部29aの下面には上下方向にネジ81(図8図10)が貫通している。カメラ本体20は、各ネジ81を用いて、下ケース要素36に形成された後述のボス部39(図6図8図10)にネジ結合される。これにより、カメラ本体20は、放熱性を有するゴム材及び放熱シートの何れも介さずにケース30に接続されている。このため、カメラ本体20は、撮影装置10に組み込まれる。なお、カメラ本体20には、180度未満の画角を有する広角レンズを用いてもよい。
【0044】
カメラ本体20は、図13に示すエンジン100のピストン101(図13)を上下方向に移動させながらシリンダライナ102の内面を撮影する。このため、カメラ本体20は、所定時間間隔(例えば10秒間隔)で自動的に複数の静止画像を連続的に撮影したり、動画を撮影する機能を持つことが好ましい。カメラ本体20は、遠隔操作装置によりWi-Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標)の通信方式により、無線で遠隔操作される機能を持っている。例えば、遠隔操作装置として、スマートフォン、またはタブレット端末を用いることができる。このとき、遠隔操作装置には、カメラ本体20を遠隔操作するためのアプリケーションソフトウェアが予め記憶される。
【0045】
回路基板60は、樹脂または金属製の基板に駆動回路を形成することにより構成される。駆動回路は、カメラ本体20を駆動するために用いられる。図8に示すように、回路基板60は、ケース30の下ケース要素36の長手方向他端部(図8の左下端部)に配置される。回路基板60は、放熱シートと放熱ゴムとを介してケース30に接続される。具体的には、図6に示すように、下ケース要素36の底板部37の内面(上面)には、薄板状の底板シート82が貼り付けられている。底板シート82は、底板部37の内面から突出するボス部39及び柱部40を避ける形状に形成される。一方、図5に示すように、上カバー31の天板部32aの内面には、薄板状の天板シート83が貼り付けられている。天板シート83は、天板部32aの内面から突出する柱部34を避ける形状に形成される。底板シート82及び天板シート83は、それぞれ放熱シートに相当する。各シート82,83は、例えば高熱伝導性を有する樹脂層により形成される。
【0046】
また、図7図11に示すように、回路基板60は、回路基板60の下側に接触する底板ゴム84と、底板シート82とを介して下ケース要素36に接続される。底板ゴム84は、直方体状である。底板ゴム84は、放熱性及び弾性を有する底板絶縁材に相当し、ゴム材に伝熱性を有するフィラーが混入される等により放熱性を有する。これにより、回路基板60の駆動回路の駆動により発生した熱を、放熱性を有する底板ゴム84及び底板シート82を介して、ケース30に効率的に逃がすことができる。このため、ケース30に保冷剤を入れて駆動回路の温度上昇を抑制する必要がない。
【0047】
さらに、図5図8図11に示すように、回路基板60は、回路基板60の上側に接触する中間ゴム85と、金属板86(図5図11)と、金属板86の上に固定された天板ゴム87と、天板シート83とを介して上カバー31に接続される。中間ゴム85及び天板ゴム87は、それぞれ直方体状である。中間ゴム85は、放熱性及び弾性を有する中間絶縁材に相当し、天板ゴム87は、放熱性及び弾性を有する天板絶縁材に相当する。中間ゴム85及び天板ゴム87は、ゴム材に伝熱性を有するフィラーが混入される等により放熱性を有する。これにより、回路基板60の駆動回路の駆動により発生した熱を、放熱性を有する中間ゴム85、天板ゴム87、金属板86及び天板シート83を介して、ケース30により効率的に逃がすこともできる。これにより、回路基板60の放熱性をさらに高めることができる。金属板86において、天板ゴム87と異なる位置には、遠隔操作装置によりカメラ本体20を操作するための通信モジュール88と制御基板70とが固定される。制御基板70は、基板上に制御回路が形成される。制御回路は、回路基板60の駆動回路とLEDライト52とに接続され、駆動回路及びLEDライト52の点灯を制御する。
【0048】
さらに、制御基板70の制御回路には、サーミスタ等の温度検知部が配置されており、温度検知部が所定の温度以上の高温状態を検知すると、安全装置により制御回路が動作を停止する。これにより、それ以上に制御回路及び駆動回路が駆動されることで温度が上昇することを抑制できるので、各回路をより効率的に熱から保護できる。
【0049】
図5に示すように、電池ユニット80は、ケース30(図1)の下ケース要素36内において、カメラ本体20より長手方向一端側(図5の右上側)に配置されている。電池ユニット80の電池は、LEDライト52に、制御基板70の制御回路を介して接続され、カメラ本体20に、制御回路と回路基板60の駆動回路とを介して接続される。これにより、各LEDライト52及びカメラ本体20は、電池ユニット80から電力を供給される。電池ユニット80は、電池ケースに単三電池等の複数の電池(図示せず)を組み付けて直列接続することにより形成される。複数の電池は、二次電池としてもよい。
【0050】
上カバー31の天板部32aの上面には、それぞれボタン式スイッチである、撮影スイッチSW1と、通信スイッチSW2と、電源スイッチSW3とが配置される。電源スイッチSW3は、オン動作によって、制御基板70(図5)の制御回路に電池ユニット80の電力が供給される。撮影スイッチSW1は駆動回路に接続されて、オン動作によって、カメラ本体20での撮影が開始される。例えば、撮影スイッチSW1がオンされると、所定時間間隔での連続的な静止画の撮影が行われる。各LEDライト52は、撮影時毎に点灯する。これにより、LEDライト52の長時間の連続点灯を防止してエネルギー消費を抑制できる。通信スイッチSW2は駆動回路に接続され、オン動作によって、遠隔操作装置を用いた撮影操作を可能とする。
【0051】
下ケース要素36の底板部37において、電池ユニット80が配置される部分の下側には、開口(図示せず)が形成される。この開口を通じて電池ユニット80の電池ケース内に電池が取り付けられる。この開口の周縁部には電池カバー(図示せず)が、下ケース要素36の下面側から係止構造で取り付けられて開口が電池カバーで塞がれる。
【0052】
また、図6図10に示すように、底板シート82において、カメラ本体20の下端部、具体的には下側の外側レンズ22の真下に位置する部分には円形の開口82aが形成される。また、下ケース要素36の底板部37の内面(上面)において、開口82aと整合する位置には円形の凹部37aが形成される。図10に示すように、カメラ本体20が腕部29とボス部39とでネジ結合された状態で、カメラ本体20の下側の外側レンズ22と底板部37との間には隙間Gが形成される。底板シート82の開口82a及び底板部37の凹部37aは、ケース30の上下方向の厚さを小さくしたにも関わらず、下側の外側レンズ22が底板部37に接触することを防止する。これにより、カメラ本体20と下ケース要素36とは、カメラ本体20とボス部39との接触部を除いて接触しない。これにより、撮影装置10の下側からの熱で撮影装置10の機能が低下することを抑制できる。カメラ本体20の下側の外側レンズ22と底板シート82とは離れていてもよい。
【0053】
上記の撮影装置10の組み付けは、次のようにして行う。まず、図6に示すように、下ケース要素36の底板部37に底板シート82を貼り付けるとともに、底板部37に電池ユニット80の電池ケースを取り付けて第1組み付け状態とする。
【0054】
次に、底板シート82の上に2つの底板ゴム84を貼り付けて第2組み付け状態とするとともに、底板ゴム84の上側に回路基板60を載せて、図8に示すように第3組み付け状態とする。回路基板60の上には、2つの底板ゴム84の一方(図8の右側)の底板ゴム84と回路基板60を介して対向する位置に、中間ゴム85が貼り付けられる。
【0055】
次に、カメラ本体20に形成された2つの腕部29が、下ケース要素36の底板部37から突出する2つのボス部39に載せられて、各腕部29がボス部39のネジ孔39a(図10)とネジ81とを用いて下ケース要素36にネジ結合される。この状態で、カメラ本体20は、ボス部39と腕部29との接触部分でのみ下ケース要素36に接触する。また、カメラ本体20と、回路基板60の駆動回路とを、ケーブル(図示せず)で接続する。
【0056】
その後、中間ゴム85の上側に、図5に示すように通信モジュール88と天板ゴム87とが固定された金属板86が載せられて、下ケース要素36側で、第4組み付け状態とする。この状態では、金属板86に制御基板70が取り付けられている。さらに下ケース要素36には、各ライトユニット50a、50bが支持部41を介して取り付けられている。制御基板70の制御回路は、駆動回路とライトユニット50a、50bと電池ユニット80とに接続される。
【0057】
さらに、図5に示すように上カバー31の内面に天板シート83が貼り付けられた状態で上カバー31の嵌合筒部32cを下ケース要素36の嵌合筒部36aに嵌合させて、下ケース要素36に上カバー31を一体化させる。この状態で下ケース要素36に形成された柱部40を貫通し、上カバー31に形成された柱部34のネジ孔に結合された複数のネジ(図示せず)で、下ケース要素36と上カバー31とをネジ結合することでケース30を形成する。この状態で、上カバー31の開口31aからカメラ本体20の上側に位置する外側レンズ22を露出させる。さらに、下ケース要素36に下面側の開口を塞ぐように電池カバーを取り付けるとともに、ケース30に鉄板54を取り付けて、撮影装置10を形成する。
【0058】
図14は、撮影装置10の撮影準備、撮影、及びデータ転送の方法を示すフローチャートである。ステップS10において、電池ユニット80の電池ケース内に電池が装着される。次に、ステップS12において電源スイッチSW3がオンされ、ステップS14において、撮影スイッチSW1がオンされる。これにより、カメラ本体20の所定時間間隔での連続的な静止画の撮影が開始される。このとき、例えば図示しない携帯端末装置を用いて、連続撮影の開始をカメラ本体20に指示することもできる。例えば、携帯端末装置に記憶された遠隔操作用のソフトウェアを起動させて、作業者が所定の操作を行うことで上記の指示を行う。
【0059】
次に図13に示すようにエンジン100を停止させた状態で、作業者が、1つのシリンダライナ102の外側の掃気用空間109に、図示しない開閉扉を通じて進入する。その後、作業者が図示しない治具で撮影装置10を吸着させて、複数の掃気孔104の1つを通じてシリンダライナ102内に撮影装置10を挿入する。このとき作業者は、治具として、ロッドの先端に磁石を移動可能に取り付けたものを用いる。治具は、ロッドの先端に設けた支持部の内側に、磁石を移動可能に支持する。磁石は、リンク機構またはケーブルを介して、ロッドの根元部に設けた操作部に接続される。作業者が操作部を操作することで磁石が支持部の先端から近い位置と遠い位置との間で移動するので、支持部に撮影装置10の鉄板54を吸着させることと、支持部から撮影装置を取り外すこととの切り換えが可能となる。
【0060】
さらに、掃気孔104は横方向の幅が小さい縦長の形状である。これにより、ケース30の幅方向Y(図1)の両側面が上または下に向くように、撮影装置10の向きを図1の状態から90度変えて長手方向Xの鉄板54と反対側端を先にして、掃気孔104に通過させる。そして、撮影装置10の向きを、カメラ本体20の外に露出する外側レンズ22が上に向くように変えた後、撮影装置10をピストン101の上面の中心付近に配置する。この状態で、治具から撮影装置10を取り外す(ステップS16)。これにより撮影準備が完了する。なお、カメラ本体20に対し、静止画像の連続撮影の代わりに動画撮影の開始を指示してもよい。
【0061】
その後、エンジン100のクランク軸を図示しない補助モータで駆動させて、ピストン101を上下方向に移動させながら、シリンダライナ102の内面の撮影を行う(ステップS18)。例えば、ピストン101を下死点から上死点に移動させる。これにより、シリンダライナ102内に撮影装置10を設置した後では、撮影のために撮影装置10をケーブルでエンジン100の外部と接続したり、外部から操作する必要がなく、独立して自動で撮影を行える。
【0062】
ピストン101の上下方向の移動を1回または複数回行うことにより、シリンダライナ102の内面の必要な撮影が完了する。そして、その後、作業者がシリンダライナ102内から撮影装置10を取り出す(ステップS20)。そして、撮影スイッチSW1をオフして電源スイッチSW3をオフした後、撮影データを外部機器に転送する。このとき、カメラ本体20の内部記録部28(図12)からUSBケーブル等のケーブルを介して、撮影データをコンピュータまたは携帯端末である外部機器に転送して、データ転送作業を終了する(ステップS22)。このとき、カメラ本体20において撮影データがメモリカード等の記録媒体に記録されている場合には、その記録媒体を用いて外部機器に撮影データを転送してもよい。撮影データは、撮影装置に接続したケーブルを介さずに、無線の通信モジュールにより外部機器に転送してもよい。
【0063】
上記の撮影装置10によれば、LEDライト52を含むライトユニット50a、50bによりシリンダライナ102の内面を照射して明るくできる。さらにシリンダライナ102内に撮影装置10だけを治具で差し入れて自動で撮影できる。これにより、シリンダカバー105を取り外すことなく、シリンダライナ102の明瞭な画像を取得できる。このため、撮影終了後に、この画像を用いて、シリンダライナ102の異常の発生の有無を十分な時間をかけて精度よく判断できる。
【0064】
さらに、ケース30の内側には、レンズを有するカメラ本体と、カメラ本体を駆動する駆動回路とを、カメラケースに収容した状態で配置する必要がない。これにより、ケース30の内側でカメラ本体20がずれ動くことをより効果的に防止できる。このため、シリンダライナ102の明瞭な画像をより安定して取得できる。また、カメラ本体20の駆動回路の駆動により発生した熱を、底板ゴム84、天板ゴム87、中間ゴム85、底板シート82、及び天板シート83を介して効率的にケース30に逃がすことができるので、駆動回路の熱を吸収するための保冷剤を省略できる。また、カメラ本体20に、ケース30の外側に配置された部材(ピストン101等)からの熱を伝わりにくくできるので、カメラ本体20の保護を図れる。これにより、撮影装置10をさらに小型にでき、かつ、駆動回路及び制御回路の熱がこもることを抑制できるとともにカメラ本体20の保護を図れるので撮影性能を長期間にわたって維持できる。さらに、回路基板60と制御基板70とを各ゴム84,85,97を介してケース30の内面に接続しているので、部品の組み付け誤差を吸収しながら、ケース30内に各基板60,70を安定して固定できる。なお、回路基板60をケースの底板部側及び天板部側の一方側のみのゴム材と放熱シートとを介してケースに接続してもよい。
【0065】
また、上記では、放熱性及び弾性を有する絶縁材として、底板ゴム84、天板ゴム87、中間ゴム85を用いる場合を説明したが、放熱性及び弾性を有する絶縁材は、放熱性を有するゴム材に限定しない。例えば、弾性を有するウレタンフォーム等の樹脂シートにおいて、伝熱性を有するフィラーを含有する等で放熱性を持たせた放熱シートを、放熱性及び弾性を有する絶縁材として用いてもよい。また、放熱性及び弾性を有する絶縁材として、放熱性及び弾性を有する放熱ゲルや放熱グリースの硬化物を用いてもよい。放熱ゲルは、例えばシリコーン樹脂を主原料とするゲル状である軟質性の部材であり、伝熱性フィラーを分散させた液状のシリコーン樹脂を加熱等により硬化させて用いる。例えば、放熱ゲルとして、株式会社タイカ製のαGEL(登録商標)を使用できる。また、放熱グリースは、例えば室温硬化型のシリコーン樹脂のグリースで熱伝導性物質が充填されたものを硬化させて用いる。例えば、放熱グリースとして、積水ポリマテック株式会社製のCGWシリーズを使用できる。
【0066】
また、カメラ本体20は、2つのボス部39の先端に形成されたネジ孔39aを用いてネジ結合され、カメラ本体20と下ケース要素36とは、カメラ本体20とボス部39との接触部を除いて接触しない。これにより、ケース30の下側に配置された部材としてのピストン101からの熱をカメラ本体20により伝わりにくくできることでカメラ本体20の保護を図れるとともに、ケース30にカメラ本体20を取り外し可能に結合できる。例えば、エンジン100の停止後にピストン101の温度がまだ高い場合が考えられる。このときにピストン101の上面に撮影装置10を配置した場合でも、カメラ本体20にピストン101からの熱を伝わりにくくできる。
【0067】
図15は、実施形態の別例のシリンダライナ撮影装置10aの斜視図である。図16は、シリンダライナ撮影装置10aにおいて、光量インジケータ90の点灯状態の変化を示す図である。
【0068】
図15に示すシリンダライナ撮影装置10aは、図1図14を用いて説明したシリンダライナ撮影装置10において、照明光源であるライトユニット50a、50bの合計の光量をユーザによって調節可能としている。具体的には、図5を参照して、制御基板70が有する制御回路は、ライトユニット50a、50bを3つのスイッチである通信スイッチSW2、電源スイッチSW3及び撮影スイッチSW1の操作に応じてライトユニット50a、50bを調光するように制御する。このとき、制御回路は、各ライトユニット50a、50bの各LEDライト52を、PWM方式等で調光してもよい。通信スイッチSW2、電源スイッチSW3及び撮影スイッチSW1は、操作部に相当する。
【0069】
制御回路は、3つのスイッチのうちの所定の2つのスイッチとして、通信スイッチSW2及び電源スイッチSW3が同時に2~3秒等の所定時間以上の長押し操作がされたとき、調光モードを開始する。制御回路は、その後、3つのスイッチの残りのスイッチとして、撮影スイッチSW1が押されるごとに所定レベルであるレベル5まで、ライトユニット50a、50bの光量を1レベルずつ大きくする。これにより、本例のように、3つのスイッチである通信スイッチSW2、電源スイッチSW3及び撮影スイッチSW1が調光操作専用でない場合に、他の操作部を設けることなく、3つのスイッチを用いてライトユニット50a、50bの光量を調節できる。調光モードを開始するスイッチの組み合わせを通信スイッチSW2及び電源スイッチSW3以外とし、光量レベルを上げるためのスイッチを通信スイッチSW2または電源スイッチSW3としてもよい。
【0070】
シリンダライナ撮影装置10aは、1つのライトユニット50a(図5参照)の基板51の長手方向端部に、光量調節の確認用として、光量インジケータ90が取り付けられる。光量インジケータ90は、横並びの5つの点灯表示部を有する。各点灯表示部は、LED等により構成される。光量インジケータ90の点灯表示は、上カバー31の窓部33aを通して外側から確認可能である。制御回路は、通信スイッチSW2、電源スイッチSW3及び撮影スイッチSW1の操作に基づくライトユニット50a、50bの光量のレベル指示に応じて、光量インジケータ90の点灯表示を制御する。光量インジケータ90は、例えば赤色で点灯する。
【0071】
具体的には、図16に示すように、光量レベルがレベル1からレベル5に向かって、増大することに応じて、光量インジケータ90の点灯が1つずつ増える。ユーザによる光量レベルの調節が完了したら、電源スイッチSW3を所定時間以上長押し操作することで電源をオフする。この状態で、制御回路は、電源オフ前の最後の光量レベルを記憶部に記憶して、次回起動時には、設定された光量レベルでライトユニット50a、50bを点灯させる。
【0072】
上記の構成によれば、ライトユニット50a、50bを操作部の操作に応じて調光する制御回路を備えるので、ユーザが好みに応じて、ライトユニット50a、50bの光量を容易に調節できる。本例において、その他の構成及び作用は、図1図14の構成と同様である。
【符号の説明】
【0073】
10,10a シリンダライナ撮影装置(撮影装置)、20 カメラ本体、21a 第1広角レンズ、21b 第2広角レンズ、22 外側レンズ、23 プリズム、24 内側レンズ、25 撮像センサ、26 カメラケース、27 画像処理部、28 内部記録部、29 腕部、30 ケース、31 上カバー、31a 開口、32 カバー本体、32a 天板部、32b 周壁部、32c 嵌合筒部、33a,33b 窓部、34 柱部、36 下ケース要素、37 底板部、38 周壁部、38a 嵌合筒部、39 ボス部、39a ネジ孔、40 柱部、41 支持部、50a,50b ライトユニット、51 基板、52 LEDライト、54 鉄板、60 回路基板、70 制御基板、80 電池ユニット、81 ネジ、82 底板シート、82a 開口、83 天板シート、84 底板ゴム、85 中間ゴム、86 金属板、87 天板ゴム、88 通信モジュール、90 光量インジケータ、100 エンジン、101 ピストン、102 シリンダライナ、102a 内周面、103 ロッド、104 掃気孔、105 シリンダカバー、106 排気弁孔、107 始動弁孔、109 掃気用空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16