(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/28 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
B32B27/28
(21)【出願番号】P 2019065229
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】麻生 勉
(72)【発明者】
【氏名】須田 信光
(72)【発明者】
【氏名】滝瀬 潔
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-038464(JP,A)
【文献】特開2000-200950(JP,A)
【文献】特開2020-037237(JP,A)
【文献】国際公開第2020/095883(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B29C 48/00 - 48/96
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの層間にポリエーテルエーテルケトン樹脂シート以外の材料が介在しないよう、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを直接重ねて積層することにより積層体を形成し、この積層体を加圧加熱することにより複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを融着する積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法であって、
各ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを、積層前に示差走査熱量計で測定した結晶化度が15%以下の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートとすることを特徴とする積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの層間にポリエーテルエーテルケトン樹脂シート以外の材料が介在しないよう、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを直接重ねて積層することにより積層体を形成し、この積層体を加圧加熱することにより複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを融着する積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法であって、
複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを、積層前に示差走査熱量計で測定した結晶化度が15%以下の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートと、積層前に示差走査熱量計で測定した結晶化度が20%以上の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートとし、これら低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートと高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートとを交互に重ねることを特徴とする積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを活性化処理してその両面の水に対する接触角を60°以下とした後、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを直接重ねて積層する請求項1又は2記載の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
積層体を230℃以上ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの融点未満の温度範囲で加熱加圧する請求項1、2、又は3記載の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
積層体を低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの融点未満又は高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの融点未満の温度で加熱加圧する請求項4記載の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、家庭用品、機械、食品、建築、半導体製造の分野等で使用される汎用の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂は、あらゆる面において高機能を発揮する熱可塑性樹脂として注目され、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法により所定の成形品に成形されている。
【0003】
このポリエーテルエーテルケトン樹脂は、必要に応じ、板や樹脂シート等に製造される(特許文献1、2、3参照)が、樹脂シートに製造される場合、薄型化を適切に図ることができないことがある。例えば、2mmの厚さを越えるポリエーテルエーテルケトン樹脂板の射出成形法による製造は比較的容易ではあるが、厚さ1mm未満の薄いポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの射出成形法による製造は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の流動性、金型の精度や再現性等に影響されるので、それほど容易なことではない。
【0004】
また、厚さ1mm程度や1mm未満の薄いポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを押出成形法等で製造できたとしても、市場で要求されるポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの厚さは凡そ決まっているので、所望の厚さのポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを自由に得ることができないことがある。
【0005】
例えば、頻繁に利用される厚さ(10μm,50μm,100μm,1000μm等)のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを得ることは比較的容易ではあるが、あまり利用されない厚さ(例えば、70μm,150μm,300μm,500μm,700μm,800μm等)のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを得ることは、製造装置の高精度な調整に迫られるので、実際には困難である。このような場合、従来においては、例えば厚さ5mmの厚肉のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを用意し、この厚肉のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの表裏両面を時間をかけて慎重に研削し、所望の厚さのポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63‐92430号公報
【文献】特開平01‐283127号公報
【文献】特開2004‐075706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、厚肉のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの表裏両面を時間をかけて慎重に研削する場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートに要求される最終的な薄さ(厚さ)によっては、研削屑が著しく増大し、非常に無駄が多くなるという大きな問題が新たに生じる。また、慎重な研削作業を必要不可欠とするので、製造作業の迅速化を図ることは到底困難である。
【0008】
係る問題を解消する方法として、薄いポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを接着材で複数枚貼り合わせ、所望の厚さのポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造する方法が提案されている。しかしながら、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートは、結晶化度が高い場合、異種材料との接着性に問題があるので、異種材料の接着材による単なる接着では、充分な接着性を得ることができず、樹脂シートの剥離を招くおそれがある。
【0009】
本発明は上記に鑑みなされたもので、研削作業を省略することができ、異種材料の接着材を使用することなく、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを適切に一体化して所望の厚さとすることのできる積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては上記課題を解決するため、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの層間にポリエーテルエーテルケトン樹脂シート以外の材料が介在しないよう、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを直接重ねて積層することにより積層体を形成し、この積層体を加圧加熱することにより複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを融着(溶かし着ける)する積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法であって、
各ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを、積層前に示差走査熱量計で測定した結晶化度が15%以下の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートとすることを特徴としている。
【0011】
また、本発明においては上記課題を解決するため、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの層間にポリエーテルエーテルケトン樹脂シート以外の材料が介在しないよう、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを直接重ねて積層することにより積層体を形成し、この積層体を加圧加熱することにより複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを融着する積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法であって、
複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを、積層前に示差走査熱量計で測定した結晶化度が15%以下の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートと、積層前に示差走査熱量計で測定した結晶化度が20%以上の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートとし、これら低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートと高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートとを交互に重ねることを特徴としている。
【0012】
なお、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを活性化処理してその両面の水に対する接触角を60°以下とした後、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを直接重ねて積層することができる。
また、積層体を230℃以上ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの融点未満の温度範囲で加熱加圧することができる。
また、積層体を低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの融点未満又は高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの融点未満の温度で加熱加圧することもできる。
【0013】
また、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを融着して中間体を一体形成し、この中間体をトリミングすることができる。
また、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを融着した後、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを活性化処理してその両面の水に対する接触角を60°以下とすることができる。
さらに、中間体のトリミングの少なくとも前後いずれかでアニール処理することも可能である。
【0016】
ここで、特許請求の範囲におけるポリエーテルエーテルケトン樹脂シートは、樹脂シートでも良いし、薄膜の樹脂フィルムでも良い。このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートが複数枚の場合、同一の厚さでも良いし、異なる厚さでも良い。複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを直接重ねて積層体を形成する場合、各ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを活性化処理してその両面の接触角を60°以下としても良いし、一部のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを活性化処理してその両面の接触角を60°以下としても良い。この両面の接触角は、60°以下であるが、具体的には30°以上60°以下、好ましくは30°以上55°以下、より好ましくは30°以上50°以下、さらに好ましくは35°以上45°以下が良い。
【0017】
本発明によれば、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの積み重ねにより、所望の厚さの積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを得ることができる。この積み重ねの際、結晶化度が低い低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートが接着材として機能する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、研削作業を省略することができ、異種材料の接着材を使用することなく、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを適切に一体化することができるという効果がある。この適切な一体化により、所望の厚さの積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを容易に得ることができる。また、隣接するポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの間に接着材等の不純物が存在しないので、不純物が汚染の原因となるのを防止することができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、上記効果の他、隣接する低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートと高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートとを強固に接着することができる。また、高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを利用するので、高い物性や優れた耐薬品性を得ることができる。
請求項3記載の発明によれば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの両面の水に対する接触角が60°以下なので、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの接着性の向上が期待できる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、積層体を230℃以上ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの融点未満の温度範囲で加熱加圧するので、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの表面を含む全体が溶解して厚さムラが生じたり、高精度な厚さの積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造が困難になるのを防ぐことができる。また、融点未満の温度範囲で加熱すれば、低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートが高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートに変質するので、高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの物性よりも高い物性が期待できる。
請求項5記載の発明によれば、積層体を低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの融点未満又は高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの融点未満の温度で加熱加圧するので、融点の選択により、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの溶融温度範囲を拡大し、生産性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート
の製造方法の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【
図2】本発明に係る積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート
の製造方法の実施形態における低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート同士の積層状態を模式的に示す断面説明図である。
【
図3】本発明に係る積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート
の製造方法の実施形態における厚さばらつきのある複数枚の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの積層状態を模式的に示す断面説明図である。
【
図4】本発明に係る積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート
の製造方法の実施形態における低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートと高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの積層状態を模式的に示す断面説明図である。
【
図5】本発明に係る積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート
の製造方法の実施形態における低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートと一対の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの積層状態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1は、
図1ないし
図5に示すように、一枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2ではなく、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の直接的な積層により一体形成され、枚数の調整により所望の厚さに調整される。
【0023】
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂は、ベンゼン環がパラ位置でケトンとエーテル結合で連結した構造の結晶性樹脂であり、例えばガラス転移点が143℃、融点が343℃であり、500℃まで安定して耐熱性に優れる。このポリエーテルエーテルケトン製の樹脂シートは、濃硫酸には酸化するものの、溶かせる溶剤が無いので耐溶剤性に優れ、超音波シールが容易であり、レーザにより溶着や印字が可能である。また、難燃性に優れ、吸水率が低く(0.05%)、純度が高いので、例え燃焼しても毒性ガスの発生することがないという特徴を有する。
【0024】
具体的なポリエーテルエーテルケトン樹脂としては、例えば、キータスパイアポリエーテルエーテルケトン グレード:KT-851NL SP〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製:製品名〕やビクトレックスピーク381G〔ビクトレックス社製:製品名〕等があげられる。
【0025】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2は一枚ではなく、必ず複数枚が使用されるが、これは、複数枚であれば、厚い樹脂シートや薄い樹脂フィルムをスペーサとして利用することにより、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1の厚さの調整や変更に簡単に対処することができ、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1の多品種化に容易に対応することができるからである(
図2参照)。また、例え一枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の表面が傾斜等して平滑性に問題があったり、中心からの完全対称性に問題があっても、他の平滑なポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を利用すれば、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1表面の平滑性の向上を図ることができるからである(
図3参照)。
【0026】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2は、例えば、信越ポリマー株式会社製〔製品名:shin‐Etsu Sepla Film(登録商標)〕を採用することができる。また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の具体的な枚数としては、少なくとも2枚あれば良い。この枚数は、求める所望の厚さに応じ、3枚、5枚、16枚、18枚、20枚、22枚等に増やすことができる。
【0027】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の製造方法としては、特に限定されるものではないが、樹脂シート厚の高精度化等を図る観点からすると、溶融押出成形法が最適である。具体的には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料を溶融混練し、この成形材料をダイスから連続したポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2に押出成形し、この押し出されたポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を冷却した後、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を巻き取ることにより、長尺で高精度のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を製造することができる。
【0028】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2は複数枚が重ねられ(
図2ないし
図5参照)るとともに、隣接するポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2とポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2との間に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2以外の材料が何ら介在しないよう直接的に積層され、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2が融着して一体化される。ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2が直接的に積層されるのは、隣接するポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2間にアクリル系の接着剤等が介在すると、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1の接着性や平面性を悪化させ、接着剤等が汚染の原因となるからである。
【0029】
複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2は、
図2ないし
図5に示すように、少なくとも一部が、積層前の結晶化度が15%以下の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3とされる。低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3が必ず使用されるのは、低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3が積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1の製造時に接着シートとして機能するので、異種材料の接着シートを省略することができるという理由に基づく。
【0030】
低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3の具体的な結晶化度は、3.5%以上15%以下、好ましくは3.6%以上10%以下、より好ましくは3.6%以上6%以下が良い。このポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0031】
複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の残部は、低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3でも良いが、高物性や優れた耐薬品性を得たい場合には、積層前の結晶化度が20%以上の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4が好ましい(
図4、
図5参照)。
【0032】
この場合、高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4は、確実な接着を得るため、低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3に必ず隣接して直接接着される。この高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4の具体的な結晶化度は、20%以上40%以下、好ましくは22%以上35%以下、より好ましくは24%以上30%以下が良い。ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の結晶化度は、上記同様、示差走査熱量計(DSC)により測定することが可能である。
【0033】
上記構成において、所望の厚さの積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1を製造する場合には、先ず、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を用意する。ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2は、例えばポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料を溶融押出成形機により溶融混練し、この成形材料を溶融押出成形機の先端部のTダイスから連続した薄膜の樹脂シートに押出成形し、この押し出された樹脂シートを冷却ロールと一対の圧着ロールとの間に挟持させて冷却した後、樹脂シートを巻取機の巻取管に巻き取ることにより、製造することができる。
【0034】
この際、冷却ロールと一対の圧着ロールの少なくともいずれかの周面が鏡面加工されていれば、鏡面転写により、高精度の平面性を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を製造することができる。
【0035】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を製造したら、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2をそのまま繰り出しても良いが、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2同士の接着性を向上させたり、後の接着性を向上させたいときには、繰り出し中のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2における表裏両面を活性化処理し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の表裏両面の接触角を60°以下、好ましくは55°以下、より好ましくは50°以下、さらに好ましくは45°以下にすると良い。活性化処理としては、限定されるものではないが、例えばプラズマ処理、エキシマ光による表面処理、コロナ放電処理、ケイ酸炎処理等があげられる。
【0036】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を繰り出したら、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を裁断して平面矩形の枚葉とし、この枚葉化した複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を直接重ねて積層体を形成するとともに、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の層間にポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2以外の材料が介在しないよう留意する。
【0037】
この際、低結晶の薄いポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3を複数枚重ねても良い(
図2、
図3参照)し、低結晶の薄いポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3と高結晶の厚いポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4とを重ねて(
図4参照)も良い。また、低結晶の薄いポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3と複数枚の高結晶の厚いポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4とを交互に重ねても良い(
図5参照)。
【0038】
高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4同士を接着する場合には、例え330℃の高温で熱圧着しても、接着性に問題が生じるが、高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4を低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3に隣接させて積層すれば、剥離不能な強固な接着が期待できる。例えば、結晶化度が27%の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4同士の接着は困難であるが、結晶化度が27%の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4と結晶化度が4%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3とは、簡単、かつ確実に接着することができる。
【0039】
次いで、積層体を熱プレス機にセットして加圧加熱することにより、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を融着して分離不能な中間体を一体形成する。熱プレス機の熱プレス圧力は、1MPa以上、好ましくは1.2MPa以上、より好ましくは1.2MPa以上10MPa以下が良い。
【0040】
積層体の加圧加熱の温度範囲は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の融点未満、具体的には230℃以上融点未満、好ましくは230℃以上330℃以下、より好ましくは240℃以上330℃以下、さらに好ましくは255℃以上320℃以下が良い。温度範囲が融点未満なのは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の融点以上の温度で加圧加熱すれば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の表面を含む全体が溶解して厚さムラが生じ、高精度な厚さの積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1の製造が非常に困難になるからである。
【0041】
また、融点未満の温度範囲で加熱した場合、低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3が高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4に変質し、高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4の物性よりも高い物性が期待できる。具体的には、結晶化度が5%程度の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3を230℃以上融点未満の温度で加圧加熱すると、結晶化度が35%程度の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4に変質し、積層前の結晶化度が23%程度の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4よりも高い薬品性等が期待できる。
【0042】
積層体が低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3と高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4の場合、これらの融点が異なるので、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の融点が二点となるが、このときには、積層体を、230℃以上ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2のいずれかの融点未満の温度で加圧加熱すると良い。
【0043】
例えば、積層体が低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3と高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4の組み合わせで、これらの融点が331℃と342℃の場合、積層体を、230℃以上330℃、あるいは230℃以上341℃で加圧加熱することができる。この融点の選択により、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の溶融温度範囲を拡大し、生産性を改善することができる。
【0044】
中間体を一体形成したら、必要に応じ、中間体をトリミングしてその不要な両側部や周縁部を除去等すれば、厚さが均一の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1を所望の厚さに製造することができる。この際、中間体を直ちにトリミングするのではなく、中間体をアニール処理した後にトリミングすれば、中間体の縦横収縮の応力が緩和され、中間体が縮み、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1の反りの減少が大いに期待できる。アニール処理する場合には、中間体を150℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上の熱で均等に加熱すると良い。
【0045】
製造された積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の結晶化度は、25%以上40%以下、好ましくは28%以上35%以下、より好ましくは30%以上34%以下が最適である。また、製造された積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の表裏面の接触角は、濡れ性や接着性向上の観点からすると、それぞれ60°以下、望ましくはそれぞれ50°以下、より望ましくはそれぞれ45°以下が最適である。この接触角は、水等の液体や接触角計を用いて測定することが可能である。
【0046】
結晶化度が25%以上の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1を製造したら、この積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1に各種の加工を施したり、熱成形やインサート成形等すれば、所定の製品(例えば、半導体ウェーハ用テンプレート、カバー、溶剤用配管、収容箱、収容袋、補修シート、溶剤飛散壁、リング等)を得ることができる。この際、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1が中間体の段階でアニール処理されていれば、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1の接着性が向上しているので、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1や製品の異種材料との強固な接着が期待できる。
【0047】
積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1が中間体の段階でアニール処理されていない場合、製造された積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1を活性化処理(プラズマ処理、エキシマ光による表面処理、コロナ放電処理等)して接触角を60°以下、好ましくは50°以下、より好ましくは45°以下にした後、異種材料と接着すれば、接着強度が向上するので、異種材料との強固な接着が実現できる。具体的には、表裏面の接触角が80°の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1を活性化処理し、表面改質すれば、表裏面の接触角が60°以下となる。
【0048】
上記構成によれば、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の積層により、高精度な所望の厚さの積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1を簡易に得ることができ、しかも、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1の引張降伏強度や引張弾性率等を大幅に向上させることができる。また、所望の厚さの積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1を得る場合、厚肉のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の表裏両面を時間をかけて慎重に研削する必要がないので、研削屑の増大や無駄を省くことができる。また、慎重な研削作業を省略することができるので、製造作業の迅速化を図ることができる。
【0049】
また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の表裏両面を研削すると、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2が発熱して反ることがあるが、本実施形態によれば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2の反りを防止することができる。また、低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3が積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1の製造時に接着材として機能するので、高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4の有無に拘わらず、層間に隙間のない充分な接着性を得ることができ、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1の層間剥離の防止が大いに期待できる。
【0050】
また、射出成形等ではなく、積層体を加圧加熱して積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1を製造するので、厚さ1mm未満の高精度の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1でも容易に製造することが可能となる。具体的には、厚さ500μm以上750μm以下、500mm×500mmの積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1を厚さ±5μm以上15μm以下の高精度に製造することが可能である。また、面精度が高精度の金型を複数種用意する必要もないので、製造コストの削減が大いに期待できる。
【0051】
さらに、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート1は、低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート3と高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート4との積層からなる場合、結晶構造が複数なので、融点を二点有することとなる。したがって、加工温度範囲の拡大が期待できるので、熱溶着や各種の加工、例えば熱折り曲げ加工やラミネート加工等の加工性を向上させ、製品率を増大させることができる。
【0052】
なお、トリミング作業は、複数枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート2を直接重ねて積層体を形成する前、あるいは積層体を形成した後を特に問うものではない。
【実施例】
【0053】
以下、本発明に係る積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
【0054】
成形材料のポリエーテルエーテルケトン樹脂は、KT-851NL SP〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製:製品名〕を採用した。この点については、全ての実施例と比較例についても同様である。また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの厚さは、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC-25PJ〕を使用して測定した。活性化処理した11枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂シートに関しては、表裏両面の接触角をJIS R3257に準じて測定した。この測定については、全実施例と比較例についても同様である。
【0055】
次いで、積層体を熱プレス機にセットして加圧加熱することにより、11枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを融着して厚さ550μmの中間体を一体形成した。積層体のプレス温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの融点未満の温度、具体的には300℃に設定した。中間体を一体形成したら、この中間体のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの剥離試験(プレス時に圧力をかけずに融着しない箇所を設け、プレス後に各樹脂フィルムを手で引き剥がす試験)を実施したが、中間体の材料破壊までポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを剥離することはできなかった。
【0056】
中間体を一体形成したら、この中間体をトリミングしてその周縁部を除去し、結晶化度が33.1%の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを平面矩形に製造した。積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの結晶化度については、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートから測定試料約8mgを秤量し、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジーズ社製 製品名:EXSTAR7000シリーズ X-DSC7000〕を用いて昇温速度10℃/分、測定温度範囲20℃から380℃の条件で測定した。このときに得られる結晶融解ピークの熱量(J/g)、再結晶化ピークの熱量(J/g)から以下の式を用いて算出した。
【0057】
結晶化度(%)={1-(ΔHc/ΔHm)}×100
ここで、ΔHcは積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの10℃/分の昇温条件下での再結晶化ピークの熱量(J/g)を表し、ΔHmは積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの10℃/分の昇温条件下での結晶融解ピークの熱量(J/g)を表す。結晶化度の算出については、全ての実施例と比較例についても同様とした。
【0058】
高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造したら、この高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの結晶化度[%]、引張降伏強度[MPa]、引張弾性率[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]を求め、表3にまとめた。
【0059】
引張降伏強度は、JIS K7127‐1B(試験速度50min/mm)に準じて測定した。また、引張弾性率は、JIS K7127‐1B(試験速度1mm/mm)に準じて測定した。加熱伸縮率は、JIS K7133に準じて測定した。
【0060】
〔実施例2〕
先ず、表1に示すように、結晶化度が3.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して8枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。また、結晶化度が4.2%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを12μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して2枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。
【0061】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの厚さは、樹脂フィルムの厚さが2μm以上10μm以下の場合には、接触式の厚さ計〔Marh社製 製品名:ミリマール 1240 コンパクトアンプにミリマール インダクティブ プローブ 1301 Marh‐LVDTを取り付けた装置〕により測定した。この点については、全実施例と比較例についても同様である。
【0062】
また、結晶化度が3.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して8枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。こうして合計18枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを得たら、これらを直接重ねて積層体を形成した。
【0063】
次いで、積層体を熱プレス機にセットして加圧加熱することにより、18枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを融着して厚さ825μmの中間体を一体形成した。積層体のプレス温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの融点未満の温度、具体的には290℃に設定した。中間体を一体形成したら、この中間体のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの剥離試験を実施したが、中間体の材料破壊までポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを剥離することはできなかった。
【0064】
中間体を一体形成したら、実施例1と同様にして結晶化度が34.0%の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造し、この高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの結晶化度[%]、引張降伏強度[MPa]、引張弾性率[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]を求め、表3にまとめた。
【0065】
〔実施例3〕
先ず、表1に示すように、結晶化度が3.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して9枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。また、結晶化度が4.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを12μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して1枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。
【0066】
さらに、結晶化度が3.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して9枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。こうして合計19枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを得たら、これらを直接重ねて積層体を形成した。
【0067】
次いで、積層体を熱プレス機にセットして加圧加熱することにより、19枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを融着して厚さ910μmの中間体を一体形成した。積層体のプレス温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの融点未満の温度、具体的には310℃に設定した。中間体を一体形成したら、この中間体のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの剥離試験を実施したが、中間体の材料破壊までポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを剥離することはできなかった。
【0068】
中間体を一体形成したら、実施例1と同様にして結晶化度が31.0%の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造し、この高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの結晶化度[%]、引張降伏強度[MPa]、引張弾性率[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]を求め、表3にまとめた。
【0069】
〔実施例4〕
先ず、表1に示すように、結晶化度が4.2%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して22枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。22枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを得たら、これらを直接重ねて積層体を形成した。
【0070】
次いで、積層体を熱プレス機にセットして加圧加熱することにより、22枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを融着して厚さ1100μmの中間体を一体形成した。積層体のプレス温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの融点未満の温度、具体的には300℃に変更した。中間体を一体形成したら、この中間体のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの剥離試験を実施したが、中間体の材料破壊までポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを剥離できなかった。
【0071】
中間体を一体形成したら、実施例1と同様にして結晶化度が31.0%の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造し、この高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの結晶化度[%]、引張降伏強度[MPa]、引張弾性率[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]を求め、表3にまとめた。
【0072】
〔実施例5〕
先ず、表1に示すように、結晶化度が24.1%の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを250μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して1枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。また、結晶化度が4.2%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して1枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。
【0073】
また、結晶化度が24.1%の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを250μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して1枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。また、結晶化度が4.2%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して2枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。
【0074】
さらに、結晶化度が24.1%の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを250μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して1枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。こうして合計6枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを得たら、これらを直接重ねて積層体を形成した。
【0075】
次いで、積層体を熱プレス機にセットして加圧加熱することにより、6枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを融着して厚さ900μmの中間体を一体形成した。積層体のプレス温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの融点未満の温度、具体的には290℃に設定した。中間体を一体形成したら、この中間体のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの剥離試験を実施したが、中間体の材料破壊までポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを剥離できなかった。
【0076】
中間体を一体形成したら、実施例1と同様にして結晶化度が32.0%の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造し、この高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの結晶化度[%]、引張降伏強度[MPa]、引張弾性率[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]を求め、表3に記載した。
【0077】
〔実施例6〕
先ず、表2に示すように、結晶化度が3.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して8枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。また、結晶化度が4.2%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを12μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して2枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。
【0078】
また、結晶化度が3.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して8枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。こうして合計18枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを得たら、これらを直接重ねて積層体を形成した。
【0079】
次いで、積層体を熱プレス機にセットして加圧加熱することにより、18枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを融着して厚さ825μmの中間体を一体形成した。積層体のプレス温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの融点未満の温度、具体的には300℃に設定した。中間体を一体形成したら、この中間体のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの剥離試験を実施したが、中間体の材料破壊までポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを剥離できなかった。
【0080】
次いで、中間体をトリミングしてその周縁部を除去し、このトリミングした中間体をアニール処理して結晶化度が32.0%の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを平面矩形に製造した。アニール処理は、220℃×7時間の条件で実施した。高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造したら、この高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの結晶化度[%]、引張降伏強度[MPa]、引張弾性率[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]を求め、表3に記載した。
【0081】
〔実施例7〕
先ず、表2に示すように、結晶化度が3.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して9枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。また、結晶化度が4.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを12μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して1枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。
【0082】
また、結晶化度が3.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して9枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。こうして合計19枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを得たら、これらを直接重ねて積層体を形成した。
【0083】
次いで、積層体を熱プレス機にセットして加圧加熱することにより、19枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを融着して厚さ910μmの中間体を一体形成した。積層体のプレス温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの融点未満の温度、具体的には310℃に設定した。中間体を一体形成したら、この中間体のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの剥離試験を実施したが、中間体の材料破壊までポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを剥離することができなかった。
【0084】
次いで、中間体をトリミングしてその周縁部を除去し、このトリミングした中間体をアニール処理して結晶化度が31.0%の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを平面矩形に製造した。アニール処理は、220℃×8時間の条件で実施した。高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造したら、この高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの結晶化度[%]、引張降伏強度[MPa]、引張弾性率[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]を求め、表3に記載した。
【0085】
〔実施例8〕
先ず、表2に示すように、結晶化度が3.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して8枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。また、結晶化度が4.2%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを12μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して2枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。
【0086】
さらに、結晶化度が3.6%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して8枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。こうして合計18枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを得たら、これらを直接重ねて積層体を形成した。
【0087】
次いで、積層体を熱プレス機にセットして加圧加熱することにより、18枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを融着して厚さ825μmの中間体を一体形成した。積層体のプレス温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの融点未満の温度、具体的には280℃に設定した。中間体を一体形成したら、この中間体のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの剥離試験を実施したが、中間体の材料破壊までポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを剥離することができなかった。
【0088】
次いで、中間体をトリミングしてその周縁部を除去し、このトリミングした中間体をアニール処理して結晶化度が30.6%の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを平面矩形に製造した。アニール処理は、160℃×15時間の条件で実施した。高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造したら、この高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの結晶化度[%]、引張降伏強度[MPa]、引張弾性率[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]を求め、表3にまとめた。
【0089】
〔実施例9〕
先ず、表2に示すように、結晶化度が4.2%の低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを50μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して11枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。11枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを得たら、これらを直接重ねて積層体を形成した。
【0090】
次いで、積層体を熱プレス機にセットして加圧加熱することにより、11枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを融着して厚さ550μmの中間体を一体形成した。積層体のプレス温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの融点未満の温度、具体的には300℃に変更した。中間体を一体形成したら、この中間体のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの剥離試験を実施したが、中間体の材料破壊までポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを剥離できなかった。
【0091】
中間体を一体形成したら、実施例1と同様にして結晶化度が33.1%の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造し、この積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの結晶化度[%]、引張降伏強度[MPa]、引張弾性率[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]を求め、表3にまとめた。活性化処理した積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートに関しては、表裏両面の接触角をJIS R3257に準じて測定したところ、60°以下の45°であった。
【0092】
〔比較例〕
先ず、表2に示すように、結晶化度が22.8%の高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを溶融押出成形してその厚さを200μmとし、このポリエーテルエーテルケトン樹脂シートをプラズマ処理して活性化し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを裁断して4枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを形成した。こうして4枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを得たら、これらを直接重ねて積層体を形成した。
【0093】
次いで、積層体を熱プレス機にセットして加圧加熱することにより、4枚のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを融着して中間体を一体形成した。積層体のプレス温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの融点未満の温度、具体的には300℃に設定した。中間体を一体形成したら、この中間体のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの剥離試験を実施したが、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは容易に剥離してしまった。
【0094】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが剥離してしまったので、実施例のような高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートを製造することができず、結晶化度[%]、引張降伏強度[MPa]、引張弾性率[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率[%]の測定は断念した。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
〔評 価〕
各実施例の場合、積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの層間に隙間がなく、しかも、良好な引張降伏強度と引張弾性率を得ることができた。この効果を一般的なポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムとの対比で説明すると、結晶化度が4.6%で厚さ50μmの一般的な低結晶ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの場合、上記測定法で求めた引張降伏強度は68.9[MPa]、引張弾性率は2980[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率は-0.3[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率は-2.4[%]である。
【0099】
また、結晶化度が24.0%で厚さ75μmの一般的な高結晶ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの場合、上記測定法で求めた引張降伏強度は85.2[MPa]、引張弾性率は3424[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率は-0.2[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率は-0.7[%]である。さらに、結晶化度が24.0%で厚さ250μmの一般的な高結晶ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの場合、上記測定法で求めた引張降伏強度は89.5[MPa]、引張弾性率は3633[MPa]、140℃×30min条件下での加熱伸縮率は0[%]、160℃×30min条件下での加熱伸縮率は-0.6[%]である。
【0100】
これらの数値と実施例の数値とを比較すると、各実施例の高結晶の積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートにおける引張降伏強度と引張弾性率は、いずれも優れた値であるのが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シートの製造方法は、医療、家庭用品、機械、食品、航空、電気、電子、建築、土木、化学、半導体の製造分野等で使用される。
【符号の説明】
【0102】
1 積層ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート
2 ポリエーテルエーテルケトン樹脂シート
3 低結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート
4 高結晶のポリエーテルエーテルケトン樹脂シート