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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/02 20120101AFI20221221BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20221221BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221221BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20221221BHJP
   B60Q 1/52 20060101ALI20221221BHJP
   B60Q 5/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B60W50/02
B60W40/08
G08G1/16 C
F21V23/00 115
B60Q1/52
B60Q5/00 620Z
B60Q5/00 610Z
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 640Z
B60Q5/00 660Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019067652
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020164076
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 完太
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 忠司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大智
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-037218(JP,A)
【文献】国際公開第2012/056550(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/16
F21V 23/00
B60Q 1/52
B60Q 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御システムであって、
車両の操舵、加速、及び減速を行う制御装置と、
前記制御装置からの信号に基づいて、走行レンジ、ニュートラルレンジ、及び駐車レンジの変速レンジを含むレンジ位置に変位可能な自動変速機と、
前記車両に制動力を付与するブレーキ装置と、
ブレーキランプとを有し、
前記ブレーキ装置は、油圧回路と、前記油圧回路に設けられた配管内の油圧に応じて前記車両の車輪に前記制動力を付与する制動力付与装置と、前記油圧の昇降を行い、前記制動力を変更する加減圧装置と、前記車両の車輪を保持して前記車両を静止するパーキングブレーキ装置とを有し、
前記制御装置は、前記車両の走行中に前記制御装置又は運転者による前記車両の走行の継続が困難である所定の条件が満たされたときに、前記車両を停止させた後、前記車両を停止した状態に維持する停車維持処理を実行し、
前記制御装置は、前記油圧が所定の閾値以上のときに前記ブレーキランプを点灯させ、前記閾値未満のときに前記ブレーキランプを消灯させ、前記停車維持処理において、前記自動変速機の前記レンジ位置を前記駐車レンジに変位させ、前記パーキングブレーキ装置を作動させた後に、前記加減圧装置を制御して、前記油圧を前記閾値以上の油圧である第1油圧値に加圧する加圧処理と、前記油圧を前記閾値未満の油圧である第2油圧値に減圧する減圧処理とを繰り返し実行することを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記第1油圧値は前記閾値と等しいことを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記運転者からの運転操作が入力される運転操作装置を有し、
前記制御装置は、前記加圧処理を開始した後、前記運転操作装置に所定の入力があるまで、前記加圧処理と前記減圧処理とを繰り返し実行することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転を行う車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行中において、シフトバイワイヤ方式のシフトレバーが駐車ポジションに変更されたときに、変速レンジを駐車レンジとすると共に、油圧ブレーキ機構を作動させる車両制御システムが公知である(たとえば、特許文献1)。特許文献1の車両制御システムでは、他の乗員が操作し易いシフトレバーを用いて油圧ブレーキを作動させることができる。これにより、運転者が意識不明に陥ったときなどの緊急時に、乗員がシフトレバーのポジションを変更することによって、車両をより迅速に停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-138449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転者の運転への介入不能による車両停止後、乗員はパーキングブレーキを作動させて、車両の停止状態を維持することが考えられる。しかし、パーキングブレーキを作動させて車両の停止状態を維持すると、ブレーキランプが点灯せず、車両が停止状態にあることが車外に理解され難いという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、自動運転を行う車両制御システムにおいて、停車維持処理が開始されたときにブレーキランプを点灯させることによって車両が停止状態にあることを車外に報知することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
車両制御システム(1、101、201)であって、車両の操舵、加速、及び減速を行う制御装置(15)と、前記車両に制動力を付与するブレーキ装置(4)と、ブレーキランプ(14a)とを有し、前記制御装置は、前記車両の走行中に前記制御装置又は運転者による前記車両の走行の継続が困難である所定の条件が満たされたときに、前記車両を停止させた後、前記車両を停止した状態に維持する停車維持処理を実行し、前記制御装置は、前記停車維持処理において、前記ブレーキランプを点灯させる。
【0007】
この構成によれば、車両が停止した状態にあるときにブレーキランプが点灯する。これにより、車両が停止した状態にあることを車外に報知することができる。
【0008】
上記の態様において、前記ブレーキ装置は、油圧回路(99)、前記油圧回路に設けられた配管内の油圧に応じて前記車両の車輪に前記制動力を付与する制動力付与装置(84)、及び前記油圧の昇降を行い、前記制動力を変更する加減圧装置(83)を有し、前記制御装置は、前記油圧が所定の閾値以上のときに前記ブレーキランプを点灯させ、前記閾値未満のときに前記ブレーキランプを消灯させ、更に、前記停車維持処理において、前記加減圧装置を制御して、前記油圧を前記閾値以上とする加圧処理(ST13)を実行するよい。
【0009】
この構成によれば、車両が停止した状態にあるときに、油圧制御装置によって油圧回路の油圧が閾値以上となるように加圧されて、ブレーキランプが点灯する。これにより、車両に制動力を付与した状態でブレーキランプを点灯させることができる。
【0010】
上記の態様において、前記制御装置は、前記加圧処理(ST13)において、前記油圧を前記閾値に設定するとよい。
【0011】
この構成によれば、ブレーキランプの点灯に要する以上に加圧が行われないため、ブレーキランプの点灯に要する消費電力が低減される。よって、車両が停止した後、より長くブレーキランプ14a点灯させることができる。これにより、車両が停止状態にあることを車外に報知することができる。
【0012】
上記の態様において、前記運転者からの運転操作が入力される運転操作装置(10)を有し、前記制御装置は、前記加圧処理(ST13)を開始した後、前記運転操作装置に所定の入力があるまで、前記油圧を前記閾値以上に維持するとよい。
【0013】
この構成によれば、車両を停止した状態にあるときに、ブレーキランプが点灯した状態で維持される。これにより、車両が停止した後に車両の存在を継続して車外に報知することができる。更に、油圧を閾値に設定することによって、より少ないエネルギーでブレーキランプを点灯させることができる。よって、ブレーキランプ点灯時の消費電力を抑えることができる。
【0014】
上記の態様において、前記制御装置は、前記停車維持処理において、前記加圧処理(ST13)と、前記油圧を前記閾値未満とする減圧処理(ST21)とを繰り返し実行するとよい。
【0015】
この構成によれば、ブレーキランプの点滅状態が維持される。これにより、ブレーキランプの点灯状態が維持される場合に比べて、周辺車両や歩行者等に車両の異常が理解され易くなり、車両の安全性がより高められる。
【0016】
上記の態様において、前記制御装置からの信号に基づいて、走行レンジ、ニュートラルレンジ、及び駐車レンジの変速レンジを含むレンジ位置に変位可能な自動変速機(71)を更に有し、前記制御装置は、前記停車維持処理において、前記自動変速機の前記レンジ位置を前記駐車レンジに変位(ST11)させた後に、前記ブレーキランプを点灯させるとよい。
【0017】
この構成によれば、自動変速機の変速レンジが駐車レンジに設定されて、車両を停止することができる。
【0018】
上記の態様において、前記制御装置からの信号に基づいて、走行レンジ、ニュートラルレンジ、及び駐車レンジの変速レンジを含むレンジ位置に変位可能な自動変速機(71)を更に有し、前記ブレーキ装置はパーキングブレーキ装置(85)を有し、前記制御装置は、前記停車維持処理において、前記自動変速機の前記レンジ位置を前記駐車レンジに変位させ(ST11)、前記パーキングブレーキ装置を作動(ST12)させた後に、前記ブレーキランプを点灯させるとよい。
【0019】
この構成によれば、自動変速機の変速レンジが駐車レンジに設定され、更に、パーキングブレーキが作動した状態で、車両が停止される。これにより、車両により強い制動力を付与することができ、車両をより確実に停止させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の構成によれば、自動運転を行う車両制御システムにおいて、停車維持処理が開始されたときにブレーキランプを点灯させることによって車両が停止状態にあることを車外に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】車両制御システムが搭載される車両の機能構成図
図2】停車処理のフローチャート
図3】ブレーキ装置の機能構成図
図4】本発明に係る車両制御システムにおけるブレーキ装置の制御方法を示す油圧回路図
図5】第1実施形態に係る車両制御システムにおける停車維持処理のフローチャート
図6】第2実施形態に係る車両制御システムにおける停車維持処理のフローチャート
図7】第3実施形態に係る車両制御システムにおける停車維持処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両制御システムの実施形態について説明する。以下では、本発明に係る車両制御システムを、左側走行を採用する国又は地域において走行している車両を制御するシステムに適用した例について説明を行う。
【0023】
<<第1実施形態>>
図1に示すように、車両制御システム1は、車両に搭載された車両システム2に含まれている。車両システム2は、推進装置3、ブレーキ装置4、ステアリング装置5、外界認識装置6、車両センサ7、通信装置8、ナビゲーション装置9(地図装置)、運転操作装置10、乗員監視装置11、HMI12(Human Machine Interface)、自動運転レベル切替スイッチ13、車外報知装置14、及び制御装置15を有している。車両システム2の各構成は、CAN16(Controller Area Network)等の通信手段によって信号伝達可能に互いに接続されている。
【0024】
推進装置3は車両に駆動力を付与する装置であり、例えば動力源及び変速機を含む。動力源はガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関及び電動機の少なくとも一方を有する。ブレーキ装置4は車両に制動力を付与する装置であり、例えばブレーキロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに油圧を供給する電動シリンダとを含む。ブレーキ装置4はワイヤケーブルによって車輪の回転を規制するパーキングブレーキ装置を含んでもよい。ステアリング装置5は車輪の舵角を変えるための装置であり、例えば車輪を転舵するラックアンドピニオン機構と、ラックアンドピニオン機構を駆動する電動モータとを有する。推進装置3、ブレーキ装置4、及びステアリング装置5は、制御装置15によって制御される。
【0025】
外界認識装置6は車外の物体等を検出する装置である。外界認識装置6は、車両の周辺からの電磁波や光を捉えて車外の物体等を検出するセンサ、例えば、レーダ17、ライダ18(LIDAR)、及び車外カメラ19を含む。外界認識装置6は、その他、車外からの信号を受信して、車外の物体等を検出する装置であってもよい。外界認識装置6は検出結果を制御装置15に出力する。
【0026】
レーダ17はミリ波等の電波を車両の周囲に発射し、その反射波を捉えることにより、物体の位置(距離及び方向)を検出する。レーダ17は車両の任意の箇所に少なくとも1つ取り付けられている。レーダ17は、少なくとも車両の前方に向けて電波を照射する前方レーダ、車両の後方に向けて電波を照射する後方レーダ、車両の側方に向けて電波を照射する左右一対の側方レーダを含むことが好ましい。
【0027】
ライダ18は赤外線等の光を車両の周囲に照射し、その反射光を捉えることにより、物体の位置(距離及び方向)を検出する。ライダ18は車両の任意の箇所に少なくとも1つ設けられている。
【0028】
車外カメラ19は車両の周囲に存在する物体(例えば、周辺車両や歩行者)や、ガードレール、縁石、壁、中央分離帯、道路の形状や道路に描かれた道路標示等を含む車両の周囲を撮像する。車外カメラ19は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラであってよい。車外カメラ19は、車両の任意の箇所に少なくとも1つ設けられる。車外カメラ19は少なくとも車両の前方を撮像する前方カメラを含み、更に車両の後方を撮像する後方カメラ及び車両の左右側方を撮像する一対の側方カメラを含んでいるとよい。車外カメラ19は、例えばステレオカメラであってもよい。
【0029】
車両センサ7は、車両の速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両の向きを検出する方位センサ等を含む。ヨーレートセンサは、例えばジャイロセンサである。
【0030】
通信装置8は制御装置15及びナビゲーション装置9と車外に位置する周辺車両やサーバとの間の通信を媒介する。制御装置15は通信装置8を介して周辺車両との間で無線通信を行うことができる。また、制御装置15は通信装置8を介して、交通規制情報の提供を行うサーバと通信を行うことができる。更に、制御装置15は通信装置8を介して車両の外部に存在する人が所持する携帯端末との通信することができる。また、制御装置15は通信装置8を介して車両からの緊急通報を受け付ける緊急通報センタとの通信することができる。
【0031】
ナビゲーション装置9は車両の現在位置を取得し、目的地への経路案内等を行う装置であり、GNSS受信部21、地図記憶部22、ナビインタフェース23、経路決定部24を有する。GNSS受信部21は人工衛星(測位衛星)から受信した信号に基づいて車両の位置(緯度や経度)を特定する。地図記憶部22は、フラッシュメモリやハードディスク等の公知の記憶装置によって構成され、地図情報を記憶している。ナビインタフェース23は乗員からの目的地などの入力を受け付けると共に、乗員に表示や音声によって各種情報を提示する。ナビインタフェース23は例えばタッチパネルディスプレイや、スピーカ等を含むとよい。他の実施形態では、GNSS受信部21は通信装置8の一部として構成されていてもよい。また、地図記憶部22は制御装置15の一部として構成されてもよく、通信装置8を介して通信可能なサーバ装置の一部として構成されてもよい。
【0032】
地図情報は、高速道路、有料道路、国道、都道府県道といった道路の種別、道路の車線数、各車線の中央位置(経度、緯度、高さを含む3次元座標)、道路区画線や車線の境界等の道路標示の形状、歩道や縁石、さく等の有無、交差点の位置、車線の合流及び分岐ポイントの位置、非常駐車帯の領域、各車線の幅員、道路に設けられた標識等の道路情報を含む。また、地図情報は、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報等を含んでもよい。
【0033】
経路決定部24は、GNSS受信部21により特定された車両の位置と、ナビインタフェース23から入力された目的地と、地図情報とに基づいて目的地までの経路を決定する。また、経路決定部24は、経路を決定するときに、地図情報の車線の合流及び分岐ポイントの位置を参照して、車両が走行すべき車線である目標車線も含めて決定するとよい。
【0034】
運転操作装置10は、運転者が車両を制御するために行う入力操作を受け付ける。運転操作装置10は、例えば、ステアリングホイール、アクセルペダル、及びブレーキペダルを含む。また、運転操作装置10は、シフトレバーやパーキングブレーキレバー等を含んでもよい。各運転操作装置10には、操作量を検出するセンサが取り付けられている。運転操作装置10は操作量を示す信号を制御装置15に出力する。
【0035】
乗員監視装置11は車室内の乗員の状態を監視する。乗員監視装置11は例えば、車室内のシートに着座する乗員を撮像する室内カメラ26、及びステアリングホイールに設けられた把持センサ27を有する。室内カメラ26は例えばCCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。把持センサ27は運転者がステアリングホイールを把持しているか否かを検出し、把持の有無を検出信号として出力するセンサである。把持センサ27は例えば、ステアリングホイールに設けられた静電容量センサや圧電素子によって形成されているとよい。乗員監視装置11はステアリングホイール又はシートに設けられた心拍センサやシートに設けられた着座センサを含んでもよい。乗員監視装置11はその他、乗員に着用され、着用した乗員の心拍数及び血圧の少なくとも一方を含むバイタル情報を検出可能なウェアラブルデバイスであってもよい。このとき、乗員監視装置11は公知の無線による通信手段によって、制御装置15と通信可能に構成されているとよい。乗員監視装置11は撮像された画像及び検出信号を制御装置15に出力する。
【0036】
車外報知装置14は車外に音や光によって報知する装置であり、例えば、警告灯やホーンを含む。前照灯(フロントライト)や尾灯(テールライト)、ブレーキランプ、ハザードランプ、車内灯が警告灯として機能してもよい。
【0037】
HMI12は、乗員に対して表示や音声によって各種情報を報知すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI12は、例えば、液晶や有機ELを含むタッチパネルや表示灯等の表示装置31、ブザーやスピーカ等の音発生装置32、及びタッチパネル上のGUIスイッチや機械スイッチ等の入力インタフェース33の少なくとも1つを含む。ナビインタフェース23がHMI12として機能するように構成されていてもよい。
【0038】
自動運転レベル切替スイッチ13は、自動運転の実行開始の指示を乗員から受け付けるスイッチである。自動運転レベル切替スイッチ13は機械スイッチやタッチパネル上に表示されるGUIスイッチであってよく、車室内の適所に配置される。自動運転レベル切替スイッチ13は、HMI12の入力インタフェース33によって構成されてもよく、ナビインタフェース23によって構成されていてもよい。
【0039】
制御装置15は、CPU、ROM、及びRAM等から構成される電子制御装置(ECU)である。制御装置15はCPUでプログラムに沿った演算処理を実行することで、各種の車両制御を実行する。制御装置15は1つのハードウェアとして構成されていてもよく、複数のハードウェアからなるユニットとして構成されていてもよい。また、制御装置15の各機能部の少なくとも一部は、LSIやASIC、FPGA等のハードウェアによって実現されてもよく、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0040】
制御装置15は各種の車両制御を組み合わせて、少なくともレベル0~レベル3の自動運転制御(以下、自動運転)を行う。レベルはSAE J3016の定義に基づくものであって、運転者の運転操作及び車両周辺監視への介入の度合いに関連して定められている。
【0041】
レベル0の自動運転では制御装置15は車両の制御を行わず、運転者が全ての運転操作を行う。すなわち、レベル0の自動運転はいわゆる手動運転を意味する。
【0042】
レベル1の自動運転では制御装置15は一部の運転操作を行い、運転者が残りの運転操作を行う。例えば、レベル1の自動運転には定速走行及び車間距離制御(ACC;Adaptive Cruise Control)や車線維持支援制御(LKAS;Lane Keeping Assistance System)が含まれる。レベル1の自動運転は、レベル1の自動運転の実行に要する各種装置(例えば、外界認識装置6や車両センサ7)に異常がないという条件を満たすときに実行される。
【0043】
レベル2の自動運転では制御装置15が全ての運転操作を行う。レベル2の自動運転は、運転者が車両周辺監視を行い、車両が予め定められた領域内にあり、且つ、レベル2の自動運転の実行に要する各種装置に異常がないという条件を満たすときに実行される。
【0044】
レベル3の自動運転では制御装置15が全ての運転操作を行う。レベル3の自動運転は、運転者が必要に応じて車両周辺監視を行うことのできる姿勢であり、車両が予め定められた領域内にあり、且つ、レベル3の自動運転の実行に要する各種装置に異常がないという条件を満たすときに実行される。レベル3の自動運転が実行される条件には、例えば、車両が渋滞中の道路を走行しているときが含まれている。車両が渋滞中の道路上を走行しているか否かは車外のサーバから提供される交通規制情報に基づいて判定されてもよく、また、車速センサによって取得される車速が所定の時間に渡って、所定の徐行判定値(例えば、30km/h)以下であることに基づいて判定されてもよい。
【0045】
このように、レベル1~レベル3の自動運転では、制御装置15が操舵、加速、減速、及び周辺監視の少なくとも1つを実行する。制御装置15は自動運転モードにあるときに、レベル1~レベル3の自動運転を実行する。以下では、必要に応じて、操舵、加速及び減速を運転操作と記載し、運転操作及び周辺監視を運転と記載する。
【0046】
本実施形態では、自動運転レベル切替スイッチ13において、制御装置15は自動運転の実行指示を受け付けると、外界認識装置6の検出結果、及びナビゲーション装置9によって取得された車両の位置に基づいて、車両の走行する環境に応じたレベルの自動運転を選択し、レベルの変更を行う。但し、制御装置15は、自動運転レベル切替スイッチ13への入力に応じて、レベルの変更を行ってもよい。
【0047】
図1に示すように、制御装置15は自動運転制御部35、異常状態判定部36、状態管理部37、走行制御部38、及び記憶部39を有する。
【0048】
自動運転制御部35は、外界認識部40、自車位置認識部41、及び行動計画部42を含む。外界認識部40は、外界認識装置6の検出結果に基づいて、車両の周辺に位置する障害物や、道路の形状、歩道の有無、道路標示を認識する。障害物は、例えば、ガードレールや電柱、周辺車両、歩行者等の人物を含む。外界認識部40は外界認識装置6の検出結果から、周辺車両の位置、速度及び加速度等の状態を取得することができる。周辺車両の位置は、周辺車両の重心位置やコーナー位置等の代表点、又は周辺車両の輪郭で表現された領域として認識されるとよい。
【0049】
自車位置認識部41は、車両が走行している車線である走行車線、及び走行車線に対する車両の相対位置及び角度を認識する。自車位置認識部41は、例えば、地図記憶部22が保持する地図情報とGNSS受信部21が取得する車両の位置とに基づいて、走行車線を認識するとよい。また、路面に描かれた車両の周辺の区画線を地図情報から抽出し、車外カメラ19によって撮像された区画線の形状と比較して、走行車線に対する車両の相対位置、及び角度を認識するとよい。
【0050】
行動計画部42は、経路に沿って車両を走行させるための行動計画を順次作成する。より具体的には、行動計画部42はまず車両が障害物と接触することなく、経路決定部24により決定された目標車線を走行するためのイベントを決定する。イベントには定速度で同じ走行車線を走行する定速走行イベント、乗員によって設定された設定速度又は車両の走行する環境に基づいて定められる速度以下の速度で、同じ走行車線を走行する前走車両に追従する追従イベント、車両の走行車線を変更する車線変更イベント、前走車両を追い越す追い越しイベント、道路の合流地点で車両を合流させる合流イベント、道路の分岐地点で車両を目的の方向に走行させる分岐イベント、自動運転を終了して手動運転にする自動運転終了イベント、及び、車両の走行中に制御装置15又は運転者による運転の継続が困難であることを示す所定の条件が満たされたときに車両を停止する停車イベントが含まれる。
【0051】
行動計画部42が停車イベントを決定する条件には、自動運転での走行中に、運転者に対する運転への介入要求(ハンドオーバ要求)に応じた運転者からの室内カメラ26、把持センサ27、又は自動運転レベル切替スイッチ13への入力が検出されない場合が含まれる。介入要求とは、運転者に運転権限の一部が委譲されることを通知して、委譲される運転権限に対応する運転操作及び車両周辺監視の少なくとも一方の実行を運転者に要求する警告である。行動計画部42が停車イベントを決定する条件には、車両の走行中に、運転者が担うべき運転権限に対応する運転操作及び車両周辺監視を実行していないと行動計画部42が判定した場合が含まれているとよい。また、行動計画部42が停車イベントを決定する条件には、車両の走行中に、行動計画部42が、例えば心拍センサや室内カメラ26からの信号に基づいて、運転者が心拍停止状態などの運転操作を実行することができない異常にあると判定した場合が含まれているとよい。
【0052】
行動計画部42は、これらのイベントの実行中に、車両の周辺状況(周辺車両や歩行者の存在、道路工事による車線狭窄等)に基づいて、障害物等を回避するための回避イベントを決定してもよい。
【0053】
行動計画部42は、更に決定したイベントに基づいて、車両が将来走行すべき目標軌道を生成する。目標軌道は、車両が各時刻において到達すべき地点である軌道点を順に並べたものである。行動計画部42は、イベントごとに設定された目標速度、及び目標加速度に基づいて目標軌道を生成するとよい。このとき、目標速度及び目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0054】
走行制御部38は、行動計画部42によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに車両が通過するように、推進装置3、ブレーキ装置4、及びステアリング装置5を制御する。
【0055】
記憶部39はROMやRAM等によって構成され、自動運転制御部35、異常状態判定部36、状態管理部37、及び走行制御部38の処理に要する情報が記憶される。
【0056】
異常状態判定部36は、車両状態判定部51と、乗員状態判定部52とを含む。車両状態判定部51は、実行中のレベルの自動運転に影響を与える各種装置(例えば、外界認識装置6や車両センサ7)の信号を解析し、各種装置に実行中の自動運転の維持に困難な異常が発生したか否かを判定する。
【0057】
乗員状態判定部52は、乗員監視装置11からの信号に基づいて、運転者の状態が異常状態にあるか否かを判定する。異常状態とは、レベル1以下の運転者が操舵を行う義務がある自動運転においては、運転者が操舵を行うことが困難である状態を含む。運転者が操舵を行うことが困難な状態とは、具体的には運転者が寝ている状態、運転者が病気や怪我により動けない状態又は意識不明な状態、運転者が心停止している状態等を含む。乗員状態判定部52は、レベル1以下の運転者が操舵を行う義務がある自動運転において、把持センサ27への乗員からの入力がないときに、運転者の状態が異常状態にあると判定してもよい。また、乗員状態判定部52は抽出された顔画像から運転者のまぶたの開閉状態を判定する。乗員状態判定部52は運転者のまぶたが閉じられた状態が所定時間継続している場合や単位時間当たりのまぶたが閉じられる回数が所定の閾値以上である場合には、運転者が寝ている、強い眠気を感じている、意識不明である、又は心停止状態にあるとして、運転者が運転操作を行うことが困難な状態であり、運転者の状態が異常状態であると判定してもよい。乗員状態判定部52は更に撮像された画像から運転者の姿勢を取得し、運転者の姿勢が運転操作に適さず、且つ、姿勢が変化しない状態が所定時間に渡って維持されているときには運転者が病気や怪我により動けない状態であり、運転者の状態が異常状態であると判定してもよい。
【0058】
また、周辺監視義務があるレベルの自動運転、すなわち、レベル2以下の自動運転においては、異常状態とは、運転者が車両周辺監視の義務を怠っている状態を含む。運転者が車両周辺監視の義務を怠っている状態とは、運転者がステアリングホイールを把持していない状態、又は運転者の視線が車両の前方を向いていない状態のいずれか1つを含む。乗員状態判定部52は、例えば、把持センサ27からの信号に基づいて、運転者がステアリングホイールを把持しているか否かを検出し、運転者がステアリングホイールを把持していない場合に運転者が車両周辺監視の義務を怠っている異常状態であると判定する。また、乗員状態判定部52は、室内カメラ26によって撮像された画像に基づいて、運転者の状態が異常状態にあるか否かを判定する。例えば、乗員状態判定部52は撮像された画像から公知の画像解析手段を用いて運転者の顔領域を抽出する。乗員状態判定部52は更に、抽出された顔領域から目頭、目尻、及び瞳孔を含む虹彩部分(以下、黒目)を抽出する。乗員状態判定部52は抽出された目頭、目尻、及び黒目の位置や、黒目の輪郭形状等に基づいて、運転者の視線方向を取得し、運転者の視線が車両の前方を向いていないときに運転者が車両周辺監視の義務を怠っている状態にあると判定する。
【0059】
また、周辺監視義務がないレベルの自動運転、すなわち、レベル3の自動運転においては、異常状態とは、運転者に対して、運転交代要求が発生した際に、速やかに運転交代ができない状態を意味する。運転交代ができない状態とはシステム監視ができない状態を含み、システム監視ができない状況とは、運転者が警報表示を行う画面表示等を監視することができない状況であり、運転者が寝ている状況、及び後方を見ているという状況を含む。本実施形態では、レベル3の自動運転においては、異常状態には、運転者が車両周辺監視を行うように報知された場合に、車両周辺監視の義務を果たすことができない状態が含まれる。本実施形態では、乗員状態判定部52はHMI12の表示装置31に所定の画面を表示させ、運転者に表示装置31を見るように指示を行う。その後、乗員状態判定部52は室内カメラ26によって運転者の視線を検知し、運転者の視線がHMI12の表示装置31に向かっていないと判定したときに、車両周辺監視の義務を果たすことができない状態にあると判定する。
【0060】
乗員状態判定部52は、例えば、把持センサ27からの信号に基づいて、運転者がステアリングホイールを把持しているか否かを検出し、運転者がステアリングホイールを把持していない場合に運転者が車両周辺監視の義務を怠っている異常状態であると判定する。また、乗員状態判定部52は、室内カメラ26によって撮像された画像に基づいて、運転者の状態が異常状態にあるか否かを判定する。例えば、乗員状態判定部52は撮像された画像から公知の画像解析手段を用いて運転者の顔領域を抽出する。乗員状態判定部52は更に、抽出された顔領域から目頭、目尻、及び瞳孔を含む虹彩部分(以下、黒目)を抽出する。乗員状態判定部52は抽出された目頭、目尻、及び黒目の位置や、黒目の輪郭形状等に基づいて、運転者の視線方向を取得し、運転者の視線が車両の前方を向いていないときに運転者が車両周辺監視の義務を怠っている状態にあると判定する。
【0061】
状態管理部37は自車位置、自動運転レベル切替スイッチ13の操作、及び異常状態判定部36の判定結果の少なくとも1つに基づいて、自動運転のレベルを決定する。更に、状態管理部37は決定したレベルに基づいて行動計画部42を制御することによって、各レベルに応じた自動運転を行う。例えば、状態管理部37はレベル1の自動運転であって定速走行制御を実行するときには、行動計画部42において決定されるイベントを定速走行イベントのみに制限する。
【0062】
状態管理部37は設定されたレベルに応じた自動運転の実行に加えて、レベルの上昇及び下降を行う。
【0063】
より具体的には、状態管理部37は移行後のレベルの自動運転を行う条件が満たされ、且つ、自動運転レベル切替スイッチ13に自動運転のレベルの上昇を指示する入力が行われたときに、レベルを上昇させる。
【0064】
実行中のレベルの自動運転を行う条件が満たされないとき、又は自動運転レベル切替スイッチ13にレベルの下降を指示する入力が行われたときに、状態管理部37は介入要求処理を行う。介入要求処理において、状態管理部37は最初にハンドオーバ要求を運転者に通知する。運転者への通知は表示装置31へのメッセージや画像の表示や、音発生装置32からの音声や警告音の発生によって行われるとよい。運転者への通知は介入要求処理が開始された後、所定時間に渡って継続するように構成してもよい。また、運転者への通知は入力が乗員監視装置11によって検出されるまで継続されるように構成してもよい。
【0065】
実行中のレベルの自動運転を行う条件が満たされないときには、車両が現在実行中のレベルよりも低いレベルの自動運転のみが実行可能な領域に移動したときや、異常状態判定部36が運転者又は車両に自動運転を継続するために困難な異常が発生したと判定したときが含まれる。
【0066】
運転者への通知の後、状態管理部37は室内カメラ26又は把持センサ27に運転者から運転への介入を示す入力があったかを検出する。入力の有無の検出方法は移行後のレベルに依存して定められる。レベル2に移行するときには、状態管理部37は室内カメラ26によって取得された画像から運転者の視線方向を抽出し、運転者の視線が車両の前方を向いている場合に、運転者から運転への介入を示す入力があったと判定する。レベル1又はレベル0に移行するときには、状態管理部37は把持センサ27によって運転者のステアリングホイールの把持を検出したときに運転への介入を示す入力があったと判定する。すなわち、室内カメラ26及び把持センサ27は運転者からの運転への介入を検知する介入検知装置として機能する。また、状態管理部37は自動運転レベル切替スイッチ13への入力に基づいて、運転への介入を示す入力があったかを検出してもよい。
【0067】
状態管理部37は介入要求処理の開始から所定の時間内に、運転への介入を示す入力が検出された場合に、レベルを下降させる。このとき、下降後の自動運転のレベルはレベル0であってもよく、実行可能な範囲で最も高いレベルであってもよい。
【0068】
状態管理部37は、介入要求処理の実行から所定の時間内に運転者の運転への介入に応じた入力が検出されなかった場合に、行動計画部42に停車イベントを生成させる。停車イベントは、車両制御を縮退させつつ、車両を安全な位置(例えば、非常駐車帯、路側帯、路肩、パーキングエリア等)に停車させるイベントである。ここでは、この停車イベントにおいて実行される一連の手順をMRM(Minimal Risk Maneuver)という。
【0069】
停車イベントが生成されると、制御装置15は自動運転モードから自動停車モードに移行し、行動計画部42が停車処理を実行する。以下、図2を参照して、停車処理の概要を説明する。
【0070】
停車処理では最初に報知処理が実行される(ST1)。報知処理では、行動計画部42は車外報知装置14を作動させて車外への報知を行なう。例えば、行動計画部42は車外報知装置14に含まれるホーンを作動させ、周期的に警告音を発生させる。報知処理は停車処理が終了するまで継続する。行動計画部42は報知処理が終了した後、状況に応じてホーンを作動させ、警告音を発生させ続けてもよい。
【0071】
次に、縮退処理が実行される(ST2)。縮退処理は、行動計画部42が生成可能なイベントを制限する処理である。縮退処理は、例えば、追い越し車線への車線変更イベントや、追い越しイベント、合流イベント等の生成を禁止する。また、縮退処理は、各種イベントにおいて、停車処理を実行していない場合に比べて車両の上限速度及び上限加速度を制限してもよい。
【0072】
次に、停車領域決定処理が実行される(ST3)。停車領域決定処理は、自車位置に基づいて地図情報を参照し、自車の走行方向における路肩や退避スペース等の停車に適した領域である停車領域を複数抽出する。そして、停車領域の大きさや停車領域と自車位置との距離等に基づいて、複数の停車領域から1つの停車領域を選択する。
【0073】
次に、移動処理が実行される(ST4)。移動処理では、停車領域に到達するための経路を決定し、経路を走行するための各種イベントを生成すると共に、目標軌道を決定する。走行制御部38は行動計画部42によって決定された目標軌道に基づいて推進装置3、ブレーキ装置4、及びステアリング装置5を制御する。これにより、車両は経路に沿って走行して停車領域に達する。
【0074】
次に、停車位置決定処理が実行される(ST5)。停車位置決定処理では外界認識部40によって認識された車両の周辺に位置する障害物や、道路標示等に基づいて、停車位置を決定する。なお、停車位置決定処理では周辺車両や障害物の存在によって、停車領域内に停車位置を決定できない場合がある。停車位置決定処理において停車位置を決定することができない場合(ST6の判定がNo)には、停車領域決定処理(ST3)、移動処理(ST4)、及び停車位置決定処理(ST5)を順に繰り返す。
【0075】
停車位置決定処理において停車位置を決定することができた場合(ST6の判定がYes)には、停車実行処理が実行される(ST7)。行動計画部42は、停車実行処理において、車両の現在地と、停車位置とに基づいて、目標軌道を生成する。走行制御部38は行動計画部42によって決定された目標軌道に基づいて推進装置3、ブレーキ装置4、及びステアリング装置5を制御する。これにより、車両は停車位置に向かって移動し、停車位置に停止する。
【0076】
停車実行処理が実行された後に停車維持処理が実行される(ST8)。停車維持処理において、走行制御部38は行動計画部42からの指令に応じてパーキングブレーキ装置を駆動させ、車両を停車位置に維持させる。その後、行動計画部42は、通信装置8によって緊急通報を緊急通報センタに送信してもよい。停車維持処理が完了すると、停車処理が終了する。
【0077】
本実施形態では、図1及び図3に示すように、車両制御システム1は車外報知装置14としてブレーキランプ14aを含み、車両が停止した後、停車処理が終了するまで、ブレーキランプ14aを点灯させる。このような停車処理を実行するため、車両制御システム1は、ブレーキ装置4と、油圧センサ59と、推進装置3と、車外報知装置14と、制御装置15と、運転操作装置10とを含む。
【0078】
ブレーキ装置4は油圧ブレーキ装置81とパーキングブレーキ装置85とを含む。油圧ブレーキ装置81は制御装置15又は運転操作装置10(ブレーキペダル)からの入力を油圧に換え、油圧値に応じた制動力を車輪に加えるブレーキアクチュエータ82を含む。制御装置15はブレーキアクチュエータ82を制御するブレーキアクチュエータ制御部62と、パーキングブレーキ装置85を制御するパーキングブレーキ制御部63とを更に含む。
【0079】
図3及び図4に示すように、ブレーキアクチュエータ82は、車輪に押し付けられることにより制動力を付与する制動力付与装置84(たとえば、ブレーキキャリパ)と、加減圧装置83とを含む。加減圧装置83は、マスタシリンダ91と、保持ソレノイドバルブ92と、減圧ソレノイドバルブ93と、リザバタンク94と、ポンプ95とを備える。ブレーキキャリパ、マスタシリンダ91、保持ソレノイドバルブ92、及び減圧ソレノイドバルブ93、及びポンプ95が配管によって接続され、その配管内にはブレーキオイルが封入され、油圧回路99が形成される。これにより、ブレーキ装置4は、油圧回路99と、制動力付与装置84と、加減圧装置83とを含む構成となる。
【0080】
図4に示すように、マスタシリンダ91にはピストン96が設けられ、ピストン96にはブレーキペダルが接続されている。運転者からのブレーキペダルの踏み込みによってマスタシリンダ91内のピストン96が移動し、マスタシリンダ91内のブレーキオイルに圧力が加わって、油圧が発生する。
【0081】
ブレーキキャリパは配管を介してマスタシリンダ91に接続されている。ブレーキキャリパは配管内の油圧によって車輪に押し付けられることにより制動力を付与する。ブレーキキャリパとマスタシリンダ91との間にはカットバルブ97が設けられている。
【0082】
保持ソレノイドバルブ92はブレーキキャリパとカットバルブ97とを繋ぐ経路上に設けられている。すなわち、ブレーキキャリパ及びマスタシリンダ91はカットバルブ97及び保持ソレノイドバルブ92を介して互いに接続されている。
【0083】
減圧ソレノイドバルブ93はブレーキキャリパと保持ソレノイドバルブ92とを繋ぐ経路と、リザバタンク94との間に設けられている。すなわち、ブレーキキャリパとリザバタンク94とは減圧ソレノイドバルブ93を介して互いに接続されている。
【0084】
ポンプ95は保持ソレノイドバルブ92とカットバルブ97とを繋ぐ経路と、リザバタンク94との間に設けられている。ポンプ95はリザバタンク94内のブレーキオイルを保持ソレノイドバルブ92とカットバルブ97とを繋ぐ配管に還流させる。ポンプ95には逆止弁が設けられている。これにより、減圧ソレノイドバルブ93とリザバタンク94とを繋ぐ配管からカットバルブ97と保持ソレノイドバルブ92とを繋ぐ配管にブレーキオイルが逆流しない。
【0085】
油圧センサ59はブレーキキャリパ及び保持ソレノイドバルブ92を繋ぐ経路上に設けられ、ブレーキキャリパ及び保持ソレノイドバルブ92を繋ぐ配管内の油圧値を取得する。油圧センサ59は取得した油圧値を制御装置15に出力する。
【0086】
ブレーキアクチュエータ制御部62は油圧センサ59からの信号に基づいて、保持ソレノイドバルブ92、減圧ソレノイドバルブ93、及びポンプ95を制御し、保持ソレノイドバルブ92とブレーキキャリパとの間の配管内の油圧値を制御する。本実施形態では、ブレーキアクチュエータ82は行動計画部42からの指示に基づいて、保持ソレノイドバルブ92とブレーキキャリパとの間の配管内の油圧値を指示された油圧値に設定することができる。行動計画部42は更に、油圧センサ59からの油圧値を取得して、油圧値が所定の閾値(以下、油圧閾値)以上であるときに車外報知制御部64に指示してブレーキランプ14aを点灯させる。
【0087】
たとえば、ブレーキアクチュエータ制御部62がカットバルブ97及び保持ソレノイドバルブ92が開き、減圧ソレノイドバルブ93が閉じているときには、マスタシリンダ91とブレーキキャリパとの間が接続され、ブレーキキャリパ及びマスタシリンダ91とリザバタンク94とは遮断されている。運転者がブレーキペダルに踏込操作を行うと、ピストン96がマスタシリンダ91に押し込まれて、マスタシリンダ91内の油圧が上昇する。マスタシリンダ91内の油圧が上昇すると、マスタシリンダ91とブレーキキャリパを繋ぐ配管を通じてブレーキキャリパに伝わる。これにより、ブレーキキャリパが配管内の油圧によって車輪に押付けられて、車輪に制動力が付与される。更に、ブレーキキャリパ及び保持ソレノイドバルブ92を繋ぐ経路上の油圧値が油圧閾値以上となると、ブレーキランプ14aが点灯する。
【0088】
同様に、ブレーキアクチュエータ制御部62がカットバルブ97を閉じ、保持ソレノイドバルブ92を開き、減圧ソレノイドバルブ93を閉じて、ポンプ95を駆動させると、ブレーキキャリパとカットバルブ97とを繋ぐ配管内がポンプ95によって加圧される。これにより、ブレーキキャリパが車輪に押し付けられて、車輪に制動力が加わる。このとき、保持ソレノイドバルブ92とブレーキキャリパとの間の配管内の油圧値が油圧閾値以上となると、ブレーキランプ14aが点灯する。
【0089】
ブレーキアクチュエータ制御部62がカットバルブ97を閉じ、保持ソレノイドバルブ92を閉じ、減圧ソレノイドバルブ93を開くと、保持ソレノイドバルブ92とブレーキキャリパとの間のブレーキオイルがリザバタンク94に流れ込み、保持ソレノイドバルブ92とブレーキキャリパとの間の配管内が減圧される。保持ソレノイドバルブ92とブレーキキャリパとの間の配管内の油圧値が油圧閾値未満になると、ブレーキランプ14aが消灯する。
【0090】
図1に示すように、推進装置3は自動変速機71を含む。自動変速機71は有段又は無段自動変速機である。自動変速機71はシフトアクチュエータ72を備え、シフトアクチュエータ72の駆動によって、ドライブレンジ(走行レンジ、Dレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、パーキングレンジ(駐車レンジ、Pレンジ)及びリバースレンジ(Rレンジ)のいずれかに切り替わる。シフトアクチュエータ72は制御装置15に接続され、行動計画部42はたとえば、手動運転時には、運転者からのシフトレバーへの入力操作に基づいて変速レンジの切り替えを行う。また、行動計画部42は自動運転モード、及び自動停車モードにおいて自動変速機71に信号を送信し、自動変速機71の変速レンジのレンジ位置を変位させる。
【0091】
パーキングブレーキ装置85は、車輪を保持して車両を静止する装置である。本実施形態では、パーキングブレーキ装置85は、ブレーキキャリパを車輪に押し付けることによって車輪を保持して車両を静止する。パーキングブレーキ装置85はパーキングブレーキ制御部63からの信号に基づいて、車輪を保持する。たとえば、行動計画部42は手動運転時に、運転者からのパーキングスイッチへの入力があると、パーキングブレーキ装置85を駆動し、車輪を保持する。また、行動計画部42は自動運転モード及び自動停車モードにおいて、必要に応じてパーキングブレーキ装置85を駆動させ、車輪を保持する。
【0092】
車外報知装置14は、光又は音によって車外に報知する装置である。車外報知装置14は、ブレーキランプ14a、ハザードランプ14b、及びホーン14cを含む。制御装置15は、車外報知装置14を制御する車外報知制御部64を更に含む。車外報知制御部64は、行動計画部42からの信号に基づいて車外報知装置14に印加する電圧を制御することにより、車外報知装置14による報知を行う。ハザードランプ14b及びホーン14cによる報知は、停車処理において車両が停止する前から継続して行われている。
【0093】
次に、図5を参照して、車両が停止した後にブレーキランプ14aを点灯させるため、行動計画部42が実行する停車維持処理の詳細について説明する。
【0094】
停車維持処理の最初のステップST11において、行動計画部42はシフトアクチュエータ72を駆動させて、自動変速機71の変速レンジを駐車レンジに設定する。自動変速機71の変速レンジが駐車レンジに設定された後、行動計画部42はステップST12を実行する。
【0095】
ステップST12において、行動計画部42はパーキングブレーキ制御部63にパーキングブレーキを作動させるように指示する信号を送信する。信号の送信が完了すると、行動計画部42はステップST13を実行する。
【0096】
ステップST13において、行動計画部42は、ブレーキアクチュエータ制御部62に指示し、油圧センサ59によって取得される油圧値が第1油圧値となるようにブレーキアクチュエータ82を制御する(加圧処理)。行動計画部42は、油圧センサ59によって取得された油圧値が第1油圧値になると、ステップST14を実行する。第1油圧値は、油圧閾値以上の所定の値に設定されている。本実施形態では、第1油圧値は油圧閾値と等しい。
【0097】
ステップST14において、行動計画部42は、運転操作装置10に所定の入力がないと判定したときにはステップST13を実行し、運転操作装置10に所定の入力があったときにはステップST15を実行する。
【0098】
ステップST15において、行動計画部42は車外報知制御部64に車外報知装置14による報知を終了するように指示する信号を送信する。信号の送信が完了すると、行動計画部42は停車維持処理を終える。
【0099】
次に、このように構成した車両制御システムの動作について説明する。
【0100】
本実施形態に係る車両制御システム1において、停車イベントが発生して、車両が停止した後、行動計画部42は停車維持処理を実行する。このとき、行動計画部42は、まず、自動変速機71の変速レンジを駐車レンジに設定し(ST11)、パーキングブレーキ装置85を作動させる(ST12)。その後、行動計画部42は、ブレーキアクチュエータ82を駆動させて加圧処理を行い、ブレーキキャリパに加わる油圧の油圧値を第1油圧値とする(ST13)。これにより、ブレーキキャリパから車輪に制動力が加わると共に、ブレーキランプ14aが点灯する。その後、運転操作装置10に所定の操作入力があるまで、油圧値は第1油圧値に維持される(ST14)。運転操作入力を受けると、行動計画部42は車外報知装置14による報知を終了させる(ST15)。
【0101】
次に車両制御システムの効果について説明する。パーキングブレーキ装置85が作動した状態では、ブレーキランプ14aは点灯しない。そのため、パーキングブレーキ装置85を作動させて、車両を停止したときには、ブレーキランプ14aは点灯せず、車両が停止していることが周辺車両や歩行者等に認識されにくい。
【0102】
本実施形態では、車両が停止し、且つパーキングブレーキが作動した状態であっても、油圧値が油圧閾値以上になるまで配管内のブレーキオイルが加圧される。これにより、ブレーキランプ14aが点灯し、車両が停止していることが周辺車両や歩行者等に認識され易くなる。これにより、たとえば、後方から近づく車両に、異常停止していることがより認識され易くなり、車両の安全性が高められる。
【0103】
油圧回路99内のブレーキオイルはポンプ95によって加圧される。このとき、ポンプ95の駆動によって、車両に搭載されたバッテリの電力が消費される。本実施形態では、配管内の油圧は油圧閾値に維持される。よって、ポンプ95によってブレーキランプ14aの点灯に要する以上にブレーキオイルが加圧されないため、ポンプ95による消費電力が低減される。これにより、ブレーキランプ14aの点灯に要するバッテリの電力消費が低減され、車両が停止した後、より長くブレーキランプ14aを点灯させて、車両が停止状態にあることを車外に報知することが可能となる。
【0104】
<<第2実施形態>>
次に図6を参照して、第2実施形態に係る車両制御システム101について説明する。第2実施形態に係る車両制御システム101は、第1実施形態の車両制御システム1に対して、図5のステップST13とステップST14との間にステップST21を実行する点において異なる。他の部分については第1実施形態と同様である。以下ではステップST21について詳細に説明し、他の部分については説明を省略する。また、説明にあたって、第1実施形態と共通する処理については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0105】
ステップST21において、行動計画部42はブレーキアクチュエータ82を駆動させ、油圧センサ59によって取得された油圧値が第2油圧値となるようにブレーキアクチュエータ82を制御する(減圧処理)。第2油圧値は第1油圧値よりも小さく、且つ、ブレーキランプ14aが点灯する閾値よりも小さい。行動計画部42は油圧センサ59によって取得された油圧値が第2油圧値になると、ステップST14を実行する。
【0106】
次に、このように構成した車両制御システム101の動作、及び効果について説明する。
【0107】
停車処理において、車両が停止されると、行動計画部42は停車維持処理を実行する。このとき、行動計画部42は第1実施形態と同様に、加圧処理を実行して(ST13)、ブレーキランプ14aを点灯させる。その後、行動計画部42は油圧センサ59によって取得される油圧値を閾値未満とする減圧処理を行う(ST21)。これにより、油圧値はブレーキランプ14aが点灯する閾値未満となり、ブレーキランプ14aが消灯する。
【0108】
更に、本実施形態では、加圧処理と減圧処理とが運転操作装置10に所定の入力があるまで繰り返し実行される。これにより、ブレーキランプ14aが点滅する。これにより、ブレーキランプ14aが点灯している状態が維持される場合に比べて、周辺車両や歩行者等に車両が停止状態にあることが理解され易くなり、車両の安全性がより高められる。
【0109】
また、第1実施形態のように加圧処理を実行し続けた場合には、油圧回路99のブレーキオイルが過熱により沸騰して油圧回路99内に気泡が生じることがある(ベーパーロック現象)。この状態では気泡が圧力を吸収するため、制動力が低下する。加圧処理と減圧処理とを繰り返し実行するとブレーキオイルは過熱されないため、ブレーキキャリパの制動力を維持することができる。これにより、車両に加わる制動力が減衰し難く、車両をより確実に停止し続けることができる。
【0110】
<<第3実施形態>>
次に図7を参照して、第3実施形態に係る車両制御システム201について説明する。第3実施形態に係る車両制御システム201は、第1実施形態の車両制御システム1に対して、行動計画部42が図5の停車維持処理における停車維持処理のステップST13に代えてステップST31を実行し、ステップST31において、車外報知制御部64に指示してブレーキランプ14aを点灯させる点において異なる。他の部分については第1実施形態と同様である。以下ではステップST31について詳細に説明し、他の部分については説明を省略する。また、説明にあたって、第1実施形態と共通する処理については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0111】
ステップST31において、行動計画部42はブレーキランプ14aを点灯させるように指示する信号を車外報知制御部64に送信する。但し、車外報知制御部64は、既にブレーキランプ14aを点灯しているときにはブレーキランプ14aを点灯状態に維持する。行動計画部42は、信号の送信が完了すると、ステップST14を実行する。
【0112】
次に、このように構成した車両制御システム201の動作、及び効果について説明する。
【0113】
停車実行処理において車両が停止された後に、行動計画部42は停車維持処理を実行する。パーキングブレーキ装置85を作動させた後に、行動計画部42は、ブレーキランプ14aを点灯させるように車外報知制御部64に指示する。これによって、油圧値に関わらずブレーキランプ14aが点灯される。これにより、たとえば第1実施形態のようにポンプ95を駆動させて加圧を行うことなくブレーキランプ14aを点灯させることができるため、構成が簡素になる。更に、ポンプ95の駆動によるエネルギー消費を低減することができる。
【0114】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態では、油圧の制御(加圧処理、及び減圧処理)は運転者の運転操作入力を受けるまで行われていたが、この態様には限定されない。たとえば、車両センサは車両にドアの開閉を検出するセンサを含み、行動計画部42はセンサの検出結果に基づいてドアが開かれたことを認識したときに、油圧の制御を終了してもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、車両制御システム(1、101、201)は油圧回路を有する構成となっていたが、この態様には限定されない。たとえば、ブレーキ装置4が油圧回路を有しておらず、制御装置15が、車両に付与された制動力が所定値以上のときにブレーキランプ14aを点灯させ、所定値未満のときにブレーキランプ14aを消灯させる構成であってもよい。また、制御装置15が、ブレーキペダルストローク量が所定値以上のときにブレーキランプ14aを点灯させ、所定値未満のときにブレーキランプ14aを消灯させる構成であってもよい。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、各処理の具体的内容や順序など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 :第1実施形態に係る車両制御システム
4 :ブレーキ装置
10 :運転操作装置
14a :ブレーキランプ
15 :制御装置
71 :自動変速機
83 :加減圧装置
84 :制動力付与装置
85 :パーキングブレーキ装置
99 :油圧回路
101 :第2実施形態に係る車両制御システム
201 :第3実施形態に係る車両制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7