(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】暖房装置及び冷房装置
(51)【国際特許分類】
F24D 3/00 20220101AFI20221221BHJP
F24D 7/00 20220101ALI20221221BHJP
F24F 11/47 20180101ALI20221221BHJP
【FI】
F24D3/00 K
F24D7/00 C
F24F11/47
(21)【出願番号】P 2019094810
(22)【出願日】2019-05-20
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 真典
(72)【発明者】
【氏名】川上 岳彦
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047269(WO,A1)
【文献】特開2011-220621(JP,A)
【文献】特開平08-054138(JP,A)
【文献】特開2017-133775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 1/00-19/10
F24H 1/00-15/493
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式の熱源部を有する暖房装置において、
暖房能力に係わる所定の暖房制御値に基づき、前記熱源部の能力を制御する熱源制御手段と、
外部の電力管理システムからの節電指示信号を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した節電指示信号のカウント累積情報に応じて、前記暖房制御値を可変に設定する暖房制御値設定手段と、
を備え
、
前記カウント累積情報は、
前記電力管理システムからの前記節電指示信号の累積受信回数と、当該節電指示信号の受信頻度と、を含む
ことを特徴とする暖房装置。
【請求項2】
前記暖房制御値設定手段は、
前記カウント累積情報の累積度合いに応じて、前記暖房制御値の変化割合を変える
ことを特徴とする請求項1記載の暖房装置。
【請求項3】
前記熱源部は、
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒と温水との熱交換を行う水冷媒熱交換器と、を有する室外機であり、
前記暖房装置は、さらに、
水循環回路を介し前記水冷媒熱交換器から供給される前記温水により放熱する熱交換器を備え、空調対象空間を加温する暖房端末をさらに有し、
前記熱源制御手段は、
前記水循環回路を介し前記暖房端末の前記熱交換器から戻る水戻り温度が、前記暖房制御値としての目標戻り温度となるように、前記圧縮機を制御する第1圧縮機制御手段を含む
ことを特徴とする
請求項1または請求項2記載の暖房装置。
【請求項4】
前記熱源部は、
冷媒を圧縮する圧縮機を有する室外機であり、
前記暖房装置は、さらに、
冷媒循環回路を介し前記圧縮機から供給される前記冷媒の凝縮により放熱する室内熱交換器を備え、空調対象空間の室内空気を加温する室内機を有し、
前記熱源制御手段は、
前記空調対象空間の実室温が、室温設定手段により設定された前記暖房制御値としての設定室温となるように、前記圧縮機を制御する第2圧縮機制御手段を含む
ことを特徴とする
請求項1または請求項2記載の暖房装置。
【請求項5】
電気式の熱源部を有する冷房装置において、
冷房能力に係わる所定の冷房制御値に基づき、前記熱源部の能力を制御する熱源制御手段と、
外部の電力管理システムからの節電指示信号を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した節電指示信号のカウント累積情報に応じて、前記冷房制御値を可変に設定する冷房制御値設定手段と、
を備え
、
前記カウント累積情報は、
前記電力管理システムからの前記節電指示信号の累積受信回数と、当該節電指示信号の受信頻度と、を含む
ことを特徴とする冷房装置。
【請求項6】
前記冷房制御値設定手段は、
前記カウント累積情報の累積度合いに応じて、前記冷房制御値の変化割合を変える
ことを特徴とする
請求項5記載の冷房装置。
【請求項7】
前記熱源部は、
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒と冷水との熱交換を行う水冷媒熱交換器と、を有する室外機であり、
前記冷房装置は、さらに、
水循環回路を介し前記水冷媒熱交換器から供給される前記冷水により吸熱する熱交換器を備え、空調対象空間を冷却する冷房端末をさらに有し、
前記熱源制御手段は、
前記水循環回路を介し前記冷房端末の前記熱交換器から戻る水戻り温度が、前記冷房制御値としての目標戻り温度となるように、前記圧縮機を制御する第3圧縮機制御手段を含む
ことを特徴とする
請求項5または請求項6記載の冷房装置。
【請求項8】
前記熱源部は、
冷媒を圧縮する圧縮機を有する室外機であり、
前記冷房装置は、さらに、
冷媒循環回路を介し前記圧縮機から供給される前記冷媒の蒸発により吸熱する室内熱交換器を備え、空調対象空間の室内空気を冷却する室内機を有し、
前記熱源制御手段は、
前記空調対象空間の実室温が、室温設定手段により設定された前記冷房制御値としての設定室温となるように、前記圧縮機を制御する第4圧縮機制御手段を含む
ことを特徴とする
請求項5または請求項6記載の冷房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力管理システムから節電指示信号が受信される暖房装置及び冷房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の装置においては、特許文献1記載のように、電力管理システムからの節電指示信号の入力に応じて、ヒートポンプ装置の動作制限を行うものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のものにおいては、具体的には、節電指示信号の入力時の前記動作制限として、ヒートポンプ装置に備えられた圧縮機の回転数の上限値が設定される。その結果、圧縮機の回転数強制低下で消費電力低減→制限解除→圧縮機のフル回転で消費電力増大→再び回転数強制低下→・・を繰り返す不安定動作が生じ、さらにこれを暖房装置及び冷房装置に適用した場合に、これによって温度が乱高下して不快感をもたらすという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、電気式の熱源部を有する暖房装置において、暖房能力に係わる所定の暖房制御値に基づき、前記熱源部の能力を制御する熱源制御手段と、外部の電力管理システムからの節電指示信号を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した節電指示信号のカウント累積情報に応じて、前記暖房制御値を可変に設定する暖房制御値設定手段と、を備え、前記カウント累積情報は、前記電力管理システムからの前記節電指示信号の累積受信回数と、当該節電指示信号の受信頻度と、を含むものである。
【0006】
また、請求項2では、前記暖房制御値設定手段は、前記カウント累積情報の累積度合いに応じて、前記暖房制御値の変化割合を変えるものである。
【0009】
また、請求項3では、前記熱源部は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒と温水との熱交換を行う水冷媒熱交換器と、を有する室外機であり、前記暖房装置は、さらに、水循環回路を介し前記水冷媒熱交換器から供給される前記温水により放熱する熱交換器を備え、空調対象空間を加温する暖房端末をさらに有し、前記熱源制御手段は、前記水循環回路を介し前記暖房端末の前記熱交換器から戻る水戻り温度が、前記暖房制御値としての目標戻り温度となるように、前記圧縮機を制御する第1圧縮機制御手段を含むものである。
【0010】
また、請求項4では、前記熱源部は、冷媒を圧縮する圧縮機を有する室外機であり、前記暖房装置は、さらに、冷媒循環回路を介し前記圧縮機から供給される前記冷媒の凝縮により放熱する室内熱交換器を備え、空調対象空間の室内空気を加温する室内機を有し、前記熱源制御手段は、前記空調対象空間の実室温が、室温設定手段により設定された前記暖房制御値としての設定室温となるように、前記圧縮機を制御する第2圧縮機制御手段を含むものである。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項5では、電気式の熱源部を有する冷房装置において、冷房能力に係わる所定の冷房制御値に基づき、前記熱源部の能力を制御する熱源制御手段と、外部の電力管理システムからの節電指示信号を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した節電指示信号のカウント累積情報に応じて、前記冷房制御値を可変に設定する冷房制御値設定手段と、を備え、前記カウント累積情報は、前記電力管理システムからの前記節電指示信号の累積受信回数と、当該節電指示信号の受信頻度と、を含むものである。
【0012】
また、請求項6では、前記冷房制御値設定手段は、前記カウント累積情報の累積度合いに応じて、前記冷房制御値の変化割合を変えるものである。
【0015】
また、請求項7では、前記熱源部は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒と冷水との熱交換を行う水冷媒熱交換器と、を有する室外機であり、前記冷房装置は、さらに、水循環回路を介し前記水冷媒熱交換器から供給される前記冷水により吸熱する熱交換器を備え、空調対象空間を冷却する冷房端末をさらに有し、前記熱源制御手段は、前記水循環回路を介し前記冷房端末の前記熱交換器から戻る水戻り温度が、前記冷房制御値としての目標戻り温度となるように、前記圧縮機を制御する第3圧縮機制御手段を含むものである。
また、請求項8では、前記熱源部は、冷媒を圧縮する圧縮機を有する室外機であり、前記冷房装置は、さらに、冷媒循環回路を介し前記圧縮機から供給される前記冷媒の蒸発により吸熱する室内熱交換器を備え、空調対象空間の室内空気を冷却する室内機を有し、前記熱源制御手段は、前記空調対象空間の実室温が、室温設定手段により設定された前記冷房制御値としての設定室温となるように、前記圧縮機を制御する第4圧縮機制御手段を含むものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明の請求項1の暖房装置によれば、電気式の熱源部が備えられており、その能力が熱源制御手段によって制御される。このとき、この暖房装置は、家屋に設けられる、例えばHEMS(=Home Energy Management System)等の外部の電力管理システムに接続されて用いられる。
前記電力管理システムは、例えば前記家屋の電力使用状況や回路ごとの消費電力量の情報を収集可能であり、前記家屋の電力マネジメントを行う。そして、例えば当該家屋の全電気器具により消費する電力が所定の制限値(電力値でも電流値でもよい)に達した場合には、前記電力管理システムから暖房装置に対し節電を要求する節電指示信号が出力される。
請求項1によれば、暖房装置に暖房制御値設定手段が設けられる。この暖房制御値設定手段は、前記電力管理システムから受信手段により受信される前記節電指示信号に応じ、その受信されるときのカウント累積情報に応じて、前記熱源制御手段が前記熱源部の能力を制御するときの制御値(暖房制御値)を、可変に設定する。これにより、例えば前記節電指示信号の受信回数や受信頻度等に応じて前記熱源部の能力を抑制し、前記暖房装置における消費電力を低減することができる。
この結果、前記節電指示信号の入力に応じてヒートポンプ装置の動作を制限する従来手法のように、動作制限で消費電力低減→制限解除→フル動作で消費電力増大→再び動作制限→・・のような繰り返しによる不安定動作を回避し、安定的に消費電力の低減を図ることができる。また前記不安定動作により不快感がもたらされるのを防止し、暖房時の快適性の低下を最小限にとどめることができる。
また、請求項1によれば、前記節電指示信号の受信回数に応じて前記熱源部の能力を抑制し、前記暖房装置における消費電力を低減することができる。
また、請求項1によれば、さらに前記節電指示信号の受信頻度に応じて前記熱源部の能力を抑制し、前記暖房装置における消費電力を低減することができる。
【0017】
また、請求項2によれば、暖房制御値の変化割合をカウント累積情報の累積度合いに応じて変化させる。これにより、例えば前記節電指示信号の1回目の受信で暖房制御値を変化させた後、2回目の受信では暖房制御値をさらに大きく変化させる等の、きめ細かい制御を実現することができる。この結果、暖房装置における消費電力を確実に低減することができる。
【0020】
また、請求項3によれば、暖房端末へ温水を供給する水循環回路の水戻り温度が目標戻り温度となるように、熱源部としての室外機に備えられた圧縮機が制御される構成において、前記目標戻り温度が、節電指示信号のカウント累積情報に応じて可変に設定される。これにより、例えば前記節電指示信号の受信回数や受信頻度等に応じて目標戻り温度を低くすることで暖房能力を抑制し、暖房端末の運転に係る消費電力を低減することができる。
【0021】
また、請求項4によれば、実室温が室温設定手段で設定される設定室温となるように、熱源部としての室外機に備えられた圧縮機が制御される構成において、前記設定室温が、節電指示信号のカウント累積情報に応じて可変に設定される。これにより、例えば前記節電指示信号の受信回数や受信頻度等に応じて設定室温を低くすることで暖房能力を抑制し、室内機の運転に係る消費電力を低減することができる。
【0022】
また、この発明の請求項5の冷房装置によれば、電気式の熱源部が備えられており、その能力が熱源制御手段によって制御される。このとき、この冷房装置は、家屋に設けられる、例えばHEMS(=Home Energy Management System)等の外部の電力管理システムに接続されて用いられる。
前記電力管理システムは、例えば前記家屋の電力使用状況や回路ごとの消費電力量の情報を収集可能であり、前記家屋の電力マネジメントを行う。そして、例えば当該家屋の全電気器具により消費する電力が所定の制限値(電力値でも電流値でもよい)に達した場合には、前記電力管理システムから冷房装置に対し節電を要求する節電指示信号が出力される。
請求項5によれば、冷房装置に冷房制御値設定手段が設けられる。この冷房制御値設定手段は、前記電力管理システムから受信手段により受信される前記節電指示信号に応じ、その受信されるときのカウント累積情報に応じて、前記熱源制御手段が前記熱源部の能力を制御するときの制御値(冷房制御値)を、可変に設定する。これにより、例えば前記節電指示信号の受信回数や受信頻度等に応じて前記熱源部の能力を抑制し、前記冷房装置における消費電力を低減することができる。
この結果、前記節電指示信号の入力に応じて前記ヒートポンプ装置の動作を制限する従来手法のように、動作制限で消費電力低減→制限解除→フル動作で消費電力増大→再び動作制限→・・のような繰り返しによる不安定動作を回避し、安定的に消費電力の低減を図ることができる。また前記不安定動作により不快感がもたらされるのを防止し、冷房時の快適性の低下を最小限にとどめることができる。
また、請求項5によれば、前記節電指示信号の受信回数に応じて前記熱源部の能力を抑制し、前記冷房装置における消費電力を低減することができる。
また、請求項5によれば、さらに前記節電指示信号の受信頻度に応じて前記熱源部の能力を抑制し、前記冷房装置における消費電力を低減することができる。
【0023】
また、請求項6によれば、冷房制御値の変化割合をカウント累積情報の累積度合いに応じて変化させる。これにより、例えば前記節電指示信号の1回目の受信で冷房制御値を変化させた後、2回目の受信では冷房制御値をさらに大きく変化させる等の、きめ細かい制御を実現することができる。この結果、冷房装置における消費電力を確実に低減することができる。
【0026】
また、請求項7によれば、冷房端末へ冷水を供給する水循環回路の水戻り温度が目標戻り温度となるように、熱源部としての室外機に備えられた圧縮機が制御される構成において、前記目標戻り温度が、節電指示信号のカウント累積情報に応じて可変に設定される。これにより、例えば前記節電指示信号の受信回数や受信頻度等に応じて目標戻り温度を高くすることで冷房能力を抑制し、冷房端末の運転に係る消費電力を低減することができる。
また、請求項8によれば、実室温が室温設定手段で設定される設定室温となるように、熱源部としての室外機に備えられた圧縮機が制御される構成において、前記設定室温が、節電指示信号のカウント累積情報に応じて可変に設定される。これにより、例えば前記節電指示信号の受信回数や受信頻度等に応じて設定室温を高くすることで冷房能力を抑制し、室内機の運転に係る消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態の空調システム全体の回路構成図
【
図4】エアコン設定温度の温度区分と各区分に対応する床暖房端末への湯水の温度レベルとの相関、及び、前記温度レベルと目標戻り温度との相関、を表すテーブル図
【
図9】節電指示信号の入力で圧縮機回転数上限が定められる比較例における、温度・電流挙動の一例を表すグラフ図
【
図10】本発明の一実施形態の手法による、温度・電流挙動の一例を表すグラフ図
【
図11】連動運転時において室内機制御部及び室外機制御部が協働して実行する制御手順を表すフローチャート図
【
図12】冷風冷房運転を行う変形例において、当該冷風冷房運転時の作動を説明する図
【
図13】冷風冷房運転時における温度・電流挙動の一例を表すグラフ図
【
図14】冷風冷房運転時において室内機制御部が実行する制御手順を表すフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を
図1~
図14に基づいて説明する。
【0029】
本発明の一実施形態の暖房装置及び冷房装置を含む空調システム1全体の回路構成を
図1に示す。
図1に示すように、空調システム1は、空調システム1の熱源である室外機4(熱源部の一例としてのに相当)と、床暖房端末27と、室内機17と、を有している。
【0030】
<加熱循環回路>
前記室外機4は、冷媒を流通させる冷媒側の流路7bと水側の流路7aとを有し、高温高圧の冷媒と床暖房端末27への湯水(循環液の一例に相当)とを熱交換する凝縮器として機能する水冷媒熱交換器7と、回転数可変の循環ポンプ34と、を備えている。すなわち、前記水冷媒熱交換器7の前記水側の流路7aと前記床暖房端末27とが水配管としての往き管28及び戻り管29によって環状に接続され、水循環回路としての加熱循環回路33が形成されている。
【0031】
水冷媒熱交換器7から床暖房端末27内の熱交換器(図示省略。温水により放熱する熱交換器に相当)に向かって延びる前記往き管28の途中には、1つの往きヘッダ30が設けられている。往き管28のうち往きヘッダ30より上流側部分は、1つの共通往き管28aとして構成され、水冷媒熱交換器7にて加熱された温水(不凍液等を含む水以外の循環液であってもよい。以下同様)が供給される。そして、往き管28のうち往きヘッダ30より下流側部分は複数(図示の例では4本)の個別往き管28bに分岐している。分岐した個別往き管28bには、それぞれ開閉弁である熱動弁31が付設されている。
【0032】
前記往き管28と同様に、床暖房端末27内の前記熱交換器から水冷媒熱交換器7に向かって延びる戻り管29の途中には、1つの戻りヘッダ32が設けられており、戻り管29のうち戻りヘッダ32より上流側部分は、複数(ここでは4本)の個別戻り管29bに分岐している。そして、戻り管29のうち戻りヘッダ32より下流側部分は、1つの共通戻り管29aとして構成され、個別戻り管29bを介して導入された温水が水冷媒熱交換器7へと戻される。
【0033】
なお、本実施形態では、説明を簡略化するため、1つの床暖房端末27が接続された例を示しているが、上記のように分岐した4本の個別往き管28bそれぞれに床暖房端末27を接続(すなわち4台接続)としてもよい。
【0034】
前記循環ポンプ34は、前記共通戻り管29aの途中に設けられ、前記水側の流路7aを介し前記戻り管29からの湯水を前記往き管28へ流通させつつ、床暖房端末27の湯水を循環させる。共通戻り管29aのうち循環ポンプ34の上流側には、温水を貯留し加熱循環回路33の圧力を調整するシスターン35が備えられている。前記戻り管29の前記個別戻り管29bのそれぞれには、前記水冷媒熱交換器7の前記水側の流路7aに流入する湯水の水戻り温度としての入水温度T1を検出する、入水温度センサ123が設けられている。
【0035】
<冷媒循環回路>
一方、室外機4から前記室内機17にかけて、前記水冷媒熱交換器7における熱交換(詳細は後述)によって前記床暖房端末27内の湯水を加熱可能な冷媒循環回路130が設けられている。前記冷媒循環回路130は、主ヒートポンプ回路部130Aと、床暖側ヒートポンプ回路部130Bと、空調側ヒートポンプ回路部130Cと、を含んでいる。
【0036】
<主ヒートポンプ回路部>
前記主ヒートポンプ回路部130Aは、前記冷媒の流路となる冷媒配管11を備えており、冷媒(循環液の他の例に相当)を圧縮する圧縮機5と、四方弁6と、前記冷媒と外気との熱交換により凝縮器又は蒸発器として選択的に機能する熱源側熱交換器としての空気熱交換器10とが、前記冷媒配管11によって接続されている。空気熱交換器10は、例えばフィンチューブ式の熱交換器であり、当該空気熱交換器10に外気を通じるための室外ファン9が設けられている。なお、前記の圧縮機5、空気熱交換器10、及び水冷媒熱交換器7等がヒートポンプ装置の一例に相当している。
【0037】
詳細には、前記冷媒配管11は、圧縮機5の吐出側となる配管部11aと、床暖房運転時(後述の
図6等参照)等において前記四方弁6を介し前記配管部11aに接続される配管部11bとを含んでいる。
【0038】
また前記冷媒配管11は、前記圧縮機5の吸入側となる配管部11cと、床暖房運転時(後述の
図6参照)等において前記空気熱交換器10の圧縮機5側(言い替えれば前記床暖房運転時等における出口側、以下同様。後述の
図6等参照)を前記四方弁6を介し前記配管部11cに接続する配管部11dと、前記空気熱交換器10の反圧縮機5側(言い替えれば前記床暖房運転時等における入口側、以下同様。後述の
図6等参照)に接続される配管部11eとを含んでいる。
【0039】
前記四方弁6は4つのポートを備える弁であり、前記冷媒配管11のうち(冷媒主経路を構成する)前記配管部11b,11d用の2つのポートのそれぞれに対して、残りの前記配管部11a,11c用の2つのポートのいずれを接続するかを切り替える。前記配管部11a,11c用の2つのポートどうしは、ループ状に配置された前記配管部11a,11cからなる冷媒副経路によって接続されており、この冷媒副経路上に前記圧縮機5が設けられている。例えば四方弁6は、後述する
図6の状態に切り替えられた場合は、前記圧縮機5の吐出側である前記配管部11aを前記水冷媒熱交換器7の入口側である前記配管部11bに連通させる。その一方、後述する冷風冷房運転の実行時には、前記配管部11aを前記空気熱交換器10側である前記配管部11dに連通させる。
【0040】
<床暖側ヒートポンプ回路部>
前記床暖側ヒートポンプ回路部130Bは、前記冷媒の流路となる冷媒配管125を備えており、前記水冷媒熱交換器7の前記冷媒側の流路7bが、前記冷媒配管125に接続されている。
【0041】
詳細には、前記冷媒配管125は、前記配管部11bから分岐して接続されるとともに、反配管部11b側が前記水冷媒熱交換器7(詳細には前記冷媒側の流路7b)の入口側に接続される配管部125bと、前記水冷媒熱交換器7(詳細には前記冷媒側の流路7b)の出口側に接続される配管部125cとを含んでいる。前記配管部125cは、全閉機能付きの膨張弁8を備えており、膨張弁8より下流側で、前記配管部11eに連通している。
【0042】
<空調側ヒートポンプ回路部>
前記空調側ヒートポンプ回路部130Cは、前記冷媒の流路となる冷媒配管126を備えており、前記冷媒と室内空気との熱交換により凝縮器又は蒸発器として選択的に機能する室内熱交換器14(冷媒の凝縮により放熱する熱交換器、冷媒の蒸発により吸熱する熱交換器、に相当)が前記冷媒配管126に接続されている。室内熱交換器14には、前記室内熱交換器14に室内空気を通じるための室内ファン18が設けられている。室内ファン18の作動により送られる室内空気が室内熱交換器14にて熱交換され、熱交換により加熱加温または吸熱冷却された空気が室内に供給される。
【0043】
前記空調側ヒートポンプ回路部130Cにおいて、詳細には、前記冷媒配管126は、前記配管部125b同様、前記配管部11bから分岐して接続されるとともに、反配管部11b側が前記室内熱交換器14の温風暖房運転時等における入口側(後述の
図7等参照)に接続される配管部126aと、前記配管部125cと同様に一方側が前記配管部11eに連通するとともに、反配管部11e側が前記室内熱交換器14の温風暖房運転時等における出口側(後述の
図7等参照)に接続される配管部126bと、を含んでいる。前記配管部126aは、前記配管部11bと前記室内熱交換器14との間の連通を開閉可能な二方弁16を備えており、前記配管部126bは、全閉機能付きの膨張弁15を備えている。二方弁16は、空調側ヒートポンプ回路部130Cを循環する冷媒の流れを、開弁することで流通可能状態とし、また、閉弁することで遮断状態とする。
【0044】
<冷媒・各種検出信号等>
前記冷媒循環回路130内には、冷媒として例えばHFC冷媒や二酸化炭素冷媒等の任意の冷媒が用いられ、ヒートポンプサイクルを構成している。そして、前記主ヒートポンプ回路部130Aの前記冷媒配管11において、前記配管部11aには、圧縮機5から吐出される冷媒吐出温度Toutを検出する吐出温度センサ120が設けられている。このセンサ120の検出結果は、室外機4に設けられた室外機制御部44に入力される。室外機制御部44は、主にCPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータで構成され、後述のように室外機4内の各種センサ、室内機制御部20、床暖房リモコン36等からの信号を受けて、空調システム1の動作を制御する。
【0045】
また、前記空調側ヒートポンプ回路部130Cの前記冷媒配管126に関して、前記室内熱交換器14には、空調対象空間の室内温度Tr(実室温に相当)を検出する室内温度センサ19が設けられている。このセンサ19の検出結果は、室内機17に設けられた室内機制御部20に入力され、さらに適宜、室外機4に設けられた前記室外機制御部44へも入力される(室内機制御部20を介し受信しても良いし、センサ19から直接受信してもよい)。
【0046】
そして、前記室外機4の前記室外機制御部44と、前記室内機17の前記室内機制御部20とは、互いに通信可能に接続されており、前記各センサの検出結果に基づき、相互に連携しつつ、前記室外機4内の各機器・アクチュエータの動作を制御する。特に、前記四方弁6、前記二方弁16、及び前記膨張弁8,15の開閉動作や開度を制御し、冷媒の流れる経路を切り替えることにより、前記床暖房端末27により前記空調対象空間の床面を加温する床暖房運転、前記室内機17により前記空調対象空間の室内空気を加熱する温風暖房運転、前記床暖房運転と前記温風暖房運転とを互いに連動して行う連動運転、前記室内機17により前記空調対象空間の室内空気を冷却する冷風冷房運転、等を選択的に実行することができる。
【0047】
一方、本実施形態の空調システム1には、この空調システム1が設けられる家屋の電力マネジメントを行うための、電力管理システムとしてのHEMS(=Home Energy Management System)機器200が設けられる。前記HEMS機器200は、ルータ201とこのルータ201に無線通信により接続されたアダプタ202とを介し、前記室内機制御部20に対し双方向に通信可能に接続されており、また分電盤203にも双方向に通信可能に接続されている。これにより、HEMS機器200は、空調システム1の各熱交換器及び圧縮機5の使用状況や分電盤203の分岐回路ごとの消費電力量の情報を収集可能となっている。またHEMS機器200は、さらに前記ルータ201及び適宜のネットワーク通信網204を介しサーバ機器210に接続され、必要な情報を相互にやりとり可能となっている。なお、HEMS機器200が空調システム1との間の通信により各種情報(電力消費情報など)を収集するのに代え、HEMS機器200が、分電盤203と商用電源205(図示省略しているが、空調システム1各部へ商用電源205から電力供給がなされている)との間の電力の授受を監視することで、空調システム1の前記電力消費情報等を収集するようにしても良い。
【0048】
<室内機リモコン>
ここで、前記室内機17は、この例ではワイヤレスリモコンとして構成される室内機リモコン21によって操作可能である。すなわち、この室内機リモコン21の送信部(図示せず)と室内機制御部20の受信部(図示せず)とは、赤外線等により無線通信を行い、室内機リモコン21の送信部から室内機制御部20の受信部への一方向通信により情報の伝達を行う。室内機リモコン21の送信部より発信された信号を、室内機制御部20の受信部で受けると、室内機制御部20では、室内機リモコン21から送られてきた情報を読み取り、指示された制御を行う。なお、室内機制御部20は、前記室外機制御部44との間で制御信号S11のやり取りを行い双方向通信により情報の伝達を行うことができる。この結果、室外機制御部44は、室内機リモコン21から送信される制御信号S1に対応する情報や、前記HEMS機器200からの情報を、室内機制御部20を介して取得可能である。
【0049】
前記室内機リモコン21は、室内機17に対して、室内に温風を供給する前記温風暖房運転を実行させる暖房スイッチ22と、室内機17に対して、室内に冷風を供給する冷風冷房運転を実行させる冷房スイッチ23と、温風暖房運転または冷風冷房運転を停止させる停止スイッチ24と、温風暖房運転または冷風冷房運転時に室内温度を設定する、すなわちエアコン設定温度Tconを設定するための室温設定手段としての室内温度設定スイッチ25と、前記エアコン設定温度Tconや各種運転状態を表示する表示部26と、室内機17に対しタイマーによる運転を指示するためのタイマースイッチ45と、を備えている。
【0050】
<床暖房リモコン>
また、前記床暖房端末27は、この例ではワイヤードリモコンとして前記室内の壁面に取り付けられる、床暖房リモコン36によって操作可能である。床暖房リモコン36は、前記室外機制御部44との間で制御信号S2のやり取りを行い双方向通信によりの情報の伝達を行うことができる。これにより、床暖房リモコン36は、室内機17の作動情報(運転中か停止中かなど)を取得可能である。
【0051】
<床暖房リモコンの詳細>
図2に示すように、床暖房リモコン36は、所望の画面100を表示する表示部37と、床暖房端末27の運転開始・停止を指示するための運転/停止スイッチ38と、床暖房端末27に対しタイマーによる運転を指示するためのタイマースイッチ39と、床暖房端末27の運転態様(通常モード・セーブモード等)の切替を指示する運転切替スイッチ40と、画面表示を1つ前の画面に戻すための戻るスイッチ41と、メニュー/決定スイッチ42と、上下左右方向への十字キー43と、が備えられている。また、図示を省略しているが、床暖房リモコン36には、床暖房端末27の動作制御や、各種の表示を行うための、CPUや記憶手段としてのメモリ等が内蔵されている。
【0052】
表示部37は、前記画面100として、空調システム1全体に係わる設定を行うための全体設定画面や、室内に設けられた前記床暖房端末27の運転開始・停止設定を含む、床暖房端末27に係わる設定(例えば温度レベルLsの設定等)を行うための端末設定画面、等を適宜に切り替えて表示することができる。
【0053】
<室外機制御部の機能>
前記室外機制御部44は、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、演算・制御処理を行う制御部とを備えている。室外機制御部44の機能的構成を
図3に示す。
【0054】
図3に示すように、前記室外機制御部44は、四方弁制御部44Aと、圧縮機制御部44B(熱源制御手段に相当)と、膨張弁制御部44Cと、ポンプ制御部44Dと、床暖房レベル設定部44Eと、二方弁制御部44Fと、を機能的に備えている。
【0055】
<四方弁制御部>
前記四方弁制御部44Aには、前記室内機制御部20を介した、前記室内機リモコン21からの運転指示に対応する運転情報(温風暖房運転、冷風冷房運転、連動運転等のうちいずれの運転開始及び運転停止を指示する前記制御信号S11)と、前記床暖房リモコン36からの運転指示(床暖房運転の運転開始及び運転停止を指示する前記制御信号S2)と、が入力される。四方弁制御部44Aは、それら運転情報及び運転指示に応じて、実際に空調システム1をどのような運転態様(床暖房運転、冷風冷房運転、温風暖房運転、連動運転等)で運転するかを決定し対応する運転情報を、圧縮機制御部44B、膨張弁制御部44C、ポンプ制御部44D、二方弁制御部44F、床暖房レベル設定部44Eに出力するとともに、室内機制御部20にも前記制御信号S11として出力する。また四方弁制御部44Aは、上記決定された運転態様に対応する制御信号を四方弁6へ出力し、四方弁6を切り替える。
【0056】
<床暖房レベル設定部>
前記床暖房レベル設定部44Eには、前記室内温度センサ19により検出された前記室内温度Trと、前記室内機制御部20を介した、前記室内機リモコン21により設定された前記エアコン設定温度Tconと、が入力される(直接入力される場合のほか、前記の間接的な入力も含む。以下同様)。床暖房レベル設定部44Eは、相関記憶部44E1と、温度レベル決定部44E2と、目標戻り温度決定部44E5と、を備え、連動運転の際に、入力された前記室内温度Tr及び前記エアコン設定温度Tconに応じて、前記床暖房端末27から前記水冷媒熱交換器7の前記水側の流路7aに流入する湯水の目標戻り温度Taを決定する。
【0057】
すなわちまず、前記相関記憶部44E1には、
図4(a)に示すような、室内機リモコン21による前記エアコン設定温度Tconの設定値(設定室温)の複数の温度区分と、各温度区分に対応する床暖房端末27への湯水の温度レベルLsと、の相関が記憶されている。この例では、エアコン設定温度Tconが28℃以上30℃以下の場合は温度レベルLsが9、エアコン設定温度Tconが26℃以上28℃未満(図示では便宜的に「27-26」と記載)の場合は温度レベルLsが8、エアコン設定温度Tconが25℃以上26℃未満(図示では便宜的に「25」と記載。以下同様)の場合は温度レベルLsが7、エアコン設定温度Tconが24℃以上25℃未満の場合は温度レベルLsが6、エアコン設定温度Tconが23℃以上24℃未満の場合は温度レベルLsが5、エアコン設定温度Tconが22℃以上23℃未満の場合は温度レベルLsが4、エアコン設定温度Tconが21℃以上22℃未満の場合は温度レベルLsが3、エアコン設定温度Tconが20℃以上21℃未満の場合は温度レベルLsが2、エアコン設定温度Tconが17℃以上20℃未満の場合は温度レベルLsが1、のように予め定められている。
【0058】
また、前記相関記憶部44E1には、
図4(b)に示すような、床暖房端末27への前記温度レベルLsと、前記目標戻り温度Taと、の相関も記憶されている。この例では、前記温度レベルLsが9の場合は前記目標戻り温度Taが45℃、前記温度レベルLsが8の場合は前記目標戻り温度Taが43℃、前記温度レベルLsが7の場合は前記目標戻り温度Taが41℃、前記温度レベルLsが6の場合は前記目標戻り温度Taが39℃、前記温度レベルLsが5の場合は前記目標戻り温度Taが38℃、前記温度レベルLsが4の場合は前記目標戻り温度Taが36℃、前記温度レベルLsが3の場合は前記目標戻り温度Taが35℃、前記温度レベルLsが2の場合は前記目標戻り温度Taが34℃、前記温度レベルLsが1の場合は前記目標戻り温度Taが32℃、のように予め定められている。
【0059】
前記温度レベル決定部44E2は、前記のように入力されたエアコン設定温度Tconに対し、
図4(a)の相関を適用して、対応する前記温度レベルLsを決定する。なお、この温度レベルLsの決定は、例えば連動運転の開始時において行われる。決定された温度レベルLsに対し、前記目標戻り温度決定部44E5が、前記
図4(b)に示した相関を適用して、対応する前記目標戻り温度Taを決定する。こうして決定された目標戻り温度Taは、前記圧縮機制御部44Bへと出力される。
【0060】
図3に戻り、前記圧縮機制御部44Bには、前記室内温度センサ19からの前記室内温度Trと、前記室内機リモコン21で設定された前記エアコン設定温度Tconと、前記入水温度センサ123により検出された前記入水温度T1と、前記目標戻り温度決定部44E5で決定された目標戻り温度Taと、が入力される。圧縮機制御部44Bには、床暖房端末27の床暖房能力に対応する目標回転数を決定する床暖目標回転数決定部44B1と、室内機17の温風暖房能力に対応する目標回転数を決定するエアコン目標回転数決定部44B2と、が備えられている。
【0061】
前記床暖目標回転数決定部44B1は、前記入水温度センサ123からの前記入水温度T1が、前記床暖房レベル設定部44Eの前記目標戻り温度決定部44E5により入力された目標戻り温度Taとなるような(言い換えればT1とTaとの差が0になるような)、圧縮機5の目標回転数を決定する。この場合の目標戻り温度Taが暖房制御値の一例に相当し、床暖目標回転数決定部44B1が第1圧縮機制御手段に相当している。
【0062】
前記エアコン目標回転数決定部44B2は、前記室内温度Trが、前記エアコン設定温度Tconとなるような(言い換えればTrとTconとの差が0になるような)、圧縮機5の目標回転数を決定する。この場合のエアコン設定温度Tconが暖房制御値の他の例に相当し、エアコン目標回転数決定部44B2が第2圧縮機制御手段に相当している。
【0063】
圧縮機制御部44Bは、前記のようにして四方弁制御部44Aから入力される前記運転情報や、前記エアコン設定温度Tconや、前記室内温度Trに基づき、前記床暖目標回転数決定部44B1で決定された目標回転数、及び、前記エアコン目標回転数決定部44B2で決定された目標回転数のうちいずれか一方、例えばいずれか高いほうの回転数を、最終的な前記圧縮機5の回転数Nc(制御値)として決定し、圧縮機5へと出力する。
【0064】
膨張弁制御部44Cには、前記吐出温度センサ120により検出された前記冷媒吐出温度Toutが入力される。膨張弁制御部44Cは、前記四方弁制御部44Aからの前記運転情報に応じて、前記冷媒吐出温度Toutが所定の一定値となるように、膨張弁8,15の開度をフィードバック制御する(いわゆる吐出制御)。この例では、膨張弁8,15は、互いに同一の開度となるように膨張弁制御部44Cによって制御される。すなわち、前記膨張弁制御部44Cは、前記冷媒吐出温度Toutが低すぎる場合は膨張弁8,15の開度を閉じる方向に制御し、冷媒吐出温度Toutが高すぎる場合は膨張弁8,15の開度を開く方向に制御する。
【0065】
前記ポンプ制御部44Dには、前記室内温度センサ19からの前記室内温度Trと、前記室内機リモコン21で設定された前記エアコン設定温度Tconとが入力される。ポンプ制御部44Dは、前記四方弁制御部44Aからの前記運転情報に応じて、前記循環ポンプ34の目標回転数Npを決定し、これを用いて前記循環ポンプ34の回転数を制御する。
【0066】
二方弁制御部44Fには、前記室内温度センサ19からの前記室内温度Trと、前記室内機リモコン21で設定された前記エアコン設定温度Tconとが入力される。二方弁制御部44Fは、前記四方弁制御部44Aからの前記運転情報に応じて、前記二方弁16の開閉動作を制御する(詳細な制御内容は後述)。
【0067】
なお、前記四方弁制御部44Aによる前記運転態様の決定及び運転情報の生成は、前記室内機制御部20で行っても良い。この場合は、室内機制御部20から、決定された運転態様に対応した前記運転情報が室外機制御部44に入力され、その入力された運転情報に応じて四方弁制御部44A、圧縮機制御部44B、膨張弁制御部44C、ポンプ制御部44D、床暖房レベル設定部44E、二方弁制御部44Fが各種制御を行う。
【0068】
<室内機制御部の機能>
前記室内機制御部20は、前記室外機制御部44と同様、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、演算・制御処理を行う制御部とを備えている。この室内機制御部20の機能的構成を
図5に示す。
図5に示すように、前記室内機制御部20は、室内ファン制御部20Aと、エアコン設定温度変更部20Bと、を機能的に備えている。
【0069】
室内ファン制御部20Aには、前記室内温度センサ19により検出された前記室内温度Trと、前記室内機リモコン21により設定された前記エアコン設定温度Tconと、が入力される。室内ファン制御部20Aは、前記室内ファン18に対し、入力された前記室内温度Tr及びエアコン設定温度Tconに応じた目標回転数N1に対応した駆動制御信号を出力し、これによって室内ファン18の回転数を制御する(詳細な制御内容は後述)。
【0070】
エアコン設定温度変更部20Bには、前記室内機リモコン21により設定された前記エアコン設定温度Tconと、前記HEMS機器200からの節電指示信号及び節電解除信号(詳細は後述)と、が入力される。エアコン設定温度変更部20Bは、前記節電指示信号及び前記節電解除信号に基づき、必要に応じて前記入力されたエアコン設定温度Tconを変更(詳細は後述)し、その変更後のエアコン設定温度Tconを前記室外機制御部44へと出力する。
【0071】
また、上記のほか、室内機制御部20には、前記室外機制御部44を介した、前記床暖房リモコン36からの運転指示に対応する運転情報(床暖房運転の運転開始及び運転停止を指示する前記制御信号S11)と、前記室内機リモコン21からの運転指示(温風暖房運転、冷風冷房運転、連動運転等のうちいずれの運転開始及び運転停止を指示する前記制御信号S1)と、が入力される。また室内機制御部20は、それらに応じて、前記室内温度Trを室外機制御部44へ出力するとともに、前記制御信号S1に対応する運転情報を前記制御信号S11として前記室外機制御部44へ出力する。
【0072】
なお、以上説明した、
図1に示す構成が、本実施形態における暖房装置に相当している。
【0073】
前記したように、本実施形態の空調システム1は、床暖房運転、温風暖房運転、床暖房運転と温風暖房運転との連動運転、冷風冷房運転、等の各種運転を選択的に実行することができる。以下、各運転の詳細を順次説明する。
【0074】
<床暖房運転>
まず、
図6を用いて、床暖房運転について説明する。この
図6に示す床暖房運転時においては、前記四方弁制御部44Aにより、前記四方弁6は、前記配管部11aを前記配管部11bに連通させると共に前記配管部11cを前記配管部11dに連通させる位置に切り替えられる。また前記二方弁制御部44Fにより、二方弁16が閉じ状態に切り替えられる。さらに前記膨張弁制御部44Cにより前記膨張弁8が開き状態かつ前記膨張弁15が全閉状態に制御される。
【0075】
この結果、圧縮機5の吐出側の配管部11a→配管部11b→配管部125b→水冷媒熱交換器7の冷媒側の流路7b→配管部125c(膨張弁8)→配管部11e→空気熱交換器10→配管部11d→圧縮機5の吸入側の配管部11cの冷媒経路が形成される。これにより、凝縮器として機能する水冷媒熱交換器7において、流路7bを流れる冷媒からの熱で流路7aを流れる水が加熱され、床暖房端末27内へ高温水(加熱水)が供給され、空調対象空間の床面を加温する。
【0076】
<温風暖房運転>
次に、
図7を用いて、温風暖房運転について説明する。この
図7に示す温風暖房運転時においては、前記四方弁制御部44Aにより、前記四方弁6は、前記床暖房運転と同じ側に切り替えられる。また前記二方弁制御部44Fにより、二方弁16が開き状態に切り替えられる。さらに前記膨張弁制御部44Cにより前記膨張弁8が全閉状態かつ前記膨張弁15が開き状態に制御される。
【0077】
この結果、圧縮機5の吐出側の配管部11a→配管部11b→配管部126a→室内機17の室内熱交換器14→配管部126b(膨張弁15)→配管部11e→空気熱交換器10→配管部11d→圧縮機5の吸入側の配管部11cの冷媒経路が形成される。これにより、凝縮器として機能する室内熱交換器14において冷媒が室内空気と熱交換して熱を放出し、空調対象空間の空気を加熱する。
【0078】
<連動運転>
室内機17による温風暖房運転と床暖房端末27による床暖房運転とを互いに連動して運転する連動運転を
図8を用いて説明する。
【0079】
なお、本実施形態では、前記床暖房リモコン36によって前記連動運転を行うか否かが設定される。その際には、例えば前記
図2に示した構成の床暖房リモコン36において、ユーザが適宜のスイッチ又はキーを操作を行って前記表示部37に適宜の画面を表示させることで、その画面での操作により前記連動運転の実行又は不実行を確定することができる。このように床暖房リモコン36の操作によって連動運転の実行が確定した状態で、前記室内機リモコン21の前記暖房スイッチ22が押下されることで、前記連動運転が開始される。すなわち、連動運転の実行が確定した状態では、前記室内機リモコン21により、室内機17の運転開始操作を行うことができると共に、床暖房端末27の運転開始操作を行うこともできる。前記連動運転の実行が設定された場合、前記連動運転の開始を実行できるのは室内機リモコン21のみとなり、床暖房リモコン36からは前記連動運転を開始できないようにされる。なお、前記連動運転の実行・不実行の設定を、床暖房リモコン36ではなく、室内機リモコン21により実行できるようにしてもよい。
【0080】
図8において、この連動運転時においても、前記四方弁制御部44Aにより、前記四方弁6は、前記温風暖房運転と同じ側に切り替えられる。また、前記二方弁制御部44Fにより、二方弁16が開き状態に切り替えられる。さらに前記膨張弁制御部44Cにより、前記膨張弁8及び前記膨張弁15は開き状態(詳細には前述の吐出制御)に制御される。
【0081】
この結果、冷媒経路は、圧縮機5の吐出側の配管部11a→配管部11bを経て2つに分かれ、一方は、配管部125b→水冷媒熱交換器7の冷媒側の流路7b→配管部125c(膨張弁8)を経て配管部11eに至り、他方は、配管部126a→室内熱交換器14→配管部126b(膨張弁15)を経て前記配管部11eへと合流する。その後の経路は、配管部11e→空気熱交換器10→配管部11d→圧縮機5の吸入側の配管部11cとなる。
【0082】
これにより、水冷媒熱交換器7における流路7aの水の加熱による床暖房端末27の床暖房運転と、室内熱交換器14からの熱の放出による室内機17の温風暖房運転とが並行して実行される。
なお、冷風冷房運転については別途後述する。
【0083】
<HEMSからの節電指示信号の入力>
ところで、電力管理システムである前記HEMS機器200は、前記したように、当該家屋の電力使用状況や消費電力量の情報を収集可能であり、当該家屋の電力マネジメントを行う。そして、例えば当該家屋の全電気器具により消費する電力が所定の制限値(電力値でも電流値でもよい)に達した場合には、前記HEMS機器200から、この空調システム1に対し節電を要求する節電指示信号が出力される。
【0084】
本実施形態の要部は、前記のようにして節電指示信号が入力されたときに空調システム1において実行される制御内容にある。以下、その詳細を、比較例を用いつつ順を追って説明する。
【0085】
<比較例による温度・電流変化挙動>
まず、前記HEMS機器200からの節電指示信号の入力に応じて前記ヒートポンプ装置(詳細には圧縮機5)の動作制限を行う、従来手法に相当する比較例を
図9を用いて説明する。
【0086】
この比較例では、HEMS節電指示信号の入力時の前記動作制限として、前記圧縮機5の回転数の上限値が設定される。このような制御により前記連動運転が行われる場合の、前記室内機17による温風暖房運転の状態に対応する前記空調対象空間の室温(詳細には前記の室内温度Tr及びエアコン設定温度Tcon)と、前記床暖房端末27による床暖房運転の状態に対応する前記温水の戻り温度(詳細には前記の入水温度T1及び目標戻り温度Ta)と、この家屋全体の全電気器具が消費する電流値と、の時間変動の一例を、それぞれ、
図9(a)、
図9(b)、及び
図9(c)に示す。
【0087】
図9(a)~(c)において、時間t0において連動運転が開始される。このときの前記エアコン設定温度Tconは25[℃]に設定され、前記室内機17による温風暖房運転によって前記室内温度Trは急上昇し、時間t1で前記25[℃]に達する(
図9(a)参照)。またこのとき、前記Tcon=25[℃]の設定に対応して前記目標戻り温度Taは41[℃]に設定されており、前記床暖房端末27による床暖房運転によって前記入水温度T1も急上昇し、時間t1で前記41[℃]に達している(
図9(b)参照)。
一方、上記のような運転によってこの家屋の前記全電気器具の消費する実電流値Amは時間t0の40[A]から緩やかに上昇している。そして、この例では、時間t1の直前あたりから、室内機17及び床暖房端末27以外の電気器具が使用されることで実電流値Amが急激に増大した結果、時間t1において、実電流値AmがHEMS機器200による節電制限電流値(この例では45[A])に到達する(
図9(c)参照)。
【0088】
この結果、HEMS機器200から前記節電指示信号が送信され(節電設定フラグFe=1となる)、空調システム1が受信すると圧縮機5の回転数上限値が設定される。これにより、圧縮機5の回転数が強制的に一気に低下するため、前記室内機17及び前記床暖房端末27の暖房能力も一気に低下し、前記室内温度Trは時間t2で約20[℃]まで低下し(
図9(a)参照)、前記入水温度T1は時間t2で約34.5[℃]まで低下する(
図9(b)参照)。このような前記室内機17及び前記床暖房端末27の挙動によってそれらの消費電力が低下するため、前記実電流値Amは急激に減少し、上記時間t2において、実電流値AmがHEMS機器200による上記節電制限を解除するための制限解除電流値(この例では40[A])まで低下する(
図9(c)参照)。
【0089】
この結果、HEMS機器200から節電解除信号が送信され(節電解除フラグFc=1となる)、空調システム1が受信すると、前記のようにして設定されていた前記圧縮機5の回転数上限値が取り消される。これにより、圧縮機5の回転数が再び上昇するため、前記室内機17及び前記床暖房端末27の暖房能力も再び急上昇し、前記室内温度Trは時間t3で再度約25[℃]まで上昇し(
図9(a)参照)、前記入水温度T1は時間t3で再度41[℃]まで上昇する(
図9(b)参照)。この前記室内機17及び前記床暖房端末27の挙動によってそれらの消費電力が再上昇するため、前記実電流値Amが再度増加し、上記時間t3において、実電流値Amが再度前記節電制限電流値(45[A])に到達する(
図9(c)参照)。
【0090】
この結果、前記同様、HEMS機器200からの前記節電指示信号により圧縮機5の回転数が一気に低下し、時間t4で前記室内温度Trが約20[℃]、前記入水温度T1が約34.5[℃]まで低下する(
図9(a)及び
図9(b)参照)。そして時間t4で実電流値Amが前記制限解除電流値(40[A])まで低下することで再び前記節電解除信号が受信されて前記圧縮機5の回転数上限値が取り消されて圧縮機5の回転数が再上昇し、前記と同様に前記室内温度Tr及び前記入水温度T1が再上昇する。
【0091】
なお、この例では、前記時間t4以降は、前記室内機17及び床暖房端末27以外の電気器具の使用がなくなることで、前記のように圧縮機5の回転数が再上昇し前記室内温度Tr及び前記入水温度T1が上昇しても、実電流値Amは前記節電制限電流値(45[A])以下に収まっている。
【0092】
このように、この比較例の手法によれば、HEMS機器200から節電制限指示→圧縮機5の回転数強制低下で消費電力低減→HEMS機器200から制限解除→圧縮機5がフル回転で消費電力増大→HEMS機器200から再び節電制限指示→再び圧縮機5の回転数が強制低下→・・のような繰り返しが行われる。この結果、前記ヒートポンプ装置全体の不安定動作が生じ、さらにこれによって前記室内機17及び前記床暖房端末27により実現される暖房温度が乱高下(時間t1~t6においてTrは5[℃]の幅で急激に上下動しT1は6.5[℃]の幅で急激に上下動)して不快感をもたらす。
【0093】
<実施形態による温度・電流変化挙動>
本実施形態では、前記比較例の手法における弊害を解消するために、前記HEMS機器200からの前記節電指示信号が入力されたとき、その入力の累積受信回数(何回目の受信であるか。この例におけるカウント累積情報に相当)に応じて、前記暖房制御値としてのエアコン設定温度Tcon及び目標戻り温度Taを可変に制御する。以下、その詳細を、前記
図9に対応する
図10により説明する。
【0094】
本実施形態では、前記エアコン設定温度Tconは、前記節電指示信号の入力が1回目であればその時点の設定からさらに1[℃]下げられ、2回目であればその時点の設定からさらに2[℃]下げられ、3回目であればその時点の設定からさらに3[℃]下げられる。すなわちこの例では、入力回数が1回増える毎に、その下げられる温度幅(暖房制御値の変化割合に相当)が変更される。
また、前記目標戻り温度Taは、前記節電指示信号の入力が1回目であればその時点の設定からさらに2[℃]下げられ、2回目であればその時点の設定からさらに3[℃]下げられ、3回目であればその時点の設定からさらに4[℃]下げられる。すなわち、前記エアコン設定温度Tconと同様、入力回数が1回増える毎に、その下げられる温度幅(暖房制御値の変化割合に相当)が変更される。
【0095】
これらの制御により前記連動運転が行われる場合の、前記室内温度Tr及びエアコン設定温度Tconと、前記入水温度T1及び目標戻り温度Taと、前記実電流値Amと、の時間変動の一例を、それぞれ、
図10(a)、
図10(b)、及び
図10(c)に示す。
【0096】
図10(a)~(c)において、前記
図9と同様、前記エアコン設定温度Tconが25[℃]、前記目標戻り温度Taが41[℃]に設定された状態で、時間t10にて連動運転が開始される。
図9と同様、前記温風暖房運転により前記室内温度Trが急上昇し時間t11で前記25[℃]に達する(
図10(a)参照)とともに、前記床暖房運転によって前記入水温度T1も急上昇し時間t11で前記41[℃]に達する(
図10(b)参照)。
上記の運転によって時間t10の40[A]から緩やかに上昇した前記実電流値Amは、前記
図9と同様、室内機17及び床暖房端末27以外の電気器具の使用で急激に増大し、時間t11において、前記節電制限電流値(45[A])に到達する(
図10(c)参照)。
【0097】
この結果、前記
図9と同様、HEMS機器200から前記節電指示信号が送信される(節電設定フラグFe=1となる)。本実施形態では、空調システム1により前記節電指示信号がまず最初に受信される(=受信1回目)と、前記したようにエアコン設定温度Tconは1[℃]下げられて24[℃]に設定変更され、目標戻り温度Taは2[℃]下げられて39[℃]に設定変更される。これにより、前記室内機17及び前記床暖房端末27の暖房出力が下がり、前記室内温度Trはゆっくりと下がって時間t13で約24[℃]まで低下し(
図10(a)参照)、前記入水温度T1もゆっくりと下がって時間t13で約39.5[℃]まで低下する(
図10(b)参照)。この前記室内機17及び前記床暖房端末27の挙動にてそれらの消費電力が低下するため、前記実電流値Amもやや下がって時間t13より前の時間t12において前記節電制限電流値(45[A])未満になる。しかしながら前記比較例の圧縮機5の回転数上限値設定と異なり急激に消費電力が低下するわけではなく、室内機17及び床暖房端末27以外の電気器具の使用もあって、前記実電流値Amは、約43[A]で底を打った後に再びゆっくりと増加し、上記時間t13において再度前記節電制限電流値(45[A])に到達する(
図10(c)参照)。
【0098】
この結果、前記同様、HEMS機器200からの前記節電指示信号が再度受信される。節電指示信号の受信は2回目となることから、前記したようにエアコン設定温度Tconはさらに2[℃]下げられて22[℃]に設定変更され、目標戻り温度Taはさらに3[℃]下げられて36[℃]に設定変更される。これにより、前記室内機17及び前記床暖房端末27の暖房出力がさらに下がり、前記室内温度Trは再度ゆっくりと下がって時間t15で約22[℃]まで低下し(
図10(a)参照)、前記入水温度T1も再度ゆっくりと下がって時間t15で約36[℃]まで低下する(
図10(b)参照)。この前記室内機17及び前記床暖房端末27の挙動により、前記実電流値Amは、再び下がって時間t15より前の時間t14において前記節電制限電流値(45[A])未満になった後、さらにゆっくりと下がって時間t16において前記制限解除電流値(40[A])まで低下する(
図10(c)参照)。なお、時間t14から時間t16における実電流値Amの減少は、室内機17及び床暖房端末27以外の電気器具の使用が減ることによる影響が含まれていてもよい。
【0099】
この結果、前記
図9と同様、HEMS機器200から節電解除信号が送信され(節電解除フラグFc=1となる)、前記のようにして設定されていた(この時点の)前記エアコン設定温度Tcon及び前記目標戻り温度Taの変更設定がすべてクリアされ、もとの設定に戻る。すなわち、前記エアコン設定温度Tconは前記25[℃]、前記目標戻り温度Taは前記41[℃]に戻される。これにより、前記室内機17及び前記床暖房端末27の暖房出力が上がり、前記室内温度Trは再度上昇して時間t18で約25[℃]に到達してほぼ安定し(
図10(a)参照)、前記入水温度T1も再度上昇して時間t17で約41[℃]に到達してほぼ安定する(
図10(b)参照)。この前記室内機17及び前記床暖房端末27の挙動により、前記実電流値Amは、再び上昇して時間t18より前の時間t17において前記制限解除電流値(40[A])を超えた後、さらにゆっくりと上がって前記時間t18過ぎにおいて前記節電制限電流値(45[A])と前記制限解除電流値(40[A])との間の約43[A]で安定する。
【0100】
図9と
図10とを比べると分かるように、本実施形態の手法では、前記室内温度Trや入水温度T1の乱高下が抑制されており、これによって温風暖房や床暖房における不安定動作を抑制して暖房快適性の低下が最小限に抑制されている。
【0101】
<制御手順>
前記の手法を実現するために、前記連動運転時(又は温風暖房運転又は床暖房運転時も適用可。詳細は後述)において、前記室内機制御部20の前記エアコン設定温度変更部20B及び前記室外機制御部44の前記床暖房レベル設定部44Eによって実行される制御手順を、
図11のフローチャートにより説明する。
【0102】
図11において、前記のようにして連動運転が開始されると、まずステップS10において、前記HEMS機器200からの節電指示信号が受信されたか否かが判定される。節電指示信号が受信されるまでは判定が満たされず(S10:NO)ループ待機し、受信された判定が満たされ(S10:YES)、ステップS20へ移る。なお、このときの前記室内機制御部20の前記エアコン設定温度変更部20B及び前記室外機制御部44の前記床暖房レベル設定部44Eの機能が、各請求項記載の受信手段として機能する。
【0103】
ステップS20では、ステップS10で受信された前記節電指示信号が、1回目の受信であったか否かが判定される。1回目であれば判定が満たされ(S20:YES)、ステップS25へ移る。
【0104】
ステップS25では、前記室内機17の温風暖房に係わる前記エアコン設定温度Tconの設定を(この時点の設定値よりも)1[℃]低下させる。なお、この処理により、前記
図4(a)及び
図4(b)を用いて説明した手法により決定される、前記床暖房端末27の床暖房に係わる前記目標戻り温度Taの設定は(この時点の設定値よりも)2[℃]低下する。
なお、前記連動運転ではなく前記温風暖房運転の単独運転であった場合には前記エアコン設定温度Tconの低下処理のみが行われ、前記床暖房運転の単独運転であった場合には前記目標戻り温度Taの低下処理のみが行われる(以下、ステップS40、ステップS45、及びステップS60においても同様)。
また、前記のようにエアコン設定温度Tconの値から目標戻り温度Taの値が決まるのではなく、別の適宜の手法で目標戻り温度Taが定められる場合には、このステップS25において、前記目標戻り温度Taの設定をこの時点の設定値よりも2[℃]低下させるようにしてもよい(以下、ステップS40、ステップS45、及びステップS60においても同様)。
このステップS25の終了後、後述のステップS50に移行する。
【0105】
一方、前記ステップS20において、節電指示信号の受信が1回目でなかった場合には判定が満たされず(S20:NO)、ステップS30に移る。
【0106】
ステップS30では、前記ステップS10で受信された前記節電指示信号が、2回目の受信であったか否かが判定される。2回目であれば判定が満たされ(S30:YES)、ステップS35へ移る。
【0107】
ステップS35では、前記節電指示信号の2回目の受信における、その前の1回目の受信からの経過時間が、所定時間(例えば数十分等)より大きいか否かが判定される。所定時間より大きければ判定が満たされ(S35:YES)、ステップS40に移行する。なお、このときの判定対象の、複数回の節電指示信号の受信の間の経過時間すなわち受信間隔を判定することは、言い替えれば節電指示信号の受信頻度を判定することになり、当該受信頻度はこの場合のカウント累積情報の一例に相当している。
【0108】
ステップS40では、前記エアコン設定温度Tconの設定を(この時点の設定値よりも)2[℃]低下させる。またこれにより、前記したように、結果として、前記目標戻り温度Taの設定は(この時点の設定値よりも)3[℃]低下する。
なお、前記
図10に示した挙動において時間t13での挙動がこのステップS40での処理に該当しており、すなわち時間t11から時間t13までの経過時間は前記所定時間よりも大きくなっていたものである。
ステップS40の後は、後述のステップS50へ移る。
【0109】
一方、前記ステップS35において、2回目の受信における前記経過時間が前記所定時間以下の場合は判定が満たされず(S35:NO)、ステップS45に移行する。ステップS45では、前記エアコン設定温度Tconの設定を(この時点の設定値よりも)3[℃]低下させる。またこれにより、前記したように、結果として、前記目標戻り温度Taの設定は(この時点の設定値よりも)4[℃]低下する。その後、ステップS50に移行する。
【0110】
なお、上記では、前記ステップS30での判定満たされない場合すなわち節電指示信号の受信が3回目以上である場合は、常にステップS45での処理が行われるが、これに限られない。例えば受信3回目の場合、受信4回目の場合、・・等、受信回数に応じて細かくエアコン設定温度Tconの低下割合を定めても良い。またその場合に、前記ステップS35のように、直前の受信からの間隔(すなわち受信頻度)に応じて処理を変えても良い。
さらに、前記ステップS25、ステップS40、ステップS45のように、受信回数に応じてエアコン設定温度Tconの低下割合を変えるのではなく、一部又は全部の受信回数において互いに同一の温度低下としてもよい。
【0111】
ステップS50では、前記HEMS機器200から節電解除信号が受信されたか否かが判定される。節電解除信号が受信されなければ判定が満たされず(S50:NO)ステップS55へ移る。
【0112】
ステップS55では、前記ステップS10と同様、前記HEMS機器200から節電指示信号が受信されたか否かが判定される。節電指示信号が受信されなければ判定が満たされず(S55:NO)ステップS50に戻って同様の手順が繰り返され、節電指示信号が受信されたら判定が満たされ(S55:YES)、ステップS20に戻って同様の手順が繰り返される。
【0113】
一方、前記ステップS50において、節電解除信号が受信されたら判定が満たされ(S50:YES)ステップS60へ移る。
【0114】
ステップS60では、この時点でカウントしている節電指示信号の受信回数がすべてゼロクリアされるとともに、この時点での前記エアコン設定温度Tconの設定がクリアされ、もともとの設定値(例えば前記
図10の例では25[℃])に戻される。なお、この処理により、前記
図4(a)及び
図4(b)を用いて説明した手法により決定される前記目標戻り温度Taの設定も、もともとの設定値(例えば前記
図10の例では41[℃])に戻される。その後、前記ステップS10に戻って同様の手順が繰り返される。
【0115】
なお、
図11に示す各手順を実行する、前記エアコン設定温度変更部20B及び前記床暖房レベル設定部44Eが、各請求項記載の暖房制御値設定手段として機能する。
【0116】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態においては、HEMS機器200から受信される前記節電指示信号に応じ、その受信されるときのカウント累積情報(前記の例では受信回数又は受信頻度)に応じて、暖房制御値(前記の例ではエアコン設定温度Tcon及び目標戻り温度Ta)が可変に設定される。これにより、前記節電指示信号の受信回数や受信頻度に応じて室外機4の能力を適宜に抑制し、その消費電力を低減することができる。
この結果、前記節電指示信号の入力に応じ前記ヒートポンプ装置の動作を制限する比較例(
図9参照)のように、HEMS機器200から節電制限指示→圧縮機5の回転数強制低下で消費電力低減→HEMS機器200から制限解除→圧縮機5がフル回転で消費電力増大→HEMS機器200から再び節電制限指示→再び圧縮機5の回転数が強制低下→・・のような繰り返しによるヒートポンプ装置全体の不安定動作が生じるのを回避し、安定的に消費電力の低減を図ることができる。また前記不安定動作により不快感がもたらされるのを防止し、暖房時の快適性の低下を最小限にとどめることができる。
【0117】
また、本実施形態では特に、暖房制御値(前記の例ではエアコン設定温度Tcon及び目標戻り温度Ta)の変化割合が、カウント累積情報(前記の例では受信回数又は受信頻度)の累積度合いに応じて変化する(ステップS25、ステップS40、ステップS45参照)。これにより、例えば前記ステップS25で節電指示信号の1回目の受信でエアコン設定温度Tconを1[℃]変化させた後、2回目の受信では前記ステップS40でエアコン設定温度Tconをさらに大きく2[℃]変化させる等、きめ細かい制御を実現することができる。この結果、室内機17や床暖房端末27の運転に係る消費電力を確実に低減することができる。
【0118】
また、本実施形態では特に、前記カウント累積情報として、前記HEMS機器200からの前記節電指示信号の累積受信回数が含まれる。このように、前記節電指示信号の受信回数に応じて前記室内機17や床暖房端末27における放熱能力を抑制(室外機4の能力を抑制)して、室内機17や床暖房端末27の運転に係る消費電力を低減することができる。
【0119】
また、本実施形態では特に、前記カウント累積情報として、前記HEMS機器200からの前記節電指示信号の受信頻度が含まれる。このように、さらに前記節電指示信号の受信頻度に応じて前記放熱能力を抑制(室外機4の能力を抑制)することで、室内機17や床暖房端末27の運転に係る消費電力を低減することができる。
【0120】
また、本実施形態では特に、床暖房端末27へ温水を供給する加熱循環回路33の入水温度T1が前記目標戻り温度Taとなるように圧縮機5が制御される構成において、前記目標戻り温度Taが、節電指示信号のカウント累積情報(前記の例では受信回数又は受信頻度)に応じて可変に設定される。これにより、
図11を用いて前述したように前記節電指示信号の受信回数や受信頻度等に応じて目標戻り温度Taを低くする、より詳細には、前記節電指示信号の受信回数が多くなるほど、目標戻り温度Taの下げ幅を大きくすることで床暖房能力を抑制し、床暖房端末27の運転に係る消費電力を低減することができる。
【0121】
また、本実施形態では特に、室内温度Trがエアコン設定温度Tconとなるように圧縮機5が制御される構成において、前記エアコン設定温度Tconが、節電指示信号のカウント累積情報(前記の例では受信回数又は受信頻度)に応じて可変に設定される。これにより、
図11を用いて前述したように例えば前記節電指示信号の受信回数や受信頻度等に応じてエアコン設定温度Tconを低くすることで室内暖房能力を抑制し、室内機17の運転に係る消費電力を低減することができる。
【0122】
<変形例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0123】
(1)冷風冷房運転への適用
前記した、HEMS機器200からの節電指示信号の入力時の制御態様を、冷風冷房運転時に適用することも可能である。そのような変形例を以下説明する。なお、上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する。
【0124】
<冷風冷房運転>
図12を用いて、冷風冷房運転について説明する。この
図12に示す冷風冷房運転時においては、前記四方弁制御部44Aにより、前記四方弁6は、前記配管部11aを前記配管部11dに連通させると共に前記配管部11cを前記配管部11bに連通させる位置に切り替えられる。また前記二方弁制御部44Fにより、二方弁16が開き状態に切り替えられる。さらに前記膨張弁制御部44Cにより前記膨張弁8が全閉状態かつ前記膨張弁15が開き状態に制御される。
【0125】
この結果、圧縮機5の吐出側の配管部11a→配管部11d→空気熱交換器10→配管部11e→配管部126b(膨張弁15)→室内機17の室内熱交換器14→配管部126a→配管部11b→圧縮機5の吸入側の配管部11cの冷媒経路が形成される。これにより、蒸発器として機能する室内熱交換器14において冷媒が室内空気と熱交換して熱を吸収し、空調対象空間の空気を冷却する。
【0126】
なお、本変形例においては、前記
図1に示す構成が冷房装置に相当している。
【0127】
また、本変形例においても、前記実施形態と同様、前記
図3に示した室外機制御部44の構成において、前記圧縮機制御部44Bの前記エアコン目標回転数決定部44B2が、前記室内温度Trが、前記エアコン設定温度Tconとなるような(言い換えればTrとTconとの差が0になるような)、圧縮機5の目標回転数を決定する。この場合のエアコン設定温度Tconが冷房制御値に相当し、エアコン目標回転数決定部44B2が第4圧縮機制御手段に相当している。
【0128】
<冷風冷房運転時の温度・電流変化挙動>
本変形例においては、前記実施形態と同様、前記HEMS機器200からの前記節電指示信号が入力されたとき、その入力の累積受信回数(何回目の受信であるか。この例におけるカウント累積情報に相当)に応じて、冷房制御値としてのエアコン設定温度Tconを可変に制御する。以下、その詳細を、前記
図10に対応する
図13により説明する。
【0129】
本変形例では、前記エアコン設定温度Tconは、前記節電指示信号の入力が1回目であればその時点の設定からさらに1[℃]上げられ、2回目であればその時点の設定からさらに2[℃]上げられ、3回目であればその時点の設定からさらに3[℃]上げられる。すなわちこの例では、入力回数が1回増える毎に、その上げられる温度幅(冷房制御値の変化割合に相当)が変更される。
【0130】
この制御により前記冷風冷房運転が行われる場合の、前記室内温度Tr及びエアコン設定温度Tconと、前記実電流値Amと、の時間変動の一例を、それぞれ、
図13(a)及び
図13(b)に示す。
【0131】
図13(a)(b)において、この例では前記エアコン設定温度Tconが20[℃]に設定された状態で、時間t20にて冷風冷房運転が開始される。前記室内機17による冷風冷房暖房運転によって前記室内温度Trは急降下し時間t21で前記20[℃]に達する(
図13(a)参照)。
一方、上記のような運転によってこの家屋の前記全電気器具の消費する実電流値Amは時間20の40[A]から緩やかに上昇している。そして、この例では、時間t21の直前あたりから、室内機17以外の電気器具が使用されることで実電流値Amが急激に増大した結果、時間t21において、実電流値AmがHEMS機器200による節電制限電流値(この例では45[A])に到達する(
図13(b)参照)。
【0132】
この結果、HEMS機器200から前記節電指示信号が送信される(節電設定フラグFe=1となる)。本変形例では、空調システム1により前記節電指示信号がまず最初に受信される(=受信1回目)と、前記したようにエアコン設定温度Tconは1[℃]上げられて21[℃]に設定変更される。これにより、前記室内機17の冷房出力が下がり、前記室内温度Trはゆっくりと上がって時間t23で約21[℃]まで上昇する(
図13(a)参照)。この前記室内機17の挙動にてその消費電力が低下するため、前記実電流値Amもやや下がって時間t23より前の時間t22において前記節電制限電流値(45[A])未満になる。しかしながら急激に消費電力が低下するわけではなく、室内機17以外の電気器具の使用もあって、前記実電流値Amは、約43[A]で底を打った後に再びゆっくりと増加し、上記時間t23において再度前記節電制限電流値(45[A])に到達する(
図13(b)参照)。
【0133】
この結果、前記同様、HEMS機器200からの前記節電指示信号が再度受信される。節電指示信号の受信は2回目となることから、前記したようにエアコン設定温度Tconはさらに2[℃]上げられて23[℃]に設定変更される。これにより、前記室内機17の冷房出力がさらに下がり、前記室内温度Trは再度ゆっくりと上がって時間t25で約23[℃]まで上昇する(
図13(a)参照)。この前記室内機17の挙動により、前記実電流値Amは、再び下がって時間t25より前の時間t24において前記節電制限電流値(45[A])未満になった後、さらにゆっくりと下がって時間t26において前記制限解除電流値(40[A])まで低下する(
図13(b)参照)。なお、時間t24から時間t26における実電流値Amの減少は、室内機17以外の電気器具の使用が減ることによる影響が含まれていてもよい。
【0134】
この結果、HEMS機器200から節電解除信号が送信され(節電解除フラグFc=1となる)、空調システム1が受信すると、前記のようにして設定されていた(この時点の)前記エアコン設定温度Tconの変更設定がすべてクリアされ、もとの設定に戻る。すなわち、前記エアコン設定温度Tconは前記20[℃]に戻される。これにより、前記室内機17の冷房出力が上がり、前記室内温度Trは再度低下して時間t28で約20.5[℃]に到達してほぼ安定する(
図13(a)参照)。この前記室内機17の挙動により、前記実電流値Amは、再び上昇して時間t28より前の時間t27において前記制限解除電流値(40[A])を超えた後、さらにゆっくりと上がって前記時間t29において前記節電制限電流値(45[A])と前記制限解除電流値(40[A])との間の約43[A]で安定する。
【0135】
図13において、前記
図10と同様、冷風冷房運転を行う本変形例においても、前記室内温度Trの乱高下が抑制されており、これによって冷風冷房における不安定動作を抑制して冷房快適性の低下が最小限に抑制されている。
【0136】
<制御手順>
前記の手法を実現するために、前記冷風冷房運転時において、前記室内機制御部20の前記エアコン設定温度変更部20B等によって実行される制御手順を、
図14のフローチャートにより説明する。
【0137】
図14において、このフローチャートでは、前記
図11のフローチャートにおけるステップS25、ステップS40、ステップS45に代えて、ステップS25′、ステップS40′、ステップS45′が設けられている点が異なる。すなわち、ステップS25′では、前記室内機17の冷風冷房に係わる前記エアコン設定温度Tconの設定を(この時点の設定値よりも)1[℃]上昇させる。ステップS40′では、前記エアコン設定温度Tconの設定を(この時点の設定値よりも)2[℃]上昇させる。ステップS45′では、前記エアコン設定温度Tconの設定を(この時点の設定値よりも)3[℃]上昇させる。
上記以外の処理内容は、前記
図11のフローと同様であり、説明を省略する。
【0138】
なお、
図14に示す各手順を実行する、前記エアコン設定温度変更部20Bが、各請求項記載の冷房制御値設定手段として機能する。
【0139】
<変形例の効果>
以上説明したように、本変形例においては、HEMS機器200から受信される前記節電指示信号に応じ、その受信されるときのカウント累積情報(前記の例では受信回数又は受信頻度)に応じて、冷房制御値(前記の例ではエアコン設定温度Tcon)が可変に設定される。これにより、前記節電指示信号の受信回数や受信頻度に応じて室外機4の能力を適宜に抑制し、その消費電力を低減することができる。
この結果、前記節電指示信号の入力に応じ前記ヒートポンプ装置の動作を制限する比較例(
図9参照)のように、HEMS機器200から節電制限指示→圧縮機5の回転数強制低下で消費電力低減→HEMS機器200から制限解除→圧縮機5がフル回転で消費電力増大→HEMS機器200から再び節電制限指示→再び圧縮機5の回転数が強制低下→・・のような繰り返しによるヒートポンプ装置全体の不安定動作が生じるのを回避し、安定的に消費電力の低減を図ることができる。また前記不安定動作により不快感がもたらされるのを防止し、冷房時の快適性の低下を最小限にとどめることができる。
【0140】
また、本変形例では特に、冷房制御値(前記の例ではエアコン設定温度Tcon)の変化割合が、カウント累積情報(前記の例では受信回数又は受信頻度)の累積度合いに応じて変化する(ステップS25′、ステップS40′、ステップS45′参照)。これにより、例えば前記ステップS25′で節電指示信号の1回目の受信でエアコン設定温度Tconを1[℃]変化させた後、2回目の受信では前記ステップS40でエアコン設定温度Tconをさらに大きく2[℃]変化させる等、きめ細かい制御を実現することができる。この結果、室内機17の運転に係る消費電力を確実に低減することができる。
【0141】
また、本変形例では特に、前記カウント累積情報として、前記HEMS機器200からの前記節電指示信号の累積受信回数が含まれる。このように、前記節電指示信号の受信回数に応じて前記室内機17における吸熱能力を抑制(室外機4の能力を抑制)して、室内機17の運転に係る消費電力を低減することができる。
【0142】
また、本変形例では特に、前記カウント累積情報として、前記HEMS機器200からの前記節電指示信号の受信頻度が含まれる(
図14のステップS35等参照)。このように、さらに前記節電指示信号の受信頻度に応じて前記吸熱能力を抑制(室外機4の能力を抑制)することで、室内機17の運転に係る消費電力を低減することができる。
【0143】
また、本変形例では特に、室内温度Trがエアコン設定温度Tconとなるように圧縮機5が制御される構成において、前記エアコン設定温度Tconが、節電指示信号のカウント累積情報(前記の例では受信回数又は受信頻度)に応じて可変に設定される。これにより、
図14を用いて前述したように例えば前記節電指示信号の受信回数や受信頻度等に応じてエアコン設定温度Tconを高くすることで室内冷房能力を抑制し、室内機17の運転に係る消費電力を低減することができる。
【0144】
(2)その他
なお、以上においては、前記水冷媒熱交換器7の入口側(流入側)の前記戻り管29(詳細には個別戻り管29b)に前記入水温度センサ123を設けて、検出した温水の前記入水温度T1(戻り温度)に応じて、前記圧縮機5の回転数を制御する、いわゆる戻り温度制御を行ったが、これに限られない。すなわち、前記水冷媒熱交換器7の出口側(流出側)の前記往き管28に温度センサを設けて、検出した温水の往き温度に応じて、その往き温度が所定の目標往き温度となるように前記圧縮機5の回転数を制御する、いわゆる往き温度制御を行ってもよい。この場合、当該目標往き温度が前記暖房制御値の例となる。
【0145】
また、上記においては、暖房端末として床暖房端末27及び室内機17を例に取り、冷房端末として室内機17を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、暖房端末として、冷温水パネル、ファンコイルユニット、暖房パネル、ラジエータ、コンベクター等の放熱機能を持つ他の端末を用いたり、冷房端末として、冷温水パネル、ファンコイルユニット等の吸熱機能を持つ他の端末を用いても良い。
【0146】
これら冷温水パネルやファンコイルユニットを冷房端末として用いる場合、前記
図12の床暖房端末27に代えてそれら冷温水パネルやファンコイルユニットが設けられることとなる。そしてこの場合、圧縮機5の吐出側の配管部11a→配管部11d→空気熱交換器10→配管部11e→配管部125c(膨張弁8)→水冷媒熱交換器7の冷媒側の流路7b→配管部125b→配管部11b→圧縮機5の吸入側の配管部11cの冷媒経路が形成される。これにより、蒸発器として機能する水冷媒熱交換器7において、流路7bを流れる冷媒により流路7aを流れる水からの吸熱が行われ、冷温水パネルやファンコイルユニット内へ低温の冷水(不凍液等を含む水以外の循環液であってもよい。以下同様)が供給され、空調対象空間が冷却される。
【0147】
またこのとき、前記水冷媒熱交換器7の入口側(流入側)の前記戻り管29(詳細には個別戻り管29b)に設けた前記入水温度センサ123が検出した冷水の前記入水温度T1(戻り温度)が所定の目標戻り温度となるように前記圧縮機5の回転数を制御する、いわゆる戻り温度制御が行われる。この場合、当該目標戻り温度が前記冷房制御値の例となり、上記の制御を行う圧縮機制御部44Bは第3圧縮機制御手段として機能する。あるいは、前記水冷媒熱交換器7の出口側(流出側)の前記往き管28に温度センサを設けて、検出した冷水の往き温度に応じて、その往き温度が所定の目標往き温度となるように前記圧縮機5の回転数を制御する、いわゆる往き温度制御を行ってもよい。この場合、当該目標往き温度が前記冷房制御値の例となる。
【0148】
また、上記においては、熱源部の例として、熱源側熱交換器としての空気熱交換器10に冷媒を通じる一方で外気を送風する室外ファン9を有し、熱源としての外気と前記冷媒とが熱交換される、空気熱源式のヒートポンプである前記室外機4を使用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、熱源機を、熱源側熱交換器に対して水や不凍液が供給されそれらの液体と冷媒とが当該熱源側熱交換器において熱交換する構成のものとしてもよい。
また、地中又は比較的大容量の水源中に熱源側熱交換器を設け、この熱源側熱交換器で前記地中又は前記水源と冷媒とが熱交換する構成のものとしてもよい。さらには、前記地中又は前記水源の熱を用いたヒートポンプ回路と空気熱を用いた別のヒートポンプ回路とを備えた複合熱源型の構成としてもよい。
さらには、熱源側熱交換器において前記冷媒と熱交換できるものであれば、前記液体や前記外気や前記水源に代えて、それ以外のもの(例えば、発煙、排煙、各種高温ガス等を含む気体や、熱砂、塵埃、各種粒子等を含む流動固体)を熱源側熱交換器に通じたり、太陽光、反射光、その他輻射等による熱を熱源側熱交換器に供給して用いる構成としても良い。
【0149】
また、電気式の熱源部を備える暖房装置の別の例として、熱源部としての電熱ヒータを備えるとともにその電熱ヒータの能力を(例えば室温設定により)変更可能な電気ストーブに対し、本発明による上記手法を適用してもよい。この場合も、前記と同様の効果を得る。
【0150】
また、以上において、
図3、
図5等の各図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0151】
また、
図11、
図14に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0152】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0153】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0154】
5 圧縮機(ヒートポンプ装置)
7 水冷媒熱交換器(ヒートポンプ装置)
10 空気熱交換器(ヒートポンプ装置)
14 室内熱交換器
17 室内機(暖房端末、冷房端末)
20B エアコン設定温度変更部(暖房制御値設定手段;冷房制御値設定手段)
27 床暖房端末(暖房端末)
44 圧縮機制御部(熱源制御手段)
44B1 床暖目標回転数決定部(第1圧縮機制御手段;第3圧縮機制御手段)
44B2 エアコン目標回転数決定部(第2圧縮機制御手段;第4圧縮機制御手段)
44E 床暖房レベル設定部(暖房制御値設定手段)
200 HEMS機器(電力管理システム)
Ta 目標戻り温度(暖房制御値;冷房制御値)
Tcon エアコン設定温度(暖房制御値;冷房制御値)