(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】フェルール、ファイバ付きフェルール及びファイバ付きフェルールの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/32 20060101AFI20221221BHJP
G02B 6/36 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2019097646
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018219496
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中間 章浩
(72)【発明者】
【氏名】朝田 大貴
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-092152(JP,A)
【文献】特開2003-215388(JP,A)
【文献】特開2004-045646(JP,A)
【文献】特表2014-521996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0026882(US,A1)
【文献】特開2016-184105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光ファイバの端部と、前記第1の光ファイバに対して並んで配置される第2の光ファイバの端部とを保持するフェルールであって、
前記第1の光ファイバの端面を突き当てるための第1の突き当て面と、
前記第2の光ファイバの端面を突き当てるための第2の突き当て面と、
前記第1の光ファイバの端面に対応して配置される第1のレンズ部と、
前記第2の光ファイバの端面に対応して配置される第2のレンズ部と
を有し、
前記第1の突き当て面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、
前記第2の突き当て面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し
、
前記第1の突き当て面と
前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面との間の角度は、前記第2の突き当て面と
前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面との角度と一致しており、
前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対する前記第1の突き当て面の傾斜方向は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対する前記第2の突き当て面の傾斜方向に対して反対である
ことを特徴とするフェルール。
【請求項2】
請求項1に記載のフェルールであって、
前記第1の光ファイバの光軸と前記第2の光ファイバの光軸との間の距離と、前記第1のレンズ部の中心と前記第2のレンズ部の中心との間の距離とが等しい
ことを特徴とするフェルール。
【請求項3】
第1の光ファイバと、
前記第1の光ファイバに対して並んで配置される第2の光ファイバと、
前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバの端部を保持するフェルールと
を有するファイバ付きフェルールであって、
前記フェルールは、
前記第1の光ファイバの端面を突き当てるための第1の突き当て面と、
前記第2の光ファイバの端面を突き当てるための第2の突き当て面と、
前記第1の光ファイバの端面に対応して配置される第1のレンズ部と、
前記第2の光ファイバの端面に対応して配置される第2のレンズ部と
を備え、
前記第1の突き当て面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、
前記第2の突き当て面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し
、
前記第1の突き当て面と
前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面との間の角度は、前記第2の突き当て面と
前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面との角度と一致しており、
前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対する前記第1の突き当て面の傾斜方向は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対する前記第2の突き当て面の傾斜方向に対して反対である
ことを特徴とするファイバ付きフェルール。
【請求項4】
請求項3に記載のファイバ付きフェルールであって、
前記第1の光ファイバの端面から前記第1のレンズ部までの距離と、前記第2の光ファイバの端面から前記第2のレンズ部までの距離とが等しい
ことを特徴とするファイバ付きフェルール。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のファイバ付きフェルールであって、
前記第1の光ファイバの端面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜するように形成されると共に、前記第1の突き当て面に接し、
前記第2の光ファイバの端面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜するように形成されると共に、前記第2の突き当て面に接する
ことを特徴とするファイバ付きフェルール。
【請求項6】
第1の光ファイバと、前記第1の光ファイバに対して並んで配置される第2の光ファイバと、前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバの端部を保持するフェルールとを有するファイバ付きフェルールの製造方法であって、
前記第1の光ファイバの端面を突き当てるための第1の突き当て面と、
前記第2の光ファイバの端面を突き当てるための第2の突き当て面と、
前記第1の光ファイバの端面に対応して配置される第1のレンズ部と、
前記第2の光ファイバの端面に対応して配置される第2のレンズ部と
を備え、
前記第1の突き当て面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、
前記第2の突き当て面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し
、
前記第1の突き当て面と
前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面との間の角度は、前記第2の突き当て面と
前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面との角度と一致しており、
前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対する前記第1の突き当て面の傾斜方向は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対する前記第2の突き当て面の傾斜方向に対して反対であるフェルールを準備すること、
前記第1の突き当て面に、前記第1の光ファイバの端面を突き当てること、
前記第2の突き当て面に、前記第2の光ファイバの端面を突き当てること
を特徴とするファイバ付きフェルールの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のファイバ付きフェルールの製造方法であって、
前記第1の光ファイバの端面を、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜するように該端面をカットすること、
前記第2の光ファイバの端面を、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜するように該端面をカットすること
を特徴とするファイバ付きフェルールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルール、ファイバ付きフェルール及びファイバ付きフェルールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
端面にレンズを有するフェルール同士が対向することによって、それぞれのフェルールに保持された光ファイバ同士を光学的に接続する、いわゆるレンズコネクタの技術が知られている。このようなレンズコネクタとして、例えば、特許文献1には、2本の光ファイバの端部を保持するフェルールを有するレンズコネクタが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されたレンズコネクタには、2本の光ファイバの端面を突き当てるための突き当て面が設けられている。ここで、光ファイバ中を伝送してきた光信号がこの突き当て面において反射し、再び光ファイバ中に戻ることがある。このため、特許文献1に記載されたレンズコネクタでは、光ファイバの光軸に垂直な面に対して突き当て面を傾斜させ、光信号を突き当て面において所定の角度で反射させている(特許文献1の
図9B参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の
図9Bに記載されている傾斜した突き当て面に、仮に2本の光ファイバの端面を突き当てると、一方の光ファイバの端面の光軸方向の位置と、他方の光ファイバの端面の光軸方向の位置とが異なってしまう。これにより、一方の光ファイバに入出射する光信号の光ファイバの端面からレンズまでの光路長と、他方の光ファイバに入出射する光信号の光ファイバの端面からレンズまでの光路長とが異なってしまう。そこで、特許文献1の
図9Cに記載されているように、突き当て面に段差を設けることで、双方の光ファイバに入出射する光信号の光ファイバの端面からレンズまでの光路長を揃えることができる。しかし、これによりフェルールの構造が複雑になってしまうことが問題となっていた。
【0006】
本発明は、2本の光ファイバの端部を保持するレンズコネクタにおいて、2本の光ファイバに係る光ファイバの端面からレンズまでの光路長差を抑制しつつ、フェルールの構造を簡略化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態は、第1の光ファイバの端部と、前記第1の光ファイバに対して並んで配置される第2の光ファイバの端部とを保持するフェルールであって、前記第1の光ファイバの端面を突き当てるための第1の突き当て面と、前記第2の光ファイバの端面を突き当てるための第2の突き当て面と、前記第1の光ファイバの端面に対応して配置される第1のレンズ部と、前記第2の光ファイバの端面に対応して配置される第2のレンズ部とを有し、前記第1の突き当て面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、前記第2の突き当て面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、前記第1の突き当て面と前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面との間の角度は、前記第2の突き当て面と前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面との角度と一致しており、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対する前記第1の突き当て面の傾斜方向は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対する前記第2の突き当て面の傾斜方向に対して反対であることを特徴とするフェルールである。
【0008】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の幾つかの実施形態によれば、2本の光ファイバの端部を保持するレンズコネクタにおいて、2本の光ファイバに係る光ファイバの端面からレンズまでの光路長差を抑制しつつ、フェルールの構造を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、本実施形態のフェルール構造体10の全体斜視図である。
図1Bは、本実施形態のフェルール構造体10の分解斜視図である。
【
図2】
図2Aは、下側から見た本実施形態のフェルール構造体10の分解斜視図である。
図2Bは、本実施形態のファイバ付きフェルール構造体10の断面図である。
【
図3】
図3Aは、突き当て面36周辺の様子を示す説明図である。
図3Bは、本実施形態のフェルール構造体10を有する光コネクタ同士を接続する様子を示す説明図である。
【
図4】
図4は、対向するフェルール構造体10同士において伝送される光信号の様子を示す説明図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のファイバ付きフェルール構造体10の製造方法(組み立て手順)のフロー図である。
【
図6】
図6Aは、第1比較例のファイバ付きフェルール構造体10の突き当て面36周辺の様子を示す説明図である。
図6Bは、第2比較例のファイバ付きフェルール構造体10の突き当て面36周辺の様子を示す説明図である。
【
図7】
図7は、ファイバ付きフェルール構造体10の別の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
第1の光ファイバの端部と、前記第1の光ファイバに対して並んで配置される第2の光ファイバの端部とを保持するフェルールであって、前記第1の光ファイバの端面を突き当てるための第1の突き当て面と、前記第2の光ファイバの端面を突き当てるための第2の突き当て面と、前記第1の光ファイバの端面に対応して配置される第1のレンズ部と、前記第2の光ファイバの端面に対応して配置される第2のレンズ部とを有し、前記第1の突き当て面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、前記第2の突き当て面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、ある面に対して前記第1の光ファイバの光軸と、前記第2の光ファイバの光軸とが対称に配置されるような前記ある面を対称面としたときに、前記第1の突き当て面と前記第2の突き当て面とが前記対称面において対称であることを特徴とするフェルールが明らかとなる。このようなフェルールによれば、2本の光ファイバの端部を保持するレンズコネクタにおいて、2本の光ファイバに係る光ファイバの端面からレンズまでの光路長差を抑制しつつ、フェルールの構造を簡略化することができる。
【0013】
前記第1の光ファイバの光軸と前記第2の光ファイバの光軸との間の距離と、前記第1のレンズ部の中心と前記第2のレンズ部の中心との間の距離とが等しいことが望ましい。これにより、2本の光ファイバの端部を保持するレンズコネクタにおいて、2本の光ファイバに係る光ファイバの端面からレンズまでの光路長差を抑制しつつ、フェルールの構造を簡略化することができる。
【0014】
第1の光ファイバと、前記第1の光ファイバに対して並んで配置される第2の光ファイバと、前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバの端部を保持するフェルールとを有するファイバ付きフェルールであって、前記フェルールは、前記第1の光ファイバの端面を突き当てるための第1の突き当て面と、前記第2の光ファイバの端面を突き当てるための第2の突き当て面と、前記第1の光ファイバの端面に対応して配置される第1のレンズ部と、前記第2の光ファイバの端面に対応して配置される第2のレンズ部とを備え、前記第1の突き当て面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、前記第2の突き当て面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、ある面に対して前記第1の光ファイバの光軸と、前記第2の光ファイバの光軸とが対称に配置されるような前記面を対称面としたときに、前記第1の突き当て面と前記第2の突き当て面とが前記対称面において対称であることを特徴とするファイバ付きフェルールが明らかとなる。このようなファイバ付きフェルールによれば、2本の光ファイバの端部を保持するレンズコネクタにおいて、2本の光ファイバに係る光ファイバの端面からレンズまでの光路長差を抑制しつつ、フェルールの構造を簡略化することができる。
【0015】
前記第1の光ファイバの端面から前記第1のレンズ部までの距離と、前記第2の光ファイバの端面から前記第2のレンズ部までの距離とが等しいことが望ましい。これにより、第1の光ファイバに入出射する光信号の第1の光ファイバの端面から第1のレンズ部のレンズ面までの光路長と、第2の光ファイバに入出射する光信号の第2の光ファイバの端面から第2のレンズ部のレンズ面までの光路長とが異なってしまうことを抑制することができる。
【0016】
前記第1の光ファイバの端面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜するように形成されると共に、前記第1の突き当て面に接し、前記第2の光ファイバの端面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜するように形成されると共に、前記第2の突き当て面に接することが望ましい。これにより、光ファイバの端面と突き当て面との隙間を小さくすることができる。
【0017】
第1の光ファイバと、前記第1の光ファイバに対して並んで配置される第2の光ファイバと、前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバの端部を保持するフェルールとを有するファイバ付きフェルールの製造方法であって、前記第1の光ファイバの端面を突き当てるための第1の突き当て面と、前記第2の光ファイバの端面を突き当てるための第2の突き当て面と、前記第1の光ファイバの端面に対応して配置される第1のレンズ部と、前記第2の光ファイバの端面に対応して配置される第2のレンズ部とを備え、前記第1の突き当て面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、前記第2の突き当て面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、ある面に対して前記第1の光ファイバの光軸と、前記第2の光ファイバの光軸とが対称に配置されるような前記面を対称面としたときに、前記第1の突き当て面と前記第2の突き当て面とが前記対称面において対称であるフェルールを準備すること、前記第1の突き当て面に、前記第1の光ファイバの端面を突き当てること、前記第2の突き当て面に、前記第2の光ファイバの端面を突き当てることを特徴とするファイバ付きフェルールの製造方法が明らかとなる。このようなファイバ付きフェルールの製造方法によれば、2本の光ファイバの端部を保持するレンズコネクタにおいて、2本の光ファイバに係る光ファイバの端面からレンズまでの光路長差を抑制しつつ、フェルールの構造を簡略化することができる。
【0018】
前記第1の光ファイバの端面を、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜するように該端面をカットすること、前記第2の光ファイバの端面を、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜するように該端面をカットすることが望ましい。これにより、光ファイバの端面と突き当て面との隙間を小さくすることができる。
【0019】
第1の光ファイバの端部と、前記第1の光ファイバに対して並んで配置される第2の光ファイバの端部とを保持するフェルールであって、前記第1の光ファイバの端面を突き当てるための第1の突き当て面と、前記第2の光ファイバの端面を突き当てるための第2の突き当て面と、前記第1の光ファイバの端面に対応して配置される第1のレンズ部と、前記第2の光ファイバの端面に対応して配置される第2のレンズ部とを有し、前記第1の突き当て面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、前記第2の突き当て面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、前記第1の突き当て面と前記第2の突き当て面とが対称になるように形成されていることを特徴とするフェルールが明らかとなる。このようなフェルールによれば、2本の光ファイバの端部を保持するレンズコネクタにおいて、2本の光ファイバに係る光ファイバの端面からレンズまでの光路長差を抑制しつつ、フェルールの構造を簡略化することができる。
【0020】
第1の光ファイバと、前記第1の光ファイバに対して並んで配置される第2の光ファイバと、前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバの端部を保持するフェルールとを有するファイバ付きフェルールであって、前記フェルールは、前記第1の光ファイバの端面を突き当てるための第1の突き当て面と、前記第2の光ファイバの端面を突き当てるための第2の突き当て面と、前記第1の光ファイバの端面に対応して配置される第1のレンズ部と、前記第2の光ファイバの端面に対応して配置される第2のレンズ部とを備え、前記第1の突き当て面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、前記第2の突き当て面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、前記第1の突き当て面と前記第2の突き当て面とが対称になるように形成されていることを特徴とするファイバ付きフェルールが明らかとなる。このようなファイバ付きフェルールによれば、2本の光ファイバの端部を保持するレンズコネクタにおいて、2本の光ファイバに係る光ファイバの端面からレンズまでの光路長差を抑制しつつ、フェルールの構造を簡略化することができる。
【0021】
第1の光ファイバと、前記第1の光ファイバに対して並んで配置される第2の光ファイバと、前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバの端部を保持するフェルールとを有するファイバ付きフェルールの製造方法であって、前記第1の光ファイバの端面を突き当てるための第1の突き当て面と、前記第2の光ファイバの端面を突き当てるための第2の突き当て面と、前記第1の光ファイバの端面に対応して配置される第1のレンズ部と、前記第2の光ファイバの端面に対応して配置される第2のレンズ部とを備え、前記第1の突き当て面は、前記第1の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、前記第2の突き当て面は、前記第2の光ファイバの光軸に垂直な面に対して傾斜し、前記第1の突き当て面と前記第2の突き当て面とが対称になるように形成されているフェルールを準備すること、前記第1の突き当て面に、前記第1の光ファイバの端面を突き当てること、前記第2の突き当て面に、前記第2の光ファイバの端面を突き当てることを特徴とするファイバ付きフェルールの製造方法が明らかとなる。このようなファイバ付きフェルールの製造方法によれば、2本の光ファイバの端部を保持するレンズコネクタにおいて、2本の光ファイバに係る光ファイバの端面からレンズまでの光路長差を抑制しつつ、フェルールの構造を簡略化することができる。
【0022】
===本実施形態===
<フェルール構造体10の概要>
図1Aは、本実施形態のフェルール構造体10の全体斜視図である。
図1Bは、本実施形態のフェルール構造体10の分解斜視図である。
図2Aは、下側から見た本実施形態のフェルール構造体10の分解斜視図である。
図2Bは、本実施形態のファイバ付きフェルール構造体10の断面図である。
【0023】
以下の説明では、図に示すように各方向を定義する。すなわち、ファイバ穴22(ファイバ穴22A及びファイバ穴22B)の方向を「前後方向」とし、ファイバ穴22に挿入される光ファイバ1(光ファイバ1A及び光ファイバ1B)の端面の側、又は、フェルール本体11から見てレンズプレート12の側を「前」とし、逆側を「後」とする。また、2つの本体側ガイド穴21の並ぶ方向、又は、2つのプレート側ガイド穴32の並ぶ方向を「左右方向」とし、後側から前側を見たときの右側を「右」とし、逆側を「左」とする。また、前後方向及び左右方向に垂直な方向を「上下方向」とする。なお、フェルール構造体10を有する光コネクタの場合、キー5(後述する
図3B参照)が設けられている側を「上」とし、逆側を「下」とする。
【0024】
フェルール構造体10は、光ファイバ1(光ファイバ1A及び光ファイバ1B)の端部を保持し、他の光学部品に対して光ファイバ1を光接続するための部材である。フェルール構造体10のことを単に「フェルール」と呼ぶこともある。フェルール構造体10は、フェルール本体11と、レンズプレート12とを有する。
【0025】
フェルール本体11は、光ファイバ1の端部を保持する部材である。フェルール本体11は、2つの本体側ガイド穴21と、ファイバ穴22(ファイバ穴22A及びファイバ穴22B)と、ファイバ挿入口23と、接着剤充填部24とを有する。
【0026】
なお、フェルール本体11は、例えばMT形光コネクタ(JIS C5981に制定されるF12形光コネクタ。MT:Mechanically Transferable)とほぼ同様の構成である。但し、通常のMT形光コネクタでは、フェルールの端面と光ファイバの端面とを研磨することになるが、本実施形態では、後述するように、光ファイバ1(光ファイバ1A及び光ファイバ1B)の端面3(端面3A及び端面3B)はフェルール本体11の前端面20(ファイバ穴22の開口面)から突出させることになり、フェルールの端面と光ファイバの端面とを研磨することは行われない。また、通常のMT形光コネクタでは、フェルールの端面でファイバの端面が露出することになるが、本実施形態では、フェルール本体11の前側にレンズプレート12が配置され、光ファイバ1の端面3はレンズプレート12に突き当てられた状態になるため、光ファイバの端面は外部に露出しない。
【0027】
2つの本体側ガイド穴21は、ガイドピン(不図示)を挿入するための穴である。後述するように、本体側ガイド穴21は、フェルール本体11とレンズプレート12との位置合わせにも用いられることになる。本体側ガイド穴21は、前後方向に沿ってフェルール本体11を貫通しており、フェルール本体11の前端面20には2つの本体側ガイド穴21が開口している。2つの本体側ガイド穴21は、複数のファイバ穴22(ファイバ穴22A及びファイバ穴22B)を左右方向から挟むように、左右方向に間隔を空けて配置されている。
【0028】
ファイバ穴22は、光ファイバ1を挿入するための穴である。また、ファイバ穴22は、光ファイバ1を位置決めするための穴である。このため、ファイバ穴22は、本体側ガイド穴21に対して高精度に形成されている。ファイバ穴22は、前端面20と接着剤充填部24との間を貫通しており、フェルール本体11の前端面20にはファイバ穴22が開口している。ファイバ穴22には、光ファイバ心線から被覆を除去した裸光ファイバが挿入されることになる。ファイバ穴22は、前後方向に沿って形成されている。
【0029】
本実施形態のフェルール本体11には、複数のファイバ穴22(ファイバ穴22A及びファイバ穴22B)が形成されている。さらに、本実施形態では、左右方向に並んで配置されたファイバ穴22の列が上下方向に2列形成されている。
図1B~
図2Bに示すように、上側のファイバ穴22の列をファイバ穴22Aと呼び、下側のファイバ穴22の列をファイバ穴22Bと呼ぶことがある。左右方向に並ぶ各ファイバ穴22(ファイバ穴22A及びファイバ穴22B)の列には、光ファイバテープ(光ファイバリボン)を構成する光ファイバ1(光ファイバ1A及び光ファイバ1B)がそれぞれ挿入されることになる。本実施形態では、ファイバ穴22Aに光ファイバ1Aから構成される光ファイバテープ(光ファイバリボン)が挿入され、ファイバ穴22Bに光ファイバ1Bから構成される光ファイバテープ(光ファイバリボン)が挿入されることになる。但し、ファイバ穴22Aとファイバ穴22Bとは、左右方向に並んで配置されたファイバ穴の列でなくても良い。例えば、上側にファイバ穴22Aが1個、下側にファイバ穴22Bが1個形成されているだけでも良い。この場合、ファイバ穴22Aとファイバ穴22Bとにそれぞれ挿入される光ファイバ1は光ファイバテープ(光ファイバリボン)ではなく、単心の光ファイバとなる。
【0030】
ファイバ挿入口23は、フェルール本体11の後端面に形成された開口である。ファイバ挿入口23からフェルール本体11に光ファイバ1(光ファイバ1A及び光ファイバ1B)が挿入されることになる。フェルール本体11にブーツ(不図示)が挿入されることがあるため、ファイバ挿入口23は「ブーツ穴」と呼ばれることもある。
【0031】
接着剤充填部24は、接着剤を充填するための空洞部である。接着剤充填部24には、光ファイバ1をフェルール本体11に引き留めるための接着剤が充填されることになる。接着剤充填部24に接着剤が充填されることによって、接着剤充填部24やファイバ穴22の内壁面と光ファイバ1との間に接着剤が塗布され、この接着剤が硬化して光ファイバ1がフェルール本体11に固定されることになる。
【0032】
レンズプレート12は、複数のレンズ(上側レンズ部33A及び下側レンズ部33B)が設けられた光学部材である。レンズプレート12は、光信号を透過させる透明樹脂によって成形されている。レンズプレート12は、その後端面31をフェルール本体11の前端面20に接触させた状態で、フェルール本体1の前側に配置される。レンズプレート12は、2つのプレート側ガイド穴32と、レンズ部33(上側レンズ部33A及び下側レンズ部33B)と、突き当て面36(上側突き当て面36A及び下側突き当て面36B)とを有する。
【0033】
2つのプレート側ガイド穴32は、ガイドピン(不図示)を挿入するための穴である。プレート側ガイド穴32にガイドピンを挿入することによって、フェルール構造体10同士が位置合わせされることになる。なお、プレート側ガイド穴32は、フェルール本体11とレンズプレート12との位置合わせにも用いられることになる。このため、2つのプレート側ガイド穴32の間隔は、フェルール本体10の2つの本体側ガイド穴21の間隔と同じである。すなわち、2つのプレート側ガイド穴32の中心軸間の距離は、フェルール本体10の2つの本体側ガイド穴21の中心軸間の距離と同じである。プレート側ガイド穴32は、前後方向に沿ってレンズプレート12を貫通しており、レンズプレート12の前端面30及び後端面31には2つのプレート側ガイド穴32がそれぞれ開口している。
【0034】
レンズ部33(上側レンズ部33A及び下側レンズ部33B)は、複数のファイバ穴22(ファイバ穴22A及びファイバ穴22B)にそれぞれ挿入される複数の光ファイバ1(光ファイバ1A及び光ファイバ1B)の端面に対応してそれぞれ配置されており、レンズ部33を介して光ファイバ1の端面に光信号が入出射されることになる。前述したように、本実施形態では、左右方向に並んだファイバ穴22Aの列がフェルール本体11の上側に配置され、左右方向に並んだファイバ穴22Bの列がフェルール本体11の下側に配置されている。そして、レンズ部33についても、左右方向に並んだレンズ部33の列が上下方向に2列配置されている。すなわち、左右方向に並んだ上側レンズ部33Aの列がレンズプレート12の上側に配置されることで、ファイバ穴22Aの列にそれぞれ挿入される光ファイバ1Aの端面に対応して配置されることになる。また、左右方向に並んだ下側レンズ部33Bの列がレンズプレート12の下側に配置されることで、ファイバ穴22Bの列にそれぞれ挿入される光ファイバ1Bの端面に対応して配置されることになる。このため、レンズ部33は、プレート側ガイド穴32に対して高精度に形成されている。レンズ部33は、例えばコリメートレンズとして機能するように形成されている。レンズ部33によって径の拡大された光信号を入出射することによって、光信号がコリメート光として伝播するので、コネクタ間にダストが侵入しても安定して接続することが可能であり、光信号の伝送損失を抑制できる。また、レンズ部33によって径の拡大された光信号を入出射することによって、光信号がコリメート光として伝播するので、コネクタ間で光信号の光路の位置ずれが生じても、光信号の伝送損失を抑制できる。レンズ部33は、レンズプレート12の前端面30の側に形成されており、フェルール構造体10の前端面に形成されている。フェルール構造体10同士を対向させて突き合わせたときに、凸状のレンズ部33同士が接触しないようにするために、レンズ部33は、レンズプレート12に形成された凹所(レンズ配置部34)の底部に形成されている。但し、フェルール本体11の上側にファイバ穴22Aが1個、フェルール本体11の下側にファイバ穴22Bが1個形成されている場合、対応する上側レンズ部33Aと下側レンズ部33Bとは、それぞれ1個ずつ配置されることになる。
【0035】
突き当て面36は、光ファイバ1の端面を突き当てるための突き当て面である。突き当て面36は、レンズプレート12の後端面31から凹んだ部位である突き当て面配置部35の底部に形成されている。このため、ガイドピン(不図示)を介してレンズプレート12をフェルール本体11に取り付けたとき(後述)、突き当て面36は、フェルール本体11のファイバ穴22の開口と対向することになる。なお、突き当て面配置部35の底面(突き当て面36)の左右方向の幅は、左右方向に並ぶファイバ穴22(ファイバ穴22A及びファイバ穴22B)の列の幅よりも長い(光ファイバテープの幅よりも長い)。突き当て面配置部35が形成されることによって、フェルール本体11のファイバ穴22の開口面と、レンズプレート12の突き当て面36との間に隙間が形成されることになる。すなわち、レンズプレート12に突き当て面配置部35が形成されることによって、レンズプレート12とフェルール本体11との間に隙間が形成され、この隙間が屈折率整合剤としての機能を有する接着剤を充填させるための整合剤充填部となる。本実施形態では、突き当て面配置部35は、レンズプレート12の上面から下面にわたって形成されている。このため、突き当て面配置部35(整合剤充填部)は、フェルール構造体10の上面及び下面で開口している。但し、レンズプレート12とフェルール本体11との間の隙間に屈折率整合剤が充填されなくても良い。
【0036】
<突き当て面36の詳細構成>
図3Aは、突き当て面36周辺の様子を示す説明図である。
【0037】
突き当て面36は、上側突き当て面36Aと、下側突き当て面36Bとを有する。上側突き当て面36Aは、上側レンズ部33Aに挿入される光ファイバ1Aの端面を突き当てるための突き当て面である。また、下側突き当て面36Bは、下側レンズ部33Bに挿入される光ファイバ1Bの端面を突き当てるための突き当て面である。そして、
図3Aに示すように、上側突き当て面36Aは、光ファイバ1Aの光軸2Aに垂直な面(前後方向に垂直な面)に対して傾斜している。また、下側突き当て面36Bも、光ファイバ1Bの光軸2Bに垂直な面(前後方向に垂直な面)に対して傾斜している。さらに、上側突き当て面36Aの傾斜角と下側突き当て面36Bの傾斜角とは、
図3Aに示す対称面4において対称となっている。つまり、上側突き当て面36Aと下側突き当て面36Bとが上下対称に形成されている。
【0038】
ここで、対称面4は、光ファイバ1Aの光軸2Aと、光ファイバ1Bの光軸2Bとが対称に配置されるような面のことを言う。
図3Aに示すように、対称面4は、光ファイバ1Aの光軸2Aと、光ファイバ1Aに対して並んで(平行に)配置される光ファイバ1Bの光軸2Bとから同距離にある面である。但し、実際には、光ファイバ1Aと、光ファイバ1Bとは、左右方向(
図3Aの紙面に垂直な方向)にそれぞれ複数並んで配置されており、対称面4は、各光ファイバ1Aの光軸2Aと、各光ファイバ1Bとから同距離にある面である。これにより、対称面4は、光ファイバ1Aの光軸2Aと、光ファイバ1Bの光軸2Bとが対称に配置されるような面となる。そして、対称面4を境に、上側突き当て面36Aは上側に行くほど前側に傾斜しており、下側突き当て面36Bは下側に行くほど前側に傾斜している。そして、光ファイバ1Aの光軸2Aに垂直な面(前後方向に垂直な面)と上側突き当て面36Aとの間の角度と、光ファイバ1Bの光軸2Bに垂直な面(前後方向に垂直な面)と下側突き当て面36Bとの間の角度が同じである。これにより、上側突き当て面36Aの傾斜角と下側突き当て面36Bの傾斜角とは、対称面4において対称となっている。
【0039】
本実施形態では、
図3Aに示すように、上側突き当て面36Aの傾斜角と下側突き当て面36Bの傾斜角とを対称面4において対称となるようにすることで、光ファイバ1Aに入出射する光信号の光ファイバ1Aの端面3Aから上側レンズ部33Aのレンズ面(レンズ部33Aの表面)までの光路長と、光ファイバ1Bに入出射する光信号の光ファイバ1Bの端面3Bから下側レンズ部33Bのレンズ面(レンズ部33Bの表面)までの光路長とが異なってしまうことを抑制することができる。さらに、突き当て面36を後方向に凸となるような形状、すなわち上側突き当て面36Aを上側に行くほど前側に傾斜させ、下側突き当て面36Bを下側に行くほど前側に傾斜させる形状は、容易に成型することができる。これにより、2本の光ファイバ1(光ファイバ1A及び光ファイバ1B)の端部を保持するレンズコネクタにおいて、光ファイバ1Aに入出射する光信号の光ファイバ1Aの端面3Aから上側レンズ部33Aのレンズ面までの光路長と、光ファイバ1Bに入出射する光信号の光ファイバ1Bの端面3Bから下側レンズ部33Bのレンズ面までの光路長との差を抑制しつつ、フェルールの構造を簡略化することができる。但し、突き当て面36を前方向に凹ませた形状、すなわち上側突き当て面36Aを下側に行くほど前側に傾斜させ、下側突き当て面36Bを上側に行くほど前側に傾斜させる形状としても良い。このような形状でも上側突き当て面36Aの傾斜角と下側突き当て面36Bの傾斜角とを対称面4において対称であり、光ファイバ1Aに入出射する光信号の光ファイバ1Aの端面3Aから上側レンズ部33Aのレンズ面までの光路長と、光ファイバ1Bに入出射する光信号の光ファイバ1Bの端面3Bから下側レンズ部33Bのレンズ面までの光路長とが異なってしまうことを抑制することができる。
【0040】
図3Bは、本実施形態のフェルール構造体10を有する光コネクタ同士を接続する様子を示す説明図である。
【0041】
本実施形態では、フェルール構造体10を有する光コネクタ同士を接続する際、一方の光コネクタに対して、他方の光コネクタの上下方向を反転させつつ、対向させることになる。すなわち、一方の光コネクタが有するフェルール構造体10と、他方の光コネクタが有するフェルール構造体10とは、上下方向を反転させつつ対向することになる。
図3Bに示すように、光コネクタ同士における接続方向を軸とした回転方向のキーとなるキー5は、左右の光コネクタで上下方向が反転している。これにより、
図3Bに示すように、それぞれのフェルール構造体10において、一方(例えば、
図3Bの左側のフェルール構造体10)の上側レンズ部33Aは、他方(例えば、
図3Bの右側のフェルール構造体10)の下側レンズ部33Bと対向することになる。同様に、一方(例えば、
図3Bの左側のフェルール構造体10)の下側レンズ部33Bは、他方(例えば、
図3Bの右側のフェルール構造体10)の上側レンズ部33Aと対向することになる。前述したように、上側突き当て面36Aの傾斜角と下側突き当て面36Bの傾斜角とは、対称面4において対称となるように配置されているので、
図3Bのように一方のフェルール構造体10に対して上下方向を反転させつつ他方のフェルール構造体10を対向させる場合でも、上下の光ファイバ1に関して光路長が異なってしまうことを抑制することができる。
【0042】
図4は、対向するフェルール構造体10同士において伝送される光信号の様子を示す説明図である。
【0043】
本実施形態では、
図4に示すように、一方のフェルール構造体10(例えば、
図4の左側のフェルール構造体10)が保持する光ファイバ1Aの光軸2Aと、他方のフェルール構造体10(例えば、
図4の右側のフェルール構造体10)が保持する光ファイバ1Bの光軸2Bとが同一直線状に位置するようにフェルール構造体10同士が対向することになる。同様に、一方のフェルール構造体10(例えば、
図4の左側のフェルール構造体10)が保持する光ファイバ1Bの光軸2Bと、他方のフェルール構造体10(例えば、
図4の右側のフェルール構造体10)が保持する光ファイバ1Aの光軸2Aとが同一直線状に位置するようにフェルール構造体10同士が対向することになる。
【0044】
また、本実施形態では、
図4に示すように、光ファイバ1Aの光軸2Aと光ファイバ1Bの光軸2Bとの間の距離と、上側レンズ部33Aの中心37Aと下側レンズ部33Bの中心37Bとの間の距離とが等しい。言い換えれば、光ファイバ1Aの光軸2A上に上側レンズ部33Aの中心37Aが位置し、光ファイバ1Bの光軸2B上に下側レンズ部33Bの中心37Bが位置する。本実施形態では突き当て面36で光信号が屈折することになるが、光ファイバ1の光軸2上からレンズ部33をずらしてフェルール構造体10を成型しなくても良い。したがって、2本の光ファイバ1(光ファイバ1A及び光ファイバ1B)の端部を保持するレンズコネクタのフェルールの構造を簡略化することができる。但し、光ファイバ1の光軸2上からレンズ部33をずらしてフェルール構造体10を成型しても良い。
【0045】
以下では、例えば、
図4の右側のフェルール構造体10が保持する光ファイバ1Aから左側のフェルール構造体10が保持する光ファイバ1Bに向けて光信号が伝送される場合を説明する。光ファイバ1A中を伝送される光信号は、光ファイバ1Aの端面から上側突き当て面36Aを介してレンズプレート12中に入射する。前述したように、上側突き当て面36Aは、光ファイバ1Aの光軸2Aに垂直な面(前後方向に垂直な面)に対して、上側に行くほど前側に傾斜している。このため、
図4に示すように、上側突き当て面36Aに入射後は、下側に屈折した光信号(レンズ入出射光6)として伝送されることになる。なお、上側突き当て面36Aにおける屈折光(レンズ入出射光6)の角度はスネルの法則に依存する。そして、レンズ入出射光6は、上側レンズ部33Aを介してコリメート光7としてコリメートされることになる。本実施形態では、光ファイバ1Aの光軸2A上に上側レンズ部33Aの中心37Aが位置している。すなわち、レンズ入出射光6の軸は、上側レンズ部33Aの中心37Aからずれていることになる。しかし、このようなずれ分を考慮して上側レンズ部33A(レンズ部33)を大きく成型することにより、レンズ入出射光6の光路を上側レンズ部33Aのレンズ面からはみ出さずに入射させることができる。
【0046】
<比較例>
図6Aは、第1比較例のファイバ付きフェルール構造体10の突き当て面36周辺の様子を示す説明図である。
【0047】
前述した本実施形態では、突き当て面36は、光ファイバ1Aの光軸2Aに垂直な面に対して上側に行くほど前側に傾斜した上側突き当て面36Aと、光ファイバ1Bの光軸2Bに垂直な面に対して下側に行くほど前側に傾斜した下側突き当て面36Bとを有していた。
図6Aに示す第1比較例では、突き当て面36は、光ファイバ1Aの光軸2A(又は光ファイバ1Bの光軸2B)に垂直な面に対して下側に行くほど前側に傾斜した一つの面で形成されている。
【0048】
第1比較例では、このような傾斜した一つの面で形成された突き当て面36に対して2本の光ファイバ1(光ファイバ1A及び光ファイバ1B)のそれぞれの端面が突き当てられている。このため、例えば、光ファイバ1Aの端面の光軸方向(前後方向)の位置と、光ファイバ1Bの端面の光軸方向(前後方向)の位置とが異なってしまう。したがって、光ファイバ1Aに入出射する光信号の光ファイバ1Aの端面からレンズまでの光路長と、光ファイバ1Bに入出射する光信号の光ファイバ1Bの端面からレンズまでの光路長とが異なってしまう。
【0049】
図6Bは、第2比較例のファイバ付きフェルール構造体10の突き当て面36周辺の様子を示す説明図である。
【0050】
第2比較例では、上下に配置された2本の光ファイバ1(光ファイバ1A及び光ファイバ1B)の端面の光軸方向(前後方向)の位置が揃うように、段差を設けて、傾斜した突き当て面36が多段に形成されている。これにより、光ファイバ1Aに入出射する光信号の光ファイバ1Aの端面からレンズまでの光路長と、光ファイバ1Bに入出射する光信号の光ファイバ1Bの端面からレンズまでの光路長とが異なってしまうことを抑制することができる。しかし、段差が設けられることによりフェルール構造体10の構造が複雑になってしまう。
【0051】
第1比較例と比較して、前述した本実施形態では、上側突き当て面36Aの傾斜角と下側突き当て面36Bの傾斜角とを対称面4において対称となるようにすることで、光ファイバ1Aに入出射する光信号の光ファイバ1Aの端面3Aから上側レンズ部33Aのレンズ面までの光路長と、光ファイバ1Bに入出射する光信号の光ファイバ1Bの端面3Bから下側レンズ部33Bのレンズ面までの光路長とが異なってしまうことを抑制することができる。また、突き当て面36を後方向に凸となるような形状、すなわち上側突き当て面36Aを上側に行くほど前側に傾斜させ、下側突き当て面36Bを下側に行くほど前側に傾斜させる形状は、第2比較例のファイバ付きフェルール構造体10のように段差を設けた形状と比べて、容易に成型することができる。
【0052】
<ファイバ付きフェルール構造体10の製造方法>
図5は、本実施形態のファイバ付きフェルール構造体10の製造方法(組み立て手順)のフロー図である。
【0053】
まず作業者は、フェルール本体11とレンズプレート12とを準備する(S101)。また、作業者は、次の工程のために、ガイドピン(不図示)も準備する。また、必要に応じて、作業者は、フェルール本体11とレンズプレート12とを組み付けるための治具なども準備する。
【0054】
次に、作業者は、フェルール本体11とレンズプレート12とをガイドピンを介して位置合わせする(S102)。このとき、作業者は、フェルール本体11の本体側ガイド穴21とレンズプレート12のプレート側ガイド穴32との双方にガイドピン(不図示)を挿入する。これにより、フェルール本体11とレンズプレート12との上下方向及び左右方向の位置合わせが行われる。また、作業者は、ガイドピンを挿入した状態で、フェルール本体11の前端面20と、レンズプレート12の後端面31とを接触させる。これにより、フェルール本体11とレンズプレート12との前後方向の位置合わせが行われる。なお、ガイドピン(不図示)を介してフェルール本体11とレンズプレート12と取り付けたフェルール構造体10を治具に設置することによって、フェルール本体11の前端面20とレンズプレート12の後端面31とを接触させた状態を保持させても良い。
【0055】
S102において、フェルール本体11とレンズプレート12とを位置合わせすると、フェルール本体11とレンズプレート12との位置関係は
図1A及び
図2Bに示す状態になる(なお、ガイドピンは不図示)。このとき、レンズプレート12の突き当て面配置部35によって、レンズプレート12とフェルール本体11との間に隙間が形成される。また、レンズプレート12の突き当て面36は、フェルール本体11のファイバ穴22の開口と対向することになる。
【0056】
次に、作業者は、光ファイバテープの各光ファイバ1の端面をカットする(S103)。光ファイバ1の端面のカットは、レーザーによるカットや、刃により機械的にカットしても良いし、研磨によって行ってもよい。なお、前述したように、上側突き当て面36Aの傾斜角と下側突き当て面36Bの傾斜角とが対称面4において対称となるように配置されているので、それぞれの突き当て面36に突き当てられる光ファイバ1の端面の傾斜角も対称面4において対称となるようにカットされる。
【0057】
次に、作業者は、光ファイバテープの各光ファイバ1をフェルール本体11のファイバ穴22にそれぞれ挿入する(S104)。そして、フェルール本体11の前端面20(ファイバ穴22の開口面)から光ファイバ1を突出させる。但し、この段階では、光ファイバ1の端面をレンズプレート12の突き当て面36(突き当て面配置部35の底面)には突き当てない。これは、光ファイバ1をファイバ穴22に通したときに、光ファイバ1の端面にゴミ等が付着するおそれがあるためである。
【0058】
なお、後述するS105(突き当て処理)やS106(光ファイバ引き留め処理)の前に、光ファイバ1の端面を洗浄しても良い(不図示)。例えば、作業者は、エアを吹き付けるなどして、フェルール本体11の前端面20から突出した光ファイバ1の端面に付着したゴミを吹き飛ばす。これにより、ファイバ穴22に光ファイバ1を挿入したとき(S104)に付着した光ファイバ1の端面のゴミを除去することができる。
【0059】
次に、作業者は、光ファイバ1を更に挿入して、光ファイバ1の端面をレンズプレート12の突き当て面36に突き当てる(105)。前述したように、光ファイバ1の端面は、前後方向に垂直な面(光ファイバ1の光軸に垂直な面)に対して傾斜するように形成される。また、このように光ファイバ1の傾斜した端面が突き当て面36に接するようにファイバ穴22に挿入される。これにより、光ファイバ1の端面と突き当て面36との間に空気層ができることを抑制することができる。なお、本実施形態では、作業者は、ファイバ挿入口23にブーツを挿入する。但し、ファイバ挿入口23にブーツを挿入しなくても良い。
【0060】
次に、作業者は、光ファイバ1をフェルール本体11に引き留める(S106)。S106の光ファイバ引き留め処理では、まず、作業者は、フェルール本体11の接着剤充填部24に接着剤を充填する。これにより、接着剤充填部24の内壁面と光ファイバ1との間に接着剤が塗布される。接着剤充填部24に接着剤が充填されると、接着剤がファイバ穴22の内壁面と光ファイバ1との間に浸透する。そして、作業者は、屈折率整合剤となる接着剤を、突き当て面配置部35の上側の開口から充填することになる。S106において屈折率整合剤となる接着剤が突き当て面配置部35に充填されると、フェルール本体11とレンズプレート12との接触面の微小な隙間に接着剤が浸透する。これにより、接着剤を硬化させると、フェルール本体11とレンズプレート12とを接着固定することができる。このため、フェルール本体11とレンズプレート12とを接着固定する作業が容易である。最後に、作業者は、接着剤を硬化させる。接着剤として紫外線硬化樹脂が用いられている場合には、作業者は、紫外線を照射することになる。また、接着剤として紫外線硬化樹脂が用いられている場合には、作業者は、加熱を行うことになる。
【0061】
===その他===
図3Aに示すように、光ファイバ1Aの端面3Aは、光ファイバ1Aの光軸2Aに垂直な面に対して傾斜するように形成されると共に、上側突き当て面36Aに接するように形成されている。また同様に、光ファイバ1Bの端面3Bは、光ファイバ1Bの光軸2Bに垂直な面に対して傾斜するように形成されると共に、下側突き当て面36Bに接するように形成されている。なお、このような光ファイバ1Aの傾斜した端面3Aや、光ファイバ1Bの傾斜した端面3Bは、研磨により形成されている。光ファイバ1の端面をカットする際(ファイバ付きフェルール構造体10の製造方法のS103)、レーザーによるカットや、刃による機械的なカットで傾斜した端面を形成しても良い。これにより、光ファイバの端面と突き当て面との隙間を小さくすることができる。但し、光ファイバ1Aの端面3Aは、光ファイバ1Aの光軸2Aに垂直な面に対して傾斜するように形成されておらず、例えば光ファイバ1Aの端面3Aが光ファイバ1Aの光軸2Aに垂直な面であっても良い。これにより、上側突き当て面36Aに接するように形成されていなくてもよい。また、光ファイバ1Bの端面3Bは、光ファイバ1Bの光軸2Bに垂直な面に対して傾斜するように形成されておらず、例えば光ファイバ1Bの端面3Bが光ファイバ1Bの光軸2Bに垂直な面であっても良い。これにより、下側突き当て面36Bに接するように形成されていなくてもよい。
【0062】
図7は、ファイバ付きフェルール構造体10の別の例を示す説明図である。
【0063】
図7に示すファイバ付きフェルール構造体10では、光ファイバ1Aの端面3Aが光軸2Aに垂直な面である。また、同様に、
図7に示すファイバ付きフェルール構造体10では、端面3Bが光軸2Bに垂直な面である。なお、レンズプレート12とフェルール本体11との間の突き当て面配置部35には、屈折率整合剤が充填されている。なお、その他の構成については、
図3Aに示すファイバ付きフェルール構造体10と同様である。
【0064】
図7に示すファイバ付きフェルール構造体10でも、上側突き当て面36Aの傾斜角と下側突き当て面36Bの傾斜角とを対称面4において対称となるようにすることで、光ファイバ1Aに入出射する光信号の光ファイバ1Aの端面3Aから上側レンズ部33Aのレンズ面までの光路長と、光ファイバ1Bに入出射する光信号の光ファイバ1Bの端面3Bから下側レンズ部33Bのレンズ面までの光路長とが異なってしまうことを抑制することができる。さらに、突き当て面36を後方向に凸となるような形状、すなわち上側突き当て面36Aを上側に行くほど前側に傾斜させ、下側突き当て面36Bを下側に行くほど前側に傾斜させる形状は、容易に成型することができる。これにより、2本の光ファイバ1(光ファイバ1A及び光ファイバ1B)の端部を保持するレンズコネクタにおいて、光ファイバ1Aに入出射する光信号の光ファイバ1Aの端面3Aから上側レンズ部33Aのレンズ面までの光路長と、光ファイバ1Bに入出射する光信号の光ファイバ1Bの端面3Bから下側レンズ部33Bのレンズ面までの光路長との差を抑制しつつ、フェルールの構造を簡略化することができる。
【0065】
前述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1A 光ファイバ(第1の光ファイバ)、
1B 光ファイバ(第2の光ファイバ)、
2A・2B 光ファイバの光軸、3A・3B 端面、
4 対称面、5 キー、6 レンズ入出射光、7 コリメート光、
10 フェルール構造体、
11 フェルール本体、12 レンズプレート、20 前端面、
21 本体側ガイド穴、22A・22B ファイバ穴、
23 ファイバ挿入口、24 接着剤充填部、 30 前端面、
31 後端面、32 プレート側ガイド穴、
33A 上側レンズ部(第1のレンズ部)、
33B 下側レンズ部(第2のレンズ部)、
34 レンズ配置部、35 突き当て面配置部、
36A 上側突き当て面(第1の突き当て面)、
36B 下側突き当て面(第2の突き当て面)、37A・37B 中心