(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物、樹脂ゴム液、プリント回路用プリプレグ、絶縁板、金属張積層板およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08G 59/58 20060101AFI20221221BHJP
C08G 59/30 20060101ALI20221221BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20221221BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20221221BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221221BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20221221BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20221221BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C08G59/58
C08G59/30
C08G73/10
C08L63/00 C
C08K3/013
C08J5/24 CFC
C08J5/24 CEZ
B32B15/08 J
H05K1/03 610N
(21)【出願番号】P 2019101581
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】201910159731.3
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517221424
【氏名又は名称】▲広▼▲東▼生益科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO. 5 WESTERN INDUSTRY ROAD, SONGSHAN LAKE NATIONAL HIGH‐TECH INDUSTRIAL DEVELOPMENT ZONE, DONGGUAN CITY, GUANGDONG 523808, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】潘 子洲
(72)【発明者】
【氏名】方 克洪
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529205(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181286(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103265791(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104725781(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08L 63/00- 63/10
C08K 3/00- 13/08
C08J 5/00- 5/24
B32B 15/00- 15/20
H05K 1/00- 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子構造に少なくとも2つのN-置換マレイミド基を有するマレイミド、芳香族ジアミン、及びヒドロキシ含有芳香族アミンを予備重合してなる変性ビスマレイミドプレポリマー:10~50重量部と、
ベンゾオキサジン樹脂:5~50重量部と、
リン含有エポキシ樹脂:30~90重量部と、
酸無水物類化合物:10~50重量部と、
硬化促進剤:0.01~1重量部と、
無機フィラーと、
のみからなり、
前記変性ビスマレイミドプレポリマーにおいて、前記分子構造に少なくとも2つのN-置換マレイミド基を有するマレイミドから誘導される構造単位、前記芳香族ジアミンから誘導される構造単位及び前記ヒドロキシ含有芳香族アミンから誘導される構造単位の重量比が(6~12):(0.5~3):(0.5~3)である、
ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記分子構造に少なくとも2つのN-置換マレイミド基を有するマレイミドは、下記の式(I)又は(II)で表される請求項1に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
であり、R
1
及びR
2
は、それぞれ独立的にH又はC
1
~C
4
のアルキル基である。式(II)において、nは1~8の整数である。
【請求項3】
前記ヒドロキシ含有芳香族アミンは、下記から選択されるいずれか一つ、又はいずれか2つ以上の組み合わせである請求項1に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【化2】
ただし、R
1及びR
2は、それぞれ独立的にH又はC
1~C
4のアルキル基である。
【請求項4】
前記芳香族ジアミンは、2つ以上4つ以下の芳香族環を有する芳香族ジアミンである請求項1に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族ジアミンは、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’,5,5’-テトラエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシビフェニルアミン及び3,3’-ジメチルビフェニルアミンから選択される一つ、又はいずれか2つ以上の組み合わせである請求項1に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ベンゾオキサジン樹脂は、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂、ジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂、及びビスフェノールフルオレン型ベンゾオキサジン樹脂から選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物を含
む請求項1に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記リン含有エポキシ樹脂は、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド構造、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド構造、及び10-(2,5-ジヒドロキシナフチル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド構造を含有する多官能エポキシ樹脂から選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物である請求項1に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記酸無水物類化合物は、分子構造に2つ以上の酸無水物基を有する化合物を含む請求項1に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記酸無水物類化合物は、スチレン-マレイン酸無水物共重合体、フェニルプロピレン-マレイン酸無水物共重合体、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,4,5-ピロメリット酸二無水物から選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物である請求項1に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記硬化促進剤は、t-アミン、イミダゾール類、4-ジメチルアミノピリジン、トリフェニルホスフィン、又は三フッ化ホウ素モノエチルアミンのいずれか一種又は二種以上の混合物である請求項1に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記無機フィラーは、前記ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物の全重量の30%~70%を占める請求項1に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記無機フィラーは、シリカ、軟性ガラス粉、タルク、カオリン、マイカパウダー、ベーマイト、ハイドロタルサイト、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、及びワラストナイトから選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物である請求項1に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記シリカは、球型シリカ、溶融シリカ、又は結晶シリカのいずれか一種又は二種以上の混合物である請求項12に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物と、溶媒とを含む樹脂ゴム液。
【請求項15】
補強材料と、含浸・乾燥により前記補強材料に付着した請求項1~
13のいずれか一項に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物とを含むプリント回路用プリプレグ。
【請求項16】
少なくとも一枚の請求項
15に記載のプリント回路用プリプレグを含有する絶縁板。
【請求項17】
少なくとも一枚の請求項
15に記載のプリント回路用プリプレグと、前記プリプレグ外側の片側又は両側を覆う金属箔とを含む金属張積層板。
【請求項18】
少なくとも一枚の請求項
15に記載のプリント回路用プリプレグ、又は少なくとも一枚の請求項
16に記載の絶縁板、又は少なくとも一枚の請求項
17に記載の金属張積層板を含むプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の技術分野に関する。具体的に、本発明は、樹脂ゴム液、プリント回路用プリプレグ、絶縁板、金属張積層板およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
金属張積層板は、樹脂液を電子ガラスファイバークロス(ガラス繊維布とも呼ばれる)又は他の補強材料に含浸させ、片面又は両面を金属箔で覆い、ホットプレスして製造された板状材料であり、金属箔張積層板と称され、金属張積層板又は金属張板、例えば銅張積層板又は銅張板(Copper Clad Laminate、CCL)と略称される。金属張積層板、例えば、銅張板は、プリント配線板(Printed Circuit Board、PCBと略称)を製造するためのベース積層板材料であり、PCBは電子工業における重要な部品の一つである。小さい電子腕時計や電卓から、大きいコンピューター、通信電子機器、軍事用武器システムまでのほぼあらゆる電子機器では、集積回路等の電子部品がある限り、該電子部品の間の電気接続のために、いずれもプリント板を使用する必要がある。金属張積層板は、プリント配線板全体において、主に導電、絶縁及び支持の三つの機能を担っている。
【0003】
電子技術の急速な進歩に伴い、無線通信およびネットワークが社会の隅々まで広がり、情報取得の高速化及び大容量化に対する人々の要求に応えるために、通信機器、基地局、サーバ、ルータなどのネットワークインフラ、大型コンピューターなどの信号伝達は、高速化や大容量化に発展しつつある。それに伴って、これらの電子機器に搭載されるプリント配線板は、高周波伝送、低伝送損失の特性を有する必要があるので、対応する基板材料は、低誘電率や低誘電正接を有する必要がある。また、電子情報機器の高性能化と小型化に伴い、そのPCBの線路は高密度や高多層化しつつあるので、板材は高いリフローはんだ耐熱性、スルーホール信頼性を有する必要がある。材料の性能指標として、ガラス転移温度が190℃以上、ひいてはより高い必要があり、熱膨張率がより低く、Tg以下ではZ軸CTEが45ppm/℃以下、ひいては40ppm/℃以下である必要がある。環境保護の課題を考えると、このような製品発展は、最終的にハロゲンフリー化に発展する傾向がある。
【0004】
従来、低転送損失を要求するプリント配線板に使用される樹脂組成物として、特許CN103131131Aでは、スチレンマレイン酸無水物共重合体をエポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂と配合する方法を開示したが、製造された板材のガラス化温度が170℃に過ぎず、熱膨張率(CTE)が大きく、また、板材吸水性が大きく、多層板の耐熱性がよくない。CN104725781A(出願番号:CN201510106304)では、アミン変性のビスマレイミドと、ベンゾオキサジン樹脂と、エポキシ樹脂との組み合わせで、ビスマレイミドの利点を生かし、高いガラス化温度、低いCTEの効果を得たが、板材の誘電率がやや高く、高周波数でのPCBにおける信号伝達に不利である
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】CN103131131A
【文献】CN104725781A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。前記ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を、補強材料、例えばガラスファイバークロス(Glass fiber cloth)に含浸させて得られるプリント回路用プリプレグ、及び前記プリント回路用プリプレグを含む金属張積層板により、前記金属張積層板は、良い粘着性、高い耐熱性、高いガラス転移温度(Tg)、難燃性、低誘電率及び低損失等の特性の少なくとも一つを有する。
【0007】
本発明のもう一つの目的は、前記プリント回路用プリプレグを含む絶縁板、並びに前記プリント回路用プリプレグ、前記絶縁板又は前記金属張積層板を含むプリント配線板を提供することにある。前記絶縁板又は金属張積層板は、良い粘着性、高い耐熱性、高いガラス転移温度(Tg)、難燃性、低誘電率及び低損失等の特性の一つを有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明では以下の技術形態を採用する。
第一の局面では、本発明は、変性ビスマレイミドプレポリマー、ベンゾオキサジン樹脂、リン含有エポキシ樹脂、酸無水物類化合物、及び硬化促進剤を含むハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0009】
具体的に、本発明は、
分子構造に少なくとも2つのN-置換マレイミド基を有するマレイミド、芳香族ジアミン、及びヒドロキシ含有芳香族アミンを予備重合してなる変性ビスマレイミドプレポリマー:10~50重量部と、
ベンゾオキサジン樹脂:5~50重量部と、
リン含有エポキシ樹脂:30~90重量部と、
酸無水物類化合物:10~50重量部と、
硬化促進剤:0.01~1重量部と、
を含むハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
第二の局面では、本発明は、第一の局面に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物と溶媒とを含む樹脂ゴム液を提供する。
【0011】
第三の局面では、本発明は、補強材料と、含浸・乾燥により前記補強材料に付着した第一の局面に記載のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物とを含むプリント回路用プリプレグを提供する。
【0012】
第四の局面では、本発明は、第三の局面に記載のプリント回路用プリプレグを含有する絶縁板を提供する。
【0013】
第五の局面では、本発明は、第三の局面に記載のプリント回路用プリプレグと、前記プリプレグ外側の片側又は両側を覆う金属箔とを含む金属張積層板を提供する。
【0014】
第六の局面では、本発明は、少なくとも一枚の第三の局面に記載のプリント回路用プリプレグ、又は第四の局面に記載の絶縁板、又は第五の局面に記載の金属張積層板を含むプリント配線板を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、(1) ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物において変性ビスマレイミドプレポリマーを含有し、ビスマレイミドが硬化した後に高剛性の分子鎖を有する特徴を生かすことにより、高いTg及び耐熱性が得られ、また、活性のフェノール性水酸基がエポキシ樹脂と反応できるため、より高い靭性と粘着性が得られる。(2) 該ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物においてリン含有エポキシ樹脂を含有するため、良い粘着性を提供できるだけではなく、難燃効果も得られる。(3) 該ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物において酸無水物類化合物を含有するため、系に良い誘電特性を与えることができる。また、好ましくは、(4) 該ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物において無機フィラーを含有するため、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物の膨張率を大きく低下させることができるとともに、コストを下げ、難燃性を向上させることもできる。したがって、該組成物で製造した、ハロゲンフリー高多層プリント配線板に適用する銅張箔積層板は、良い粘着性、高い耐熱性、高いガラス転移温度(Tg)、難燃性、低誘電率及び低損失等の特性を有する。
【0016】
したがって、本発明によれば、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。前記ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を補強材料に含浸させて得られるプリント回路用プリプレグ、及び前記プリント回路用プリプレグを含む金属張積層板又は絶縁板、並びに前記プリント回路用プリプレグ、前記絶縁板又は前記金属張積層板を含むプリント配線板により、金属張積層板は、良い粘着性、高い耐熱性、高いガラス転移温度(Tg)、難燃性、低誘電率及び低損失等の特性の少なくとも一つを有し、これらの特性の少なくとも2つを有することが好ましく、これらの特性のすべてを有することがより好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態に基づいて、本発明の実施例における技術形態を明白に、全体的に説明する。説明される実施形態及び/又は実施例は、ただ本発明の一部の実施形態及び/又は実施例であり、すべての実施形態及び/又は実施例ではないことは自明である。本発明における実施形態及び/又は実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を尽くさずに得られるあらゆる他の実施形態及び/又はあらゆる他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に入る。
【0018】
本発明において、すべての数値特徴は、測定の誤差範囲内にあるものであり、例えば、限定された数値の10%以内、又は5%以内、又は1%以内である。
【0019】
本発明に記載している「含む」又は「含有」とは、前記成分以外にも、他の成分を有してもよい意味であり、これらの他の成分は、前記プリプレグに異なる特性を与える。また、本発明に記載している「含む」又は「含有」は、「実質的に……からなる」を含んでもよく、且つ「である」又は「からなる」に置き換えることができる。
【0020】
本発明において、具体的に示さなければ、含有量、割合などは重量で計算したものである。
【0021】
本発明では、用語「ハロゲンフリー難燃」は、本発明の組成物に有意に添加されるハロゲン含有難燃剤を含まない意味である。
【0022】
上述したように、本発明は、
分子構造に少なくとも2つのN-置換マレイミド基を有するマレイミド、芳香族ジアミン、及びヒドロキシ含有芳香族アミンを予備重合してなる変性ビスマレイミドプレポリマー:10~50重量部と、
ベンゾオキサジン樹脂:5~50重量部と、
リン含有エポキシ樹脂:30~90重量部と、
酸無水物類化合物:10~50重量部と、
硬化促進剤:0.01~1重量部と、
を含むハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0023】
変性ビスマレイミドプレポリマー
上述したように、前記変性ビスマレイミドプレポリマーは、分子構造に少なくとも2つのN-置換マレイミド基を有するマレイミド、芳香族ジアミン、及びヒドロキシ含有芳香族アミンを予備重合してなるものであってもよい。
分子構造に少なくとも2つのN-置換マレイミド基を有するマレイミドの実例は、下記の式(I)又は(II)で表される。
【0024】
【0025】
R1及びR2は、それぞれ独立的にH又はC1~C4のアルキル基である。II式において、nは1~8の整数である。
前記ヒドロキシ含有芳香族アミンは、下記から選択されるいずれか一つ、又はいずれか2つ以上の組み合わせである。
【0026】
【0027】
ただし、R1及びR2は、それぞれ独立的にH又はC1~C4のアルキル基である。
C1~C4のアルキル基の実例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及びt-ブチルを含んでもよい。
【0028】
本発明において、置換基であるR1とR2の置換位置について限定はない。例えば、一つのベンゼン環が一つの置換基、即ちR1又はR2を有する場合、R1又はR2は任意の可能な位置にあってもよい。一つのベンゼン環が2つの置換基、即ちR1及びR2を有する場合、R1及びR2は任意の可能な位置にあってもよく、且つ互いにo-位、m-位又はp-位にあってもよい。ナフタレン環の場合についても適用できる。
【0029】
前記芳香族ジアミンは、2つ以上4つ以下の芳香族環を有する芳香族ジアミンであってもよい。前記芳香族ジアミンの実例は、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’,5,5’-テトラエチルジフェニルメタン、4,4-ジアミノビフェニル、4-ジアミノアニソール、3,3’-ジメトキシビフェニルアミン及び3,3’-ジメチルビフェニルアミンから選択される一つ、又はいずれか2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0030】
前記変性ビスマレイミドプレポリマーは、以下の予備重合方法により調製されてもよい。分子構造に少なくとも2つのN-置換マレイミド基を有するマレイミド、ヒドロキシ含有芳香族アミン、芳香族ジアミン、及び有機溶媒をある比率に従って混合し、徐々に加熱して昇温させながら攪拌し、溶液を形成し、窒素ガス雰囲気で引き続き攪拌し、反応温度を約100~150℃にしたままで還流反応させ、反応時間が約0.5~8hであり、反応終了後、加熱を終了させて冷却し、アミノ基とフェノール性水酸基を含む構造を有する変性ビスマレイミドプレポリマー溶液を得る。
【0031】
前記変性ビスマレイミドプレポリマーにおいて、前記分子構造に少なくとも2つのN-置換マレイミド基を有するマレイミドから誘導される構造単位、前記芳香族ジアミンから誘導される構造単位及び前記ヒドロキシ含有芳香族アミンから誘導される構造単位の重量比が約(6~12):(0.5~3):(0.5~3)である。
【0032】
前記変性ビスマレイミドプレポリマーの分子量は、約500~2500であり、好ましい分子量の下限は600、750、900、1000又は1200である。仕込み重量比を制御することで予備重合反応におけるエンドキャッピングをコントロールし、前記変性ビスマレイミドプレポリマーを得る。分子量が約500未満である時、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物の流動性が大きくなり、金属張積層板の厚さの均一性が悪くなる。分子量が約2500を超える時、プリプレグの含浸性が悪くなり、絶縁層、金属張積層板又はプリント配線板の絶縁信頼性が劣化する。分子量は、「GB/T 21863-2008ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC) テトラヒドロフランを溶出溶媒とする」に規定される測定方法によって測定できる。
【0033】
ベンゾオキサジン樹脂
前記ベンゾオキサジン樹脂の実例は、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂、ジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂、及びビスフェノールフルオレン型ベンゾオキサジン樹脂から選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物を含んでもよく、好ましくは、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂、及びビスフェノールフルオレン型ベンゾオキサジン樹脂から選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物を含む。
【0034】
本発明において、ベンゾオキサジンは、硬化剤としての作用を果たし、高温で開環してヒドロキシを生じる。該ヒドロキシは、変性ビスマレイミド及びエポキシ樹脂と反応して架橋ネットワークを形成することができ、対応する硬化物に良好な総合性能を与えることができる。
【0035】
リン含有エポキシ樹脂
前記リン含有エポキシ樹脂の実例は、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド構造、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド構造、及び10-(2,5-ジヒドロキシナフチル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド構造を含有する多官能エポキシ樹脂から選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物であってもよい。
【0036】
前記リン含有エポキシ樹脂の分子量が約800~2500である。分子量は、「GB/T 21863-2008ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC) テトラヒドロフランを溶出溶媒とする」に規定される測定方法によって測定できる。
【0037】
本発明によれば、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物において、リン含有エポキシ樹脂以外にも、他の多官能エポキシ樹脂を含んでもよい。これにより、さらに樹脂組成物の架橋密度を向上させ、Tgを上げることができる。他の多官能エポキシ樹脂の実例として、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。高周波特性、耐熱性、熱膨張特性及び難燃性の観点から、ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0038】
酸無水物類化合物
前記酸無水物類化合物は、分子構造に2以上の酸無水物基を有する化合物を含む。
前記酸無水物類化合物の実例は、スチレン-マレイン酸無水物共重合体、フェニルプロピレン-マレイン酸無水物共重合体、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,4,5-ピロメリット酸二無水物から選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物であってもよい。
スチレン-マレイン酸無水物共重合体及びフェニルプロピレン-マレイン酸無水物共重合体において、スチレン又はフェニルプロピレンとマレイン酸無水物との共重合比は、モルで約1:10~10:1であってもよく、好ましくは約1:5~5:1であり、より好ましくは約1:2~2:1である。
【0039】
硬化促進剤
硬化促進剤の実例は、t-アミン、イミダゾール類、4-ジメチルアミノピリジン、トリフェニルホスフィン、又は三フッ化ホウ素モノエチルアミンのいずれか一種又は二種以上の混合物である。
t-アミンの実例として、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール及びその塩等が挙げられる。
イミダゾール類の実例として、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、及び1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0040】
前記ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物は、さらに無機フィラーを含んでもよい。
前記無機フィラーは、前記ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物の全重量の30%~70%を占める。
前記無機フィラーは、シリカ、軟性ガラス粉、タルク、カオリン、マイカパウダー、ベーマイト、ハイドロタルサイト、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、及びワラストナイトから選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物である。前記シリカは、球型シリカ、溶融シリカ、又は結晶シリカのいずれか一種又は二種以上の混合物である。
無機フィラーの粒径について、制限があり、粒径が好ましくは約0.01~30μmであり、より好ましくは約0.1~15μmである無機フィラーを使用する。
無機フィラーの粒径が約0.01μm未満である場合、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物の流動性が低下するため、プリプレグ及び金属張積層板を製造する時の成型性が悪くなり、空隙などが生じやすく、或いは、その表面積が大きくなるため、金属と樹脂との接着面積が減少し、プリント配線板の剥離強度の低下を招き、好ましくない。もう一方、粒径が約30μmを超える場合、プリント配線板の配線間又は絶縁層の絶縁信頼性が低下するため、好ましくない。
【0041】
本発明において、さらに難燃効果を向上させるために、他のリン含有構造の難燃剤、例えば、リン含有フェノール樹脂、ホスファゼン化合物、ポリリン酸アンモニウム、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(クロロイソプロピル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、ジメチル-メチルホスフェート、レゾルシノールビスキシレニルホスフェート、ポリリン酸メラミン、シアヌル酸メラミン、及びトリヒドロキシエチルイソシアヌレートのいずれか一種又は二種以上の組み合わせを導入してもよい。
他のリン含有構造の難燃剤を含有する場合、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物における他のリン含有構造の難燃剤の含有量は、約1~60重量%であってもよく、約2~40重量%であることが好ましい。
【0042】
ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物は、さらに溶媒を含んでもよい。溶媒の実例は、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、及びジメチルスルホンから選ばれる一種又は二種以上の混合物であってもよい。溶媒を含有する場合、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物における溶媒の含有量は、10~99.5重量%であってもよく、約20~99重量%が好ましい。
溶媒を含むハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物は、本発明において樹脂ゴム液と呼ばれてもよい。樹脂ゴム液は、上記のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させることで得られる。
【0043】
また、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物は、さらに様々な助剤を含有してもよい。助剤の具体例として、フィラー分散剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、潤滑剤等が挙げられる。これらの助剤は、単独で使用してもよく、いずれか二種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
本発明のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物は、公知の方法例えば、変性ビスマレイミドプレポリマーと、ベンゾオキサジン樹脂と、リン含有エポキシ樹脂と、酸無水物類化合物と、硬化促進剤と、必要に応じて溶媒、フィラー、難燃剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤及び潤滑剤から選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物とを配合、攪拌、混合することにより調製できる。
機械攪拌、乳化又はボールミル分散により、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を樹脂ゴム液に調製した後、この樹脂ゴム液を補強材料に含浸させ、さらに乾燥することによりプリプレグが得られる。該プリプレグと、金属箔、例えば銅箔又はアルミニウム箔とを真空プレス機にてホットプレスすることにより、金属張積層板を製造できる。
【0045】
補強材料の実例として、ガラスファイバークロス、ガラスファイバー不織布、及び有機不織布等が挙げられる。
【0046】
樹脂ゴム液の粘度を低下させるために、加熱しながら含浸することができる。樹脂ゴム液の温度が溶媒の沸点より低くなるように加熱し、含浸するときの樹脂ゴム液の温度が約20-90℃であることが好ましく、約25-55℃であることがさらに好ましい。
【0047】
もう一方、本発明は、補強材料と、含浸・乾燥により補強材料に付着した上記のハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物とを含むプリント回路用プリプレグをさらに提供することができる。
【0048】
さらに一方、本発明は、少なくとも一枚の上記に記載のプリント回路用プリプレグを含む、絶縁板又は金属張積層板をさらに提供することができる。例えば、前記金属張積層板は、少なくとも一枚の上記に記載のプリント回路用プリプレグと、前記プリプレグ外側の片側又は両側を覆う金属箔とを含んでもよい。
【0049】
さらに一方、本発明は、少なくとも一枚の上記に記載のプリント回路用プリプレグ、又は少なくとも一枚の上記に記載の絶縁板、又は少なくとも一枚の上記に記載の金属張積層板を含むプリント配線板をさらに提供することができる。
【0050】
本発明によれば、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。前記ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を補強材料に含浸させて得られるプリント回路用プリプレグ、及び前記プリント回路用プリプレグを含む金属張積層板又は絶縁板、並びに前記プリント回路用プリプレグ、前記絶縁板又は前記金属張積層板を含むプリント配線板により、金属張積層板は、良い粘着性、高い耐熱性、高いガラス転移温度(Tg)、難燃性、低誘電率及び低損失等の特性の少なくとも一つを有する。
【実施例】
【0051】
以下、具体的な実施の形態により、さらに本発明の技術形態を説明する。ただし、これらの実施例は、例を挙げて本発明を説明するためのものであり、本発明を制限するものではない。
【0052】
調製実施例
変性ビスマレイミドプレポリマーの調製
(1) プレポリマーA-1の調製
4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、m-アミノフェノール、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチルジフェニルメタンを、重量比10:1:1(即ち、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン10重量部、m-アミノフェノール1重量部、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチルジフェニルメタン1重量部)で仕込み、三ツ口フラスコに入れ、さらに溶媒であるジメチルホルムアミド12重量部を加え、攪拌して分散させ、窒素を流し、攪拌しながら徐々に昇温してより溶解させ、温度を150℃にしたままで、4 時間還流反応させ、そして冷却し、変性ビスマレイミドプレポリマーA-1の溶液が得られる。溶液の色は茶色がかった黒であり、溶液の固形分が50%であり、溶液粘度が52.5cPであった。
粘度は、LVDV-E型のデジタル粘度計で測定し、測定するときに、溶液を円錐板に充満し、ロータ液面マーク(ロータ杆上の槽)が溶液液面と同一平面になるまで溶液を引き続き増やした。
「GB/T 21863-2008ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC) テトラヒドロフランを溶出溶媒とする」に規定される測定方法によって測定し、A-1の分子量が500~2500であった。
【0053】
(2) プレポリマーA-2の調製
4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、4-アミノナフトール、及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホンを、重量比10:1:1(即ち、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン10重量部、4-アミノナフトール1重量部、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン1重量部)で仕込み、三ツ口フラスコに入れ、さらに溶媒であるジメチルホルムアミド12重量部を加え、攪拌して分散させ、窒素を流し、攪拌しながら徐々に昇温してより溶解させ、温度を150℃にしたままで、4時間還流反応させ、そして冷却し、変性ビスマレイミドA-2の溶液が得られ、溶液の色が茶色がかった黒であり、溶液の固形分が50%であり、溶液粘度が55.4cPであった。
粘度は、LVDV-E型のデジタル粘度計で測定し、測定するときに、溶液を円錐板に充満し、ロータ液面マーク(ロータ杆上の槽)が溶液液面と同一平面になるまで溶液を引き続き増やした。
「GB/T 21863-2008ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC) テトラヒドロフランを溶出溶媒とする」に規定される測定方法によって測定し、A-2の分子量が500~2500であった。
【0054】
実施例1~9及び比較例1~5
実施例1~9及び比較例1~5の熱硬化性樹脂組成物の組成及び固体量は、表1又は表2に示される。
【0055】
銅張板の調製
表1又は2に示される組成と量(重量部)に従って、実施例1~9及び比較例1~5の各熱硬化性樹脂組成物の成分を容器に入れ、攪拌して均一に混合させ、実施例1~9及び比較例1~5の各熱硬化性樹脂組成物を調製し、溶媒であるブタノンを加えて均一に混合させ、固形分が60%となるようにゴム液を調製し、これにより、実施例1~9及び比較例1~5の各樹脂ゴム液が得られた。2116電子グレードのガラス繊維布を樹脂ゴム液に浸漬し、オーブンにて150℃でベークし、実施例1~9及び比較例1~5の各2116プリプレグが得られる。実施例1~9及び比較例1~5の各2116プリプレグをそれぞれ6枚取り、各2116プリプレグの両面にさらに厚さ18μmの電解銅箔を覆い、ホットプレス機により真空でラミネートし、硬化温度200℃、時間120minで、実施例1~9及び比較例1~5の各銅張板を調製した。
【0056】
性能測定
1) ガラス転移温度Tg:動的熱機械分析(DMA)測定により、IPC-TM-650 2.4.24に規定されるDMA測定方法に従う。
2) 剥離強度:GB/T 4722-2017 7.2.1に規定される測定方法に従う。
3) 燃焼性:UL94「50W (20mm)垂直燃焼試験:V-0、V-1及びV-2」測定方法に従って測定し、難燃 V-0と認定する。
4) 銅箔付きの耐浸漬はんだ付け時間:両面に銅箔付きの板材サンプル100mm×100mmサイズを三つ取り、それぞれ288℃のはんだに浸漬し、層間剥離・膨れが起こさない時間の平均値を採用する。
5) Z軸膨張(Tg前の熱膨張率α1を採用する):測定は、静的熱分析装置 (TMA)で測定し、測定は基準IPC-TM-650 2.4.24に従って行われ、ここで、Z軸は積層板サンプルの厚さ方向を表す。
6) PCT圧力容器熱応力試験:銅箔をエッチングして除去した板材100mm×100mmサイズを三つ取り、105±3 KPaの圧力で高圧鍋で2時間蒸煮し、取り出した板材を288℃のはんだに浸漬し、層間剥離・膨れが起こらない時間の平均値を採用する。
7) 吸水率:銅箔をエッチングして除去した板材100mm×100mmサイズを三つ取り、秤量し、105±3KPaの圧力で高圧鍋で2時間蒸煮し、取り出した板材を再度秤量し、重量の増加割合を計算する。
8) 電気性能Dk/Df:1GHzで、平行板法により測定し、基準IPC-TM-650 2.5.5.9に従って行う。
9) 分子量:「GB/T 21863-2008ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC) テトラヒドロフランを溶出溶媒とする」に規定される測定方法に従って行う。
【0057】
実施例及び比較例で用いられた各成分は、詳しく以下の通りである。
A.変性ビスマレイミドプレポリマー
(A-1)上記の調製実施例で調製されたプレポリマーA-1
(A-2)上記の調製実施例で調製されたプレポリマーA-2
(A-3)BMI樹脂(4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、洪湖双馬樹脂会社)
【0058】
B.エポキシ樹脂
(B-1)KDP-555MC80 (DOPO-HQ変性エポキシ樹脂、韓国国都化学会社)
(B-2)HP-7200H(DCPD-フェノール型エポキシ樹脂、日本DIC株式会社)
(B-3)NC-3000H(ビフェニル-フェノール型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社)
【0059】
C.ベンゾオキサジン樹脂
(C-1)D125(ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂、四川東材科技会社)
(C-2)LZ8270(フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂、アメリカHuntsman Advanced Materials)
【0060】
D.SMA-EF40(スチレン-マレイン酸無水物オリゴマー、アメリカCrayValley)
【0061】
E.XZ92741(リン含有ノボラック樹脂、アメリカOLIN化学会社)
【0062】
F.SPB-100 (ホスファゼン樹脂、日本大塚化学株式会社)
【0063】
G.2E4MZ(2-エチル-4-メチルイミダゾール、日本四国化成株式会社)
【0064】
H.MEGASIL525(溶融シリカ、Sibelco会社、粒径D50が2.6μmであり、D100が15μm未満)
【0065】
【0066】
【0067】
実施例1~5及び6~9はそれぞれ異なるプレポリマーを用いて、実施例1~5ではプレポリマーA-1を用いたが、実施例6-9ではプレポリマーA-2を用いた。
実施例2は、実施例1を基にして、無機フィラーとリン含有エポキシ樹脂の量を減らし、リン含有ノボラック樹脂を導入した。
実施例3、4及び5は、プレポリマーA-1に基づいて、不同なタイプのエポキシ樹脂と不同なタイプのベンゾオキサジン樹脂を用いた。
実施例6は、実施例1に基づいて、プレポリマーA-1の代わりに、プレポリマーA-2を用いた。
実施例7、8及び9は、プレポリマーA-2に基づいて、不同なタイプのエポキシ樹脂と不同なタイプのベンゾオキサジン樹脂を用いた。
比較例1では、用いられたのは無変性のビスマレイミドモノマーである。比較例2では、スチレンマレイン酸無水物共重合体の使用量を減少させ、ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂の使用量を増加させた。比較例3では、変性ビスマレイミドプレポリマーの使用量を減少させ、ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂の使用量を増加させた。比較例4では、ベンゾオキサジン樹脂を用いず、ビスマレイミドプレポリマーの使用量を増加させた。比較例5では、リン含有エポキシ樹脂を用いず、ホスファゼン樹脂を用いてリン含有量を高めた。
実施例及び比較例の性能をそれぞれ表3及び4に示す。
【0068】
【0069】
【0070】
実施例1、6及び比較例1から、ビスマレイミドは、予備重合変性した後、樹脂混合物との相容性が高くなり、反応性が向上し、性能が明らかに良くなり、一方、予備重合しなかったビスマレイミドモノマーは、相容性が悪く、樹脂混合物に析出しやすく、板材の性能が悪く、且つ一部の性能指標は測定できないことが分かる。
実施例2では、リン含有ノボラックを導入し、無機フィラーの含有量を低下させた結果、Tg及び誘電特性はやや低下した。
実施例3、4及び5はプレポリマーA-1に基づいて、不同なタイプのエポキシ樹脂とベンゾオキサジン樹脂を採用し、その結果を比較する。フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂8270を使用した実施例4は、ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂D125を使用した実施例3と比べ、Tg(DMA)がやや高いが、誘電特性が実施例3に及ばない。ビフェニルエポキシ樹脂NC-3000Hを使用した実施例5は、DCPDエポキシ樹脂HP-7200Hを使用した実施例4と比べ、良い誘電特性を得られたが、ビフェニルエポキシのコストは比較的に高い。
実施例7、8及び9は、プレポリマーA-2に基づいて実施し、設計思想がプレポリマーA-1を用いた実施例と同じである。予備重合してA-2を調製した時に使用されるヒドロキシ含有芳香族アミンは、ナフタレン環構造を有するため、実施例7、8及び9のTgはいずれも実施例3、4及び5より高いが、誘電特性については実施例3、4及び5の方がより優れており、他の性能、例えばPCT、吸水率、耐浸漬はんだ付け等については差異が大きくない。
比較例2では、スチレンマレイン酸無水物オリゴマーSMA-EF40を5重量部まで減少させ、ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂D125の使用量を増加させた結果、誘電特性が明らかに低下した。比較例3では、変性ビスマレイミドプレポリマーを5重量部まで減少させ、ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂D125の使用量を増加させた結果、板材Tgが178℃に低下し、PCT測定において層間剥離・膨れが起こり、同時にZ軸α1が高くなった。比較例4では、ベンゾオキサジン樹脂を用いず、変性ビスマレイミドプレポリマー及びスチレン-マレイン酸無水物オリゴマーを増加させた結果、板材の吸水率が高くなり、PCT測定において層間剥離・膨れが起こった。比較例5では、リン含有エポキシ樹脂を用いず、20重量部のホスファゼンを導入して系のリン含有量を向上させることにより難燃を実現したが、板材は、Tgが低下し、吸水率が向上し、PCT測定において層間剥離・膨れが起こった。
【0071】
したがって、本発明によれば、(1) ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物において変性ビスマレイミドプレポリマーを含有し、ビスマレイミドが硬化した後に高剛性の分子鎖を有する特徴を生かすことにより、高いTg及び耐熱性が得られ、また、活性のフェノール性水酸基がエポキシ樹脂と反応できるため、より高い靭性と粘着性が得られる。(2) 該ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物においてリン含有エポキシ樹脂を含有するため、良い粘着性を提供できるだけではなく、難燃効果も得られる。(3) 該ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物において酸無水物類化合物を含有するため、系に良い誘電特性を与えることができる。また、好ましくは、(4) 該ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物において無機フィラーを含有するため、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物の膨張率を大きく低下させることができるとともに、コストを下げ、難燃性を向上させることもできる。したがって、該組成物で製造した、ハロゲンフリー高多層プリント配線板に適用する銅張箔積層板は、良い粘着性、高い耐熱性、高いガラス転移温度(Tg)、難燃性、低誘電率及び低損失等の特性を有する。
【0072】
本発明によれば、ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。前記ハロゲンフリー難燃熱硬化性樹脂組成物を補強材料に含浸させて得られるプリント回路用プリプレグ、及び前記プリント回路用プリプレグを含む金属張積層板又は絶縁板、並びに前記プリント回路用プリプレグ、前記絶縁板又は前記金属張積層板を含むプリント配線板により、金属張積層板は、良い粘着性、高い耐熱性、高いガラス転移温度(Tg)、難燃性、低誘電率及び低損失等の特性の少なくとも一つを有し、これらの特性の少なくとも2つを有することが好ましく、これらの特性のすべてを有することがより好ましい。
【0073】
当業者にとって、本発明の趣旨と範囲を超えない限り、本発明の実施例を変更や変形してもよいことは自明である。このように、本発明のこれらの変更や変形が本発明の請求の範囲及びその均等な技術の範囲内であれば、本発明は、これらの変更や変形も含む。