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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 B
H02M3/28 X
H02M3/28 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019116013
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021002951
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】日本電産モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】山上 正寛
(72)【発明者】
【氏名】古井 崇介
(72)【発明者】
【氏名】安田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】今井 基裕
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-125578(JP,A)
【文献】特開2014-131466(JP,A)
【文献】特開2016-111724(JP,A)
【文献】特開2014-240854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された直流電圧を所定電圧値の直流電圧に変換する第1コンバータと、
前記入力端子に入力された直流電圧を前記所定電圧値と異なる電圧値の直流電圧に変換する第2コンバータと、
前記第1コンバータで変換された直流電圧が出力される第1出力端子と、
前記第2コンバータで変換された直流電圧が出力される第2出力端子と、
前記第1コンバータの出力電圧を電源として動作し、外部から与えられる第1信号に基づいて前記第2コンバータを駆動する制御部と、
前記第1コンバータの出力電圧の消失時または低下時に、前記第2コンバータの出力電圧を前記制御部に供給して、当該制御部の電源をバックアップするバックアップ制御回路と、を備え、
前記第2コンバータは、前記入力端子に入力された直流電圧をスイッチングするスイッチング回路と、前記スイッチング回路でスイッチングされた電圧を整流する整流回路とを含み、
前記第1信号に基づいて前記制御部が出力する第2信号により、前記スイッチング回路が動作し、前記第1コンバータの出力電圧の消失時または低下時に前記制御部が出力する第3信号により、前記バックアップ制御回路が動作する、スイッチング電源装置において、
前記制御部は、前記第1信号の入力がなくなった時点から一定時間の間は、前記第1信号が再び入力されても前記第2信号の出力を禁止するとともに、前記第3信号を出力することにより前記バックアップ制御回路を動作状態とし、
前記一定時間が経過するまでに、前記バックアップ制御回路を介して、前記整流回路に備わるコンデンサの電荷が放電される、ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記制御部は、前記一定時間が経過した時点で、前記第1信号が入力されている場合は、前記第2信号を出力するとともに、前記第3信号の出力を停止する、ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスイッチング電源装置において、
前記制御部からの前記第2信号に基づいて、前記スイッチング回路を駆動する駆動回路と、
前記第2コンバータの出力電圧に応じて、前記駆動回路に対するフィードバック制御を行うフィードバック回路と、をさらに備え、
前記一定時間の間、前記第2信号の出力が禁止されることにより、前記駆動回路および前記スイッチング回路が非動作状態となって、前記第2コンバータは動作を停止し、当該状態下で、前記コンデンサの電荷が前記バックアップ制御回路を介して放電される、ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のスイッチング電源装置において、
前記バックアップ制御回路は、
前記第2コンバータの出力電圧を前記制御部へ供給するための供給路を形成する第1スイッチング素子と、
前記制御部からの前記第3信号によりオンして、第1スイッチング素子をオンさせる第2スイッチング素子と、を含み、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子によって、前記コンデンサの放電経路が形成される、ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載のスイッチング電源装置において、
前記第1スイッチング素子は、前記第2出力端子と前記制御部との間に設けられた第1トランジスタであり、
前記第2スイッチング素子は、前記第1トランジスタのベースとグランドとの間に設けられた第2トランジスタであり、
前記放電経路は、前記第1トランジスタのエミッタから、前記第2トランジスタのコレクタおよびエミッタを介してグランドに至る放電経路である、ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を降圧または昇圧するDC-DCコンバータを備えたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば電気自動車やハイブリッドカーには、走行用モータを駆動するための高電圧バッテリが搭載されるとともに、このバッテリの電圧を降圧して各部へ供給するための電源装置が搭載される。この電源装置としては、直流電圧をスイッチングして交流電圧に変換し、この交流電圧を整流して所定の電圧値の直流電圧に変換するDC-DCコンバータを備えたスイッチング電源装置が一般に用いられている。このようなスイッチング電源装置は、たとえば特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献1のスイッチング電源装置は、出力電圧の異常時に動作停止を保持する保護機能と、動作停止保持を解除するリセット機能とを備えている。異常時に保護機能が働いてから所定時間が経過すると、リセット信号発生器からリセット信号が出力される。このリセット信号により制御されるスイッチがオンすると、DC-DCコンバータを制御する制御ICの電源となるコンデンサが放電され、制御ICの電源電圧が低下して、動作停止保持が解除される。
【0004】
特許文献2のスイッチング電源装置では、異常検出時に出力されるラッチ信号によりスイッチング動作を強制的に停止させた後、スイッチング素子の制御回路を再起動するに際して、当該制御回路に電源を供給するコンデンサの電荷を放電回路を介して予め放電させることで、再起動時間を短くするようにしている。
【0005】
特許文献1、2におけるコンデンサの放電回路は、コンデンサの電荷を放電するためだけに設けられた専用の回路となっている。また、スイッチング電源装置においては、後で詳述するように、DC-DCコンバータを再起動するまでの時間が短い場合に、トランスの二次側に設けられた出力コンデンサの電荷に基因して、コンバータの出力に過電圧が発生する場合があるが、この対策について特許文献1、2では言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-174633号公報
【文献】特開2014-64376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、専用の放電回路を設けることなく、コンバータの再起動時に過電圧が発生するのを抑制できるスイッチング電源装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスイッチング電源装置は、直流電圧が入力される入力端子と、この入力端子に入力された直流電圧を所定電圧値の直流電圧に変換する第1コンバータと、入力端子に入力された直流電圧を前記所定電圧値と異なる電圧値の直流電圧に変換する第2コンバータと、第1コンバータで変換された直流電圧が出力される第1出力端子と、第2コンバータで変換された直流電圧が出力される第2出力端子と、第1コンバータの出力電圧を電源として動作し、外部から与えられる第1信号に基づいて第2コンバータを駆動する制御部と、第1コンバータの出力電圧の消失時または低下時に、第2コンバータの出力電圧を制御部に供給して、当該制御部の電源をバックアップするバックアップ制御回路とを備えている。第2コンバータは、入力端子に入力された直流電圧をスイッチングするスイッチング回路と、スイッチング回路でスイッチングされた電圧を整流する整流回路とを含む。第1信号に基づいて制御部が出力する第2信号により、スイッチング回路が動作し、第1コンバータの出力電圧の消失時または低下時に制御部が出力する第3信号により、バックアップ制御回路が動作する。制御部は、第1信号の入力がなくなった時点から一定時間の間は、第1信号が再び入力されても第2信号の出力を禁止するとともに、第3信号を出力することによりバックアップ制御回路を動作状態とする。そして、一定時間が経過するまでに、バックアップ制御回路を介して、整流回路に備わるコンデンサの電荷が放電される。
【0009】
このようにすると、第1信号が停止してから再び入力されるまでの時間が短くても、第2信号が出力されない一定時間の間は、第2コンバータが再起動せず、この間にコンデンサの電荷はバックアップ制御回路を通して放電されるので、第2コンバータは再起動時に過電圧を発生しなくなる。また、既存のバックアップ制御回路を利用してコンデンサの電荷を放電させるので、専用の放電回路を設ける必要がなくなり、部品点数の増加を抑えて、安価なスイッチング電源装置を実現することができる。
【0010】
本発明において、制御部は、上記一定時間が経過した時点で、第1信号が入力されている場合は、第2信号を出力するとともに、第3信号の出力を停止してもよい。
【0011】
本発明において、制御部からの第2信号に基づいて、スイッチング回路を駆動する駆動回路と、第2コンバータの出力電圧に応じて、駆動回路に対するフィードバック制御を行うフィードバック回路とがさらに備わっていてもよい。この場合、前記一定時間の間、第2信号の出力が禁止されることにより、駆動回路およびスイッチング回路が非動作状態となって、第2コンバータは動作を停止し、当該状態下で、コンデンサの電荷がバックアップ制御回路を介して放電される。
【0012】
本発明において、バックアップ制御回路は、第2コンバータの出力電圧を制御部へ供給するための供給路を形成する第1スイッチング素子と、制御部からの第3信号によりオンして、第1スイッチング素子をオンさせる第2スイッチング素子とを含んでいてもよい。この場合、第1スイッチング素子および第2スイッチング素子によって、コンデンサの放電経路が形成される。
【0013】
また、第1スイッチング素子は、第2出力端子と制御部との間に設けられた第1トランジスタであり、第2スイッチング素子は、第1トランジスタのベースとグランドとの間に設けられた第2トランジスタであり、コンデンサの放電経路は、第1トランジスタのエミッタから、第2トランジスタのコレクタおよびエミッタを介してグランドに至る放電経路であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスイッチング電源装置によれば、専用の放電回路を設けることなく、コンバータの再起動時に過電圧が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によるスイッチング電源装置を示したブロック図である。
図2図1の要部の回路図である。
図3図2の回路における放電経路を示した図である。
図4図2の回路の動作を説明するためのタイムチャートである。
図5】従来の問題点を説明するための回路図である。
図6】従来の問題点を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。以下では、自動四輪車などの車両に搭載されるスイッチング電源装置を例に挙げる。
【0017】
図1において、スイッチング電源装置100は、入力端子T1、T2と、出力端子T3、T4と、出力端子T5、T6と、第1コンバータ101と、第2コンバータ102とを備えている。
【0018】
第1コンバータ101は、メイン側のDC-DCコンバータであり、入力端子T1、T2に入力された直流電圧Viを所定電圧値の直流電圧V1に変換して、出力端子T3、T4へ出力する。第2コンバータ102は、サブ側のDC-DCコンバータであり、入力端子T1、T2に入力された直流電圧Viを前記所定電圧値と異なる電圧値の直流電圧V2に変換して、出力端子T5、T6へ出力する。出力端子T3、T4は、本発明における「第1出力端子」に相当し、出力端子T5、T6は、本発明における「第2出力端子」に相当する。
【0019】
一例として、入力端子T1、T2の入力電圧Viは200V、出力端子T3、T4の出力電圧V1は12V、出力端子T5、T6の出力電圧V2は10Vである。すなわち、本例の場合、第1コンバータ101と第2コンバータ102は、いずれも、高電圧を低電圧に変換する降圧型のDC-DCコンバータである。
【0020】
入力端子T1は、直流電圧Viを供給するバッテリ(図示省略)の正極に接続され、入力端子T2は、同バッテリの負極に接続される。出力端子T3、T4には、出力電圧V1を電源として作動する負荷や、出力電圧V1によって充電されるバッテリなどが接続される(図示省略)。出力端子T5、T6には、出力電圧V2を電源として作動する制御回路などが接続される(図示省略)。端子T1~T6のうち、出力端子T4と出力端子T6は、スイッチング電源装置100の外部において電気的に接続されて、共通のグランドに接地される(図示省略)。
【0021】
スイッチング電源装置100は、さらに、電圧検出回路6と、内部電源回路7と、バックアップ制御回路8と、制御部9と、ダイオードD1~D3とを備えている。
【0022】
電圧検出回路6は、出力端子T3と制御部9との間に設けられていて、第1コンバータ101の出力電圧V1を検出する。内部電源回路7は、バックアップ制御回路8と制御部9との間に設けられていて、通常時は出力電圧V1に基づいて制御部9に電源電圧を供給する。バックアップ制御回路8は、出力端子T5と内部電源回路7との間に設けられていて、第1コンバータ101の出力電圧V1が、断線や故障により消失したり閾値未満まで低下したりした場合(異常時)に、第2コンバータ102の出力電圧V2を、制御部9のバックアップ電源として内部電源回路7へ供給する。
【0023】
ダイオードD1は、出力端子T3と内部電源回路7との間に設けられていて、通常時において、第1コンバータ101の出力電圧V1を内部電源回路7へ供給するための供給路を形成する。ダイオードD2は、バックアップ制御回路8と内部電源回路7との間に設けられていて、出力電圧V1の異常時に、バックアップ制御回路8からのバックアップ電源(出力電圧V2)を内部電源回路7へ供給するための供給路を形成する。ダイオードD3は、出力端子T5とバックアップ制御回路8との間に設けられていて、第2コンバータ102の出力電圧V2をバックアップ制御回路8へ供給するための供給路を形成する。なお、ダイオードD3は省略してもよい。
【0024】
制御部9は、マイクロコンピュータから構成されており、第1コンバータ101、第2コンバータ102、およびバックアップ制御回路8の各動作を制御する。制御部9には、車載ECU(電子制御ユニット)などの外部装置から、外部信号として出力要求信号S1が入力される。この信号S1は、第2コンバータ102の動作を要求する信号であり、本発明における「第1信号」に相当する。また、制御部9は、出力要求信号S1を受けて、出力許可信号S2を第2コンバータ102へ出力する。この信号S2は、第2コンバータ102に対して動作を許可する信号であり、本発明における「第2信号」に相当する。さらに、制御部9は、電圧検出回路6が出力電圧V1の消失または低下を検出したときに、バックアップ指令信号S3をバックアップ制御回路8へ出力する。この信号S3は、バックアップ制御回路8に備わるスイッチング素子(後述)をオンさせるための信号であり、本発明における「第3信号」に相当する。
【0025】
第1コンバータ101は、入力フィルタ1、スイッチング回路2、絶縁トランス3、整流回路4、および平滑回路5を備えている。これらの各部の構成は公知であり、また、第1コンバータ101自体は本発明と直接関係しないので、第1コンバータ101についての詳細な説明は割愛する。なお、本例の第1コンバータ101は、絶縁トランス3によって入力側と出力側が絶縁された、絶縁型のDC-DCコンバータである。
【0026】
第2コンバータ102は、スイッチング回路20、絶縁トランス21、主巻線側の整流回路22、補助巻線側の整流回路23、絶縁回路26、PWM(Pulse Width Modulation)回路27、およびフィードバック回路28を備えている。第2コンバータ102は、前述したように、入力端子T1、T2に入力された直流電圧Viを降圧して出力する機能と、第1コンバータ101の出力異常時に制御部9へバックアップ電源を供給する機能とを有している。本例の第2コンバータ102も、絶縁トランス21によって入力側と出力側が絶縁された、絶縁型のDC-DCコンバータである。なお、図1では、補助巻線側の整流回路23の後段の回路を省略してある。
【0027】
図2は、第2コンバータ102におけるスイッチング回路20、絶縁トランス21、および主巻線側の整流回路22の具体的な回路を示している。また、図2には、バックアップ制御回路8の具体的な回路も示されている。ここに示した回路は一例であって、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、図2においては、図1の第2コンバータ102を構成するブロックのうち、補助巻線側の整流回路23および絶縁回路26を省略してある。
【0028】
スイッチング回路20は、スイッチング素子Q3を有している。本例では、このスイッチング素子Q3はFET(電界効果トランジスタ)であり、絶縁トランス21の一次巻線Laとグランドとの間に接続されている。スイッチング素子Q3のゲートはPWM回路27に接続されており、PWM回路27からゲートに与えられるPWM信号により、スイッチング素子Q3はオンオフ動作を行う。
【0029】
絶縁トランス21は、一次巻線Laと、二次巻線Lb、Lcとを有している。二次巻線のうち、巻線Lbは主巻線であり、巻線Lcは補助巻線である。補助巻線Lcは本発明と直接関係しないため、巻線の後段の回路は省略してある。絶縁トランス21の一次側と二次側は、電気的に絶縁されている。一次巻線Laに印加される入力電圧Viは、スイッチング素子Q3のオンオフによりスイッチングされて交流電圧(パルス電圧)となり、絶縁トランス21の二次巻線Lb、Lcに伝達される。
【0030】
二次巻線Lbの後段に設けられた整流回路22は、ダイオードD4とコンデンサC1とを有している。ダイオードD4は、二次巻線Lbに生じる交流電圧を整流して、直流電圧にするための整流ダイオードである。コンデンサC1は、ダイオードD4で整流された直流電圧を平滑して、出力端子T5、T6から出力するための出力コンデンサである。ダイオードD4は、二次巻線Lbの一端と出力端子T5との間に接続されており、コンデンサC1は、出力端子T5、T6間に接続されている。
【0031】
バックアップ制御回路8は、第1トランジスタQ1と、第2トランジスタQ2と、抵抗R1とを有している。第1トランジスタQ1は、出力端子T5と制御部9との間に設けられ、第2コンバータ102の出力電圧V2を制御部9へ供給するための供給路を形成する。第2トランジスタQ2は、第1トランジスタQ1のベースとグランドとの間に設けられ、制御部9からのバックアップ指令信号S3によりオンして、第1トランジスタQ1をオンさせる。抵抗R1は、第1トランジスタQ1のベースに接続されたベース抵抗である。第1トランジスタQ1は、本発明における「第1スイッチング素子」に相当し、第2トランジスタQ2は、本発明における「第2スイッチング素子」に相当する。
【0032】
第1トランジスタQ1のエミッタは、ダイオードD3を介して、出力端子T5に接続されている。第1トランジスタQ1のコレクタは、ダイオードD2を介して、内部電源回路7(図1)に接続されている。第1トランジスタQ1のベースは、抵抗R1を介して第2トランジスタQ2のコレクタに接続されている。第2トランジスタQ2のベースは、制御部9に接続されており、第2トランジスタQ2のエミッタは、グランドに接地されている。第1トランジスタQ1および第2トランジスタQ2によって、コンデンサC1の放電経路が形成される。これについては、後で詳しく説明する。
【0033】
図1に戻って、絶縁回路26は、制御部9から出力された出力許可信号S2を電気的に絶縁しつつPWM回路27へ伝達する回路であって、アイソレータから構成される。
【0034】
PWM回路27は、絶縁回路26からの出力許可信号S2を受けて、所定のデューティを持ったPWM信号を生成し、これをスイッチング回路20へ出力する。このPWM信号は、前述のようにスイッチング素子Q3(図2)のゲートに与えられる。フィードバック回路28は、第2コンバータ102の出力電圧V2を目標値と比較し、出力電圧V2が目標値と一致するように、PWM回路27に対してフィードバック制御を行う。すなわち、出力電圧V2が目標値より高い場合は、PWM信号のデューティを下げ、出力電圧V2が目標値より低い場合は、PWM信号のデューティを上げるように、フィードバック制御が行われる。
【0035】
次に、以上の構成を備えたスイッチング電源装置100において、第2コンバータ102の再起動に伴う問題点とその解決策について説明する。
【0036】
最初に、図5および図6に基づいて、第2コンバータ102の再起動に伴う問題点を説明する。図6のタイムチャートにおいて、(a)は第2コンバータ102の出力電圧V2、(b)は外部から制御部9に入力される出力要求信号S1、(c)は制御部9から出力される出力許可信号S2、(d)は制御部9から出力されるバックアップ指令信号S3を表している。t1~t4は時刻を表している。信号S1~S3の「H」(High)は、信号が出力されている状態を表し、「L」(Low)は、信号が出力されていない状態を表している。
【0037】
時刻t1~t2の間は、出力要求信号S1が「H」であり、これを受けて出力許可信号S2も「H」となっている。この区間では、制御部9から出力される出力許可信号S2によってPWM回路27が駆動され、第2コンバータ102が動作状態となっている。
【0038】
時刻t2において、出力要求信号S1が「L」になると、これを受けて出力許可信号S2も「L」となる。すなわち、制御部9から出力許可信号S2が出力されなくなって、第2コンバータ102は非動作状態となる。この非動作状態が時間W1だけ継続した後、時刻t3において、再び出力要求信号S1が「H」になると、これに応じて出力許可信号S2も「H」となる。このため、制御部9から出力される出力許可信号S2によって、第2コンバータ102は再び動作状態となる。すなわち、時刻t3で第2コンバータ102が再起動する。
【0039】
ここで、第2コンバータ102の再起動までの時間W1が短い場合、再起動の時点(時刻t3)において、図6(a)に示すような過電圧Zが、第2コンバータ102の出力に発生する。これは、時間W1が短いために、この間に整流回路22のコンデンサC1の電荷を完全に放電することができないことに基因している。以下、その詳細について説明する。
【0040】
図5は、第2コンバータ102の再起動の時点(時刻t3)における回路状態を示している。再起動時には、PWM回路27に「H」の出力許可信号S2が与えられるので、PWM回路27によりスイッチング回路20のスイッチング素子Q3はオンオフ動作を行う。これにより、第2コンバータ102は動作状態となる。一方、出力許可信号S2が出力されなくなった時点(時刻t2)で、バックアップ指令信号S3は、図6(d)に示すように「L」のままであり、この状態は第2コンバータ102の再起動時(時刻t3)でも変わらない。したがって、時刻t2~t3(時間W1)の間は、バックアップ指令信号S3が出力されないので、バックアップ制御回路8の第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2は、図5に示すように共にオフとなっている。このため、第2コンバータ102の再起動までの時間W1が短いと、コンデンサC1の電荷が放電されず、コンデンサC1の両端電圧は高い状態を維持するので、これが再起動時の過電圧Zとなって現れる(図6(a))。
【0041】
次に、本発明による上記問題点の解決策について、図3および図4を参照しながら説明する。
【0042】
本発明では、図4(c)に示すように、制御部9に出力要求信号S1が入力されなくなった時点(時刻t2)から、一定時間W2(W2>W1)の間は、時刻t3で再び出力要求信号S1が制御部9に入力されても、出力許可信号S2が「L」に維持される。すなわち、この間、制御部9は出力許可信号S2の出力を禁止する。また、図4(d)に示すように、一定時間W2の間は、バックアップ指令信号S3が「H」となる。すなわち、この間、制御部9はバックアップ指令信号S3を出力する。
【0043】
図3は、図4の時間W2(時刻t2~t4)における回路状態を示している。この間、出力許可信号S2は「L」となって、PWM回路27に出力許可信号S2が与えられないので、PWM回路27は動作しない。このため、スイッチング回路20のスイッチング素子Q3はオフしており、第2コンバータ102は動作を停止する。一方、時間W2の間は、バックアップ指令信号S3が「H」となって、制御部9からバックアップ制御回路8にバックアップ指令信号S3が与えられるので、バックアップ制御回路8の第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2が、共にオンとなる。
【0044】
2つのトランジスタQ1、Q2がオンすることで、図3に太線の矢印で示したような、コンデンサC1に蓄積された電荷の放電経路が形成される。詳しくは、コンデンサC1→ダイオードD3→第1トランジスタQ1のエミッタ→ベース抵抗R1→第2トランジスタQ2のコレクタ→第2トランジスタQ2のエミッタ→グランドの経路で、コンデンサC1の電荷が放電される。
【0045】
この場合、放電経路の時定数を適切に選定することにより、図4の時間W2内、すなわちバックアップ制御回路8の各トランジスタQ1、Q2がオンしている間に、コンデンサC1の放電を完了させることができる。また、時刻t3で出力要求信号S1が「H」になっても、この時点では第2コンバータ102が再起動しないので、時刻t3で第2コンバータ102の出力に図6(a)のような過電圧Zが発生することはない。
【0046】
その後、時間W2が経過した時点(時刻t4)で、出力要求信号S1が「H」となっている場合、すなわち制御部9に出力要求信号S1が入力されている場合は、制御部9は、図4(c)に示すように再び出力許可信号S2を出力するとともに、図4(d)に示すようにバックアップ指令信号S3の出力を停止する。制御部9から出力される出力許可信号S2により、第2コンバータ102は、図4(a)に示すように時刻t4で再起動する。この時点では、前述したように、コンデンサC1の電荷の放電が完了しているので、第2コンバータ102の出力に過電圧は発生しない。また、時刻t4においては、制御部9からのバックアップ指令信号S3の出力がなくなることで、バックアップ制御回路8の各トランジスタQ1、Q2は、オンからオフに切り替わる。
【0047】
以上のように、上述した実施形態では、制御部9への出力要求信号S1の入力がなくなった時点(時刻t2)から一定時間W2の間は、出力要求信号S1が再び入力されても、制御部9は、出力許可信号S2の出力を禁止する一方、バックアップ指令信号S3を出力して、バックアップ制御回路8を動作状態とする。そして、一定時間W2が経過するまでに、バックアップ制御回路8を介して、整流回路22に備わるコンデンサC1の電荷が放電されるようにしている。
【0048】
このため、出力要求信号S1が停止してから再び入力されるまでの時間W1が短くても、出力許可信号S2が出力されない一定時間W2の間は、第2コンバータ102が再起動せず、この間にコンデンサC1の電荷はバックアップ制御回路8を通して放電される。その結果、第2コンバータ102は再起動時(時刻t4)に過電圧を発生しなくなる。
【0049】
また、バックアップ制御回路8の各トランジスタQ1、Q2は、本来は第2コンバータ102の出力電圧V2をバックアップ用電源として制御部9へ供給するためのものであるが、上述した実施形態では、これらのトランジスタQ1、Q2をコンデンサC1の放電経路として併用している。このため、バックアップ制御回路8とは別に専用の放電回路を設ける必要がなくなり、部品点数の増加を抑えて、安価なスイッチング電源装置100を実現することができる。
【0050】
本発明では、上述した実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0051】
前記実施形態では、図4(d)に示したように、バックアップ指令信号S3が出力される期間を、出力許可信号S2が停止している期間W2と同じにしたが、バックアップ指令信号S3の出力期間は、W2より短くW1より長い期間であってもよい。また、W1の間だけバックアップ指令信号S3が出力されるようにしてもよい。
【0052】
前記実施形態では、第1コンバータ101と第2コンバータ102が共に降圧型のDC-DCコンバータである例を挙げたが、各コンバータ101、102は昇圧型のDC-DCコンバータであってもよい。また、各コンバータ101、102の一方が降圧型のDC-DCコンバータで、他方が昇圧型のDC-DCコンバータであってもよい。
【0053】
前記実施形態では、第1コンバータ101と第2コンバータ102が共に絶縁型のDC-DCコンバータである例を挙げたが、各コンバータ101、102は非絶縁型のDC-DCコンバータであってもよい。
【0054】
前記実施形態では、図1に示したように、電圧検出回路6と内部電源回路7が制御部9と別に設けられているが、電圧検出回路6と内部電源回路7を制御部9に組み込んでもよい。
【0055】
前記実施形態では、スイッチング回路20を駆動する駆動回路として、PWM回路27を例に挙げたが、PWM以外の方式によりスイッチング回路20を駆動する駆動回路を設けてもよい。
【0056】
前記実施形態では、バックアップ制御回路8に備わるスイッチング素子として、トランジスタQ1、Q2を例に挙げたが、トランジスタに代えてFETやリレーなどを用いてもよい。
【0057】
前記実施形態では、車両に搭載されるスイッチング電源装置100を例に挙げたが、本発明のスイッチング電源装置は、車載以外の用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
8 バックアップ制御回路
9 制御部
20 スイッチング回路
22 整流回路
27 PWM回路(駆動回路)
28 フィードバック回路
100 スイッチング電源装置
101 第1コンバータ
102 第2コンバータ
T1、T2 入力端子
T3、T4 出力端子(第1出力端子)
T5、T6 出力端子(第2出力端子)
Q1 第1トランジスタ(第1スイッチング素子)
Q2 第2トランジスタ(第2スイッチング素子)
C1 コンデンサ
S1 出力要求信号(第1信号)
S2 出力許可信号(第2信号)
S3 バックアップ指令信号(第3信号)
図1
図2
図3
図4
図5
図6