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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】網材および網戸
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/52 20060101AFI20221221BHJP
   E06B 9/54 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
E06B9/52 F
E06B9/54
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019117234
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021004457
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 章
(72)【発明者】
【氏名】若林 雅樹
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132288(JP,A)
【文献】特開2006-183382(JP,A)
【文献】特開2017-179648(JP,A)
【文献】特開2017-025463(JP,A)
【文献】特開2010-150694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/52
E06B 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸および緯糸を融着した網材であって、
前記経糸および前記緯糸は、芯部および前記芯部を囲んだ鞘部を有したポリプロピレン製の複層モノフィラメント糸によってそれぞれ形成され、
前記経糸および前記緯糸の線径は0.05mmから0.30mmの範囲に設定され、
前記網材の各網目の開口幅は0.5mmから1.5mmの範囲に設定され、
前記芯部の断面積と前記鞘部の断面積との比は1.0~3.6の範囲に設定され、
前記網材のヒステリシスは0.2gf・cm/cm以上1.0gf・cm/cm以下の範囲に設定される
ことを特徴とする網材。
【請求項2】
請求項1に記載の網材において、
前記網材の曲げ硬さは0.8gf・cm/cm以上1.6gf・cm/cm以下の範囲に設定される
ことを特徴とする網材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の網材において、
前記経糸および前記緯糸の結晶化度は53%から75%の範囲にそれぞれ設定され、
前記経糸および前記緯糸の配向度は0.70から0.85の範囲にそれぞれ設定される
ことを特徴とする網材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の網材と、前記網材を巻取りおよび送出し可能な巻取軸とを備える
ことを特徴とする網戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸および緯糸によって形成される網材および網戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開閉自在なロール網戸に用いられて巻取り可能なネット(網材)が知られている(特許文献1参照)。この網材は、経糸および緯糸が織られた面状のネット本体と、ネット本体における開閉方向に沿った端縁に設けられる端部材とを備えている。経糸および緯糸は、芯部およびこの芯部を囲んだ鞘部を有した複層成形樹脂製のモノフィラメント糸で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-132288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の網材には、保管、運搬のために経糸に沿った方向にロール状に巻回したり、ロール網戸においてその巻取軸に巻き取ったりすることで皺が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、皺の発生を抑制できる網材および網戸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の網材は、経糸および緯糸を融着した網材であって、前記経糸および前記緯糸は、芯部および前記芯部を囲んだ鞘部を有したポリプロピレン製の複層モノフィラメント糸によってそれぞれ形成され、前記経糸および前記緯糸の線径は0.05mmから0.30mmの範囲に設定され、前記網材の各網目の開口幅は0.5mmから1.5mmの範囲に設定され、前記芯部の断面積と前記鞘部の断面積との比は1.0~3.6の範囲に設定され、前記網材のヒステリシスは0.2gf・cm/cm以上1.0gf・cm/cm以下の範囲に設定されることを特徴とする。
【0007】
本発明の網戸は、前述した本発明の網材と、前記網材を巻取りおよび送出し可能な巻取軸とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皺の発生を抑制できる網材および網戸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るロール網戸を示す横断面図。
図2図1に示すII-II線に沿った断面図。
図3】前記実施形態に係るロール網戸のネットおよびガイドレールを示す斜視図。
図4】前記実施形態に係るロール網戸のネットおよび巻取軸を示す斜視図。
図5】前記実施形態に係るロール網戸の経糸および緯糸を示す断面図。
図6】前記実施形態に係るロール網戸の経糸および緯糸の結晶化度および配向度とヒステリシスとの関係を示すグラフ。
図7】前記実施形態に係るロール網戸の経糸および緯糸の結晶化度および配向度と曲げ硬さとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図4において、本実施形態に係る網戸であるロール網戸10は、建物の外壁開口部に固定される窓の窓枠に取り付けられるものである。ロール網戸10は、窓枠に固定される網戸枠11(枠体)と、網戸枠11の内部にて左右に開閉自在に設けられるネット12(網材)とを備えている。
以下の説明において、ロール網戸10の左右方向をX軸方向とし、ロール網戸10の上下方向をY軸方向とし、ロール網戸10の見込み方向(屋内外方向)をZ軸方向とする。X,Y,Z軸方向は互いに直交する。
【0011】
網戸枠11は、収納ケース13と、当接枠14と、上レール枠15と、下レール枠16とを備えている。収納ケース13の内部には、ネット12の端部が固定されて当該ネット12を巻き取るY軸方向に沿った巻取軸13Aが設けられ、図示しないバネによって巻取軸13Aが巻取方向に付勢されることで、ネット12が収納ケース13内に収納されるようになっている。
【0012】
ネット12は、経糸21と緯糸22とが格子状に交差され、これらの交差部(交点)が融着されたネット本体20(網材本体)と、ネット本体20のX軸方向に沿った上下の側縁部に形成された被ガイド部30とを有しており、ネット12のX軸方向における閉鎖方向側(送出し側)のY軸方向に沿った端縁部には可動框24が取り付けられている。
経糸21は、巻取軸13Aに対する巻取り方向および送出し方向に沿って延びた糸である。緯糸22は、経糸21に対して直交する方向に沿って延びた糸である。ロール網戸10では、巻取軸13Aから引き出したネット12のX軸方向に沿って経糸21が延在し、ネット12のY軸方向に沿って緯糸22が延在する。
【0013】
上レール枠15および下レール枠16には、それぞれネット12の被ガイド部30をX軸方向(ネット12の繰出し方向)に沿って左右にスライド案内する樹脂製のガイドレール17が設けられている。
上レール枠15側のガイドレール17は、図2に示すように、上レール枠15に係合した底壁部171と、底壁部171から垂下した一対の側壁部172と、一対の側壁部172の下端からZ軸方向において互いに近接する方向に延出した一対の開口形成片部173とを有しており、底壁部171、一対の側壁部172および一対の開口形成片部173によってX軸方向に延びたガイド溝17Aが形成されている。一対の開口形成片部173の間にはガイド溝17AのX軸方向に沿った開口17Bが形成されている。
下レール枠16側のガイドレール17は、上レール枠15側のガイドレール17と同様に形成されており、上下逆向きに配置されている。このため、一対の側壁部172は底壁部171から立ち上げられ、一対の開口形成片部173は底壁部171よりも上方に配置されている。
【0014】
被ガイド部30は、図2から図4に示すように、X軸方向に沿ったゴムシートによって構成された抜止めシート31と、抜止めシート31をネット本体20に接続したX軸方向に沿った接続テープ32とを有している。
抜止めシート31は、ガイドレール17のガイド溝17Aに配置されている。抜止めシート31は、断面略矩形状に形成されており、ネット本体20とともに巻取軸13Aに巻取り可能な程度の可撓性を有している。抜止めシート31のX軸方向およびY軸方向に規定される仮想面(ネット本体20の面内方向に沿った面)に沿った外面は、フラットな当接外面31Aを構成している。第1実施形態では、抜止めシート31のY軸方向における幅寸法W1(図4参照)は1mmとされているが、ガイド溝17AのY軸方向における深さ寸法よりも若干小さい寸法であれば、更に大きな幅寸法とされていてもよい。抜止めシート31のZ軸方向における厚さ寸法は、ガイド溝17Aの開口17Bの幅寸法W(図2参照)やネット12の巻取状態における径寸法を考慮して1.5mmとされているが、これよりも大きい厚さ寸法であっても、またこれよりも小さい厚さ寸法であってもよい。また、抜止めシート31のゴム硬度は、一般的な軟質ゴムのゴム硬度90度以下とされており、例えば40度~80度の範囲内で設定されてもよい。
接続テープ32は、第1実施形態では布製のファスナーテープによって構成されている。接続テープ32のY軸方向における幅寸法W2(図4参照)は、抜止めシート31の幅寸法W1よりも大きい寸法とされており、図2図3に示すようにガイド溝17Aから開口17Bを通ってガイド溝17A外まで突出している。この接続テープ32は、ネット本体20の側縁部を補強して強度を高めていると共に、ネット本体20の片面側でネット本体20自体が開口形成片部173に摺接することを防いでいる。
【0015】
以上のロール網戸10では、ネット12をX軸方向に操作することで、ロール網戸10を開放状態および閉鎖状態に切り替える。具体的には、X軸方向における開放側である図1の左側に向かって可動框24を操作し、巻取軸13Aにネット本体20および被ガイド部30を巻き取らせるとともに、可動框24を収納ケース13に当接させることでロール網戸10を開放状態とする。一方、X軸方向における閉鎖側である図の右側に向かって可動框24を操作し、収納ケース13からネット本体20を送り出すとともに、可動框24を当接枠14に当接させることでロール網戸10を閉鎖状態とする。
【0016】
前述したネット12の経糸21および緯糸22は、図5(A)に示すように、所定の断面積A1を有した芯部25と、芯部25を囲んで所定の断面積A2を有した鞘部26と、を有した複層成形樹脂製(本実施形態ではポリプロピレン製)のモノフィラメント糸で構成されている。芯部25の断面積A1と鞘部26の断面積A2との比(芯/鞘比=A1/A2)は、1.0~3.6の範囲に設定されている。経糸21および緯糸22における芯部25および鞘部26は、互いの融点が相違し、芯部25の樹脂の融点(160℃~170℃程度)よりも低い融点(120℃~130℃程度)の樹脂で鞘部26が形成され、図5(B)に示すように、互いの鞘部26同士が溶融した溶融部27を介して経糸21と緯糸22とが溶着されることでネット本体20が形成されている。
経糸21および緯糸22は、原料(ポリプロピレン)を溶融紡糸し、配向性を付与するために延伸をかけ、結晶化を増やすためにアニーリング工程を経て製造される。なお、経糸21や緯糸22に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤を配合してもよい。
経糸21および緯糸22の線径は、0.05mm~0.30mmの範囲で同径寸法に設定され、ネット本体20の各網目の開口幅は0.5mm~1.5mmの範囲で設定されている。
【0017】
このように構成される経糸21および緯糸22は、図6(A)に示すグラフにあるように結晶化度が53%以上に設定され、図6(B)に示すグラフにあるように配向度が0.85以下に設定されることで、ネット12のヒステリシスが1.0gf・cm/cm以下の範囲に設定される(図6(B)では、配向度0.85のときにヒステリシス1.05gf・cm/cmとなっているが、製造上の誤差範囲であり、ヒステリシス1.0gf・cm/cm以下を得ることは可能である)。より好ましくは、結晶化度が57%以上、配向度が0.81以下に設定されることで、ネット12のヒステリシスが0.8gf・cm/cm以下の範囲に設定される。このように設定することで、保管、運搬のためにネット12を経糸21に沿った方向にロール状に巻回したり、ネット12を巻取軸13Aに巻き取ったりすることによる巻き皺(皺)の発生を抑制できる。ネット12では、経糸21および緯糸22の線径を0.05mmに近づけるほど(細くなるほど)、捩れた場合に皺が生じやすい特性となるが、前述したヒステリシスの特性を有するように経糸21および緯糸22の結晶化度および配向度を設定することで巻き皺を抑制できる。また、結晶化度が75%以下、配向度が0.70以上に設定されることで、ネット12のヒステリシスが0.2gf・cm/cm以上の範囲に設定される。ネット12のヒステリシスが0.2gf・cm/cmを下回る場合、皺はつき難くなりますが、柔らかすぎて巻取軸13Aに取り付け難くなったり、ガイド溝17Aに挿入し難くなったりする。
【0018】
また、経糸21および緯糸22は、図7(A)に示すグラフにあるように結晶化度が53%から75%の範囲で設定され、図7(B)に示すグラフにあるように配向度が0.70から0.85の範囲で設定されることで、ネット12の曲げ硬さが0.8gf・cm/cm以上1.70gf・cm/cm以下の範囲に設定される。より好ましくは、前記範囲において配向度を0.7から0.83の範囲で設定することで、ネット12の曲げ硬さが1.60gf・cm/cm以下の範囲に設定される。これにより、ネット12に適度な張りをもたせることができる。
【実施例
【0019】
原料(ポリプロピレン)を溶融紡糸し、配向性を付与するために延伸をかけ、結晶化を増やすためにアニーリング工程を経ることで、下記(1)~(7)の特性を有する複層構造のモノフィラメント糸からなる経糸21および緯糸22を製造し、経糸21および緯糸22を採用して構成したネット本体20についてそれぞれを評価した。ここで、ネット本体20の曲げ硬さとしては、カトーテック株式会社製の繊維計測システム(KES-FBシステム)を使用して測定した。各経糸21および緯糸22は、径寸法0.15mm、芯部25はMFR2.5であり、鞘部26はMFR7.0である。
[経糸および緯糸の結晶化度および配向度]
(1)結晶化度50% 配向度0.85
(2)結晶化度53% 配向度0.83
(3)結晶化度60% 配向度0.80
(4)結晶化度65% 配向度0.77
(5)結晶化度70% 配向度0.73
(6)結晶化度75% 配向度0.70
(7)結晶化度78% 配向度0・68
本実施例では、上記(1)の経糸21および緯糸22を採用してネット本体20を形成した場合、ネット本体20のヒステリシスは1.05gf・cm/cmとなり、上記(2)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20のヒステリシスは1.00gf・cm/cmとなり、上記(3)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20のヒステリシスは0.75gf・cm/cmとなり、上記(4)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20のヒステリシスは0.55gf・cm/cmとなり、上記(5)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20のヒステリシスは0.40gf・cm/cmとなり、上記(6)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20のヒステリシスは0.20gf・cm/cmとなり、上記(7)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20のヒステリシスは0.15gf・cm/cmとなった。
また、上記(1)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは1.70gf・cm/cmとなり、上記(2)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは1.60gf・cm/cmとなり、上記(3)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは1.55gf・cm/cmとなり、上記(4)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは1.15gf・cm/cmとなり、上記(5)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは0.95gf・cm/cmとなり、上記(6)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは0.80gf・cm/cmとなり、上記(7)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは0.65gf・cm/cmとなった。
【0020】
上記(1)~(7)の経糸21および緯糸22について、前述したようにネット12とした状態(ネット本体20のサイズ幅600mm×高さ1100mm、網目の開口幅1.06mm(24メッシュ)とする)で、皺つき難さおよび巻回性の感性評価を行った。皺つき難さは、ネット12をロール状に巻回した際(保管や運搬のために巻回した際やロール網戸10の巻取軸13Aに巻き取らせて巻回した際)における皺のつき難さであり、主に前述したヒステリシスの特性と関係する。巻回性はネット12を前述したようにロール状に巻回可能な性能であり、主に前述した曲げ硬さと関係する。
皺つき難さは、ネット12をロール状に巻回した際にヒステリシス変形が生じたと判断できるか否か(ネット12の表面にヒステリシス変形による凹凸が生じたと判断できるか否か)を感性評価基準とし、この評価基準を十分に満たす場合(皺が生じないと判断できる場合)には「〇」とし、この評価基準を満たさない場合(皺が生じたと判断できる場合)には「×」とした。
巻回性は、ネット12をロール状に2400mm巻回した際に巻き径が59mmよりも小さいか否か、およびネット12に巻き込みが生じるか否かを感性評価基準とし、これら評価基準を満たす場合には「〇」とした。結果は表1の通りである。
【0021】
【表1】
【0022】
上記(1)の経糸21および緯糸22を有するネット12は皺つき難さおよび巻回性が「×」であった。このため、上記(1)の経糸21および緯糸22を有するネット12は本発明の網材として採用できるものではないと評価される。
上記(2)~(6)の経糸21および緯糸22を有するネット12は皺つき難さおよび巻回性が「〇」であった。このため、上記(2)~(6)の経糸21および緯糸22を有するネット12は本発明の網材として十分に採用できるものであると評価される。
上記(7)の経糸21および緯糸22を有するネット12は皺つき難さが「〇」、巻回性が「×」であった。このため、上記(6)の経糸21および緯糸22を有するネット12は、皺つき難さの感性評価基準を満たすので本発明の網材として一応採用できるものであると評価される。
【0023】
[変形例]
前記実施形態では、経糸21および緯糸22は同じ径寸法に設定されているが、互いに異なる径寸法に設定されてもよい。
前記実施形態では、ネット12はロール網戸10に用いられるものとして説明したが、このほか、四周枠組みされた網戸枠(枠体)と、この網戸枠に張設されたネット(網材)とを備え、建物の外壁開口部に固定される窓の窓枠にスライド可能に設置されるパネル網戸(図示省略)における前記ネットとして用いられてもよい。ネット12がパネル網戸に用いられる場合、ネット12が前述した特性を有しているので、ネット12の周縁部を網戸枠に沿って形成された溝部にゴム製等の押えロープによって押し込み固定しても、ネット12に皺や巻き込みが生じることを抑制でき、ネット12を好適に張設できる。
【0024】
[本発明のまとめ]
本発明の網材は、経糸および緯糸を融着した網材であって、前記経糸および前記緯糸は、芯部および前記芯部を囲んだ鞘部を有したポリプロピレン製の複層モノフィラメント糸によってそれぞれ形成され、前記経糸および前記緯糸の線径は0.05mmから0.30mmの範囲に設定され、前記網材の各網目の開口幅は0.5mmから1.5mmの範囲に設定され、前記芯部の断面積と前記鞘部の断面積との比は1.0~3.6の範囲に設定され、前記網材のヒステリシスは0.2gf・cm/cm以上1.0gf・cm/cm以下の範囲に設定されることを特徴とする。
本発明の網材によれば、網材が0.2gf・cm/cm以上1.0gf・cm/cm以下の範囲のヒステリシスの特性を有するので、いわゆる芯鞘構造を有する経糸および緯糸を有する網材を保管、運搬のために経糸に沿った方向にロール状に巻回したり、ロール網戸においてその巻取軸に巻き取ったりすることによる皺の発生を抑制できる。
【0025】
本発明の網材では、前記網材の曲げ硬さは0.8gf・cm/cm以上1.6gf・cm/cm以下の範囲に設定されていてもよい。
このような構成によれば、網材の曲げ硬さを0.8gf・cm/cm以上に設定することで、網材を保管、運搬のためにロール状に巻回したり、ロール網戸においてその巻取軸に巻き取ったりする際に巻き込みが発生することを抑制できる。一方、網材の曲げ硬さを1.6gf・cm/cm以下に設定することで、網材を巻回した際の巻き径が過度に大きくなることを抑制できる。このように網材の曲げ硬さを上記範囲に設定することで網材の巻回性を向上できる。
【0026】
本発明の網材では、前記経糸および前記緯糸の結晶化度は53%から75%の範囲にそれぞれ設定され、前記経糸および前記緯糸の配向度は0.70から0.85の範囲にそれぞれ設定されていてもよい。
このような構成によれば、結晶化度53%に設定し且つ配向度を0.85以下に設定した場合にはヒステリシスを1.0gf・cm/cm以下に設定でき、また、例えば、経糸および緯糸の結晶化度を75%に設定し且つ配向度を0.70に設定した場合にはヒステリシスを0.2gf・cm/cm以上に設定できて、網材にヒステリシス変形による皺の発生を抑制できる。
また、結晶化度53%に設定し且つ配向度を0.85に設定した場合には曲げ硬さを1.6gf・cm/cm以下に設定でき、また、例えば、経糸および緯糸の結晶化度を75%に設定し且つ配向度を0.70に設定した場合には曲げ硬さを0.8gf・cm/cm以上に設定できる。これにより、網材の巻き径が過度に大きくなることがなく、且つ、網材の巻き込みの発生を抑えることができて、網材の巻回性を向上できる。
【0027】
本発明の網戸は、前述した本発明の網材と、前記網材を巻取りおよび送出し可能な巻取軸とを備えることを特徴とする。
本発明の網戸によれば、前述した本発明の網材の作用効果と同様の作用効果を発揮可能な網戸を構成できる。
【符号の説明】
【0028】
10…ロール網戸(網戸)、11…網戸枠、12…ネット、13…収納ケース、13A…巻取軸、14…当接枠、15…上レール枠、16…下レール枠、17…ガイドレール、171…底壁部、172…側壁部、173…開口形成片部、17A…ガイド溝、17B…開口、20…ネット本体、21…経糸、22…緯糸、24…可動框、25…芯部、26…鞘部、27…溶融部、30…被ガイド部、31…抜止めシート、31A…当接外面、32…接続テープ、A1,A2…断面積、W,W1,W2…幅寸法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7