(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】マルチノズル押出機内の弁部材の移動量を維持するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20221221BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221221BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20221221BHJP
【FI】
B29C64/209
B33Y30/00
B29C64/118
(21)【出願番号】P 2019120888
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-06-28
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジー・リン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジェイ・ニストロム
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィッド・エイ・マンテル
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0325498(US,A1)
【文献】米国特許第04922852(US,A)
【文献】特開2018-79688(JP,A)
【文献】特開2018-069732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元立体プリンターに使用される押出機であって、
シールを有し、ある量の熱可塑性材料を保持するためのチャンバと、チャンバに流体的に接続された複数のノズルとを有する押出機ヘッドと、
複数のアクチュエータと、
アクチュエータに一対一で機能的に接続された複数の細長い中実部材であって、各細長い中実部材が、各細長い中実部材に関連付けられた各前記アクチュエータから押出機ヘッドの中に前記シールを通って延伸し、かつ押出機ヘッド内のチャンバを通ることにより、各前記アクチュエータが各前記細長い中実部材の遠位端を係合するように押す又は係合を解除するように引くことができ、かつそれぞれ細長い中実部材とノズルとの間で一対一の対応をする押出機ヘッド内の1つのノズルが、熱可塑性材料がチャンバからノズルを通って独立して流れることを可能にする及び不可能にする、中実部材と、
複数の中空部材であって、各中空部材が一対一で対応する一つの細長い中実部材を中心として位置決めされ、かつ各中空部材が各前記アクチュエータから前記押出機ヘッドの手前の位置まで延伸することによって前記中空部材の遠位端と前記押出機ヘッドの上面との間にギャップを形成する、中空部材と、
複数の開口部を有する少なくとも一つの中空部材支持プラットフォームであって、各開口部が前記中空部材のうちの一つを一対一に対応して収容するように配置され、前記少なくとも一つの中空部材支持プラットフォームが前記複数のアクチュエータと前記押出機のヘッドの間に位置決めされる前記複数の開口部を有する、中空部材支持プラットフォームと、を含む押出機。
【請求項2】
前記シールが複数の開口部を有する平面部材であり、前記シールの各開口部が前記細長い中実部材のうちの一つを一対一に対応して受容する、請求項1に記載の押出機。
【請求項3】
前記押出機ヘッドが、
複数のOリングであって、各Oリングが押出機ヘッドの表面内に一対一に対応して位置決めされ、かつ各Oリングが一つの細長い中実部材を収容するように配置されるOリングをさらに含む、請求項1に記載の押出機。
【請求項4】
前記中空部材が前記複数のアクチュエータから前記少なくとも一つの中空部材支持プラットフォームの中心に向かって屈曲し、かつ前記中空部材が前記少なくとも一つの中空部材支持プラットフォームから前記押出機ヘッドの中心に向かって屈曲する、請求項1に記載の押出機。
【請求項5】
押出機ヘッドが、
平面部材であって、平面部材と各ノズルの遠位端内に位置決めされた複数のノズルの各ノズルが、平面部材がノズルから放出された熱可塑性材料を拡散することを可能にするように、平面部材と同一水平面上にある、平面部材をさらに含む、請求項4に記載の押出機。
【請求項6】
各中空部材の遠位端と押出機ヘッドとの間のギャップ
が1mm以下である、請求項5に記載の押出機。
【請求項7】
各細長い中実部材の遠位端が丸みを帯びている、請求項6に記載の押出機。
【請求項8】
各中空部材
が金属からなる、請求項7に記載の押出機。
【請求項9】
金属
が低熱伝導性の金属からなる、請求項8に記載の押出機。
【請求項10】
前記金属
がステンレス鋼からなる、請求項9に記載の押出機。
【請求項11】
各細長い部材が、各前記中空部材内における各前記細長い部材の移動を容易にするために、低摩擦係数を有するコーティングをさらに含む、請求項9に記載の押出機。
【請求項12】
各中空部材が、各中空部材の内面と該各中空部材内を移動する各前記細長い中実部材との間の摩擦を減少させるように配置される、請求項7に記載の押出機。
【請求項13】
各前記中空部材内の各前記細長
い中実部材の移動を容易にするための前記中空部材内の潤滑剤をさらに含む、請求項12に記載の押出機。
【請求項14】
前記複数のアクチュエータの各アクチュエータが空気圧式アクチュエータである、請求項8に記載の押出機。
【請求項15】
前記複数のアクチュエータに機能的に接続されたコントローラであって、前記コントローラが押出機ヘッドのノズルからの熱可塑性材料の流れを独立して制御するために、複数のアクチュエータを独立して動作させるように構成された、コントローラをさらに含む、請求項8に記載の押出機。
【請求項16】
前記押出機ヘッドが、
複数の凹状の開口部を有する上部部材であって、一部の各中空部材押出機一部の各細長い中実部材が一つの凹状の開口部内に位置決めされ、前記凹状の開口部が押出機ヘッドの上部部材内の凹状の開口部と複数の中空部材押出機複数の細長い中実部材に一対一に対応する、上部部材をさらに含む、請求項15に記載の押出機。
【請求項17】
各中空部材はスリーブを含み、各スリーブの長さが、前記各細長い中実部材を前記上
部部材の表面へと前記各凹状の開口部内で移動させるように配置された前記各アクチュエータから延伸する各細長い中実部材より短い、請求項16に記載の押出機。
【請求項18】
各中空部材が前記各中空部材内で前記各細長い中実部材に沿って長手方向にスライドするように配置される、請求項17に記載の押出機。
【請求項19】
空気流を複数の中空部材に誘導するように配置された冷却器をさらに含む、請求項18に記載の押出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元立体プリンターに使用されるマルチノズル押出機に関し、より具体的にはそのような押出機に使用される弁に関する。
【0002】
3次元印刷は、積層造形としても知られており、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから3次元固体物体を製造する工程である。多くの3次元印刷技術は、積層造形装置が、既に堆積された層の上に部品の連続層を形成する積層工程を使用する。これらの技術のうちのいくつかは、ABSプラスチックなどの押出材料を軟化又は溶融して熱可塑性材料にし、次に熱可塑性材料を所定のパターンで放出する押出機を使用する。プリンターは、一般的には、押出機を動作させて、様々な形状及び構造を有する3次元印刷された物体を形成する熱可塑性材料の連続層を形成する。3次元印刷された物体の各層が形成された後、その層を3次元印刷された物体の下層に結合するために、熱可塑性材料は冷却されて硬化する。この積層造形方法は、切削又は穿孔などの減法工程によってワークピースから材料を除去することに主に依存する従来の物体形成技術と、区別することができる。
【0003】
既存の3次元プリンターの多くは、単一のノズルを通して材料を押し出す単一の押出機を使用している。プリントヘッドは、所定の経路で移動して、3次元印刷物体のモデルデータに基づいて支持部材の選択された位置又は3次元印刷物体の既に堆積された層の上に構築材料を放出する。しかしながら、構築材料の放出に単一のノズルしか含まないプリントヘッドを使用することによって、多くの場合、3次元印刷物体の形成にかなりの時間が必要とされる。更に、ノズルの直径がより大きいプリントヘッドは、より迅速に3次元印刷物体を形成することができるが、より詳細な物体についてはより微細な形状に構築材料を放出する能力を失い、一方、より小さい直径のノズルは、より微細な詳細構造を形成することができるが、3次元物体の構築により多くの時間を必要とする。
【0004】
単一ノズル押出機の限界に対処するために、マルチノズル押出機が開発された。いくつかのマルチノズル押出機では、ノズルは共通の面板に形成され、ノズルを通って押し出される材料は1つ又は複数のマニホールドからもたらされることができる。単一のマニホールドを有する押出機では、ノズルの全てが同一の材料を押し出すが、マニホールドから各ノズルへの流体経路は、ノズルを選択的に開閉するように動作する弁を含むことができる。この能力により、ノズルから押し出された熱可塑性材料押出機のスワスの形状を、材料を押し出すノズルの数を変更すること、及びどのノズルが材料を押し出すかを選択的に操作することによって変化させることが可能になる。異なるマニホールドを有する押出機では、各ノズルは、異なる材料を押し出し、マニホールドのうちの1つからその対応するノズルへの流体経路は、ノズルを選択的に開閉するように動作することができる弁を含む。この能力により、スワスの材料の組成を及びノズルからの熱可塑性材料押出機のスワスの形状を変化させることが可能になる。また、これらの変化は、材料を押し出すノズルの数及び材料を押し出すように操作されるノズルを変更することによって達成される。これらのマルチノズル押出機によって、異なるノズルから押し出された異なる材料が、異なる押出機本体の動きを調整することなく物体を形成することが可能になる。これらの異なる材料によって、異なる色、物理的特性、及び構成を有する物体を生成するための積層造形システムの能力を高めることができる。更に、材料を押し出すノズルの数を変更することによって、生成されるスワスのサイズを変えて、物体の縁部などの正確な特徴形成が必要な範囲に狭いスワスを提供し、その内部領域などの物体の範囲を迅速に形成するようにより幅広いスワスを提供することができる。
【0005】
いくつかのマルチノズル押出機内の弁は、押出機内のノズルを開閉するために選択的に動かされるピンを含む。ピンは、ノズルをシールするために数ポンドの力でノズルと係合するように押し込まれる一端に丸みを帯びた金属先端を有することができる。ピンの丸みを帯びた端部をノズルから後退させると、熱可塑性材料がノズルを通って流れ、ノズルから押し出されることが可能になる。押出機ヘッド内の圧力室内の材料を熱可塑性状態に保つために押出機ヘッドが加熱される。ピンを動かすアクチュエータへの悪影響を避けるために、アクチュエータは押出機ヘッドから発生する熱からアクチュエータを断熱するのに十分な距離で押出機ヘッドから離れて配置される。熱可塑性材料が、各ピンがヘッドに入る位置で押出機ヘッドから逃げるのを防ぐために、ピンのシャフトの周りにシールが配置される。このシールは、押出機ヘッドからの熱可塑性材料の漏出を最小限に抑えるとともに、ピンがシールの開口部内でスライドして関連するノズルを開閉することを可能にしなければならない。押出機ヘッドの1つ又は複数の圧力室内に保持される熱可塑性材料は、ノズルからの押出を可能にするために比較的強い圧力に維持される。この圧力はまた、熱可塑性材料の一部がシールを通ってゆっくり漏れることを可能にし、シール内のピンの動きは、熱可塑性材料をシールの外側に引きずり出すおそれがある。PFTEなどの低摩擦係数を有する材料は、ピンとシールとの間の摩擦を低減するのに有用である。少量の熱可塑性材料のみがシールを通って漏れてもシールの近くの熱が材料の可塑性を保つことに役立ち、そのためピンの動きを妨げないので、問題にはならない。しかしながら、時間が経過すると、漏れが蓄積して材料の一部をシールの熱から十分に遠くまで押し出し、その結果材料が凍結するおそれがある。硬化した材料は弁ピンの動きを妨げるおそれがある。解決策の一つはピンの周囲から漏れた材料をピンセットで機械的に除去することであるが、その努力は面倒で時間がかかる。各ピンの往復運動の自由度を維持することは有益であろう。
【0006】
新しいマルチノズル押出機は、シールの箇所で熱可塑性材料が漏れることによって引き起こされる動きの干渉から弁ピンを隔離する。マルチノズル押出機は以下を含む:ある体積の熱可塑性材料を保持するためのチャンバとチャンバに流体的に接続された複数のノズルを有する押出機ヘッド;複数のアクチュエータ;アクチュエータに一対一で機能的に接続された複数の細長い中実部材であって、各細長い中実部材が、細長い中実部材に関連付けられたアクチュエータから押出機ヘッド内まで延伸し、かつそれぞれ押出機ヘッド内のチャンバを通ることにより、アクチュエータが細長い中実部材の遠位端を係合するように押す又は係合を解除するように引くことができ、細長い中実部材とノズルとの間で一対一の対応をする押出機ヘッド内の一つのノズルは熱可塑性材料がチャンバからノズルを通って独立して流れることを可能にする及び不可能にする、中実部材;複数の中空部材であって、中空部材の遠位端と押出機ヘッドとの間にギャップを形成するために、各中空部材が一対一で対応する一つの細長い中実部材を中心として位置決めされ、かつ各中空部材がアクチュエータから押出機ヘッドの手前の位置まで延伸する、中空部材。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は硬化した熱可塑性材料によって引き起こされる干渉からピンの動きを保護するために弁ピンを中心としてスリーブを配置する積層造形システムを示す。
【
図2】
図2は
図1における弁組立体の単一スリーブとピンとの組み合わせのブロック図である。
【
図3】
図3は
図1における弁組立体の単一スリーブとピンとの組み合わせのブロック図であり、硬化した熱可塑性材料からピンの動きを保護することを図示したものである。
【
図4】
図4は弁ピンを取り囲んで
図1におけるシステムの押出機ヘッドへの経路に沿ってわずかに曲げられているスリーブを示す。
【
図5A】
図5Aは材料が押出機ヘッドから逃げるときに動くピン周辺のスリーブの他の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において開示された装置の環境並びに装置の詳細の一般的な理解のために、図面が参照される。図中、同一の参照番号は同一の要素を示す。
【0009】
本明細書で使用するとき、語「押出材料」は、積層造形システムにおいて押出機によって放出された材料を指す。押出材料には、3次元印刷された物体の永久部分を形成する「構築材料」と、印刷工程中に構築材料の部分を支持する一時的な構造を形成してから、任意選択で印刷工程の完了後に除去される「支持材料」との両方が含まれるが、これらに厳密に限定されない。構築材料の例として、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)プラスチック、ポリ乳酸(PLA)、脂肪族又は半芳香族ポリアミド(ナイロン)、懸濁炭素繊維又は他の骨材を含むプラスチック、導電性ポリマー、及び熱的に処理されて押出機を通って放出されるのに適切な熱可塑性材料を生成することができる任意の他の形態の材料が挙げられるが、これらに限定されない。構築材料は、加熱を必要とせずに空気又はエネルギー、例えば紫外線又は熱に暴露することにより後で硬化する他の材料をも含む。これらのタイプの材料は食品素材を含む。例えば、チョコレート及びチーズは、ウサギ、卵などのような様々な形状の物体に押し出すことができる。支持材料の例として、高衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリビニルアルコール(PVA)、及び熱処理後に押し出し可能な他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの押出プリンターにおいて、押出材料は、一般に「フィラメント」として知られる、連続する細長い長さの材料として供給される。このフィラメントは、押出材料フィラメントをスプール又は他の供給部から引っ張り、そのフィラメントを押出機内のマニホールドに流体的に接続されたヒータ内に供給する1つ以上のローラによって固体形態で提供される。図示された例は、ヒータにフィラメントとして供給される押出材料を使用するが、粒状又は球状の押出材料などの他の押出材料供給部を使用することができる。ヒータは、マニホールドに流入する熱可塑性材料を形成するために、押出材料フィラメントを軟化又は溶融する。ノズルとマニホールドとの間に配置された弁が開くと、熱可塑性材料の一部分がマニホールドからノズルを通って流れ、熱可塑性材料の流れとして放出される。本明細書で使用するとき、押出材料に適用される語「溶解」は、押出材料の相を軟化又は変化させて3次元物体プリンターの動作中に押出機の1つ以上のノズルを通して熱可塑性材料の押し出しを可能にする、押出材料の温度の任意の上昇を指す。溶融した押出材料は、本明細書においては「熱可塑性材料」とも呼ばれる。当業者が認識するように、ある特定の非晶質押出材料は、プリンターの動作中に純粋な液体状態に移行しない。
【0010】
本明細書で使用するとき、語「押出機」は、マニホールド内の押出材料を加圧し、次にマニホールドへのチャネルを開いてノズルから押出材料を放出するプリンターの構成要素を指す。エポキシ及び接着剤などのようないくつかの押出材料は、室温であることができる。他の押出材料は、溶融する又は軟化する温度に加熱され、それによって1つ又は複数のノズルへのチャネルによって接続されたマニホールドに流れる。該文献に記載の押出機は、押出材料がノズルを通って選択的に流れることを可能にするために、電子的に操作されてピンをノズルと係合する又は係合を解除するように移動することができる弁組立体を含む。熱可塑性材料を押し出すために、コントローラが弁組立体を操作して複数のノズルのうちのノズルをマニホールドに独立して接続する。本明細書で使用するとき、語「ノズル」は、押出機のマニホールドに流体的に接続され、そこを通って熱可塑性材料が材料受け面に向けて放出される押出機のオリフィスを指す。動作中、ノズルは、押出機の工程経路に沿って、熱可塑性材料の実質的に連続した線形スワスを押し出すことができる。ノズルの直径は、押し出された熱可塑性材料の線幅に影響する。異なる押出機の実施形態は、より狭いオリフィスによって生成された線幅よりも大きな幅を有する線を生成する、より幅広いオリフィスを有するある範囲のオリフィスサイズを有するノズルを含む。
【0011】
本明細書で使用するとき、語「マニホールド」は、3次元物体の印刷動作中に押出機の1つ以上のノズルに送出するための熱可塑性材料の供給を保持する押出機のハウジング内に形成された空洞を指す。本明細書で使用するとき、語「スワス」は、3次元物体の印刷動作中に押出機が材料受け面上に形成する押出材料の任意のパターンを指す。一般的なスワスは、押出材料の直線的な線形配置及び湾曲したスワスを含む。いくつかの構成では、押出機は、熱可塑性材料を連続的に押し出して、工程及び交差工程の両方向で押出材料の連続した塊を有するスワスを形成するが、他の構成では、押出機は、断続的に動作して、線形又は湾曲した経路に沿って配置される熱可塑性材料のより小さな集まりを形成する。3次元物体プリンターは、押出材料の異なるスワスの組合わせを使用して様々な構造を形成する。さらに、3次元物体プリンター内のコントローラは、押出機を動作させて押出材料の各スワスを形成する前に、押出材料の異なるスワスに対応する物体画像データ及び押出機経路データを使用する。
【0012】
本明細書で使用するとき、語「工程方向」は、押出機と、押出機の一つ以上のノズルから押し出された熱可塑性材料を受ける材料受け面との間の相対的な移動の方向を指す。材料受け面は、積層造形工程中に3次元印刷された物体を保持する支持部材、又は部分的に形成された3次元物体の表面のいずれかである。本明細書に記載の例示的実施形態では、一つ以上のアクチュエータは、押出機を支持部材を中心として移動させるが、代替システムの実施形態は、押出機が静止している間に、工程方向に相対的な運動を生成するように支持部材を移動させる。システムによっては、異なる運動軸について両システムの組合わせを使用する。
【0013】
本明細書で使用するとき、語「交差工程方向」は、工程方向に垂直であり、かつ押出機の面板及び材料受け面に平行である軸を指す。工程方向及び交差工程方向は、押出機と熱可塑性材料を受ける表面との移動の相対的な経路を指す。いくつかの構成では、押出機は、工程方向、交差工程方向、又はその両方に延伸することができるノズルのアレイを含む。押出機内の隣接するノズルは、交差工程方向に所定の距離だけ分離する。いくつかの構成では、システムは、線がスワスを形成するときに、押出機のノズルから押し出される熱可塑性材料の線を分離する、対応する交差工程距離を調整するように、押出機の異なるノズルを分離する交差工程方向距離を調整するために、押出機を回転させる。
【0014】
積層造形システムの動作中、押出機は、3次元物体印刷工程中に熱可塑性材料を受ける表面に対して直進経路及び湾曲経路の両方に沿って工程方向に移動する。更に、システム内のアクチュエータは、押出機が熱可塑性材料の各線の間に所定の距離を有する熱可塑性材料の二つ以上の線を形成することを可能にするように、押出機のノズルを分離する有効交差工程距離を調整するために、任意選択で、Z軸を中心として押出機を回転させる。押出機は、2次元領域の全体又は一部を熱可塑性材料で充填するように、印刷された物体の層内及び周囲内の2次元領域の外壁を形成するために、外周に沿って移動する。
【0015】
図1は面板260とも呼ばれる平面部材内のノズル218を通して複数の熱可塑性材料を押し出す押出機ヘッド108を有する積層造形システム100を示す。プリンター100は、平面運動を使用して物体を形成するプリンターとして示されるが、他のプリンタアーキテクチャを、押出機と、押出機の角度配向を基準にして押出機の速度を調節するように構成されたコントローラとともに使用することができる。これらのアーキテクチャには、デルタボット、水平多関節ロボット(SCARAs)、多軸プリンター、非デカルト式プリンターなどが含まれる。これらの代替実施形態の運動は、上記で定義されたような工程方向及び交差工程の方向を依然として有し、これらの実施形態の押出機のノズル間隔は、交差工程方向に対してノズル間隔を依然として画定する。図を簡略化するために、
図1には1つのマニホールド216しか示されていないが、押出機ヘッド108は複数のマニホールド216を有することができる。一実施形態では、押出機ヘッド108の各マニホールド216は、異なる押出材料供給部110によって一対一対一の対応で供給される異なるヒータ208に機能的に接続される。押出機ヘッド108では、各ノズル218は、押出機ヘッド108内のマニホールドのうちの一つのみに流体的に接続されるため、各ノズルは、他のマニホールドに接続されたノズルから押し出される材料とは異なる熱可塑性材料を押し出すことができる。各ノズルからの押し出しは、中空部材であるスリーブ268内のピン272を往復運動させるために、ピン272に機能的に接続されているアクチュエータ264を動作するコントローラ128によって選択的にかつ独立して作動及び停止される。アクチュエータ、ピン、及びスリーブは、互いに一対一対一に対応して配置されている。各ノズル218の遠位端は、面板260を使用して物体内の材料のスワスを成形するために、面板260と同一平面上にある。ピン272は、アクチュエータからノズルの開口まで延伸し、かつ材料がノズルから選択的に流れることを可能にするように移動する細長い中実部材である。ピンをノズルと係合させるためにアクチュエータがコントローラによって操作されると材料の流れが終了し、かつアクチュエータがノズルからピンを引き込むように操作されると材料が流れる。
【0016】
コントローラ128は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はプリンター100を動作させるように構成される任意の他のデジタルロジックなどのデジタルロジック装置である。プリンター100では、コントローラ128は、押出機ヘッド108から押し出された材料で形成されている物体を支持する支持部材の移動を制御する一つ又は複数のアクチュエータ150に機能的に接続されている。コントローラ128はまた、ランダムアクセスメモリ(RAM)装置などの揮発性データ記憶装置、及び固体データ記憶装置、磁気ディスク、光ディスクなどの不揮発性データ記憶装置、又は任意の他の適切なデータ記憶装置を含むメモリに機能的に接続される。メモリは、プログラムされた命令データ及び3次元(3D)物体画像データを格納する。コントローラ128は、格納されたプログラム命令を実行して、プリンター100内の構成要素を動作させて支持部材における3次元印刷された物体を形成し、物体の1つ以上の表面上に2次元画像を印刷する。3D物体画像データは、例えば、プリンター100が3次元物体印刷工程中に形成する熱可塑性材料の各層に対応する複数の2次元画像データパターンを含む。押出機経路制御データは、アクチュエータ150を使用して押出機ヘッド108の移動の経路を制御し、アクチュエータ150内のZθアクチュエータを使用して押出機ヘッド108と弁組立体204の向きを制御するようにコントローラ128が処理する一連の幾何学的データ又はアクチュエータ制御コマンドを含む。Zθアクチュエータは、面板260と垂直であり、かつ面板260と支持部材との間に延伸するZ軸を中心として押出機ヘッド108及び弁組立体204を回転させるように配置される。本明細書では、押出機ヘッド108及び弁組立体204をまとめて押出機と呼ぶ。コントローラ128は、押出機が熱可塑性材料を押し出して物体を形成する間に、上述のように押出機ヘッド108を支持部材の上に移動させるようにアクチュエータを動作させる。
【0017】
図1のシステム100は、押出機ヘッド108のマニホールド216に接続される各ヒータ208のための押出材料分配システム212をも含む。各別々の供給部110からの押出材料は、システム100の動作中に所定の領域内でヒータ208に接続されたマニホールド216内の熱可塑性材料の圧力を維持する速度で、対応するヒータ208に供給される。分配システム212は、押出機ヘッド108の各マニホールド内の熱可塑性材料の圧力を調節するのに適切な一実施形態である。更に、コントローラ128は、分配システム212が供給部110から供給部により供給されるヒータ208に押出材料を送出する速度を制御する。ヒータ208は駆動ローラ224を介してヒータに供給された押出材料220を軟化又は溶融するために、アクチュエータの各分配システム212に機能的に接続される。アクチュエータ240は、ローラ224を駆動し、コントローラ128に機能的に接続されるため、コントローラは、アクチュエータがローラ224を駆動する速度を調節することができる。ローラ224に対向する別のローラは、フリーホイールであるため、ローラ224が駆動される回転速度に追従する。
図1は、フィラメント220をヒータ208内に移動させるために電気機械アクチュエータ及び駆動ローラ224を機械的可動子として使用する供給システムを示すが、分配システム212の代替実施形態は、回転オーガ又はスクリューの形態の機械的可動子を動作させるために、一つ以上のアクチュエータを使用する。オーガ又はスクリューは、固相押出材料を、押出材料粉末又はペレットの形態で供給部110からヒータ208に移動させる。
【0018】
図1の実施形態では、各ヒータ208は、コントローラ128に機能的に接続される電気抵抗加熱要素などの一つ以上の加熱要素228を含むステンレス鋼から形成された本体を有する。コントローラ128は、ヒータ208内の1つ又は複数のチャネル内の押出材料220のフィラメントを軟化又は溶融するために、加熱要素228を電流に選択的に接続するように構成される。
図1は固体フィラメント220として固相の押出材料を受けるヒータ208を示すが、代替実施形態では、ヒータは、粉末状又はペレット状の押出材料として固相の押出材料を受ける。冷却フィン236は、ヒータから上流のチャネルの熱を弱める。冷却フィン236又はその近くのチャネルに固体のままで残っている押出材料の一部は、熱可塑性材料がマニホールド216への接続以外の任意の開口部より、ヒータから出ることを防止するシールをチャネル内に形成し、シールは、押出材料がマニホールドに入るときに熱可塑性状態に保つ温度を維持する。押出機ヘッド108は、押出機ヘッド内の各マニホールド内の熱可塑性材料の高温を維持するための追加の加熱要素をも含むことができる。いくつかの実施形態では、断熱材は、押出機ヘッド内のマニホールド内の温度を維持するように、押出機ヘッド108外部の一部を覆う。この場合も、ノズルの周りの領域は、材料を熱可塑性状態に保つ温度に維持されるため、それが面板260内のノズル218の遠位端に進むときに凝固し始めない。
【0019】
マニホールド216内の熱可塑性材料の流体圧力を所定の範囲内に維持し、押出材料への損傷を回避し、ノズルを通じた押出速度を制御するために、スリップクラッチ244が、フィラメントを供給部110からヒータに供給する各アクチュエータ240の駆動軸に機能的に接続される。本明細書で使用するとき、語「スリップクラッチ」は、物体に摩擦力を印加して、物体を所定の設定点まで移動させる装置を指す。摩擦力の所定の設定点を中心とする範囲を超えると、装置はスリップするため、摩擦力を物体に印加しなくなる。スリップクラッチによって、ローラ224がフィラメント220に及ぼす力が、アクチュエータ240がいかに頻繁に、いかに速く、又はいかに長く駆動したとしても、フィラメントの強度の制約内にとどまることが可能になる。この一定の力は、フィラメント駆動ローラ224の予想される最速の回転速度よりも高速でアクチュエータ240を駆動することによって、あるいはエンコーダホイール248をローラ224に装着して、センサ252で回転速度を感知することによって維持することができる。センサ252が生成した信号は、ローラ224の角回転を示し、コントローラ128は、この信号を受信して、ローラ224の速度を識別する。コントローラ128は更に、アクチュエータ240に提供された信号を調整して、アクチュエータの速度を制御するように構成される。コントローラがアクチュエータ240の速度を制御するように構成されている場合、コントローラ128がアクチュエータ240を動作させるため、その平均速度がローラ224の回転よりもやや速くなる。この動作によって、駆動ローラ224上のトルクが常にスリップクラッチのトルクの関数であることが確実になる。
【0020】
コントローラ128は、ローラ224の回転速度全体におけるアクチュエータ出力軸のやや速い速度を識別するコントローラに接続されたメモリに格納された設定点を有する。本明細書で使用するとき、語「設定点」は、設定点に対応するパラメータを設定点を中心とする所定の範囲内に保つように、構成要素を動作させるためにコントローラが使用するパラメータ値を意味する。例えば、コントローラ128は、アクチュエータ240を動作させる信号を変更して、設定点を中心とする所定の範囲の出力信号によって識別される速度で出力軸を回転させる。アクチュエータの指令速度に加えて、弁組立体204内で開閉される弁の数おけるクラッチのトルク設定点も、フィラメント駆動システム212の動作に影響する。得られたローラ224の回転速度は、センサ252が発生した信号によって識別される。コントローラ128内の比例積分微分(PID)コントローラは、メモリに格納された差分設定点を基準としてこの信号からエラーを特定し、コントローラによって出力された信号を調整してアクチュエータ240を動作させる。代替として、コントローラ128は、スリップクラッチのトルクレベルを変えることができ、又はコントローラ128は、トルクレベルを変えて、コントローラがアクチュエータを動作させる信号を調整することができる。
【0021】
スリップクラッチ244は、固定又は調整可能なトルク摩擦ディスククラッチ、磁性粒子クラッチ、磁気ヒステリシスクラッチ、強磁性流体クラッチ、空気圧クラッチ、又は永久磁石クラッチであり得る。磁気的に動作するタイプのクラッチは、クラッチに電圧を印加することによって調整されるトルク設定点を有することができる。この特徴により、印刷条件を基準にしてクラッチのトルク設定点を変更することが可能になる。「印刷条件」という語は、物体の適切な形成のためにマニホールド内で必要とされる熱可塑性材料の量に影響する、現在進行中の製造動作のパラメータを指す。これらの印刷条件には、押出機に供給されている押出材料の種類、押出機から放出されている熱可塑性材料の温度、押出機がXY平面内で移動している速度、物体上に形成されている特徴の位置、押出機がプラットフォームに対して移動している角度などが含まれる。
【0022】
弁組立体204のピン272に対するピン保護の説明を簡単にするために、
図2は単一のピン272を示す。
図3を参考として説明された構造は、
図1に示されたシステムに類似するシステムの各弁組立体の各ピンに適用可能である。前述のように、ピン272の一端は、弁組立体204内の複数のアクチュエータ264のうちの一つのアクチュエータに機能的に接続される。ピン272の他端部276は、ピン272の該端部とノズル218との係合が容易になるように、丸みを帯びている。ピン272に接続されたアクチュエータがノズル218と係合するように、丸みを帯びた端部276を押すように操作されると、マニホールド216からノズル218への熱可塑性材料の流れが遮断される。ピン272に接続されたアクチュエータが丸みを帯びた端部276をノズル218から引き離すように操作されると、マニホールド216内の圧力がノズル218を通して熱可塑性材料を押し出して、押出機ヘッド108から熱可塑性材料のリボン284を押し出す。
【0023】
引き続き
図2を参照すると、シール288が押出機ヘッド108内に配置され、ピン272がシール288の開口部を通って延伸する。シール288は、マニホールド216の上方の押出機ヘッド108内に配置された複数の開口部を有する可撓性平面部材とすることができる。シールの各開口部はピン272のうちの一つを受ける。あるいは、押出機ヘッド108の上面の各開口部には、ピン272の収容を可能にする直径を有するOリングシールを配置することができる。シール288は、熱可塑性材料をマニホールド216内に維持するのに役立つが、シール288内の開口におけるピン272の移動は、熱可塑性材料をマニホールド216から押出機ヘッド108の上面に引っ張ることができる。ピン272は、弁組立体204から押出機ヘッド108の上面のすぐ手前の位置まで延伸するスリーブ268内に位置決めされるが、押出機ヘッド108の上面に近接するスリーブ268の端部に位置決めされたギャップ280は、シール288を通って引っ張られた熱可塑性材料がギャップ280を通って押出機ヘッド108の上面に押圧されることを可能にする。ギャップ280内に維持される又はギャップ280に直接隣接する熱可塑性材料は、押出機ヘッド108によって放出される熱によって十分に加熱され、溶融状態又は塑性状態に維持される。マニホールド216内の溶融材料は、ギャップにてマニホールドから逃げる溶融材料よりも高い圧力にある。マニホールドの外側の該弱い圧力は、材料をスリーブ内に押し上げるのではなく、溶融材料を隙間から離れるように推進する。そのため、ピン272はピンの移動を妨げるおそれがある干渉を受けることなくギャップ280の該領域内で往復運動することができる。
図3に示すように、一部の熱可塑性材料を、熱可塑性材料が硬化して堆積物292になることを可能にするギャップ280からある距離だけ押し出すことができるが、スリーブ268及びギャップ280は、ピン272と接触する熱可塑性材料を、材料を溶融相又は塑性相に維持する温度範囲に保ち、それによってピン272の移動を妨げないように構成される。
【0024】
図4はスリーブ268をピン272とともに使用することから生じる利点を示す。
図4において、六つのピン用のスリーブ268は弁組立体204から出る。次に、これらのスリーブ268は、スリーブ支持体404を通過するときに他のスリーブとスリーブ支持体404の中心に向かって曲がる。スリーブ支持体404は、スリーブ268を受容するために、中を貫通するチャネル408を有する。これらのチャネルは、2つの異なるスリーブ支持体内の狭い領域に配置されてスリーブ268を制限するのに役立ち、そのためそれらは押出機ヘッド108の上面における2×3配列構成にうまく収まる。したがって、スリーブ268内のピン272はマニホールド216内でのピンの往復運動に役立つ押出機ヘッド108に90度の角度を呈するように入り、そのためそれらは面板260内に2 X 3のアレイで配置されたノズル218とうまく位置合わせされる。押出機ヘッド108内へのピンの入り口に対する該90°の角度は、ピン上の抗力を減少させ、シールの磨耗を減少させ、かつ所与のノズル領域内でより多くのピンを使用することを可能にする。したがって、押出機ヘッド108において弁組立体におけるピンの分離に必要なスペースをより緊密に制限することができるため、より多くのノズル収まるピンに必要とされるより多くのアクチュエータを収容するために必要とされるより大きな空気圧弁組立体を収容することができる。可撓性スリーブの別の利点は、ピン272の遠位端をノズル218内に位置決めするのに必要な力を上記アクチュエータ264から吸収することができるというスリーブが持っている能力である。
【0025】
図5Aと
図5Bは別の実施形態を示す。この実施形態では、押出機ヘッド108の上部部材504は、各スリーブ268とピン272との組合わせごとに一対一に対応する凹状の開口部508を有する。凹状の開口部508内のスリーブ268の外周と上部部材504の壁との間の間隔は1mm以下である。ピン272は、図を簡単にするためにシール288にて切断されている。スリーブ268は、
図3の実施形態に示すように、ピン272より短い。ただし、それはピン272を中心として長手方向にスライドするように配置されている。
図5Aに示すように、押出機の製造では、スリーブ268は上部部材504の遠位端又はスリーブの中央に固定され、それによって上部部材504に最も近いスリーブの端部は、凹状の開口部508において上部部材504に近接する又は接触する。スリーブと凹状の開口部の側面との間の距離は小さく、シール288を通過してこの領域に流れる材料が熱可塑性状態に保たれるように一般的には0.5mm未満である。
図5Bに示すように、押出機ヘッドの動作中、材料がシール288を通って漏れるおそれがある、又はピン272はスリーブの撓み又はスリーブ268を上側部材504から押し出すことによってマニホールドからシール288を通して材料を引っ張ることができる。凹状の開口部508は、凹状の開口部内の材料を上部部材504の温度に保つのに役立ち、これは、押出機ヘッド108が加熱されている限り、凹状の開口部内の材料が硬化しないように維持するのに十分である。スリーブ268を中心とする溶融材料の量は材料の熱伝導率の関数である。より高い程度の熱伝導率を有する溶融材料は、より低い程度の熱伝導率を有する材料よりも、凹状の開口部508からより大きな距離で硬化する。したがって、ギャップ280に対して、凹状の開口部508の近く又は内部の材料の熱的条件を維持する必要がある。送風機又はファンなどの冷却器512は、スリーブから熱エネルギーを除去するために、調節された空気であり得る空気流をスリーブ268に誘導するように配置することができる。この空気流又は他の冷却流体は、スリーブ268を溶融材料がスリーブに入るのを防ぐ温度に保つのに役立つ。
【0026】
スリーブ268は、ステンレス鋼などの熱伝導率が低い金属を原料として製造することができる。ステンレス鋼、チタン、炭素鋼、おそれタンタルなどの金属は、60W/m K未満の熱伝導率を有し、該熱伝導率はこの明細書内では低い熱伝導率である。スリーブ268とピン272との間の摩擦を低減し、かつスリーブ内におけるピン272の往復運動を容易にするために、スリーブは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの低摩擦係数を有する材料で作製又は裏打ちすることができる。あるいは、ピンの動きを容易にし、かつ熱可塑性材料がスリーブに入るのを防ぐために、スリーブは低摩擦潤滑剤を含有することができる。別の実施形態では、スリーブ内及びヘッド内でのピンの動きを容易にするために、ダイヤモンドライクカーボン、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン、又は窒化チタンなどの低摩擦コーティンがピンに塗布される。上記で特定された種類の構築材料及び支持材料において、押出機ヘッド108の上面に近接しているスリーブ268の端部間のギャップ280は約1mm又は1mm以下であるが、他のギャップを使用することもできる。押出機ヘッドがより高温に加熱される場合、又は上述のように溶融材料の熱伝導率で熱が押出機ヘッドから押出機ヘッドからより遠い距離まで運ばれる場合、ギャップ280は開示された範囲とは異なり得る。スリーブ268がステンレス鋼のような剛性材料から作られる場合、ピンの撓みは実質的に減少することができる。そのため、空気圧式アクチュエータとノズルとの間のピンの長さをより正確に制御することができ、それによってアクチュエータの移動量を減らすことができ、かつノズルの開閉速度を上げることができる。加えて、剛性スリーブによって可能となる移動の正確さは、全ての弁を一貫して閉めることを可能にするため、ノズルを閉めるためにより小さい力をピンに使用することができる。この低い力はピンの磨耗を減らし、押出機の動作寿命を延ばす。