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  • 特許-支承部位置ずれ検知システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】支承部位置ずれ検知システム
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/04 20060101AFI20221221BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20221221BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20221221BHJP
【FI】
E01D19/04 Z
E01D22/00 A
G01M99/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019153713
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021031972
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】511113785
【氏名又は名称】株式会社ミライト・ワン
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏寿
(72)【発明者】
【氏名】米山 幹一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄一
(72)【発明者】
【氏名】林 吾介
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 亮洋
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 周
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255572(JP,A)
【文献】特開2017-083406(JP,A)
【文献】特開2009-007797(JP,A)
【文献】特開平05-099648(JP,A)
【文献】特開2008-255573(JP,A)
【文献】特開2017-082556(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1140735(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
E01D 22/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道における桁式構造物の上部及び下部構造物の地震による位置ずれをこれらの間に挿入された支承部材の移動から検知し信号を無線送信する検知システムであって、
前記上部構造物又は前記下部構造物に固設され前記支承部材が前記上部構造物又は前記下部構造物に対して所定量移動することで否通電から通電ままとなON・OFFのセンサスイッチと、
前記センサスイッチのON・OFFの動作状況を所定間隔で外部サーバーと接続されたゲートウェイに送信する通信部と、
これらを動作させるバッテリーと、を含み、前記所定間隔の前記センサスイッチのON・OFFの動作状況の送信に基づき前記位置ずれを前記外部サーバー側で検知することを特徴とする支承部位置ずれ検知システム。
【請求項2】
前記センサスイッチは前記支承部材から離間して位置する可動部を有し、前記可動部が前記支承部材に当接すると前記センサスイッチが通電することを特徴とする請求項1記載の支承部位置ずれ検知システム。
【請求項3】
前記センサスイッチは前記支承部材の側周に沿って複数並べて設けられることを特徴とする請求項2記載の支承部位置ずれ検知システム。
【請求項4】
前記支承部材はパッド型ゴム支承であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載の位置ずれ検知システム。
【請求項5】
前記センサスイッチは、前記上部構造物又は前記下部構造物と、前記支承部材と、に端部をそれぞれ固定した線条体の張力により通電することを特徴とする請求項1記載の支承部位置ずれ検知システム。
【請求項6】
前記上部構造物及び前記下部構造物の間の構造物間距離を測定する非接触測距センサを含み、前記所定間隔と同期して測定を行って、前記構造物間距離のデータを前記通信部から前記ゲートウェイに向けて送信することを特徴とする請求項1記載の支承部位置ずれ検知システム。
【請求項7】
前記非接触測距センサは、前記上部構造物及び前記下部構造物の間の鉛直方向及び/又は水平方向の基準距離を測定することを特徴とする請求項記載の支承部位置ずれ検知システム。
【請求項8】
前記非接触測距センサは、赤外線センサ又はインダクティブセンサであることを特徴とする請求項又はに記載の支承部位置ずれ検知システム。
【請求項9】
不揮発性メモリからなる記憶手段をさらに有し、前記通信部は送信するデータを前記記憶手段に記憶させた上で送信することを特徴とする請求項1乃至のうちのいずれか1つに記載の支承部位置ずれ検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁や高架橋などの桁式構造物の上部及び下部構造物の間にある支承部における位置ずれを検知する検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震後の交通機関における運行再開については、構造物や軌道に運行の妨げとなるような被害が生じていないかを確認しておく必要がある。かかる確認作業は、一般的に、作業員の近接での目視に頼っており、長大な経路に沿って作業員を移動させながらの作業は多大な時間を要してしまう。特に、橋梁や高架橋などの上部及び下部構造物からなる桁式構造物の該上部及び下部構造物の間にある支承部は、高所作業車を用いた確認作業となるため、より効率的な確認作業方法が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1では、支承装置を構成する部材にその変位方向と平行な方向に移動自在に棒状体を装着し、この移動量から支承装置の構成部材の変位量を検知する方法を開示している。直接、支承装置の構成部材の変位量を検知するのではなく、連関して動く「棒状体」を目視又は実測できるようにすることで、構成部材がカバーの中にあっても、カバーの外から変位量を検知可能とできるとしている。
【0004】
一方、桁式構造物の支承部の状態を通信手段を用いて自動的に送信できるようにした方法も提案されている。
【0005】
例えば、特許文献2では、ベースプレートと上沓との間にゴム沓を配置した上で、高架道路橋のような桁式構造物の耐震性を向上させるためのサイドブロックを設けたゴム支承に傾斜センサを取り付け、該サイドブロックの損傷を検知する方法を開示している。2つのサイドブロックは、ベースプレートの幅方向(橋軸直角方向)の両側に対向させて取り付け、ベースプレートに対する上沓の相対的な位置の変化を制限する。サイドブロックは、上沓やソールプレート等の衝突時の衝撃によってゴム支承の上沓が対向する対向面の反対側に折れ曲がり損傷する。かかる損傷により、傾斜センサで検知される傾斜角が変化し、近距離無線通信部から検知結果が報知装置へ向けて送信されるとしている。
【0006】
また、特許文献3では、簡略されたセンサを用いて支承部の変状を検知する方法が開示されている。支承部のストッパーには、これを取り巻くように、破断によりひび割れを検知可能な導電塗料が細線状に複数塗布される。導電塗料の通電の有無についてのデータを送信機によって基地局や軌道上に送信し、地震の発生後、早期に導電塗料の破断の有無を把握して、支承部の変状を検知するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-105717号公報
【文献】特開2017-83407号公報
【文献】特開2017-44585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、作業員のアクセス困難で且つ難視認箇所となる桁式構造物の支承部の位置ずれ、特に、近年、鉄道構造物に多く用いられているゴム支承(特許文献3を参照)における支承部の位置ずれを検知することが求められている。かかる検知は、長大橋梁などの重要構造物だけでなく、一般的な橋梁や高架橋までも含めて検知できることが望まれ、長い検知区間と多くの検知箇所に対応できるシステムが求められる。かかるシステムでは、地震において大規模停電などが生じたとしても、直後から商用電力の供給がなくとも動作することが求められる。そのため、バッテリーなどを内蔵するにしても、その交換のためのアクセスが困難であり、センサの動作信頼性とともに、長期間に亘りメインテナンスフリーであることも求められる。
【0009】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、鉄道における桁式構造物の上部及び下部構造物の地震による位置ずれをこれらの間に挿入されたパッド型ゴム支承などの支承部材の移動から検知し信号を遠隔送信する上で、長期間に亘りメインテナンスフリーの検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による支承部位置ずれ検知システムは、鉄道における桁式構造物の上部及び下部構造物の地震による位置ずれをこれらの間に挿入された支承部材の移動から検知し信号を無線送信する検知システムであって、前記上部構造物又は前記下部構造物に固設され前記支承部材が前記上部構造物又は前記下部構造物に対して所定量移動することで通電するセンサスイッチと、前記センサスイッチの動作状況を所定間隔で外部サーバーと接続されたゲートウェイに送信する通信部と、これらを動作させるバッテリーと、を含むことを特徴とする。
【0011】
かかる発明によれば、桁式構造物の上部及び下部構造物の地震による位置ずれを支承部材の移動から長期間に亘ってメインテナンスフリーで検知できる。
【0012】
上記した発明において、前記センサスイッチは前記支承部材から離間して位置する可動部を有し、前記可動部が前記支承部材に当接すると前記センサスイッチが通電することを特徴としてもよい。また、前記センサスイッチは前記支承部材の側周に沿って複数並べて設けられることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、支承部材の位置ずれを比較的少ない情報で検知できて長期間に亘ってメインテナンスフリーとすることに寄与する。
【0013】
上記した発明において、前記支承部材はパッド型ゴム支承であることを特徴としてもよい。また、前記可動部と前記パッド型ゴム支承との離間距離は、前記桁式構造物の上を走行する車両の荷重を支持できない、若しくは、前記パッド型ゴム支承の損傷の生じるゴム支承抜け出し限界変位量をあらかじめ求めておき、これに対応して決定されていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、ゴム支承の位置ずれを比較的少ない情報で検知できて長期間に亘ってメインテナンスフリーとすることに寄与する。
【0014】
上記した発明において、前記センサスイッチは、前記上部構造物又は前記下部構造物と、前記支承部材と、に端部をそれぞれ固定した線条体の張力により通電することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、支承部材の位置ずれを比較的少ない情報で検知できて長期間に亘ってメインテナンスフリーとすることに寄与する。
【0015】
上記した発明において、前記上部構造物及び前記下部構造物の間の距離を測定する非接触測距センサを含み、前記所定間隔と同期して測定を行って、このデータを前記通信部から前記ゲートウェイに向けて送信することを特徴としてもよい。また、前記非接触測距センサは、前記上部構造物及び前記下部構造物の間の鉛直方向及び/又は水平方向の基準距離を測定することを特徴としてもよい。また、前記非接触測距センサは、赤外線センサ又はインダクティブセンサであることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、支承部材の位置ずれをより正確に検知することができる。
【0016】
上記した発明において、不揮発性メモリからなる記憶手段をさらに有し、前記通信部は送信するデータを前記記憶手段に記憶させた上で送信することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、支承部材の位置ずれをより正確に検知しつつも長期間に亘ってメインテナンスフリーとすることに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】桁式構造物の要部の側断面図である。
図2】上部構造物を省いた支承部の斜視図である。
図3】支承部位置ずれ検知システムと外部サーバーを含むブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の代表的な一例による支承部位置ずれ検知システムの1つの実施例について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、支承部位置ずれ検知システムを用いる桁式構造物1は、上部構造物2と、これを張り出し部4で支持する下部構造物3とを含む。ここでは、桁式構造物1は鉄道用の軌道を支持する高架橋であり、上部構造物2として調整桁、下部構造物3としてラーメン高架橋を用いている。張り出し部4の上面には板状のコンクリートモルタルからなる沓座5が固定されるとともに、その上に支承部材としてパッド型のゴム支承6を備え、支承を形成し上部構造物2の下面を支持している。本実施例による支承部位置ずれ検知システムでは、このような上部構造物2と下部構造物3との地震による位置ずれをゴム支承6の移動から検知する例を以下に述べるが、支承としては、鋼製材料からなる鋼製支承であっても良い。なお、紙面左右方向(矢印方向)が線路の延びる方向である。
【0020】
図2に示すように、張り出し部4の上面に固定された沓座5は、主面を略長方形とする板状体である。また、ゴム支承6は、沓座5の主面に内包される略長方形の主面を有する板状体であり、沓座5の上面に配置される。つまり、上面視で沓座5の内側にゴム支承6を配置する。なお、線路の延びる方向を図面上に矢印で示した。
【0021】
ここで、ゴム支承6の所定量の移動を検知するためのセンサスイッチが配置される。センサスイッチとして、例えば、上部に可動部としてロッド21aを備えるロッド式リミットスイッチ21を用い得る。ロッド式リミットスイッチ21は、ゴム支承6の側周に沿って複数配置されるとともに、ゴム支承6から離間してロッド21aを位置させる。ここでは、沓座5の側面から鉛直上方にロッド21aを延ばすようにロッド式リミットスイッチ21を配置し、沓座5に固設した。つまり、ゴム支承6が移動して沓座5の周囲にはみ出るまで移動した場合にロッド21aがゴム支承6に当接してロッド式リミットスイッチ21を通電させ、かかる移動を検知できる。つまり、ゴム支承6の沓座5をはみ出るまでの移動を所定量の移動とする。
【0022】
また、ここではセンサスイッチとして、ワイヤ式リミットスイッチ22も併せて用いる。例えば、線条体であるワイヤ22aの両端部をそれぞれ、ゴム支承6及びワイヤ式リミットスイッチ22に固定する。また、ワイヤ式リミットスイッチ22の本体を張り出し部4に固設する。ワイヤ22aに張力がかかることでワイヤ式リミットスイッチ22に通電させ、ゴム支承6の所定量以上に移動を検知できる。例えば、ワイヤ22aをゴム支承6の角部近傍に固定して、ゴム支承6の平行移動だけでなく、回転を併せた移動をも検知できる。つまり、検知する移動の所定量に合わせてワイヤ22aの長さを定める。
【0023】
これらのセンサスイッチは、上記したように下部構造物3側の沓座5に固設して、下部構造物3に対するゴム支承6の位置ずれを検知するようにされている。これに対して、上部構造物2に対するゴム支承6の位置ずれを検知するようにしてもよい。例えば、上部構造物2から吊り下げるようにロッド式リミットスイッチ21を固設して、ゴム支承6の上部構造物2に対する水平方向の移動を検知することもできる。これらを組み合わせて、上部構造物2及び下部構造物3の両者に対するゴム支承6の移動をそれぞれ検知できるようにしてもよい。
【0024】
これらのセンサスイッチの配置において、ゴム支承6からの離間距離は、以下のように定めることが好ましい。例えば、桁式構造物1の上を走行する車両の荷重を支持できない限界変位を予め求めておいて、これに対応して離間距離を定めることができる。また、ゴム支承6が沓座5や下部構造物3に対して、又は、上部構造物2に対して水平方向に移動する変位、すなわち抜け出し量のうち、ゴム支承6に損傷の生じる限界変位である抜け出し限界変位を予め求めておいて、この抜け出し限界変位量に対応して離間距離を定めることもできる。
【0025】
本実施例では、さらに、上部構造物2と下部構造物3との位置ずれも計測できるようにしている。例えば、上部構造物2の下面に吊り下げるように非接触測距センサとして3軸方向の測距を可能とする赤外線センサによる赤外線測距装置23を配置する。3軸のそれぞれは、水平面内で線路の延びる方向に沿った方向とこれに垂直な方向、鉛直方向の3方向に向け、それぞれ対向する位置に測距用の基準板23aを設けて張り出し部4に固定する。これによって、水平な2方向、鉛直方向の合計3方向についての基準板23aからの基準距離を測定することができる。この基準距離によって、上部構造物2と下部構造物3との間の相対的な変位を得て、支承部の位置ずれを検知することができる。
【0026】
図3に示すように、これらのセンサスイッチや測距装置は、張り出し部4に設置されたノード本体11に接続され、ノード本体11と共に、支承部位置ずれ検知システム10を構成する。ノード本体11は、ロッド式リミットスイッチ21、ワイヤ式リミットスイッチ22、赤外線測距装置を接続されて、これらの動作状況についての信号を取得することができる。つまり、ロッド式リミットスイッチ21及びワイヤ式リミットスイッチ22については通電か否かについてのON・OFF信号を取得し、赤外線測距装置23については、距離の測定結果についての信号を取得することができる。
【0027】
詳細には、ノード本体11は、センサ類(リミットスイッチ21、ワイヤ式リミットスイッチ22、赤外線測距装置23)から信号を取得する動作を行うとともに通信部13としても動作し得るマイコン12と、データの入出力を担うI/Oボード14と、ノード本体11及びセンサ類の電源となるバッテリー15と、受信した信号をデータとして保存する記憶手段16と、設定時などに使用者に向けて必要な情報を表示するディスプレイ17とを含む。マイコン12、バッテリー15、記憶手段16、ディスプレイ17及びセンサ類は全てI/Oボード14に接続される。ここで、記憶手段16としては、バッテリー15の消耗を抑制するようSDメモリなどの不揮発性メモリを用いることが好ましい。また、バッテリー15は、比較的超長寿命とされる塩化チオニルリチウム一次電池を用いることも好ましい。
【0028】
通信部13は、比較的少ない消費電力で無線通信を可能とするものとし、例えば、LoRa無線通信規格に準拠するモジュールとしてマイコン12に搭載されている。通信部13は、ゲートウェイ31に信号を送信でき、例えば、基地局32を介して外部の通信ネットワークへ接続を可能としており、外部サーバー33への接続を可能とする。さらに、外部サーバー33へは端末34からの接続も可能とする。端末34は、遠隔地から検知システム10の検知結果を受信することができる。外部サーバー33は、例えば、クラウドサーバーを用い得る。
【0029】
なお、ゲートウェイ31は、線路に沿って複数配置されるが、1台のゲートウェイ31によって複数の支承部位置ずれ検知システム10からの送信を受信できる。つまり、複数個所の支承部についての検知に関する信号を1台のゲートウェイ31で受信できるようにする。また、ゲートウェイ31は無線通信によって支承部位置ずれ検知システム10に接続するため、地上付近に設置でき、また、支承部に比べて数も少ないため、メインテナンスフリーとする必要はない。
【0030】
次に、支承部位置ずれ検知システム10の動作について説明する。
【0031】
図3を参照すると、支承部位置ずれ検知システム10は、マイコン12によって所定の時間間隔でセンサ類の動作状況を取得してゲートウェイ31へ送信する。詳細には、マイコン12は、所定間隔でI/Oボード14にセンサ類の動作状況を示す信号を受信させる。すなわち、ロッド式リミットスイッチ21及びワイヤ式リミットスイッチ22からは、ON又はOFF(通電又は否通電)の信号を取得し、赤外線測距装置23からは、測定した基準距離についての信号を取得する。マイコン12はこれらの信号を通信部13からゲートウェイ31無線で送信させる。このとき、マイコン12は、通信部13に支承部位置ずれ検知システム10の個体及びセンサ類の識別符号を上記した信号に付して送信させる。これらの信号は、同時に記憶手段16に記憶されることも好ましい。
【0032】
また、赤外線測距装置23からは距離の測定結果についての信号は、センサスイッチからの信号の取得・送信と同期させて取得・送信することが好ましい。つまり、信号の取得や送信についてもなるべく少ない回数として電力の消耗を抑える。また、測距装置として、赤外線センサに代わって、インダクティブセンサを用いることも好ましい。
【0033】
所定の時間間隔としては、地震などにより支承部の位置ずれを発生した場合にこれを迅速に検知できる範囲かつ、支承部位置ずれ検知システム10を長期に亘ってメインテナンスフリーとし得るよう定められる。例えば、この所定の時間間隔を10分間隔とし、メインテナンスフリーとする期間を8年間とし得る。なお、上記したように信号を記憶手段16に記憶させて、別途、送信するようにしてもよい。特に、記憶手段16に信号を記憶させておくことで、地震後などに通信ネットワークの不具合などの不慮の事態の生じた場合に、ゲートウェイ31を介するなどして、上記した所定の時間間隔以外のタイミングで信号を取り出すこともできる。
【0034】
ゲートウェイ31へ送信された信号は、基地局32まで無線通信され、外部サーバー33へ送信され、保存・蓄積される。端末34は、外部サーバー33に任意に接続して保存された信号を適宜取り出すことができる。
【0035】
そして、地震後など、支承部に位置ずれを生じてゴム支承6が移動してロッド式リミットスイッチ21又はワイヤ式リミットスイッチ22を通電させたとする。すると、例えば、ロッド式リミットスイッチ21の場合であれば、ロッド21aがゴム支承6に当接してリミットスイッチ21を通電させる位置となる。マイコン12が所定の時間間隔でリミットスイッチ21の信号を取得したとき、これがON(通電)の信号となっており、このONの信号を上記した識別符号を付してゲートウェイ31へ送信する。そして、外部サーバー33を介して端末34でこのONの信号を受信することで、付された識別符号から通電したセンサを特定でき、支承部の位置ずれを検知して、位置ずれを検知した桁式構造物を特定できる。
【0036】
以上のように、支承部位置ずれ検知システム10によれば、支承部の位置ずれをゴム支承6の位置ずれに基づいて検知できる。特に、ロッド式リミットスイッチ21などのセンサスイッチを用いることで信号の量を少なくしつつ、所定の時間間隔でゲートウェイ31へ送信することで、電力の消費量を抑え、長期間に亘りメインテナンスフリーとし得る。
【0037】
このように、位置ずれの検知に関わる信号は所定間隔で取得して送信するため、センサスイッチは一度通電する位置になった場合に元の位置に自動的には復帰しないことが好ましい。すなわち、ゴム支承6の位置ずれが生じてワイヤ式リミットスイッチ22が通電する位置になった場合に、そののちワイヤが切断されるなどした場合でも、元の位置に復帰せずに通電する位置を保持できて好ましい。例えば、ワイヤ式リミットスイッチ22について、ワイヤの先端に設けたピンをセンサ本体から抜けるようにしておき、これに基づき通電させるような機構も考えられる。
【0038】
なお、地震の後などで電源が消失した場合や通信ネットワークに障害を生じた場合であっても、記憶手段16に記憶させたデータを受信できるようにすることが好ましい。例えば、ゲートウェイ31の代わりに運搬の容易な通信装置を桁式構造物1の近くに配置させ、各支承部位置ずれ検知システム10の通信部13に接続し、記憶手段16に記憶したデータを送信させるようにすることができる。
【0039】
以上、本発明の代表的な実施例及びこれに伴う変形例について述べたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、適宜、当業者によって変更され得る。すなわち、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0040】
1 桁式構造物
2 上部構造物
3 下部構造物
6 ゴム支承
10 支承部位置ずれ検知システム
13 通信部
15 バッテリー
16 記憶手段
21 ロッド式リミットスイッチ
22 ワイヤ式リミットスイッチ
31 ゲートウェイ
33 外部サーバー

図1
図2
図3