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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】判定システム
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/00 20060101AFI20221221BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221221BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F16J15/00 E
G06T7/00 300F
G01B11/02 H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019171758
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021046938
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】油谷 康
(72)【発明者】
【氏名】藤原 隆寛
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219312(JP,A)
【文献】特開2001-141434(JP,A)
【文献】実開平6-51862(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00 - 15/42
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
30/418 - 40/16
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジの締結に用いられた使用済みのガスケットの撮像画像を取得する撮像手段と、
前記撮像画像に基づいて、前記ガスケットを介して一対の前記フランジを締結した際に前記ガスケットに形成される、前記ガスケットと前記フランジとの接触痕を解析する解析手段とを備え、
前記解析手段は、
前記撮像画像において、第1ラインおよび第2ラインで囲まれた、前記接触痕を示す接触痕領域を検出する検出手段と、
前記第1ラインと前記第2ラインとの間の距離を算出する距離算出手段と、
前記距離に少なくとも基づいて、前記ガスケットを介した一対の前記フランジの締結状態の適否を判定する状態判定手段とを含む、判定システム。
【請求項2】
前記距離算出手段は、前記接触痕領域の複数の箇所において前記距離を算出するとともに、複数の前記距離の平均値と、前記距離の標準偏差とをさらに算出し、
前記平均値が所定範囲内であって、かつ前記標準偏差が第1閾値未満である場合に、前記状態判定手段は、前記締結状態が適切であると判定する、請求項1に記載の判定システム。
【請求項3】
前記平均値が前記所定範囲の上限値よりも大きい場合、前記状態判定手段は、一対の前記フランジの締結力が過剰であると判定する、請求項2に記載の判定システム。
【請求項4】
前記平均値が前記所定範囲の下限値よりも小さい場合、前記状態判定手段は、一対の前記フランジの締結力が不足していると判定する、請求項2または3に記載の判定システム。
【請求項5】
前記標準偏差が前記第1閾値以上である場合、前記状態判定手段は、前記フランジの位置ごとに締結力のばらつきが大きいと判定する、請求項2~4のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項6】
前記解析手段は、
前記撮像画像を2値化して2値化画像を生成する2値化手段と、
前記2値化画像において複数の解析範囲を設定する範囲設定手段とをさらに含み、
前記解析範囲は、前記接触痕を含む第1範囲と、前記ガスケットにおける前記フランジとの当接部を含む第2範囲とを含み、
前記解析手段は、各前記解析範囲について、前記第1範囲における所定色の第1比率と、前記第2範囲における前記所定色の第2比率とを算出する比率算出手段をさらに含み、
前記状態判定手段は、前記距離と、各前記解析範囲における前記第1および第2比率とに基づいて、前記締結状態の適否を判定する、請求項1~5のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項7】
フランジの締結に用いられた使用済みのガスケットの撮像画像を取得する撮像手段と、
前記撮像画像に基づいて、前記ガスケットを介して一対の前記フランジを締結した際に前記ガスケットに形成される、前記ガスケットと前記フランジとの接触痕を解析する解析手段とを備え、
前記解析手段は、
前記撮像画像を2値化して2値化画像を生成する2値化手段と、
前記2値化画像において複数の解析範囲を設定する範囲設定手段とを含み、
前記解析範囲は、前記接触痕を含む第1範囲と、前記フランジと前記ガスケットとの当接部を含む第2範囲とを含み、
前記解析手段は、
各前記解析範囲について、前記第1範囲における所定色の第1比率と、前記第2範囲における前記所定色の第2比率とを算出する比率算出手段と、
各前記解析範囲における前記第1および第2比率に基づいて、前記ガスケットを介した一対の前記フランジの締結状態の適否を判定する状態判定手段とをさらに含む、判定システム。
【請求項8】
各前記第1比率が第1基準比率以上であり、各前記第2比率が第2基準比率以上であり、かつ前記第2比率の標準偏差が第2閾値未満である場合、前記状態判定手段は、前記締結状態が適切であると判定する、請求項7に記載の判定システム。
【請求項9】
予め用意された良品のガスケットの参照画像と、前記撮像画像とに基づいて、使用済みの前記ガスケットの使用環境が適切であったか否かを判定する環境判定手段をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項10】
前記環境判定手段は、
前記参照画像から前記良品のガスケットの輪郭を抽出し、当該輪郭で囲まれた第1領域の面積を算出し、
前記撮像画像から使用済みの前記ガスケットの輪郭を抽出し、当該輪郭で囲まれた第2領域の面積を算出し、
前記第1領域の面積に対する前記第2領域の面積の比率が基準範囲内に収まっている場合に、使用済みの前記ガスケットの使用環境が適切であると判定する、請求項9に記載の判定システム。
【請求項11】
前記状態判定手段の判定結果と、前記環境判定手段の判定結果とを出力する出力制御手段をさらに備える、請求項10に記載の判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物をカメラ等で撮像し、撮像画像から対象物の各種評価を行なう技術が知られている。例えば、特開2016-113794号公報(特許文献1)は、マンホール鉄蓋を斜め上方から撮像した入力画像に基づいて、マンホール鉄蓋の模様高さを評価する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-113794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、流体が管内を流れる配管のフランジにおいて流体をシールする部材としてガスケットが知られている。このガスケットの使用に関してトラブルが生じた際の対応は、技術的知識および経験が必要とされる。例えば、知識や経験が乏しい者が、使用済みのガスケット(あるいは、ガスケットの撮像画像)を確認してもトラブル要因を把握できないため、特定の熟練者に当該ガスケットを確認してもらう場合も多い。そのため、熟練者が不在等により対応が困難な場合には、トラブル対応を迅速に行なうことができない。したがって、個人の知識や経験に依存せずに、ガスケットの撮像画像から当該ガスケットの使用状態等を容易に判定できるシステムが必要とされている。
【0005】
本開示のある局面における目的は、ガスケットの撮像画像を解析することにより、当該ガスケットが適切に使用されたか否かを容易に判定することが可能な判定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施の形態に従う判定システムは、フランジの締結に用いられた使用済みのガスケットの撮像画像を取得する撮像手段と、撮像画像に基づいて、ガスケットを介して一対のフランジを締結した際にガスケットに形成される、ガスケットとフランジとの接触痕を解析する解析手段とを備える。解析手段は、撮像画像において、第1ラインおよび第2ラインで囲まれた、接触痕を示す接触痕領域を検出する検出手段と、第1ラインと第2ラインとの間の距離を算出する距離算出手段と、距離に少なくとも基づいて、ガスケットを介した一対のフランジの締結状態の適否を判定する状態判定手段とを含む。
【0007】
好ましくは、距離算出手段は、接触痕領域の複数の箇所において距離を算出するとともに、複数の距離の平均値と、距離の標準偏差とをさらに算出する。平均値が所定範囲内であって、かつ標準偏差が第1閾値未満である場合に、状態判定手段は、締結状態が適切であると判定する。
【0008】
好ましくは、平均値が所定範囲の上限値よりも大きい場合、状態判定手段は、一対のフランジの締結力が過剰であると判定する。
【0009】
好ましくは、平均値が所定範囲の下限値よりも小さい場合、状態判定手段は、一対のフランジの締結力が不足していると判定する。
【0010】
好ましくは、標準偏差が第1閾値以上である場合、状態判定手段は、フランジの位置ごとに締結力のばらつきが大きいと判定する。
【0011】
好ましくは、解析手段は、撮像画像を2値化して2値化画像を生成する2値化手段と、2値化画像において複数の解析範囲を設定する範囲設定手段とをさらに含む。解析範囲は、接触痕を含む第1範囲と、ガスケットにおけるフランジとの当接部を含む第2範囲とを含む。解析手段は、各解析範囲について、第1範囲における所定色の第1比率と、第2範囲における所定色の第2比率とを算出する比率算出手段をさらに含む。状態判定手段は、距離と、各解析範囲における第1および第2比率とに基づいて、締結状態の適否を判定する。
【0012】
他の実施の形態に従う判定システムは、フランジの締結に用いられた使用済みのガスケットの撮像画像を取得する撮像手段と、撮像画像に基づいて、ガスケットを介して一対のフランジを締結した際にガスケットに形成される、ガスケットとフランジとの接触痕を解析する解析手段とを備える。解析手段は、撮像画像を2値化して2値化画像を生成する2値化手段と、2値化画像において複数の解析範囲を設定する範囲設定手段とを含む。解析範囲は、接触痕を含む第1範囲と、フランジとガスケットとの当接部を含む第2範囲とを含む。解析手段は、各解析範囲について、第1範囲における所定色の第1比率と、第2範囲における所定色の第2比率とを算出する比率算出手段と、各解析範囲における第1および第2比率に基づいて、ガスケットを介した一対のフランジの締結状態の適否を判定する状態判定手段とをさらに含む。
【0013】
好ましくは、各第1比率が第1基準比率以上であり、各第2比率が第2基準比率以上であり、かつ第2比率の標準偏差が第2閾値未満である場合、状態判定手段は、締結状態が適切であると判定する。
【0014】
好ましくは、予め用意された良品のガスケットの参照画像と、撮像画像とに基づいて、使用済みのガスケットの使用環境が適切であったか否かを判定する環境判定手段をさらに含む。
【0015】
好ましくは、環境判定手段は、参照画像から良品のガスケットの輪郭を抽出し、当該輪郭で囲まれた第1領域の面積を算出し、撮像画像から使用済みのガスケットの輪郭を抽出し、当該輪郭で囲まれた第2領域の面積を算出し、第1領域の面積に対する第2領域の面積の比率が基準範囲内に収まっている場合に、使用済みのガスケットの使用環境が適切であると判定する。
【0016】
好ましくは、判定システムは、状態判定手段の判定結果と、環境判定手段の判定結果とを出力する出力制御手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
本開示によると、ガスケットが適切に使用されたか否かを容易に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】判定システムの全体構成を説明するための図である。
図2】判定システムの動作概要の一例を説明するためのフローチャートである。
図3】解析装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4】ガスケットに形成される接触痕を説明するための図である。
図5】接触痕領域の大きさの評価方式を説明するための図である。
図6】接触痕領域における距離のテーブルを示す図である。
図7】使用前後のガスケットの2値化画像を示す図である。
図8】解析範囲の拡大画像を示す図である。
図9】ガスケットの使用環境の適否判定方式を説明するための図である。
図10】結果レポートの表示例を示す図である。
図11】解析装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0020】
<システム構成>
図1は、判定システム1000の全体構成を説明するための図である。図1を参照して、判定システム1000は、ガスケット23が適切に使用されたか否かを判定するためのシステムである。具体的には、判定システム1000は、解析装置10と、撮像装置20と、サーバ30と、端末装置40とを含む。
【0021】
ガスケット23は、設置される部位の隙間を封止し、その部位に密封性を持たせることが可能なシール材である。ガスケット23には様々な種類が存在し、配管の使用態様に応じて適宜選択される。本実施の形態では、ガスケット23は、例えば、樹脂系ガスケットである。また、ガスケット23は、フランジの締結に用いられた使用済みのガスケットであるとする。
【0022】
撮像装置20は、ガスケット23の撮像画像を取得する。撮像装置20は、取得した撮像画像を解析装置10へ送信する。具体的には、撮像装置20は、カメラ21と、照明機器22とを含む。
【0023】
カメラ21は、一例として、レンズなどの光学系に加えて、CCD(Coupled Charged Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサといった、複数の画素に区画された撮像素子を含んで構成される。カメラ21による撮像によって取得された撮像画像は、解析装置10へ伝送される。照明機器22は、例えば、LED、蛍光灯、白熱灯などを光源とする照明機器である。照明機器22は、撮像対象物であるガスケット23に対して光を照射する。
【0024】
ここで、ガスケットは、フランジの配管同士が接合する部分に挟み込まれ、フランジのボルトの締め付けによって固定されることで、フランジの隙間から流体が漏洩することを防止する。そして、フランジの凸部分がガスケットの表面に接触する(押し付けられる)ことにより、フランジの締結に用いられた使用済みのガスケットの表面には当該接触による接触痕が形成される。
【0025】
本実施の形態では、解析装置10は、撮像画像に基づいて、この接触痕を解析することによって、ガスケット23が適切に使用されたか否かを判定する。解析装置10は、典型的には、汎用的なコンピュータアーキテクチャに従う構造を有しており、予めインストールされたプログラムをプロセッサが実行することで、後述する各種の処理を実現する。解析装置10は、例えば、デスクトップPC(Personal Computer)である。ただし、解析装置10は、以下に説明する機能および処理を実行可能な装置であればよく、他の装置(例えば、ラップトップPC、タブレット端末装置)であってもよい。
【0026】
サーバ30は、解析装置10と通信可能に構成される。サーバ30は、解析装置10による各種処理結果を受信して、これらをデータベース化して記憶する。
【0027】
端末装置40は、サーバ30と通信可能に構成される。端末装置40は、サーバ30のデータベースにアクセスして、解析装置10による各種処理結果等をディスプレイに表示する。端末装置40は、典型的には、スマートフォンであるが、これに限られず、例えば、タブレット端末装置であってもよい。なお、端末装置40は、解析装置10と通信可能に構成されていてもよい。
【0028】
図2は、判定システムの動作概要の一例を説明するためのフローチャートである。図2を参照して、撮像装置20は、ガスケット23を撮像する(ステップS100)。解析装置10は、ガスケット23の撮像画像を撮像装置20から取得して、内部メモリに記憶する(ステップS110)。なお、解析装置10は、ガスケット23が撮像されたときの撮像条件(例えば、撮像距離、解像度、光の照射角度、光源波長、輝度等)も記憶する。
【0029】
解析装置10は、内部メモリに記憶された撮像画像を読み出して、当該撮像画像をディスプレイに表示する(ステップS120)。解析装置10は、ユーザから、ガスケット23が実際に使用されたときの使用条件の入力を受け付ける(ステップS130)。使用条件は、ガスケット23の品番と、使用温度と、使用圧力と、使用流体とを含む。
【0030】
解析装置10は、ディスプレイに表示されたガスケット23の撮像画像を解析して、解析結果に基づいて、ガスケット23の使用の適否の判定処理を実行する(ステップS140)。詳細は後述するが、解析装置10は、解析結果に基づいて、ガスケット23を介した一対のフランジの締結状態の適否、およびガスケット23の使用環境の適否を判定する。解析装置10は、解析結果および判定結果をサーバ30に送信する。
【0031】
サーバ30は、解析装置10から受信した解析結果および判定結果をデータベース化して記憶する(ステップS150)。端末装置40は、サーバ30に記憶されている解析結果および判定結果を取得して、これらをディスプレイに表示する(ステップS160)。
【0032】
判定システム1000によると、使用済みのガスケット23の撮像画像を用いて、当該ガスケット23の使用の適否が判定される。そのため、熟練者でない人でもガスケット23の使用状態や使用環境に適否を迅速に把握でき、ガスケット23の使用に関するトラブル対応を効率的に行なうことができる。
【0033】
<ハードウェア構成>
(解析装置)
図3は、解析装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図3を参照して、解析装置10は、プロセッサ101と、メモリ103と、ディスプレイ105と、入力装置107と、入出力インターフェイス(I/F)109と、通信インターフェイス(I/F)111とを含む。これらの各部は、互いにデータ通信可能に接続される。
【0034】
プロセッサ101は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Multi Processing Unit)等といった演算処理部である。プロセッサ101は、メモリ103に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、解析装置10の各部の動作を制御する。より詳細にはプロセッサ101は、当該プログラムを実行することによって、解析装置10の各機能を実現する。
【0035】
メモリ103は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクなどによって実現される。メモリ103は、プロセッサ101によって実行されるプログラム、撮像装置20によって取得された撮像画像、撮像画像に対する処理結果等を記憶する。
【0036】
ディスプレイ105は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ105は、解析装置10と一体的に構成されてもよいし、解析装置10とは別個に構成されてもよい。
【0037】
入力装置107は、解析装置10に対する操作入力を受け付ける。入力装置107は、例えば、キーボード、ボタン、マウスなどによって実現される。また、入力装置107は、タッチパネルとして実現されていてもよい。
【0038】
入出力インターフェイス109は、プロセッサ101と撮像装置20との間のデータ伝送を仲介する。入出力インターフェイス109は、例えば、カメラ21と接続が可能であり、プロセッサ101から入出力インターフェイス109を介してカメラ21に撮像指示が出力される。これにより、カメラ21は、ガスケット23を撮像し、生成された画像を入出力インターフェイス109を介してプロセッサ101に出力する。また、プロセッサ101は、入出力インターフェイス109を介して、光の照射角度、輝度等の指示を照明機器22へ与えてもよい。
【0039】
通信インターフェイス111は、プロセッサ101とサーバ30等との間のデータ伝送を仲介する。通信方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)等による無線通信方式が用いられる。なお、通信方式として、USB(Universal Serial Bus)等の有線通信方式を用いてもよい。
【0040】
(サーバ)
サーバ30は、後述するような情報処理を全体として提供できればよく、そのハードウェア構成については公知のものを採用することができる。例えば、サーバ30は、各種処理を実行するためのプロセッサと、プログラムやデータなどを格納するためのメモリと、解析装置10と各種データを送受信するための通信インターフェイスと、ユーザからの指示を受け付けるための入力装置とを含む。
【0041】
(端末装置)
端末装置40は、後述するような情報処理を全体として提供できればよく、そのハードウェア構成については公知のものを採用することができる。例えば、端末装置40は、プロセッサと、メモリと、解析装置10と各種データを送受信するための通信インターフェイスと、ユーザからの指示を受け付けるためのタッチパネルと、各種情報を表示するためのディスプレイとを含む。
【0042】
<判定方式>
(締結状態の適否判定)
図4図6を参照して、ガスケットを介した一対のフランジの締結状態の適否判定方式について説明する。上述したように、フランジの凸部分がガスケットの表面に接触する(押し付けられる)ことにより、使用済みのガスケットの表面には当該接触による接触痕が形成される。図4は、ガスケットに形成される接触痕を説明するための図である。
【0043】
図4を参照して、画像410は、使用前のガスケットの撮像画像である。画像420は、フランジの締結力が不足した状態でガスケットが使用された場合の当該ガスケットの撮像画像である。画像430は、フランジの締結力が適切である状態でガスケットが使用された場合の当該ガスケットの撮像画像である。
【0044】
画像410~430には、グレースケール変換された後、光源波長、光源の照射角度、輝度等に基づいてソフトウェアで陰影強調処理が行われている。画像410~430にそれぞれ描画されている太線41~43は、ガスケットの輪郭を示す線である。太線41~43は、撮像距離およびガスケットのサイズ情報(外径、内径等)に基づいて自動的に描画される。画像420においては、接触痕よりも内側の領域51がフランジによって押圧されて凹んだ凹領域であり、接触痕よりも外側の領域52がフランジによって押圧されていない凸領域である。画像430においては、接触痕よりも内側の領域53が凹領域であり、接触痕よりも外側の領域54が凸領域である。
【0045】
画像410~430を比較すると、使用前のガスケットには接触痕が形成されておらず、使用後のガスケットには接触痕が形成されていることが確認できる。また、画像420と画像430とを比較すると、画像420よりも画像430の方がガスケットの接触痕がより鮮明に表れている。このことから、ガスケットの接触痕を解析することにより、フランジの締結状態を推定することが可能となる。
【0046】
画像430中の接触痕を拡大した画像440を参照すると、ライン401とライン403とで囲まれた黒領域と、ライン402とライン403とで囲まれた白領域とが確認できる。本実施の形態では、黒領域の外側エッジに対応するライン401と、白領域の内側エッジに対応するライン402とで囲まれた領域を、接触痕を示す接触痕領域として定義する。
【0047】
図5は、接触痕領域の大きさの評価方式を説明するための図である。図5を参照して、ライン401上の任意の点をP1(x1,y1)とする。点P1の法線と、ライン402との交点をP2(x2,y2)とする。点P1と点P2との距離をdとすると、dは「(x1-x2)^2+(y1-y2)^2)1/2」として算出される。距離dは、接触痕領域の大きさを評価するための指標として用いられる。本実施の形態では、接触痕領域の複数の箇所(例えば、10箇所)において、距離dが算出される。具体的には、ライン401上の複数の点P1の各々について、当該点P1と、当該点P1に対応する点P2との距離dが算出される。
【0048】
図6は、接触痕領域における距離dのテーブル600を示す図である。テーブル600には、「締結不足」、「片締め」、「締結良」および「締結過剰」に対応する4つのガスケットが用意され、各ガスケットについての接触痕領域における距離dの平均値および標準偏差が示されている。
【0049】
「締結不足」に対応するガスケットは、フランジの締結力が不足した状態で使用されたガスケットである。「片締め」に対応するガスケットは、フランジの位置に応じて締結力が異なる状態(例えば、フランジのある位置ではボルトの締付けが強く、他の位置ではボルトの締付けが弱い状態)で使用されたガスケットである。「締結良」に対応するガスケットは、フランジの締結力が適切な状態で使用されたガスケットである。「締結過剰」に対応するガスケットは、フランジの締結力が過剰な状態で使用されたガスケットである。
【0050】
また、テーブル600には、各ガスケットについて、「全周」、「1/4周」および「1/8周」に対応する距離dの平均値および標準偏差も示されている。「全周」に対応する距離dの平均値は、ガスケット全体の撮像画像に含まれる接触痕領域における距離dの平均値である。「1/4周」に対応する距離dの平均値は、ガスケット全体の撮像画像を4分割した場合の任意の1つの撮像画像に含まれる接触痕領域における距離dの平均値である。「1/8周」に対応する距離dの平均値は、ガスケット全体の撮像画像を8分割した場合の任意の1つの撮像画像に含まれる接触痕領域における距離dの平均値である。
【0051】
例えば、「締結良」に対応するガスケットの「全周」における距離dの平均値は“5.4”であり、距離dの標準偏差は“0.5”である。また、「締結過剰」に対応するガスケットの「1/4周」における距離dの平均値は“7.1”であり、距離dの標準偏差は“0.6”である。
【0052】
ここで、4つのガスケットの「全周」における距離dに着目する。この場合、距離dの平均値は、「締結不足」の場合が最も小さく(例えば、1.6)、「締結過剰」の場合が最も大きい(例えば、6.9)。これは、「1/4周」および「1/8周」においても同じ傾向である。また、「締結不足」、「締結良」および「締結過剰」の場合には標準偏差は0.6以下となっているが、「片締め」の場合には標準偏差が1.7と極端に大きくなっている。このことから、「締結良」に対応するガスケットでは、接触痕領域における距離dの平均値が所定範囲G内(例えば、4.0以上6.0以下)に収まっており、かつ距離dの標準偏差が閾値Th1(例えば、1.0)未満であることがわかる。
【0053】
したがって、解析装置10は、ガスケット23に形成された接触痕領域における距離dの平均値が所定範囲G内であって、かつ標準偏差が閾値Th1未満であるとの条件X1を満たすとの解析結果に応じて、ガスケット23を介した一対のフランジの締結状態が「締結良」であると判定する。
【0054】
また、解析装置10は、距離dの平均値が所定範囲Gの上限値(例えば、6.0)よりも大きいとの解析結果に応じて、フランジの締結状態が「締結過剰」であると判定する。解析装置10は、距離dの平均値が所定範囲Gの下限値(例えば、4.0)よりも小さいとの解析結果に応じて、フランジの締結状態が「締結不足」であると判定する。解析装置10は、距離dの標準偏差が閾値Th1以上であるとの解析結果に応じて、フランジの締結状態が「片締め」であると判定する。
【0055】
なお、各ガスケットの「1/4周」および「1/8周」における距離dに基づくと、詳細なフランジの締結状態を推定できる。具体的には、4つの「1/4周」における距離dを比較することにより、フランジのどの部分の締結力が強いのか、あるいは、弱いのかを推定できる。例えば、所定の「1/4周」における距離dの平均値よりも他の「1/4周」における距離dの平均値の方が大きい場合には、他の「1/4周」に対応するフランジの位置の方が、所定の「1/4周」に対応するフランジの位置よりも締結力が強いことがわかる。8つの「1/4周」における距離dを比較すると、フランジの各部分の締結力をより詳細に推定することができる。
【0056】
次に、図7および図8を参照して、ガスケットを介した一対のフランジの締結状態の適否判定方式の他の例について説明する。図7は、使用前後のガスケットの2値化画像を示す図である。図7に示す画像710~730は、ガスケットの撮像画像をグレースケール変換した後、光源波長、光源の照射角度、輝度等に基づいてソフトウェアで2値化処理して生成された2値化画像である。
【0057】
図7を参照して、画像710は、使用前のガスケットの2値化画像である。画像720は、フランジの締結力が不足した状態でガスケットが使用された場合の当該ガスケットの2値化画像である。画像730は、フランジの締結力が適切である状態でガスケットが使用された場合の当該ガスケットの2値化画像である。
【0058】
画像710~730では、それぞれガスケットの上側の解析範囲71~73周辺に光が照射されている。解析範囲71~73に含まれる白領域と黒領域とに差異が確認される。そこで、解析範囲71~73の白黒比率を比較することによって、ガスケットが使用された際のフランジの締結状態を推定することができる。例えば、ある範囲の黒色比率は、当該範囲に含まれる全画素数に対する黒画素数の割合で表される。白色比率についても同様である。
【0059】
図8は、解析範囲の拡大画像を示す図である。図8を参照して、画像820は、画像720の解析範囲72の拡大画像である。画像830は、画像730の解析範囲73の拡大画像である。解析範囲72は、接触痕を含む接触痕範囲721と、ガスケットにおけるフランジとの当接部を含む当接範囲722とを含む。当接部は、ガスケットがフランジ間に配置されたときに、当該ガスケットがフランジと接触する(押圧される)部分である。また、解析範囲73は、接触痕範囲731と、当接範囲732とを含む。
【0060】
接触痕範囲721および731を比較すると、「締結良」に対応するガスケットの接触痕範囲731の方が、「締結不足」に対応するガスケットの接触痕範囲721よりも陰影が強調されている。具体的には、接触痕範囲731における黒色比率は、接触痕範囲721における黒色比率よりも大きく、接触痕範囲731における接触痕はより鮮明に確認される。このことから、接触痕範囲における黒色比率が基準比率E1(例えば、60%)以上である場合、当該接触痕範囲を含む解析範囲においてはガスケットの変形具合(凹み具合)が適切であると推定される。
【0061】
当接範囲722および732を比較すると、「締結良」に対応するガスケットの当接範囲732の方が、「締結不足」に対応するガスケットの当接範囲722よりも光の拡散および反射が抑制されており、黒色比率が大きいことがわかる。具体的には、当接範囲732における黒色比率は、当接範囲722における黒色比率よりも大きい。このことから、当接範囲における黒色比率が基準比率E2(例えば、60%)以上である場合、当該当接範囲を含む解析範囲においてはガスケットとフランジとの当接具合が適切であると推定される。なお、基準比率E1と基準比率E2とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0062】
したがって、解析装置10は、ガスケットにおける複数の解析範囲(例えば、8つの解析範囲)の各々において、接触痕範囲における黒色比率と当接範囲における黒色比率を算出し、これらの黒色比率に基づいて、フランジの締結状態の適否を判定する。具体的には、各接触痕範囲(例えば、8つの接触痕範囲)におけるすべての黒色比率が基準比率E1以上であり、各当接範囲(例えば、8つ当接範囲)におけるすべての黒色比率が基準比率E2以上であり、かつ当接範囲における黒色比率の標準偏差が閾値Th2(例えば、15%)未満であるとの条件X2を満たす場合、解析装置10は、フランジの締結状態が適切であると判定する。
【0063】
ここで、図4図6で説明した判定方式と、図7図8で説明した判定方式とを組み合わせて締結状態の適否判定を行なってもよい。具体的には、解析装置10は、条件X1および条件X2を満たした場合に、フランジの締結状態が適切であると判定してもよい。これによると、より精度の高い判定結果を得ることができる。
【0064】
(使用環境の適否判定)
ガスケットを介したフランジの締結に問題がなくても、不適切な環境でガスケットが使用された場合には、ガスケットが変形したり、脱落したりする場合がある。ここでは、使用済みのガスケットの形状に着目し、当該ガスケットの使用環境が適切であったか否かを判定する方式について説明する。
【0065】
図9は、ガスケットの使用環境の適否判定方式を説明するための図である。図9を参照して、画像910はガスケットの良品画像であり、画像920はガスケットの不良Y1に対応する不良品画像であり、画像930は不良Y2に対応する不良品画像である。
【0066】
具体的には、画像920は、重合性モノマーによる樹脂系ガスケットの花咲現象を示す画像である。花咲現象は、モノマー流体がガスケット内部に浸透することによって、また浸透した流体がガスケット内部で重合反応することによって体積膨張を起こし、ガスケットに破損が発生するという機構で起こると考えられる。画像930は、スラリー流体による軟質ガスケットの侵食(エロージョン)を示す画像である。エロージョンは、高速の粉体がガスケットに衝突したことで、物理的な作用により発生する。
【0067】
画像910~930は、例えば、解析装置10のメモリに予め記憶されている。なお、画像910~930が外部装置(例えば、サーバ30)に記憶されている場合には、解析装置10は当該外部装置からこれらの画像を取得する。
【0068】
解析装置10は、各画像910~930に輪郭抽出処理を施して、画像910の輪郭画像912と、画像920の輪郭画像922と、画像930の輪郭画像932を生成する。解析装置10は、使用済みのガスケットの画像950(例えば、ガスケット23の撮像画像)の輪郭を抽出し、輪郭画像952を生成する。解析装置10は、輪郭画像912,922,932と、輪郭画像952とを重畳して、サンプル画像と各画像910~930との照合処理を実行する。
【0069】
輪郭画像912の面積に対する輪郭画像952の面積の比率R1が基準範囲内(例えば、±10%以内)に収まっている場合、使用済みのガスケットの形状は良品のガスケットの形状とほぼ同じであるため、解析装置10は、使用済みのガスケットの使用環境が適切であったと判定する。
【0070】
比率R1が基準範囲外である場合、使用済みのガスケットの形状は良品のガスケットの形状から大きく逸脱しているため、解析装置10は、使用済みのガスケットの使用環境が適切ではなかったと判定する。また、輪郭画像922の面積に対する輪郭画像952の面積の比率R2が基準範囲内に収まっている場合、解析装置10は、使用済みのガスケットに不良Y1が発生したと判定してもよい。さらに、輪郭画像932の面積に対する輪郭画像952の面積の比率R3が基準範囲内に収まっている場合、解析装置10は、使用済みのガスケットに不良Y2が発生したと判定してもよい。
【0071】
このように、解析装置10は、ガスケット23の撮像画像と、ガスケットの良品画像、不良品画像とを比較することによって、ガスケット23の使用環境の適否、および不良の種類を判定することができる。
【0072】
(判定結果の表示)
解析装置10は、ガスケット23の解析結果、および判定結果をサーバ30に送信する。サーバ30は、解析結果および判定結果をメモリに記憶する。端末装置40は、サーバ30から取得した解析結果および判定結果に基づいて、図10に示すような結果レポートを表示する。
【0073】
図10は、結果レポートの表示例を示す図である。図10を参照して、端末装置40は、結果レポートを示すユーザインターフェイス画面150をディスプレイに表示する、ユーザインターフェイス画面150は、表示領域152,154,156と、ガスケット23の撮像画像158と、距離dの平均値の分布160と、アドバイス領域162と、技術資料リンク領域164と、問い合わせリンク領域166とを含む。
【0074】
表示領域152は、ガスケット23の使用条件を示す領域である。表示領域154は、ガスケット23を介したフランジの締結状態の判定結果を示す領域である。表示領域156は、ガスケット23の使用環境の判定結果を示す領域である。
【0075】
図10の例では、ガスケット23の品番が「1111」であり、使用温度が100℃、使用圧力が10MPa、使用流体が水蒸気であることが示されている、また、締結状態および使用環境は適切であるとの判定結果が示されている。分布160を参照すると、ガスケット23の全周において、距離dが概ね同じであるとの解析結果が示されている。
【0076】
なお、締結状態が不適切(例えば、「締結不足」、「片締め」および「締結過剰」のいずれか)であり、かつ使用環境が適切である場合には、アドバイス領域162には、例えば、「トルク値管理を技術資料で確認ください」といったアドバイスが表示される。締結状態が適切であり、かつ使用環境が不適切である場合には、アドバイス領域162には、例えば、「推奨品番・上位品番を技術資料で確認ください」といったアドバイスが表示される。締結状態が不適切であり、かつ使用環境が不適切である場合には、アドバイス領域162には、例えば、「技術仕様を確認するか、お問い合わせください」といったアドバイスが表示される。これらのアドバイスを参照することで、端末装置40のユーザは、技術資料リンク領域164や問い合わせリンク領域166を選択して、適切な対応をとることができる。
【0077】
<機能構成>
図11は、解析装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。図11を参照して、解析装置10は、主たる機能構成として、検出部202と、距離算出部204と、2値化処理部206と、範囲設定部208と、比率算出部210と、状態判定部212と、環境判定部214と、出力制御部216とを含む。これらの各機能は、例えば、解析装置10のプロセッサ101がメモリ103に格納されたプログラムを実行することによって実現される。なお、これらの機能の一部または全部はハードウェアで実現されるように構成されていてもよい。
【0078】
図11を参照して、検出部202は、撮像装置20により取得されたガスケット23の撮像画像において、ライン401およびライン402で囲まれた接触痕領域を検出する。検出部202による接触痕領域の検出は、公知の画像処理(例えば、エッジ検出処理)技術を用いることにより実行される。
【0079】
距離算出部204は、ライン401とライン402との間の距離dを算出する。距離算出部204は、接触痕領域の複数の部分において距離dを算出する。例えば、距離算出部204は、ライン401上の複数の点P1の各々について、当該点P1と、当該P1に対応するライン402上の点P2との距離dを算出する。また、距離算出部204は、複数の箇所にそれぞれ対応する複数の距離dの平均値と、距離dの標準偏差とを算出する。
【0080】
2値化処理部206は、撮像装置20により取得されたガスケット23の撮像画像を2値化して2値化画像を生成する。範囲設定部208は、2値化画像において複数の解析範囲を設定する。典型的には、範囲設定部208は、図7に示す解析範囲(例えば、画像730の解析範囲73)を自動的に複数個設定する。典型的には、ガスケット23の全周において複数個の解析範囲が均等に設定される。ただし、範囲設定部208は、ユーザの指示に従って、複数の解析範囲を設定してもよい。
【0081】
比率算出部210は、各解析範囲について、接触痕範囲(例えば、接触痕範囲731)における所定色(例えば、黒色)の第1比率と、当接範囲(例えば、当接範囲732)における所定色の第2比率とを算出する。
【0082】
ある局面では、状態判定部212は、距離dに基づいて、ガスケット23を介した一対のフランジの締結状態の適否を判定する。具体的には、状態判定部212は、距離dの平均値が所定範囲G内であって、かつ距離dの標準偏差が閾値Th1未満である場合に、当該一対のフランジの締結状態が適切であると判定する。また、距離dの平均値が所定範囲Gの上限値よりも大きい場合、状態判定部212は、当該一対のフランジの締結力が過剰であると判定する。距離dの平均値が所定範囲Gの下限値よりも小さい場合、状態判定部212は、当該一対のフランジの締結力が不足していると判定する。距離dの標準偏差が閾値Th1以上である場合、状態判定部212は、フランジの位置ごとに締結力のばらつきが大きいと判定する。
【0083】
他の局面では、状態判定部212は、各解析範囲における第1比率および第2比率に基づいて、ガスケット23を介した一対のフランジの締結状態の適否を判定する。具体的には、各第1比率が基準比率E1以上であり、各第2比率が基準比率E2以上であり、かつ第2比率の標準偏差が閾値Th2未満である場合、状態判定部212は、当該締結状態が適切であると判定する。
【0084】
さらに他の局面では、状態判定部212は、距離算出部204により算出された距離dと、比率算出部210により算出された第1比率および第2比率とに基づいて、当該締結状態を判定する。具体的には、距離dの平均値が所定範囲G内であって、距離dの標準偏差が閾値Th1未満(条件X1に対応)である場合、かつ、各第1比率が基準比率E1以上であり、各第2比率が基準比率E2以上であり、第2比率の標準偏差が閾値Th2未満(条件X2に対応)である場合に、状態判定部212は、当該締結状態が適切であると判定する。
【0085】
環境判定部214は、予め用意された良品のガスケットの参照画像(例えば、画像910)と、使用済みのガスケット23の撮像画像(例えば、画像950)とに基づいて、ガスケット23の使用環境が適切であったか否かを判定する。具体的には、環境判定部214は、当該参照画像から良品のガスケットの輪郭を抽出し、当該輪郭で囲まれた領域の面積AR1を算出する。環境判定部214は、撮像画像から使用済みのガスケット23の輪郭を抽出し、当該輪郭で囲まれた領域の面積AR2を算出する。面積AR1に対する面積AR2の比率(例えば、比率R1)が基準範囲内に収まっている場合に、環境判定部214は、ガスケット23の使用環境が適切であると判定する。
【0086】
出力制御部216は、状態判定部212の判定結果(状態判定結果)と、環境判定部214の判定結果(環境判定結果)とを出力する。具体的には、出力制御部216は、これらの判定結果をサーバ30に送信する。また、出力制御部216は、これらの判定結果をディスプレイ105に表示してもよい。
【0087】
<利点>
本実施の形態によると、使用済みのガスケットの撮像画像を用いて、当該ガスケットの使用の適否を容易に判定することができる。そのため、熟練者でない人でもガスケットの使用状態や使用環境が適切なのか不適切なのかを迅速に把握できる。したがって、ガスケットの使用に関するトラブルに迅速に対応することができる。
【0088】
<その他の実施の形態>
(1)上述した実施の形態における図11の解析装置10の機能構成のうちの一部の構成をサーバ30が有していてもよい。例えば、解析装置10が検出部202および2値化処理部206を有し、サーバ30が距離算出部204、比率算出部210、状態判定部212、環境判定部214および出力制御部216を有する構成であってもよい。この場合、解析装置10は、検出部202の検出結果や2値化画像等をサーバ30に送信する。
【0089】
(2)上述した実施の形態において、コンピュータを機能させて、上述のフローチャートで説明したような制御を実行させるプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、二次記憶装置、主記憶装置およびメモリカードなどの一時的でないコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0090】
プログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。また、本実施の形態にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
【0091】
(3)上述の実施の形態として例示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。また、上述した実施の形態において、その他の実施の形態で説明した処理や構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
【0092】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
10 解析装置、20 撮像装置、21 カメラ、22 照明機器、23 ガスケット、30 サーバ、40 端末装置、101 プロセッサ、103 メモリ、105 ディスプレイ、107 入力装置、109 入出力インターフェイス、111 通信インターフェイス、150 ユーザインターフェイス画面、202 検出部、204 距離算出部、206 2値化処理部、208 範囲設定部、210 比率算出部、212 状態判定部、214 環境判定部、216 出力制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11