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特許7198185車両管理システム、車両管理方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】車両管理システム、車両管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/36 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
E04H6/36
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019173491
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021050510
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-03-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】益田 晃次
(72)【発明者】
【氏名】室園 智紀
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 直人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 修平
(72)【発明者】
【氏名】田口 龍馬
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-148131(JP,A)
【文献】特開2016-006605(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01036898(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走することで物体を搬送可能な搬送装置と、
所定平面上で前記搬送装置を自走させて、前記搬送装置に前記所定平面に駐車された車両を搬送させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記搬送装置に、前記所定平面上の中央から偏した位置に、複数の前記車両を並べて駐車させ、
前記偏した位置は、前記中央から前記所定平面と前記所定平面に面した他領域との境界側に寄った位置であり、
前記制御装置は、
前記搬送装置に、前記所定平面と前記他領域との境界線の延在方向に前記車両の進行方向が沿うように、前記偏した位置に複数の前記車両を縦列に駐車させ、
前記搬送装置に、前記車両同士の間隔が所定距離以下となるように複数の前記車両を縦列に駐車させ、
前記搬送装置は、前記車両の車輪を接地面から離した状態で前記車両を搬送し、
前記制御装置は、
前記偏した位置に縦列に駐車させた複数の前記車両のうち、列の先頭に配置された第1車両の前方に、前記延在方向に関する距離が前記所定距離を超える空間が存在する場合、前記搬送装置に、前記第1車両の車輪を前記接地面から離させ、
前記偏した位置に縦列に駐車させた複数の前記車両のうち、列の最後尾に配置された第2車両の後方に、前記延在方向に関する距離が前記所定距離を超える空間が存在する場合、前記搬送装置に、前記第2車両の車輪を前記接地面から離させる、
車両管理システム。
【請求項2】
自走することで物体を搬送可能な搬送装置と、
複数の車両が並べられて配置された所定平面上で前記搬送装置を自走させて、前記搬送装置に前記車両を搬送させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記車両のユーザが操作可能な端末装置と通信し、
前記ユーザが前記端末装置を使用して前記所定平面に駐車された複数の車両の中から少なくとも一台の対象車両を選択した場合、前記搬送装置に、前記対象車両とは異なる他車両を移動させ、
前記搬送装置に、前記他車両を移動させたことで形成された空間を通過させて所定位置まで前記対象車両を搬送させ、
前記搬送装置に、前記所定平面上の中央から偏した位置に、複数の前記車両を並べて駐車させ、
前記偏した位置は、前記中央から前記所定平面と前記所定平面に面した他領域との境界側に寄った位置であり、
前記制御装置は、
前記搬送装置に、前記所定平面と前記他領域との境界線の延在方向に前記車両の進行方向が沿うように、前記偏した位置に複数の前記車両を縦列に駐車させ、
前記搬送装置に、前記車両同士の間隔が所定距離以下となるように複数の前記車両を縦列に駐車させ、
前記搬送装置は、前記車両の車輪を接地面から離した状態で前記車両を搬送し、
前記制御装置は、
前記偏した位置に縦列に駐車させた複数の前記車両のうち、列の先頭に配置された第1車両の前方に、前記延在方向に関する距離が前記所定距離を超える空間が存在する場合、前記搬送装置に、前記第1車両の車輪を前記接地面から離させ、
前記偏した位置に縦列に駐車させた複数の前記車両のうち、列の最後尾に配置された第2車両の後方に、前記延在方向に関する距離が前記所定距離を超える空間が存在する場合、前記搬送装置に、前記第2車両の車輪を前記接地面から離させる、
車両管理システム。
【請求項3】
前記所定距離は、前記車両を前後に移動しながら車輪を切り返しても、縦列に駐車された複数の前記車両の中から抜け出すことができない距離である、
請求項1又は2に記載の車両管理システム。
【請求項4】
コンピュータが、
自走することで物体を搬送可能な搬送装置を所定平面上で自走させて、前記搬送装置に前記所定平面に駐車された車両を搬送させ、
前記搬送装置に、前記所定平面上の中央から偏した位置に、複数の前記車両を並べて駐車させる、車両管理方法であって、
前記偏した位置は、前記中央から前記所定平面と前記所定平面に面した他領域との境界側に寄った位置であり、
前記コンピュータが、更に、
前記搬送装置に、前記所定平面と前記他領域との境界線の延在方向に前記車両の進行方向が沿うように、前記偏した位置に複数の前記車両を縦列に駐車させ、
前記搬送装置に、前記車両同士の間隔が所定距離以下となるように複数の前記車両を縦列に駐車させ、
前記搬送装置は、前記車両の車輪を接地面から離した状態で前記車両を搬送し、
前記コンピュータが、更に、
前記偏した位置に縦列に駐車させた複数の前記車両のうち、列の先頭に配置された第1車両の前方に、前記延在方向に関する距離が前記所定距離を超える空間が存在する場合、前記搬送装置に、前記第1車両の車輪を前記接地面から離させ、
前記偏した位置に縦列に駐車させた複数の前記車両のうち、列の最後尾に配置された第2車両の後方に、前記延在方向に関する距離が前記所定距離を超える空間が存在する場合、前記搬送装置に、前記第2車両の車輪を前記接地面から離させる、
車両管理方法。
【請求項5】
コンピュータに実行させるためのプログラムであって
自走することで物体を搬送可能な搬送装置を所定平面上で自走させて、前記搬送装置に前記所定平面に駐車された車両を搬送させる処理と、
前記搬送装置に、前記所定平面上の中央から偏した位置に、複数の前記車両を並べて駐車させる処理と、を含み
前記偏した位置は、前記中央から前記所定平面と前記所定平面に面した他領域との境界側に寄った位置であり、
記搬送装置に、前記所定平面と前記他領域との境界線の延在方向に前記車両の進行方向が沿うように、前記偏した位置に複数の前記車両を縦列に駐車させる処理と、
前記搬送装置に、前記車両同士の間隔が所定距離以下となるように複数の前記車両を縦列に駐車させる処理と、を更に含み、
前記搬送装置は、前記車両の車輪を接地面から離した状態で前記車両を搬送し、
前記偏した位置に縦列に駐車させた複数の前記車両のうち、列の先頭に配置された第1車両の前方に、前記延在方向に関する距離が前記所定距離を超える空間が存在する場合、前記搬送装置に、前記第1車両の車輪を前記接地面から離させる処理と、
前記偏した位置に縦列に駐車させた複数の前記車両のうち、列の最後尾に配置された第2車両の後方に、前記延在方向に関する距離が前記所定距離を超える空間が存在する場合、前記搬送装置に、前記第2車両の車輪を前記接地面から離させる処理と、を更に含む、
ログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両管理システム、車両管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
台車を車両の下部に進入させ、車両の各車輪を持ち上げた状態で台車を自走させることで、車両を搬送する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、IC(Integrated Circuit)カードや磁気カードに記録された情報を基にユーザの認証を行い、ユーザの認証が成功すると、そのユーザの車両を無人で駐車場に入庫させたり、駐車場から車両を出庫させたりする技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-216936号公報
【文献】特開平05-156837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、車両の入庫や出庫を管理するためには、大規模な専用の設備を用意する必要があり、システムを導入するためのコストが大きくなったり、システムが複雑化したりする場合があった。
【0005】
本発明の一態様は、このような事情を考慮してなされたものであり、低コスト且つ簡素に車両を管理することができる車両管理システム、車両管理方法、及びプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両管理システム、車両管理方法、及びプログラムは、以下の構成を採用した。
【0007】
(1)本発明の一態様は、自走することで物体を搬送可能な搬送装置と、所定平面上で前記搬送装置を自走させて、前記搬送装置に前記所定平面に駐車された車両を搬送させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記搬送装置に、前記所定平面上の中央から偏した位置に、複数の前記車両を並べて駐車させる車両管理システムである。
【0008】
(2)の態様は、上記(1)の態様に係る車両管理システムにおいて、前記偏した位置は、前記中央から前記所定平面と前記所定平面に面した他領域との境界側に寄った位置であり、前記制御装置は、前記搬送装置に、前記境界線の延在方向に前記車両の進行方向が沿うように、前記偏した位置に複数の前記車両を縦列に駐車させるものである。
【0009】
(3)の態様は、上記(2)の態様に係る車両管理システムにおいて、前記制御装置は、前記搬送装置に、前記車両同士の間隔が所定距離以下となるように複数の前記車両を縦列に駐車させるものである。
【0010】
(4)の態様は、上記(3)の態様に係る車両管理システムにおいて、前記所定距離は、前記車両を前後に移動しながら車輪を切り返しても、縦列に駐車された複数の前記車両の中から抜け出すことができない距離であるものである。
【0011】
(5)の態様は、上記(2)から(4)のうちいずれか一つの態様に係る車両管理システムにおいて、前記制御装置は、前記偏した位置に縦列に駐車させることが可能な複数の前記車両の組み合わせのうち、前記車両同士の間隔が最も短くなる組み合わせを選択し、前記搬送装置に、前記選択した組み合わせの車両を、前記偏した位置に縦列に駐車させるものである。
【0012】
(6)の態様は、上記(5)の態様に係る車両管理システムにおいて、前記制御装置は、前記偏した位置に縦列に駐車させることが可能な複数の前記車両の中で最も全長が大きい車両を含む組み合わせを優先的に選択するものである。
【0013】
(7)の態様は、上記(3)から(6)のいずれか一つの態様に係る車両管理システムにおいて、前記搬送装置は、前記車両の車輪を接地面から離した状態で前記車両を搬送し、前記制御装置は、前記偏した位置に縦列に駐車させた複数の前記車両のうち、列の先頭に配置された第1車両の前方に、前記延在方向に関する距離が前記所定距離を超える空間が存在する場合、前記搬送装置に、前記第1車両の車輪を前記接地面から離させ、前記偏した位置に縦列に駐車させた複数の前記車両のうち、列の最後尾に配置された第2車両の後方に、前記延在方向に関する距離が前記所定距離を超える空間が存在する場合、前記搬送装置に、前記第2車両の車輪を前記接地面から離させるものである。
【0014】
(8)の態様は、上記(2)の態様に係る車両管理システムにおいて、前記制御装置は、前記車両同士の間隔が、前記所定平面に駐車されており、且つ前記偏した位置に駐車されていない他車両の車幅未満となるように、前記搬送装置に、複数の前記車両を縦列に駐車させるものである。
【0015】
(9)の態様は、上記(1)から(8)のいずれか一つの態様に係る車両管理システムにおいて、前記制御装置は、前記車両のユーザが操作可能な端末装置と通信し、前記ユーザが前記端末装置を使用して前記偏した位置に駐車させる車両を指定した場合、前記搬送装置に、少なくとも前記ユーザが指定した車両を前記偏した位置に駐車させるものである。
【0016】
(10)本発明の他の態様は、自走することで物体を搬送可能な搬送装置と、複数の車両が並べられて配置された所定平面上で前記搬送装置を自走させて、前記搬送装置に前記車両を搬送させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記車両のユーザが操作可能な端末装置と通信し、前記ユーザが前記端末装置を使用して前記所定平面に駐車された複数の車両の中から少なくとも一台の対象車両を選択した場合、前記搬送装置に、前記対象車両とは異なる他車両を移動させ、更に、前記搬送装置に、前記他車両を移動させたことで形成された空間を通して所定位置まで前記対象車両を搬送させる車両管理システムである。
【0017】
(11)本発明の他の態様は、コンピュータが、自走することで物体を搬送可能な搬送装置を所定平面上で自走させて、前記搬送装置に前記所定平面に駐車された車両を搬送させ、前記搬送装置に、前記所定平面上の中央から偏した位置に、複数の前記車両を並べて駐車させる車両管理方法である。
【0018】
(12)本発明の他の態様は、コンピュータに、自走することで物体を搬送可能な搬送装置を所定平面上で自走させて、前記搬送装置に前記所定平面に駐車された車両を搬送させる処理と、前記搬送装置に、前記所定平面上の中央から偏した位置に、複数の前記車両を並べて駐車させる処理と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
上記いずれかの態様によれば、所定平面の領域の境界を区切るフェンスなどの設備を設けずとも、低コスト且つ簡素に車両を管理することができる。
【0020】
また、(3)、(4)の態様によれば、車両の間隔が、車両を前後に移動しながら車輪を切り返しても、縦列に駐車された複数の車両の中から抜け出すことができない所定距離以下となるように、所定平面の中央から偏した位置に複数の車両を縦列駐車するため、偏した位置に縦列駐車されてフェンスの役割を果たす車両そのものが、所定平面上から不正に出庫されるのを抑制することができる。
【0021】
また、(5)の態様によれば、所定平面の中央から偏した位置に縦列に駐車させることが可能な複数の車両の組み合わせのうち、車両同士の間隔が最も短くなる組み合わせを選択するため、所定平面とそれ以外の領域とを明確に区分けすることができる。つまり、所定平面の中央から偏した位置に縦列駐車する車両のフェンスとしての機能を更に高めることができる。
【0022】
また、(6)の態様によれば、所定平面の中央から偏した位置に縦列に駐車させることが可能な複数の車両の中で最も全長が大きい車両を含む組み合わせを選択するため、所定平面から車両を出庫させる際、または所定平面に車両を入庫させる際に、最も全長が大きい車両のみを移動させるだけで、車両の出し入れを容易に行うことができる。
【0023】
また、(7)の態様によれば、縦列駐車させた複数の車両の中で、先頭の車両の前方または最後尾の車両の後方に、所定平面とそれ以外の領域との境界線の延在方向に関する距離が所定距離を超えるスペースが形成される場合、搬送装置が、先頭の車両または最後尾の車両の車輪を接地面から離間させるため、所定平面の中央から偏した位置に縦列駐車されてフェンスの役割を果たす車両そのものが、所定平面から不正に出庫されるのを抑制することができる。
【0024】
また、(8)の態様によれば、車両同士の間隔が、所定平面に駐車されており、且つ所定平面の中央から偏した位置に駐車されていない他車両の車幅未満となるように、複数の車両を縦列に駐車させるため、他車両が不正に所定平面上から出庫されるのを抑制することができる。
【0025】
また、(9)の態様によれば、所定平面の中央から偏した位置に縦列に駐車する車両をユーザが任意に選択できるため、所定平面の中央から偏した位置に駐車された車両に展示効果を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る車両管理システムの構成図である。
図2】第1実施形態に係る車両搬送装置の一例を示す模式図である。
図3】車両の搬送時における第1搬送ロボットおよび第2搬送ロボットの動作の一例を示す図である。
図4】車両の搬送時における第1搬送ロボットおよび第2搬送ロボットの動作の一例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る第1搬送ロボットの構造の一例を示す図である。
図6】第1実施形態に係る第1搬送ロボットの構造の一例を示す図である。
図7】第1実施形態に係る第1搬送ロボットの機能構成の一例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る車両管理サーバの機能構成の一例を示す図である。
図9】第1実施形態に係る車両管理システムによる入庫処理の一例を示すシーケンス図である。
図10】車両を駐車場に駐車させる様子を模式的に表した図である。
図11】車両を駐車場に駐車させる様子を模式的に表した図である。
図12】所定位置に車両を縦列駐車させる場面の一例を示す図である。
図13】所定位置に車両を縦列駐車させる場面の一例を示す図である。
図14】所定位置に車両を縦列駐車させる場面の一例を示す図である。
図15】第1実施形態に係る車両管理システムによる出庫処理の一例を示すシーケンス図である。
図16】第1実施形態に係る車両管理サーバの一連の処理の流れを表すフローチャートである。
図17】駐車場に駐車された車両の一例を示す図である。
図18】車両の組み合わせの一例を示す図である。
図19】縦列駐車された複数の車両の中から車両が抜け出す場面の一例を示す図である。
図20】先頭および最後尾の車両の間に配置する車両の間隔が所定距離以下となる駐車方法を説明するための図である。
図21】車両の間隔が他車両の車幅未満となる駐車方法を説明するための図である。
図22】第2実施形態に係る車両の移動方法を説明するための図である。
図23】第2実施形態に係る車両の移動方法を説明するための図である。
図24】第2実施形態に係る車両の移動方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明の車両管理システム、車両管理方法、及びプログラムの実施形態について説明する。
【0028】
<第1実施形態>
[全体構成]
図1は、第1実施形態に係る車両管理システムSの構成図である。車両管理システムSは、所定平面上において、車両搬送装置1を用いて、搬送対象である車両Mを駐車可能な区画(以下、駐車スペースと称する)内に搬送し、車両Mをその駐車スペースに駐車させることで、所定平面への入庫を行う。このような処理を入庫処理と称して説明する。所定平面とは、完全に凹凸の無い平面である必要はなく、車両搬送装置1が自走可能な程度の凹凸があってよい。所定平面は、例えば、駐車場PKや、展示場などを含む。以下、一例として、所定平面が駐車場PKであるものとして説明する。
【0029】
また、車両管理システムSは、駐車場PK(所定平面の一例)において、車両搬送装置1を用いて、駐車スペースに駐車した車両Mを、駐車場PKの出口に向けて搬送することで、駐車場PKからの出庫を行う。このような処理を出庫処理と称して説明する。このようにして、車両管理システムSは、駐車場PKにおいて、車両Mの駐車を管理する。なお、車両Mは特定の車両に制限されるものではなく、車両管理システムSは任意の車両を搬送対象とすることができる。
【0030】
第1実施形態に係る車両管理システムSは、例えば、車両搬送装置1と、車両管理サーバ200とを備える。車両管理サーバ200は、駐車スペースへの車両の入庫と、駐車スペースからの車両の出庫を管理する。車両管理サーバ200は、駐車を希望するユーザH(例えば、車両Mの乗員)からの端末装置Dを介した要求に基づいて、車両搬送装置1に車両Mの入庫処理および出庫処理を行わせる。車両管理サーバ200は、「制御装置」の一例である。端末装置Dと、車両搬送装置1と、車両管理サーバ200とは、ネットワークNWを介して互いに通信可能である。ネットワークNWは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、公衆回線、プロバイダ装置、専用回線、無線基地局などを含む。
【0031】
[車両搬送装置の概要]
図2は、第1実施形態に係る車両搬送装置1の一例を示す模式図である。車両搬送装置1は、搬送対象である車両Mを乗せながら任意の方向に移動することで、車両Mを所望の目的位置に搬送する。車両搬送装置1は、車両Mを、例えば、車両Mの車体の前方向、後方向、左方向、右方向(幅方向)に搬送可能である。また、車両搬送装置1は、車両Mの位置を移動させることなく、車両Mの車体の向きを変更させる(回転させる)ことができる。
【0032】
車両搬送装置1は、例えば、搬送対象の車両Mの車輪数に応じた数の自律走行(自走)することが可能な搬送ロボット10を一つのセットとして備えてよい。具体的には、搬送対象の車両Mが四輪車両である場合、2つの搬送ロボット10を一つのセットとし、搬送対象の車両Mが六輪車両である場合、3つの搬送ロボット10を一つのセットとし、搬送対象の車両Mが八輪車両である場合、4つの搬送ロボット10を一つのセットとしてよい。以下、一例として、搬送対象の車両Mが四輪車両であるものとし、その一セットの搬送ロボット10のうち、一方の搬送ロボット10を「第1搬送ロボット10A」と称し、他方の搬送ロボット10を「第2搬送ロボット10B」と称して説明する。
【0033】
第1搬送ロボット10Aは、搬送時、車両Mの下に入り、車両Mの前輪を持ち上げて自律走行する。第2搬送ロボット10Bは、車両Mの下に入り、車両Mの後輪を持ち上げて自律走行する。第1搬送ロボット10Aと第2搬送ロボット10Bの構造は同じであってよい。第1搬送ロボット10Aおよび第2搬送ロボット10Bの一方がマスター機(主系の搬送ロボット)であり、他方がスレーブ機(従系の搬送ロボット)であってよい。
【0034】
図3および図4は、車両Mの搬送時における第1搬送ロボット10Aおよび第2搬送ロボット10Bの動作の一例を示す図である。図3に示すように、車両Mの搬送時、第1搬送ロボット10Aは、車両Mの前方から、車両Mの下に入り込む。また、車両Mの搬送時、第2搬送ロボット10Bは、車両Mの後方から、車両Mの下に入り込む。
【0035】
図4に示すように、車両Mの下に入り込んだ第1搬送ロボット10Aは、後述する右当接部11Rおよび左当接部11Lが前輪の前部と接触する位置まで移動して停止する。次に、第1搬送ロボット10Aは、後述する収納部に収納されていた右リフトアーム12Rおよび左リフトアーム12Lを前輪の後部と接触する位置まで移動させる。そして、第1搬送ロボット10Aは、右当接部11Rに向かって右リフトアーム12Rをさらに移動させることにより、右当接部11Rおよび右リフトアーム12Rで右前輪を持ち上げ、左当接部11Lに向かって左リフトアーム12Lをさらに移動させることにより、左当接部11Lおよび左リフトアーム12Lで左前輪を持ち上げる。
【0036】
図4に示すように、車両Mの下に入り込んだ第2搬送ロボット10Bは、後述する右当接部13Rおよび左当接部13Lが後輪の後部と接触する位置まで移動して停止する。次に、第2搬送ロボット10Bは、後述する収納部に収納されていた右リフトアーム14Rおよび左リフトアーム14Lを後輪の前部と接触する位置まで移動させる。そして、第2搬送ロボット10Bは、右当接部13Rに向かって右リフトアーム14Rをさらに移動させることにより、右当接部13Rおよび右リフトアーム14Rで右後輪を持ち上げ、左当接部13Lに向かって左リフトアーム14Lをさらに移動させることにより、左当接部13Lおよび左リフトアーム14Lで左後輪を持ち上げる。以後、第1搬送ロボット10Aおよび第2搬送ロボット10Bが協働して駆動機構により自律走行(自走)することで、車両Mを移動させることができる。なお、車両搬送装置1は、車両Mの車輪を持ち上げる代わりに、車両Mの車体の一部(例えばフロントクロスメンバーやリアクロスメンバー等)を持ち上げるようにしてもよい。
【0037】
[搬送ロボットの構造]
次に、搬送ロボット10(第1搬送ロボット10Aおよび第2搬送ロボット10B)のb)の構造を説明する。第1搬送ロボット10Aと第2搬送ロボット10Bの構造は同じであるため、以下において、第1搬送ロボット10Aについて説明し、第2搬送ロボット10Bについての説明は適宜省略する。
【0038】
図5および図6は、第1実施形態に係る第1搬送ロボット10Aの構造の一例を示す図である。図5では、本体15の上部を覆う上部カバーが外された第1搬送ロボット10Aを示している。なお、本明細書では、説明の便宜のために、第1搬送ロボット10Aを基準とする各方向を次のように定義する。右リフトアーム12Rおよび左リフトアーム12Lに対して右当接部11Rおよび左当接部11Lが配置される方向をY方向とする。また、第1搬送ロボット10Aの幅方向の中心位置(以下、中心線Cという。)に対して後述する右荷役機構20Rが配置される方向をX方向とする。また、X方向およびY方向により形成される面に直交する、第1搬送ロボット10Aの高さ方向をZ方向とする。
【0039】
第1搬送ロボット10Aは、例えば、本体15と、本体15の内側に配置される4つの駆動機構16と、荷役機構20とを備える。荷役機構20は、例えば、右荷役機構20Rと、左荷役機構20Lとを備える。右荷役機構20Rは、中心線Cを基準として、右側(+X方向)に配置される。左荷役機構20Lは、中心線Cを基準として、左側(-X方向)に配置される。4つの駆動機構16は、右荷役機構20Rと左荷役機構20Lとの間に配置される。本体15は、第1搬送ロボット10Aの各部品を支持するフレームである。
【0040】
駆動機構16の各々は、例えば、走行モータ17と、駆動側減速機18と、車輪19とを備える。4つの駆動機構16は、中心線Cを境にして左右(-X方向,+X方向)にそれぞれ2組に分けられて配置される。左側の2組の駆動機構16と右側の2組の駆動機構16は、中心線Cを軸として線対称となるように配置される。前側(+Y方向)の2組の駆動機構16と、後側(-Y方向)の2組の駆動機構16とは、第1搬送ロボット10Aの幅方向と平行する平行線Dを軸として線対称となるように配置される。
【0041】
走行モータ17は、例えば、電動モータである。走行モータ17の出力軸は、駆動側減速機18の入力軸に接続される。駆動側減速機18は、入力軸と出力軸とが同一線上にあり、例えば、遊星歯車減速機を有する。駆動側減速機18の出力軸は、車輪19に接続される。
【0042】
車輪19は、例えば、メカナムホイールである。各駆動機構16に設けられるメカナムホイールは、互いに協調して駆動することにより本体15の全方向移動を行うことができる。なお、駆動機構16は、全方向への移動を可能とする他の車輪を有していてもよい。例えば、駆動機構16は、オムニホイールや転舵機能を備えた車輪に置換されてもよい。
【0043】
右荷役機構20Rは、例えば、右当接部11Rと、右リフトアーム12Rと、右回転力伝達機構21Rとを備える。左荷役機構20Lは、例えば、左当接部11Lと、左リフトアーム12Lと、左回転力伝達機構21Lとを備える。右荷役機構20Rと左荷役機構20Lとは、中心線Cを軸として線対称となるように配置される。右荷役機構20Rと左荷役機構20Lは構造が同じであるため、以下では右荷役機構20Rの構造を説明し、左荷役機構20Lについての説明は適宜省略する。
【0044】
右回転力伝達機構21Rは、右リフトアーム12Rを、右収納位置P1と右展開位置P2との間で移動させるための駆動装置を備える。右回転力伝達機構21Rは、例えば、Z方向の軸A1を支点として、右リフトアーム12Rを、右収納位置P1と右展開位置P2との間でX-Y平面に沿って回転移動させる。右回転力伝達機構21Rは、例えば、モータ、ブレーキ等を備える。
【0045】
右リフトアーム12Rは、軸部材と、軸部材と同心であり軸部材を中心にして回転自在である円筒部材と、を備える回転棒である。右リフトアーム12Rは、右回転力伝達機構21Rの制御により、先端22Rを本体15の幅方向中央側(-X方向)に向ける右収納位置P1と先端22Rを本体15の幅方向外側(+X方向)に向ける右展開位置P2との間で回転移動する。
【0046】
右収納位置P1および右展開位置P2は、右リフトアーム12Rの軸部材が幅方向と平行する位置である。言い換えると、右収納位置P1は、右リフトアーム12Rを右展開位置P2からX-Y平面に沿って180度回転させた後の右リフトアーム12Rの位置である。逆に、右展開位置P2は、右リフトアーム12Rを右収納位置P1からX-Y平面に沿って180度回転させた後の右リフトアーム12Rの位置である。
【0047】
右当接部11Rは、軸部材と、軸部材と同心であり軸部材を中心にして回転自在である円筒部材と、を備える回転棒である。右当接部11Rの軸部材の両端は本体15に固定される。
【0048】
[搬送ロボットの機能構成]
次に、搬送ロボット10の機能構成を説明する。図7は、第1実施形態に係る第1搬送ロボット10Aの機能構成の一例を示す図である。第1搬送ロボット10Aは、例えば、駆動機構16と、荷役機構20と、センサ30と、通信装置40と、搬送制御装置100とを備える。
【0049】
センサ30は、例えば、カメラ32と、測距センサ34とを備える。カメラ32は、第1搬送ロボット10Aの周辺を撮像する。測距センサ34は、例えば、PSD(Position Sensitive Detector)センサ、レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、LRF(Laser Range Finder)、TOF(Time of Flight)センサ等である。測距センサ34は、第1搬送ロボット10Aの周辺に存在する物体との距離を検出する。測距センサ34は、例えば、搬送対象の車両Mとの距離を検出する。カメラ32および測距センサ34は、第1搬送ロボット10Aの全方位を検出対象とするために、それぞれ複数設けられる。4組のカメラ32および測距センサ34が、例えば、上部カバーの右前部、左前部、右後部、左後部に取り付けられる。
【0050】
通信装置40は、例えば、外部の通信機器と無線通信を行うための装置とアンテナとを備える。外部の通信機器というのは、例えば、車両管理サーバ200であり、対をなす他方の搬送ロボット10(第2搬送ロボット10B)の通信装置である。通信装置40は、近距離無線通信を行うための通信モジュールと公衆回線を介して無線通信を行う通信モジュールとを備える。
【0051】
搬送制御装置100は、例えば、通信制御部110と、走行制御部120と、アーム制御部130と、記憶部140とを備える。通信制御部110と、走行制御部120と、アーム制御部130との各々は、例えば、CPU(Central Processing Unit)(コンピュータ)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め搬送制御装置100のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで搬送制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0052】
通信制御部110は、通信装置40を介して、車両管理サーバ200により送信された各種指示を取得する。車両管理サーバ200により送信された指示は、例えば、駐車スペースに対する車両の入庫指示、駐車スペースからの車両の出庫指示、駐車スペース内に駐車中の車両の駐車位置の調整指示等を含む。
【0053】
走行制御部120は、通信制御部110により取得された指示に基づいて、車両搬送装置1を指示された位置に移動させるように、駆動機構16を制御する。例えば、走行制御部120は、通信制御部110により入庫指示が取得された場合、搬送対象である車両Mの位置まで車両搬送装置1を移動させるように、駆動機構16を制御する。走行制御部120の詳細については後述する。
【0054】
アーム制御部130は、通信制御部110により取得された指示に基づいて、搬送対象である車両Mを持ち上げるように、または持ち上げられた状態の車両を降ろすように、荷役機構20を制御する。例えば、アーム制御部130は、通信制御部110により入庫指示が取得された場合、走行制御部120の制御により車両Mの位置まで車両搬送装置1が移動した後、該車両を持ち上げように、荷役機構20を制御する。アーム制御部130の詳細については後述する。
【0055】
記憶部140は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現される。記憶部140には、例えば、地図情報142等が格納される。地図情報142には、第1搬送ロボット10Aが自走可能な駐車場PKの地図(構造的な配置図)が含まれる。
【0056】
[車両管理サーバの機能構成]
次に、車両管理サーバ200の機能構成を説明する。図8は、第1実施形態に係る車両管理サーバ200の機能構成の一例を示す図である。車両管理サーバ200は、例えば、通信装置210と、制御装置220と、記憶部230とを備える。通信装置210は、外部の通信機器と無線通信を行うための装置とアンテナとを備える。外部の通信機器は、例えば、車両搬送装置1や端末装置D等である。
【0057】
制御装置220は、例えば、通信制御部221と、駐車位置制御部222と、車両管理部223と、駐車位置調整部224とを備える。通信制御部221は、通信装置210を介して、外部の通信機器から各種情報を取得したり、外部の通信機器に各種情報を提供したりする。
【0058】
駐車位置制御部222は、端末装置Dにより送信された入庫要求に基づいて、駐車場PKにおいて、車両Mを駐車する駐車スペースの位置、つまり駐車位置を決定する。この入庫要求には、車両Mを特定するための情報(例えば、車両管理サーバ200により予め発行された車両ID)、車両Mのナンバープレート情報、車両Mの車種情報等が含まれている。駐車位置制御部222は、記憶部230に記憶された地図情報231および駐車情報233を参照して、駐車スペース内において、車両Mを駐車可能な空きスペースを探索する。駐車位置制御部222は、空きスペースが見つかった場合には、この空きスペースを駐車位置として決定する。そして、駐車位置制御部222は、車両Mを駐車スペースに搬送するように車両搬送装置1を制御する。
【0059】
車両管理部223は、車両搬送装置1および端末装置Dにより送信される情報に基づいて、例えば、車両ごと(車両IDごと)に、車両に関する情報(車両ID,ナンバープレート,車種)や、駐車位置、駐車開始日時、駐車終了日時といった種々の情報を対応付け、その対応付けた情報を駐車情報233として記憶部230に記憶させる。
【0060】
駐車位置調整部224は、駐車中の車両の駐車位置を調整する。例えば、駐車位置調整部224は、車両の入庫および出庫が繰り返されることにより駐車中の車両間に不要な空きスペースが発生した場合、駐車中の車両の間隔を詰めるように、車両搬送装置1を制御する。これにより、有限の駐車スペースをより有効に活用することが可能となる。
【0061】
制御装置220の各機能部は、例えば、CPU(コンピュータ)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め車両管理サーバ200のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで車両管理サーバ200のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0062】
記憶部230は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、またはRAM等により実現される。記憶部230には、例えば、地図情報231や駐車情報233等が格納される。
【0063】
地図情報231は、搬送ロボット10の記憶部140に記憶される地図情報142と同じであり、搬送ロボット10が自走可能な駐車場PKの地図情報が含まれる。
【0064】
駐車情報233は、例えば、駐車場PKに形成された駐車スペースごとに、その駐車スペースが空き状態であるのか、それとも既に車両が駐車された状態であるのかを示す情報が対応付けられた情報である。
【0065】
[入庫処理]
次に、車両管理システムSによる入庫処理の一連の流れについて説明する。図9は、第1実施形態に係る車両管理システムSによる入庫処理の一例を示すシーケンス図である。図10及び図11は、車両Mを駐車場PKに駐車させる様子を模式的に表した図である。
【0066】
図10に示すように、まず、駐車を希望するユーザHは、道路RDから、その道路RDに面した駐車場PKに車両Mを進入させると、任意の位置に車両Mを停止させる。そして、ユーザHは、端末装置Dを操作して、車両管理サーバ200に対して、入庫処理を行うように要求する(ステップS1)。なお、ユーザHは、駐車場PKに車両Mを停止させるよりも前のタイミング(例えば、自宅で車両Mに乗り込んだタイミング等)で入庫処理を要求してもよい。すなわち、ユーザHは、入庫処理を事前に予約してもよい。
【0067】
例えば、ユーザHは、端末装置Dを操作して、ブラウザによって参照されるウェブサイトや、アプリケーションプログラムによって参照されるアプリページにアクセスし、所定の情報を入力することにより、入庫処理を要求する。所定の情報には、車両Mを特定するための情報(例えば、車両ID)、車両Mのナンバープレート情報、車両Mの車種情報等が含まれる。このユーザHの操作に基づいて、端末装置Dは、入庫処理の要求を車両管理サーバ200に送信する。入庫要求には、端末装置Dの位置情報や識別情報などが含まれていてもよい。
【0068】
次に、車両管理サーバ200の駐車位置制御部222は、通信装置210が端末装置Dから入庫処理の要求を受信すると、記憶部230に記憶された地図情報231および駐車情報233を参照して、駐車場PK上において、車両Mが駐車することが可能な空きの駐車スペースPSを探索する(ステップS3)。
【0069】
図10の例では、既に駐車された車両M1と車両M2との間に駐車スペースPSが空いている。そのため、駐車位置制御部222は、車両M1と車両M2との間の駐車スペースPSを、入庫対象である車両Mの駐車位置に決定する。
【0070】
なお、駐車スペースPSは、図示のように、駐車対象の車両の大きさ(全長、幅)や、駐車スペースの空き状態に応じて、領域の大きさが動的に変化するものであってもよいし、区画線によって予め大きさが決められた領域であってもよい。
【0071】
次に、駐車位置制御部222は、入庫対象の車両Mの駐車位置(駐車スペースPS)を決定すると、入庫指示を、駐車場PKの車両搬送装置1に送信する(ステップS5)。この入庫指示には、入庫対象である車両Mが駐車可能な空きの駐車スペースPSの位置や、車両Mのナンバープレート情報、車両Mの車種情報といった種々の情報が含まれている。端末装置Dから送信された入庫要求に端末装置Dの位置情報が含まれている場合には、車両搬送装置1に送信される入庫指示には、更に、端末装置Dの位置情報が、現在の車両Mの位置情報として含まれていてもよい。
【0072】
次に、車両搬送装置1の搬送制御装置100は、通信装置40が車両管理サーバ200から入庫指示を受信すると、駆動機構16を制御して、車両Mの停止位置まで移動する(ステップS7)。
【0073】
例えば、車両搬送装置1が備える2つの第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bのうち、他の搬送ロボット10よりも状態が良好な方の搬送ロボット10をマスター機とし、他方の搬送ロボット10をスレーブ機とする。
【0074】
搬送ロボット10の「状態」には、例えば、搬送ロボット10が備える各構成要素に電力を供給可能な二次電池のSOC(State of Charge)や、搬送ロボット10の走行距離、搬送ロボット10が車両Mを持ち上げた回数、搬送ロボット10が搬送した車両Mの重量などが含まれる。そのため、良好な状態とは、二次電池のSOCが劣化の進行が遅いSOCであること、走行距離が短いこと、車両Mの持ち上げ回数が少ないこと、持ち上げた車両Mの重量が小さいこと、などであってよい。すなわち、良好な状態な搬送ロボット10は、物理的劣化が少なく、高い品質や性能を維持したものである。
【0075】
ここでは、一例として、第1搬送ロボット10Aをマスター機とし、第2搬送ロボット10Bをスレーブ機とする。マスター機である第1搬送ロボット10Aの走行制御部120は、入庫指示に基づいて、自身の駆動機構16に含まれる走行モータ17や駆動側減速機18の操作量(例えばモータのトルク量等)を決定するとともに、スレーブ機である第2搬送ロボット10Bの駆動機構16に含まれる走行モータ17や駆動側減速機18の操作量を決定する。
【0076】
そして、マスター機側の走行制御部120は、決定した操作量で駆動機構16を制御する。また、マスター機の走行制御部120は、Wi-FiやBluetooth(登録商標、以下省略)等の近距離通信を用いて、スレーブ機側の駆動機構16の操作量を示す情報を、スレーブ機である第2搬送ロボット10Bに送信する。これを受けて、スレーブ機側の走行制御部120は、マスター機によって決定された操作量で駆動機構16を制御する。これによって、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、互いに協働しながら車両Mまで移動する。なお、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、カメラ32の画像や測距センサ34の検出結果に基づいて、適宜駆動機構16の操作量を補正してよい。このように、マスター機がスレーブ機を遠隔制御し、これら2つの搬送ロボット10が互いに協働しながら移動することで、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bの双方のプロセッサが移動に伴う演算を行う場合よりも、演算量を少なくしたり、演算時間を短くしたりすることができる。
【0077】
入庫指示を受信した車両搬送装置1の第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、車両Mが現在停止している位置まで移動すると、その車両Mの下に入り込む。そして、各搬送ロボット10のアーム制御部130は、荷役機構20を制御して、車両Mを持ち上げる(ステップS9)。
【0078】
次に、図11に示すように、各搬送ロボット10の走行制御部120は、駆動機構16を制御して、荷役機構20によって持ち上げられた車両Mを、入庫指示によって指示された空き駐車スペースPSまで搬送する(ステップS11)。次に、アーム制御部130は、車両Mを空き駐車スペースPSに降ろすように、荷役機構20を制御する(ステップS12)。
【0079】
次に、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、駐車場PKに駐車された複数の車両のうち、一部の車両を、駐車場PK内の所定位置に縦列に駐車する(ステップS13)。
【0080】
所定位置とは、駐車場PKの中央から偏した位置である。例えば、所定位置は、駐車場PKの中央から、駐車場PKと、その駐車場PKに面した道路RDとの境界(以下、第1境界と称する)側に寄った位置である。具体的には、所定位置は、第1境界から、駐車場PKの中央側に数十[cm]から数[m]程度の距離をとった近傍の範囲内であってよい。道路RDは、「他領域」の一例である。
【0081】
所定位置に縦列駐車させる一部の車両の中には、入庫対象の車両Mが含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。例えば、ユーザHが、端末装置Dを用いて入庫指示する際に、入庫対象の車両Mを所定位置に縦列駐車させることを指定した場合、入庫対象の車両Mは、所定位置に駐車される。一方、ユーザHが、端末装置Dを用いて入庫指示する際に、入庫対象の車両Mを所定位置に縦列駐車させることを指定しなかった場合、入庫対象の車両Mは、所定位置に駐車されなくなる。なお、所定位置に縦列駐車させる車両は、ユーザHが指定することに加えて、或いは代えて、駐車場PKの管理者等が指定してもよい。
【0082】
図12から図14は、所定位置に車両を縦列駐車させる場面の一例を示す図である。図中LBDは、駐車場PKと道路RDとの境界線を表している。図12に示すように、例えば、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、境界線LBDの延在方向V2に、車両の進行方向V1が沿うように(平行となるように)、第1境界近傍の位置である所定位置に、複数の車両を縦列に駐車する。これによって、道路RDから車両が駐車場PKに進入することを防いだり、駐車場PKから車両Mが道路RDに出てしまうことを防いだりすることができる。
【0083】
また、図13に示すように、駐車場PKに対して道路RDが斜めに面している場合、境界線LBDも同様に、駐車場PKに対して斜めに存在することになる。この場合も、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、境界線LBDの延在方向V2に、車両の進行方向V1が沿うように、第1境界近傍の位置である所定位置に、複数の車両を縦列に駐車する。
【0084】
また、図14に示すように、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、所定位置に、複数の車両を縦列に駐車する際に、それぞれの車両の位置を幅方向にずらしてもよい。
【0085】
図9のシーケンスの説明に戻る。マスター機である第1搬送ロボット10Aの通信制御部110は、空いた駐車スペースPSに車両Mを駐車させ、更に、所定位置に車両を縦列駐車させた場合、車両Mの入庫処理が完了したことを示す完了通知を、通信装置210を介して車両管理サーバ200に送信する(ステップS15)。
【0086】
次に、車両管理サーバ200の車両管理部223は、新たに車両Mが駐車された駐車スペースPSに対して、既に車両が駐車された状態であることを示す情報を対応付けて、駐車情報233の更新する(ステップS17)。そして、車両管理部223は、入庫処理が完了したことを示す完了画面を表示させるための情報を端末装置Dに送信する(ステップS19)。これを受けて、端末装置Dは、完了画面をディスプレイに表示する(ステップS21)。これによって、入庫処理が終了する。なお、車両管理部223は、端末装置Dに完了画面を表示させる際、併せて入庫時間(駐車時間のカウントを開始する時間)を端末装置Dに表示させてもよい。
【0087】
[出庫処理]
次に、車両管理システムSによる出庫処理の流れについて説明する。図15は、第1実施形態に係る車両管理システムSによる出庫処理の一例を示すシーケンス図である。
【0088】
出庫を希望するユーザHは、端末装置Dを操作して、車両管理サーバ200に対して、出庫処理を行うように要求する(ステップS101)。
【0089】
例えば、ユーザHは、入庫処理の要求時と同様に、端末装置Dを操作して、ブラウザによって参照されるウェブサイトや、アプリケーションプログラムによって参照されるアプリページにアクセスし、車両IDやナンバープレート情報などを所定の情報として入力することにより、出庫処理を要求する。このユーザHの操作に基づいて、端末装置Dは、出庫処理の要求を車両管理サーバ200に送信する。
【0090】
次に、車両管理サーバ200の駐車位置制御部222は、通信装置210が端末装置Dから出庫処理の要求を受信すると、出庫指示を、出庫対象の車両Mが現在駐車されている駐車場PKの車両搬送装置1に送信する(ステップS103)。この出庫指示には、出庫処理の対象である車両Mが駐車している駐車スペースPSの位置や、車両Mのナンバープレート情報、車両Mの車種情報といった種々の情報が含まれている。
【0091】
次に、車両搬送装置1の第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、通信装置40が車両管理サーバ200から出庫指示を受信すると、所定位置に縦列駐車された複数の車両まで移動し、それら複数の車両のうち少なくとも一台の車両またはそれ以上の台数の車両の下に入り込み、車両を持ち上げる。そして、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、持ち上げた車両を所定位置から別の位置に移動させる(ステップS105)。別の位置とは、例えば、駐車場PK内の空きの駐車スペースPSであってもよいし、通路などであってもよい。
【0092】
第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、第1境界近傍の所定位置から車両を移動させると、出庫対象の車両Mの位置まで移動し、その車両Mの下に入り込む。そして、各搬送ロボット10のアーム制御部130は、荷役機構20を制御して、車両Mを持ち上げる(ステップS109)。
【0093】
次に、各搬送ロボット10の走行制御部120は、駆動機構16を制御して、荷役機構20によって持ち上げられた車両Mを、ユーザHが手動運転により車両Mを容易に発進させることが可能な位置(以下、運転開始位置と称する)まで搬送する(ステップS111)。運転開始位置は、例えば、駐車場PKの出入口付近であってよい。具体的には、運転開始位置は、所定位置に縦列駐車されていた一台の車両だけが移動した場合、その一台の車両が移動したことで形成されたスペースであってよい。また、運転開始位置は、所定位置に縦列駐車されていた全ての車両が移動した場合、境界線LBDの近傍であってよい。
【0094】
次に、アーム制御部130は、車両Mを運転開始位置に降ろすように、荷役機構20を制御する(ステップS112)。
【0095】
マスター機である第1搬送ロボット10Aの通信制御部110は、出庫対象の車両Mを運転開始位置まで搬送し、その運転開始位置に車両Mを降ろした場合、車両Mの出庫処理が完了したことを示す完了通知を、通信装置210を介して車両管理サーバ200に送信する(ステップS113)。
【0096】
次に、車両管理サーバ200の車両管理部223は、車両Mが移動して空いた駐車スペースPSに対して、空き状態であることを示す情報を対応付けて、駐車情報233の更新する(ステップS115)。そして、車両管理部223は、出庫処理が完了したことを示す完了画面を表示させるための情報を端末装置Dに送信する(ステップS117)。これを受けて、端末装置Dは、完了画面をディスプレイに表示する(ステップS119)。これによって、出庫処理が終了する。なお、車両管理部223は、端末装置Dに完了画面を表示させる際、併せて出庫時間(駐車時間のカウントを終了する時間)を端末装置Dに表示させてもよい。
【0097】
[車両管理サーバの処理フロー]
以下、車両管理サーバ200の一連の処理の流れをフローチャートに即して説明する。図16は、第1実施形態に係る車両管理サーバ200の一連の処理の流れを表すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、通信装置210が入庫要求を受信した場合に、所定の周期で繰り返し行われてよい。
【0098】
まず、駐車位置制御部222は、駐車場PKに駐車された複数の車両の中から、所定位置に縦列駐車する対象の車両(以下、縦列駐車車両と称する)を選択する(ステップS200)。
【0099】
次に、駐車位置制御部222は、縦列駐車車両の候補である車両の組み合わせが複数通り存在するか否かを判定する(ステップS202)。
【0100】
図17は、駐車場PKに駐車された車両の一例を示す図である。図示の例では、駐車場PKに、4台の普通自動車Mと、1台の中型自動車Mと、1台の大型自動車Mとが駐車されている。この場合、駐車位置制御部222は、これら6台の車両から、縦列駐車車両とする複数の車両を選択するため、組み合わせが複数通り存在することになる。
【0101】
駐車位置制御部222は、車両の組み合わせが複数通り存在すると判定した場合、それら複数の組み合わせの中から、車両同士の間隔Dが最も短くなる組み合わせを選択する(ステップS204)。
【0102】
図18は、車両の組み合わせの一例を示す図である。1つ目の組み合わせでは、4台の普通自動車Mを縦列駐車車両として組み合わせている。1つ目の組み合わせでは、列の先頭の車両を第2境界近傍に配置し、列の最後尾の車両を第3境界近傍に配置し、それら先頭および最後尾の車両の間に配置する車両を等間隔としたときの車両同士の間隔はD1である。
【0103】
第2境界および第3境界は、道路RDに面していない駐車場PKの境界のうち、第1境界と接した境界である。例えば、駐車場PKが四角形状の領域である場合、第2境界と第3境界は互いに対面した境界である。
【0104】
2つ目の組み合わせでは、3台の普通自動車Mと1台の中型自動車Mとを縦列駐車車両として組み合わせている。2つ目の組み合わせでは、列の先頭の車両を第2境界近傍に配置し、列の最後尾の車両を第3境界近傍に配置し、それら先頭および最後尾の車両の間に配置する車両を等間隔としたときの車両同士はD1よりも小さいD2である。
【0105】
3つ目の組み合わせでは、3台の普通自動車Mと1台の大型自動車Mとを縦列駐車車両として組み合わせている。3つ目の組み合わせでは、列の先頭の車両を第2境界近傍に配置し、列の最後尾の車両を第3境界近傍に配置し、それら先頭および最後尾の車両の間に配置する車両を等間隔としたときの車両同士はD2よりも小さいD3である。
【0106】
4つ目の組み合わせでは、2台の普通自動車Mと1台の中型自動車Mと1台の大型自動車Mとを縦列駐車車両として組み合わせている。4つ目の組み合わせでは、車両同士の間隔はなく、一部車両が互いに干渉している。
【0107】
5つ目の組み合わせでは、1台の普通自動車Mと1台の中型自動車Mと1台の大型自動車Mとを縦列駐車車両として組み合わせている。5つ目の組み合わせでは、列の先頭の車両を第2境界近傍に配置し、列の最後尾の車両を第3境界近傍に配置し、それら先頭および最後尾の車両の間に配置する車両を等間隔としたときの車両同士の間隔はD1よりも大きいD4である。
【0108】
このような組み合わせが存在した場合、駐車位置制御部222は、物理的干渉がなく、車両同士の間隔Dが最も短い3つ目の組み合わせを選択する。なお、駐車位置制御部222は、S202の処理で複数通りの組み合わせが存在しないと判定した場合、その一通りの組み合わせを選択する。なお、縦列駐車車両の組み合わせとして所定距離未満で並べられる候補が複数あった場合、駐車位置制御部222は、全長が最も大きい車両を含む組み合わせを優先的に選択してよい。これによって、車両の搬送回数を削減することができる。
【0109】
図16のフローチャートの説明に戻る。次に、駐車位置制御部222は、選択した組み合わせの車両同士の間隔Dが所定距離Dth以下であるか否かを判定する(ステップS206)。所定距離Dthは、所定位置に縦列駐車された車両を前後に移動しながら車輪を切り返しても、縦列駐車された複数の車両の中から抜け出すことができない距離である。
【0110】
図19は、縦列駐車された複数の車両の中から車両が抜け出す場面の一例を示す図である。例えば、時刻t0の場面のように、縦列駐車された複数の車両のうち、ある車両Mの前後に、所定距離Dthを超える間隔Dが空いていたとする。この場合、時刻t1の場面のように、車両Mに乗車したユーザが車両Mを後方に移動させ、ステアリングホイールを操作することで、車輪を切り返すことができる。そして、時刻t2の場面のように、ユーザが車両Mのアクセルペダルを踏みこんだ場合、車輪が操舵された方向に車両Mが進行する。これによって、時刻t3の場面のように、車両Mは、他車両に干渉することなく、列の中から脱出することができる。
【0111】
駐車位置制御部222は、選択した組み合わせの車両同士の間隔Dが所定距離Dth以下となると判定した場合、通信装置210を介して、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bに第1の駐車指示を送信する。すなわち、駐車位置制御部222は、選択した組み合わせの車両を縦列に駐車しても、その列の中から車両を抜き出せないと判定した場合、通信装置210を介して、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bに第1の駐車指示を送信する。
【0112】
第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、第1の駐車指示を受信すると、駐車位置制御部222によって選択された組み合わせの車両を、列の先頭の車両を第2境界近傍に配置し、列の最後尾の車両を第3境界近傍に配置し、それら先頭および最後尾の車両の間の車両を等間隔にして所定位置に縦列駐車させる(ステップS208)。
【0113】
一方、駐車位置制御部222は、選択した組み合わせの車両同士の間隔Dが所定距離Dthを超えると判定した場合、通信装置210を介して、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bに第2の駐車指示を送信する。すなわち、駐車位置制御部222は、選択した組み合わせの車両を縦列に駐車すると、その列の中から車両を抜き出せると判定した場合、通信装置210を介して、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bに第2の駐車指示を送信する。
【0114】
第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、第2の駐車指示を受信すると、駐車位置制御部222によって選択された組み合わせの車両を、列の先頭の車両を第2境界近傍に配置しない、または、列の最後尾の車両を第3境界近傍に配置しないで、それら先頭および最後尾の車両の間に配置する車両の間隔Dが所定距離Dth以下となるように、所定位置に縦列駐車させる(ステップS210)。
【0115】
第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、先頭または最後尾の車両を持ち上げる(ステップS212)。これによって本フローチャートの処理が終了する。
【0116】
図20は、先頭および最後尾の車両の間に配置する車両の間隔Dが所定距離Dth以下となる駐車方法を説明するための図である。図中M1は列の先頭の車両を表し、M4は列の最後尾の車両を表し、M2及びM3は、先頭の車両M1と最後尾の車両M4の間に配置された車両を表している。
【0117】
例えば、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、図示のように、最後尾の車両M4を第3境界近傍に配置し、最後尾の車両M4を基準として、そこから車両の間隔Dが所定距離Dth以下となるように車両M3、M2、M1と順に配置する。これによって、先頭の車両M1の前方には、境界線LBDの延在方向(車両の進行方向)に関する距離Lが所定距離Dthを超えるスペースが形成され得る。この場合、先頭の車両M1は、列の中から容易に脱出することができる。そのため、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、先頭の車両M1の車輪や車体の一部を持ち上げる。これによって、先頭の車両M1の車輪が接地面から離間した状態となり、ユーザが先頭の車両M1のアクセルペダルを踏みこんでも、車両M1が発進しなくなる。
【0118】
また、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、先頭の車両M1を第2境界近傍に配置し、先頭の車両M1を基準として、そこから車両の間隔Dが所定距離Dth以下となるように車両M2、M3、M4と順に配置してもよい。この場合、最後尾の車両M4の後方に、境界線LBDの延在方向(車両の進行方向)に関する距離Lが所定距離Dthを超えるスペースが形成され得るため、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、最後尾の車両M4の車輪や車体の一部を持ち上げる。
【0119】
なお、上述したフローチャートの処理では、駐車位置制御部222が、縦列駐車車両の候補である車両の組み合わせが複数通り存在する場合、それら複数の組み合わせの中から、車両同士の間隔Dが最も短くなる組み合わせを選択するものとして説明したがこれに限られない。例えば、駐車位置制御部222は、複数の組み合わせの中から、最も全長が大きい車両(図17の例では大型自動車M)を含む組み合わせを選択してもよい。これによって、出庫処理時に、所定位置に縦列駐車された複数の車両の中から、最も全長が大きい車両のみを移動させることで、他の車両を駐車場PKから出庫させることができる。
【0120】
また、上述したフローチャートの処理では、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bが、車両の間隔Dが所定距離Dth以下となるように、縦列駐車車両として選択された複数の車両を所定位置に縦列駐車させるものとして説明したがこれに限られない。例えば、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、車両の間隔Dが、他車両の車幅W未満となるように、縦列駐車車両として選択された複数の車両を所定位置に縦列駐車させてもよい。
【0121】
図21は、車両の間隔Dが他車両の車幅W未満となる駐車方法を説明するための図である。図中Mは、駐車場PKに駐車されており、且つ第1境界近傍の所定位置に駐車されていない他車両を表している。他車両Mは、上述したように、ユーザHが、端末装置Dを用いて入庫指示する際に、入庫対象の車両Mを所定位置に縦列駐車させることを指定しなかった車両であってよい。また、他車両Mは、例えば、高級車や機密性の高い車両のように、他の車両よりも厳重に盗難を防止したい車両であってもよい。
【0122】
例えば、他車両Mの車幅がWであった場合、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、D<Wとなるように、縦列駐車車両として選択された複数の車両を所定位置に縦列駐車させる。これによって、他車両Mは、所定位置に縦列駐車された車両の間を通過することができなくなり、他車両Mが不正に駐車場PKから出庫されるのを抑制することができる。
【0123】
以上説明した第1実施形態によれば、車両管理サーバ200が、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bに、駐車場PK内における、駐車場PKとそれ以外の領域との境界近傍の所定位置に複数の車両を並べて駐車させるため、駐車場PKの境界を区切るフェンスなどの設備を設けずとも、低コスト且つ簡素に駐車場PKの車両を管理することができる。
【0124】
また、上述した第1実施形態によれば、車両の間隔Dが、車両を前後に移動しながら車輪を切り返しても、縦列に駐車された複数の車両の中から抜け出すことができない所定距離Dth以下となるように、複数の車両を所定位置に縦列駐車するため、所定位置に縦列駐車されてフェンスの役割を果たす車両そのものが、駐車場PKから不正に出庫されるのを抑制することができる。
【0125】
また、上述した第1実施形態によれば、縦列駐車車両の候補である車両の組み合わせが複数通り存在する場合、それら複数の組み合わせの中から、車両同士の間隔Dが最も短くなる組み合わせを選択するため、駐車場PKとそれ以外の領域とを明確に区分けすることができる。つまり、所定位置に縦列駐車する車両のフェンスとしての機能を更に高めることができる。
【0126】
また、上述した第1実施形態によれば、所定位置に縦列に駐車させることが可能な複数の前記車両の中で最も全長が大きい車両を含む組み合わせを優先的に選択するため、駐車場PKから車両を出庫させる際、または駐車場PKに車両を入庫させる際に、最も全長が大きい車両のみを移動させるだけで、車両の出し入れを容易に行うことができる。
【0127】
また、上述した第1実施形態によれば、縦列駐車させた複数の車両の中で、先頭の車両の前方または最後尾の車両の後方に、境界線LBDの延在方向(車両の進行方向)に関する距離Lが所定距離Dthを超えるスペースが形成される場合、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bが、先頭の車両または最後尾の車両の車輪が接地面から離れるように、それら車両を持ち上げるため、所定位置に縦列駐車されてフェンスの役割を果たす車両そのものが、駐車場PKから不正に出庫されるのを抑制することができる。
【0128】
また、上述した第1実施形態によれば、車両同士の間隔Dが、駐車場PKに駐車されており、且つ第1境界近傍の所定位置に駐車されていない他車両の車幅未満となるように、複数の車両を縦列に駐車させるため、他車両が不正に駐車場PKから出庫されるのを抑制することができる。
【0129】
また、上述した第1実施形態によれば、所定位置に縦列に駐車する車両をユーザHが任意に選択できるため、所定位置に駐車して敢えて人の眼に触れさせるという展示効果を与えることができる。
【0130】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、カーディーラー等が管理する駐車場PK(展示場ともいう)において、複数の車両が並べられて展示されている場合に、それら複数の車両の中から、ユーザHが指定した対象車両を移動させ、所定位置に対象車両を駐車させる点で上述した第1実施形態と相違する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する点については説明を省略する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同じ部分については同一符号を付して説明する。
【0131】
図22から図24は、第2実施形態に係る車両の移動方法を説明するための図である。例えば、図22に示すように、ユーザHが端末装置Dを操作して、駐車場PKに展示された複数の車両の中から、車両M20を試乗車両として選択したとする。試乗車両は「対象車両」の一例である。
【0132】
この場合、図23に示すように、駐車位置制御部222は、車両M20をユーザHのもとに搬送するため、まずは、車両M20の前方に駐車された車両M10を所定位置に搬送するように、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bを制御する。これを受けて、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bは、車両M10の下に入り込み、その車両M10を持ち上げて、所定位置に搬送する。
【0133】
次に、駐車位置制御部222は、図24に示すように、第1搬送ロボット10A及び第2搬送ロボット10Bを制御して、試乗車両として選択された車両M20を、車両M10が移動したことで形成されたスペースを通過させて、ユーザHが乗車しやすい位置である運転開始位置に搬送する。これによって、ユーザHは、複数の車両が密集した駐車場PKから試乗車両を出庫させることができる。
【0134】
以上、本発明を実施するための形態について第1実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした第1実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0135】
1…車両搬送装置、16…駆動機構、20…荷役機構、30…センサ、32…カメラ、34…測距センサ、40…通信装置、100…搬送制御装置、110…通信制御部、120…走行制御部、130…アーム制御部、140…記憶部、200…車両管理サーバ、210…通信装置、221…通信制御部、222…駐車位置制御部、223…車両管理部、224…駐車位置調整部、230…記憶部、M…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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