(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ワーク保持装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20221221BHJP
【FI】
G01R31/26 Z
(21)【出願番号】P 2019180437
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桜井 秀昌
(72)【発明者】
【氏名】山崎 昇
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-043076(JP,A)
【文献】特開2007-059776(JP,A)
【文献】特開2001-004702(JP,A)
【文献】特許第2790694(JP,B2)
【文献】特開2001-189600(JP,A)
【文献】特開昭61-289692(JP,A)
【文献】国際公開第2016/189621(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26-31/28
G01R 31/00
H05K 3/30
H05K 13/00-13/08
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク載置面に向かう所定の方向へ移動可能なワーク保持ヘッドと、
前記所定の方向における前記ワーク保持ヘッドの位置を検知するための光センサーと、
記憶装置と、
制御装置と、
を備えたワーク保持装置であって、
前記光センサーは、前記ワーク保持ヘッドに光を照射する
発光部と、前記ワーク保持ヘッドに照射された前記光のうち前記ワーク保持ヘッドにより遮られずに通過した通過光又は前記ワーク保持ヘッドにより反射された反射光を受光する受光部と、を有し、
前記発光部と前記受光部は、前記発光部と前記受光部とを結ぶ前記光の光路の少なくとも一部が前記ワーク保持ヘッドにより遮られるように配置され、
前記ワーク保持ヘッドと前記光センサーは、前記所定の方向における互いの相対的な位置が変わるように構成され、
前記受光部は、前記ワーク保持ヘッド
と前記光センサーとの前記所定の方向における相対的な位置が変わることにより変化する前記通過光の量又は前記反射光の量に応じた電気信号を出力し、
前記記憶装置は、前記ワーク保持ヘッドが前記所定の方向における適正な位置にある
ことを示す基準値として、前記ワーク保持ヘッドが保持するワークの
高さに応じて予め定められた、複数の基準値を記憶し、
前記制御装置は、前記ワーク保持ヘッドが前記所定の方向において前記ワーク載置面に対して停止した状態で、前記
受光部から出力された前記電気信号の値と、前記記憶装置に記憶されている複数の前記基準値のうち
前記ワーク保持ヘッドに保持されている前記ワークに対応する前記基準値とを、比較
し、
当該比較された前記電気信号の値と前記基準値が互いに一致する場合に、前記ワーク保持ヘッドが前記所定の方向における適正な位置にある
と判定
する、
ことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
前記ワーク保持ヘッドは、前記所定の方向とは交差する方向へ折れ曲がる屈曲部を有し、前記
発光部は、前記屈曲部に前記光を照射する、ことを特徴とする請求項1に記載のワーク保持装置。
【請求項3】
前記ワーク保持ヘッドを前記所定の方向において位置決めする位置決め部を備え、前記ワーク保持ヘッドは、前記所定の方向において前記位置決め部に前記屈曲部が当接することにより、前記所定の方向において位置決めされる、ことを特徴とする請求項2に記載のワーク保持装置。
【請求項4】
前記ワーク保持ヘッドを前記所定の方向へ移動可能に支持すると共に前記所定の方向へ移動可能な支持部を備え、
前記光センサーは、前記支持部に固定され、前記ワーク保持ヘッドは、
前記ワーク保持ヘッドに保持されている前記ワークが前記ワーク載置面に接触した状態で、前記支持部が前記所定の方向へ移動するに連れて前記所定の方向とは反対方向へ前記支持部に対して相対的に移動可能である、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載のワーク保持装置。
【請求項5】
前記ワーク保持ヘッドは、
前記光路に面する表面に、前記発光部から出射された前記光のう
ち前記受光部に入射する
迷光を
遮る内壁面を備えた凹部を有する、ことを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載のワーク保持装置。
【請求項6】
前記ワーク保持ヘッドは、
前記光路に面する表面に、前記発光部から出射された前記光のう
ち前記受光部に入射する
迷光を
吸収する光吸収部を有する、ことを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載のワーク保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、小型の電子部品などからなるワークを上方から吸着ヘッドにより保持して搬送し、所定の位置に載置するように動作するワーク保持装置として、複数の吸着ヘッドを備え、これら複数の吸着ヘッドが上下方向へ移動する位置を光センサーにより検知するワーク保持装置が知られている。このような従来のワーク保持装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
図9は、従来のワーク保持装置を示す縦断面図である。特許文献1に開示されている従来のワーク保持装置は、ワークのピック&プレース機構として構成され、複数の吸着ヘッド部50と、発光部20と、受光部22と、複数のスリット24とを備えている。複数の吸着ヘッド部50のそれぞれは、互いに独立して上下方向へ移動し、ワークであるDUT(被試験デバイス)を上方から吸着して持ち上げて保持し、その状態のままDUTを横方向へ搬送して収容容器であるインサート10のポケット内に載置するように動作する。発光部20と受光部22は、一つの光センサーを構成し、横方向に整列された複数の吸着ヘッド部50を横方向両側から挟み込むように互いに対向して配置されている。発光部20と受光部22との間には、発光部20から出射されたビーム光線B1を通過させるスリット孔26を有する複数のスリット24が配置されている。複数のスリット24は、対応する吸着ヘッド部50の上部にそれぞれ固定されており、吸着ヘッド部50が上下方向へ移動することにより、スリット24が有するスリット孔26の位置も上下方向へ移動する。発光部20から出射されたビーム光線B1は、スリット孔26を通過してビーム光線B2となり、受光部22に入射する。受光部22は、ビーム光線B2を電気信号に変換して制御CPUへ送信する。
【0004】
複数の吸着ヘッド部50が保持するDUTをインサート10のポケット内に載置した際に、全てのDUTが正常な姿勢で載置された場合には、全ての吸着ヘッド部50は、スリット孔26と共に上下方向の所定の位置に停止することから、発光部20から出射されたビーム光線B1は、全てのスリット孔26を通過して受光部22に入射する。制御CPUは、受光部22から受信した電気信号に基づいて、全ての吸着ヘッド部50は、上下方向の所定の位置に移動している、即ち、全てのDUTは、正常な姿勢で載置されている、と判定する。
【0005】
これに対し、複数のDUTのうち少なくとも何れか一つが正常ではない姿勢(例えば、浮き上がった姿勢)で載置された場合には、その正常ではない姿勢で載置されたDUT(図中C)を保持する吸着ヘッド部50(図中D)は、スリット孔26と共に上下方向の所定の位置とは異なる位置に停止することから、発光部20から出射されたビーム光線B1は、スリット孔26を通過することなく、スリット24により遮蔽され(図中E)、受光部22には入射しない。制御CPUは、受光部22から受信した電気信号に基づいて、少なくとも何れか一つの吸着ヘッド部50は、上下方向の所定の位置に移動していない、即ち、少なくとも何れか一つのDUTは、正常な姿勢で載置されていない、と判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている従来のワーク保持装置では、吸着ヘッド部50の位置を検知するために、予め吸着ヘッド部50にスリット孔26を設けなければならない。また、複数の吸着ヘッド部50が吸着するDUTの高さ(厚さ)が互いに異なる場合には、DUTの高さに応じてスリット孔26の位置をそれぞれ適正な位置に設けなければならない。これらのことは、ワーク保持装置の設計自由度の低下や大型化、製造コストの増加などを招く。
【0008】
本発明は、以上の問題点に鑑みて成されたものであり、ワーク保持ヘッドが適正な位置にあるのかどうかを検知することが可能な、設計自由度などが高いワーク保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
所定の方向へ移動可能なワーク保持ヘッドと、前記所定の方向における前記ワーク保持ヘッドの位置を検知するための光センサーと、記憶装置と、を備えたワーク保持装置であって、前記光センサーは、前記ワーク保持ヘッドに光を照射すると共に、前記ワーク保持ヘッドの移動に伴って生じる前記光の物理量の変化に応じた電気信号を出力し、前記記憶装置は、前記ワーク保持ヘッドが前記所定の方向における適正な位置にあるのかどうかを判定するために前記電気信号の値と比較される、前記ワーク保持ヘッドが保持するワークの種類に応じて予め定められた、複数の基準値を記憶し、前記光センサーから出力された前記電気信号の値と、前記記憶装置に記憶されている複数の前記基準値のうち何れか一つとを、比較することにより、前記ワーク保持ヘッドが前記所定の方向における適正な位置にあるのかどうかが判定される、ワーク保持装置とする。
【0010】
前記ワーク保持ヘッドは、前記所定の方向とは交差する方向へ折れ曲がる屈曲部を有し、前記光センサーは、前記屈曲部に前記光を照射する、ワーク保持装置であっても良い。
【0011】
前記ワーク保持ヘッドを前記所定の方向において位置決めする位置決め部を備え、前記ワーク保持ヘッドは、前記所定の方向において前記位置決め部に前記屈曲部が当接することにより、前記所定の方向において位置決めされる、ワーク保持装置であっても良い。
【0012】
前記ワーク保持ヘッドを前記所定の方向へ移動可能に支持すると共に前記所定の方向へ移動可能な支持部を備え、前記ワーク保持ヘッドは、前記支持部が前記所定の方向へ移動するに連れて前記所定の方向とは反対方向へ前記支持部に対して相対的に移動可能である、ワーク保持装置であっても良い。
【0013】
前記光センサーは、前記光を出射する発光部と、前記光が入射する受光部とを備え、前記ワーク保持ヘッドは、前記発光部から出射された前記光のうち不要な迷光が前記受光部に入射するのを防止する凹部を有する、ワーク保持装置であっても良い。
【0014】
前記光センサーは、前記光を出射する発光部と、前記光が入射する受光部とを備え、前記ワーク保持ヘッドは、前記発光部から出射された前記光のうち不要な迷光が前記受光部に入射するのを防止する光吸収部を有する、ワーク保持装置であっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワーク保持ヘッドが適正な位置にあるのかどうかを検知することが可能な、設計自由度などが高いワーク保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例におけるワーク保持装置を斜め上方から見た状態を示す斜視図。
【
図2】本発明の実施例におけるワーク保持装置を斜め下方から見た状態を示す斜視図。
【
図3】本発明の実施例におけるワーク保持装置の動作を示す部分側面図。
【
図4】本発明の実施例におけるワーク保持装置の動作を示す部分側面図。
【
図5】本発明の実施例におけるワーク保持装置の動作を示す部分側面図。
【
図6】本発明の実施例におけるワーク保持装置の動作を示す部分側面図。
【
図7】本発明の実施例におけるワークがワーク載置台上に載置された状態を示す斜視図。
【
図8】本発明の実施例におけるワーク保持装置がスライド機構に搭載された状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施例におけるワーク保持装置を斜め上方から見た状態を示す斜視図である。
図2は、本発明の実施例におけるワーク保持装置を斜め下方から見た状態を示す斜視図である。
図3~6は、本発明の実施例におけるワーク保持装置の動作を示す部分側面図である。
図7は、本発明の実施例におけるワークがワーク載置台上に載置された状態を示す斜視図である。
図8は、本発明の実施例におけるワーク保持装置がスライド機構に搭載された状態を示す斜視図である。以下、これらの図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施例におけるワーク保持装置1は、互いに横方向に整列された第一ワーク保持ヘッド2a、第二ワーク保持ヘッド2b、第三ワーク保持ヘッド2c、第四ワーク保持ヘッド2d、及び第五ワーク保持ヘッド2eからなる複数のワーク保持ヘッドと、これら複数のワーク保持ヘッドを支持する支持部3と、光センサーを構成する発光部4a及び受光部4bと、を備えている。
【0019】
ワーク保持ヘッド2a~2dの下端部には、ワークWを保持するのに適した所定の形状を有する先端部材5が取り付けられている。ワーク保持ヘッド2a~2dに取り付けられる先端部材5は、保持するワークWの形状に応じて互いに異なる形状を有し、ワーク保持ヘッド2a~2dに対して着脱可能であり、且つ、互いに交換して取り付け可能である。図では、第五ワーク保持ヘッド2eには、先端部材5が取り付けられていないが、ワーク保持ヘッド2a~2dと同様に先端部材5を取り付けることが可能である。
【0020】
先端部材5の内部には、図示しない真空伝達路が設けられ、この真空伝達路は、ワーク保持ヘッド2a~2eに設けられた真空導入口6に接続されている。真空導入口6は、図示しない外部の真空吸引装置に接続される。真空導入口6から導入される真空圧力により、先端部材5の下端部にワークWが吸着される。真空導入口6は、ワーク保持ヘッド2a~2eの中段付近に形成された屈曲部15の上面に設けられている。屈曲部15は、上下方向から横方向へ支持部3の正面に向かって直角に折れ曲がる、ワーク保持ヘッド2a~2eの一部である。
【0021】
ワーク保持ヘッド2a~2eの上端部は、それぞれ対応する可動シャフト7の下端部に摺動可能に接続されている。具体的には、ワーク保持ヘッド2a~2eの上端部は、横方向へ突出する音叉状の突出部8を有し、それに対し、可動シャフト7の下端部には、横方向へ突出する環状の突出部材9が固定もしくは一体的に形成されており、ワーク保持ヘッド2a~2eの突出部8が、可動シャフト7の突出部材9に、上方から引っ掛かるように係止されている。また、ワーク保持ヘッド2a~2eの突出部8の内側には、可動シャフト7が摺動可能に挿通されている。
【0022】
可動シャフト7の上端部は、可動シャフト7を上下方法へ移動させる動力を発生させる動力部10に接続されている。動力部10は、支持部3の上端部に固定されている。可動シャフト7は、動力部10が発生させた動力により、上下方向へ直線的に移動する。この移動により、可動シャフト7と機械的に接続されているワーク保持ヘッド2a~2eも、それぞれ上下方向へ直線的に移動する。また、ワーク保持ヘッド2a~2eは、可動シャフト7と動力部10を介して支持部3に支持されると共に、必要に応じて、ワーク保持ヘッド2a~2eの背面側において支持部3と任意のスライド機構などを介して機械的に接続される。
【0023】
可動シャフト7の周囲には、円筒状のコイルバネ11が配置されている。コイルバネ11の内側には、可動シャフト7が挿通されている。コイルバネ11の下端部は、環状のスペーサー12を介して、ワーク保持ヘッド2a~2eの上端部により支持されている。スペーサー12の内側には、可動シャフト7が摺動可能に挿通されている。コイルバネ11の上端部は、可動シャフト7の外周面に固定もしくは一体的に形成された環状の係止部材13により係止されている。コイルバネ11は、ワーク保持ヘッド2a~2eとスペーサー12が可動シャフト7に沿って上方へ移動することにより、スペーサー12と係止部材13との間で圧縮されて縮む。
【0024】
支持部3の下端部には、横方向へ水平に突出する平板状の位置決め部14が固定もしくは一体的に形成されている。この位置決め部14の上面には、ワーク保持ヘッド2a~2eが下方へ移動した際に、ワーク保持ヘッド2a~2eの屈曲部15の下面が当接することにより、ワーク保持ヘッド2a~2eが上下方向において互いに同じ高さに位置決めされる。
【0025】
発光部4aと受光部4bは、一つの透過型光電センサーを構成し、ワーク保持ヘッド2a~2eを横方向から挟むように互いに対向して配置され、支持部3の側端部に固定されている。発光部4aは、赤外線などの光を出射し、受光部4aは、その光を電気信号に変換して出力する。受光部4bから出力される電気信号の値(出力レベル)は、受光部4bに入射する光の量に応じて変化する。受光部4bから出力された電気信号は、ワーク保持装置の動作を制御する制御装置に入力され、ワーク保持ヘッド2a~2eの位置を検知するために使用される。
【0026】
図2に示すように、発光部4aと受光部4bとを結ぶ光路に面するワーク保持ヘッド2a~2eの屈曲部15の下面には、発光部4aから出射された光のうち部材の表面反射などにより生じる不要な迷光が受光部4bに入射するのを防止する凹部16が形成されている。凹部16に入射した迷光の少なくとも一部は、凹部16の内壁面により遮られることから、迷光に起因する光センサーの誤動作が防止される。また、上述の光路に面するワーク保持ヘッド2a~2eの背面などには、迷光を吸収する図示しない光吸収部が設けられている。この光吸収部は、ワーク保持ヘッド2a~2eの表面に光吸収シートを貼り付ける、あるいは、光吸収塗装や表面処理を施すことなどにより形成される。このような光吸収部を設けることによっても、迷光に起因する光センサーの誤動作が防止される。
【0027】
本発明の実施例におけるワーク保持装置1は、例えば、
図3~6に示すように順次動作する。尚、
図3~6では、ワーク保持ヘッド2a~2eのうち第一ワーク保持ヘッド2aの側面のみを示している。
【0028】
まず、
図3に示すように、ワーク保持装置1は、支持部3の下端部がワーク載置面Sから一定の距離だけ離間した状態で、ワーク載置面Sの上方に停止している。また、ワーク保持ヘッド2a~2eは、上下方向の最上位の位置に停止し、ワーク保持ヘッド2a~2eの屈曲部15は、位置決め部14から離間している。この時、発光部4aから出射された光Lは、ワーク保持ヘッド2a~2eの下部背面と、屈曲部15の下面と、支持部3の正面と、位置決め部14の上面とで囲まれた空間を、ワーク保持ヘッド2a~2eに遮られることなく通過し、受光部4bに入射する。従って、受光部4bに入射する光Lの量は、最大であり、受光部4bから出力される電気信号の値も最大である。
【0029】
次に、この状態から、
図4に示すように、第一ワーク保持ヘッド2aのみが、可動シャフト7と共に降下し(矢印a参照)、屈曲部15の下面が位置決め部14の上面に当接する。これにより、第一ワーク保持ヘッド2aは、ワーク載置面Sから一定の高さの位置に位置決めされる。この時、発光部4aから出射された光Lの一部は、第一ワーク保持ヘッド2aの屈曲部15の側面により遮られることから、受光部4bに入射する光Lの量は、その分だけ減少し、受光部4bから出力される電気信号の値もその分だけ減少する。ワーク保持装置1の制御装置は、受光部4bから出力された電気信号に基づいて、第一ワーク保持ヘッド2aが
図4に示す位置にあることを検知する。
【0030】
次に、この状態から、
図5に示すように、支持部3がワーク載置面Sに向かって垂直に降下し(矢印b参照)、第一ワーク保持ヘッド2aが保持しているワークWの下面がワーク載置面Sに接触する。
【0031】
次に、この状態から、
図6に示すように、支持部3がワーク載置面Sに向かって更に降下し(矢印c参照)、ワーク載置面Sから一定の高さの位置で停止する。この時、支持部3が降下するに連れて、支持部3と第一ワーク保持ヘッド2aは、上下方向において互いに反対方向へ相対的に移動し、位置決め部14の上面と、屈曲部15の下面との間に、隙間dが生じる。
【0032】
また、支持部3が降下すると、可動シャフト7と係止部材13もその分だけ降下し、スペーサー12と係止部材13との間の間隔が狭まることから、コイルバネ7は、スペーサー12と係止部材13との間で圧縮されて縮む。
【0033】
また、支持部3が降下すると、支持部3に固定されている発光部4aと受光部4bもその分だけ降下し、発光部4aから出射される光Lの照射位置もその分だけ下方へ移動する。光Lの照射位置が下方へ移動すると、光Lが第一ワーク保持ヘッド2aの屈曲部15により遮られる面積が減少し、受光部4bに入射する光Lの量は、その分だけ増加し、受光部4bから出力される電気信号の値もその分だけ増加する。
【0034】
この時、受光部4bから出力される電気信号の値を所定の基準値と比較し、互いに一致するかどうかを判定することにより、第一ワーク保持ヘッド2aが上下方向の適正な位置に停止しているかどうか、言い換えると、ワークWが正常な姿勢で載置されたかどうか、を検知することができる。つまり、発光部4aから出射された光Lのうち第一ワーク保持ヘッド2aにより遮られる光Lの量、言い換えると、遮られずに通過する光Lの量は、第一ワーク保持ヘッド2aの上下方向の位置に応じて変化することから、受光部4bに入射する光Lの量、即ち、受光部4bから出力される電気信号の値を測定することにより、第一ワーク保持ヘッド2aの上下方向の位置を検知することができる。
【0035】
このためには、まず、第一ワーク保持ヘッド2aがワークWを正常な姿勢で載置面Sに載置した時に受光部4bから出力される電気信号の値を予め測定し、この測定値を、第一ワーク保持ヘッド2aが上下方向の適正な位置に停止していることを示す基準値として予め規定しておく。この基準値は、ワークWの高さ(厚さ)に応じて変化することから、互いに高さの異なる複数のワークWを取り扱う場合には、それら複数のワークWの高さに応じて、複数の基準値を同様に規定しておく。例えば、発光部4aから出射された光Lが第一ワーク保持ヘッド2aにより遮られずに受光部4bに入射した時に受光部4bから出力される電気信号の値を「100」(最大値)とした場合に、高さh1を有するワークWに対しては、基準値として「70」が規定され、それよりも小さい高さh2を有するワークWに対しては、基準値として「60」が規定され、それよりも小さい高さh3を有するワークWに対しては、基準値として「50」が規定され、それよりも小さい高さh4を有するワークWに対しては、基準値として「40」が規定される。これらの基準値は、必要に応じて多少の幅(例えば、±1~2)を有していても良い。これらの基準値は、例えば、ワーク保持装置の制御装置に内蔵されている図示しない記憶装置(メモリ)に電気的に記憶されており、そこから読み出されて使用される。
【0036】
このような複数の基準値のうち何れか一つに基づいて、第一ワーク保持ヘッド2aは、ワークWをワーク載置面Sに載置した時点で適正な位置に停止しているかどうか、即ち、ワークWは、正常な姿勢でワーク載置面Sに載置されたかどうか、が判定される。例えば、第一ワーク保持ヘッド2aが高さh1を有するワークWを保持している場合には、基準値として「70」が設定され、受光部4bから出力された電気信号の値も「70」であれば、互いに一致することから、第一ワーク保持ヘッド2aは、適正な位置に停止していると判定される。その一方で、受光部4bから出力された電気信号の値が「40」や「80」であれば、「70」と相違することから、第一ワーク保持ヘッド2aは、適正な位置に停止していないと判定される。この判定の結果は、必要に応じて、音や光などにより作業者に通知され、特に、判定の結果が不一致の場合には、ワーク保持装置の動作が自動的に停止される。第一ワーク保持ヘッド2aが保持するワークWの種類が変更された場合には、設定される基準値が自動的に変更されて同様の動作が行われる。
【0037】
受光部4bから出力された電気信号の値が「40」のように基準値「70」よりも小さくなる原因としては、例えば、縦長のワークWが横向きに倒れた状態でワーク載置面Sに載置されたことにより、第一ワーク保持ヘッド2aが本来停止すべき位置よりも下方の位置で停止することが挙げられる。受光部4bから出力された電気信号の値が「80」のように基準値「70」よりも大きくなる原因としては、例えば、ワークWとワーク載置面Sとの間に何らかの異物が介在したことにより、第一ワーク保持ヘッド2aが本来停止すべき位置よりも上方の位置で停止することが挙げられる。
【0038】
ここでは、第一ワーク保持ヘッド2aが保持しているワークWをワーク載置面Sに載置する(プレースする)動作について説明したが、ワーク載置面Sに載置されているワークWを取り上げる(ピックする)動作についても同様である。例えば、第一ワーク保持ヘッド2aは、ワーク載置面Sに載置されているワークWを取り上げる際に、受光部4bから出力された電気信号の値と基準値とを比較することにより、適正な位置に停止しているのかどうかが判定される。また、第一ワーク保持ヘッド2a以外のその他のワーク保持ヘッド2b~2eも第一ワーク保持ヘッド2aと同様に動作し、同様に位置が検知される。
【0039】
図7に示すように、ワークWは、例えば、ワーク載置台17の上面に載置される。このワーク載置台17の上面のうちワークWが載置される面がワーク載置面Sに相当する。また、
図8に示すように、ワーク保持装置1は、例えば、垂直スライド機構18と水平スライド機構19とを備えたスライド装置20に搭載され、ワーク載置面Sに対して垂直方向と水平方向へ移動する。具体的には、ワーク保持装置1は、垂直スライド機構18に取り付けられ、垂直スライド機構18が動作することにより、垂直方向へ移動する。また、垂直スライド機構18は、水平スライド機構19に取り付けられ、水平スライド機構19が動作することにより、ワーク保持装置1と共に、水平方向へ移動する。
【0040】
以上のワーク保持装置1では、ワーク保持ヘッド2a~2eが適正な位置にあるのかどうかを判定するための基準値が、互いに高さが異なる複数のワークWのそれぞれに対して規定されていることから、ワーク保持ヘッド2a~2eが保持するワークWの種類が互いに異なる場合であっても、複数の基準値の中から適切な基準値を選択して設定するだけで、ワーク保持ヘッド2a~2eが適正な位置にあるのかどうかを検知することができる。また、ワーク保持ヘッド2a~2eが保持するワークWの種類が互いに変わった場合であっても、基準値を切り替えて設定するだけで、容易にそれに対処することができる。また、取り扱うワークWの種類が増えた場合であっても、基準値を追加するだけで、容易にそれに対処することができる。
【0041】
発光部4aから出射された光Lは、ワーク保持ヘッド2a~2eの屈曲部15に照射されるように構成されていることから、ワーク保持ヘッド2a~2eの下端部などに光Lを照射する場合に比べて、ワーク保持ヘッド2a~2eの下端部の設計自由度や光センサーの配置自由度などを向上させることができる。
【0042】
ワーク保持ヘッド2a~2eの屈曲部15は、発光部4aから出射された光Lを遮る部位として機能するだけでなく、位置決め部14に当接することによりワーク保持ヘッド2a~2eを位置決めする役割を果たす部位としても機能することから、これら二つの機能を実現するために必要な部品点数を削減したり構造を単純化したりすることができる。
【0043】
ワーク保持ヘッド2a~2eと支持部3は、
図6に示したように、ワークWをワーク載置面Sに載置する際に、互いに反対方向へ相対的に移動することにより、受光部4bに入射する光Lの量を変化させていることから、ワークWを載置する動作と、ワーク保持ヘッド2a~2eの位置を検知する動作を、互いに円滑に連動させることができる。
【0044】
以上のワーク保持装置1において、光センサーは、透過型光電センサーに限らず、ワーク保持ヘッド2a~2eの表面からの反射光を検出する反射型光電センサーなどであっても良い。また、光センサーは、受光部4bに入射する光Lの量の変化を検出するものに限らず、光Lのその他の物理量(波長など)の変化を検出するものであっても良い。また、光センサーは、ワーク保持ヘッド2a~2eのそれぞれに対して一つずつ設けられていても良い。
【0045】
ワーク保持ヘッド2a~2eは、ワークWを真空吸着により保持するものに限らず、機械式の把持機構などにより保持するものであっても良い。
【0046】
可動シャフト7は、上下方向へ移動しない固定式のシャフトであっても良い。
【0047】
本発明におけるワーク保持装置は、以上の実施形態に限定されず、その他種々の実施形態を取り得る。
【符号の説明】
【0048】
1 ワーク保持装置
2a 第一ワーク保持ヘッド
2b 第二ワーク保持ヘッド
2c 第三ワーク保持ヘッド
2d 第四ワーク保持ヘッド
2e 第五ワーク保持ヘッド
3 支持部
4a 発光部
4b 受光部
5 先端部材
6 真空導入口
7 可動シャフト
8 突出部
9 突出部材
10 動力部
11 コイルバネ
12 スペーサー
13 係止部材
14 位置決め部
15 屈曲部
16 凹部
17 ワーク載置台
18 垂直スライド機構
19 水平スライド機構
20 スライド機構
L 光
S ワーク載置面
W ワーク