(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】圧電シート及びその製造方法並びに圧電センサ
(51)【国際特許分類】
H04R 17/02 20060101AFI20221221BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20221221BHJP
H01L 41/193 20060101ALI20221221BHJP
H01L 41/253 20130101ALI20221221BHJP
H01L 41/257 20130101ALI20221221BHJP
H01L 41/313 20130101ALI20221221BHJP
【FI】
H04R17/02
H01L41/113
H01L41/193
H01L41/253
H01L41/257
H01L41/313
(21)【出願番号】P 2019183685
(22)【出願日】2019-10-04
(62)【分割の表示】P 2015185930の分割
【原出願日】2015-09-18
【審査請求日】2019-10-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2014190885
(32)【優先日】2014-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】神谷 信人
(72)【発明者】
【氏名】岡林 賞純
【合議体】
【審判長】國分 直樹
【審判官】千葉 輝久
【審判官】川崎 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-147571(JP,A)
【文献】特開平9-290864(JP,A)
【文献】特開2012-196874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R17/02
H01L41/08-41/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂発泡シートを含み、表面の純水での測定による接触角が
30°以上、58°以下であり、最大の発生電圧の相加平均値が124.6mV以上、180.7mV以下であることを特徴とする圧電シート。
【請求項2】
合成樹脂発泡シートがポリオレフィン系樹脂を含有していることを特徴とする請求項1に記載の圧電シート。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を含有していることを特徴とする請求項2に記載の圧電シート。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の圧電シートと、上記圧電シートの第一の面に積層一体化されたシグナル電極と、上記圧電シートの第二の面に積層一体化されたグランド電極とを有することを特徴とする圧電センサ。
【請求項5】
合成樹脂発泡シートに交流処理電力が0.2~0.8kVAにて交流電界を加えた後、上記合成樹脂発泡シートに直流処理電圧の絶対値が5~40kVにて直流電界を加えて上記合成樹脂発泡シートに電荷を注入して帯電させ、表面の純水での測定による接触角が
30°以上、58°以下である圧電シートを製造することを特徴とする圧電シートの製造方法。
【請求項6】
合成樹脂発泡シートがポリオレフィン系樹脂を含有していることを特徴とする請求項5に記載の圧電シートの製造方法。
【請求項7】
ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を含有していることを特徴とする請求項6に記載の圧電シートの製造方法。
【請求項8】
交流電界を加えた後の合成樹脂発泡シートの表面の純水での測定による接触角が80°以下であることを特徴とする請求項5~7の何れか1項記載の圧電シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電シート及びその製造方法並びに圧電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電シートは、絶縁性の高分子材料に電荷を注入することにより、内部に帯電を付与した材料である。圧電シートの第一の面にシグナル電極を積層一体化し且つ第二の面にグランド電極を積層することによって圧電センサを構成することができる。
【0003】
上記圧電センサは、自動車シート、ベッドや布団に用いるマットレスの下などに配設されることによって、脈、呼吸、いびき、声、体動、などの生体信号を取得するために用いることができる。
【0004】
特許文献1には、融解開始温度が90℃以上であるポリオレフィン系樹脂を60重量%以上含む合成樹脂シートに電荷を注入して上記合成樹脂シートを帯電させてなるエレクトレットシートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のエレクトレットシートは、面内における圧電性にばらつきがあるという問題点を有している。
【0007】
本発明は、面内において略均一な圧電性を有する圧電シート及びこの製造方法、並びに、この圧電シートを用いた圧電センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧電シートは、交流電界が加えられた合成樹脂発泡シートが直流電界によって帯電されていることを特徴とする。
【0009】
上記圧電シートにおいて、表面の純水での測定による接触角が80°以下であることを特徴とする。
【0010】
上記圧電シートにおいて、合成樹脂発泡シートがポリオレフィン系樹脂を含有していることを特徴とする。
【0011】
上記圧電シートにおいて、ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を含有していることを特徴とする。
【0012】
上記圧電シートにおいて、上記圧電シートと、上記圧電シートの第一の面に積層一体化されたシグナル電極と、上記圧電シートの第二の面に積層一体化されたグランド電極とを有することを特徴とする。
【0013】
上記圧電シートの製造方法は、合成樹脂発泡シートに交流電界を加えた後、上記合成樹脂発泡シートに直流電界を加えて上記合成樹脂発泡シートに電荷を注入して帯電させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の圧電シートは、上述の如き構成を有していることから、面内において略均一な圧電性を有している。本発明の圧電シートの製造方法によれば、面内において略均一な圧電性を有する圧電シートを容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の圧電シートの一例を説明する。圧電シートは、交流電界が加えられた合成樹脂発泡シートが直流電界によって帯電されており、外力が加えられることによって表面に電荷を発生させる(圧電現象を有する)ことができるシートである。即ち、圧電シートは、合成樹脂発泡シートに交流電界及び直流電界をこの順序で加えて電荷を注入して帯電させてなり、外力が加えられることによって表面に電荷を発生させる(圧電現象を有する)ことができるシートである。
【0016】
合成樹脂発泡シートを構成する合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸、液晶樹脂などが挙げられ、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
【0017】
合成樹脂は絶縁性に優れていることが好ましく、合成樹脂としては、JIS K6911に準拠して印可電圧500Vにて電圧印可1分後の体積固有抵抗値(以下、単に「体積固有抵抗値」という)が1.0×1010Ω・m以上である合成樹脂が好ましい。
【0018】
合成樹脂の上記体積固有抵抗値は、エレクトレットシートがより優れた圧電性を有することから、1.0×1013Ω・m以上が好ましく、1.0×1015Ω・m以上がより好ましい。
【0019】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体、又は、エチレン成分を50重量%を超えて含有するエチレンと少なくとも1種の炭素数が3~20のα―オレフィンとの共重合体を挙げることができる。エチレン単独重合体としては、高圧下でラジカル重合させた低密度ポリエチレン(LDPE)、中低圧で触媒存在下で重合させた中低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)などを挙げることができる。エチレンとα-オレフィンを共重合させることで直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を得ることができ、α―オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられ、炭素数が4~10のα-オレフィンが好ましい。なお、直鎖状低密度ポリエチレン中におけるα-オレフィンの含有量は通常、1~15重量%である。
【0020】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン成分を50重量%を超えて含有しておれば、特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンと少なくとも1種のプロピレン以外の炭素数が20以下のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。なお、ポリプロピレン系樹脂は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、プロピレンと少なくとも1種のプロピレン以外の炭素数が20以下のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。
【0021】
なお、プロピレンと共重合されるα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
【0022】
合成樹脂発泡シートの発泡倍率は3~15倍が好ましく、4~10倍がより好ましい。合成樹脂発泡シートの発泡倍率が3倍以上であると、圧電シートはその圧電性に優れる。合成樹脂発泡シートの発泡倍率が15倍以下であると、合成樹脂発泡シートの気泡を破壊させることなく、合成樹脂発泡シートに交流電界及び直流電界を加えることができ、得られる圧電シートはその圧電性に優れる。なお、合成樹脂発泡シートの発泡倍率は、合成樹脂発泡シートを構成している合成樹脂全体の密度を合成樹脂発泡シートの密度で除した値をいう。
【0023】
合成樹脂発泡シートの厚みは、10~300μmが好ましく、30~200μmがより好ましい。合成樹脂発泡シートの厚みが10μm以上であると、合成樹脂発泡シートの厚み方向の平均気泡数が安定化し、面内における圧電性がより均一になる。合成樹脂発泡シートの厚みが300μm以下であると、直流電界を合成樹脂発泡シートの厚み方向に全面的に貫通させることができ、圧電シートの面内における圧電性がより均一になり好ましい。
【0024】
合成樹脂発泡シートの厚み方向の平均気泡数は3.0~8.0個が好ましく、4.0~7.0個がより好ましく、4.6~6.0個が特に好ましい。合成樹脂発泡シートの厚み方向の平均気泡数が3.0~8.0個であると、合成樹脂発泡シートの優れた柔軟性を維持しつつ、合成樹脂発泡シートの気泡を破壊することなく交流電圧及び直流電圧を加えることができ、得られる圧電シートは優れた圧電性を有する。なお、合成樹脂発泡シートの厚み方向の平均気泡数は下記の要領にて測定された値をいう。一辺が10cmの平面正方形状の合成樹脂発泡シートを用意し、この合成樹脂発泡シートをその任意の部分において何れかの辺縁に対して平行に且つ表面に対して直交する方向に切断する。合成樹脂発泡シートの切断面を倍率1000倍にて拡大写真を撮影する。拡大写真にあらわれた合成樹脂発泡シートの切断面の任意10箇所において、合成樹脂発泡シートの表面に対して直交する方向に直線を描き、各直線上に位置する気泡数を数える。なお、一部のみが直線上に位置する気泡は気泡数に含めない。各直線上に位置する気泡数の相加平均値を合成樹脂発泡シートの厚み方向の平均気泡数とする。
【0025】
本発明の圧電シートにおいては、合成樹脂発泡シートに交流電界が加えられている。このように合成樹脂発泡シートに交流電界が先ず加えられていることによって、明確に解明されていないが、合成樹脂発泡シートの製造時に発生した表面電荷及び気泡内部の電荷を除去することができると共に、合成樹脂発泡シート表面の平滑性を向上させることができる。このように電荷が除去され且つ表面の平滑性を向上させた状態で合成樹脂発泡シートに直流電界を加えることによって、合成樹脂発泡シート内に均一に電荷を注入することができ、得られる圧電シートは面内において略均一な圧電性を有すると考えられる。
【0026】
更に、合成樹脂発泡シートに交流電界を先ず加えることによって、合成樹脂発泡シートの表面の純水での測定による接触角を低下させて合成樹脂発泡シートの絶縁性を僅かに低下させていると共に、合成樹脂発泡シートの表面の平滑性を向上させているので、直流電界によって合成樹脂発泡シートを帯電させる際に、合成樹脂発泡シートに部分的に電界が集中することを防止することできる。よって、合成樹脂発泡シートに直流電界を加えて、合成樹脂発泡シートの気泡の破壊による表面の粗化を抑制しながら、合成樹脂発泡シートを略均一に帯電させることができると考えられる。
【0027】
一方、合成樹脂発泡シートに交流電界を加えることなく直流電界を加えた場合、合成樹脂発泡シートの絶縁性が低下していないと共に、合成樹脂発泡シートの表面の平滑性が改善されていないことから、合成樹脂発泡シートに直流電界を加えると、合成樹脂発泡シートの表面に形成された凹凸のうち、凸部に直流電界が集中しやすくなり、その結果、直流電界が集中した部分の合成樹脂発泡シートの気泡が破壊され、合成樹脂発泡シート内に注入した電荷が外部に逃げてしまい、合成樹脂発泡シートを面内において均一に帯電させることができず、得られる圧電シートの圧電性が面内においてばらつきを生じるという問題点を生じる。
【0028】
合成樹脂発泡シートへの交流電界を加える方法としては、特に限定されず、例えば、プラズマ処理、静電気除去処理、コロナ放電処理などが挙げられ、明確に解明されていないが、合成樹脂発泡シートの製造時に発生した表面電荷及び気泡内部の電荷をより効果的に除去し且つ合成樹脂発泡シートの絶縁性をより効果的に低下させた上で、直流電界によって合成樹脂発泡シート内により均一に電荷を注入することができるので、コロナ放電処理が好ましい。なお、静電気除去処理を行うには、公知のイオナイザーが用いられればよい。
【0029】
合成樹脂発泡シートに交流電界を加える時の交流処理電力は、0.05~2kVAが好ましく、0.1~1kVAがより好ましく、0.3~0.8kVAが特に好ましい。交流処理電力を上記範囲に調整することによって、圧電シートの圧電性を面内においてより均一にすることができる。
【0030】
合成樹脂発泡シートに交流電界を加える時の周波数は、10~100kHzが好ましく、15~70kHzがより好ましく、20~50kHzが特に好ましい。交流処理電力を上記範囲に調整することによって、明確に解明されていないが、合成樹脂発泡シートの製造時に発生した表面電荷及び気泡内部の電荷をより効果的に除去し且つ合成樹脂発泡シートの絶縁性をより効果的に低下させた上で、直流電界によって合成樹脂発泡シート内により均一に電荷を注入することができるので、圧電シートの圧電性を面内においてより均一にすることができる。
【0031】
合成樹脂発泡シートにコロナ放電処理によって交流電界を加える場合、合成樹脂発泡シートと電極との距離は、0.5~20mmが好ましく、2~10mmがより好ましく、3~7mmが特に好ましい。合成樹脂発泡シートと電極との距離を0.5mm以上にすると、スパークを生じさせることなく、合成樹脂発泡シートにコロナ放電処理を施すことができる。合成樹脂発泡シートと電極との距離を20mm以下にすると、合成樹脂発泡シートに効果的に交流電界を加えることができる。
【0032】
交流電界を加えた後の合成樹脂発泡シートの表面の純水での測定による接触角は80°以下が好ましく、70°以下がより好ましく、60°以下が特に好ましく、50°以下が最も好ましい。交流電界を加えた後の合成樹脂発泡シートの表面の純水での測定による接触角は30°以上が好ましい。合成樹脂発泡シートの表面の純水での測定による接触角が80°以下であると、明確に解明されていないが、合成樹脂発泡シートの絶縁性をより効果的に低下させた上で、直流電界によって合成樹脂発泡シート内により均一に電荷を注入することができるので、圧電シートの圧電性を面内においてより均一にすることができる。合成樹脂発泡シートの表面の純水での測定による接触角が30°以上であると、得られる圧電シートの表面平滑性に優れる。なお、合成樹脂発泡シートの表面の純水での測定による接触角は、JIS R 3257に準じて接触角測定装置を用いて測定した値をいう。接触角測定装置としては、例えば、KSV社から商品名「CAM200」にて市販されている装置を用いることができる。
【0033】
圧電シートは、交流電界が加えられた合成樹脂発泡シートに直流電界が加えられて帯電している。即ち、交流電界を加えた後の合成樹脂発泡シートに直流電界を加えて合成樹脂発泡シートに電荷を注入して合成樹脂発泡シートを帯電させて圧電シートとなる。上述のように、合成樹脂発泡シートに予め交流電界が加えられていることから、合成樹脂発泡シートは直流電界の付与によって均一に帯電しており、その結果、得られる圧電シートは、面内において略均一な圧電性を有している。
【0034】
合成樹脂発泡シートに直流電界を加える方法としては、特に限定されず、例えば、(1)合成樹脂発泡シートを一対の平板電極で挟持し、帯電させたい表面に接触させている平板電極を高圧直流電源に接続すると共に他方の平板電極をアースし、合成樹脂発泡シートに直流又はパルス状の高電圧を印加して合成樹脂に電荷を注入して合成樹脂発泡シートを帯電させる方法、(2)合成樹脂発泡シートの第一の面に、アースされた平板電極を密着状態に重ね合わせ、合成樹脂発泡シートの第二の面側に所定間隔を存して直流の高圧電源に電気的に接続された針状電極又はワイヤー電極を配設し、針状電極の先端又はワイヤー電極の表面近傍への電界集中によりコロナ放電を発生させ、空気分子をイオン化させて、針状電極又はワイヤー電極の極性により発生した空気イオンを反発させて合成樹脂発泡シートを帯電させる方法などが挙げられる。
【0035】
合成樹脂発泡シートに直流電界を加える時の直流処理電圧の絶対値は、5~40kVが好ましく、10~30kVがより好ましい。直流処理電圧を上記範囲に調整することによって、得られる圧電シートの圧電性が面内において略均一になる。
【0036】
得られた圧電シートの表面の純水での測定による接触角は80°以下が好ましく、70°以下がより好ましく、60°以下が特に好ましく、50°以下が最も好ましい。得られた圧電シートの表面の純水での測定による接触角は30°以上が好ましい。圧電シートの表面の純水での測定による接触角が80°以下であると、圧電シートの圧電性の面内における均一性がより優れている。圧電シートの表面の純水での測定による接触角が30°以上であると、圧電シートの表面平滑性に優れる。なお、圧電シートの表面の純水での測定による接触角は、JIS R 3257に準じて接触角測定装置を用いて測定した値をいう。接触角測定装置としては、例えば、KSV社から商品名「CAM200」にて市販されている装置を用いることができる。
【0037】
上述のように、合成樹脂発泡シートに交流電界を先ず加えた後に直流電界を加えて合成樹脂発泡シートを帯電させて得られた圧電シートは、その圧電性が面内において略均一となっている。
【0038】
圧電シートの第一の面にシグナル電極を積層一体化し且つ第二の面にグランド電極を積層一体化することによって圧電センサが構成される。そして、グランド電極を基準電極としてシグナル電極の電位を測定することによって、圧電センサの圧電シートにて発生した電位を測定することができる。
【0039】
シグナル電極は、圧電シートの第一の面に必要に応じて固定剤を介して積層一体化されている。同様に、グランド電極は、圧電シートの第二の面に必要に応じて固定剤を介して積層一体化されている。なお、シグナル電極及びグランド電極としては、導電性を有しておれば、特に限定されず、例えば、銅箔、アルミニウム箔などの金属シート、導電性膜などが挙げられる。
【0040】
シグナル電極及びグランド電極を導電性膜で構成する場合、導電性膜は、電気絶縁シート上に形成された上で、圧電シート上に積層一体化されもよいし、又は、圧電シートの表面に直接、形成されてもよい。電気絶縁シート又は圧電シート上に導電性膜を形成する方法としては、例えば、(1)電気絶縁シート又は圧電シート上に、バインダー中に導電性微粒子を含有させてなる導電ペーストを塗布、乾燥させる方法、(2)電気絶縁シート又は圧電シート上に蒸着によって電極を形成する方法などが挙げられる。
【0041】
電気絶縁シートとしては、電気絶縁性を有しておれば、特に限定されず、例えば、ポリイミドシート、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート、ポリ塩化ビニルシートなどが挙げられる。
【0042】
固定剤層を構成している固定剤は、反応系・溶剤系・水系・ホットメルト系の接着剤又は粘着剤から構成されており、圧電シートの感度を維持する観点から、誘電率の低い固定剤が好ましい。
【実施例】
【0043】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1~5、比較例5~7)
ポリプロピレン系樹脂A(日本ポリプロ社製 商品名「ウィンテックWFX4T」)、ポリプロピレン系樹脂B(日本ポリプロ社製 商品名「「ウィンテックWEG7T」)、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びアゾジカルボンアミドを表1に示した所定量ずつ押出機に供給して溶融混練してTダイからシート状に押出し、厚みが450μmである発泡性樹脂シートを製造した。発泡性樹脂シートを一辺が30cmの平面正方形状に切り出した。
【0045】
得られた発泡性樹脂シートの両面に電子線を加速電圧300kV及び強度25kGyの条件にて照射し、発泡性樹脂シートのポリプロピレン系樹脂を架橋した。発泡性樹脂シートを250℃に加熱して発泡性樹脂シートを発泡させてポリプロピレン系樹脂発泡シートを得た。ポリプロピレン系樹脂発泡シートの表面の平坦性を保つために、発泡性樹脂シートを垂直に配設し、下端に錘を取り付けた。この錘の重量を変化させることによってポリプロピレン系樹脂発泡シートの厚みを調整した。なお、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの発泡倍率、厚み及び厚み方向の平均気泡数を表1に示した。
【0046】
ポリプロピレン系樹脂発泡シートにコロナ放電処理を施すことによって周波数20kHz及び表1に示した交流処理電力にて交流電界を加えた。電極とポリプロピレン系樹脂発泡シート表面との距離は5mmであった。交流電界を加えた後のポリプロピレン系樹脂発泡シートの接触角を表1の「交流電界付与後の接触角」の欄に示した。
【0047】
次に、交流電界を加えたポリプロピレン系樹脂発泡シートの第一の面に、アースされた平板電極を密着状態に重ね合わせ、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの第二の面側に所定間隔を存して直流の高圧電源に電気的に接続された針状電極を配設し、針状電極の表面近傍への電界集中により、電圧-20kV、放電距離10mm及び電圧印可時間1分の条件下にてコロナ放電を発生させ、空気分子をイオン化させて、針状電極の極性により発生した空気イオンを反発させてポリプロピレン系樹脂発泡シートに直流電界を加えて電荷を注入してポリプロピレン系樹脂発泡シートを全体的に帯電させた。その後、電荷を注入したポリプロピレン系樹脂発泡シートを、接地されたアルミニウム箔で包み込んだ状態で3時間に亘って保持して圧電シートを得た。
【0048】
(比較例1)
ポリプロピレン系樹脂発泡シートに交流電界を加えなかったこと以外は実施例1と同様の要領で圧電シートを得た。
【0049】
(比較例2)
ポリプロピレン系樹脂発泡シートに交流電界を加えなかったこと以外は実施例4と同様の要領で圧電シートを得た。
【0050】
(比較例3)
ポリプロピレン系樹脂発泡シートに交流電界を加えなかったこと以外は実施例5と同様の要領で圧電シートを得た。
【0051】
(比較例4)
ポリプロピレン系樹脂発泡シートに直流電界を加えた後に交流電界を加えたこと以外は、実施例1と同様の要領で圧電シートを得た。
【0052】
得られた圧電シートについて、表面の純水での測定による接触角を上述の要領で、圧電性の相加平均値及び変動係数を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0053】
(圧電性)
圧電シートの任意の部分から一辺が10cmの平面正方形状の試験シートを切り出した。一辺が10cmの平面正方形状で且つ厚みが100μmのポリエチレンテレフタレートシートの片面に厚みが20μmのアルミニウム箔を積層一体化してなる複合シートを3枚用意した。複合シートを第1~3複合シートと称する。
【0054】
試験シートの第1の面に、アクリル系粘着剤によって第1複合シートを積層一体化した。なお、第1複合シートのアルミニウム箔が試験シート側となるように積層一体化した。
【0055】
次に、試験シートに積層一体化した第1複合シート上に、アクリル系粘着剤によって、厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートシートからなる絶縁シートを積層一体化させた。
【0056】
しかる後、上記絶縁シート上にアクリル系粘着剤によって、第2複合シートを積層一体化した。なお、第2複合シートのアルミニウム箔が試験シート側となるように積層一体化した。
【0057】
試験シートの第2の面に、アクリル系粘着剤によって第3複合シートを積層一体化することによって圧電センサを作製した。なお、第3複合シートのアルミニウム箔が試験シート側となるように積層一体化した。
【0058】
上記圧電センサにおいて、第1複合シートのアルミニウム箔がシグナル電極、第2複合シートのアルミニウム箔がグランド電極、第3複合シートのアルミニウム箔が遮蔽電極となる。
【0059】
第2複合シート及び第3複合シートのそれぞれには、これらの厚み方向に互いに重なり合うように一部が切り欠かかれて切欠き部が形成されており、第2複合シートの切欠き部から第1複合シートが外部に露出した状態に構成されている。アクリル系粘着剤の厚みは全て35μmとする。第1複合シートには、一部が切り欠かかれて切欠き部が形成されている。
【0060】
シグナル電極に第2複合シート及び第3複合シートの切欠き部においてピアス端子を打ち込んだ。第1グランド電極及び第2グランド電極に第一複合シートの切欠き部においてピアス端子を打ち込み、第1グランド電極と第2グランド電極とを電気的に接続した。シグナル電極のピアス端子と、第1、第2グランド電極のピアス端子をそれぞれ、導電線を通じてオシロスコープに電気的に接続した。第1、第2グランド電極と、シグナル電極とは、電気的に絶縁状態となっていた。オシロスコープとして、GW INSTEK社から商品名「GDS-1062A」にて市販されている装置を用いた。
【0061】
圧電センサの表面の中央部に加振機を25.5kPaの保持力で固定した。圧電センサの雰囲気温度を25℃に保持した後、圧電センサに加振機を用いて30Hz、3.82kPaの周期振動を5分間に亘って与え、この周期振動によって発生する電圧をオシロスコープによって測定し、最大の発生電圧を圧電性とした。なお、加振機としては、Piezotest社から商品名「PM300」にて市販されている加振機を用いた。
【0062】
上記圧電シート以外に9枚の圧電シートを用意した。圧電シートごとに試験シートをそれぞれ任意の部分から切り出した。各試験シートを用いて圧電性を測定した。得られた10個の圧電性のデータに基づいて相加平均値及び変動係数を算出した。
【0063】