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特許7198204コンベヤ上の異物を検出するためのマルチエネルギーX線吸収イメージング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】コンベヤ上の異物を検出するためのマルチエネルギーX線吸収イメージング
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20221221BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20221221BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N23/18
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019528503
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 US2017058025
(87)【国際公開番号】W WO2018102051
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】62/427,423
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508181663
【氏名又は名称】レイトラム,エル.エル.シー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マリー,ウィリアム エス.
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0019797(US,A1)
【文献】特開2011-024773(JP,A)
【文献】特表2010-537163(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171186(WO,A1)
【文献】特開昭59-230146(JP,A)
【文献】特開平09-145343(JP,A)
【文献】特開平10-246708(JP,A)
【文献】特開平09-224632(JP,A)
【文献】特表2012-515916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01N 21/84-G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤベルト上の材料の厚さを計測及び決定するための装置であって、
製品を搬送方向に搬送するコンベヤベルトと、
線源スペクトルにわたって分布する線源強度を有するX線ビームをX線経路に沿って前記コンベヤベルトの厚さを通過するように案内するX線源と、
前記X線源から見て前記コンベヤベルトの反対側に、前記X線が前記コンベヤベルト、前記搬送製品、および前記コンベヤベルトの幅方向の別個のピクセル位置で前記コンベヤベルト上を前記搬送製品と共に進む任意の異物を通過したときに減衰されるX線を受光する1つまたは複数のピクセルを含むX線分光検出器であって、前記1つまたは複数のピクセルは、それぞれ、前記コンベヤベルトと前記1つまたは複数のピクセルとの間にコリメータを有しており、前記コリメータは、散乱を除去し各々のピクセル位置において対応する視野を画定し、前記対応する視野は、前記コンベヤベルトの搬送面と交差し、前記1つまたは複数のピクセルは、各々のピクセル位置における対応視野内の前記減衰X線の受光スペクトルにわたって分布する受光強度を決定する、X線分光検出器と、
各々のピクセル位置における前記受光スペクトルを前記線源スペクトルに関連付けて、前記X線の測定減衰を決定し、前記測定減衰を、前記製品を構成する材料、前記コンベヤベルトを構成する材料、および可能性のある汚染物質として疑われる異物を構成する材料を含む事前選択の構成材料のセットの減衰係数を含むX線減衰モデルに関連付けて、各々のピクセル位置における前記視野内のこれらの材料の厚さを決定する、処理システムと
を備える、前記装置。
【請求項2】
前記X線減衰モデルは、ランベルト・ベールの法則に従う、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各々のピクセル位置における前記受光スペクトルは、連続エネルギービンでビニングされ、前記処理システムは、事前選択エネルギービンにおける前記受光強度の前記線源強度に対する比を前記選択エネルギービンの前記X線減衰モデルに関連付けて前記事前選択の構成材料の各々の前記X線経路に沿った厚さを決定する連立減衰方程式を規定する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記事前選択のエネルギービンは、エネルギービンの一部または全てを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記事前選択のエネルギービン数は、前記事前選択の構成材料の数以上である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
全ての前記エネルギービンは、同じ幅である、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記事前選択のエネルギービンは、高エネルギーレベルにおけるエネルギービンよりも低エネルギーレベルにおけるエネルギービンの方が広い、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記処理システムは、前記連立方程式において非線形回帰を行って、前記事前選択の構成材料の各々の前記X線経路に沿った厚さの残差を最小化することによって、前記選択エネルギービンの各々における前記受光強度の前記線源強度に対する比への前記X線減衰モデルの最良適合を決定する、請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記連立方程式は、前記事前選択のエネルギービンの各々に対して1つの方程式
を含み、Nは前記X線減衰モデルにおける前記事前選択の構成材料の数であり、μは前記エネルギービンに対するi番目の事前選択の構成材料の減衰係数であり、dは前記i番目の事前選択の構成材料の前記X線経路に沿った厚さであり、Iは前記エネルギービンにおける前記受光X線強度であり、Iは前記エネルギービンにおける前記線源X線強度である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記X線分光検出器は、単一ピクセルまたは複数の離間ピクセルと、各々のピクセル位置において前記X線を受光するために前記コンベヤベルトの幅方向に前記単一ピクセルまたは前記複数の離間ピクセルを駆動するドライバとを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記処理システムは、各々の前記ピクセル位置に対する前記X線経路に沿った前記コンベヤベルトの構成材料の厚さを決定し、その厚さを前記X線経路に沿った前記コンベヤアベルトの所定の厚さと比較して、前記コンベヤベルトの前記構成材料の決定された厚さが前記コンベヤベルトの前記所定の厚さより厚い場合に、汚染コンベヤベルト材料片の存在を示す、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記処理システムは、前記コンベヤベルト上の汚染物質の存在を決定したときに、アラームを鳴らし、アラーム状態を表示し、アラームメッセージを送信し、またはダイバータに迂回信号を出して前記コンベヤベルトから製品の一部を迂回させる、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記処理システムは、前記X線源にパルスを発生させ、前記X線分光検出器は、サンプル間の前記X線分光検出器を通過する前記コンベヤベルトの長さが前記汚染物質の所定の検出閾値以下になるように十分に高いレートで同時にサンプリングする、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
連続ピクセル位置における前記対応視野は、前記汚染物質の所定の検出閾値以下の距離だけ離間される、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数のピクセルの少なくとも1つの前記対応視野は、製品がない状態で維持された前記コンベヤベルトの長手レーン内の位置に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
コンベヤベルト上の材料の厚さを計測及び決定する方法であって、
搬送面上の製品を搬送方向に搬送するステップと、
X線源スペクトルにわたって分布する線源強度を有する線源X線を前記搬送面の幅方向のラインに沿って前記搬送面および前記製品を通過するようにX線経路に沿って案内するステップと、
1つまたは複数のピクセルを含むX線分光検出器を使用して、前記ラインに沿った複数のピクセル位置において、前記搬送面を通過するときに減衰された前記X線を検出するステップと、
前記搬送面と前記ピクセルのうち関連するピクセルとの間に配置された個々のコリメータを使用して、各ピクセル位置でX線をコリメートし、散乱を排除し前記搬送面と交差する視野を画定するステップと、
各々のピクセル位置において隣接するエネルギービンで前記減衰X線の強度を測定して、各々のピクセル位置における受光X線スペクトルを生成するステップと、
前記受光X線スペクトルを前記線源X線スペクトルに関連付けて、測定されたX線減衰を決定するステップと、
前記測定減衰を、前記製品を構成する材料、前記コンベヤベルトを構成する材料、および可能性のある汚染物質として疑われる異物を構成する材料を含む事前選択の構成材料のセットの減衰係数を含むX線減衰モデルに関連付けて、前記ライン内の各々のピクセルの視野内のこれらの材料の厚さを決定するステップと
を含む、前記方法。
【請求項17】
個々の事前選択エネルギービンにおける前記受光強度の前記線源強度に対する比を前記事前選択エネルギービンの各々の前記X線減衰モデルに関連付けて前記構成材料の各々の前記X線経路に沿った厚さを決定する減衰モデルの連立減衰方程式を規定するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記連立方程式において非線形回帰を行って、前記事前選択の構成材料の各々の前記X線経路に沿った厚さの残差を最小化することによって、各々の事前選択の選択エネルギービンにおける前記受光強度の前記線源強度に対する比への前記X線減衰モデルの最良適合を決定するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
汚染物質の存在を決定したときに、アラームを鳴らすステップ、アラーム状態を表示するステップ、アラームメッセージを送信するステップ、またはダイバータに迂回信号を出して前記搬送面から製品の一部を迂回させるステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
様々な材料の減衰係数のライブラリから前記事前選択の構成材料のセットの前記減衰係数を選択するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
連続ラインの各々のピクセル位置における前記受光スペクトルから製品を載せている前記コンベヤベルトの2次元画像を作成するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
製品が載せられていない前記コンベヤベルトを最初に走行させるステップ、連続ラインの各々のピクセル位置における前記受光スペクトルから製品が載せられていない前記コンベヤベルトの2次元画像として空のベルトパターンを作成するステップ、および製品を載せている前記コンベヤベルトの前記2次元画像から前記空のベルトパターンを減算して前記コンベヤベルトの一部を形成しない事前選択の材料の存在を決定するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、X線システムに関し、特に、コンベヤベルト上を連続的に進む製品の吸収イメージングのための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉、鶏肉、および他の食品産業で使用されているモジュール式プラスチック製コンベヤベルトの損傷は、搬送されている製品を汚染するプラスチック破片を発生させる。食品加工業者は、ベルトの修理または交換のコストおよび製造の中断に加えて、さらに破片による搬送食品の汚染の可能性に対処しなければならない。
【発明の概要】
【0003】
コンベヤベルト上の材料を検出するための装置の1つのバージョンは、製品を搬送方向に搬送するコンベヤベルトと、X線源と、X線分光検出器とを備える。X線源は、線源スペクトルにわたって分布する線源強度を有するX線ビームをX線経路に沿ってコンベヤベルトの厚さを通過するように案内する。X線分光検出器は、X線源から見てコンベヤベルトの反対側に、X線がコンベヤベルト、搬送製品、およびコンベヤベルトの幅方向の別個のピクセル位置で搬送製品と共にコンベヤベルト上を進む任意の異物を通過したときに減衰されたX線を受光する1つまたは複数のピクセルを含む。1つまたは複数のピクセルは、各々のピクセル位置において対応する視野を画定し、各々のピクセル位置における対応視野の減衰X線の受光スペクトルにわたって分布する受光強度を決定する。処理システムは、各々のピクセル位置における受光スペクトルを線源スペクトルに関連付けて、X線の測定減衰を決定し、測定減衰を事前選択の構成材料(製品を構成する材料、コンベヤベルトを構成する材料、および可能性のある汚染物質として疑われる異物を構成する材料を含む)のセットの減衰係数を含むX線減衰モデルに関連付けて、各々のピクセル位置における視野内のこれらの材料の厚さを決定する。
【0004】
コンベヤベルト上の材料を検出するための方法の1つのバージョンは、
(a)搬送面上の製品を搬送方向に搬送するステップと、(b)線源X線スペクトルにわたって分布する線源強度を有する線源X線を搬送面の幅方向のラインに沿って搬送面および製品を通過するようにX線経路に沿って案内するステップと、(c)1つまたは複数のピクセルを含むX線分光検出器を使用して、ラインに沿った複数のピクセル位置において搬送面を通過するときに減衰されたX線を検出するステップと、(d)各々のピクセル位置において隣接するエネルギービンで減衰X線の強度を測定して各々のピクセル位置における受光X線スペクトルを生成するステップと、(e)受光X線スペクトルを線源X線スペクトルに関連付けて、測定されたX線減衰を決定するステップと、(f)測定されたX線減衰を、事前選択の構成材料(製品を構成する材料、コンベヤベルトを構成する材料、および可能性のある汚染物質として疑われる異物を構成する材料を含む)のセットの減衰係数を含むX線減衰モデルに関連付けて、ライン内の各々のピクセルの視野内のこれらの材料の厚さを決定するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明の特徴を具現化するX線撮像装置の概略図である。
図2】X線分光検出器の視野を示す図1の撮像装置の一部の拡大図である。
図3】X線エネルギーレベルの関数として例示的な材料のX線減衰係数を示した両対数グラフである。
図4】X線源によって放射されたX線の例示的なエネルギースペクトルおよび減衰後の図3のX線分光検出器によって受光されたX線のグラフ表示である。
図5】様々な通知オプションを示す図1のようなX線撮像システム用の処理システムの概略図である。
図6】X線エネルギーレベルの関数として様々な材料のX線減衰係数を示した片対数グラフである。
図7図1のX線撮像装置によって撮像される構成材料のモデルの設定のフローチャートである。
図8図1のX線撮像装置によって撮像するための例示的なプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の特徴を具現化するX線撮像装置の1つのバージョンが図1に示されている。X線源10は、広域線源スペクトルにわたって分布する線源強度を有するX線光子の制動放射ビーム12を発生させる。X線源は、ファンビームのX線ビームをコンベヤベルト14の幅方向に一列になってコンベヤベルト14を通過するようにX線経路13に沿って案内する。X線源の一例は、タングステンの対陰極を有するX線管である。コンベヤベルトは、 図1のページの外側への搬送方向16に、製品Pと共に前進する。X線12は、搬送製品Pおよびコンベヤベルト14を通過したときに吸収によって減衰される。減衰は、線源から検出器へとX線が通過するときの介在材料の厚さと、コンベヤベルト14ならびに製品Pを構成する様々な材料、およびX線経路13と交差する任意の他の材料の減衰係数とに依存する。さらに、X線経路13に沿ったX線の球面拡散も、逆二乗の法則に従ってX線強度を減衰させるが、この減衰は、X線源10と検出器18との間の固定距離によって設定され、そのように先験的に周知であり、説明がつく。減衰されたX線は、X線源10から見てコンベヤベルト14の反対側にあるX線分光検出器18によって受光される。
【0007】
X線分光検出器18は、ベルト14の幅方向に延在する個々の固定X線検出ピクセル20の線形アレイを備える。一実施例として、ピクセル20は、テルル化カドミウム(CdTe)半導体検出器であり得る。各々のピクセル20は、ベルト幅14方向の各々のピクセル位置において、1keVビン幅のような隣接する固定幅のビンにビニングされた受光エネルギースペクトルを生成する。したがって、ピクセル20のアレイは、受光X線スペクトルにわたって分布する受光X線強度を測定するラインスキャンを表す。受光X線スペクトルは、2次元(2D)撮像層値、X線源コントローラ、およびユーザ・インターフェース・コントローラのようなソフトウェアプログラムを実行するプログラム可能なコンピュータを含む処理システム22に送信される。X線源コントローラは、X線分光検出器18のサンプリングと同時にX線源10にパルスを発生させる。図1に破線で示されている代替のX線検出器18’は、単一X線検出ピクセル20’を備え、該ピクセル20’は、ピクセル20’内の磁性フォーサと共に線形同期モータを形成するステータ21のようなドライバによって矢印19で示されているようにベルト14の幅方向に迅速に前進される。ピクセル20’は、別個のピクセル位置における受光X線の強度をサンプリングするときにベルト14の幅方向に迅速に前進し、固定アレイX線検出器18内のピクセル20によって画定される位置のようにベルト幅方向のこれらのピクセル位置におけるエネルギースペクトルを測定する。別の代替形態として、ベルトの幅方向に等間隔で離間した複数のピクセルのアレイが、ベルト14の幅全体ではなく等間隔だけドライバによって前進されて、ピクセル位置におけるスペクトルを測定し得る。処理システム22は、ピクセルスペクトルを受け取り、可動ピクセル検出器内のピクセルドライバ21の動作を制御する。
【0008】
図2に示されているように、各々のピクセル20は、搬送面27でコンベヤベルト14と交差する各々のピクセル位置における視野26を画定するコリメータ24を有し、散乱を除去する。ピクセル20の出力信号は、信号線28を介して、バッファおよびアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を含む信号調整回路30に送信される。受光スペクトルを表すデジタル信号は、デジタル回線32を介して、ADCから処理システム22に送信される。横方向に連続する視野26間の距離34は、所定の検出閾値、すなわち、検出すべき最小の異物の寸法以下である。
【0009】
いずれのピクセル位置における受光X線スペクトルも、ランベルト・ベールの法則に基づくX線減衰モデルに適合され、このX線減衰モデルは、ピクセル位置における各々のエネルギービンの受光X線強度Iを線源X線強度Iと指数関数的に減衰する項との積:
としてモデル化したものである。ここで、IおよびIは、エネルギービン中央値Eの関数であり、
は、減衰モデル内に含まれるi番目の事前選択の構成材料による吸収に起因するX線経路に沿った減衰である。図4は、タングステンX線管の線源X線スペクトルおよび減衰した受光線スペクトルの一例を示している。
【0010】
図3に示されているように、放射線は、(1)光電効果36、(2)コンプトン散乱38、(3)干渉性散乱40の3つの形態で物質と相互作用する。例示的な材料に対してこれらの効果の各々によって生じた減衰は、X線エネルギーEの関数である。全減衰係数μ(E)は、エネルギーEの関数としての3つの効果による減衰の合計である。図示されているように、μはこの例示的な材料に対するエネルギーEの増加に伴って単調に減少する。図6は、食肉(μM)、骨(μB)、アセタール(μA)、鋼鉄(μF)、およびガラス(μG)の相対減衰係数を示している。図6に明確に示されているように、ガラスはエネルギーの増加に伴って単調に減少しない減衰係数を有する。減衰係数μ(E)(より厳密には、減衰関数)は、処理システムのメモリに表形式で記憶される、または事前選択された各々の当該構成材料、すなわち、存在することが予測される材料(コンベヤベルト材料、搬送されている食肉もしくは他の食品、および検出すべき任意の他の異物(例えば、汚染物質)を構成する材料に対してアルゴリズム的に計算される。
【0011】
減衰モデルは、行列式で求められる連立方程式で表される。
ここで、nは減衰モデルで使用されるエネルギービン数であり、Nは減衰モデルの事前選択された構成材料の数であり、μ(E)はエネルギービンjにおける事前選択の構成材料iの減衰係数であり、dは事前選択の構成材料iの厚さである。全てのμ(E)減衰係数が既知であり、処理システムのメモリに記憶される、または処理システムによってアルゴリズム的に計算される。同様に、線源強度I(E)は、各々のエネルギービンEに対して既知である。各々のエネルギービンに対する受光強度I(E)が、サンプル時間ごとにX線分光検出器によって測定される。受光強度の線源強度に対する比が、測定減衰である。処理システムは、回帰によって連立方程式を解き、事前選択の構成材料の各々の厚さdを決定する。処理システムは、最小二乗回帰のような非線形回帰を使用する。レーベンバーグ・マーカート(Levenberg-Marquardt)アルゴリズムは、このような回帰の一例である。回帰は、材料厚さの項dの残差を最小化することによって、データの減衰モデルへの最良適合を見つける。得られた項dは、各々のピクセルに対する事前選択の構成材料の各々の厚さを規定し、他のサンプルに対して計算された厚さと共に、コンベヤベルトおよびコンベヤベルト上の製品ならびに任意の他の事前選択の構成材料の画像を表現する。
【0012】
例えば、図1の肉塊を汚染するコンベヤベルト14の破片42を検出するために、事前選択の材料は、(a)アセタール(コンベヤベルト材料)、(b)筋肉(製品成分)、および(c)骨B(製品成分)であり得る。各々のピクセル位置に対する連立方程式は、3つの材料(N=3)の各々の既知の減衰係数を含む。3つの独立した方程式は3つの未知数(3つの材料の各々の厚さ)を求めるのに十分であるので、3つの厚さを見つけるのに、3つの選択されたエネルギービンのみの方程式を解くことが代数的に必要であるだけである。しかし、3つ以上のビンに対する減衰方程式において回帰を行うことにより、大抵の場合、よりロバストな解が得られる。3つの事前選択の構成材料の厚さが計算されると、アセタール材料の計算された厚さがコンベヤベルトの既知の厚さと比較される。計算された厚さがベルト14の厚さより厚い場合、アセタールのベルト材料の汚染破片42がピクセルの視野に存在することが分かる。ガラス、木、および鋼鉄のような別の汚染の可能性のある材料が存在する可能性があると予想される場合、それらの厚さを検出するために減衰モデルにそれらのX線減衰係数μが追加され得る。
【0013】
図5に示されているように、処理システム22が汚染物質の存在を判断すると、処理システム22のユーザ・インターフェース・コントローラは、アラーム44を鳴らし、モニタ46上にアラーム状態を表示し、有線もしくは無線ネットワーク48経由で他の場所にアラームメッセージを送信し、またはダイバータ52に迂回信号50を出して、コンベヤベルト14から製品の一部をリジェクトコンベヤ54へと迂回させ、コンベヤを停止させる、または汚染された製品がコンベヤラインから除去されるのに必要任意の他の措置を講じ得る。
【0014】
図2を参照しながら上述したように、連続視野26間の間隔34は、コンベヤベルト14の幅方向の検出閾値を設定する。搬送方向の検出閾値は、ベルト速度と検出器サンプリング間隔との積によって設定される。サンプリングレートは、サンプル間の検出器ラインを通過するコンベヤベルトの長さが検出閾値、すなわち、検出すべき最小の汚染物質の搬送方向の寸法を超えないように十分に高いレートでなければならない。処理システムは、隣接するピクセル位置および連続サンプルの製品厚さの結果を分析することによって、汚染物質および製品のサイズを決定し得る。処理システムは、事前選択の構成材料の密度の表を使用して、重量を推定し得る。X線の減衰は、X線経路内の材料の各々の正味の厚さによって設定されるので、1つまたは複数の材料によるX線散乱が大きすぎる場合を除き、経路に沿った材料の順序は、通常は問題ではない。
【0015】
図7および図8は、図1のX線撮像システムによって材料を検出する1つの方法を示すフローチャートである。図8は、プログラムメモリに記憶され、減衰モデルを構成する連立方程式を作成するために処理システムによって実行される例示的なプロセスのフローチャートである。最初に、ステップ60において、スクリーニングすべき構成材料を選択することによって方程式が設定される。選択は、1つまたは複数の材料の固定事前選択であり得る、またはユーザインターフェース58のユーザ・インターフェース・デバイス56(図5)を介してオペレータによって行われ得る。選択材料の減衰係数μ(E)は、処理システムのメモリに記憶されている様々な材料の減衰係数のライブラリ62からインポートされる。または、選択材料の減衰係数μ(E)は、ユーザ入力デバイス56から手動で入力される。処理システムは、その後、モデルを構築するために、ステップ64において選択材料の減衰係数μ(E)を使用して連立方程式を作成する。
【0016】
図8のフローチャートは、コンベヤベルト上の疑いのある異物を検出するために処理システムによって実行される1つのバージョンの方法を示す。第1のプロセス(初期設定66)は、空のコンベヤベルトまたは製品が載せられていないコンベヤベルトセグメントの2次元画像を構成する。ほとんどのモジュール式コンベヤベルトのように規則的に反復するベルトパターンのベルトの場合、単一のベルト列の2次元画像はベルト全体を画定するのに十分であり得る。処理システムは、最初に、ステップ68において、X線源にパルスを発生させ、次に、ステップ70において、各々のピクセル位置に対する受光エネルギースペクトルを記録する。空のベルトに対するX線検出器の応答は、ステップ72において全てのスペクトルが等しくなるように、ベルトの幅方向のビン間のスペクトルを一致させるのに使用される補正項を計算するのに使用される。全ての測定スペクトルを一致するように調整するのに使用するために処理システムのメモリに補正項が記憶される74。初期設定プロセスは、その後、ステップ76においてコンベヤベルトを一定速度で駆動するようにベルトモータに信号を送る。ステップ78においてX線源コントローラによりX線源がパルスを発生し、ステップ80において、ラインスキャンを生成するために各々のピクセル位置における受光X線スペクトルが測定されて記録される。X線源78にパルスを発生させるプロセス78およびスペクトルを記録するプロセス80は、ステップ82で示されるように反復ベルトパターンが検出されるまで連続ラインスキャンを構築するために固定パルスおよびサンプリングレートで反復される。ベルトが、例えば、均一な厚さの平ベルトであり、非反復パターン構成のベルトである場合、均一パターンが使用され得る。空の反復ベルトパターンを表すラインスキャンスペクトルのフレームは、ステップ84でパターンの2次元画像を構成するのに使用される。ベルトパターンは、ベルト上の異物の検出での使用88のために、ステップ86において記憶される。初期設定プロセス66は、X線検出器を再調整するために、また摩耗もしくはモジュール交換によるベルトの変化を考慮に入れるために周期的に実行され得る。
【0017】
X線検出器が調整され、ベルトパターンが保存されると、処理システムは、製品が載せられて走行しているコンベヤベルト上で取得プロセス90を実行する。プロセスは、最初に、ステップ92において、コンベヤベルトを始動させ、ステップ94において、X線源にパルスを発生させる。ステップ96において、各々のピクセル位置におけるエネルギースペクトルが記録される。ステップ98において、補正項がエネルギースペクトルに適用された74後のラインスキャンのために、選択された構成材料の減衰モデルを表す連立方程式が解かれ、ステップ100において、連続するライン画像から成るフレームの2次元画像が構成される。ステップ102において、2次元画像が記憶される。記憶された2次元画像104は、表示するのに利用可能である。初期設定プロセス66によって空のベルトパターンが記憶された時点からベルト速度が変更された場合、載荷状態のベルトのフレーム画像は、記憶されているベルトパターンのフレーム長と一致するように、またはその逆になるように調整される。その後、載荷状態のベルトフレームは、空のベルトパターンと同期される、または同調される。ステップ106でそのことが行われた後、ステップ108において、ベルトパターンフレームが載荷状態のベルトフレームから減算される。得られた差は、フレーム内の各々のピクセル位置における事前選択の構成材料の各々の厚さとなる。厚さのいずれかがアラーム閾値を超えた場合、ステップ110において、異物検出(FOD)アラームが鳴らされる、または他の措置が講じられる。ステップ112においてベルトが停止されれば、取得プロセスは終了する。ベルトが走行を継続する場合、プロセスは、ステップ94において再びX線源にパルスを発生させることによって、規則的な反復方法で再開する。
【0018】
処理システムの初期設定プロセス66および取得プロセス90は、適切なタイミングを実現するためのプログラムループおよび遅延を有する個々の逐次プロセスとして実行するように実装され得るが、プロセスは、代替形態では、割り込み処理ルーチンおよびタスクマネージャルーチンを使用したリアルタイムのマルチタスク処理のプログラミングとより整合性のある形で実装され得る。単なる一例として、取得プロセスの場合に、X線源の周期的パルス発生94および受光エネルギースペクトルの記録96は、事前選択のサンプリングレートで実行するようにスケジューリングされた割り込み処理ルーチン(ISR)として実装され得る。全てのスペクトルが記録された後、ISRは、次に、タスクマネージャによってスケジューリングされた2次元撮像装置のタスクを指示して連立方程式を解き98、2次元画像を構成し100、2次元画像を記憶して102、ユーザ・インターフェース・コントローラのタスクによって表示され得る。また、2次元画像撮像装置のタスクは、画像をベルト速度と同期させ106、記憶されている空のベルトパターンを計算画像から減算し108、FODアラームを発生させる110。しかし、これらのステップは、代替形態では、2次元画像の構成時に実行する別個のタスクビッドで実行され得る。
【0019】
減衰モデルは固定幅のエネルギービンを使用するものとして説明されているが、エネルギービンを組み合わせて、ピクセルによって自動的に生成されたエネルギービンよりも効率的に広いエネルギービンを形成することが可能である。X線の減衰は低いエネルギーレベルにおいてより大きいので、減衰モデルで使用されるより広いエネルギービンを形成するために、低いエネルギーレベルのピクセルのエネルギービンが組み合わせられ得る。より高いエネルギーでは、連立方程式で使用されるエネルギービンは低いエネルギーでのエネルギービンと同じ幅である必要はない。しかし、減衰曲線は低エネルギーでははるかに急勾配であるので、ビンの幅が広いほど、幅の広い低エネルギービンに割り当てられる減衰値の推定値の誤差が大きくなる。減衰モデルの回帰ソルーションの安定性を維持するために、ビン幅は、統計による誤差項(すなわち、エネルギービンの計数率)と曲線の急勾配による減衰係数の推定誤差の大きさがほぼ等しくなるように最適化される。
【0020】
X線撮像装置は、主に汚染物質、特にコンベヤベルトの破片の検出に関して説明されているが、処理システムがベルトの伸びもしくはベルト速度を測定するまたはベルト上の汚染物質の位置を決定するための位置参照として使用し得る、ベルトの肥厚部分のようなベルトの特徴を検出するのにも使用され得る。ベルトの長手方向レーンが製品のない状態で維持されていれば、レーン下のピクセルは、X線源の強度およびスペクトルをリアルタイムで測定するのに使用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8