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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221221BHJP
   G01S 13/86 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01S13/86
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020011990
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021117848
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】横井 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】野木 一徳
(72)【発明者】
【氏名】星川 佑磨
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/002985(WO,A1)
【文献】特開2017-059095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G01S 13/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出精度が相違する複数の検出センサ(21,22)によって自車の周囲の物体を物標として検出して得られる複数の物標情報を結合することにより、前記物体を検出する物体検出装置(10)であって、
前記複数の検出センサのうち、より分離能の高い検出センサから取得された物標情報に基づいて、前記物標から基準物標を選択し、選択された前記基準物標を基準とする所定の群衆範囲内に検出された前記基準物標以外の前記物標を群衆物標と判定する群衆判定部(12)と、
前記基準物標と前記群衆物標とが検出された領域である群衆判定領域を含むように探索範囲を設定する範囲設定部(13)と、
前記探索範囲について前記物標情報を結合して前記探索範囲内の物標が示す物体を判定する物体判定部(14)と、を備える物体検出装置。
【請求項2】
前記群衆判定部は、前記自車の将来の移動軌跡内に検出された前記自車に最も近い物標を前記基準物標として選択する請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記物体判定部は、前記群衆判定領域に検出された物標のうち、前記自車と衝突する危険性が最も高い物標を代表物標に設定し、前記代表物標を前記群衆判定領域内の前記代表物標以外の物標に優先させて前記物標情報を結合する請求項1または2に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の周囲の物体を検出する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車の周囲の物体を検出する物体検出装置は、自車の衝突回避制御を実行する衝突回避システム等に適用される。物体検出に際して、各物体について異種の検出センサからそれぞれ取得された複数の物標情報の同一性を判定して結合(フュージョン)する物体検出装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の技術では、レーダセンサから取得されたレーダ物標とカメラセンサから取得された画像物標とが同一の物体を示す物標であると判定した場合に、この判定の信頼度や物体の種類に応じて衝突軽減制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-122873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検出対象となる物体が複数存在し、互いの間隔が狭く密な状態においては、分離能が低い検出センサにより取得された物標情報は、個々の物体を十分に分離できない状態で得られた、不安定な物標情報となり得る。分解能が低い検出センサにより取得される物標情報が不安定化すると、分解能が高い検出センサにより取得された物標情報と結合する処理も不安定化し、物体を判定する精度が低下する。例えば、分離能が低い検出センサにより取得された物標情報が、隣接する異なる物標の間で十分に分離できずに不安定化すると、分離能が高い検出センサにより取得された物標情報において結合する対象となる物標が切り替わり、物体を判定する精度が低くなる。
【0005】
上記を鑑み、本発明は、検出精度が相違する複数の検出センサを用いて物体の物標情報を取得して結合することにより物体を検出する物体検出装置の精度を確保する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、検出精度が相違する複数の検出センサによって自車の周囲の物体を物標として検出して得られる複数の物標情報を結合することにより、前記物体を検出する物体検出装置を提供する。この物体検出装置は、前記物標から選択された基準物標を基準とする所定の群衆範囲内に検出された前記基準物標以外の前記物標を群衆物標と判定する群衆判定部と、前記基準物標と前記群衆物標とが検出された領域である群衆判定領域を含むように探索範囲を設定する範囲設定部と、前記探索範囲について前記物標情報を結合して前記探索範囲内の物標が示す物体を判定する物体判定部と、を備える。
【0007】
上記の物体検出装置によれば、群衆判定部は、検出センサにより検出された物標から選択された基準物標を基準として設定された所定の群衆範囲内に、基準物標以外の物体が検出されている場合に、この基準物標以外の物標を群衆物標と判定する。そして、範囲設定部は、基準物標と群衆物標とが検出された領域である群衆判定領域を含むように探索範囲を設定する。このため、物体判定部において物標情報を結合するに際して、群衆判定領域を含む探索範囲について物標情報を結合することができる。複数の物標が検出された群衆判定領域を含むように設定された探索範囲について物標情報が結合されるため、分離能が低い検出センサから取得される個々の物体についての物標情報が不安定化しても、群衆判定領域内に収まって探索範囲がずれることがなく、物体を判定する精度が低くなることを抑制できる。その結果、検出精度が相違する複数の検出センサを用いて物体の物標情報を取得して結合することにより物体を検出する物体検出装置の精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る物体検出装置を備える走行支援装置のブロック線図。
図2】実施形態に係る探索範囲について説明する図。
図3】ECUが実行する物体検出処理および衝突回避処理を示すフローチャート。
図4図3に示す群衆判定処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、走行支援装置1は、ECU10と、センサ類20と、被制御対象である安全装置30とを備えている。走行支援装置1は、プリクラッシュセーフティシステム(PCS)であり、例えば、乗用車等の車両に搭載される。
【0010】
センサ類20としては、例えば、カメラセンサ21、レーダセンサ22、ヨーレートセンサ23、車速センサ24等が備えられている。
【0011】
カメラセンサ21は、CCDカメラ、単眼カメラ、ステレオカメラ等を用いて構成され、自車のフロントガラスの上端付近等に設置される。カメラセンサ21は、所定時間毎に自車の前方に向かって所定範囲で広がる領域を撮像して撮影画像を取得する。そして、撮影画像を画像処理することで、自車の前方の物体の形状(大きさ)や物体までの距離等を物標情報として取得する。また、カメラセンサ21は、撮影画像に対して、テンプレートマッチング等の周知の画像処理を行うことにより、撮影画角内に存在する所定の物体の種類(車両、歩行者、路上障害物等)についても、物標情報として取得する。本実施形態では、各物体の種類を特定するためのテンプレートとして、物体ごとの特徴を示す画像パターンである複数の辞書が記憶されている。辞書としては、物体全体の特徴をパターン化した全身辞書と、物体の部分的な特徴をパターン化した半身辞書とを記憶している。
【0012】
レーダセンサ22は、指向性のある電磁波を物体に対して発射し、その反射波を受信することによって、物体の形状や大きさについても検出する。より具体的には、レーダセンサ22は、ミリ波やレーザ等の指向性のある電磁波を利用して自車両前方の物体を検出するものであり、自車の前部においてその光軸が車両前方を向くように取り付けられている。レーダセンサ22は、所定時間ごとに自車の前方に向かって所定範囲で広がる領域をレーダ信号で走査するとともに、車外の物体の表面で反射された電磁波を受信することで物体との距離、物体との相対速度等を物標情報として取得する。
【0013】
カメラセンサ21、レーダセンサ22は、自車の周囲の物体を検出する検出センサの一例である。本実施形態では、分解能が比較的高い検出センサとしてカメラセンサ21を用い、分解能が比較的低い検出センサとしてレーダセンサ22を用いる場合を例示して説明するが、物体を検出する検出センサとして利用可能なセンサの種類は、これに限定されない。
【0014】
ヨーレートセンサ23は、車両の旋回角速度を検出する周知のヨーレートセンサとして構成される。車速センサ24は、車輪の回転速度、つまりは車両の走行速度を検出する。これらのセンサ類20による検出結果は、ECU10によって取得される。
【0015】
ECU10は、物標情報取得部11と、群衆判定部12と、範囲設定部13と、物体判定部14と、衝突回避部15とを含む。ECU10は、CPU,ROM,RAM等を含む電子制御ユニットであり、CPUは、予め格納されたプログラムを実行することによって、上記の各部の機能を実現する。ECU10は、センサ類20からの入力信号に基づいて、物標情報取得部11と、群衆判定部12と、範囲設定部13と、物体判定部14との機能を実現することによって、物体検出装置としての機能を実現することができる。また、ECU10は、さらに衝突回避部15を備えることにより、物体検出の結果に基づいて車両の衝突回避装置としての機能を実現することもできる。
【0016】
物標情報取得部11は、カメラセンサ21およびレーダセンサ22により自車の周囲の物体を物標として検出して得られる物標情報をそれぞれ取得する。より具体的には、自車の周囲の各物体は、カメラセンサ21により第1物標として検出され、レーダセンサ22によって第2物標として検出される。そして、物標情報取得部11は、自車の周囲の各物体について、カメラセンサ21から第1物標の情報である第1物標情報を取得するとともに、レーダセンサ22から第2物標の情報である第2物標情報を取得する。例えば、図2に示すように、カメラセンサ21およびレーダセンサ22によって、自車40の走行方向である前方に存在する歩行者を示す歩行者物標50~52,61,62が検出された場合に、物標情報取得部11は、カメラセンサ21とレーダセンサ22の双方から、歩行者物標50~52,61,62のそれぞれについて第1物標情報および第2物標情報を取得する。
【0017】
群衆判定部12は、検出された物標から基準物標を選択する。群衆判定部12は、さらに、基準物標を基準として所定の範囲に群衆範囲を設定し、群衆範囲内に検出された他の物標(基準物標に設定されていない物標)を群衆物標と判定する。群衆判定部12は、複数の検出センサのうち、より分離能の高い検出センサから取得された物標情報に基づいて、基準物標および群衆物標を設定するように構成されていることが好ましい。本実施形態では、カメラセンサ21から取得する第1物標情報に基づいて、基準物標および群衆物標を設定するように構成されている。
【0018】
また、群衆判定部12は、自車の将来の移動軌跡である自車軌跡内に検出された物標のうち、現在の自車に最も近い物標を基準物標に設定するように構成されていることが好ましい。現在の自車に最も近い物標は、自車との衝突が高い物体を示す物標であると推定できるため、現在の自車に最も近い物標を基準物標として群衆判定を行うことで、自車との衝突可能性が高い物標が検出された領域に群衆判定領域を設定できる。
【0019】
例えば、図2に示すように、前方(Y軸の正方向)に直進する自車40の将来の移動軌跡である自車軌跡は、自車40の左端および右端よりも左右方向に所定距離ずつ拡張された自車軌跡Lとして算出できる。自車軌跡Lの左端L1は、自車40の左端よりも所定距離だけ左側に位置しており、右端L2は、自車40の左端よりも所定距離だけ左側に位置している。自車40の周囲の物体を示す物標として、歩行者物標50~52,61,62が検出された場合には、自車40の自車軌跡L内に検出され自車40に最も近い歩行者物標50を基準物標に設定する。そして、歩行者物標51,52,61,62のうち、基準物標に設定された歩行者物標50から所定の範囲内に検出された物標を、群衆物標に設定する。
【0020】
群衆判定部12は、例えば、基準物標から所定の距離以内の範囲を群衆範囲に設定することができる。より具体的には、例えば、自車40の走行方向である縦方向(図2に示すY軸の正方向または負方向)の距離(縦距離)と、自車40の走行方向に垂直な横方向(図2に示すX軸の正方向または負方向)の距離(横距離)とを用いて、基準物標からの縦距離または横距離が所定の閾値以下である範囲を群衆範囲として設定してもよい。群衆範囲は、基準物標を中心としてその周囲全体(前後左右の全方向)に設定されてもよいし、例えば横方向のみに設定される等、一定の方向に偏って設定されていてもよい。
【0021】
例えば、歩行者物標50が基準物標に設定された場合に、歩行者物標50からの縦距離が所定の横閾値Xt未満かつ縦距離が所定の縦閾値Yt未満である範囲を群衆範囲として設定してもよい。この場合、群衆範囲内に検出された歩行者物標51,52は群衆物標に設定される。歩行者物標52は、自車軌跡L外の物標であるが、群衆範囲内の物標であるため、群衆物標に設定される。その一方で、歩行者物標61は、自車軌跡L内の物標ではあるが、歩行者物標50からの横距離が横閾値Xt以上かつ縦距離が縦閾値Yt以上である位置に検出されており、群衆物標には設定されない。また、歩行者物標62は、自車軌跡L内の物標ではあるが、歩行者物標50からの横距離は横閾値Xt未満であるが、縦距離は縦閾値Yt以上である位置に検出されており、群衆物標には設定されない。
【0022】
範囲設定部13は、基準物標と群衆物標とが検出された領域である群衆判定領域を含むように探索範囲を設定する。群衆判定領域は、基準物標および群衆物標によって構成される群衆判定物標群を包括する領域に設定される。例えば図2においては、歩行者物標50~52が群衆判定物標群を構成し、群衆判定物標群の外周を示す破線内の領域を群衆判定領域Mに設定することができる。探索範囲は、群衆判定領域Mと同等であってもよいし、群衆判定領域Mよりもさらに拡大された領域であってもよい。探索範囲は、群衆判定物標群を包含する一方で、歩行者物標61,62に例示される、群衆物標ではない他の物標を包含しない範囲に設定される。
【0023】
物体判定部14は、探索範囲おいて検出された物標情報を結合して、探索範囲内の物標が示す物体を判定する。より具体的には、物体判定部14は、ECU10は、同一物体について、カメラセンサ21から取得した第1物標情報と、レーダセンサ22から取得した第2物標情報とを結合(フュージョン)することで、物体を検出する。
【0024】
物体判定部14は、群衆判定領域に検出された物標のうちから代表物標を選定し、代表物標を群衆判定領域内の他の物標に優先させて物標情報を結合するように構成されていてもよい。代表物標は、例えば、群衆判定領域に検出された物標のうち、自車と衝突する危険性が高い物体を示す物標を選択するようにしてもよい。より具体的には、例えば、群衆判定領域に検出されている各物標のうち、自車からの横距離が最も短い物標を代表物標に設定するようにしてもよい。自車の実際の走行経路が予測された自車軌跡から横方向にずれた場合や、検出センサの物標情報の横位置がずれた場合においても、自車と衝突する可能性が高い物体を検出できる。なお、図2において代表物標を選定する場合には、群衆判定領域Mに検出されている歩行者物標50~52のうち、自車40から最も近い歩行者物標50を代表物標として選定する。
【0025】
衝突回避部15は、物体判定部14によって判定された物体と自車との位置関係に関するパラメータ値(相対速度、相対距離、横方向の移動量等)が予め設定された基準条件を満たすか否かによって、その物体が自車と衝突する可能性があるか否かを判定する、衝突判定を実行する。
【0026】
衝突回避部15は、さらに、衝突判定の結果に基づいて安全装置30を制御する。これによって、自車と検出された物体との衝突を抑制し、その被害の緩和を図る。安全装置30としては、図1に示すように、警報装置31、ブレーキ装置32が挙げられる。それ以外に、ステアリング、シートベルト等を駆動するアクチュエータ等が安全装置30に含まれていてもよい。
【0027】
衝突回避部15は、例えば、衝突の可能性があると判定された場合に、警報装置31を制御して運転者や対象物である歩行者、自転車等に対して報知を実行し、ブレーキ装置32を制御して自車を減速または停止させる。これによって、衝突回避部15は、自車と、ECU10により検出された自車の周囲の物体との衝突回避を図る。
【0028】
図3に示すフローチャートに基づいて、ECU10によって実行される物体検出処理および衝突回避処理について説明する。図3に示す処理は、予め設定された所定周期毎に繰り返し実行される。
【0029】
図3に示すように、まず、ステップS101において、カメラセンサ21およびレーダセンサ22によって検出された物体について、それぞれ物標情報(第1物標情報および第2物標情報)を取得する。その後、ステップS102に進む。
【0030】
ステップS102では、自車の将来の走行経路の軌跡である自車軌跡を算出する。例えば、図2に示すように、直進する自車40については、左端L1と右端L2によって規定される自車軌跡Lが算出される。その後、ステップS103に進む。
【0031】
ステップS103では、ステップS101において検出された各物標と、ステップS102において算出された自車軌跡Lとの横方向の距離である横オフセットXoを算出する。横オフセットXoは、各物標の縦方向位置における各物標と自車軌跡Lとの距離として算出される。その後、ステップS104に進む。
【0032】
ステップS104では、横オフセットXoが所定のオフセット閾値Xs未満である物標が存在するか否かを判定する。この処理は、各物標が自車軌跡L内の物標であるか否かについて判定する処理である。オフセット閾値Xsは、ステップS102により算出された自車軌跡Lに基づいて設定され、自車軌跡L外に存在する物標の横オフセット値の最小値に設定される。Xo<Xsである場合には、自車軌跡L内に物標が存在し、ステップS105に進む。Xo≧Xsである場合には、自車軌跡L内に物標は不在であり、処理を終了する。
【0033】
ステップS105では、ステップS101において取得した物標情報に基づいて、基準物標を設定する。例えば、ステップS104においてXo<Xsを満たすと判定された各物標のうちから、カメラセンサ21から取得した第1物標情報に基づいて、現在の自車に最も近い位置に検出された物標を基準物標として設定する。その後、ステップS106に進む。
【0034】
ステップS106では、各物標の群衆判定を実行する。群衆判定処理は、図4に示すフローチャートに従って実行される。
【0035】
図4に示すように、N個の物標について、物標i(i=1,2,…,N)ごとに、群衆判定を事項する。まず、ステップS201では、i=1とし、ステップS202に進む。
【0036】
ステップS202では、ステップS101において取得した物標情報に基づいて、物標iについて、基準物標からの距離を算出する。具体的には、基準物標からの横距離Xiと縦距離Yiとについてそれぞれ算出する。基準物標からの距離は、第1物標情報に基づいて算出することが好ましいが、第1物標情報と第2物標情報とを併用してもよい。その後、ステップS203に進む。
【0037】
ステップS203では、物標iについて、ステップS202において算出した基準物標からの距離が所定の閾値よりも短いか否かを判定する。具体的には、横距離Xiが横閾値Xt未満であり、かつ、縦距離Yiが縦閾値Yt未満であるか否かを判定する。Xi<XtかつYi<Ytである場合には、ステップS204に進み、物標iを群衆物標に設定する。Xi≧XtまたはYi≧Ytである場合には、ステップS205に進み、物標iを群衆判定物標に設定しない。ステップS204,S205の後、ステップS206に進む。
【0038】
ステップS206では、i=i+1として、ステップS207に進む。ステップS207では、i>Nであるか否かを判定する。i>Nである場合には、N個全ての物標について、ステップS202~S205に示す処理が完了しており、ステップS208に進む。i≦Nである場合には、ステップS202に戻る。
【0039】
ステップS208では、ステップS204において群衆物標に設定された物標から、対象外物標に該当するものを除外する。対象外物標とは、その物標の移動状態や種別等から、基準物標とともに群衆を構成することが適当ではないと判断される物標である。具体的には、例えば、基準物標が歩行者を示す場合には、基準物標以外の他の物標について、歩行者を示す物標は群衆物標の対象であり、自転車および自動二輪車を示す物標は群衆物標の対象外であるように設定してもよい。この場合、ステップS101において取得した物標情報に基づいて、その移動状態(移動速度等)や形状等から物標が自転車および自動二輪車であると認識される場合には、群衆物標としての設定を取り消す。なお、本実施形態では、カメラセンサ21から取得する第1物標情報に基づいて、物体の種類(車両、歩行者、路上障害物等)を特定可能に構成されている。その後、ステップS209に進む。
【0040】
ステップS209では、群衆物標として設定された各物標によって群衆物標群を構成する。そして、群衆物標群に基づいて、群衆判定領域Mを設定する。具体的には、例えば、群衆物標群が検出されている領域全体を群衆判定領域Mとして設定する。その後、図4に示す一連の処理を終了し、図3に示すステップS111に進む。
【0041】
ステップS111では、ステップS106に示す群衆判定処理において設定された群衆判定領域M全体が含まれるように探索範囲を設定する。その後、ステップS112に進む。
【0042】
ステップS112では、ステップS111において設定された探索範囲において、同一物体について、カメラセンサ21で検出した第1物標情報と、レーダセンサ22で検出した第2物標情報とを結合(フュージョン)して、その物標が示す物体を検出する。なお、カメラセンサ21及びレーダセンサ22の一方のみで物標情報が検出された場合は、その物標情報を用いて、物体を検出するように構成されていてもよい。その後、ステップS113に進む。
【0043】
ステップS113では、探索範囲において結合された物標を回避対象物として、回避対象物と自車との衝突可能性が判定される。具体的には、例えば、回避対象物の挙動や相対速度に基づいて、自車と回避対象物とが衝突するまでの時間を表す衝突時間(TTC:Time-to-collision)を演算する。そして、衝突時間が所定の閾値以下である場合に、衝突可能性があると判定する。衝突可能性があると判定された場合には、ステップS114に進む。衝突可能性が無いと判定された場合には、処理を終了する。
【0044】
ステップS114では、回避対象物の進路、回避対象物と自車との距離、回避対象物との相対速度等に基づいて、衝突回避のための安全装置30を作動させるタイミングであるか否かを判定する。安全装置30を作動させるタイミングであれば、ステップS115に進んで安全装置30を作動させる処理を実行し、処理を終了する。
【0045】
上記のとおり、ECU10によれば、ステップS105において、検出センサにより検出された物標から選択して基準物標を設定する。そして、ステップS106において、基準物標を基準として設定された所定の群衆範囲内に、基準物標以外の物標が検出されている場合に、この基準物標以外の物標を群衆物標と判定する。より具体的には、基準物標以外の物標のうち、基準物標からの横距離Xiと縦距離YiがXi<XtかつYi<Ytである物標を、群衆物標と判定する。そして、ステップS111において、基準物標と群衆物標とが検出された領域である群衆判定領域Mを含むように探索範囲を設定する。このため、ステップS112において同一物体判定のために物標情報を結合するに際して、群衆判定領域Mを含む探索範囲について物標情報を結合することができる。その結果、分離能が低い検出センサから取得される個々の物体についての物標情報が不安定化しても、群衆判定領域M内に収めることができ、探索範囲全体がずれることがない。分解能が低い検出センサによって探索範囲がずれてしまうことを抑制できるため、物体を判定する精度が低くなることを抑制できる。その結果、検出精度が相違する複数の検出センサを用いて物体の物標情報を取得して結合することにより物体を検出する物体検出装置の精度を確保することができる。
【0046】
上記の各実施形態によれば、下記の効果を得ることができる。
【0047】
ECU10は、検出精度が相違する複数の検出センサ(例えばカメラセンサ21およびレーダセンサ22)によって自車の周囲の物体を物標として検出して得られる複数の物標情報を結合することにより、物体を検出する物体検出装置として機能する。ECU10は、群衆判定部12と、範囲設定部13と、物体判定部14とを備える。群衆判定部12は、物標から選択された基準物標を基準とする所定の群衆範囲内に検出された、基準物標以外の物標を群衆物標と判定する。範囲設定部13は、基準物標と群衆物標とが検出された領域である群衆判定領域を含むように探索範囲を設定する。そして、物体判定部14は、探索範囲について物標情報を結合して探索範囲内の物標が示す物体を判定する。このため、物体判定部14において物標情報を結合するに際して、範囲設定部13において複数の物標が検出された群衆判定領域を含むように設定された探索範囲について、物標情報を結合することができる。その結果、分離能が低い検出センサから取得される個々の物体についての物標情報が不安定化しても群衆判定領域内に収まって探索範囲がずれることがなく、物体を判定する精度が低くなることを抑制できる。すなわち、検出精度が相違する複数の検出センサを用いて物体の物標情報を取得して結合することにより物体を検出する物体検出装置において、物体の検出精度を確保することができる。
【0048】
群衆判定部12は、自車の将来の移動軌跡内において自車に最も近い物標を基準物標に設定するように構成されていてもよい。このように基準物標を設定して群衆判定を行うことで、自車との衝突可能性が高い物標が検出された領域に群衆判定領域を設定することができる。
【0049】
物体判定部14は、群衆判定領域に検出された物標のうち、自車と衝突する危険性が高い物標を代表物標に設定し、代表物標を他の群衆判定領域内の物標に優先させて物標情報を結合するように構成されていてもよい。群衆判定領域を設定した後に、自車と衝突する危険性が高い代表物標を設定して優先的に物標情報を結合することにより、自車軌跡のずれや検出センサにおける検出のずれ等が生じても、自車と衝突する可能性が高い物体を精度よく検出することができる。
【0050】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…ECU、12…群衆判定部、13…範囲設定部、14…物体判定部
図1
図2
図3
図4