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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20221221BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20221221BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652J
H01L29/78 655B
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020043815
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021145077
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】岩鍜治 陽子
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-162855(JP,A)
【文献】特開平11-345969(JP,A)
【文献】特開平8-316479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部と、
前記半導体部の裏面側に設けられた第1電極と、
前記半導体部の表面側に設けられた第2電極と、
前記半導体部と前記第2電極との間において、前記半導体部に設けられた第1トレンチの内部に配置され、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁された第1制御電極と、
前記半導体部と前記第2電極との間において、前記半導体部に設けられた第2トレンチの内部に配置され、前記半導体部から第3絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2電極から第4絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1制御電極から電気的に分離された第2制御電極と、
を備え、
前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、前記第2導電形の第4半導体層と、前記第2導電形の第5半導体層と、前記第2導電形の第6半導体層と、を含み、
前記第1制御電極および前記第2制御電極は、前記第1半導体層中に延在し、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第1絶縁膜を介して前記第1制御電極に向き合い、前記第3絶縁膜を介して前記第2制御電極に向き合い、
前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜に接し、前記第2電極に電気的に接続され、
前記第4半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第3絶縁膜に接し、前記第2電極に電気的に接続され、
前記第5半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記第1電極に電気的に接続され、
前記第6半導体層は、前記第1半導体層と前記第2制御電極との間に設けられ、前記第3絶縁膜に沿って延在した半導体装置。
【請求項2】
前記第6半導体層は、前記第3絶縁膜から前記第1半導体層に向かう方向における第1厚さを有し、
前記第1厚さは、前記第2制御電極と前記第2電極との間に電圧が印加され、前記第1半導体層と前記第3絶縁膜との界面に前記第1導電形のキャリアが集まることにより、前記第6半導体層の全体が第1導電形に反転する厚さである請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第6半導体層は、前記第3絶縁膜の前記第1半導体層中に位置する部分の全体を覆う請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体部は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた前記第1導電形の第7半導体層をさらに含み、
前記第7半導体層は、前記第1半導体層の第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含み、
前記第7半導体層の前記第1導電形不純物の濃度は、前記第3半導体層の第1導電形不純物の濃度よりも低い請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第7半導体層は、第1領域と、前記第1領域の第1導電形キャリアの濃度よりも低濃度の第1導電形キャリアを含む第2領域と、を有し、
前記第2領域は、前記第1領域と前記第3絶縁膜との間に位置し、前記第2半導体層と前記第6半導体層との間に位置する請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第6半導体層は、前記第7半導体層と前記第3絶縁膜との間に位置する請求項4記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2電極と前記第1制御電極および前記第2制御電極のそれぞれに制御電圧を印加する制御回路をさらに備えた請求項1~6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力制御用の半導体装置には、オン抵抗が低く、スイッチング損失が小さいことが望まれている。例えば、IGBT(Insulated gate Bipolar Transistor)では、p形コレクタ層からn形ベース層中に注入される正孔の密度を増加させることにより、オン抵抗を低減することができる。しかしながら、n形ベース層の正孔の密度が高くなると、ターンオフ時にn形ベース層から正孔を排出するための時間が長くなり、ターンオフ損失が増加する。
【0003】
このようなトレードオフを改善し、オン抵抗およびターンオフ損失を共に低減するために、独立して制御される2つの制御電極を有するIGBTが用いられる。例えば、IGBTをターンオフさせる前に、2つの制御電極のうちの1つの電位を制御することにより、n形ベース層の正孔の一部を予め排出し、n形ベース層の正孔密度を低減する。これにより、IGBTのターンオフ時における正孔の排出時間を短縮し、スイッチング損失を低減することができる。しかしながら、このようなゲート制御を実現する回路の設計には、解消すべき制約が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-169597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、ゲート制御回路の構成を簡略化できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る半導体装置は、半導体部と、前記半導体部の裏面側に設けられた第1電極と、前記半導体部の表面側に設けられた第2電極と、前記半導体部と前記第2電極との間において、前記半導体部に設けられた第1トレンチの内部に配置された第1制御電極と、前記半導体部と前記第2電極との間において、前記半導体部に設けられた第2トレンチの内部に配置された第2制御電極と、を備える。前記第1制御電極は、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁される。前記第2制御電極は、前記半導体部から第3絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2電極から第4絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1制御電極から電気的に分離される。前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、前記第2導電形の第4半導体層と、前記第2導電形の第5半導体層と、前記第2導電形の第6半導体層と、を含む。前記第1制御電極および前記第2制御電極は、前記第1半導体層中に延在する。前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第1絶縁膜を介して前記第1制御電極に向き合い、前記第3絶縁膜を介して前記第2制御電極に向き合う。前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜に接し、前記第2電極に電気的に接続される。前記第4半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第3絶縁膜に接し、前記第2電極に電気的に接続される。前記第5半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記第1電極に電気的に接続される。前記第6半導体層は、前記第1半導体層と前記第2制御電極との間に設けられ、前記第3絶縁膜に沿って延在する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置の製造過程を示す模式断面図である。
図3図2に続く製造過程を示す模式断面図である。
図4図3に続く製造過程を示す模式断面図である。
図5図4に続く製造過程を示す模式断面図である。
図6】第1実施形態に係る半導体装置の制御方法を示す模式図である。
図7】第1実施形態に係る半導体装置の動作を示す模式断面図である。
図8】第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図9】第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図10】第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置の動作を示す模式断面図である。
図11】第2実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図12】第2実施形態に係る半導体装置の製造過程を示す模式断面図である。
図13】第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図14】第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0009】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置1を示す模式断面図である。半導体装置1は、例えば、2種類の制御電極を有するIGBTである。
【0011】
図1に示すように、半導体装置1は、半導体部10と、第1電極(以下、コレクタ電極20)と、第2電極(以下、エミッタ電極30)と、第1制御電極40と、第2制御電極50と、を備える。コレクタ電極20は、半導体部10の裏面側に設けられる。エミッタ電極30は、半導体部10の表面側に設けられる。
【0012】
第1制御電極40および第2制御電極50は、半導体部10とエミッタ電極30との間において、半導体部10に設けられたゲートトレンチGT1およびGT2の内部にそれぞれ配置される。第1制御電極40および第2制御電極50は、相互に離間して配置される。
【0013】
第1制御電極40は、絶縁膜43により半導体部10から電気的に絶縁される。また、第1制御電極40は、絶縁膜45によりエミッタ電極30から電気的に絶縁される。
【0014】
第2制御電極50は、絶縁膜53により半導体部10から電気的に絶縁される。また、第2制御電極50は、絶縁膜55によりエミッタ電極30から電気的に絶縁される。
【0015】
半導体部10は、第1半導体層(以下、n形ベース層11)と、第2半導体層(以下、p形ベース層13)と、第3半導体層(以下、n形エミッタ層15)と、第4半導体層(以下、p形コンタクト層17)と、第5半導体層(p形コレクタ層21)と、n形バッファ層23と、第6半導体層(以下、p形電荷排出層25)と、を含む。
【0016】
n形ベース層11は、コレクタ電極20とエミッタ電極30との間に延在し、半導体部10の全体に広がる。第1制御電極40および第2制御電極50は、エミッタ電極30からコレクタ電極20に向かう方向(-Z方向)に延伸し、n形ベース層11中に延在する。
【0017】
p形ベース層13は、n形ベース層11とエミッタ電極30との間に設けられる。p形ベース層13は、絶縁膜43を介して第1制御電極40に向き合うように設けられる。また、p形ベース層13は、絶縁膜53を介して第2制御電極50に向き合うように設けられる。
【0018】
n形エミッタ層15は、p形ベース層13とエミッタ電極30との間に選択的に設けられる。n形エミッタ層15は、絶縁膜43に接し、エミッタ電極30に電気的に接続される。n形エミッタ層15は、n形ベース層11のn形不純物濃度よりも高濃度のn形不純物を含む。
【0019】
p形コンタクト層17は、p形ベース層13とエミッタ電極30との間に選択的に設けられる。p形コンタクト層17は、例えば、絶縁膜53に接し、エミッタ電極30に電気的に接続される。p形コンタクト層17は、p形ベース層13のp形不純物濃度よりも高濃度のp形不純物を含む。
【0020】
p形コレクタ層21は、n形ベース層11とコレクタ電極20との間に設けられる。p形コレクタ層21は、コレクタ電極20に電気的に接続される。
【0021】
n形バッファ層23は、n形ベース層11とp形コレクタ層21との間に設けられる。n形バッファ層23は、n形ベース層11のn形不純物濃度よりも高濃度のn形不純物を含む。
【0022】
p形電荷排出層25は、n形ベース層11と第2制御電極50との間に設けられ、絶縁膜53に沿って延在する。p形電荷排出層25は、例えば、第2制御電極50のn形ベース層11中に延在する部分の全体を覆うように設けられる。p形電荷排出層25は、例えば、p形ベース層13のp形不純物濃度と略同一の濃度、もしくは、それよりも低濃度のp形不純物を含む。
【0023】
次に、図2(a)~図5(b)を参照して、第1実施形態に係る半導体装置1の製造方法を説明する。図2(a)および図5(b)は、半導体装置1の製造過程を示す模式断面図である。
【0024】
図2(a)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側に、ゲートトレンチGT1およびゲートトレンチGT2を形成する。半導体ウェーハ100は、例えば、n形シリコンウェーハであり、n形ベース層11のn形不純物濃度と同じ濃度のn形不純物を含む。ゲートトレンチGT1およびGT2は、例えば、異方性RIE(Reactive Ion Etching)を用いて、半導体ウェーハ100を選択的にエッチングすることにより形成される。
【0025】
図2(b)に示すように、ゲートトレンチGT1の内部に、絶縁膜101を形成する。絶縁膜101は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて形成されるシリコン酸化膜である。
【0026】
絶縁膜101は、例えば、半導体ウェーハ100の表面を覆い、ゲートトレンチGT1およびGT2のそれぞれの内部のスペースを埋め込むように形成される。その後、ゲートトレンチGT1内のスペースを埋め込んだ部分を残して、絶縁膜101を選択的に除去する。
【0027】
図3(a)に示すように、半導体ウェーハ100の露出された表面に、p形拡散層103を形成する。p形拡散層103は、ゲートトレンチGT2の内面に沿って形成されるが、絶縁膜101が埋め込まれたゲートトレンチGT1の内部には形成されない。
【0028】
p形拡散層103は、例えば、p形不純物であるボロン(B)を、半導体ウェーハ100に拡散させることにより形成される。p形拡散層103は、例えば、気相拡散を用いて形成される。
【0029】
図3(b)に示すように、絶縁膜101を除去した後、ゲートトレンチGT1の内面およびゲートトレンチGT2の内面を覆う絶縁膜105を形成する。絶縁膜105は、ゲートトレンチGT1およびGT2の内部に、スペースSP1およびSP2を残すように形成される。また、絶縁膜105は、p形拡散層103の一部が半導体ウェーハ100と絶縁膜105との間に残るように形成される。絶縁膜105は、例えば、半導体ウェーハ100を熱酸化することにより形成される。絶縁膜105は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0030】
図4(a)に示すように、ゲートトレンチGT1の内部に第1制御電極40を形成し、ゲートトレンチGT2の内部に第2制御電極50を形成する。第1制御電極40および第2制御電極50は、例えば、導電性を有するポリシリコンである。
【0031】
例えば、半導体ウェーハ100の表面側に、ゲートトレンチGT1およびGT2のスペースSP1およびSP2を埋め込むようにポリシリコン層を形成する。ポリシリコン層は、例えば、CVDを用いて形成され、その後、n形不純物、例えば、リン(P)を拡散することにより、導電性を付与する。さらに、スペースSP1およびSP2を埋め込んだ部分を残して、ポリシリコン膜を除去することにより、第1制御電極40および第2制御電極50を形成する。
【0032】
絶縁膜105の第1制御電極40と半導体ウェーハ100との間に位置する部分は、絶縁膜43となる。また、絶縁膜105の第2制御電極50と半導体ウェーハ100との間に位置する部分は、絶縁膜53となる。
【0033】
図4(b)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側に、p形ベース層13、n形エミッタ層15およびp形コンタクト層17を形成する。p形拡散層103の一部は、p形ベース層13およびp形コンタクト層17と一体化される。また、n形エミッタ層15は、p形拡散層103をn形に反転させた部分を含む。p形拡散層103の残る部分は、p形電荷排出層25となり、第2制御電極50のn形ベース層11中に延在する部分を覆う。
【0034】
p形ベース層13は、例えば、半導体ウェーハ100の表面側にp形不純物であるボロン(B)をイオン注入した後、熱処理により活性化および拡散させることにより形成される。p形ベース層13は、半導体ウェーハ100の表面から所定の深さを有するように形成される。
【0035】
n形エミッタ層15は、例えば、半導体ウェーハ100の表面側にn形不純物であるリン(P)をイオン注入した後、活性化することにより形成される。n形エミッタ層15は、半導体ウェーハ100の表面からの深さがp形ベース層13よりも浅くなるように形成される。n形エミッタ層15は、p形ベース層13のp形不純物の濃度よりも高濃度のn形不純物を含む。
【0036】
p形コンタクト層17は、例えば、半導体ウェーハ100の表面側にp形不純物であるボロン(B)を選択的にイオン注入した後、活性化することにより形成される。p形コンタクト層17は、半導体ウェーハ100の表面からの深さがp形ベース層13よりも浅くなるように形成される。p形コンタクト層17は、例えば、n形エミッタ層15のn形不純物の濃度よりも高濃度のp形不純物を含む。また、p形コンタクト層17は、例えば、n形エミッタ層15を絶縁膜43に接する位置に残し、絶縁膜53に接するように形成される。
【0037】
図5(a)に示すように、絶縁膜45および絶縁膜55を半導体ウェーハ100の表面側に形成する。絶縁膜45は、第1制御電極40の上面を覆い、絶縁膜55は、第2制御電極の上面を覆う。絶縁膜45および55は、半導体ウェーハ100の表面側を覆うシリコン酸化膜を、例えば、CVDを用いて形成した後、第1制御電極40および第2制御電極50を覆う部分を残して、シリコン酸化膜を選択的に除去することにより形成される。
【0038】
図5(b)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側にエミッタ電極30を形成する。エミッタ電極30は、絶縁膜45および絶縁膜55を覆い、n形エミッタ層15およびp形コンタクト層17に接するように形成される。エミッタ電極30は、例えば、アルミニウム(Al)を含む金属層である。
【0039】
続いて、半導体ウェーハ100の裏面側を研削もしくはエッチングすることにより、所定のウェーハ厚に薄層化する。さらに、半導体ウェーハ100の裏面側に、n形バッファ層23およびp形コレクタ層21を形成する(図1参照)。n形バッファ層23およびp形コレクタ層21は、例えば、n形不純物であるリン(P)およびp形不純物であるボロン(B)を半導体ウェーハ100の裏面側にイオン注入し、活性化させることにより形成される。また、半導体ウェーハ100の裏面側において、p形コレクタ層21の上にコレクタ電極20を形成する(図1参照)。コレクタ電極20は、例えば、アルミニウム(Al)を含む金属層である。
【0040】
図6(a)~(c)は、第1実施形態に係る半導体装置1の制御方法を示す模式図である。図6(a)は、半導体装置1の動作時におけるバイアス方法を示す模式図である。図6(b)は、第1制御電極40とエミッタ電極30との間に印加される第1ゲート電圧VG1を示すタイムチャートである。図6(c)は、第2制御電極50とエミッタ電極30との間に印加される第2ゲート電圧VG2を示すタイムチャートである。
【0041】
図6(a)に示すように、半導体装置1は、例えば、第1制御電極40に電気的に接続された第1端子GP1と、第2制御電極50に電気的に接続された第2端子GP2と、を有する。第1端子GP1および第2端子GP2は、例えば、半導体部10の表面側に設けられるゲートパッドである。
【0042】
第1端子GP1および第2端子GP2は、相互に電気的に分離され、半導体部10およびエミッタ電極30から電気的に絶縁されている。第1ゲート電圧VG1は、例えば、ゲート制御回路60から第1端子GP1を介して第1制御電極40に印加される。第2ゲート電圧VG2は、例えば、ゲート制御回路60から第2端子GP2を介して第2制御電極50に印加される。コレクタ電極20とエミッタ電極30との間には、コレクタ電圧VCEが印加される。
【0043】
図6(b)に示すように、第1ゲート電圧VG1は、例えば、時間tにおいて、pベースにnチャネルを形成する閾値以下の電圧、例えば、ゼロ(0)Vからプラス15Vに上昇させ、時間tよりも後の時間tにおいてプラス15Vから0Vに低下するように制御される。なお、第1制御電極40の閾値電圧は、15V以下である。すなわち、第1制御電極40は、時間tにおいて、半導体装置1をターンオンさせ、時間tにおいてターンオフさせるように制御される。
【0044】
図6(c)に示す第2ゲート電圧VG2は、時間tにおいて、p形電荷排出層がすべてn型に反転する閾値以下の電圧、例えばゼロ(0)Vから閾値以上の電圧、例えば、プラス15Vに上昇させ、時間tと時間tとの間の時間tにおいて、プラス15Vから0Vに低下するように制御される。なお、時間tからtの間は、半導体装置1をターンオフさせるための予備的な期間であり、半導体装置1は、ターンオン状態にある。
【0045】
図7(a)および(b)は、第1実施形態に係る半導体装置1の動作を示す模式断面図である。図7(a)は、半導体装置1のターンオン時(時間tからtの期間)におけるキャリアの動きを示す模式図である。図7(b)は、半導体装置1をターンオフさせる直前(時間tからtの期間)におけるキャリアの動きを示す模式図である。
【0046】
図7(a)に示すターンオン時には、第1制御電極40にプラス15Vの第1ゲート電圧VG1が印加され、第2制御電極50にもプラス15Vの第2ゲート電圧VG2が印加される。
【0047】
図7(a)に示すように、p形ベース層13と絶縁膜43との界面には、第1制御電極40の電位によりn形反転層NIV1が誘起される。これにより、エミッタ電極30から、n形エミッタ層15およびn形反転層NIV1を介して、n形ベース層11に電子が注入される。これに対応して、正孔が、p形コレクタ層21からn形バッファ層23を介してn形ベース層11へ注入される。また、n形ベース層11と絶縁膜43との界面には、n形蓄積層が誘起される。
【0048】
さらに、第2制御電極50の電位により、n形反転層NIV2が、p形ベース層13と絶縁膜53との界面に誘起される。p形電荷排出層25は、第2制御電極50周りに集められた電子によりn形に反転する。例えば、第2制御電極50とエミッタ電極30との間に印加されるプラス15Vの制御電圧VG2は、p形ベース層13と絶縁膜53との界面にn形反転層NIV2を誘起する閾値電圧よりも高い。
【0049】
n形反転層NIV2とエミッタ電極30との間には、p形コンタクト層17が介在するため、エミッタ電極30からn形反転層NIV2を介して、n形ベース層11に電子が注入されることはない。
【0050】
また、p形電荷排出層25がn形に反転していることから、第1制御電極40と第2制御電極50との間に位置するn形ベース層11中に空乏層が広がり、n形ベース層11からp形ベース層13に至る正孔の排出経路が狭められる。このため、n形ベース層11からp形ベース層13を介したエミッタ電極30への正孔の排出が抑制される。結果として、n形ベース層11中の電子および正孔の密度が高くなり、半導体装置1のオン抵抗を低減することができる。
【0051】
図7(b)に示すターンオフの直前の状態では、第1制御電極40に印加されたプラス15Vの第1ゲート電圧VG1は保持され、第2制御電極50に印加される第2ゲート電圧VG2は、例えば、0Vに下がる。
【0052】
図7(b)に示すように、p形ベース層13と絶縁膜43との界面には、第1制御電極40の電位によりn形反転層NIV1が保持され、エミッタ電極30からn形ベース層11へ電子注入が継続される。
【0053】
一方、p形ベース層13と絶縁膜53との界面に誘起されていたn形反転層NIV2は消失し、p形電荷排出層25はp形に戻る。これにより、n形ベース層11の空乏層は消失し、n形ベース層11中の正孔は、p形ベース層13およびp形コンタクト層17を介してエミッタ電極30へ排出される。
【0054】
さらに、p形電荷排出層25を介したn形ベース層11からp形ベース層13への正孔の移動が加わり、n形ベース層11からの正孔の排出が促進される。これにより、n形ベース層11中の電子および正孔の密度が低下し、半導体装置1のターンオフ時(時間t)において、n形ベース層11から正孔および電子を排出する時間を短縮することができる。
【0055】
一方、半導体装置1にp形電荷排出層25を設けない場合でも、例えば、第2制御電極50にマイナス15Vを印加することにより、このようなスイッチング制御を実施できる。すなわち、時間t以降の期間(図6(b)参照)において、第2ゲート電圧VG2をマイナス15Vに保持することにより、n形ベース層11と絶縁膜53との界面にp形反転層を誘起し、n形ベース層11からの正孔の排出を促進することも可能である。しかしながら、第2ゲート電圧VG2をプラス15Vからマイナス15Vに降下させるようにゲート制御回路60(図6(a)参照)を構成することは、回路設計上の大きな制約となる。
【0056】
これに対し、本実施形態に係る半導体装置1では、p形電荷排出層25を設けることにより、第2ゲート電圧VG2の降下幅を圧縮することが可能となり、ゲート制御回路60(図6(a)参照)の制約を緩和できる。すなわち、ゲート制御回路60の構成を簡略化することが可能となる。
【0057】
一方、半導体装置1のターンオン時(時間tからtの期間)に、p形電荷排出層25が存在すると、n形ベース層11からp形ベース層13への正孔の排出が促進される。このため、n形ベース層11中の電子と正孔の密度が低下し、オン抵抗が大きくなる。
【0058】
本実施形態に係るゲート制御回路60では、第2制御電極50へ印加される第2ゲート電圧VG2を、例えば、ターンオン時に第1制御電極40に印加される第1ゲート電圧VG1と同じレベルのプラス電圧とする。これにより、p形電荷排出層25をn形に反転させ、p形電荷排出層25を介した正孔の排出経路を遮断する。その結果、n形ベース層11中の正孔および電子の密度を高くし、オン抵抗を低減できる。
【0059】
このような制御を実施するためには、絶縁膜53からn形ベース層11へ向かう方向におけるp形電荷排出層25の層厚は、例えば、第2制御電極50の電位により絶縁膜53の近傍に集まった電子がp形電荷排出層25の全体をn反転させる厚さであることが好ましい。
【0060】
図8(a)および(b)は、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置2を示す模式断面図である。
図8(a)および(b)に示すように、半導体装置2の半導体部10は、第7半導体層(以下、n形バリア層27)をさらに含む。n形バリア層27は、n形ベース層11とp形ベース層13との間に設けられる。
【0061】
n形バリア層27は、n形ベース層11のn形不純物の濃度よりも高濃度のn形不純物を含む。また、n形バリア層27は、n形エミッタ層15のn形不純物の濃度よりも低濃度のn形不純物を含む。
【0062】
n形バリア層27を設けることにより、正孔に対するポテンシャルバリアがn形ベース層11とp形ベース層13との間で高くなり、p形ベース層13への正孔の移動を抑制することができる。これにより、ターンオン時におけるn形ベース層11中の電子および正孔の密度が高くなり、オン抵抗を低減することができる。
【0063】
p形電荷排出層25は、n形バリア層27と絶縁膜53との間に延在し、p形ベース層13につながるように設けられる。p形電荷排出層25は、例えば、n形バリア層27のn形不純物よりも高濃度のp形不純物を含む。
図8(b)に示す例では、p形電荷排出層25のn形ドリフト層11と第2制御電極50との間に位置する部分の幅Wp1は、n形バリア層27と第2制御電極との間に位置する部分の幅Wp2よりも広い。
【0064】
例えば、半導体装置2のスイッチング制御においも、エミッタ電極30と第1制御電極40との間には、図6(b)に示す第1ゲート電圧VG1が印加され、エミッタ電極30と第2制御電極50との間には、図6(c)に示す第2ゲート電圧VG2が印加される。この例でも、p形電荷排出層25を設けることにより、時間tにおける第2ゲート電圧VG2の降下量(図6(c)参照)を少なくし、ゲート制御回路60の構成を簡略化することが可能となる。
【0065】
図9は、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置3を示す模式断面図である。
図9に示すように、半導体装置3の半導体部10は、n形バリア層27をさらに含む。n形バリア層27は、n形ベース層11とp形ベース層13との間に位置し、第1領域27aと第2領域27bとを含む。第2領域27bは、第1領域27aと絶縁膜53との間に位置する。第1領域27aにおける電子密度は、第2領域27bの電子密度よりも高い。
【0066】
この例では、n形バリア層27は、p形ベース層13とp形電荷排出層25との間に位置し、p形電荷排出層25は、p形ベース層13につながらない。n形バリア層27の第2領域27bでは、n形不純物が、例えば、p形拡散層103(図4(a)参照)のp形不純物により補償される。このため、第2領域27bの電子密度は、第1領域27aの電子密度よりも低くなる。
【0067】
図10(a)および(b)は、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置3の動作を示す模式断面図である。半導体装置3においても、エミッタ電極30と第1制御電極40との間には、図6(b)に示す第1ゲート電圧VG1が印加され、エミッタ電極30と第2制御電極50との間には、図6(c)に示す第2ゲート電圧VG2が印加される。
【0068】
図10(a)は、半導体装置3のターンオン時(時間tからtの期間)におけるキャリアの動きを示す模式図である。ターンオン時には、第1制御電極40にプラス15Vの第1ゲート電圧VG1が印加され、第2制御電極50にもプラス15Vの第2ゲート電圧VG2が印加される。
【0069】
図10(a)に示すように、p形ベース層13と絶縁膜43との界面には、第1制御電極40の電位によりn形反転層NIV1が誘起される。これにより、エミッタ電極30から、n形エミッタ層15、n形反転層NIV1およびn形バリア層27を介して、n形ベース層11に電子が注入される。これに対応して、正孔が、p形コレクタ層21からn形バッファ層23を介してn形ベース層11へ注入される。
【0070】
第2制御電極50の電位により、p形ベース層13と絶縁膜53との界面にn形反転層NIV2が誘起される。さらに、p形電荷排出層25は、第2制御電極50の周りに集められた電子によりn形に反転する。
【0071】
n形反転層NIV2とエミッタ電極30との間には、p形コンタクト層17が介在するため、エミッタ電極30からn形反転層NIV2を介して、n形ベース層11に電子が注入されることはない。
【0072】
さらに、p形電荷排出層25がn形に反転しているため、第1制御電極40と第2制御電極50との間に位置するn形ベース層11中に空乏層が広がり、n形ベース層11からp形ベース層13に至る正孔の排出経路が狭められる。これにより、n形ベース層11からp形ベース層13を介したエミッタ電極30への正孔の排出が抑制される。結果として、n形ベース層11中の電子および正孔の密度が高くなり、オン抵抗が低減される。
【0073】
図10(b)は、半導体装置3をターンオフさせる直前(時間tからtの期間)におけるキャリアの動きを示す模式図である。ターンオフの直前の状態では、第1制御電極40の第1ゲート電圧VG1は、プラス15Vに保持され、第2制御電極50に印加される第2ゲート電圧VG2は、例えば、マイナス5Vに下られる。
【0074】
図10(b)に示すように、第1制御電極40の電位により、p形ベース層13と絶縁膜43との界面には、n形反転層NIV1が誘起され、エミッタ電極30からn形ベース層11への電子注入が継続される。
【0075】
p形ベース層13と絶縁膜53との界面に誘起されていたn形反転層NIV2は消失し、p形電荷排出層25はp形に戻る。さらに、n形バリア層27と絶縁膜53との界面にp形反転層PIV1が誘起される。すなわち、n形バリア層27の第2領域27bにおける電子密度が低減されており、例えば、第2制御電極50の電位をプラス15Vからマイナス5Vに下げることにより、p形反転層PIV1を誘起することができる。
【0076】
p形反転層PIV1は、p形ベース層13とp形電荷排出層25とを電気的に接続し、n形ベース層11からp形ベース層13への正孔の移動を促進する。これにより、n形ベース層11中の電子および正孔の密度を予め低下させ、ターンオフ時におけるスイッチング損失を低減することができる。
【0077】
この例でも、第2ゲート電圧VG2の降下幅を圧縮することが可能となり、ゲート制御回路60(図6(a)参照)における制約を緩和し、スイッチング損失を低減することができる。
【0078】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る半導体装置4を示す模式断面図である。
図11に示すように、半導体装置4のp形電荷排出層33は、n形ベース層11と絶縁膜53との間に設けられ、第2制御電極50の側面に沿って延在する。p形電荷排出層33は、p形ベース層13につながるように設けられる。また、p形電荷排出層33は、ゲートトレンチGT2の底部には設けられない。
【0079】
半導体装置4においても、エミッタ電極30と第1制御電極40との間には、図6(b)に示す第1ゲート電圧VG1が印加され、エミッタ電極30と第2制御電極50との間には、図6(c)に示す第2ゲート電圧VG2が印加される。
【0080】
p形電荷排出層33は、第2制御電極50がプラス電位となった時、その全体がn反転するように設けられる。この例でも、p形電荷排出層33を設けることにより、ゲート制御回路60(図6(a)参照)の構成を簡略化することが可能となる。
【0081】
図12(a)および(b)は、第2実施形態に係る半導体装置4の製造過程を示す模式断面図である。図12(a)および(b)は、図3(a)に代わる製造過程を表している。
【0082】
図12(a)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側に、p形不純物、例えば、ボロン(B)をイオン注入し、注入層113を形成する。半導体ウェーハ100の表面側には、ゲートトレンチGT1およびゲートトレンチGT2が形成されている。ゲートトレンチGT1の内部スペースには、絶縁膜101が埋め込まれている。
【0083】
図12(a)に示す過程において、p形不純物は、例えば、半導体ウェーハ100の表面に対し、所定の注入角においてイオン注入される。注入層113は、ゲートトレンチGT2の底部には形成されず、ゲートトレンチGT2の内壁に沿って形成される。
【0084】
図12(b)に示すように、p形不純物を熱処理により活性化し、p形領域115を形成する。さらに、図3(a)に続く工程を経て、半導体装置4を完成させる。p形領域115のうちのゲートトレンチGT2の内壁に沿って形成された部分は、p形電荷排出層33となる。
【0085】
図13は、第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置5を示す模式断面図である。
図13に示すように、半導体装置5の半導体部10は、n形バリア層27をさらに含む。p形電荷排出層33は、n形バリア層27と絶縁膜53との間に延在し、p形ベース層13につながるように設けられる。
【0086】
この例でも、エミッタ電極30と第1制御電極40との間には、図6(b)に示す第1ゲート電圧VG1が印加され、エミッタ電極30と第2制御電極50との間には、図6(c)に示す第2ゲート電圧VG2が印加される。p形電荷排出層33を設けることにより、時間tにおける第2ゲート電圧VG2の降下量を少なくすることが可能となり、ゲート制御回路60(図6(a)参照)の構成を簡略化することができる。
【0087】
図14は、第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置6を示す模式断面図である。
図14に示すように、半導体装置6の半導体部10は、n形バリア層27をさらに含む。n形バリア層27は、n形ベース層11とp形ベース層13との間に位置し、第1領域27aと第2領域27bとを含む。第2領域27bは、第1領域27aと絶縁膜53との間に位置する。第1領域27aにおける電子密度は、第2領域27bの電子密度よりも高い。
【0088】
n形バリア層27は、p形ベース層13とp形電荷排出層33との間に位置し、p形電荷排出層33は、p形ベース層13につながらない。n形バリア層27の第2領域27bでは、例えば、p形領域115(図12(b)参照)のp形不純物によりn形不純物が補償される。このため、第2領域27bの電子密度は、第1領域27aの電子密度よりも低くなる。
【0089】
この例でも、エミッタ電極30と第1制御電極40との間には、図6(b)に示す第1ゲート電圧VG1が印加され、エミッタ電極30と第2制御電極50との間には、図6(c)に示す第2ゲート電圧VG2と同様に制御されたゲート電圧が印加される。
【0090】
例えば、ターンオフの直前(時間tからtの間の期間)において、エミッタ電極30と第2制御電極50との間には、マイナス5Vのゲート電圧VG2が印加される。これにより、n形バリア層27と絶縁膜53との間に、p形反転層PIV1(図10(b)参照)が誘起され、p形ベース層13とp形電荷排出層33とが電気的に接続される。この結果、n形ベース層11からp形ベース層13への正孔の排出が促進され、半導体装置6のターンオフ損失を低減することができる。
【0091】
このように、p形電荷排出層33を設けることにより、例えば、時間tにおける第2制御電極50におけるゲート電圧VG2の降下量(図6(c)参照)を少なくすることが可能となり、ゲート制御回路60の構成を簡略化できる。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1~6…半導体装置、 10…半導体部、 11…n形ベース層、 13…p形ベース層、 15…n形エミッタ層、 17…p形コンタクト層、 20…コレクタ電極、 21…p形コレクタ層、 23…n形バッファ層、 25、33…p形電荷排出層、 27…n形バリア層、 27a…第1領域、 27b…第2領域、 30…エミッタ電極、 40…第1制御電極、 43、45、53、55、101、105…絶縁膜、 50…第2制御電極、 60…ゲート制御回路、 100…半導体ウェーハ、 103…p形拡散層、 113…注入層、 115…p形領域、 GP1、GP2…端子、 GT1、GT2…ゲートトレンチ、 NIV1、NIV2…n形反転層、 PIV1…p形反転層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14