(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20221221BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20221221BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20221221BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20221221BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M50/533
H01M10/04 W
(21)【出願番号】P 2020156475
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】門井 優文
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康介
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-149388(JP,A)
【文献】特開2013-037816(JP,A)
【文献】特開2011-159518(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021463(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 4/13
H01M 4/02
H01M 50/533
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極または負極の電極シートが、捲回軸を中心に所定の捲回方向に捲回された扁平の捲回電極体と、
前記捲回電極体を収容する電池ケースと、
前記電池ケースの外部に配置される外部端子部と、前記電池ケースの内部に配置される内部端子部とを有する電極端子と、
を備え、
前記電極シートは、
集電体と、
前記捲回方向に延び、前記集電体の表面に形成され、電極活物質を含む電極活物質層と、
前記捲回方向に延び、前記電極活物質層と捲回軸方向に並んだ位置に配置され、前記集電体の表面に前記電極活物質層が形成されていない未形成部と、
を有し、
前記捲回電極体は、
前記捲回軸方向と直交する長手方向に延びた2つの扁平表面を有する扁平部と、
前記扁平部における前記長手方向の一方側に設けられ、アールが形成された第1端部と、
前記扁平部における前記長手方向の他方側に設けられ、アールが形成された第2端部と、
を有し、
前記第1端部に位置する前記未形成部の部分には、前記捲回方向に沿って第1スリットが形成され、
前記第1端部に位置する前記未形成部の部分のうち、前記第1スリットよりも前記電極活物質層とは反対に位置する部分には、前記電極端子の前記内部端子部が接合される平面部が設けられ
、
前記第1スリットの長さは、前記捲回軸に近づくにしたがって短くなる、二次電池。
【請求項2】
前記第1端部に位置する前記未形成部には、前記第1スリットよりも前記電極活物質層とは反対側に配置され、前記捲回軸方向に沿って延びた第2スリットが形成されている、請求項1に記載された二次電池。
【請求項3】
前記第2スリットは、前記第1端部に位置する前記未形成部における前記捲回軸から最も離れた位置に形成されている、請求項2に記載された二次電池。
【請求項4】
前記電極シートを展開したときにおける前記第2スリット同士の間隔は、前記捲回方向における巻き始め側に向かうにしたがって小さくなる、請求項2または3に記載された二次電池。
【請求項5】
前記電極シートを展開したときにおける前記第1スリット同士の間隔は、前記捲回方向における巻き始め側に向かうにしたがって小さくなる、請求項1から4までの何れか1つに記載された二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、電池容器と、電池容器に収容される扁平形状の捲回電極体とを備えた二次電池が開示されている。捲回電極体は、例えば正極板を有し、正極板の捲回軸方向の一端部には、活物質が形成されていない未形成部が形成されている。この正極板の未形成部に電極端子が接続される。電極端子は、電池容器の内部に配置される内部端子部(特許文献1では、集電体という。)を有し、電池容器内において、電極端子の内部端子部が未形成部に接合されている。また、特許文献1に開示された二次電池では、正極板の捲回軸方向の両端部には、捲回軸方向の延びたスリットが等間隔で複数形成されており、スリットから捲回電極体の内部に電解液が浸透し易くなる。
【0003】
また特許文献2には、正極板と負極板とセパレータとを有する捲回電極体が開示されている。正極板は、正極活物質層が形成された塗工部と、正極活物質層が形成されていない未塗工部とを有する。塗工部と未塗工部との境界付近には、捲回電極体の捲回方向に沿って複数のスリットが等間隔で形成されている。このことで、当該境界付近に生じ得るシワの発生や、正極板の破断を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-218804号公報
【文献】特開2013-98026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された二次電池では、電極端子は、捲回電極体の長手方向の中央部分に位置する未形成部に接続されていた。その結果、電池容器内において、電極端子の内部端子部が比較的に長くなる。材料コストの観点から電極端子は短い方が好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで提案される二次電池は、正極または負極の電極シートが、捲回軸を中心に所定の捲回方向に捲回された扁平の捲回電極体と、捲回電極体を収容する電池ケースと、電極端子とを備えている。電極端子は、電池ケースの外部に配置される外部端子部と、電池ケースの内部に配置される内部端子部とを有する。電極シートは、集電体と、捲回方向に延び、集電体の表面に形成され、電極活物質を含む電極活物質層と、捲回方向に延び、電極活物質層と捲回軸方向に並んだ位置に配置され、集電体の表面に電極活物質層が形成されていない未形成部と、を有している。捲回電極体は、捲回軸方向と直交する長手方向に延びた2つの扁平表面を有する扁平部と、扁平部における長手方向の一方側に設けられ、アールが形成された第1端部と、扁平部における長手方向の他方側に設けられ、アールが形成された第2端部とを有している。第1端部に位置する未形成部の部分には、捲回方向に沿って第1スリットが形成されている。第1端部に位置する未形成部の部分のうち、第1スリットよりも電極活物質層とは反対に位置する部分には、電極端子の内部端子部が接合される平面部が設けられている。
【0007】
例えば第1端部に位置する未形成部の部分に第1スリットが形成されていないと、未形成部にアールが形成された状態になり、第1端部に位置する未形成部の部分に電極端子が接合され難い。しかしながら、ここで提案される二次電池によれば、未形成部に第1スリットを形成することで、第1端部に位置する未形成部の部分を押し潰し易くなり、未形成部に平面部を設け易い。よって、第1端部に位置する未形成部の部分に電極端子を確実に接合することができ、その結果、電極端子の長さを従来よりも短くすることができる。
【0008】
ここで提案される二次電池では、第1端部に位置する未形成部には、第1スリットよりも電極活物質層とは反対側に配置され、捲回軸方向に沿って延びた第2スリットが形成されていてもよい。また第2スリットは、第1端部に位置する未形成部における捲回軸から最も離れた位置に形成されていてもよい。
【0009】
ここで提案される二次電池では、電極シートを展開したときにおける第2スリット同士の間隔は、捲回方向における巻き始め側に向かうにしたがって小さくなっていてもよい。また、電極シートを展開したときにおける第1スリット同士の間隔は、捲回方向における巻き始め側に向かうにしたがって小さくなる。
【0010】
ここで提案される二次電池では、第1スリットの長さは、捲回軸に近づくにしたがって短くなっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る二次電池の内部構造を模式的に示した断面図である。
【
図2】実施形態に係る二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図であり、一部が展開された図である。
【
図3】捲回された状態の捲回電極体を模式的に示した図である。
【
図4】電池ケースと捲回電極体を模式的に示した図であり、捲回軸方向から見た図である。
【
図5】実施形態に係る電極シートを展開した状態を模式的に示した図である。
【
図6】変形例に係る電極シートを展開した状態を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、ここで開示される二次電池の一実施形態について図面を参照して説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施されることができる。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0013】
本明細書において、「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス一般を指す用語であって、一次電池および二次電池を含む概念である。「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などのいわゆる蓄電池を包含する。以下、二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池を例示して、ここで開示される二次電池について詳細に説明する。ただし、ここで開示される二次電池は、ここで説明される実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る二次電池100の内部構造を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る二次電池100は、電池ケース30と、電極端子40と、捲回電極体20と、非水電解液10とを備えた密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0015】
電池ケース30は、捲回電極体20および非水電解液10を内部に密閉した状態で収容する。本実施形態では、電池ケース30の形状は、直方体形状であり、扁平な角形である。電池ケース30は、本体31と、蓋体32とを備えている。本体31は、一端(例えば上端)に開口部(図示せず)を有する角形の中空の部材である。蓋体32は、本体31の上記開口部を塞ぐ板状のものである。蓋体32は、本体31に取り付けられている。
【0016】
蓋体32には、安全弁36が設けられている。安全弁36は、電池ケース30の内圧が所定圧力以上に上昇した場合、当該内圧を開放するものである。また、電池ケース30には、非水電解液10を本体31内に注入するための注入口(図示せず)が設けられている。電池ケース30の材質は特に限定されるものではないが、電池ケース30の材質としては、例えばアルミニウムなどの軽量で熱伝導性が高い金属材料が用いられる。
【0017】
電極端子40は、長尺な平板状の部材であり、アルミニウムなどの導電性材料によって構成されている。電極端子40は、電池ケース30の蓋体32に設けられている。電極端子40は、電池ケース30の外部に配置される外部端子部40aと、電池ケース30の内部に配置される内部端子部40bとを有している。外部端子部40aは、蓋体32から電池ケース30の外部に露出している。外部端子部40aには、他の電池や外部機器と接続されるように構成されている。本実施形態では、正極の電極端子40のことを正極端子42といい、負極の電極端子40のことを負極端子44という。
【0018】
図2は、本実施形態に係る二次電池100の捲回電極体20の構成を示す模式図であり、一部が展開された図である。
図2に示すように、捲回電極体20は、長尺状の正極または負極の電極シート80と、長尺状のセパレータ70とを有する。本実施形態では、電極シート80は、正極の正極シート50と、負極の負極シート60とから構成されている。セパレータ70は、第1セパレータ71と、第2セパレータ72とを有し、2枚のセパレータによって構成されている。ここでは、捲回電極体20は、正極シート50と、負極シート60と、セパレータ70とを重ね合わせて、捲回軸Wを中心に捲回方向D11(
図4参照)に捲回させた扁平のものである。本実施形態では、正極シート50、第1セパレータ71、負極シート60、および、第2セパレータ72の順に重ね合わされている。
【0019】
本実施形態では、電極シート80は、集電体82と、電極活物質を含む電極活物質層84と、未形成部82aとを有する。集電体82は、長尺状である。電極活物質層84は、捲回方向D11(
図4参照)に延びるように、集電体82の片面または両面(本実施形態では両面)に形成されている。未形成部82aは、集電体82のうち電極活物質層84が形成されていない部分のことをいう。未形成部82aは、捲回方向D11(
図4参照)に延び、電極活物質層84と捲回軸Wが延びた方向(以下、捲回軸方向という。)D12に並んだ位置に配置されている。
【0020】
本実施形態では、正極シート50において、集電体82、電極活物質層84、未形成部82aのことを、それぞれ正極集電体52、正極活物質層54、正極未形成部52aという。正極活物質層54には、電極活物質の一例である正極活物質が含まれている。正極未形成部52aは、正極集電体52における捲回軸方向D12の一端側(
図2では左端側)の端部に形成されている。
図1に示すように、正極未形成部52aには、正極端子42の内部端子部40bが接合されている。
【0021】
本実施形態では、正極集電体52には、この種の二次電池の正極集電体として用いられるものを特に制限なく使用し得る。正極集電体52として、良好な導電性を有する金属製の正極集電体が用いられることが好ましい。正極集電体52として、例えばアルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼などの金属材を採用することが可能である。特にアルミニウム(例えばアルミニウム箔)を正極集電体52として用いることが好ましい。
【0022】
正極活物質層54に含まれる正極活物質として、例えば層状構造やスピネル構造などのリチウム複合金属酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNiO2、LiCoO2、LiFeO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4,LiCrMnO4、LiFePO4など)が挙げられる。正極活物質層54は、正極活物質と、必要に応じて用いられる材料(例えば導電材、バインダなど)と、を適当な溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン:NMP)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調整し、当該組成物の適当量を正極集電体52の表面に付与し、乾燥することによって形成されることができる。
【0023】
図2に示すように、負極シート60において、集電体82、電極活物質層84、未形成部82aのことを、それぞれ負極集電体62、負極活物質層64、負極未形成部62aという。負極活物質層64には、電極活物質の一例である負極活物質が含まれている。負極未形成部62aは、負極集電体62における捲回軸方向D12の他端側(
図2では右端側)の端部に形成されている。
図1に示すように、負極未形成部62aには、負極端子44の内部端子部40bが接合されている。
【0024】
本実施形態では、負極集電体62には、この種の二次電池の負極集電体として用いられるものを特に制限なく使用し得る。負極集電体62として、良好な導電性を有する金属製の負極集電体が用いられることが好ましい。負極集電体62として、例えば銅(例えば銅箔)、または、銅を主体とする合金を用いることができる。
【0025】
負極活物質層64に含まれる負極活物質として、例えば少なくとも一部にグラファイト構造(例えば層状構造)を含む粒子状(あるいは球状、鱗片状)の炭素材料、リチウム遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12等のリチウムチタン複合酸化物)、リチウム遷移金属複合窒化物などが挙げられる。負極活物質層64は、負極活物質と、必要に応じて用いられる材料(例えばバインダなど)と、を適当な溶媒(例えばイオン交換水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調整し、当該組成物の適当量を負極集電体62の表面に付与し、乾燥することによって形成されることができる。
【0026】
図2に示すように、セパレータ70(詳しくは第1セパレータ71および第2セパレータ72)として、従来公知の多孔質シートから成るセパレータを特に制限なく使用することができる。セパレータ70として、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミドなどの樹脂から成る多孔質シート(例えばフィルム、不織布など)が挙げられる。かかる多孔質シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複数構造(例えばPE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、多孔質シートの片面または両面に、多孔質の耐熱層を備える構成のものであってもよい。この耐熱層は、例えば無機フィラーとバインダとを含む層(例えばフィラー層)であり得る。無機フィラーとしては、例えばアルミナ、ベーマイト、シリカなどを好ましく採用し得る。
【0027】
図1に示すように、捲回電極体20と共に電池ケース30に収容される非水電解液10は、適当な非水溶媒に支持塩を含有するものであり、従来公知の非水電解液を特に制限なく採用することができる。非水溶媒として、例えばエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などを用いることができる。また、支持塩としては、例えばリチウム塩(例えば、LiBOB、LiPF
6など)を好適に用いることができる。本実施形態では、支持塩として、LiBOBが採用されている。この場合、非水電解液10におけるLiBOB含有量は、0.3wt%~0.6wt%であることが好ましい。
【0028】
次に、本実施形態に係る捲回電極体20の構成について更に詳しく説明する。
図4に示すように、捲回電極体20は、第1端部21と第2端部22と、扁平部23とを有している。なお、
図4では、捲回電極体20において、外周形状が図示されており、捲回された状態の図示は省略されている。第1端部21は、捲回軸方向D12から見たときに、アールが形成された捲回電極体20の部分である。第1端部21は、捲回電極体20における捲回軸Wに直交する長手方向D13の一端部を構成している。第2端部22は、捲回軸Wを挟んで第1端部21と対向しており、捲回軸方向D12から見たときに、アールが形成された捲回電極体20の部分である。第2端部22は、捲回電極体20における捲回軸Wに直交する長手方向D13の他端部を構成している。本実施形態では、第1端部21は、捲回電極体20を電池ケース30に収容したとき、第2端部22よりも電池ケース30の蓋体32に近い位置、言い換えると電極端子40の外部端子部40aに近い位置に配置される。ここでは、第1端部21および第2端部22には、アールが形成された捲回電極体20の外周面、および、アールが形成された当該外周面の内部が含まれるものとする。
【0029】
扁平部23は、第1端部21と第2端部との間に配置されており、2つの扁平表面24を有する。すなわち扁平部23における長手方向D13の一方側に第1端部21が設けられ、扁平部23における長手方向D13の他方側に第2端部22が設けられている。扁平表面24は、長手方向D13に延びた平らな面である。2つの扁平表面24は対向している。本実施形態では、捲回電極体20を電池ケース30に収容した状態において、捲回電極体20は、蓋体32に近い方から、第1端部21、扁平部23、第2端部22の順に並ぶように配置されている。
【0030】
本実施形態では、
図1に示すように、捲回電極体20の第1端部21に位置する未形成部82a(例えば正極未形成部52aおよび負極未形成部62a)に、電極端子40(例えば正極端子42および負極端子44)の内部端子部40bが接続される。電極端子40を接続する捲回電極体20の部分は、平らな面であることが好ましい。当該平らな面に電極端子40を接合することで、電極端子40をより確実に捲回電極体20に接続することができる。そのため、本実施形態では、
図4に示すように、第1端部21に位置する未形成部82aに電極端子40をより確実に接続するために、第1端部21に位置する未形成部82aに、平らな面を有する平面部90を設けることにする。
【0031】
このように第1端部21に位置する未形成部82a(例えば正極未形成部52aおよび負極未形成部62a)に平面部90を設けるために、
図3に示すように、未形成部82aに第1スリット91および第2スリット92を形成する。第1スリット91は、第1端部21に位置する未形成部82aの部分に形成されており、捲回方向D11(
図4参照)に沿って延びたスリットである。捲回軸W周りの第1端部21に対応する位置において、未形成部82aには、第1スリット91が形成されている。本実施形態では、第1端部21に位置する未形成部82aにおける捲回軸Wから最も離れた位置の端を頂端21aという。頂端21aは、未形成部82aにおける蓋体32側の端のことをいう。第1スリット91は、頂端21aを通過するように未形成部82aに形成されている。第1スリット91は、捲回電極体20の2つの扁平表面24のうちの一方の扁平表面24側における第1端部21に位置する未形成部82aの部分から、頂端21aを通過し、他方の扁平表面24側における第1端部21に位置する未形成部82aの部分に亘って形成されている。本実施形態では、
図2に示すように、未形成部82aは、セパレータ70と一部重なっている。そのため、第1スリット91は、セパレータ70と重ならない未形成部82aの位置に形成されている。
【0032】
図5に示すように、捲回軸W周りの第1端部21に対応する位置において、未形成部82aには、第2スリット92が形成されている。第2スリット92は、第1スリット91よりも電極活物質層84(例えば正極活物質層54および負極活物質層64(
図2参照))とは反対側に配置され、捲回軸方向D12に沿って延びたスリットである。第2スリット92は、第1スリット91から捲回軸方向D12に沿って電極活物質層84とは反対に延びたスリットである。第2スリット92は、第1スリット91から未形成部82aの捲回軸方向D12の端まで延びている。ここでは、第2スリット92は、第1スリット91と連続しているが、離間していてもよい。本実施形態では、
図4に示すように、第2スリット92は、第1端部21に位置する未形成部82aにおける頂端21aの位置において捲回軸方向D12に沿って形成されている。言い換えると、捲回軸W周りの頂端21aに対応する位置において、未形成部82aには、第2スリット92が形成されている。
図5に示すように、第2スリット92は、第1スリット91の捲回方向D11の中心から捲回軸方向D12に向かって延びている。
【0033】
なお、本実施形態では、第1スリット91および第2スリット92は、未形成部82aにおける第1端部21以外に位置する部分には、形成されていない。すなわち、第1スリット91および第2スリット92は、第2端部22に位置する未形成部82aの部分には形成されておらず、扁平部23に位置する未形成部82aの部分にも形成されていない。
【0034】
図5および
図6において、紙面上の上側が電極シート80の巻き始め側であり、下側が電極シート80の巻き終わり側である。本実施形態では、
図5に示すように、捲回電極体20の1つの電極シート80の未形成部82aにつき、捲回電極体20の巻き数と同じ数の第1スリット91と、当該巻き数と同じ数の第2スリット92が形成されている。ここでは、電極シート80(例えば正極シート50および負極シート60(
図2参照))を展開したときにおける捲回方向D11に隣り合う第1スリット91同士の間隔は、捲回方向D11における巻き始め側に向かうにしたがって小さくなる。同様に、電極シート80を展開したときのおける捲回方向D11に隣り合う第2スリット92同士の間隔は、捲回方向D11における巻き始め側に向かうにしたがって小さくなる。言い換えると、電極シート80を展開したとき、捲回方向D11に隣り合う第1スリット91の間隔、および、捲回方向D11に隣り合う第2スリット92の間隔は、それぞれ電極シート80の巻き終わりの端部から巻き始めの端部に向かうにしたがって小さくなる。
【0035】
また、第1スリット91の長さ(詳しくは捲回方向D11の長さ)は、捲回軸Wに近づくにしたがって短くなる。言い換えると、電極シート80を展開したとき、第1スリット91の長さは、捲回方向D11における巻き始め側に向かう(例えば電極シート80の巻き始めの端部に向かう)にしたがって短くなる。本実施形態では、複数の第2スリット92のそれぞれの長さは、同じであるが、異なっていてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、複数の第1スリット91は、切り込み程度のものであり、複数の第1スリット91のそれぞれの幅(言い換えると捲回軸方向D12の第1スリット91の溝の長さ)は、同じである。同様に、本実施形態では、
図5に示すように、複数の第2スリット92も切り込み程度のものであり、複数の第2スリット92のそれぞれの幅(言い換えると捲回方向D11の第2スリット92の溝の長さ)は、同じである。しかしながら、第2スリット92の幅は、
図6の変形例に示すように、電極シート80の巻き始めの端部から巻き終わりの端部に向かうにしたがって、大きくなってもよい。言い換えると、第2スリット92の幅は、捲回軸Wから離れるにしたがって大きくなってもよい。
【0037】
なお、電極シート80の未形成部82aに第1スリット91および第2スリット92を形成するタイミングや方法は特に限定されない。本実施形態では、
図2に示すように、捲回電極体20は、電極シート80(例えば正極シート50および負極シート60)と、セパレータ70とを重ね合わせた状態で、いわゆる捲回機(図示せず)で捲回させることで作製される。第1スリット91および第2スリット92は、例えば上記捲回機と連動した刃物を使用して、未形成部82aに自動で形成される。例えば上記捲回機で、電極シート80とセパレータ70とを重ね合わせた状態で捲回しているときに、所定のタイミング(例えば第1端部21に位置し得る未形成部82aの部分が、刃物でスリット91、92を形成する作業領域を通過するタイミング)で、刃物を使用して、未形成部82aに第1スリット91および第2スリット92を形成することができる。
【0038】
本実施形態では、第1端部21に位置する未形成部82aに第1スリット91および第2スリット92を形成することで、第1スリット91および第2スリット92の位置に切り込みが入れられる。そのため、捲回された捲回電極体20の第1端部21に位置する未形成部82aのうち、第1スリット91よりも未形成部82aの捲回軸方向D12の端部側の部分を押し潰すことができる。その結果、
図3に示すように、第1スリット91よりも未形成部82aにおける捲回軸方向D12の端部側の部分に、アールは形成されず、平面部90を設けることができる。そして、
図4に示すように、平面部90に電極端子40(詳しくは内部端子部40b)を接合することができる。なお、平面部90に電極端子40を接合する方法は特に限定されない。例えば超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接、または、いわゆるカシメによって、平面部90に電極端子40を接合することができる。
【0039】
このように、本実施形態では、
図3に示すように、第1端部21に位置する正極シート50の正極未形成部52aに、第1スリット91および第2スリット92を形成することで、第1端部21に位置する正極未形成部52aに平面部90を設けることができる。同様に、第1端部21に位置する負極シート60の負極未形成部62aに、第1スリット91および第2スリット92を形成することで、第1端部21に位置する負極未形成部62aに平面部90を設けることができる。そして、
図1に示すように、正極未形成部52aの平面部90には、正極端子42が接合される。また、負極未形成部62aの平面部90には、負極端子44が接合される。
【0040】
以上、本実施形態に係る二次電池100は、
図4に示すように、正極または負極の電極シート80が、捲回軸Wを中心に所定の捲回方向D11に捲回された扁平の捲回電極体20と、捲回電極体20が収容される電池ケース30と、電極端子40と、を備えている。電極端子40は、電池ケース30の外部に配置される外部端子部40aと、電池ケース30の内部に配置される内部端子部40bとを有する。
図2に示すように、電極シート80は、集電体82と、電極活物質層84と、未形成部82aとを有している。
図5に示すように、電極活物質層84は、捲回方向D11に延び、集電体82の表面に形成され、電極活物質を含む層である。未形成部82aは、捲回方向D11に延び、電極活物質層84と捲回軸方向D12に並んだ位置に配置され、集電体82の表面に電極活物質層84が形成されていないものである。
図4に示すように、捲回電極体20は、長手方向D13に延びた2つの扁平表面24を有する扁平部23と、扁平部23における長手方向D13の一方側に設けられ、アールが形成された第1端部21と、扁平部23における長手方向D13の他方側に設けられ、アールが形成された第2端部22と、を有している。
図3に示すように、第1端部21に位置する未形成部82aの部分には、捲回方向D11(
図4参照)に沿って第1スリット91が形成されている。第1端部21に位置する未形成部82aの部分のうち、第1スリット91よりも電極活物質層84とは反対に位置する部分には、電極端子40の内部端子部40b(
図4参照)が接続される平面部90が設けられている。
【0041】
例えば第1端部21に位置する未形成部82aの部分に第1スリット91が形成されていないと、未形成部82aは、アールが形成された状態になり、第1端部21に位置する未形成部82aの部分に電極端子40が接続され難い。しかしながら、本実施形態では、
図4に示すように、第1スリット91を形成することで、第1端部21に位置する未形成部82aの部分を押し潰し易くなり、未形成部82aに平面部90を設け易い。よって、第1端部21に位置する未形成部82aの部分に電極端子40を確実に接合することができ、その結果、電極端子40の長さ(詳しくは内部端子部40bの長さ)を従来よりも短くすることができる。
【0042】
本実施形態では、
図3に示すように、第1端部21に位置する未形成部82aには、第1スリット91よりも電極活物質層84とは反対側に配置され、捲回軸方向D12に沿って延びた第2スリット92が形成されている。このように、未形成部82aに第2スリット92を形成することで、第1端部21に位置する未形成部82aにおけるアールに形成され得る部分を分離することができる。よって、第1端部21に位置する未形成部82aの部分を押し潰し易くなり、第1端部21に位置する未形成部82aの部分に平面部90を設け易くなる。
【0043】
本実施形態では、
図4に示すように、第2スリット92は、第1端部21に位置する未形成部82aにおける捲回軸Wから最も離れた頂端21aの位置に形成されている。この頂端21aに位置する未形成部82aの部分は、アールが形成され得る位置である。よって、頂端21aの位置に第2スリット92を形成することで、第1端部21に位置する未形成部82aにおけるアールに形成され得る部分をより確実に分離することができる。よって、第1端部21に位置する未形成部82aの部分を押し潰し易くなり、第1端部21に位置する未形成部82aの部分に平面部90を設け易くなる。
【0044】
本実施形態では、
図5に示すように、電極シート80を展開したときにおける第1スリット91同士の間隔は、捲回方向D11における巻き始め側に向かうにしたがって小さくなる。また、電極シート80を展開したときにおける第2スリット92同士の間隔は、捲回方向D11における巻き始め側に向かうにしたがって小さくなる。ここでは、捲回電極体20の巻き数が少なくなる程、1周捲回させる際に要する電極シート80の長さが短くなる。よって、1周捲回させる際に要する電極シート80の長さに合わせて、巻き始め側に向かうにしたがって第1スリット91同士の間隔を小さくし、かつ、第2スリット92同士の間隔を小さくすることで、第1端部21に位置する未形成部82aに第1スリット91および第2スリット92を形成することができる。
【0045】
本実施形態では、第1スリット91の長さは、捲回軸W(
図4参照)に近づくにしたがって短くなる。ここでは、捲回電極体20の巻き数が少なくなる程、第1端部21に位置する未形成部82aの捲回方向D11の長さが短くなる。よって、第1端部21に位置する未形成部82aの捲回方向D11の長さに合わせて、捲回軸Wに近づくにしたがって第1スリット91の長さを短くすることで、複数の第1スリット91を重ね合わせ易くなる。その結果、第1端部21に位置する未形成部82aの部分を押し潰し易くなり、第1端部21に位置する未形成部82aの部分に平面部90を設け易くなる。
【0046】
本実施形態では、第1端部21に位置する未形成部82aの部分に、第1スリット91および第2スリット92が形成されていたが、第2スリット92を省略することが可能である。この場合であっても、未形成部82aには第1スリット91が形成されているため、第2スリット92が形成されている場合と比較して大きい力が必要となるが、第1端部21に位置する未形成部82aの部分を押し潰すことが可能となる。よって、第2スリット92を省略した場合であっても、第1端部21に位置する未形成部82aの部分に平面部90を設けることができる。
【符号の説明】
【0047】
20 捲回電極体
21 第1端部
22 第2端部
23 扁平部
24 扁平表面
40 電極端子
50 正極シート
60 負極シート
80 電極シート
82 集電体
82a 未形成部
84 電極活物質層
90 平面部
91 第1スリット
92 第2スリット
100 二次電池
D11 捲回方向
D12 捲回軸方向