(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 7/022 20190101AFI20221221BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20221221BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221221BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20221221BHJP
C09J 201/00 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B17/10
H05B33/14 A
H05B33/02
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2020194696
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】矢野 孝伸
(72)【発明者】
【氏名】疋田 貴巳
(72)【発明者】
【氏名】淵田 岳仁
(72)【発明者】
【氏名】趙 洪賛
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025899(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087938(WO,A1)
【文献】特開2008-273211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01L 27/32、51/50
H05B 33/02
C09J 201/00
G02B 5/30
G09F 9/00、 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、接着剤層と、フィルムと、粘着剤層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、
前記ガラス板は、40μm以上、60μm以下の厚みを有し、
周波数10Hz、昇温速度2℃/min、引張モードの動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃における前記フィルムのtanδの平均が、0.06以上であり、
前記動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃における前記フィルムの引張貯蔵弾性率E’の平均が、3GPa以上、6GPa以下であり、
前記接着剤層は、硬化型接着剤の硬化体であり、
前記接着剤層の厚みは、0.1μm以上、10μm以下であり、
ナノインデンター法で測定される25℃における前記接着剤層の押込弾性率は、1GPa以上であり、
前記粘着剤層は、
5μm以上、20μm以下の厚みを有し、
周波数1Hz、昇温速度5℃/minの動的粘弾性試験により求められる25℃における前記粘着剤層のせん断貯蔵弾性率G’は、0.01MPa以上、0.20MPa以下である、光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を備える光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板と、接着剤層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはトリアセチルセルロースフィルムとを備える光学積層体が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。ガラス板は、光学特性に優れる一方、耐衝撃性が低い。耐衝撃性は、ガラス板が衝撃を受けたときに、ガラス板にクラックを含む損傷を抑制する性質である。特許文献1の実施例に記載の光学積層体は、3層積層構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、光学積層体には、より高いレベルの耐衝撃性が求められる。例えばガラス板の厚みを非常に厚くすれば、耐衝撃性は向上する。しかし薄型化、軽量化の観点で、より薄いガラスが望ましい。
【0005】
本発明は、耐衝撃性に優れる光学積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本願発明者らは、鋭意検討した結果、驚くべきことに、厚みが40μm以上、60μm以下の薄いガラス板を光学積層体に備え、また、特定のtanδおよび特定の引張貯蔵弾性率E’を有するフィルムを接着剤層を介して光学積層体に備え、さらに厚みが20μm以下の粘着剤層をフィルムのガラス板とは反対面に備えることによって、光学積層体の耐衝撃性を向上できることを見出した。
【0007】
本発明(1)は、ガラス板と、接着剤層と、フィルムと、粘着剤層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、前記ガラス板は、40μm以上、60μm以下の厚みを有し、周波数10Hz、昇温速度2℃/min、引張モードの動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃における前記フィルムのtanδの平均が、0.06以上であり、前記動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃における前記フィルムの引張貯蔵弾性率E’の平均が、3GPa以上、6GPa以下であり、前記粘着剤層は、20μm以下の厚みを有する、光学積層体を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学積層体は、ガラス板の厚みが40μm以上60μm以下であり、特定のtanδおよび特定の引張貯蔵弾性率E’を有するフィルムを接着剤層を介して備え、さらに20μm以下の厚みを有する粘着剤層を備えるので、耐衝撃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の光学積層体の一実施形態の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す光学積層体を備える有機エレクトロルミネセンス表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<光学積層体1>
本発明の光学積層体の一実施形態を、
図1を参照して説明する。
【0011】
この光学積層体1は、例えば、面方向に延びる平板形状を有する。面方向は、光学積層体1の厚み方向に直交する。光学積層体1は、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4と、粘着剤層12とを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0012】
<ガラス板2>
ガラス板2は、面方向に延びる。ガラス板2は、光学積層体1における厚み方向他方面を形成する。ガラス板2の全光線透過率は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上であり、また、例えば、99%以下である。ガラス板2は、市販品を用いることができ、例えば、G-leafシリーズ(登録商標、日本電気硝子社製)を用いることができる。
【0013】
<ガラス板2の厚み>
ガラス板2の厚みは、40μm以上、60μm以下である。ガラス板2の厚みが十分に厚ければ耐衝撃性が向上する。この観点から、ガラス板2の厚みがより厚いほど、耐衝撃性もより向上すると考えられるが、ガラス板2の厚みが40μm以上、60μm以下において、特定のtanδおよび特定の引張貯蔵弾性率E’を有するフィルム4を接着剤層3を介して光学積層体1に備え、さらに20μm以下の粘着剤層12を備えることによって、光学積層体1は、耐衝撃性を向上することができる。
【0014】
ガラス板2の厚みは、好ましくは、42μm以上、より好ましくは、45μm以上、さらに好ましくは、48μm以上である。ガラス板2の厚みは、例えば、58μm以下、好ましくは、55μm以下、より好ましくは、52μm以下である。なお、ガラス板2は、上記した厚みを有するので、薄ガラス板と称呼される。
【0015】
<接着剤層3>
接着剤層3は、面方向に延びる。接着剤層3は、ガラス板2の厚み方向一方面に配置されている。具体的には、接着剤層3は、ガラス板2の厚み方向一方面に接触する。接着剤層3は、粘着剤(感圧接着剤)からなる粘着剤層(感圧接着剤層)ではなく、硬化型接着剤の硬化体である。詳しくは、接着剤層3は、活性エネルギー線の照射または加熱よって硬化反応する硬化型接着剤の硬化体である。
【0016】
硬化型接着剤は、接着剤層3の硬化原料であって、活性エネルギー硬化型、および、熱硬化型が挙げられ、好ましくは、活性エネルギー硬化型が挙げられる。具体的には、硬化型接着剤としては、例えば、アクリル接着剤組成物、エポキシ接着剤組成物、および、シリコーン接着剤組成物が挙げられ、優れた耐衝撃性を得る観点から、エポキシ接着剤組成物が挙げられる。
【0017】
エポキシ接着剤組成物は、エポキシ樹脂を主剤として含む。エポキシ樹脂としては、例えば、2つのエポキシ基を含有する2官能エポキシ樹脂、3つ以上エポキシ基を含有する多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用できる。好ましくは、2官能エポキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂との併用が挙げられる。
【0018】
2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などの芳香族系エポキシ樹脂、例えば、トリエポキシプロピルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂などの含窒素環エポキシ樹脂、さらには、脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。2官能エポキシ樹脂として、好ましくは、脂肪族型エポキシ樹脂が挙げられる。脂肪族型エポキシ樹脂は、脂肪族脂環式エポキシ樹脂を含む。2官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、100g/eq.以上、好ましくは、120g/eq.以上であり、また、例えば、250g/eq.以下、好ましくは、150g/eq.以下である。エポキシ樹脂における2官能エポキシ樹脂の割合は、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下、好ましくは、97質量%以下である。
【0019】
多官能エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、3官能脂肪族エポキシ樹脂などの3官能以上の多官能エポキシ樹脂が挙げられる。多官能エポキシ樹脂として、好ましくは、3官能脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、130g/eq.以上、好ましくは、150g/eq.以上であり、また、例えば、220g/eq.以下、好ましくは、200g/eq.以下である。エポキシ樹脂における多官能エポキシ樹脂の割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0020】
エポキシ接着剤組成物におけるエポキシ樹脂の割合は、例えば、60質量%以上、好ましくは、75質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0021】
エポキシ樹脂は、市販品を用いることができ、脂肪族脂環式エポキシ樹脂として、セロキサイド2021P(ダイセル化学社製)、3官能脂肪族エポキシ樹脂として、EHPE3150(ダイセル化学社製)などが用いられる。
【0022】
また、エポキシ接着剤組成物は、活性エネルギー硬化型であれば、光酸発生剤を含む。光酸発生剤としては、例えば、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられる。光酸発生剤は、市販品を用いることができ、トリアリールスルホニウム塩として、CPI101A(サンアフロ社製)などが用いられる。エポキシ接着剤組成物における光酸発生剤の割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0023】
さらに、エポキシ接着剤組成物は、例えば、オキセタン系樹脂、シランカップリング剤などの添加剤を適宜の割合で含むことができる。
【0024】
オキセタン系樹脂としては、例えば、3-エチル-3-オキセタンメタノール、2―エチルヘキシルオキセタンなどの単官能オキセタン、例えば、キシリレンビスオキセタン、3―エチル―3{[(3―エチルオキセタン―3―イル)メトキシ]メチル}オキセタンなどの2官能オキセタンが挙げられる。オキセタン系樹脂は、市販品を用いることができ、アロンオキセタン(東亞合成社製)などが用いられる。
【0025】
シランカップリング剤として、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤などが挙げられる。シランカップリング剤は、市販品を用いることができ、KBMシリーズ(信越シリコーン社製)などが挙げられる。
【0026】
接着剤層3の厚みは、限定されない。接着剤層3の厚みは、例えば、0.1μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下、より好ましくは、3μm以下である。
【0027】
接着剤層3の全光線透過率は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上であり、また、例えば、99%以下である。
【0028】
25℃における接着剤層3の引張貯蔵弾性率E’は、例えば、1GPa以上、好ましくは、2GPa以上、より好ましくは、3GPa以上、さらに好ましくは、4GPa以上であり、また、例えば、100GPa以下である。25℃における接着剤層3の引張貯蔵弾性率E’は、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件の温度分散モードで動的粘弾性を測定することにより求められる。また、ナノインデンター法で測定される25℃における接着剤層3の弾性率は、例えば、1GPa以上、好ましくは、2GPa以上、より好ましくは、3GPa以上、さらに好ましくは、4GPa以上であり、また、例えば、100GPa以下である。ナノインデンター法の測定条件は、下記の通りである。
【0029】
装置:Triboindenter(Hysitron Inc.製)
サンプルサイズ:10×10mm
圧子:Concial(球形圧子:曲率半径10μm)、
測定方法:単一押し込み測定
測定温度:25℃
圧子の押込深さ:100nm
温度:25℃
解析:荷重-変位曲線に基づくOliver Pharr解析
【0030】
<フィルム4>
フィルム4は、接着剤層3に対するガラス板2の反対側に位置する。フィルム4は、面方向に延びる。フィルム4は、接着剤層3の厚み方向一方面に配置している。なお、フィルム4は、接着剤層3の厚み方向一方面に接触している。これによって、接着剤層3は、ガラス板2の厚み方向一方面、および、フィルム4の厚み方向他方面に接触し、ガラス板2とフィルム4とを接着(接合)している。
【0031】
<フィルム4のtanδの平均>
周波数10Hz、昇温速度2℃/min、データ取得間隔0.5min、引張モードの動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃におけるフィルム4のtanδの平均は、0.06以上である。-100℃から-50℃におけるフィルム4のtanδの平均が0.06未満であれば、光学積層体1の耐衝撃性が低下する。-100℃から-50℃におけるフィルム4のtanδの平均は、物体が光学積層体1に高速で衝突したときの応答性を示す指標である。tanδの平均が高ければ、ガラス板2が受けた衝撃をフィルム4が十分に緩和でき、光学積層体1の耐衝撃性を向上できる。
【0032】
-100℃から-50℃におけるフィルム4のtanδの平均の上限は、限定されない。-100℃から-50℃におけるフィルム4のtanδの平均は、例えば、0.50以下である。動的粘弾性試験は、後の実施例で記載する。
【0033】
<フィルム4の引張貯蔵弾性率E’の平均>
周波数10Hz、昇温速度2℃/min、データ取得間隔0.5min、引張モードの動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃におけるフィルム4の引張貯蔵弾性率E’の平均は、3GPa以上、好ましくは、4GP以上、より好ましくは、5GP以上であり、また、6GPa以下である。-100℃から-50℃におけるフィルム4の引張貯蔵弾性率E’の平均が6GPaを越えると、フィルム4が硬くなりすぎ、光学積層体1の耐衝撃性が低下する。一方、-100℃から-50℃におけるフィルム4の引張貯蔵弾性率E’の平均が3GP未満であれば、フィルム4が柔らかすぎるため、その結果、光学積層体1の耐衝撃性を十分に向上できない。
【0034】
フィルム4としては、例えば、ポリエステルフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、および、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムが挙げられる。フィルム4として、光学積層体1の耐衝撃性を向上させる観点から、好ましくは、PETフィルムが挙げられる。
【0035】
フィルム4の厚みは、限定されない。フィルム4の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、30μm以上、さらに好ましくは、40μm以上であり、また、例えば、150μm以下、好ましくは、100μm以下、好ましくは、75μm以下である。
【0036】
フィルム4の全光線透過率は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上であり、また、例えば、99%以下である。
【0037】
<粘着剤層12>
粘着剤層12は、フィルム4の厚み方向一方面を形成する。粘着剤層12は、フィルム4の厚み方向一方面に配置される。具体的には、粘着剤層12は、フィルム4の厚み方向一方面に接触する。粘着剤層12は、硬化反応を伴わず、感圧接着する接着体である。
【0038】
粘着剤層12の材料は、限定されない。粘着剤層12の材料としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤、および、ポリエーテル系粘着剤が挙げられる。材料としては、好ましくは、アクリル系粘着剤が挙げられる。粘着剤層12の処方および物性は、例えば、特開2018-28573号公報に詳述される。
【0039】
粘着剤層12の25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’は、例えば、0.01MPa以上であり、また、例えば、0.20MPa以下である。せん断貯蔵弾性率G’は、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、せん断(ひねり)モードの動的粘弾性試験により求められる。
【0040】
粘着剤層12の厚みは、20μm以下である。粘着剤層12の厚みが20μmを越えれば、光学積層体1の耐衝撃性が低下する。粘着剤層12の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上である。
【0041】
光学積層体1の厚みは、例えば、70μm以上であり、また、例えば、250μm以下以下である。
【0042】
<光学積層体1の製造方法>
光学積層体1の製造方法を説明する。光学積層体1の製造方法では、例えば、まず、ガラス板2の厚み方向一方面および/またはフィルム4の厚み方向他方面に、硬化型接着剤を配置(塗布)し続いて、ガラス板2およびフィルム4で、硬化型接着剤を挟み込む。
【0043】
その後、硬化型接着剤を硬化させる。硬化型接着剤が活性エネルギー硬化型であれば、紫外線を含む活性エネルギーを硬化型接着剤に照射する。具体的には、紫外線を、ガラス板2側から硬化型接着剤に照射する。硬化型接着剤が熱硬化型であれば、硬化型接着剤を加熱する。これにより、ガラス板2およびフィルム4を強固に接着する接着剤層3を形成する。
【0044】
その後、フィルム4の厚み方向一方面に粘着剤層12を配置する。例えば、粘着剤を含むワニスをフィルム4の厚み方向一方面に塗布および乾燥する。または、図示しない剥離シートに形成した粘着剤層12をフィルム4の厚み方向一方面に転写することもできる。これによって、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4と、粘着剤層12とを備える光学積層体1を得る。なお、図示しない剥離シートを光学積層体1に備えてもよい。その場合には、光学積層体1は、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4と、粘着剤層12と、図示しない剥離シートとを備える。
【0045】
<光学積層体1の用途>
光学積層体1は、各種光学用途に用いられ、例えば、画像表示装置に備えられる。画像表示装置としては、例えば、有機エレクトロルミネセンス表示装置(以下、単に「有機EL表示装置」と略称する。)が挙げられる。
【0046】
次に、光学積層体1を備える有機EL表示装置10を、
図2を参照して説明する。
【0047】
<有機EL表示装置10>
有機EL表示装置10は、面方向に延びる平板形状を有する。有機EL表示装置10は、次に説明する導電性フィルム13を備えることから、タッチパネル型入力表示装置として機能する。有機EL表示装置10は、光学積層体1と、導電性フィルム13と、第2粘着剤層14と、画像表示部材15とを備える。なお、この有機EL表示装置10では、紙面上側が、ユーザーの視認側であって、表側(
図1の厚み方向他方側に相当)であり、紙面下側が、裏側(
図1の厚み方向一方側に相当)である。
【0048】
<光学積層体1>
光学積層体1は、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4と、粘着剤層12とを裏側に向かって順に備える。
【0049】
<導電性フィルム13>
導電性フィルム13は、導電層16と、基材層17とを裏側に向かって順に備える。
【0050】
<導電層16>
導電層16は、所定パターンを有する。導電層16の表面および側面は、粘着剤層12に接触する。導電層16の材料としては、例えば、金属酸化物、導電性繊維(繊維)、および、金属が挙げられる。金属酸化物としては、複合酸化物が挙げられる。複合酸化物としては、例えば、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、および、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)が挙げられる。導電性繊維としては、例えば、金属ナノワイヤ、および、カーボンナノチューブが挙げられる。金属としては、例えば、金、白金、銀、および、銅が挙げられる。導電層16は、面方向中央部に位置するセンサ電極部18と、センサ電極部18に周辺に位置する引出し配線部19とを一体的に有する。導電層16の詳細は、例えば、特開2017-102443号公報、特開2014-113705号公報、および、特開2014-219667号公報に記載される。
【0051】
<基材層17>
基材層17は、導電層16の裏面、および、粘着剤層12の裏面に配置されている。基材層17は、面方向に延びる。基材層17は、例えば、樹脂層である。基材層17の材料としては、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、および、ポリスチレン樹脂が挙げられる。オレフィン樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、シクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、PET、PBT、および、PENが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。基材層17の詳細は、例えば、特開2018-181722号公報に記載される。
【0052】
<第2粘着剤層14>
第2粘着剤層14は、導電性フィルム13の裏面に配置されている。具体的には、第2粘着剤層14は、導電性フィルム13の裏面に接触している。第2粘着剤層14の材料は、粘着剤層12の材料と同様である。
【0053】
<画像表示部材15>
画像表示部材15は、有機EL表示装置10の裏面を形成する。画像表示部材15は、導電性フィルム13の裏側に第2粘着剤層14を介して配置されている。画像表示部材15は、面方向に延びる。画像表示部材15は、具体的には、有機EL素子である。例えば、画像表示部材15は、図示しないが、表示基板と、2つの電極と、2つの電極に挟まれる有機EL層と、封止層とを含む。なお、画像表示部材15の構成および物性は、例えば、特開2018-28573号公報に詳述される。
【0054】
<一実施形態の作用効果>
この光学積層体1は、40μm以上、60μm以下の厚みを有するガラス板2と、接着剤層3と、-100℃から-50℃におけるtanδの平均が、0.06以上であり、-100℃から-50℃における引張貯蔵弾性率E’の平均が、3GPa以上、6GPa以下であるフィルム4とを備え、さらに、粘着剤層12をさらに備える。また、粘着剤層12は、20μm以下の厚みを有する。そのため、光学積層体1は、耐衝撃性に優れる。
【0055】
<変形例>
以下の変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態態と同様の作用効果を奏することができる。
【0056】
一実施形態では、フィルム4は、単層であるが、フィルム4の層数は、限定されない。フィルム4は、複層でもよい。
【0057】
本発明の光学積層体は耐衝撃性に優れるので、厚みが40μm以上、60μm以下のガラス板でも十分な耐衝撃性を有する。厚みが40μm以上、60μm以下のガラス板は屈曲性に優れるため、本発明の光学積層体は、フォルダブルディスプレイおよびローラブルディスプレイなどのフレキシブルディスプレイにも好適に用いることができる。
【0058】
図1の1点破線で示すように、光学積層体1は、機能層37をさらに備えることができる。機能層37は、ガラス板2の厚み方向他方面に配置される。機能層37としては、例えば、ハードコート層、飛散防止層、防汚層、および、反射防止層が挙げられる。これらは、単層でもよく複数積層されてもよい。
【実施例】
【0059】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0060】
実施例1
厚み50μmのガラス板2(G-leaf)、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるフィルム4(ダイアホイルS100、三菱ケミカル社製)を準備した。また、脂肪族脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P、エポキシ当量128~133g/eq.、ダイセル化学社製)70質量部、3官能脂肪族エポキシ樹脂(EHPE3150、エポキシ当量170~190g/eq.、ダイセル化学社製)5質量部、オキセタン系樹脂(アロンオキセタン、東亜合成社製)19質量部、シランカップリング剤(KBM-403、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)4質量部、光酸発生剤(CPI101A、トリアリールスルホニウム塩、サンアフロ社製)2質量部を配合して、エポキシ接着剤組成物を調製した。このエポキシ接着剤組成物をガラス板2とフィルム4とで挟み込んだ。
【0061】
その後、紫外線を、ガラス板2側から硬化型接着剤に照射した。これにより、ガラス板2およびフィルム4を強固に接着する硬化体からなる厚み1μmの接着剤層3を形成した。ナノインデンター法で測定される25℃における接着剤層3の弾性率は、4.9GPaであった。
【0062】
次いで、厚み15μmの粘着剤層12をフィルム4の厚み方向一方面に、転写により配置した。粘着剤層12は下記の通りに調製した。
【0063】
ラウリルアクリレート(LA)43質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)44質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)6質量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)7質量部、および、BASF製「イルガキュア184」0.015質量部を配合し、紫外線を照射して重合し、ベースポリマー組成物(重合率:約10%)を得た。
【0064】
別途、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)60質量部、メタクリル酸メチル(MMA)40質量部、α-チオグリセロール3.5質量部、および、トルエン100質量部を混合し、窒素雰囲気下にて70℃で1時間撹拌した。次に、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を投入し、70℃で2時間反応させた後、80℃に昇温して2時間反応させた。その後、反応液を130℃に加熱して、トルエン、連鎖移動剤および未反応モノマーを乾燥除去して、固形状のアクリル系オリゴマーを得た。アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は5100であった。ガラス転移温度(Tg)は130℃であった。
【0065】
ベースポリマー組成物の固形分100質量部に対して、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.07質量部、アクリル系オリゴマー1質量部、シランカップリング剤(信越化学製「KBM403」)0.3質量部を添加した後、これらを均一に混合して、粘着剤組成物を調製した。
【0066】
粘着剤組成物を、PETフィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRF75」)からなる剥離シートの表面に塗布し、その後、別のPETフィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRF75」)からなる剥離シートを塗膜に貼り合わせた。その後、塗膜に紫外線を照射して、厚み15μmの粘着剤層12を調製した。この粘着剤層12の25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’は、0.03MGPaであった。測定方法は、以下の通りである。粘着剤層12を円盤状に外形加工し、パラレルプレートに挟み込み、Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を用いて、以下の条件の動的粘弾性測定により、粘着剤層12の25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を求めた。
【0067】
[条件]
モード:ねじり
温度:-40℃から150℃
昇温速度:5℃/分
周波数:1Hz
【0068】
これにより、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4と、粘着剤層12とを備える光学積層体1を製造した。
【0069】
比較例1
実施例1と同様にして、光学積層体1を製造した。但し、粘着剤層12の厚みを25μmに変更した。
【0070】
比較例2
実施例1と同様にして、光学積層体1を製造した。但し、ガラス板2の厚みを70μmに変更した。
【0071】
比較例3
実施例1と同様にして、光学積層体1を製造した。但し、フィルム4として、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(KC4UYW、コニカミノルタ製)を用いた。
【0072】
比較例4
実施例1と同様にして、光学積層体1を製造した。但し、フィルム4として、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(KC8UAW、コニカミノルタ製)を用いた。
【0073】
<評価>
各実施例および比較例について、下記の事項を測定および評価した。それらの結果を表1に記載する。
【0074】
<フィルム4のtanδおよび引張貯蔵弾性率E’>
各実施例および比較例で準備したフィルム4を動的粘弾性試験に供した。装置および条件を下に記載する。
【0075】
装置:日立ハイテクサイエンス社製 多機能動的粘弾性測定装置 DMS6100
温度範囲 :-100~200℃
昇温速度 :2℃/min
モード :引張
サンプル幅 :10mm
チャック間距離 :20mm
周波数 :10Hz
歪振幅 :10μm
雰囲気 :大気(250ml/min)
データの取得間隔:0.5min(1℃毎)
【0076】
-100℃から-50℃におけるフィルム4の引張貯蔵弾性率E’の平均のそれぞれは、-100℃から-50℃における上記した取得したすべてのデータの総和をデータの数で割って、算出した。-100℃から-50℃におけるフィルム4のtanδの平均のそれぞれは、-100℃から-50℃における上記した取得したすべてのデータの総和をデータの数で割って、算出した。
【0077】
<ペンドロップ割れ試験>
各実施例および比較例の光学積層体1について、下記のペンドロップ割れ試験を実施した。
図1の仮想線で示すように、まず、ガラス板2が上側を向くように、光学積層体1を樹脂フィルム34の表面に置いた。具体的には、粘着剤層12を樹脂フィルム34の表面に貼着した。樹脂フィルム34は、プレスケール(富士フィルム製 プレスケールMS中圧用モノシートタイプ、厚み95μm)である。樹脂フィルム34は、図示しない水平台の表面に配置されている。次いで、ガラス板2から5cmの高さから7gのペン29(Pentelボールペン BK407黒、ボール径0.7mm)を落下させるペンドロップ割れ試験を実施する。上記した高さ5cmは、ガラス板2の厚み方向一方面と、ペン29の先端部32との距離である。先端部32は、下側を向き、尖っている。この光学積層体1では、ペン29の上記した落下で、ガラス板2に割れが発生すれば、ペンドロップ割れ試験の高さH1は、5cmとなる。ガラス板2に割れが発生しなれば、1cmずつ高さを段階的に引き上げる。これにより、ガラス板2に割れが発生したときの高さH1を得る。
【0078】
<各実施例および比較例の対比>
<粘着剤層12の厚みの評価>
粘着剤層12の厚みを評価する。実施例1と比較例1とを対比する。実施例1の粘着剤層12の厚みは、15μmである。一方、比較例1の粘着剤層12の厚みは、25μmである。比較例1のペンドロップ割れ試験の高さH1 10cmに対して、実施例1のペンドロップ割れ試験の高さH1 20cmは、高い。そのため、粘着剤層12の厚みを20μm以下にすることにより、光学積層体1の耐衝撃性が向上することが分かる。
【0079】
<ガラス板2の厚みの評価>
ガラス板2の厚みを評価する。実施例1と比較例2とを対比する。実施例1のガラス板2の厚みは、50μmである。比較例2のガラス板2の厚みは、70μmである。比較例2のペンドロップ割れ試験の高さH1 7cmに対して、実施例1のペンドロップ割れ試験の高さH1 20cmは、高い。そのため、ガラス板2の厚みを60cm以下にすることによって、光学積層体1の耐衝撃性が向上することが分かる。
【0080】
<フィルム4のtanδの平均の評価>
フィルム4のtanδの平均を評価する。実施例1と比較例3と比較例4とを対比する。実施例1のフィルム4のtanδの平均は、0.062である。比較例3と比較例4とのそれぞれのフィルム4のtanδの平均は、0.047μmである。比較例3と比較例4とのそれぞれのペンドロップ割れ試験の高さH1 7cmと10cmとに対して、実施例1のペンドロップ割れ試験の高さH1 20cmは、高い。そのため、フィルム4のtanδの平均を0.06以上にすることによって、光学積層体1の耐衝撃性が向上することが分かる。
【表1】
【符号の説明】
【0081】
1 光学積層体
2 ガラス板
3 接着剤層
4 フィルム
12 粘着剤層