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  • 特許-非水電解液二次電池の製造方法 図1
  • 特許-非水電解液二次電池の製造方法 図2
  • 特許-非水電解液二次電池の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20221221BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20221221BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20221221BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221221BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20221221BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
H01M4/485
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020198128
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086223
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】原 尊
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-080105(JP,A)
【文献】特開平05-054910(JP,A)
【文献】特開平10-270072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 10/0568
H01M 10/0569
H01M 10/052
H01M 4/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層を含む正極と負極活物質層を含む負極とセパレータとを含む電極体を、注液孔が形成された電池ケースに収容する収容工程と、
前記電池ケースに非水電解液を注液して電池組立体を構築する構築工程と、
前記注液孔が開放された前記電池組立体をチャンバーの内部に配置して、前記チャンバーの内部の第1圧力が前記電池ケースの内部の第2圧力より低い状態で前記電池組立体を充電する第1充電工程と、
前記注液孔を封止する封止工程と、
前記注液孔が封止された前記電池組立体をさらに充電する第2充電工程と、
を含
前記第1充電工程において、前記電池組立体をSOCが10%~20%になるまで充電する、
非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記第1充電工程において、前記チャンバーの内部の前記第1圧力が負圧になるように前記チャンバーの内部を真空引きしながら、前記電池組立体を充電する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記正極活物質層は、正極活物質としてリチウム遷移金属酸化物を含み、
前記非水電解液は、電解質としてのリチウム塩と、前記リチウム塩を溶解するカーボネート系溶媒と、を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池では、初期充電の際に非水電解液の一部が分解され、負極活物質層の表面にその分解物を含む皮膜(即ち、Solid Electrolyte Interface膜、以下SEI膜とする。)が形成される。SEI膜は負極活物質層を保護する役割を果たすと共に、負極活物質層と非水電解液との界面を安定化し、電池性能(例えばサイクル特性)を向上させ得る。
【0003】
ところで、負極活物質層の表面に上記皮膜が形成されるときには、同時に非水電解液の一部が分解されてガスが発生する。発生したガスは、電極体の内部に残存することがある。電極体の内部にガスが残存するということは、かかる部分において非水電解液が存在していないことになり、該部分において皮膜が形成されなくなる虞がある。この結果、電池性能が低下するという問題が生じ得る。
【0004】
皮膜形成の際に発生するガスを除去する従来技術として、特許文献1および特許文献2が挙げられる。特許文献1には、初期充電を行った後に発電要素が収容される収容空間に溜まったガスを外部に排出し、さらに収容空間を真空引きする技術が開示されている。また、特許文献2には、真空チャンバー内に満たされた非水電解液中に電池エレメントが配置された状態で予備充電を行うことによって、発生したガスを非水電解液から外部に放出させる技術が開示されている。また、特許文献3には、切れ目加工を施した熱収縮部材を電極捲回体と円筒缶との間に設けることで、電極捲回体と電池缶との間のガス流路を確保することを目的とした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-283923号公報
【文献】特開平11-31531号公報
【文献】特開2012-114006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、電極体の内部に残存するガスを効果的に除去することができず、電池性能の低下を抑制することができない。即ち、負極活物質層のうちガスと接触している部分は非水電解液がほとんど含侵しないため、初期充電の際にSEI膜が十分に形成されない虞がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、皮膜形成時に発生するガスを効果的に除去して電池性能に優れる非水電解液二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、正極活物質層を含む正極と負極活物質層を含む負極とセパレータとを含む電極体を、注液孔が形成された電池ケースに収容する収容工程と、前記電池ケースに非水電解液を注液して電池組立体を構築する構築工程と、前記注液孔が開放された前記電池組立体をチャンバーの内部に配置して、前記チャンバーの内部の第1圧力が前記電池ケースの内部の第2圧力より低い状態で前記電池組立体を充電する第1充電工程と、前記注液孔を封止する封止工程と、前記注液孔が封止された前記電池組立体をさらに充電する第2充電工程と、を含む、非水電解液二次電池の製造方法。
【0009】
上記構成では、チャンバーの内部に配置された電池組立体の電池ケースの注液孔は開放されている。即ち、チャンバーの内部と電池ケースの内部(即ち電極体)とは注液孔を介して連通した状態である。ここで、第1充電工程では、チャンバーの内部の第1圧力が電池ケースの内部の第2圧力より低い状態で電池組立体を充電するため、電池ケースの内部において非水電解液の分解により発生したガスは、より圧力の低いチャンバーの内部へと移動する。即ち、電池ケースの内部において発生したガスは、電極体の内部に滞留する間もなくチャンバーの内部へと排出される。これにより、負極活物質層の全体に亘って非水電解液が含侵するため、第1充電工程の際に負極活物質層の全体に亘って皮膜を好適に形成することができる。従って、電池性能に優れた非水電解液二次電池を製造することができる。
【0010】
ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、上記第1充電工程において、上記チャンバーの内部の上記第1圧力が負圧になるように上記チャンバーの内部を真空引きしながら、上記電池組立体を充電する。これにより、非水電解液の分解により発生したガスが電極体の内部に残留することをより確実に抑止することができる。
【0011】
ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、上記第1充電工程において、上記電池組立体をSOCが10%~20%になるまで充電する。非水電解液の分解により発生するガスの大部分は、SOCが10%~20%に至る間に発生する。このため、第1充電工程において、電池組立体をSOCが10%~20%になるまで充電することにより、ガスの大部分を取り除くことができ、電極体の内部に残留し得るガスを低減することができる。
【0012】
ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、上記正極活物質層は、正極活物質としてリチウム遷移金属酸化物を含み、上記非水電解液は、電解質としてのリチウム塩と、上記リチウム塩を溶解するカーボネート系溶媒と、を含む。かかる構成によると、非水電解液の分解がより進行して、より多くのガスが発生し得る。このため、上記製造方法によると、より多く発生したガスをより確実に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るリチウムイオン二次電の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図2】一実施形態に係るチャンバー内に電池組立体が配置された状態を示す模式図である。
図3】一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0015】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいう。また、非水電解液二次電池とは、非水系の電解液中に含まれる電解質イオンを電荷担体として利用する二次電池をいう。以下、非水電解液二次電池の製造方法の一例としてリチウムイオン二次電池の製造方法を例に、本技術について説明する。なお、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池(非水電解液二次電池)100の製造方法は、電極体20を電池ケース30に収容する収容工程S10と、電池組立体100Aを構築する構築工程S20と、電池組立体100Aを充電する第1充電工程S30と、封止工程S40と、電池組立体100Aをさらに充電する第2充電工程S50と、を含む。
【0017】
まず、収容工程S10について説明する。収容工程S10では、正極活物質層54を含む正極50と負極活物質層64を含む負極60と第1セパレータ71と、第2セパレータ72とを含む電極体20を、注液孔37が形成された電池ケース30に収容する。
【0018】
図2に示すように、電池ケース30の形状は、扁平な角形である。電池ケース30は、一側面に開口部30Hを有する箱型の本体31と、該本体31の開口部30Hを塞ぐ板状の蓋体32とを備える。電池ケース30の蓋体32には、外部接続用の正極外部端子42および負極外部端子44と、安全弁36とが設けられている。安全弁36は、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に、該内圧を開放する。また、電池ケース30の蓋体32には、非水電解液10を電池ケース30の内部に注入するための注液孔37が設けられている。電池ケース30の材質は、軽量で熱伝導性が良い材質が望ましい。一例として、本実施形態の電池ケース30の材質には、熱伝導性が高く且つ適度な剛性を有するアルミニウムが用いられている。しかし、電池ケース30の構成を変更することも可能である。例えば、電池ケース30として、可撓性を有するラミネートが用いられてもよい。
【0019】
電極体20は、長尺状の正極50、長尺状の第1セパレータ71、長尺状の負極60、および長尺状の第2セパレータ72が重ね合わされて捲回されている。詳細には、正極50は、長尺状の正極集電体52と、正極集電体52の片面または両面(本実施形態では両面)に、長手方向に沿って形成された正極活物質層54と、を含む。負極60は、長尺状の負極集電体62と、負極集電体62の片面または両面(本実施形態では両面)に、長手方向に沿って形成された負極活物質層64と、を含む。露出部52A,62Aは、電極体20の捲回軸の方向の両端部の各々に位置する。露出部52Aは、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分である。露出部52Aには、正極集電端子43が接合される。正極集電端子43には、正極外部端子42が電気的に接続される。また、露出部62Aは、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分である。露出部62Aには、負極集電端子45が接合される。負極集電端子45には、負極外部端子44が電気的に接続される。なお、電極体20は、捲回電極体でなく、正極、負極、およびセパレータが積層された積層電極体であってもよい。
【0020】
正極50および負極60には、従来のリチウムイオン二次電池に用いられているものと同様のものを特に制限なく使用することができる。典型的な一態様を以下に示す。
【0021】
正極50を構成する正極集電体52としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質層54に含まれる正極活物質としては、例えばリチウム遷移金属酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等)、リチウム遷移金属リン酸化合物(例、LiFePO等)等が挙げられる。正極活物質層54は、活物質以外の成分、例えば導電材やバインダ等を含み得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例、グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
【0022】
負極60を構成する負極集電体62としては、例えば銅箔等が挙げられる。負極活物質層64に含まれる負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。なかでも、黒鉛が好ましい。黒鉛は、天然黒鉛であっても人工黒鉛であってもよく、非晶質炭素材料で被覆されていてもよい。負極活物質層64は、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0023】
第1セパレータ71および第2セパレータ72としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の多孔性シート(フィルム)が好適に使用され得る。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。第1セパレータ71および第2セパレータ72の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0024】
次に、構築工程S20について説明する。構築工程S20では、電池ケース30に非水電解液10を注液して電池組立体100Aを構築する。非水電解液10は、電池ケース30の蓋体32に形成された注液孔37を介して電池ケース30の内部(即ち本体31)に注液される。例えば、電池ケース30の内部の圧力を大気圧よりも低下させた状態で、非水電解液10の注液が行われる。注液が完了すると、電池ケース30の内部の圧力は、大気圧以上の圧力に戻される。非水電解液10は、通常、有機溶媒(非水溶媒)および支持塩含有する。
【0025】
非水溶媒は、リチウムイオン二次電池用電解液の非水溶媒として用いられている公知のものを使用することができ、その具体例としては、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等が挙げられる。なかでも、カーボネート類が好ましい。カーボネート類(カーボネート系溶媒)の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。非水溶媒は、支持塩(電解質)を溶解する。
【0026】
支持塩は、主たる電解質として用いられ、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩が好適に用いられる。かかる支持塩の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定されない。例えば、支持塩としてLiPFを用いる場合、LiPFのモル含有量は、0.5mol/L~3.0mol/L(好ましくは0.5mol/L~1.5mol/L、例えば1mol/L)に調整される。このように非水電解液中のLiPFの含有量を調整することによって、非水電解液中の総イオン含有量と電解液の粘性を適度なバランスにすることができるため、イオン伝導度を過度に低下させることなく、入出力特性を向上させることができる。
【0027】
次に、第1充電工程S30について説明する。第1充電工程S30では、注液孔37が開放された電池組立体100Aをチャンバー90の内部に配置して、チャンバー90の内部の第1圧力が電池ケース30の内部の第2圧力より低い状態で電池組立体100Aを充電する。
【0028】
図2に示すように、チャンバー90は内部に電池組立体100Aを配置可能な大きさに形成されている。電池組立体100Aは、チャンバー90の内部に配置されたり、チャンバー90の内部から取り出したりすることができる。チャンバー90には、排気口90Hが形成されている。排気口90Hには、真空ポンプ92が設けられている。真空ポンプ92は、チャンバー90の内部を真空引きするように構成されている。真空ポンプ92が駆動することでチャンバー90の内部は負圧(例えば、低真空、中真空、高真空。)になる。また、チャンバー90の内部には、電池組立体100Aを充電する充電装置(図示せず)が設けられている。
【0029】
ここで、注液孔37が開放された電池組立体100Aがチャンバー90の内部に配置されたとき、即ち真空ポンプ92を駆動する前のチャンバー90の内部の第1圧力は、大気圧に等しい。また、真空ポンプ92を駆動する前の電池ケース30の内部の第2圧力は、例えば、大気圧に等しい。第1充電工程S30では、真空ポンプ92を駆動してチャンバー90の内部を真空引きすることによって、チャンバー90の内部の第1圧力が電池ケース30の内部の第2圧力より小さくなるようにする。本実施形態では、チャンバー90の内部の第1圧力が負圧になるようにチャンバー90の内部を真空引きする。そして、チャンバー90の内部の第1圧力が電池ケース30の内部の第2圧力より低い状態で電池組立体100Aを充電する。第1充電工程S30では、電池組立体100AをSOCが10%~20%(例えば15%)になるまで充電する。第1充電工程S30では、電池組立体100Aを例えば3.7Vになるまで充電する。第1充電工程S30では、好ましくは、真空ポンプ92によってチャンバー90の内部を真空引きしながら、電池組立体100Aを充電する。電池組立体100Aを充電することによって、非水電解液10の一部が分解されて負極活物質層64に皮膜(SEI膜)が形成されるとともにガスが電極体20に発生するが、発生したガスは真空ポンプ92によって電池ケース30の外部へと排出される。電池組立体100Aの充電中にはガスが発生し続けるが、真空ポンプ92によってチャンバー90の内部を真空引きし続けることで、電極体20にガスが残留することが抑制される。即ち、電極体20の全体に亘って非水電解液10が含侵するため、負極活物質層64に形成される皮膜にムラが発生することが抑制される。
【0030】
次に、封止工程S40について説明する。封止工程S40では、第1充電工程S30において充電された電池組立体100Aをチャンバー90から取り出す。そして、注液孔37を封止する。本実施形態では、注液孔37に封止部材38(図3参照)を溶接することにより注液孔37を封止する。
【0031】
次に、第2充電工程S50について説明する。第2充電工程S50では、注液孔37が封止された電池組立体100Aをさらに充電する。第2充電工程S50は、通常大気圧下で行われるものであり、チャンバー90の内部では行われない。第2充電工程S50では、電池組立体100AをSOCが100%になるまで充電する。第2充電工程S50では、電池組立体100Aを例えば3.7Vから4.2Vになるまで充電する。以上のようにして、図3に示すように、電極体20と、非水電解液10と、電池ケース30とを備えた密閉型のリチウムイオン二次電池100が製造される。上記製造方法によって製造されたリチウムイオン二次電池100は、第1充電工程S30においてチャンバー90の内部を真空引きしながら電池組立体100Aを充電しているため、非水電解液10の分解によって発生したガスが電池ケース30の内部(即ち電極体20の内部)から除去されて、負極活物質層64の全体に亘って皮膜が好適に形成されており、優れた電池性能を発揮することができる。
【0032】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定
するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、
変更したものが含まれる。
【0033】
上述した実施形態では、第1充電工程S30において、真空ポンプ92を駆動してチャンバー90の内部を真空引きしながら電池組立体100Aを充電していたが、例えば、チャンバー90の内部の圧力が十分に負圧である場合には、真空ポンプ92を駆動せずに電池組立体100Aを充電しても、電池ケース30からガスを排出することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 非水電解液
20 電極体
30 電池ケース
37 注液孔
50 正極
60 負極
64 負極活物質層
90 チャンバー
92 真空ポンプ
100 リチウムイオン二次電池(非水電解液二次電池)
100A 電池組立体
図1
図2
図3