(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ASK1阻害ピロロピリミジン及びピロロピリジン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20221221BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20221221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221221BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221221BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221221BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20221221BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221221BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221221BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221221BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20221221BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
C07D487/04 140
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P29/00
A61P25/04
A61P25/00
A61P9/00
A61P3/10
A61K31/519
A61K31/4545
C07D487/04 CSP
(21)【出願番号】P 2020501447
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 GB2018051983
(87)【国際公開番号】W WO2019012284
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504064364
【氏名又は名称】ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】デビッド アマンティニ
(72)【発明者】
【氏名】ミラン メシク
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン サクスティー
(72)【発明者】
【氏名】タンジャ ポルジャク
(72)【発明者】
【氏名】イネス ブジャシノビク
(72)【発明者】
【氏名】ディンコ ジヘル
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ウィッティー
(72)【発明者】
【氏名】カール リチャード ギブソン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-505037(JP,A)
【文献】特表2012-532931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/04
C07D 487/04
A61P 43/00
A61P 35/00
A61P 29/00
A61P 25/04
A61P 25/00
A61P 9/00
A61P 3/10
A61K 31/519
A61K 31/4545
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:の化合物:
【化1】
(式中、
R
1は、H、CH
3、F、またはClであり、
Xは、N、CH、またはC-CNであり、
R
2は、CH
3またはハロゲンである)
またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物、もしくは溶媒和物の薬学的に
許容される塩。
【請求項2】
R
1がFである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R
2がCH
3である、請求項1または2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
XがCHである、請求項1、2、または3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
XがC-CNである、請求項1、2、または3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
XがNである、請求項1、2、または3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記化合物が以下から選択される、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩:
2-アミノ-5-フルオロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド、
2-アミノ-5-メチル-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド、
2-アミノ-5-クロロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-ピリジン-4-カルボキサミド、
2-アミノ-N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド、
2-アミノ-N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミド、
2-アミノ-N-[1-(5-シアノ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミド、及び
2-アミノ-N-[1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
を含む、薬学的組成物。
【請求項9】
医薬における使用のための
請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患の予防及び/または処置における使用のための、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物、もしくは溶媒和物の薬学的に
許容される塩を調製するためのプロセスであって、
(a)式IIの化合物:
【化2】
(式中、X及びR
2は、請求項1で定義されている通りである)
を式IIIの化合物:
【化3】
(式中、R
1は、請求項1で定義されている通りである)
またはその保護誘導体と反応させることと、
(b)式Iの化合物の保護誘導体を脱保護することと、
(c)式Iの化合物またはその保護誘導体を、さらなる式Iの化合物またはその保護誘導体に相互転換することと、
(d)任意選択で、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を形成することと
を含む、前記プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患の予防及び/または処置におけるピロロピリミジン化合物及びその使用に関する。特定的な態様において、本発明化合物は、ASK阻害剤、特定的にはASK1阻害剤である。また、本発明は、本発明化合物及び本発明化合物を含む薬学的組成物を生成するための方法、ならびに疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患の予防及び/または処置における本発明化合物の使用も提供する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスシグナル調節キナーゼ(ASK1)は、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)及びリポ多糖(LPS)などの炎症促進性分子、小胞体ストレス、酸化ストレス、遺伝毒性ストレス、フリーラジカル、Fasリガンド、及びカルシウム過負荷を含めたストレス刺激への応答を誘発するマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナリング経路上にある、遍在的に発現されたSer/Thrキナーゼである(Takeda K et al(2008) Annu Rev Pharacol Toxicol 248 pp199-225;Nagai H et al(2007) J Biochem Mol Biol 40 pp1-6)。
【0003】
ASK1は、MAPキナーゼキナーゼ(MKK)を通じてシグナリングを行う複数のMAPキナーゼキナーゼキナーゼ(MAP3K)のうちの1つである。ASK1シグナリングの場合、MKK3及びMKK6はp38経路を活性化し、MKK4及びMKK7はJNK経路を活性化する(Davis RJ(2000) Cell 103 pp239-252;Ichijo H et al(1997) Science 275 pp90-94)。そのため、ASK1の阻害剤は、p38及びJNKの両方を通じてシグナリング経路を抑制する潜在可能性を有する。
【0004】
可溶性TNF受容体の使用:Fc融合タンパク質(エタネルセプト)は、炎症性疼痛の臨床において有効であり、また神経因性疼痛の前臨床モデルにおいても有効である(Hao S et al(2007) Gene Therapy 14 pp1010-1016)ことが示されており、このことは、TNF-αが疼痛応答におけるキーとなる媒介物質であることを意味する。IL-6は、TNF-αシグナリングのキーとなる下流媒介物質であり、抗IL-6療法をリウマチ性関節炎の有効な治療アプローチとして支持する臨床的エビデンスが存在する(Rocheは、2008年5月にアクテムラ/トシリズマブにおけるポジティブな第III相試験結果を発表している)。
【0005】
機能的ASK1を有しない複数の細胞(ASK1ノックアウトマウスから単離、または遺伝子サイレンシング後)が、TNF-α誘発性アポトーシスに対する耐性を有する(Tobiume K,et al(2001) EMBO Rep 2 pp222-228)。そのため、ASK1は、TNF-α経路において重要であり、ASK1阻害を介してTNF-αシグナリング経路を分断することが疼痛軽減などの有益な下流効果につながるという仮説を裏付ける。p38及び/またはJNKを炎症促進性媒介物質及びその後の疼痛応答の生成と結びつける強力なエビデンスが存在する(Ji R-R and Suter MR(2007) Molecular Pain 3 pp33-41;Cheng HT et al(2008) Neuroscience 155 pp948-958;Ji R-R and Gao Y-J(2008) Neurosci Lett 437 pp180-183)。ASK1活性化は、p38及びJNKの両方の活性化につながり得るため、ASK1の阻害は、p38阻害剤単体よりも強力である潜在可能性を有し、またシグナリングカスケードにおいてより上方にあることから、望ましくない傾向の可能性を限定し得る。
【0006】
線維症は、細胞外マトリックス(ECM)の過剰な沈着が存在する創傷治癒プロセスである。ECMは、コラーゲン、非コラーゲン糖タンパク質、マトリックス結合成長因子、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、及びマトリックス細胞タンパク質から構成され、これらは正常組織及び線維性組織の両方のスキャフォールディングをもたらす。
【0007】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、発展途上国における慢性肝疾患の最も一般的な原因である(Younossi ZM,et al.,Clin Gastroenterol Hepatol 2011;9:524-30及びCohen JC,et al.,Science,2011;332:1519-23)。当該疾患は、2つのカテゴリー:非アルコール性脂肪肝(または単純な肝脂肪化)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に大別することができる。以前は、肝脂肪化は主に非進行性であり、一方NASHはNAFLDの進行性形態であると考えられていたが、最近の連続生検の研究からのエビデンスにより、肝脂肪化またはNASHの患者は、続いて進行性の線維症及び肝硬変へと疾患が進行するリスクが増大することが実証されている(Singh S,et al,Clin Gastroenterol Hepatol 2015;13:643-54及びMcPherson S,et al.,J Hepatol 2015;62:1148-55)。
【0008】
酸化ストレスは、NASHにおける肝星細胞(HSC)の活性化で主要な役割を担うことが知られており(Bian Z,& Ma X.Front Physiol 2012;3:248及びKoek GH,et al.,Clin Chim Acta 2011;412:1297-305)、抗酸化剤は、肝細胞傷害に対し防止効果を発揮するだけでなく、線維形成の減少(Serviddio G et al.,Free Radic Biol Med 2013;65:952-68)、細胞の抗酸化防御有効性に影響を及ぼすバリアントがNAFLD線維症のリスクに影響するという遺伝子関連性の研究によって支持されている作用に対し、直接的に寄与し得る(Al-Serri A,et al.,J Hepatol 2012;56:448-54)。
【0009】
アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)は、高血糖、TGF-β、及びROSを含めた様々な刺激によって活性化されるキナーゼである(Karnik S,Charlton MR,Li L,et al.,The Liver Meeting 2015,San Francisco,CA,November 13-17,American Association for the Study of Liver Diseases,2015)。ASK1は、p38経路及びJNK1経路を活性化することにより、アポトーシス、線維症、及び代謝機能不全を誘発する。ASK1経路は、ヒトNASH肝生検で活性化されていることが示されている(Karnik S,The Liver Meeting 2014,Boston,Massachusetts,November 7-11,American Association for the Study of Liver Diseases,2014)。さらに、6ヵ月のNASHヒト臨床試験において、ASK1阻害剤セロンセルチブは、肝線維症ステージ、肝硬変への進行、肝硬化度、及び肝脂肪含量の低減をもたらすことが示されている(Loomba et al.The liver meeting 2016,Boston,Massachusetts,November 11-15,American Association for the Study of Liver Diseases,2016)。
【0010】
WO2008/016131は、糖尿病及び炎症性疾患の処置における使用のための縮合複素環式ASK1阻害剤を開示している。WO2004/048565は、がん及び変性疾患の処置において有用であり得るASK1活性を有する新規ペプチドについて説明している。WO2009/123986及びWO2009/027283は、いずれもASK1阻害剤について説明している。WO2008/075172は、h-PGDSの阻害剤としてのニコチンアミド誘導体、及びプロスタグランジンD2媒介疾患を処置するためのその使用を開示している。WO2001/39777は、アデノシンA1、A2a、及びA3受容体に特異的な化合物を開示している。EP2058309は、縮合複素環式化合物を開示している。
【0011】
本発明は、ASK1キナーゼの阻害剤であり、かつ疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患の予防及び/または処置において有用であり得る一連のピロロピリミジン誘導体について説明する。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、疼痛及び/または線維性疾患の処置及び/または予防に有用であり得る新規のピロロピリミジン及びピロロピリミジン化合物の同定に基づく。特定的な態様において、本発明化合物は、ASK阻害剤、特定的にはASK1阻害剤である。また、本発明は、このような化合物及びこのような化合物を含む薬学的組成物を生成するための方法、ならびに疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患の予防及び/または処置における当該化合物の使用も提供する。
【0013】
したがって、本発明の第1の態様において、式I:
【化1】
を有する本発明化合物が提供される
(式中、
R
1は、H、CH
3、F、またはClであり、
Xは、N、CH、またはC-CNであり、
R
2は、CH
3またはハロゲンである)。
【0014】
特定的な態様において、本発明化合物は、ASKキナーゼファミリー、特定的にはASK1に対する選択性を示し得る。さらなる特定的な態様において、本発明化合物は、その他のキナーゼ酵素、特定的にはJAK2に対する低い活性を示し得る。このような選択性は、薬物安全性の改善をもたらし得、及び/またはオフターゲット関連リスクを低減し得る。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、本発明化合物と、薬学的担体、賦形剤、または希釈剤とを含む薬学的組成物を提供する。特定的な態様において、薬学的組成物は、追加的に、本発明化合物との組合せにおける使用に好適なさらなる治療活性成分を含み得る。より特定的な態様において、さらなる治療活性成分は、疼痛及び/または線維性疾患の予防及び/または処置のための薬剤である。
【0016】
さらに、本発明化合物は、本明細書で開示されている薬学的組成物及び処置方法で有用であり、調製及び使用の際に薬学的に許容されるものである。
【0017】
本発明のさらなる態様において、本発明は、本明細書に挙げられている状態の中から選択される状態、特定的には疼痛及び/または線維性疾患に罹患している哺乳類、特定的にはヒトを処置する方法であって、有効量の、本明細書に記載されているような本発明の薬学的組成物または化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、医薬における使用のための、本発明化合物と、好適な薬学的担体、賦形剤、または希釈剤とを含む薬学的組成物も提供する。特定的な態様において、薬学的組成物は、疼痛及び/または線維性疾患の予防及び/または処置における使用のためのものである。
【0019】
特定的な態様において、本発明化合物は、疼痛の予防及び/または処置における使用のために提供される。
【0020】
追加的な態様において、本発明は、本明細書で後ほど開示する代表的な合成プロトコル及び経路を用いて本発明化合物を合成するための方法を提供する。
【0021】
その他の目的及び利点は、この後の発明を実施するための形態を検討することにより当業者には明らかとなる。
【0022】
本発明化合物が、生物学的に活性な代謝産物をもたらすように代謝され得ることは理解されよう。
【0023】
発明の詳細な説明
定義
以下の用語は、下記に提示される意味を有するように意図されており、本発明の説明及び意図される範囲を理解するのに有用である。
【0024】
化合物、当該化合物を含有する薬学的組成物、及び当該化合物及び組成物を使用する方法を含み得る本発明を説明する際に、以下の用語は、存在する場合、別段の指示がない限り、以下の意味を有する。また、本明細書に記載される場合、いかに定義される部分のいずれについても、様々な置換基で置換され得ること、そして、それぞれの定義が、このような置換された部分を以下に示す範囲内に含むように意図されていることも理解されたい。別段の明記がない限り、「置換された」という用語は、以下に示すように定義されるものとする。さらに、「基」及び「ラジカル」という用語は、本明細書で使用する場合、互換的であるとみなされ得ることを理解されたい。
【0025】
「a」及び「an」という冠詞は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すように使用され得る。例として、「(1つの)アナログ」とは、1つのアナログまたは複数のアナログを意味する。
【0026】
「アミノ」とは、-NH2ラジカルを指す。
【0027】
「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、及びヨード(I)を指す。特定的なハロ基は、フルオロまたはクロロのいずれかである。
【0028】
「薬学的に許容される」とは、連邦政府もしくは州政府の規制機関により、または米国以外の国の対応機関により承認済みまたは承認可能であること、あるいは哺乳類、より特定的にはヒトにおける使用のために米国薬局方またはその他の一般に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。
【0029】
「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容され、かつ所望される親化合物の薬理学的活性を所持する本発明化合物の塩を意味する。特定的には、このような塩は無毒性であり、無機または有機の酸付加塩及び塩基付加塩であり得る。具体的には、このような塩としては、以下のものが挙げられる:(1)酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸で形成された酸付加塩;もしくは、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第3級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸で形成された酸付加塩;あるいは、(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンによって置き換えられている場合に、または、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位結合する場合に、形成される塩。さらに、塩としては、単に例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどが挙げられ、また、化合物が塩基性の官能基を含有する場合は、無毒性の有機酸または無機酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などが挙げられる。「薬学的に許容されるカチオン」という用語は、酸性官能基における許容されるカチオン性対イオンを指す。このようなカチオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどのカチオンにより例示される。
【0030】
「薬学的に許容されるビヒクル」とは、本発明化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を指す。
【0031】
「プロドラッグ」とは、切断可能な基を有し、かつ加溶媒分解によりまたは生理的条件下においてin vivoで薬学的活性を有する本発明化合物になる、本発明化合物の誘導体を含めた化合物を指す。このような例としては、以下に限定されないが、コリンエステル誘導体など、及びN-アルキルモルフィンエステルなどが挙げられる。
【0032】
「溶媒和物」とは、通常は加溶媒分解により、溶媒と会合する化合物の形態を指す。この物理的会合は、水素結合を含む。従来的な溶媒としては、水、EtOH、酢酸などが挙げられる。本発明の化合物は、例えば、結晶形態で調製される場合もあれば、溶媒和または水和して調製される場合もある。好適な溶媒和物としては、水和物などの薬学的に許容される溶媒和物が挙げられ、さらに、定比溶媒和物及び不定比溶媒和物の両方が挙げられる。あるいくつかの場合において、溶媒和物は、例えば、1つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれる場合に単離可能となる。「溶媒和物」は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の両方を包含する。代表的な溶媒和物としては、水和物、エタノレート、メタノレートが挙げられる。
【0033】
「対象」は、ヒトを含む。「ヒト」、「患者」、及び「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0034】
「有効量」とは、疾患を処置するために対象に投与するときに、当該疾患に対する当該処置をもたらすのに十分である化合物の量を意味する。「有効量」は、化合物、疾患、及びその重症度、ならびに処置を行う対象の年齢、体重などに応じて変動し得る。
【0035】
「防止する」または「防止」とは、疾患または障害を獲得または発生するリスクを低減する(すなわち、疾患の発症に先立って、疾患原因の病原体に曝露される恐れのある、または疾患の素因がある対象において、疾患の臨床症状のうちの少なくとも1つが発生しないようにする)ことを指す。
【0036】
「予防」という用語は、「防止」に関連するものであり、疾患の処置または治癒ではなく防止を目的とする措置または手順を指す。予防的措置の非限定的な例としては、ワクチンの投与;例えば運動抑制によって血栓症のリスクがある入院患者への低分子量ヘパリン投与;及びマラリアが風土病であるかまたはマラリアに罹患するリスクが高い地理的領域に訪問する前の抗マラリア剤(例えば、クロロキン)の投与が挙げられ得る。
【0037】
一実施形態において、任意の疾患または障害に対する「処置する」または「処置」とは、その疾患または障害を改善すること(すなわち、疾患を抑止すること、または疾患における臨床症状のうちの少なくとも1つの発症、程度、もしくは重症度を低減すること)を指す。別の実施形態において、「処置する」または「処置」とは、患者に認識できない可能性のある少なくとも1つの身体的パラメーターを改善することを指す。また別の実施形態において、「処置する」または「処置」とは、疾患または障害の調節を、身体的(例えば、認識できる症状の安定化)、生理的(例えば、身体的パラメーターの安定化)のいずれかまたは両方で行うことを指す。さらなる実施形態において、「処置する」または「処置」は、疾患の進行を遅くすることに関する。
【0038】
本明細書で使用する場合、「疼痛」という用語は、炎症性疼痛、特定的には、慢性関節疼痛(例えば、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、リウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎(痛風)、及び若年性関節炎)を指し、これには、疾患修飾及び関節構造保存の特性;筋骨格性疼痛;腰部及び頸部の疼痛;捻挫及び挫傷;神経因性疼痛;交感神経性に維持された疼痛;筋炎;がん及び線維筋痛症に関連する疼痛;片頭痛に関連する疼痛;インフルエンザまたはその他のウイルス感染症(例えば、一般的な風邪)に関連する疼痛;リウマチ熱;腸機能障害(例えば、非潰瘍性消化不良、非心臓性胸痛、及び過敏性腸症候群)に関連する疼痛;心筋虚血に関連する疼痛;術後疼痛;頭痛;歯痛;ならびに月経困難症が含まれる。より特定的には、当該用語は慢性関節疼痛を指す。より特定的には、当該用語は、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、及び痛風性関節炎(痛風)を指す。
【0039】
本明細書で使用する場合、「心血管疾患(複数可)」という用語は、心臓もしくは血管またはこの両方に影響を及ぼす疾患を指す。特定的には、心血管疾患としては、不整脈(心房性もしくは心室性または両方);アテローム性動脈硬化症及びその続発症;アンギナ;心臓リズム障害;心筋虚血;心筋梗塞;心臓瘤または血管瘤;血管炎;卒中;四肢、臓器、または組織の末梢閉塞性動脈症;脳、心臓、腎臓、もしくはその他の臓器または組織の虚血の後の再灌流傷害;動脈圧の著明な降下に関連するショック状態(例えば、内毒素ショック、外科的ショック、外傷性ショック、または敗血症性ショック);肺動脈高血圧症(PAH)、高血圧症、心臓弁膜疾患、心不全、異常血圧;ショック;血管収縮(片頭痛に関連するものを含む);血管異常;静脈瘤療法、単一の臓器または組織に限定された機能不全、機能性または器質性の静脈不全;心臓肥大、心室線維症、及び心筋リモデリングが挙げられる。より特定的には、この用語は、アテローム性動脈硬化症、肺動脈高血圧症、心不全、急性冠動脈症候群、心臓肥大、心室線維症、及び心筋リモデリングを指す。
【0040】
本明細書で使用する場合、「神経因性疼痛」または「神経因性疼痛を伴う症候群」という用語は、文脈による別段の定めがない限り、中枢性神経因性疼痛及び末梢性神経因性疼痛の両方を含み、この用語は、糖尿病性神経障害;坐骨神経痛;非特異的腰痛;多発性硬化症疼痛;線維筋痛症;HIV関連神経障害;ヘルペス後神経痛;三叉神経痛;及び身体的外傷、切断術、がん、毒素、化学療法誘発性神経障害、または慢性炎症状態に起因する疼痛を含む。神経因性疼痛の症状には、自発的な鋭い電撃痛、または継続的な灼熱痛が含まれる。加えて、「麻痺感(pins and needles)」などの正常な無痛感覚に関連する疼痛(対性知覚麻痺及び知覚異常)、触覚に対する感受性増大(知覚過敏)、無害な刺激の後の有痛性感覚(動的、静的、もしくは熱的アロディニア)、有害な刺激に対する感受性増大(熱的、寒冷的、もしくは機械的痛覚過敏)、刺激除去後の痛覚持続(痛覚異常鋭敏)、または選択的感覚経路における不在もしくは欠損(痛覚減退症)も含まれる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「炎症状態(複数可)」という用語は、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、皮膚状態(例えば、日焼け、熱傷、湿疹、皮膚炎、乾癬)、眼疾患(例えば、緑内障、網膜炎、網膜症、ぶどう膜炎、及び眼組織への急性的傷害(例えば、結膜炎))、肺障害(例えば、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気腫、呼吸窮迫症候群、ハト愛好者病、及び農夫肺)、消化管障害(例えば、炎症性腸疾患、例えば、クローン病もしくは潰瘍性大腸炎、アフタ性潰瘍、アトピー性胃炎、バリアロフォーム(varialoforme)胃炎、セリアック病、限局性回腸炎、過敏性腸症候群、胃食道逆流症、下痢、及び/または便秘)、エンドトキシン駆動疾患状態(例えば、バイパス手術後の合併症、または例えば慢性心不全に寄与する慢性エンドトキシン状態)、血管疾患などの炎症性構成要素を伴う臓器移植及びその他の状態、脂肪性肝炎、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症(sclerodoma)、重症筋無力症、多発性硬化症、サルコイドーシス(sorcoidosis)、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、心筋虚血、発熱、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、腱炎、滑液包炎、ならびにシェーグレン症候群を含めた状態の群を指す。特定的には、この用語は、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び炎症性腸疾患を指す。より特定的には、この用語は、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び炎症性腸疾患を指す。
【0042】
本明細書で使用する場合、「喘息」という用語は、任意の原因(内因性、外因性、または両方;アレルギー性または非アレルギー性)の気道収縮に関連する肺のガス流の変動によって特徴づけられる任意の肺の障害を指す。喘息という用語は、原因を示す1つ以上の形容詞と共に使用され得る。
【0043】
本明細書で使用する場合、「神経変性疾患」という用語は、神経変性に起因するまたはそれを含む状態を指し、神経変性としては、認知症、特定的には変性性認知症(老人性認知症、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病及びクロイツフェルト・ヤコブ病、ALS及び運動ニューロン疾患を含む);血管性認知症(多発梗塞性認知症を含む);ならびに頭蓋内占拠性病変に関連する認知症;外傷;感染症及び関連する状態(HIV感染を含む);末梢神経障害、多発性硬化症、網膜症、緑内障、黄斑変性症、脳虚血及び外傷性脳傷害、ならびに加齢に関連する軽度認知障害、特定的には加齢に伴う記憶障害(Age Associated Memory Impairment)が挙げられる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「糖尿病の合併症」という用語は、I型またはII型糖尿病に関連する状態を指し、このような状態としては、血管または微小血管の変化に関する状態、例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性微小血管症、糖尿病性腎症(糖尿病性腎疾患(DKD)とも呼ばれる)、黄斑変性症、緑内障、ネフローゼ症候群、糖尿病性心筋症、再生不良性貧血、ぶどう膜炎、川崎病、及びサルコイドーシス、ならびに糖尿病または肥満に関連し得る脂肪代謝の障害、例えば、肝脂肪症が挙げられる。より特定的には、この用語は、糖尿病性網膜症、糖尿病性微小血管症、糖尿病性腎症、及び肝脂肪症を指す。
【0045】
本明細書で使用する場合、「がん」という用語は、皮膚または身体の臓器(例えば、限定されないが、乳房、前立腺、肺、腎臓、膵臓、胃、もしくは腸)における悪性または良性の細胞成長を指す。がんは、隣接する組織に浸潤し、遠隔の臓器、例えば、骨、肝臓、肺、または脳に拡散(転移)する傾向がある。本明細書で使用する場合、がんという用語は、転移性腫瘍細胞タイプ(例えば、以下に限定されないが、黒色腫、リンパ腫、白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫、及びマスト細胞腫)と、組織癌腫タイプ(例えば、以下に限定されないが、結腸直腸癌、前立腺癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌、乳癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、胃癌、神経膠芽腫、原発性肝臓癌、卵巣癌、前立腺癌、ならびに子宮平滑筋腫)とを共に含む。特定的には、「がん」という用語は、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄球性白血病、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫、非定型性奇形腫/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌(骨肉腫及び悪性線維性組織球腫)、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、脳及び脊髄の腫瘍、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞性リンパ腫、胎児性腫瘍、子宮内膜癌、上衣芽腫、上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫ファミリーの腫瘍、眼癌、網膜芽腫、胆嚢癌、胃(gastric)(胃(stomach))癌、胃腸管カルチノイド腫瘍、胃腸管間質腫瘍(GIST)、胃腸管間質細胞腫瘍、生殖細胞腫瘍、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼球内黒色腫、膵島細胞腫瘍(膵内分泌部)、カポシ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、肝臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、髄芽腫、髄様上皮腫、黒色腫、中皮腫、口癌、慢性骨髄性白血病、骨髄球性白血病、多発性骨髄腫、上咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣生殖細胞腫瘍、卵巣低悪性潜在腫瘍、膵臓癌、乳頭腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、中間型松果体実質腫瘍、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、ユーイング肉腫ファミリーの腫瘍、肉腫、カポジ、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃(stomach)(胃(gastric))癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、腟癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍を指す。別の特定的な実施形態において、がんという用語は、膵臓癌、肝臓癌、肝細胞癌(HCC)、乳癌、または結腸癌を指す。特定的には、がんは、肝細胞癌、黒色腫、胃癌、脂肪肉腫、及び酸化ストレスにより引き起こされるがん(例えば、頸椎症性脊髄症)を指す。
【0046】
本明細書で使用する場合、「線維性疾患」という用語は、細胞外マトリックスの過剰な生成、沈着、及び収縮に起因する過剰な瘢痕により特徴づけられる疾患、ならびに細胞及び/またはフィブロネクチン及び/またはコラーゲンの異常な蓄積及び/または線維芽細胞動員の増加に関連する疾患を指し、以下に限定されないが、個々の臓器または組織、例えば、心臓、腎臓、肝臓、関節、肺、胸膜組織、腹膜組織、皮膚、角膜、網膜、筋骨格、及び消化管の線維症が挙げられる。特定的には、線維性疾患という用語は、特発性肺線維症(IPF);嚢胞性線維症、種々の病因のその他のびまん性実質性肺疾患(医原性薬物誘発性線維症、職業及び/または環境誘発性線維症、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、過敏性肺炎)、膠原血管病、肺胞タンパク質症、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、リンパ管平滑筋腫症、遺伝性疾患(ヘルマンスキー・パドラック症候群、結節性硬化症、神経線維腫症、代謝貯蔵障害、家族性間質性肺疾患を含む);放射線誘発性線維症;慢性閉塞性肺疾患(COPD);強皮症;ブレオマイシン誘発性肺線維症;慢性喘息;珪肺症;アスベスト誘発性肺線維症;急性呼吸窮迫症候群(ARDS);腎線維症;尿細管間質性線維症;糸球体腎炎;巣状分節性糸球体硬化症;IgA腎症;高血圧;アルポート症候群;腸線維症;肝臓維症;肝硬変;アルコール誘発性肝線維症;毒物/薬物誘発性肝線維症;血色素症;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);胆管傷害;原発性胆汁性肝硬変;感染誘発性肝線維症;ウイルス誘発性肝線維症;及び自己免疫性肝炎;角膜瘢痕;肥厚性瘢痕;デュピュイトラン病、ケロイド、皮膚線維症;皮膚強皮症;全身性硬化症、脊髄の外傷/線維症;骨髄線維症;血管再狭窄;アテローム性動脈硬化症;動脈硬化症;ウェゲナー肉芽腫症;ペイロニー病、または慢性リンパ球性を指す。特定的な実施形態において、線維性疾患は、肝線維症、肺線維症、または腎線維症などの個別の臓器または組織の疾患である。特定的な実施形態において、線維性疾患は、特発性肺線維症(IPF)、糖尿病性腎疾患(DKD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から選択される。
【0047】
「本発明化合物(複数可)」及びこれに相当する表現は、本明細書に記載されるような式(複数可)の化合物を包含することを意味し、この表現は、薬学的に許容される塩、及び溶媒和物(例えば、水和物)、ならびに文脈により許容される場合は薬学的に許容される塩の溶媒和物を含む。同様に、中間体への言及は、中間体自体が特許請求されているかされていないかにかかわらず、文脈により許容される場合はその塩及び溶媒和物を包含することを意味する。
【0048】
本明細書中で範囲(例えば、以下に限定されないがC1-8アルキル)が言及される場合、範囲の引用は、当該範囲の各メンバーの提示とみなされるべきである。
【0049】
その他の本発明化合物の誘導体は、その酸形態及び酸誘導体形態のいずれにおいても活性を有するが、酸感受性形態では、しばしば、哺乳類生体における可溶性、組織適合性、または遅延放出という利点がもたらされる。
【0050】
本明細書で使用する場合、「同位体バリアント」という用語は、化合物を構成する原子のうちの1つ以上において人為的な割合の同位体を含有する化合物を指す。例えば、ある化合物の「同位体バリアント」は、例えば、ジュウテリウム(2HまたはD)、炭素-13(13C)、窒素(15N)などの1つ以上の非放射性同位体を含有し得る。このような同位体置換が行われる化合物において、以下の原子は、存在する場合は様々なものとなる場合があり、そのため例えば、任意の水素は2H/Dとなる場合があり、任意の炭素は13Cとなる場合があり、または任意の窒素は15Nとなる場合があること、そして、このような原子の存在及び配置は当業者の技能範囲内で決定され得ることは理解されよう。同様に、本発明は、例えば、得られる化合物が薬物及び/または基質の組織分布試験に使用され得る場合における、放射性同位体を伴った同位体バリアントの調製を含み得る。放射性同位体であるトリチウム(すなわち、3H)及び炭素-14(すなわち14C)は、組込みが容易であることと検出手段が迅速であることとの観点から、とりわけこの目的に有用である。さらに、11C、18F、15O、及び13Nなどのポジトロン放出同位体で置換された化合物が調製され得、このような化合物は、基質受容体占有率を検査するためのポジトロン放出断層撮影(PET)試験に有用と考えられる。
【0051】
別段の指示がない限り、本明細書及び請求項内の特定的な化合物の説明または呼称は、その個別の鏡像異性体及び混合物の両方、ラセミまたはその他のものを含むように意図されている。立体化学の決定及び立体異性体の分離のための方法は、当技術分野で周知されている。
【0052】
本発明化合物が、生物学的に活性な代謝産物をもたらすように代謝され得ることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】実施例3.1のラットモデルにおいて、経口で与えられた2つの異なる用量の化合物1がCFA誘発性痛覚過敏に及ぼす効果を示している。
【0054】
【
図2】実施例3.2のラットモデルにおいて、経口で与えられた10mg/kgの化合物1がMIA誘発性痛覚過敏に及ぼす効果を示している。
【0055】
【
図3】5mg/kg/1日1回、15mg/kg/1日1回、及び15mg/kg/1日2回の化合物1が線維症のCFAHFDモデルからのマウス肝臓試料における線維症関連遺伝子のパネルの発現レベルに及ぼす効果を示している(実施例3.10)。
図3A:PAI1、
図3B:TIMP1、
図3C:COL1A1、
図3D:CTGF、
図3E:ACTA2、及び
図3F:TGFβ。データは73日目からのものであり、平均±SEM、CDAHFD食餌+ビヒクルに対する
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)として提示されている。
【0056】
【
図4】5mg/kg/1日1回、15mg/kg/1日1回、及び15mg/kg/1日2回の化合物1が線維症のCFAHFDモデルからのマウス肝臓試料における炎症関連遺伝子のパネルの発現レベルに及ぼす効果を示している(実施例3.10)。
図4A:TNFα、
図4B:IL10、及び
図4C:CCL2。データは73日目からのものであり、平均±SEM、CDAHFD食餌+ビヒクルに対する
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)として提示されている。
【0057】
【
図5】5mg/kg/1日1回、15mg/kg/1日1回、及び15mg/kg/1日2回の化合物1が線維症のCFAHFDモデルからのマウス肝臓組織のヒドロキシプロリンレベルに及ぼす効果を示している(実施例3.10)。データは73日目からのものであり、平均±SEM、CDAHFD食餌+ビヒクルに対する
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)として提示されている。
【0058】
【
図6】5mg/kg/1日1回、15mg/kg/1日1回、及び15mg/kg/1日2回の化合物1の効果を、線維症のCFAHFDモデルからのシリウスレッド線維症定量化を用いて示している(実施例3.10)。データは73日目からのものであり、平均±SEM、CDAHFD食餌+ビヒクルに対する
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)として提示されている。
【0059】
【
図7】5mg/kg/1日1回、15mg/kg/1日1回、及び15mg/kg/1日2回の化合物1が線維症のCFAHFDモデルからのF4/80定量化に及ぼす効果を示している(実施例3.10)。データは73日目からのものであり、平均±SEM、CDAHFD食餌+ビヒクルに対する
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)として提示されている。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は、疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患の予防及び/または処置に有用であり得る新規のピロロピリミジン及びピロロピリミジン化合物の同定に基づく。特定的な態様において、本発明化合物は、ASK阻害剤、特定的にはASK1阻害剤である。
【0061】
また、本発明は、これらの化合物、これらの化合物を含む薬学的組成物、ならびに本発明化合物を投与することにより、疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患を処置するための方法も提供する。
【0062】
したがって、本発明の第1の態様において、式I:
【化2】
を有する本発明化合物が提供される
(式中、
R
1は、H、CH
3、F、またはClであり、
Xは、N、CH、またはC-CNであり、
R
2は、CH
3またはハロゲンである)。
【0063】
一実施形態において、R1はFである。
【0064】
一実施形態において、R1はFであり、R2はCH3である。
【0065】
一実施形態において、XはCHである。代替的な実施形態において、XはC-CNである。代替的な実施形態において、XはNである。
【0066】
一実施形態において、XはNであり、R1はFである。特定的な実施形態において、XはNであり、R1はFであり、R2はCH3である。さらなる実施形態において、R2は、CH3またはClである。またさらなる実施形態において、R2はCH3である。
【0067】
一実施形態において、本発明化合物は、以下から選択される:
2-アミノ-5-フルオロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド(化合物1)、
2-アミノ-5-メチル-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド(化合物2)、
2-アミノ-5-クロロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-ピリジン-4-カルボキサミド(化合物3)、
2-アミノ-N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド(化合物4)、
2-アミノ-N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミド(化合物5)、
2-アミノ-N-[1-(5-シアノ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミド(化合物6)、及び
2-アミノ-N-[1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミド(化合物7)。
【0068】
一実施形態において、本発明化合物は同位体バリアントである。
【0069】
一態様において、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに従う本発明化合物は、遊離塩基として存在する。
【0070】
一態様において、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに従う本発明化合物は、薬学的に許容される塩である。
【0071】
一態様において、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに従う本発明化合物は、化合物の溶媒和物である。
【0072】
一態様において、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに従う本発明化合物は、化合物の薬学的に許容される塩の溶媒和物である。
【0073】
具体的な実施形態において、本明細書の実施形態のいずれか1つに従う本発明化合物は、ASK1活性に関するin vitro細胞アッセイで、構造的に同様な化合物との比較において、活性の改善を示す。特定的な実施形態において、本発明化合物は、実施例2.3に記載されているような末梢血単核球(PBMC)中のASK1活性に対する細胞アッセイにおいて、活性改善を示す。
【0074】
代替的な実施形態において、本明細書の実施形態のいずれか1つに従う本発明化合物は、Cyp活性の誘発の減少を示し得る。特定的には、本発明化合物は、構造的に同様な化合物との比較において、Cyp3A4活性の誘発の減少を示し得る。
【0075】
代替的な実施形態において、本明細書の実施形態のいずれか1つに従う本発明化合物は、Cyp活性の阻害の減少を示し得る。特定的には、本発明化合物は、構造的に同様な化合物との比較において、Cyp3A4活性の阻害の減少を示し得る。より特定的には、本発明化合物は、Cyp阻害において10μM超のIC50を示し得る。
【0076】
各実施形態における指定された基が概して上記で別々に収載されている一方で、本発明化合物は、上記式、及び本明細書に提示された他の式におけるいくつかのまたは各々の実施形態が、各変数において、それぞれ指示されている特定的なメンバーまたは基のうちの1つ以上から選択される基を含む。そのため、本発明は、全てのこのような実施形態の組合せを本発明の範囲内に含むように意図されている。
【0077】
各実施形態における指定された基が概して上記で別々に収載されている一方で、本発明化合物は、1つ以上の変数(例えば、R基)が、上記に収載された式(複数可)のいずれかに従う1つ以上の実施形態から選択される化合物であり得る。そのため、本発明は、任意の本開示の実施形態からの全ての変数の組合せを本発明の範囲内に含むように意図されている。
【0078】
代替的に、指定された変数のうちの1つ以上が基または実施形態から除外されることも、本明細書により企図されている。
【0079】
あるいくつかの態様において、本発明は、上記の式に従う化合物のプロドラッグ及び誘導体を提供する。「プロドラッグ」とは、代謝的に切断可能な基を有し、かつ加溶媒分解によりまたは生理的条件下においてin vivoで薬学的活性を有する本発明化合物になる、本発明化合物の誘導体である。このような例としては、以下に限定されないが、コリンエステル誘導体など、及びN-アルキルモルフィンエステルなどが挙げられる。
【0080】
その他の本発明化合物の誘導体は、その酸形態及び酸誘導体形態のいずれにおいても活性を有するが、酸感受性形態は、しばしば、哺乳類生体における可溶性、組織適合性、または遅延放出という利点をもたらす(Bundgaardの文献,1985)。プロドラッグとしては、当業者に周知されている酸誘導体、例えば、親酸と好適なアルコールとの反応によって調製されるエステル、または親酸化合物と置換もしくは非置換のアミンとの反応によって調製されるアミド、または酸無水物、または混合無水物が挙げられる。本発明化合物にぶら下がった酸性基から誘導される単純な脂肪族または芳香族のエステル、アミド、及び無水物は、好ましいプロドラッグである。いくつかの場合には、(アシルオキシ)アルキルエステルまたは((アルコキシカルボニル)オキシ)アルキルエステルなどの二重エステル型プロドラッグの調製が望ましい。特定的に有用なのは、本発明化合物のC1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、アリール、C7-C12置換アリール、及びC7-C12アリールアルキルのエステルである。
【0081】
医薬組成物
本発明化合物は、薬として用いられる場合、典型的には薬学的組成物の形態で投与される。このような組成物は、薬学分野で周知されている方式で調製することができ、式Iに従う、少なくとも1つの本発明の活性化合物を含む。概して、本発明化合物は、薬学的に有効な量で投与される。実際に投与される化合物の量は、典型的には、治療の対象となる状態、選択された投与経路、投与される実際の本発明化合物、個々の患者の年齢、体重、及び応答、患者の症状の重症度などを含めた関連する状況に照らし、医師により決定される。
【0082】
本発明の薬学的組成物は、経口、経直腸、経皮、皮下、関節内、静脈内、及び鼻腔内を含めた様々な経路によって投与され得る。意図される送達経路に応じて、本発明化合物は、好ましくは、注射用もしくは経口用組成物のいずれかとして、または膏薬として、ローションもしくはパッチとして、全て経皮投与用に製剤化される。
【0083】
経口投与用の組成物は、バルクの溶液もしくは懸濁液、またはバルク粉末の形態をとり得る。しかし、より一般的には、組成物は、的確な投薬を容易にするために単位剤形で提示される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物用の単位薬用量として好適な物理的に別々の単位を指し、各単位は、好適な薬学的賦形剤、ビヒクル、または担体と共に所望される治療効果をもたらすように算出された、所定量の活性材料を含有する。典型的な単位剤形としては、予め充填された計量済み液体組成物のアンプルもしくはシリンジ、または固体組成物の場合はピル、錠剤、カプセルなどが挙げられる。このような組成物において、式Iに従う本発明化合物は、通常、少量の構成成分(約0.1から約50重量%、または好ましくは約1から約40重量%)であり、残りは、様々なビヒクルまたは担体、及び所望される投薬形態の形成に役立つ処理助剤である。
【0084】
経口投与に好適な液体形態は、バッファー、懸濁剤及び分配剤(dispensing agent)、着色剤、香味料などを伴って好適な水性または非水性のビヒクルを含み得る。固体形態は、例えば、任意の以下の成分、または同様の性質の本発明化合物を含み得る:微結晶性セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、Primogel、もしくはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミントもしくはオレンジ香味物質などの香味剤。
【0085】
注射用組成物は、典型的には、注射用の無菌食塩水もしくはリン酸緩衝食塩水、または当技術分野で公知のその他の担体をベースとする。前述のように、このような組成物中における式Iに従う本発明の活性化合物は、典型的には少量の構成成分であり、多くの場合約0.05から10重量%であり、残りは注射用担体などである。
【0086】
経皮用組成物は、典型的には、活性成分(複数可)を含有する局所用の軟膏またはクリームとして、概して、約0.01から約20重量%、好ましくは約0.1から約20重量%、好ましくは約0.1から約10重量%、より好ましくは約0.5から約15重量%の範囲の量で、製剤化される。活性成分は、軟膏として製剤化される場合、典型的にはパラフィン性または水混和性いずれかの軟膏基剤と組み合わされる。代替的に、活性成分は、水中油型クリーム基剤を用いてクリームに製剤化されてもよい。このような経皮用製剤は、当技術分野で周知されており、概して、活性成分または製剤の安定性の皮膚浸透を強化するための追加的成分を含む。全てのこのような公知の経皮用製剤及び成分は、本発明の範囲内に含まれる。
【0087】
本発明化合物は、経皮用デバイスによって投与されてもよい。したがって、経皮投与は、リザーバーもしくは多孔質膜タイプ、または様々な固体マトリックスのパッチを用いて遂行され得る。
【0088】
上述の経口投与用、注射用、または局所投与用組成物のための構成成分は、単なる代表例である。その他の材料及び処理技法などについては、参照により本明細書に援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,1985,Mack Publishing Company,Easton,PennsylvaniaのPart 8に記載されている。
【0089】
本発明化合物は、持続放出形態で、または持続放出薬物送達システムから投与されてもよい。代表的な持続放出材料の説明については、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに見いだすことができる。
【0090】
以下の製剤例は、本発明に従って調製され得る代表的な薬学的組成物を例示するものである。ただし、本発明は、以下の薬学的組成物に限定されない。
【0091】
製剤1(錠剤)
式Iに従う本発明化合物を、乾燥粉末として、乾燥ゼラチン結合剤とおよそ1:2の重量比で混合することができる。滑沢剤として少量のステアリン酸マグネシウムを添加してもよい。混合物を、錠剤プレスにおいて240-270mgの錠剤(式Iに従う本発明の活性化合物は1錠当たり80-90mg)に形成することができる。
【0092】
製剤2(カプセル)
式Iに従う本発明化合物を、乾燥粉末として、デンプン希釈剤とおよそ1:1の重量比で混合することができる。混合物を、250mgのカプセル(式Iに従う本発明の活性化合物は1カプセル当たり125mg)に充填することができる。
【0093】
製剤3(液体)
式Iに従う本発明化合物(125mg)を、スクロース(1.75g)及びキサンタンガム(4mg)と混合し、得られた混合物をブレンドし、No.10メッシュU.S.ふるいに通し、次いで事前に作製した微結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(11:89、50mg)の水中溶液と混合することができる。安息香酸ナトリウム(10mg)、香味料、及び着色料を水で希釈し、撹拌しながら添加することができる。次いで、十分な水を撹拌しながら添加することができる。さらに、次いで十分な水を添加して、5mLの総量を得ることができる。
【0094】
製剤4(錠剤)
式Iに従う本発明化合物を、乾燥粉末として、乾燥ゼラチン結合剤とおよそ1:2の重量比で混合することができる。滑沢剤として少量のステアリン酸マグネシウムを添加してもよい。混合物を、錠剤プレスにおいて450-900mgの錠剤(式Iに従う本発明の活性化合物は150-300mg)に形成することができる。
【0095】
製剤5(注射)
式Iに従う本発明化合物を、緩衝無菌食塩水注射用水性媒体に溶解または懸濁して、およそ5mg/mLの濃度とすることができる。
【0096】
製剤6(局所用)
ステアリルアルコール(250g)及び白色ワセリン(250g)を約75℃で融解し、次いで、式Iに従う本発明化合物(50g)、メチルパラベン(0.25g)、プロピルパラベン(0.15g)、ラウリル硫酸ナトリウム(10g)、及びプロピレングリコール(120g)の水(約370g)に溶解した混合物を添加し、得られた混合物を凝結するまで撹拌することができる。
【0097】
治療方法
一実施形態において、本発明は、医薬における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、本発明は、疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患の予防及び/または処置における使用のための、本発明化合物または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0098】
別の実施形態において、本発明は、疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患の予防及び/または処置における使用のための医薬品の製造における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0099】
一実施形態において、本発明は、本発明化合物と、別の治療剤とを含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、他の治療剤は、疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患の予防及び/または処置のための薬剤である。
【0100】
追加的な処置方法態様において、本発明は、疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患の予防及び/または処置の方法であって、有効量の、本発明化合物、または当該状態の処置もしくは予防のための本明細書に記載の薬学的組成物のうちの1つ以上を投与することを含む、方法を提供する。
【0101】
追加的な処置方法態様において、本発明は、疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患に罹患している哺乳類の予防及び/または処置の方法であって、有効量の、本発明化合物、または当該状態の処置もしくは予防のための本明細書に記載の薬学的組成物のうちの1つ以上を投与することを含む、方法を提供する。
【0102】
一実施形態において、本発明は、疼痛の予防及び/または処置における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、疼痛は、慢性関節疼痛から選択される。慢性関節疼痛の具体的な実施形態は、変形性関節炎、リウマチ性関節炎、リウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎(痛風)、及び/または若年性関節炎の疼痛である。
【0103】
別の実施形態において、本発明は、疼痛の予防及び/または処置における使用のための医薬品の製造における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、疼痛は、慢性関節疼痛から選択される。慢性関節疼痛の具体的な実施形態は、変形性関節炎、リウマチ性関節炎、リウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎(痛風)、及び/または若年性関節炎の疼痛である。
【0104】
追加的な処置方法態様において、本発明は、疼痛に罹患している哺乳類の予防及び/または処置の方法であって、有効量の、本発明化合物、または当該状態の処置もしくは予防のための本明細書に記載の薬学的組成物のうちの1つ以上を投与することを含む、方法を提供する。特定的な実施形態において、疼痛は、慢性関節疼痛から選択される。慢性関節疼痛の具体的な実施形態は、変形性関節炎、リウマチ性関節炎、リウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎(痛風)、及び/または若年性関節炎の疼痛である。
【0105】
一実施形態において、本発明は、炎症状態の予防及び/または処置における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、炎症状態は、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び炎症性腸疾患から選択される。より特定的には、炎症状態は、変形性関節炎である。
【0106】
別の実施形態において、本発明は、炎症状態の予防及び/または処置における使用のための医薬品の製造における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、炎症状態は、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び炎症性腸疾患から選択される。より特定的には、炎症状態は、変形性関節炎である。
追加的な処置方法態様において、本発明は、炎症状態に罹患している哺乳類の予防及び/または処置の方法であって、有効量の、本発明化合物、または当該状態の処置もしくは予防のための本明細書に記載の薬学的組成物のうちの1つ以上を投与することを含む、方法を提供する。特定的な実施形態において、炎症状態は、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び炎症性腸疾患から選択される。より特定的には、炎症状態は、変形性関節炎である。
【0107】
一実施形態において、本発明は、心血管疾患の予防及び/または処置における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、肺動脈高血圧症、心不全、急性冠動脈症候群、心臓肥大、心室線維症、及び心筋リモデリングから選択される。
【0108】
別の実施形態において、本発明は、心血管疾患の予防及び/または処置における使用のための医薬品の製造における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、肺動脈高血圧症、心不全、急性冠動脈症候群、心臓肥大、心室線維症、及び心筋リモデリングから選択される。
【0109】
追加的な処置方法態様において、本発明は、心血管疾患に罹患している哺乳類の予防及び/または処置の方法であって、有効量の、本発明化合物、または当該疾患の処置もしくは予防のための本明細書に記載の薬学的組成物のうちの1つ以上を投与することを含む、方法を提供する。特定的な実施形態において、心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、肺動脈高血圧症、心不全、急性冠動脈症候群、心臓肥大、心室線維症、及び心筋リモデリングから選択される。
【0110】
一実施形態において、本発明は、神経変性疾患の予防及び/または処置における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、神経変性疾患は、変性性認知症、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び網膜症から選択される。
【0111】
別の実施形態において、本発明は、神経変性疾患の予防及び/または処置における使用のための医薬品の製造における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、神経変性疾患は、変性性認知症、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び網膜症から選択される。
【0112】
追加的な処置方法態様において、本発明は、神経変性疾患に罹患している哺乳類の予防及び/または処置の方法であって、有効量の、本発明化合物、または当該疾患の処置もしくは予防のための本明細書に記載の薬学的組成物のうちの1つ以上を投与することを含む、方法を提供する。特定的な実施形態において、神経変性疾患は、変性性認知症、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び網膜症から選択される。
【0113】
一実施形態において、本発明は、神経疾患の予防及び/または処置における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、神経疾患は、神経因性疼痛、認知症、多発性硬化症、及び網膜症から選択される。
【0114】
別の実施形態において、本発明は、神経疾患の予防及び/または処置における使用のための医薬品の製造における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、神経変性疾患は、神経因性疼痛、認知症、多発性硬化症、及び網膜症から選択される。
【0115】
追加的な処置方法態様において、本発明は、神経疾患に罹患している哺乳類の予防及び/または処置の方法であって、有効量の、本発明化合物、または当該疾患の処置もしくは予防のための本明細書に記載の薬学的組成物のうちの1つ以上を投与することを含む、方法を提供する。特定的な実施形態において、神経変性疾患は、神経因性疼痛、認知症、多発性硬化症、及び網膜症から選択される。
【0116】
一実施形態において、本発明は、糖尿病の合併症の予防及び/または処置における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、合併症は、糖尿病性網膜症、糖尿病性微小血管症、糖尿病性腎症、及び肝脂肪症から選択される。
【0117】
別の実施形態において、本発明は、糖尿病の合併症の予防及び/または処置における使用のための医薬品の製造における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、合併症は、糖尿病性網膜症、糖尿病性微小血管症、糖尿病性腎症、及び肝脂肪症から選択される。
【0118】
追加的な処置方法態様において、本発明は、糖尿病の合併症に罹患している哺乳類の予防及び/または処置の方法であって、有効量の、本発明化合物、または当該合併症の処置もしくは予防のための本明細書に記載の薬学的組成物のうちの1つ以上を投与することを含む、方法を提供する。特定的な実施形態において、合併症は、糖尿病性網膜症、糖尿病性微小血管症、糖尿病性腎症、及び肝脂肪症から選択される。
【0119】
一実施形態において、本発明は、がんの予防及び/または処置における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0120】
別の実施形態において、本発明は、がんの予防及び/または処置における使用のための医薬品の製造における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0121】
追加的な処置方法態様において、本発明は、がんに罹患している哺乳類の予防及び/または処置の方法であって、有効量の、本発明化合物、または当該がんの処置もしくは予防のための本明細書に記載の薬学的組成物のうちの1つ以上を投与することを含む、方法を提供する。
【0122】
一実施形態において、本発明は、線維性疾患の予防及び/または処置における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、線維性疾患は、肝線維症、肺線維症、または腎線維症などの個別の臓器または組織の疾患である。特定的な実施形態において、線維性疾患は、特発性肺線維症(IPF)、糖尿病性腎疾患(DKD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から選択される。
【0123】
別の実施形態において、本発明は、線維性疾患の予防及び/または処置における使用のための医薬品の製造における使用のための、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物を提供する。特定的な実施形態において、線維性疾患は、肝線維症、肺線維症、または腎線維症などの個別の臓器または組織の疾患である。特定的な実施形態において、線維性疾患は、特発性肺線維症(IPF)、糖尿病性腎疾患(DKD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から選択される。
【0124】
追加的な処置方法態様において、本発明は、線維性疾患に罹患している哺乳類の予防及び/または処置の方法であって、有効量の、本発明化合物、または当該疾患の処置もしくは予防のための本明細書に記載の薬学的組成物のうちの1つ以上を投与することを含む、方法を提供する。特定的な実施形態において、線維性疾患は、肝線維症、肺線維症、または腎線維症などの個別の臓器または組織の疾患である。特定的な実施形態において、線維性疾患は、特発性肺線維症(IPF)、糖尿病性腎疾患(DKD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から選択される。
【0125】
注射用量レベルは、約0.1mg/kg/hから少なくとも10mg/kg/h、または約1から約120h、特に24から96hの範囲である。また、的確な定常状態レベルを達成するために、約0.1mg/kgから約10mg/kgまたはそれ以上のプレロードボーラスも投与され得る。40から80kgのヒト患者に対する最大総用量は、約1g/日を超えないものと考えられる。
【0126】
変性状態などの長期状態の予防及び/または処置については、処置レジメンは、通常、数ヵ月または数年に及ぶため、患者の利便性及び忍容性のために経口投薬が好ましい。経口投薬の場合、1日に1から4回(1-4回)の規則的用量、1日に1から3回(1-3回)の規則的用量、典型的には1日に1から2回(1-2回)の規則的用量、最も典型的には1日に1回の規則的用量が代表的なレジメンである。代替的に、効果が長時間続く薬物については、経口投薬の場合、2週間に1回、1週間に1回、及び1日に1回が代表的なレジメンである。特定的には、薬用量レジメンは、1-14日ごと、より特定的には1-10日ごと、さらに特定的には1-7日ごと、最も特定的には1-3日ごとであり得る。
【0127】
これらの投薬パターンを用いて、各用量は、約1から約1000mgの本発明化合物を提供し、特定的な用量は、各々が約10から約500mg、特に約30から約250mgを提供する。
【0128】
経皮的用量は、概して、注射用量を用いて達成されるのと同様のまたはより低い血液レベルをもたらすように選択される。
【0129】
本発明化合物は、状態の発症を防止するのに使用される場合、当該状態を発生するリスクのある患者に、典型的には医師の助言に基づきかつ医師の監視下で、上記の薬用量レベルで投与されることになる。特定的な状態を発生するリスクがある患者としては、概して、当該状態の家族歴を有する患者、または遺伝子検査もしくはスクリーニングにより、当該状態の発生に対し特定的に感受性を有することが同定された患者が挙げられる。
【0130】
本発明化合物は、単独の活性薬剤として投与されてもよく、または他の治療剤と組み合わせて投与されてもよく、この他の治療剤には、同じまたは同様な治療活性を実証しており、かつこのような組合せ投与に対し安全かつ有効であると判定されている他の本発明化合物が含まれる。具体的な実施形態において、2つ(またはそれ以上)の薬剤の同時投与により、使用すべき各薬剤の用量の顕著な低下が可能になり、それにより、観察される副作用の低減が可能になる。
【0131】
一実施形態において、本発明化合物、または本発明化合物を含む薬学的組成物は、医薬品として投与される。具体的な実施形態において、当該薬学的組成物はさらに、さらなる活性成分を含む。
【0132】
一実施形態において、本発明の化合物は、炎症状態の処置及び/または予防のための別の治療剤と同時投与され、特定的な薬剤としては、以下に限定されないが、免疫調節剤(例えば、アザチオプリン)、コルチコステロイド(例えば、プレドニソロンまたはデキサメタゾン)、シクロホスファミド、シクロスポリンA、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、ムロモナブ-CD3(OKT3、例えば、Orthocolone(登録商標))、ATG、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、及びピロキシカムが挙げられる。
【0133】
一実施形態において、本発明化合物は、関節炎(例えば、リウマチ性関節炎)の処置及び/または予防のための別の治療剤と同時投与され、特定的な薬剤としては、以下に限定されないが、鎮痛剤、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ステロイド、合成の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)(例えば、限定されないが、メトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン、オーラノフィン、金チオリンゴ酸ナトリウム、ペニシラミン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、アザチオプリン、トファシチニブ、バリシチニブ、フォスタマチニブ、及びシクロスポリン)、ならびに生物学的DMARD(例えば、限定されないが、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、リツキシマブ、及びアバタセプト)が挙げられる。
【0134】
同時投与は、当業者には明らかであるように、2つ以上の治療剤を同じ処置レジメンの一部として患者に送達する任意の手段を含む。2つ以上の薬剤は、単一の製剤において、すなわち単一の薬学的組成物として同時に投与されてもよいが、これは必須ではない。これらの薬剤は、異なる製剤で、かつ異なる時間に投与されてもよい。
【0135】
化学合成手順
全般
本発明のさらなる態様によれば、式Iの化合物を調製するためのプロセスが提供される。本明細書におけるスキームは、本発明化合物の合成に使用され得る合成スキームの例である。本明細書のスキームにおいて、反応性基は、保護基を用いて保護され、十分に確立された技法に従って脱保護され得る。
【0136】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されているような式Iの化合物を調製するためのプロセスであって、
(a)式IIの化合物:
【化3】
(式中、X及びR
2は、本明細書で定義されている通りである)
を式IIIの化合物:
【化4】
(式中、R
1は、本明細書で定義されている通りである)
またはその保護誘導体と反応させることと、
(b)式Iの化合物の保護誘導体を脱保護することと、
(c)式Iの化合物またはその保護誘導体を、さらなる式Iの化合物またはその保護誘導体に相互転換することと、
(d)任意選択で、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を形成することと
を含む、プロセスが提供される。
【0137】
式II及びIIIの化合物は、本明細書のスキーム1A、1B、1Cに記載の手順及び化合物1から7を調製するための手順に従って調整され得る。
【0138】
本発明化合物は、以下の一般的方法及び手順を用いて、容易に入手可能な出発物質から調製され得る。典型的なまたは好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応体のモル比、溶媒、圧力など)が示されている場合は、別段の明記がない限り、他のプロセス条件も使用され得ることが理解されよう。最適な反応条件は、使用する特定的な反応体または溶媒によって変動し得るが、このような条件は、当業者により、通例的な最適化手順によって決定することができる。
【0139】
加えて、当業者には明らかであるように、あるいくつかの官能基が望ましくない反応を起こすことを防ぐために従来の保護基が必要になる場合がある。特定的な官能基のための好適な保護基の選択、ならびに保護及び脱保護のための好適な条件の選択は、当技術分野で周知されている。
【0140】
上記及び比較例で定義されているような本発明化合物の調製に関し、以下の方法が詳細に提示されている。本発明化合物は、有機合成分野の当業者により、公知または市販の出発材料及び試薬から調製され得る。
【0141】
全ての試薬は商用グレードであり、別段の明記がない限り、さらなる精製なしでそのまま使用される。不活性雰囲気下で行われる反応には市販の無水溶媒が使用される。別段の指定がない限り、その他の全ての場合には試薬グレード溶媒が使用される。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル60(35-70μm)で実施される。薄層クロマトグラフィーは、プレコーティングシリカゲル60F-254プレート(厚さ0.25mm)を用いて行われる。NMRスペクトルは、Bruker DPX 300MHz(5mm BBIプローブ搭載)、Bruker AV400MHz(5mm PABBOプローブ搭載)、Bruker DRX 500MHz(5mm PABBIプローブ搭載)、及びBruker Avance III 600分光計(5mm RT BBIプローブ搭載)に記録される。試料は、別段の明記がない限り、DMSO-d6またはCDCl3を溶媒として用いて25℃にて記録される。1H NMRスペクトルの化学シフト(δ)は、内部基準としてのテトラメチルシラン(δ0.00)に対する百万分率(ppm)で報告される。
【0142】
エレクトロスプレーMSスペクトルは、Waters Acquity PDA検出器及びSQD質量分析計を伴ったWaters Acquity UPLCで得られる。使用カラム:Acquity UPLC BEH C18 1.7μm、2.1×50mmカラムまたはAcquity UPLC CSH C18 1.7μm、2.1×50mmカラムを伴ったUPLC BEH C18 1.7μm、2.1×5mm VanGuardプレカラム。全ての方法はMeCN/H2Oグラジエントを使用する。MeCN及びH2Oは、0.1% ギ酸または10mMのNH4HCO3のいずれかを含有する。
【0143】
分取精製HPLCについては、Waters Mass Directed Autopurification Systemを使用する。システムは、Waters Sample Manager 2767、Waters System Fluid Organizer、Waters Binary Gradient Module 2545、Waters 515 HPLC Pump、Waters Photodiode Array Detector 2998、及びWaters Micromass ZQ MS detectorから構成される。使用ソフトウェア:FractionLynx及びMassLynx v4.1。一般的なHPLC法パラメーター:H
2O中0.1%のギ酸及びMeCN、または10mMのNH
4HCO
3 pH=10及びMeCNのグラジエント移動相。カラムXBridge 30×150mm、5μm。PDA検出器設定:波長:210-400nm、解像度:1.2nm、サンプリングレート:1.0ポイント/秒、フィルター応答:1。マイクロ波加熱はBiotage Initiatorで実施する。
実験セクションで使用される略語リスト:
【表1】
【0144】
質量指向型自動化HPLC
適用可能な場合、以下の装置及び条件を用いて質量指向型自動化HPLCによる精製を行った。
ハードウェア:
Waters 2525 Binary Gradient Module
Waters 515 Makeup Pump
Waters Pump Control Module
Waters 2767 Inject Collect
Waters Column Fluidics Manager
Waters 2996 Photodiode Array Detector
Waters ZQ Mass Spectrometer
Gilson 202 fraction collector
Gilson Aspec waste collector
ソフトウェア: Waters MassLynx version 4 SP2
カラム:使用カラムはWaters Atlantisとした。寸法は19mm×100mm(スモールスケール)及び30mm×100mm(ラージスケール)である。固定相の粒子サイズは5μmである。
酸性法:
溶媒:
A:水性溶媒=水+0.1%ギ酸
B:有機溶媒=アセトニトリル+0.1%ギ酸
メイクアップ溶媒=メタノール:水 80:20
ニードルリンス溶媒=メタノール
方法:
【0145】
目的化合物の分析的保持時間に応じて5つの方法を使用した。各方法の実行時間は13.5分で、10分のグラジエントと、その後の3.5分のカラムフラッシュ及び再平衡化ステップとが含まれた。
ラージ/スモールスケール 1.0-1.5(HPLC)、0.4-0.6(UPLC)=5-30% B
ラージ/スモールスケール 1.5-2.2(HPLC)、0.6-0.9(UPLC)=15-55% B
ラージ/スモールスケール 2.2-2.9(HPLC)、0.9-1.2(UPLC)=30-85% B
ラージ/スモールスケール 2.9-3.6(HPLC)、1.2-1.4(UPLC)=50-99% B
ラージ/スモールスケール 3.6-5.0(HPLC)、1.4-2.0(UPLC)=80-99% B(これを6分、この後に7.5分のフラッシュ及び再平衡化)
流量:上記方法の全てにおいて、流量は20mL/分(スモールスケール)または40mL/分(ラージスケール)のいずれかである。
高pH法:
カラム:HPLC分析は、周囲温度にてXBridge C18カラム(内径100nm×19nm、パッキング直径5μm)で行った。
溶媒:
A:水中10mMの重炭酸アンモニウム、アンモニア溶液でpH10に調整。
B:アセトニトリル。
【0146】
方法:
目的化合物の分析的保持時間に応じて5つの方法を使用した。これらの方法の実行時間は15分で、10分のグラジエントと、その後の5分のカラムフラッシュ及び再平衡化ステップとが含まれた。
ラージ/スモールスケール 1.0-1.5(HPLC)、0.4-0.6(UPLC)=1-30% B
ラージ/スモールスケール 1.5-2.2(HPLC)、0.6-0.9(UPLC)=15-55% B
ラージ/スモールスケール 2.2-2.9(HPLC)、0.9-1.2(UPLC)=30-85% B
ラージ/スモールスケール 2.9-3.6(HPLC)、1.2-1.4(UPLC)=50-99% B
ラージ/スモールスケール 3.6-5.0(HPLC)、1.4-2.0(UPLC)=80-99% B(これを6分、この後に7.5分のフラッシュ及び再平衡化)
流量:上記方法の全てにおいて、流量は20ml/分(スモールスケール)または40ml/分(ラージスケール)のいずれかである
【0147】
液体クロマトグラフィー/質量分析
下記に示す方法で指定されている装置及び条件を用いて、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)による上記実施例の分析を行った。
液体クロマトグラフィー:
方法の説明:ギ酸一般的分析UPLCオープンアクセスLC/MS
2分間法
LC/MSシステム:Acquity UPLC及びSQD質量分析計の併用
LC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18(内径50mm×2.1mm、パッキング直径1.7μm)
カラム温度:40℃
溶媒:A=水中ギ酸0.1% v/v溶液
B=アセトニトリル中ギ酸0.1% v/v溶液
注入量:2μl
勾配表:
【表2】
停止時間:2分
UV条件
PDA範囲:210nm-350nm
【0148】
UV検出は210nmから350nmの波長からのシグナルの和とした
取得レート:40Hz
MS条件
イオン化モード:交互(正及び負のエレクトロスプレー(ES
+/ES
-)のスキャン)
スキャン範囲:100から1000AMU
スキャン時間:0.15
インタースキャン遅延:
MSインタースキャン(inter-scanan):0.02秒
極性/モードスイッチインタースキャン:0.02秒
方法の説明:重炭酸アンモニウム一般的分析UPLCオープンアクセスLC/MS 2分間法
LC/MSシステム:Acquity UPLC及びSQD質量分析計の併用
LC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18(内径50mm×2.1mm、パッキング直径1.7μm))
カラム温度: 40℃
溶媒:A=NH
4HCO
3の10mM水性溶液(アンモニアでpH10に調整)
B=アセトニトリル
注入量:1μl
勾配表:
【表3】
停止時間:2分
UV条件
PDA範囲:210nm-350nm
UV検出は210nmから350nmの波長からのシグナルの和とした
取得レート:40Hz
MS条件
イオン化モード:交互(正及び負のエレクトロスプレー(ES
+/ES
-)のスキャン)
スキャン範囲:100から1000AMU
スキャン時間: 0.15
インタースキャン遅延:
MSインタースキャン:0.02秒
極性/モードスイッチインタースキャン:0.02秒
本発明化合物の合成的調製
スキーム1A 中間体Aの合成
【化5】
スキーム1B 中間体Bの合成
【化6】
スキーム1C 化合物1の合成
【化7】
【0149】
1.1 化合物1: 2-アミノ-5-フルオロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド
1.1.1 ステップ1:2-ブロモ-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸メチルの合成
【化8】
0℃に冷却した2-ブロモ-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸(10.0g、45.5mmol)のメタノール(300mL)中溶液に、塩化チオニル(16.5mL、227.3mmol)を30分かけて滴下添加した。反応混合物を周囲温度にて24時間撹拌した。トルエン(40mL)を反応混合物に添加した。メタノールを蒸発させた後、塩化チオニルを蒸留除去した。残りのトルエンをロータリー・エバポレーター上で蒸発させて粗生成物を得、これをジクロロメタン(30mL)に溶解し、減圧下で蒸発させて、2-ブロモ-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸メチル(10.3g)を得た。LCMS: MW (計算値): 232.9;MS (ES
+, m/z): 234, 236 (M+H)
+.
【0150】
1.1.2 代替的な合成手順:
0℃に冷却した2-ブロモ-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸(10.0g、45.5mmol)のメタノール(35mL)及びトルエン(65mL)中溶液に、(トリメチルシリル)ジアゾメタン(ジエチルエーテル中2.0Mの溶液;45.5mL、90.9mmol)を30分かけて滴下添加した。反応混合物を周囲温度にて撹拌した。2時間後、反応混合物を減圧下で蒸発させて粗生成物を得、これを酢酸エチル(50mL)に溶解し、水(100mL)及びブライン(50mL)でそれぞれ洗浄し、相分離フィルターで濾過し、減圧下で蒸発させて、2-ブロモ-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸メチル(10.46g)を得た。LCMS: MW (計算値): 232.9;MS (ES+, m/z): 234, 236 (M+H)+.
【0151】
1.1.3 ステップ2:2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸メチルの合成
【化9】
2-ブロモ-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸メチル(10.3g、44.0mmol)の1,4-ジオキサン(150mL)中溶液に、カルバミン酸tert-ブチル(6.18g、52.8mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.86g、0.88mmol)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(1.02g、1.76mmol)、及び炭酸セシウム(20.08g、61.6mmol)を添加した。反応混合物をアルゴンでパージし、超音波処理し、キャップ形成し、90℃にて24時間撹拌した。反応混合物を冷却し、セライトパッドで濾過し、酢酸エチルで洗浄した。母液を水(2×100mL)及びブライン(100mL)で洗浄し、減圧下で蒸発させて粗生成物を得、これを酢酸エチルで粉砕して2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸メチル(8.43g)を得た。LCMS: MW (計算値): 270.1;MS (ES
+, m/z): 215.41 (M+H-56)
+.
【0152】
1.1.4 代替的な合成手順(2-((ジフェニルメチレン)アミノ)-5-フルオロイソニコチン酸メチル中間体):
【化10】
2-ブロモ-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸メチル(308mg、1.32mmol)の1,4-ジオキサン(6mL)中脱気及びアルゴンパージ懸濁液に、ベンゾフェノンイミン(0.266mL、1.58mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(24.1mg、0.026mmol)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(30.5mg、0.053mmol)、及び炭酸セシウム(602.0mg、0.053mmol)を添加した。反応混合物をアルゴンでフラッシュし、超音波処理し、キャップ形成し、100℃にて16時間撹拌した。反応混合物を冷却し、酢酸エチル(15mL)で希釈し、水(15mL)、ブライン(15mL)で洗浄し、減圧下で蒸発させて2-((ジフェニルメチレン)アミノ)-5-フルオロイソニコチン酸メチル(230mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 334.1;MS (ES
+, m/z): 335.34 (M+H)
+.
【0153】
1.1.5 ステップ3:2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸の合成
【化11】
2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸メチル(8.43g、31.19mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)中懸濁液に、水酸化リチウム(2.98g、124.76mmol)及び水(50mL)を添加した。反応混合物を周囲温度にて終夜撹拌した。翌日、テトラヒドロフランを減圧下で蒸発させ、水層のpHを4に調整した。形成された沈殿物を濾過し、トルエン(4×20mL)と共に同時蒸発させ、真空オーブン内で40℃にて5時間乾燥して、2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸(7.79g)を得た。LCMS: MW (計算値): 256.08;MS (ES
+, m/z): 201.4 (M+H-56)
+.
【0154】
1.1.6 ステップ4:4-クロロ-5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンの合成
【化12】
5-ブロモ-4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(10.0g、43.0mmol)を乾燥THF(350mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下で-78℃に冷却した。n-BuLi(ヘキサン中2.5M、38mL、94.6mmol)を1時間かけて滴下添加した。添加完了後、溶液を40分間撹拌し、ヨードメタン(4.3mL、68.8mmol)を添加した。溶液をゆっくりと室温に到達させた。水(20mL)を添加し、溶媒を真空中で除去して褐色のスラリーを得、これを水(200mL)に溶解し、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(150mL)で洗浄し、無水でNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、濃縮して粗製化合物を得、これを酢酸エチルで粉砕して、4-クロロ-5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d](5.32g)を得た。LCMS: MW (計算値): 167.03;MS (ES
+, m/z): 168.37 (M+H)
+.
【0155】
1.1.7 ステップ5:N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-カルバミン酸tert-ブチルの合成
【化13】
4-クロロ-5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(10.0g、59.7mmol)の1-メチル-2-ピロリジノン(40mL)中溶液に、N-(4-ピペリジル)カルバミン酸tert-ブチル(17.95g、89.6mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(25.2mL、149.3mmol)を添加した。反応混合物を150℃にて3時間撹拌した。反応混合物を冷却し、冷水(300mL)に注いだ。混合物に酢酸エチル(40mL)を添加し、周囲温度にて30分間撹拌した。形成された沈殿物を濾過し、水及びジエチルエーテルで洗浄し、真空オーブン内で40℃にて終夜乾燥した。乾燥により、N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-カルバミン酸tert-ブチル(19.91g)を得た。LCMS: MW (計算値): 331.2;MS (ES
+, m/z): 332.7 (M+H)
+.
【0156】
1.1.8 ステップ6:1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミンの合成
【化14】
0℃に冷却したN-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバミン酸tert-ブチル(38.9g、117.3mmol)の1,4-ジオキサン(200mL)中懸濁液に、HCl(ジオキサン中4M溶液)(290mL)を添加した。反応混合物を周囲温度にて撹拌した。23時間後、反応混合物を減圧下で蒸発させ、トルエン(200mL)と共に同時蒸発させ、真空オーブン内で40℃にて終夜乾燥した。乾燥により、1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン(47.68g)をHCl塩として得た。LCMS: MW (計算値): 231.15;MS (ES
+, m/z): 232.6 (M+H)
+.
【0157】
1.1.1 ステップ7:N-[5-フルオロ-4-[[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバモイル]-2-ピリジル]カルバミン酸tert-ブチルの合成
【化15】
2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸(14.25g、55.6mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(130mL)中懸濁液に、HATU(19.03g、50.1mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度にて20分間撹拌し、これに1-(5-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン×2HCl(16.92g、55.6mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(47.56mL、278.1mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度にて撹拌した。3時間後、反応を完了した。反応混合物を氷冷水(1.2L)に注いだ。形成された沈殿物を濾過し、次いでアセトニトリルで洗浄し、真空オーブン内で40℃にて4時間乾燥して、N-[5-フルオロ-4-[[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバモイル]-2-ピリジル]カルバミン酸tert-ブチル(19.26g)を得た。LCMS: MW (計算値): 469.22;MS (ES
+, m/z): 470.7 (M+H)
+.
【0158】
1.1.10 ステップ8:2-アミノ-5-フルオロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミドの合成
【化16】
0℃に冷却したN-[5-フルオロ-4-[[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバモイル]-2-ピリジル]カルバミン酸tert-ブチル(25.76g、54.9mmol)のジクロロメタン(300mL)中懸濁液に、HCl(ジオキサン中4M溶液)(130mL)を滴下添加した。数分後、ゴム状の残渣が形成された。追加量のジクロロメタン(200mL)を反応混合物に添加した。ゴム状の残渣を超音波処理により破砕した(45分後)。反応混合物を周囲温度にて終夜撹拌した。翌日、沈殿物を濾過し、水、アセトニトリル、及びメタノールで洗浄し、真空オーブン内で40℃にて5時間、次いで周囲温度にて終夜乾燥した。乾燥により、2-アミノ-5-フルオロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド(13.65g)を得た。LCMS: MW (計算値): 369.17;MS (ES
+, m/z): 370.77 (M+H)
+.
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ = 1.59 - 1.70 (m, J = 12.3, 3.7 Hz, 2 H), 1.93 (dd, J = 12.6, 2.7 Hz, 2 H), 2.34 (s, 3H), 3.06 (t, J = 11.4 Hz, 2 H), 3.94 (d, J = 13.2 Hz, 2 H), 3.95 - 4.03 (m, J = 11.2, 11.2, 7.5, 4.2, 4.2 Hz, 1 H), 6.02 (s, 2 H), 6.51 (d, J = 4.8 Hz, 1 H), 7.05 (s, 1 H), 7.91 (d, J = 1.5 Hz, 1 H), 8.19 (s, 1 H), 8.46 (d, J = 7.7 Hz, 1 H), 11.51 (br. s., 1 H) ppm.
【0159】
1.2 化合物2:(2-アミノ-5-メチル-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド)
1.2.1 ステップ1:2-アミノ-5-メチル-ピリジン-4-カルボン酸メチルの合成
【化17】
2-アミノ-5-ブロモ-ピリジン-4-カルボン酸メチル(200mg、0.87mmol)、S-Phos(4.6mg、3.2mmol)、リン酸三カリウム(369.3mg、1.74mmol)、及びジアセトキシパラジウム(19.5g、0.011mmol)を合わせ、脱気し、N
2でバックフィルし、次いでDMSO(4ml)及びトリメチルボロキシン(467.5μL、3.2mmol)に室温にて溶解した。次いで混合物を80℃に加熱し、終夜撹拌した。16時間後、混合物をEtOAcで希釈し、H
2Oで洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、セライトに吸収させ、真空中で濃縮して粗生成物を得、これを、Biotage精製デバイスを介し4gのKP-Sil Interchimカラム(流量9ml/分、溶媒AとしてDCM、溶媒BとしてDCM:MeOH=20:1)で精製した。適切な画分を収集して、2-アミノ-5-メチル-ピリジン-4-カルボン酸メチル(167.03mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 166.07;MS (ES
+, m/z): 167.03 (M+H)
+.
【0160】
1.2.2 ステップ2:2-アミノ-5-メチル-ピリジン-4-カルボン酸の合成
【化18】
2-アミノ-5-メチル-ピリジン-4-カルボン酸メチル(125mg、0.75mmol)をMeOH/H
2O(2/2)に溶解し、NaOH(1
M溶液、0.75μL)を添加した。次いで混合物を60℃に加熱し、1時間撹拌した。1時間後、MeOHを蒸発させ、水性の残渣をEtOAcで抽出した。水層に残った所望の生成物を終夜凍結乾燥した。
凍結乾燥後、混合物をアセトンに溶解し、濾過し、母液を蒸発させて2-アミノ-5-メチル-ピリジン-4-カルボン酸(55mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 152.06;MS (ES
+, m/z): 153.02 (M+H)
+.
【0161】
1.2.3 ステップ3:2-アミノ-5-メチル-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミドの合成
【化19】
0℃の2-アミノ-5-メチル-ピリジン-4-カルボン酸(33mg、0.22mmol)のDMF(1mL)中溶液に、EDC×HCl(54.8mg、0.29mmol)及びDIPEA(111.1μL、0.64mmol)を添加し、30分間撹拌した。次いでHOBt×H
2O(35.6mg、0.26mmol)及び1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン(50.2mg、0.22mmol)を添加した。反応物を室温にて終夜撹拌した。翌日、反応混合物を水(5mL)で希釈し、EtOAc(3×5mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(10mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して粗生成物を得、これをBiotage精製デバイスを介し4gのKP-Sil Interchimカラム(流量9ml/分、弱溶媒としてDCM、強溶媒としてDCM:MeOH:NH
4OH=90:1.5:0.15)で精製した。適切な画分を収集して、2-アミノ-5-メチル-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド(8mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 365.20;MS (ES
+, m/z): 366.23 (M+H)
+.
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 11.51 (br. s., 1H), 8.35 (d, J=8.01 Hz, 1H), 8.17 (s, 1H), 7.75 (s, 1H), 7.05 (s, 1H), 6.35 (s, 1H), 5.81 (s, 2H), 3.95 (m, 3H), 3.05 (t, J=11.41 Hz, 2H), 2.34 (s, 3H), 2.06 (s, 3H), 1.92 (d, J=9.58 Hz, 2H), 1.56-1.70 (m, 2H) ppm.
【0162】
1.3 化合物3:2-アミノ-5-クロロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-ピリジン-4-カルボキサミド
1.3.1 ステップ1:3-クロロ-1-オキソ-ピリジン-4-カルボン酸の合成
【化20】
3-クロロピリジン-4-カルボン酸(620mg、3.94mmol)を酢酸(2mL)に溶解し、30%水性H
2O
2(6mL)を添加した。反応混合物を80℃にて38時間加熱した。完了後、反応混合物は濃縮されて半分の体積になった。形成された結晶を濾去し、真空乾燥機内で乾燥して3-クロロ-1-オキソ-ピリジン-4-カルボン酸(420mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 172.99;MS (ES
+, m/z): 174.33 (M+H)
+.
【0163】
1.3.2 ステップ2:3-クロロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-1-オキソ-ピリジン-4-カルボキサミドの合成
【化21】
0℃の3-クロロ-1-オキソ-ピリジン-4-カルボン酸(52mg、0.30mmol)のDMF(1mL)中溶液に、EDC×HCl(74.8mg、0.39mmol)及びDIPEA(161μL、0.87mmol)を添加し、30分間撹拌した。次いでHOBt×H
2O(55.1mg、0.36mmol)及び1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン(69.4mg、0.30mmol)を添加した。反応物を室温にて終夜撹拌した。翌日、反応混合物を蒸発乾固させた。油状の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(弱溶離剤:DCM、強溶離剤:DCM:MeOH:NH
4OH=90:5:0.1)により精製して、3-クロロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-1-オキソ-ピリジン-4-カルボキサミド(87mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 386.13;MS (ES
+, m/z): 387.49 (M+H)
+.
【0164】
1.3.3 ステップ3:2-アミノ-5-クロロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミドの合成
【化22】
0℃の3-クロロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-1-オキソ-ピリジン-4-カルボキサミド(87mg、0.23mmol)及びtert-ブチルアミン(0.160mL、1.53mmol)のクロロホルム(10mL)及びベンゾトリフルオリド(1mL)の混合物中溶液に、p-トルエンスルホン酸無水物(260mg、0.57mmol)を数回に分けて温度を5℃に維持しながら添加した。10分後に反応が完了した。トリフルオロ酢酸(5mL)及び反応混合物の溶液を80℃にて3時間撹拌した。溶媒を真空下で低減し、残渣をジクロロメタンで希釈し、40% NaOHでクエンチしてpH9-10にした。水層をジクロロメタン(4×15mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(弱溶離剤:DCM、強溶離剤:DCM:MeOH:NH
4OH=90:9:0.5)により精製して、2-アミノ-5-クロロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド(9.05mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 385.14;MS (ES
+, m/z): 386.54 (M+H)
+.
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 11.52 (br. s., 1H), 8.52 (d, J=7.63 Hz, 1H), 8.20 (s, 1H), 7.91 (d, J=4.88 Hz, 1H), 7.06 (s, 1H), 6.52 (d, J=4.88 Hz, 1H), 6.42 (s, 2H), 3.94 (m, 3H), 3.08 (t, J=11.44 Hz, 2H), 2.34 (s, 3H), 1.95 (d, J=9.77 Hz, 2H), 1.57-1.71 (m, 2H) ppm.
【0165】
1.4 化合物4:2-アミノ-N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド
1.4.1 ステップ1:4,5-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンの合成
【化23】
4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(2.0g、13.04mmol)のDCM(80mL)中溶液にN-クロロスクシンイミド(1.7g、13.04mmol)を添加した。反応混合物を3日還流した。反応混合物を水に溶解し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、蒸発させて4,5-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(1.08g)を得た。LCMS: MW (計算値): 186.97;MS (ES
+, m/z): 187.98 (M+H)
+.
【0166】
1.4.2 ステップ2:N-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)カルバミン酸tert-ブチルの合成
【化24】
N-(4-ピペリジル)カルバミン酸tert-ブチル(895.3mg、4.47mmol)及び4,5-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(1080mg、5.36mmol)をNMP(8ml)に溶解し、DIPEA(2.33ml、13.4mmol)を滴下添加した。反応混合物を室温にて3日撹拌した。混合物を水に溶解し、EtOAc(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、濃縮して粗生成物を得、これをアセトニトリルで再結晶させてN-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)カルバミン酸tert-ブチル
(1.42g)を得た。LCMS: MW (計算値): 351.15;MS (ES
+, m/z): 352.22 (M+H)
+.
【0167】
1.4.3 ステップ3.1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミンの合成
【化25】
N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバミン酸tert-ブチル(2.0g、5.69mmol)のDCM(10mL)中溶液にトリフルオロ酢酸(3.3mL)を添加し、得られた溶液を室温にて2時間撹拌した。完了したら溶媒を蒸発させ、粗生成物を予め条件調整した(40mLのMeOH)SCXカラムに入れた(20g)。カラムをMeOH(2×40mL)で洗浄し、次いで7NのNH
3/MeOH(100mL)で洗浄した。溶媒を蒸発させて1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン(1.3g)を得た。LCMS: MW (計算値): 251.09;MS (ES
+, m/z): 252.10 (M+H)
+.
【0168】
1.4.4 ステップ4.2-アミノ-N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-ピリジン-4-カルボキサミドの合成
【化26】
0℃の2-アミノピリジン-4-カルボン酸(200mg、1.45mmol)のDMF(4mL)中溶液に、EDC×HCl(362.3mg、1.89mmol)及びDIPEA(732μL、4.21mmol)を添加し、30分間撹拌した。次いでHOBt×H
2O(266.4mg、1.74mmol)及び1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン(546.23mg、2.17mmol)を添加した。反応物を室温で終夜撹拌し、水(10mL)で希釈し、EtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗製物を、Biotage精製デバイスを介し12gのKP-Sil Interchimカラム(弱溶媒としてDCM、強溶媒としてDCM:MeOH:NH
4OH=90:1.5:0.15)で精製した。適切な画分を収集して生成物を得、これをアセトニトリルで粉砕して2-アミノ-N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-ピリジン-4-カルボキサミド(162.1mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 371.13;MS (ES
+, m/z): 372.18 (M+H)
+.
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 12.15 (br. s., 1H), 8.39 (d, J=7.32 Hz, 1H), 8.27 (s, 1H), 7.97 (d, J=4.88 Hz, 1H), 7.49 (s, 1H), 6.77-6.87 (m, 2H), 6.09 (br. s., 2H), 4.21 (d, J=12.21 Hz, 2H), 4.05 (d, J=7.32 Hz, 1H), 3.10 (t, J=12.36 Hz, 2H), 1.91 (d, J=10.68 Hz, 2H), 1.74 (m, 2H) ppm.
【0169】
1.5 化合物5:2-アミノ-N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミドの合成
【化27】
0℃の2-(ベンズヒドリリデンアミノ)-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸(43.0mg、0.13mmol)のDMF(5mL)中溶液に、EDC×HCl(32.6mg、0.17mmol)及びDIPEA(66.1μL、0.38mmol)を添加し、30分間撹拌した。次いでHOBt×H
2O(24.5mg、0.16mmol)及び1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン(50.3mg、0.20mmol)を添加した。反応物を室温にて終夜撹拌した。溶媒を蒸発乾固した。粗製物を分取LC-MSを介し精製した。適切な画分を収集し、終夜凍結乾燥して、2-アミノ-N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ--5-ピリジン-4-カルボキサミド(17mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 389.12;MS (ES
+, m/z): 390.39 (M+H)
+.
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 12.15 (br. s., 1H), 8.47 (d, J=7.70 Hz, 1H), 8.25 (s, 1H), 7.91 (s, 1H), 7.47 (s, 1H), 6.51 (d, J=4.40 Hz, 1H), 6.02 (s, 2H), 4.14 (d, J=12.65 Hz, 2H), 4.02 (m, 1H), 3.13 (t, J=11.83 Hz, 2H), 1.93 (d, J=10.82 Hz, 2H), 1.67 (m, 2H) ppm.
【0170】
1.6 化合物6:2-アミノ-N-[1-(5-シアノ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミドの合成
1.6.1 3-ブロモ-4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b〕ピリジン-5-カルボニトリルの合成
【化28】
4-クロロ-1H-ピロロ(3,2-b)ピリジン-5-カルボニトリル(3g、16.89mmol)のDMF(20mL)中撹拌溶液にN-ブロモスクシンイミド(3.3g、18.582mmol)を添加した。得られた溶液を室温にて20分間撹拌した。反応混合物を水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(2×25mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮した。得られた粉末をEtOAcで粉砕し、乾燥して3-ブロモ-4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(1.5g)を得た。LCMS: MW (計算値): 256.49;MS (ES
+, m/z): 257.93 (M+H)
+.
【0171】
1.6.2 4-クロロ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b〕ピリジン-5-カルボニトリルの合成
【化29】
アルゴン下-78℃の3-ブロモ-4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(1.5g、5.85mmol)のTHF(48mL)中溶液に、ブチルリチウム溶液(5.2mL、12.87mmol)を添加し、反応物を20分間撹拌した。次いでヨードメタン(590μL、9.36mmol)を滴下添加し、反応物を氷浴中で室温に温めた。反応物を水(30mL)でクエンチし、pHを7に調整した。THFを蒸発させ、水を添加した。得られた固体を濾過し、水で洗浄し、EtOAcで粉砕して4-クロロ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(813mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 191.6;MS (ES
+, m/z): 192.05 (M+H)
+.
【0172】
1.6.3 N-[1-(5-シアノ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバミン酸tert-ブチルの合成
【化30】
4-クロロ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(813mg、4.24mmol)、4-boc-アミノピペリジン(1.27g、6.36mmol)、及びDIPEA(1.85mL、10.61mmol)のNMP(5mL)中混合物を150℃にて3時間撹拌し、撹拌を室温にて週末にわたり継続した。反応混合物を水(110mL)及びジエチルエーテルで希釈した。得られた固体を濾過し、水及びジエチルエーテルで洗浄し、乾燥してN-[1-(5-シアノ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバミン酸tert-ブチル(1.28g)を得た。LCMS: MW (計算値): 355.43;MS (ES
+, m/z): 356.30 (M+H)
+.
【0173】
1.6.4 4-(4-アミノ-1-ピペリジル)-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリルの合成
【化31】
N-[1-(5-シアノ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバミン酸tert-ブチル(1.28g、3.6mmol)のDCM(40mL)中溶液に、トリフルオロ酢酸(5.5mL、72.03mmol)を添加した。得られた溶液を室温にて1時間撹拌した。反応混合物をSCXカラムに装填した(20g、100mLのMeOHで予め条件調整)。MeOH(200mL)をカラムに通し、化合物をMeOH:MeOH=1:4(300mL)において7NのNH
3で溶離した。濾液を真空中で濃縮して4-(4-アミノ-1-ピペリジル)-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b〕ピリジン-5-カルボニトリル(1.06g)を得た。LCMS: MW (計算値): 255.32;MS (ES
+, m/z): 256.21 (M+H)
+.
【0174】
1.6.5 2-アミノ-N-[1-(5-シアノ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミドの合成
【化32】
0℃の2-アミノ-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸(66.0mg、0.30mmol)のDMF(1mL)中溶液に、EDC×HCl(50.0mg、0.26mmol)及びDIPEA(101μL、0.58mmol)を添加し、30分間撹拌した。HOBt×H
2O(37.0mg、0.24mmol)及び4-(4-アミノ-1-ピペリジル)-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(108.0mg、0.30mmol)を添加した。反応物を室温にて終夜撹拌した。溶媒を蒸発乾固した。粗製物を、Biotage精製デバイスを介し4gのKP-Sil Interchimカラム(弱溶媒としてDCM、強溶媒としてDCM:MeOH:=10:1)で精製した。適切な画分を収集して、2-アミノ-N-[1-(5-シアノ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミド(1.27mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 393.42;MS (ES
+, m/z): 394.53 (M+H)
+.
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 11.82 (br. s., 1H), 8.55 (d, J=7.32 Hz, 1H), 8.23 (s, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.24 (s, 1H), 6.54 (d, J=4.27 Hz, 1H), 6.04 (br. s., 2H), 3.97 (br. s., 1H), 3.62 (d, J=12.21 Hz, 2H), 3.40 (m, 2H), 2.41 (s, 3H), 1.97 (d, J=11.29 Hz, 2H), 1.72-1.83 (m, 2H) ppm.
【0175】
化合物7:2-アミノ-N-[1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミドの合成
1.7.1 N-[1-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバミン酸tert-ブチルの合成
【化33】
4-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(4.0g、26.20mmol)、N-(4-ピペリジル)カルバミン酸tert-ブチル(7.8g、39.30mmol)、及びDIPEA(11.4mL、65.50mmol)のNMP(28mL)中混合物を150℃にて72時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出した(4回)。合わせた有機層を乾燥し、濃縮して粗生成物を得、これをアセトニトリルで再結晶させてN-[1-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバミン酸tert-ブチル(1.88g)を得た。LCMS: MW (計算値): 316.41;MS (ES
+, m/z): 317.22 (M+H)
+.
【0176】
1.7.2 N-[1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバミン酸tert-ブチルの合成
【化34】
N-[1-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバミン酸tert-ブチル(316mg、1mmol)を乾燥DCM(10ml)に溶解し、N-クロロスクシンイミド(147mg、1.1mmol)を添加した。反応混合物を40℃にて撹拌した。16時間後、反応混合物に水を添加し、DCMで抽出した(3回)。合わせた有機層を無水Na
2SO
4で乾燥し、相分離器で濾過し、蒸発させて粗製化合物を得、これをBiotage精製デバイスを介し4gのKP-Sil Interchimカラム(流量10ml/分、溶媒AとしてDCM、溶媒BとしてDCM:MeOH=7:3)で精製した。方法:0-5%B 4CV;20% 4CV;20-40%B 5CV;40%B 5CV;40-60%B 4CV;60%B 4CV。適切な画分を収集して、N-[1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバミン酸tert-ブチル(150mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 350.85;MS (ES
+, m/z): 351.43 (M+H)
+.
【0177】
1.7.3 1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)ピペリジン-4-アミンの合成
【化35】
0℃のN-[1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]カルバミン酸tert-ブチル(320mg、1.8mmol)のDCM(10mL)中混合物に、TFA(1.5mL)を添加した。反応混合物を室温にて1時間撹拌した。完了後、溶媒を蒸発させ、粗生成物を予め(MeOHで)条件調整したSCXカラムに入れた(5g)。カラムをMeOH(2×5ml)で洗浄し、次に7N NH3/MeOH(10ml)で洗浄して、1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)ピペリジン-4-アミンを得た。
【0178】
(108mg)LCMS: MW (計算値): 250.73;MS (ES+, m/z): 251.38 (M+H)+.
【0179】
1.7.4 2-アミノ-N-[1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミドの合成
【化36】
0℃の2-アミノ-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボン酸(66.0mg、0.43mmol)のDMF(1mL)中溶液に、EDC×HCl(70.0mg、0.36mmol)及びDIPEA(141μL、0.81mmol)を添加し、30分間撹拌した。次いでHOBt×H
2O(52.0mg、0.34mmol)及び1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン(108.0mg、0.43mmol)を添加した。反応物を室温にて終夜撹拌した。反応混合物を水(10mL)で希釈し、生成物を沈殿させた。結晶を濾去し、真空乾燥機内で65℃にて3時間乾燥した。濾液をEtOAc(4×5mL)で抽出した。合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空中で乾燥して粗製物を得た。粗製物を、Biotage精製デバイスを介し4gのKP-Sil Interchimカラム(弱溶媒としてDCM、強溶媒としてE1)で精製した。適切な画分を収集して、2-アミノ-N-[1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミド(7.77mg)を得た。LCMS: MW (計算値): 388.8;MS (ES
+, m/z): 389.47 (M+H)
+.
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 11.81 (br. s., 1H), 8.51 (d, J=7.63 Hz, 1H), 8.06 (d, J=5.19 Hz, 1H), 7.92 (s, 1H), 7.45 (s, 1H), 6.47-6.64 (m, 2H), 6.03 (s, 2H), 3.94 (m, 1H), 3.50-3.64 (m, 2H), 2.87 (t, J=11.44 Hz, 2H), 1.96 (d, J=10.38 Hz, 2H), 1.72-1.87 (m, 2H) ppm.
【0180】
生物学的実施例
2.in vitroアッセイ
2.1 ASK1/2生化学アッセイ(IMAPテクノロジー)
IMAP(登録商標)テクノロジーは、基質ペプチド配列を考慮することなく幅広い種類のキナーゼ、ホスファターゼ、及びホスホジエステラーゼに適用可能な均一アッセイを提供する。本アッセイは、シンプルな混合及び読取りの手順であり、これにより酵素活性の的確な定量が可能になる。IMAPは、ホスホ基と三価金属含有ナノ粒子(ビーズ)との特定の高親和性相互作用に基づいた、キナーゼ、ホスファターゼ、及びホスホジエステラーゼ活性を査定するための包括的な非抗体ベースプラットフォームである。酵素反応は、蛍光標識基質を用いて実施する。IMAP結合システムの追加によって酵素反応は停止し、ビーズとリン酸化基質との結合が開始する。酵素活性と相互関連する基質とビーズとの結合は、FPまたはTR-FRETのいずれかを読出しとして用いて検出することができる。
【0181】
アポトーシスシグナル調節キナーゼ(ASK1)はMAP3K5の別名でも知られ、キナーゼのマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼ(MAP3K)ファミリーのメンバーである。ASK1は、MAP2KのMKK4/7及びMKK3/6を通じて(それぞれ)Jnk経路及びp38経路を活性化する。このASK1 IMAPアッセイは、以下のIMAPペプチド:RP7140-T2(5TAMRA-GTFRAAIRRLAARRR-OH、配列番号1)を使用する。本アッセイは、ATP競合阻害剤に対し感受性であるように、ATPにおけるKm(150mM)で動作するように構成されている。最終アッセイ条件は150mMのATP、1mMのDTT、200nMのペプチド、及び6nMのASK1(総タンパク質)である。結合試薬は、1:200の最終希釈率における100% Aで構成される。
【0182】
溶液:
KIT IMAP FP、カタログ番号R8127;反応バッファー-Tween(5倍濃縮)、Molecular Devices、カタログ番号R7436;H2Oで1:5希釈、DTT含有(1Mのストックから1mM);プログレッシブ結合バッファー(PBB)A(5倍濃縮)、Molecular Devices、カタログ番号R7282;プログレッシブ結合試薬(PB試薬)、Molecular Devices、カタログ番号R7284;酵素溶液(反応バッファー中2倍のAsk1);基質溶液(反応バッファー中2倍のペプチド基質、及び反応バッファー中2×150μMのATP);ビーズバッファー(H2Oで1:5希釈したプログレッシブ結合バッファーA);ビーズ溶液(1:200のプログレッシブ結合試薬(2倍)を含有するビーズバッファー)
【0183】
実験
100% DMSO中100nLの試験化合物を384ウェルプレートに添加した。用量応答実験用に、化合物の4分の1希釈物(25μMのトップ最終濃度)を使用した。対照ウェル以外の各ウェルに3μlのhASK1(6nM)、hASK2(25nM)、またはrASK1(15nM)を添加し、対照ウェルに3μlのバッファーを添加した。3μLの基質溶液を各ウェルに添加し、プレートを室温で4時間インキュベートした。この後、6μLのIMAP(商標)ビーズ溶液(プログレッシブ結合バッファーA+PB試薬;最終希釈1:100)を各ウェルに添加し、1000rpmにて1分間スピンした。次いでプレートを室温にて2時間インキュベートし、その後にプレートをPerkin Elmer EnVisionプレートリーダーで読み取った。
【0184】
データ分析
IC50データの計算、曲線及びQC分析は、Excelツール及びGraphPad Prismソフトウェアv.5.03を使用することにより行った。簡潔に述べると、個々の濃度-効果曲線は、最小二乗(通常)適合を用いて試験化合物の試験濃度(X)vs.対応する阻害パーセント値(Y)の対数をプロットすることにより生成する。値が平均±1*SDより大きい場合のみ、高/低対照からの最大1/4ポイントが除外可能である。IC50計算に使用した適合式=log(阻害剤)vs.応答-可変傾斜(variable slope)(4つのパラメーター)。計算結果:計算1:FP測定におけるmP値=1000*(S-G*P)/(S+G*P)[式中、S=<detector 2またはFP-BodipyTAMRA_Ex531-Em579-optimized(1) channel 2>、P=<detector 1またはFP-BodipyTAMRA_Ex531-Em579-optimized(1) channel 1>、G=G-factor]。Gain=100。トップ制約(top constrain)は、トップ値が正しく計算されない場合のみ使用する。
【0185】
最小値は、-30%I未満または30%Iより大きい場合に制約される。最大値は、70%I未満または130%Iより大きい場合に制約される。Z’-Factor Target≧0.4。ヒル勾配範囲0.5から5。
【0186】
本発明の例示化合物を、実施例2.1の方法に従って試験した。結果を以下に示す。
【表4】
【0187】
2.2 ASK1/2生化学アッセイ(AlphaScreenテクノロジー)
AlphaScreenテクノロジーの説明
タンパク質基質(MKK7)におけるリン酸化の程度を測定するAlphaScreenテクノロジーを用いて、ASK1及びASK2の生化学的活性も定量化した。AlphaScreenテクノロジーは、基質と2つのタイプのビーズ(アクセプター及びドナー)との結合に基づく。1つのビーズとの結合は、基質タンパク質のタグを通じて行われる。第2のビーズとの結合は、抗体と基質のリン酸化部位とのリン酸化部位特異的結合を通じて行われる。これにより、アクセプタービーズ及びドナービーズが近接したサンドイッチが形成される。ドナービーズが680nm範囲の光に励起された場合、一重項酸素が放出され、620nm範囲のアクセプターからの発光を引き起こし、この発光は好適なプレートリーダーを用いて検出することができる。
【0188】
ASK1/2 AlphaScreenアッセイの説明
ASK1/2 AlphaScreenアッセイは、GSTタグの使用を通じて、全長の不活性MKK7タンパク質をグルタチオンドナービーズに結合することにより可能になる。次いで、MKK7上のリン酸化部位(Ser271/Thr275)がリン酸化部位特異的抗体に認識される。リン酸化部位特異的抗体は、プロテインA相互作用を通じてAlphaScreenアクセプタービーズに結合する。ASK1及びASK2によるMKK7のリン酸化は、次にドナービーズ及びアクセプタービーズが近接するのを促進し、その結果一重項酸素がAlphaScreenシグナルの生成をもたらす。
ASK1/2 AlphaScreen試薬、条件、及びプロトコル
・N末端6His-Aviタグ付き全長ヒトASK1タンパク質。
・N末端6His-Aviタグ付き全長ASKタンパク質の2量体(リジン709がメチオニンで置き換えられた不活性酵素)及び6His-FLAGタグ付き全長ASKタンパク質。
・ヒトMKK7不活性(Carna Bioscience、カタログ番号:07-147-10)。
・Phospho-MKK7(Ser171/Thr275)抗体(Cell Signalling Technologies カタログ番号:4171)。
・プロテインAアクセプタービーズ(Perkin Elmer、カタログ番号:6760137)。
・グルタチオンドナービーズ(Perkin Elmer、カタログ番号:6765301)。
・アデノシン三リン酸、ATP(Promega、カタログ番号:V915B)。
・反応バッファー:50mM Hepes、150 mM NaCl、10mM MgCl2、1mM CHAPS、pH7.2。
・停止バッファー:50mM Hepes、150mM NaCl、60mM EDTA、1mM CHAPS、pH7.2。
【0189】
本アッセイは、以下の条件(最終濃度)を用いて実行するように構成した:150μM ATP;400nM MKK7;0.8nM ASK1及び2nM ASK2。
【0190】
実験
100% DMSO中100nLの試験化合物(出発濃度6μM、3倍系列希釈による11通りの濃度)を少量用384ウェルプレートに添加した。対照ウェル以外の各ウェルに2.5μlのASK1またはASK2を添加し、対照ウェルに2.5μlのバッファーを添加した。2.5μlのMKK7溶液を全てのウェルに添加した。プレートを室温にて60分間インキュベートした。プロテインAアクセプタービーズ及びリン酸特異的抗体を30分間インキュベートし、次いで2.5μlのプロテインAアクセプタービーズ/リン酸特異的抗体混合物(2.5μg/mlのアクセプタービーズ最終濃度及び1/800抗体最終希釈)を各ウェルに添加した。プレートを室温にて30分間インキュベートし、次いで2.5μlのGSHドナービーズ(10μg/mlのアクセプタービーズ最終濃度)を各ウェルに添加した。プレートを室温にてさらに60分間インキュベートし、その後にプレートをPerkin Elmer Enspireプレートリーダーで読み取った。
【0191】
データ分析
IC50データの計算、曲線及びQC分析は、Excelツール及びGraphPad Prismソフトウェアv.5.03を使用することにより行った。簡潔に述べると、個々の濃度-効果曲線は、最小二乗(通常)適合を用いて試験化合物の試験濃度(X)vs.対応する阻害パーセント値(Y)の対数をプロットすることにより生成した。IC50計算に使用した適合式=log(阻害剤)vs.応答-可変傾斜(variable slope)(4つのパラメーター)。
【0192】
本発明の例示化合物を、実施例2.2の方法に従って試験した。結果を以下に示す。
【表5】
【0193】
2.3 ASK1/2細胞アッセイ
in vitroのASK1/2活性は、ウェスタンブロット法を用いてH2O2刺激PBMC中のホスホ-MKK3タンパク質の量を定量することによりアッセイした。MKK3は、p38活性化経路におけるASK1/2触媒リン酸化の直接的基質であることが示された。
2.3.1 材料及びアッセイ条件
・Lymphoprep(Axis-Shield、カタログ番号:1114545)
・塩化アンモニウムライセートバッファーpH7.4(10倍濃縮)
-NH4Cl - 最終濃度1.5M(Kemika、カタログ番号0137407)
-NaHCO3 - 最終濃度100mM(Kemika、カタログ番号1411007)
-Na2EDTA - 最終濃度10mM(Sigma Aldrich;カタログ番号E-4884)
・RPMI 1640(Lonza カタログ番号BE12-115F/U1)
・FBS(Sigma カタログ番号F7524、熱不活化30分/56℃)
・ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma、カタログ番号D2650)
・細胞溶解バッファー(pH7.4):PBS+1% Triton X-100(Sigma Aldrich;カタログ番号X100) - 10ml
-Phospho-Stop - 1錠(Sigma、カタログ番号4693124001)
プロテアーゼ阻害剤 - 1錠(Sigma、カタログ番号4906837001)
・過酸化水素溶液 3% w/w(Sigma Aldrich、カタログ番号H-6520)
・PBS(Sigma Aldrich、カタログ番号P4417-100TAB)
・マイクロプレート、96ウェル、pp、v底、透明(Greiner bio-one;カタログ番号651201)
・組織培養プレート、6ウェル、平底、低蒸発蓋付き(Falcon、カタログ番号353224)
・50mLファルコンチューブ(TPP、カタログ番号91050)
・Pierce BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific、カタログ番号23225)
・Immulon(登録商標)Microtiter(商標)96ウェルプレート1B(Thermo Scientific、カタログ番号3355)
・Wes 12-230kDaマスターキット(Protein Simple、カタログ番号PS-MK14)
・MKK3(D4C3)ウサギmAb(Cell Signaling、カタログ番号8535)
・Phospho-MKK3(Ser189)/MKK6(Ser207)(D8E9)ウサギmAb(Cell Signaling、カタログ番号12280)
【0194】
本アッセイは、以下の条件を用いて実行するように構成した:試験化合物濃度範囲:1-0.0014μM(7つの3倍系列希釈);H2O2濃度:3mM
【0195】
2.3.2 実験
PBMCをバフィーコートから単離するため、バフィーコートをPBSに1:1希釈し、次いで希釈バフィーコート(25mL)をファルコンチューブ内の20mLのLymphoprepの上面に慎重にピペットで移した。次いでチューブを400xgにて35分間スピンさせた。次いで上方の血漿層を慎重に除去し、MNC含有層を残した。次いでMNC含有層を新たなチューブに移し、PBSを添加して50mLの総量とし、次いでチューブを10分間スピンする(200xg、25℃)。次いで得られたペレットを2mLのPBSに再懸濁し、洗浄ステップを繰り返した。最終ペレットを最大50mLの塩化アンモニウムライセートバッファーに再懸濁し、穏やかに混合し、10分間遠心処理し(200xg、25℃)、2-3mLの細胞培地に再懸濁し、細胞培地中で最大50mLに希釈した。自動セルカウンターを用いて細胞培地中1/20希釈の細胞密度を定量した。
【0196】
6ウェルプレート内の10% FBSを追加したRPMI 1640細胞培地1mLに、ウェル当たり10×106のPBMCを播種した。DMSO中化合物の3倍系列希釈物7セットを、96ウェルv底プレートにおいて1mMから開始して調製した。DMSO化合物溶液を細胞培地中100倍に希釈した。200μLの100倍希釈化合物溶液を各ウェルに添加し、対照ウェルは細胞培地中で調製した200μLの1% DMSOを含有した。細胞培地中7.5mM H2O2を調製し、800μLを陰性対照ウェル以外の各ウェルに添加し、陰性対照ウェルには800μLの細胞培地を添加した。細胞を37℃、5% CO2、95%湿度にて30分間インキュベートした。細胞を2mL エッペンドルフチューブに移し、300xg及び4℃にて10分間遠心処理し、次いで1mL PBSで洗浄し、細胞ペレットを100μLの溶解バッファーに再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。その後、細胞ライセートを10000xg及び4℃にて5分間遠心処理し、次いで上清を-20℃にて保管した。
【0197】
試料を細胞溶解バッファー中5倍に希釈し、96ウェルImmulon 1Bプレートにおいて、BCAタンパク質アッセイキットを製造業者の指示に従って用いて、総タンパク質濃度を定量した。
【0198】
Protein Simple Wesマスターキット及びデバイスを製造業者の指示に従って用いて、ウェスタンブロットアッセイを実施した。総タンパク質の0.5mg/mLを試料ごとに装填し、phospho-MKK3及びMKK3抗体を300倍に希釈した。
【0199】
Compass 2.7.1ソフトウェアを用いてウェスタンブロットの結果を分析し、各試料におけるphospho-MKK3量をMKK3量で割った。以下の式を用いて対照を基準にデータを正規化することにより、阻害パーセンテージを計算した。
[(試料-低対照)/(高対照-低対照)]*100
【0200】
化合物のIC50値は、GraphPad Prismソフトウェア、非線形回帰(曲線適合)、log(阻害剤)vs.応答-可変傾斜(4つのパラメーター)を用いて阻害パーセンテージ及び化合物濃度の対数をプロットすることにより定量した。
【0201】
本発明の例示化合物を、実施例2.3の方法に従って試験した。結果を以下に示す。
【表6】
【0202】
2.4 ASK1/2ヒト全血アッセイ
ELISAを用いて、LPSで刺激したヒト全血中で産生されるCCL2サイトカインの量を定量することにより、in vitroのASK1/2活性をアッセイした。文献には、非刺激及びLPS刺激条件下において、ASK1ノックアウトマウスからの血清中でCCL2産生が減少することが記載されている。
2.4.1 材料及びアッセイ条件
・RPMI 1640(Lonza カタログ番号BE12-115F/U1)
・ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma、カタログ番号D2650)
・E.coli由来リポ多糖(LPS)(Sigma、カタログ番号L4391)
・マイクロプレート、96ウェル、pp、v底、透明(Greiner;カタログ番号651201)
・Master block 96ウェル、2ml(Greiner、カタログ番号780271)
・Microplateマイクロプレート、96ウェル、ps、u底、透明、蓋付き(Greiner、カタログ番号650180)
・50mLファルコンチューブ(TPP、カタログ番号91050)
・Immulon 2HB 96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号3455)
・スクロース(Kemika、カタログ番号1800408)
・ストレプトアビジン-HRP(Calbiochem、カタログ番号OR03L)
・硫酸(Kemika、カタログ番号1816501)
・抗hCCL2抗体(R&D Systems、カタログ番号MAB679)、1mlのPBSに溶解
・抗hCCL2検出抗体(R&D Systems、カタログ番号BAF279)、1mlのPBSに溶解
・組換えhCCL2(標準、R&D Systems、カタログ番号366-6C)
・洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween-20)
-PBS(Sigma、カタログ番号P4417)
-Tween-20(Sigma、カタログ番号P2287)
・20mlの基質:18ml H2O+2 ml 1M酢酸ナトリウム+200μl TMBミックス+2.5μl 30% H2O2
-酢酸ナトリウム(Kemika、カタログ番号1441908)
-TMBミックス(Sigma、カタログ番号T2885)
-過酸化水素(Merck、カタログ番号1.08597)
・コーティングバッファー(15mM Na2CO3(×H2O)+35mM NaHCO3)
-炭酸ナトリウム(Sigma、カタログ番号S-2127)
-重炭酸ナトリウム(Kemika、カタログ番号1411007)
・アッセイバッファー(PBS+0.05% Tween-20+1% BSA)
-ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma、カタログ番号A2153)
【0203】
2.4.2 実験
クエン酸塩抗凝固剤を用いて全血を収集した。100μLを、自動セルカウンターを用いた細胞数の定量に使用した。
【0204】
300μLの全血を2mL master block 96ウェルプレートに添加した。DMSO中化合物の3倍系列希釈物6つを、96ウェルv底プレートにおいて10mMから開始して調製した。v底プレートからの0.6μLの調製化合物または0.6μLのDMSO(陽性及び陰性対照ウェル)を、血液入りのmaster blockプレートに添加した。無血清培地中2ng/mL LPSを調製し、300μLを、試験ウェル用の血液入りのmaster blockプレートの各ウェルに添加した。300μLの培地を陰性対照ウェルに添加した。プレートを全血と共にCO2インキュベーター内で終夜インキュベートした(37℃、5% CO2、95%湿度)。次いでプレートを1500xgにて7分間遠心処理し、上清をCCL2サイトカインの定量用に96ウェルu底プレートに移すか、または上清を今後の試験用に-20℃にて保管した。
【0205】
ELISAを実施する前の日に、Immulon 2HBプレートをウェル当たり100μLのコーティングバッファー中250倍希釈抗hCCL2抗体でコーティングした。次いで、プレートを4℃にて終夜インキュベートした。プレートをウェル当たり300μLの洗浄バッファーで3回洗浄し、これを各ステップ後に繰り返した。200μLのブロッキング(アッセイバッファー+5%スクロース)を各ウェルに添加し、37℃にて60分間インキュベートした。アッセイバッファー中hCCL2標準物質の2倍系列希釈物7セットを、2000pg/mLから開始して2連で調製した。アッセイバッファーのみを含有するブランクウェルを調製した。試験試料(上清)をアッセイバッファー中10倍に希釈してプレートに添加した。プレート中の全ての最終体積は100μLであった。プレートを37℃にて60分間インキュベートした。ウェル当たり100μLのアッセイバッファー中500倍希釈抗hCCL2検出抗体を添加し、プレートを37℃にて45分間インキュベートした。ウェル当たり100μLのアッセイバッファー中50ng/mLのストレプトアビジン-HRPを添加し、プレートを37℃にて30分間インキュベートした。ウェル当たり100μLの調製済み基質溶液を添加し、プレートを室温にてインキュベートし、ウェル中で青色が発色するまで光から保護した。発色を停止させるため、ウェル当たり100μLの1M硫酸を添加した。プレートリーダーで450nmにおけるプレートの吸光度を読み取った。
【0206】
2.4.3 データ分析
ELISA結果(450nmにおける吸光度)をMicrosoft Excelソフトウェアを用いて分析した。全ての値からブランクの平均値を差し引いた。標準物質の系列希釈(pg/mL)をx軸、これに対し対応する吸光度の値をy軸として、標準曲線をプロットした。試料中のサイトカイン量(pg/mL)を標準曲線から計算した。以下の式を用いて対照を基準にデータを正規化することにより、阻害パーセンテージを計算した。
[(試料-低対照)/(高対照-低対照)]*100
【0207】
化合物のIC50値は、GraphPad Prismソフトウェア、非線形回帰(曲線適合)、log(阻害剤)vs.応答-可変傾斜(4つのパラメーター)を用いて阻害パーセンテージ及び化合物濃度の対数をプロットすることにより定量した。
【0208】
3.in vivoアッセイ
3.1 荷重法を用いて査定した、ラットにおけるCFA(完全フロイントアジュバント)誘発性過感受性
完全フロイントアジュバント(CFA)の足底注射は、過感受性及び浮腫を誘発する炎症性反応を引き起こし、臨床的な炎症性疼痛のいくつかの態様を模倣する。荷重を測定する装置及びプレチスモメーターを用いて3つの効果を調べた。
【0209】
3.1.1 荷重
ナイーブなラットは、2本の後肢間で体重を均等に分配する。しかし、注射を受けた(左)後肢が炎症及び/または有痛性である場合、罹患肢に加わる体重が少なくなるように体重が再分配される(損傷肢にかかる重量の減少)。ラット両足圧力差痛覚測定器(incapacitance tester)(Linton Instruments,UK)を用いて、各後肢にかかる荷重を測定した。
【0210】
ラットを両脚圧力差痛覚測定器に配置し、後肢を別々のセンサー上に置き、両後肢が発揮する平均の力を4秒にわたり記録した。
【0211】
ベースライン荷重及び足体積を読み取り、CFAの注射を介して過感受性を誘発した(ベースライン荷重及び足体積の記録は、侵襲を誘発する前に行った)。ラット左後肢の足底内に対しCFAの足底内注射(100μLの1mg/mL溶液)を行うことにより、炎症性過感受性を誘発した。
【0212】
動物(オス、スプレーグドーリーラット(Charles River,UK)、212-260g)に対し、ラテン方格設計における荷重CFAウインドウに従って、ランクづけ及び処置群へのランダム割付けを行った。動物を、CFAから24時間後、ビヒクル、化合物1 10mg/kg、またはインドメタシン10mg/kg(10Ll/kg用量体積)のいずれかで処置した。処置から1、2、及び4時間後に荷重を測定した。荷重(g)の読取りは左右両後肢に対し行い、差を計算した。データは、疼痛に対する過感受性の反転%(平均±s.e.m.)として表現する。足体積(mLl)の読取りを左後肢に対し行った。データは、浮腫に対する反転%(平均±s.e.m.)として表現した。InVivoStat(invivostat.co.uk,Clark et al.,2012)を用いた反復測定ANOVA及びその後の計画比較検定による統計的分析を実施した。p<0.05を有意とみなした。
【0213】
化合物1及びインドメタシン(10mg/kg)は、投与後に試験した全ての時点において過感受性応答を有意に阻害した。
【0214】
3.2 ラットにおけるMIA誘発性痛覚過敏(in vivo慢性疼痛モデル)
ヨード酢酸一ナトリウム(MIA)をスプレーグドーリーラットの同側の膝に関節内投与すると、最初に炎症性応答を伴うロバストで持続性の痛覚過敏及びアロディニアがもたらされる。この動物モデルにおけるこれらの徴候の発生は、臨床的に意義があると考えられており、変形性関節炎(OA)またはリウマチ性関節炎などの基礎的状態に関連する慢性炎症性疼痛を呈する患者が示す症状を反映していると考えられている(Bove SE et al.,Osteoarthritis Cartilage 2003;11(11):821-30;Fernihough J,et al.,Pain 2004;112(1-2):83-93;Kalbhen DA.J Rheumatol 1987;14 Spec No:130-1)。
【0215】
荷重
ナイーブなラットは、2本の後肢間で体重を均等に分配する。しかし、注射を受けた(左)後膝が炎症及び/または有痛性である場合、罹患肢に加わる体重が少なくなるように体重が再分配される(損傷肢にかかる重量の減少)。ラット両足圧力差痛覚測定器(Linton Instruments,UK)を用いて、各後肢にかかる荷重を測定する。
【0216】
ラット(スプレーグドーリー、オス、10匹の群)における変形性関節炎(OA)を、左後肢の膝関節へのMIA溶液(Sigma、I2512)、25μLの80mg/mL、(2mg)の注射を介し誘発した。3、5、7、9、12、及び16日目に、慢性疼痛の発生のためのMIA注射の後、荷重を査定した。3日目に荷重測定を行い、動物に対し、ラテン方格設計における荷重CFAウインドウに従って、ランク付け及び処置群へのランダム割付けを行った。
【0217】
動物の処置は、0.5%メチルセルロース中化合物1 10mg/kgまたはビヒクル(0.5%メチルセルロース)10mL/kgを経口で3日目に行い、それから毎日16日目まで行った。荷重測定は、3日目は投薬から1、2、及び4時間後に行い、5、7、9、12、及び16日目は投薬から2時間後に行った。
【0218】
荷重(g)の読取りは左右両後肢に対し行い、差を計算した。データは、同側/対側の比率%として表現される((左荷重/右荷重)*100)(平均±s.e.m.)。
【0219】
計算:同側の読取り値/対側の読取り値×100。ナイーブ荷重の差:投薬前の荷重の差は、MIAウインドウとして定義した。
【0220】
統計的分析:InVivoStat(invivostat.co.uk)を用いた反復測定ANOVA及びその後の計画比較検定(p<0.05を有意とみなした)。各時点において処置群をビヒクル対照群と比較することにより、データを分析した。
【0221】
10mg/kgで投薬した場合の化合物1において、投薬から1時間後から12日目まで(投薬後9日)有意かつ著明な過感受性の反転が見られた。10mg/kgで投与した化合物1は、同じ時点におけるビヒクルと比較して有意な反転を示し、陽性対照のセレコキシブに匹敵した。
【0222】
3.3 肝線維症のCCl4モデル(プロトコル1)
この試験の目的は、CCl4中毒による肝線維症のモデルを査定することであった。組織診断、生化学、イメージング、及び異なる時点における遺伝子発現の探索による肝線維症の査定により、この疾患の発症及び見込みのある陽性参照物質の効果を評価する。Starkel P.,Animal models for the study of hepatic fibrosis,Best practice & Research Clinical Gastroenterology 25:319-333,2011
【0223】
3.3.1 試験群:
本試験は、5週齢のオスBalbC Jマウス(Janvier Lab)を用いて実施する。
【表7】
3.3.2 材料:
・CCl
4:四塩化炭素ACROS 99.8%、CAS=56-23-5、ロットA0293900
・オリーブ油、SIGMA O1514-500mL、ロット番号BCBQ4885V
・colF(ImmunoChemistry Technologies)、ref 6346、ロット13Y39、使用期限05/2017
ストック溶液は、100μLのDMSOに希釈し(6.8mM)4℃にて保管
イメージングの15分前にppi水中1:170希釈を動物に注射(100μL、静脈洞内)
・CCl
4をオリーブ油で1/2に希釈し、週当たり2回0.6mL/kgにて腹腔内投与した。
【0224】
3.3.2 試料及び結果
血液を血清チューブに収集し、試料を3000t/分にて5分間遠心処理し、AST、ALT、ALP、及び総ビリルビン評価用に-20℃にて凍結させた。肝臓右中葉の試料も採取し、速やかに1mLのRNAlaterと共にエッペンドルフチューブ(2mL丸底)に入れ(安全ロックチューブ)4℃にて保管する。
【0225】
肝臓を回収し秤量する。直ちに肝臓内のcolF結合のex vivoイメージングを実施する(Bruker Xtreme)。aSMAについての組織学的評価及びcol I IHC定量化のために、肝臓をホルムアルデヒド(バイアル25mL-60cc)に入れる。
【0226】
脾臓を今後の分析用に秤量する。
【0227】
9種の線維症遺伝子のパネルを遺伝子発現分析に使用する。
【0228】
3.4 肝線維症のCCl4モデル(プロトコル2)
この試験の目的は、CCl4中毒による肝線維症のモデルを査定することであった。組織診断、生化学、イメージング、及び異なる時点における遺伝子発現の探索による肝線維症の査定により、この疾患の発症及び見込みのある陽性参照物質の効果を評価する。Starkel P.,Animal models for the study of hepatic fibrosis,Best practice & Research Clinical Gastroenterology 25:319-333,2011
【0229】
3.4.1 試験群:
本試験は、8週齢のオスBalb/Cマウス(Charles River,Italy)を用いて実施する。
【表8】
3.4.2 材料:
・CCl
4(液体)を0.06mL/mlの濃度にてオリーブ油に添加する。溶液を0.6mL/kgの用量にて腹腔内投与する。適用体積は10mL/kgとする。
・試験化合物をメチルセルロース(MC 0.5%)に溶解/懸濁する。
【0230】
3.4.3 試料及び結果
定常状態PKの試料採取用に、血液をHe-リチウムチューブに収集して血漿を生成する。全ての血液試料を、収集から30分以内に遠心分離(5,000rpm、4℃にて10分間)により処理して血漿を得る。次いで、分析を行うまで試料を-80℃にて保管する。
【0231】
頸静脈の切断により、最終血液試料をK2EDTAマイクロチューブに採取する。全ての血液試料を、収集から30分以内に遠心分離(3500rpm、4℃にて10分間)により処理して血漿を得る。分析を行うまで、各血液試料からの血漿を-80℃にて保管する。
【0232】
肝臓を回収し、左側葉の一部をRNA遺伝子発現分析、OHプロリン測定の切片用に保管し、残りは病理組織学的評価用に10%ホルマリンに入れる。
【0233】
5種の線維症遺伝子のパネル(Col1、Timp1、Pai1、Snail1、Acta2)を遺伝子発現分析に使用する。
【0234】
3.5 脂肪性肝炎及び線維症のメチオニン及びコリン欠乏モデル
MCDは、脂肪性肝炎及び線維症における新規のマウスモデルであり、食餌:メチオニン及びコリン欠乏(MCD)により誘発される。(Wehr et al 2013 J immunol,190(10):5226-36;Baeck et al.,2014 Hepatology,59(3):1060-72;Gautheron et al,2014 EMBO,6(8):1062-74).
【0235】
3.5.1 試験群及び用量レジメン:
C57BL/6マウス(Janvier Labs(France))を以下に示すような群に分ける。マウスは誘発フェーズ開始時点で8週齢(>20
グラム)である。
【表9】
3.5.2 材料及び化合物
・MCD食餌(コリン及びメチオニンなし) Ref EFTD.90262 MCD mod.batch 8206423、Ssniff,Soest,Germany-
・メチルセルロース0.5%、VWR、
・PEG400:P3265,Sigma
・Cryomold(登録商標)Standard 25×20×5mm(Sakura Finetec,4557)
・O.C.T.(商標)化合物クリオモルド(Sakura Finetec,4583)
・試料保存用ホルマリン(メタノールで4%緩衝)
【0236】
3.5.3 化合物調製:
化合物を、撹拌下で適切なビヒクル(上の表を参照)に溶解/懸濁する。調製後、溶液/懸濁液を一定の磁気撹拌下、暗中室温にて保つ。投薬の際は10mL/kgの量を使用し、溶液の濃度を動物の体重に応じて調整する。
【0237】
3.5.4 プロトコル:
誘発フェーズは3週間とする。空腹時グルコースは提供しない。マウスにMCD対照食餌またはMCD食餌を与える。
【0238】
処置フェーズ中、マウスは誘発フェーズと同様にMCD対照食餌またはMCD食餌で維持する。均質な割当てを確実に行うため、マウスを体重に応じてランダムに処置群に割付ける。評価フェーズ中、マウスに1日1回または2回試験化合物を投薬する。
【0239】
3.6 予防的ブレオマイシン誘発性肺線維症14日マウスモデル
この試験の目的は、マウスにおけるブレオマイシン誘発性肺線維症の14日モデルにおいて、3つの異なる用量における試験化合物の有効性を試験することである。
【0240】
3.6.1 動物
この試験は、Charles River,Italyが供給するC527BL/6Nオスマウスに対し行う。マウスを少なくとも5日間、12時間の明期サイクル下、22℃、55%相対湿度、1時間当たり15~20回の換気に維持された環境に順化させる。マウス用ペレット飼料及び水は自由に摂取させる。
【0241】
実験開始の少なくとも1日前に、全ての動物を、下記の表に示すような群にランダムに割付ける。
【0242】
全ての動物関連研究は、2010/63/EUならびに科学的研究及びその他の目的における実験動物の使用を規制する国の立法(Official Gazette 55/13)に従って行う。
3.6.2 試験群
【表10】
【0243】
3.6.3 材料
試験溶液用の溶媒は、0.5gのヒドロキシエチルセルロース(Natrosol)を500mLの蒸留水(Aqua distillate)に添加し(0.1%)、磁気スターラーで5時間、加熱を伴わずに持続的に撹拌することにより調製する。
【0244】
麻酔液は、1mLのNarketan(Narketan 10,Vetoquinol,Bern,Switzerland,03605877535982)及び0.5mLのRompun(Rompun、2%:Bayer,Leverkusen,Germany)を9mLの食塩水に添加することにより調製する。得られた溶液を10mL/kgにて投与する。
【0245】
鼻腔内(i.n.)曝露用の溶液を調製するため、ブレオマイシン(ブレオマイシン硫酸塩、Enzo Life Sciences,Inc.,USA;CAS番号9041-93-4;カタログ番号BML-AP302-0010)の0.8mg/mLストック溶液を解凍し、330μLの食塩水に希釈する。
【0246】
i.n.投与の前に、上述の麻酔液でマウスの腹腔内に麻酔をかける。
【0247】
新鮮なピルフェニドン製剤を0.1% Natrosol製剤において毎日調製し、5mg/mLの最終濃度にする。投薬の前に動物を秤量し、投与するピルフェニドンの量を10mL/kg体重に対応するように個別の体重に従って調整し、1日2回の経口投与を、2回の投与間に7.5時間の間隔を置いて行う。
【0248】
最後に、試験化合物溶液は、好適な量の当該試験化合物をPEG400(最終体積の20%)に溶解し、次いでMC 0.5%(最終体積の80%)に溶解して1mg/mL、0.3mg/mL、及び0.1mg/mLの最終濃度に到達させることにより調製し、このようにして10mg/kg、3mg/kg、及び1mg/kgの用量のための化合物がもたらされる。投薬の前に動物を秤量し、投与する量を個別の体重に応じて調整する。
【0249】
試験用量の適用体積は10mL/kg体重に対応し、試験化合物は1日2回、2回の投与間に7.5時間の間隔を置いて腹腔内投与する。
【0250】
3.6.4 試験
動物は1日2回臨床検査を受ける。臨床徴候及びパラメーターのリストはヒトのエンドポイント表に示される。0日目から毎日動物を秤量する。
【0251】
14日目のピルフェニドンまたは試験化合物の投薬から2時間後に、マウスを過剰用量の麻酔で屠殺する。
【0252】
肺を切除し、個別に秤量する。全ての群に対し、全右肺上葉をシリカビーズを含有するPrecellysチューブに入れ、液体窒素で直ちにスナップ凍結し、遺伝子発現分析に供する。
【0253】
残りの全ての肺は、今後の病理組織学的評価用に10%緩衝ホルマリンを含有する印付きの瓶に入れる。
【0254】
3.6.5 試料分析、データ処理、及び統計的評価
MS Excelを用いて体重データ及び肺重量データを処理する。GraphPad Prismソフトウェア(バージョン5.04)を用いて統計的分析及びグラフ提示を実施する。
【0255】
肺重量には一元配置ANOVAまたはマン・ホイットニー検定を用いる。
【0256】
体重変化には二元配置ANOVAを用いる。
【0257】
群間の差は、p<0.05の場合に統計的に有意とみなす。
【0258】
病理組織学的評価用に、全肺(試料採取した上右肺を除く)をパラフィン包埋し、マロリーのトリクロームで染色する。
【0259】
肺の組織学的変化をAshcroftスコアのMatsuse改変版を用いて査定する(Ashcroft et al.,1988;Matsuse et al., 1999)。GraphPad Prismソフトウェア(バージョン5.04)を用いて統計的分析及びグラフ提示を実施する。マン・ホイットニー検定を用いる。
【0260】
群間の差は、p<0.05の場合に統計的に有意とみなす。
【表11】
【0261】
3.6.6 PK分析(第7群)
3.6.6.1 プロトコル
第7群の動物(n=10)はPK試験のみに含め、臨床徴候スコア付けに供さない。
【0262】
これらの動物に対し、0日目の処置開始時に疾患を誘発し、7日目に試験化合物を最初に投与してから1時間、3時間、6時間、8時間、24時間後に順次屠殺する。
【0263】
各時点において、尾静脈から収集した血液試料(50μL)をLi-ヘパリン抗凝固チューブに入れ、分離するまで氷上に保つ。収集から最大30分以内に血液試料を4℃にて10分間、2000gで遠心処理し、得られた血漿試料をポリプロピレンチューブに分取した(1×25μL)。分析を行うまで試料を-20℃にて保管する。
【0264】
各動物から採血した後の屠殺時に肺組織を収集し、次いで秤量し、ポリプロピレンチューブに入れてから凍結する。分析を行うまで試料を-80℃にて保管する。
【0265】
3.6.6.2 血漿濃度及び薬物動態解析
LC-MS/MSを介し、血漿及び肺の濃度を測定する。タンパク質沈殿を介し、試料をLC-MS/MS分析用に調製する。定量下限未満(LLOQ)で測定された血漿濃度は定量限界未満(BLQ)として報告する。
【0266】
血漿中の試験化合物濃度をng/mLとして表現する。
【0267】
平均血漿濃度を計算する。平均計算のため、LLOQを下回る濃度をゼロに設定する。そのため、平均値はBLQになる場合がある。少なくとも3つの血漿濃度値がLLOQを上回る場合に、標準偏差(SD)、平均値の標準誤差(SE)、及び変動係数(CV、%)を集計する。
【0268】
PhoenixTM WinNonlin(登録商標)6.3(Pharsight Corporation)を用いて個々の血漿濃度に対するノンコンパートメント解析を実施して、少なくとも以下の薬物動態パラメーターを定量する:
【0269】
最高血漿濃度、対応時間を伴うCmax(μg/mL)、tmax(h)、
【0270】
最終定量可能濃度までの時間曲線に対する血漿濃度下面積AUC0-tまたは24時間までのAUC0-24h(μ.h/mL)(化合物が用量後24時間まで定量可能である場合)、及び/または無限までのAUC0-∞(μ.h/mL)を、リニアアップ/ログダウン(linear up/log down)の台形則に従って計算する。必要と考えられる場合は部分的AUCが計算され得る。定量下限未満(BLQ)の濃度はゼロに設定する。定量可能な時点が3つ未満の場合はAUCを計算しない。%AUCextra<20%の場合はAUC0-∞とみなす。
【0271】
見かけ上の終末消失半減期t1/2(h)は、tmaxを除いた3つ以上の時点が線形回帰のために使用され、かつ調整済みR2>0.80の場合のみに報告する。
【0272】
正規化されたAUC及びCmax用量。
【0273】
平均薬物動態パラメーターを計算する。少なくとも3つの値が利用可能である場合は標準偏差(SD)及び変動係数(CV、%)を集計する。
【0274】
3.7 CIAモデル
3.7.1 材料
完全フロイントアジュバント(CFA)及び不完全フロイントアジュバント(IFA)をDifcoから購入する。ウシII型コラーゲン(CII)、リポ多糖(LPS)、及びEnbrelを、Chondrex(L’Isle-d’Abeau,France)、Sigma(P4252,L’Isle-d’Abeau,France)、Wyeth(25mg注射用シリンジ、France)、Acros Organics(Palo Alto,CA)からそれぞれ入手する。使用する他の全ての試薬は試薬グレードとし、全ての溶媒は分析グレードとする。
【0275】
3.7.2 動物
Dark Agoutiラット(オス、7-8週齢)をHarlan Laboratories(Maison-Alfort,France)から入手する。ラットを12時間明期/暗期サイクル(0700-1900)で飼育する。温度を22℃に維持し、飼料及び水を自由に摂取させる。
【0276】
3.7.3 コラーゲン誘発性関節炎(CIA)
実験の1日前に、0.05Mの酢酸を用いてCII溶液(2mg/mL)を調製し、4℃にて保管する。免疫化の直前に、等体積のアジュバント(IFA)及びCIIを、氷水浴中で予冷したガラス瓶内でホモジナイザーにより混合する。エマルジョンが形成されない場合は付加的なアジュバント及び均質化持続が必要となる場合がある。1日目に、各ラットの尾の基部に0.2mLのエマルジョンを皮内注射し、9日目に、2回目のブースター皮内注射(CFA 0.1mL食塩水中2mg/mLのCII溶液)を実施する。この免疫化法は、公表された方法(Jou et al.2005;Sims et al.2004)から改変したものである。
【0277】
3.7.4 試験設計
化合物の治療効果をラットCIAモデルにおいて試験する。ラットを均等な群にランダムに分け、各群が10匹のラットを含むようにする。全てのラットを1日目に免疫化し、9日目にブーストする。治療的投薬は16日目から30日目まで続ける。陰性対照群をビヒクルで処置し、陽性対照群をEnbrelで処置する(10mg/kg、3回/週、皮下)。典型的には、目的化合物の試験は4回用量、例えば、0.3、1、3、及び10mg/kg、経口で行う。
【0278】
3.7.5 関節炎の臨床的査定
関節炎を文献に記載の方法に従ってスコア化する(Khachigian 2006 Nat Protoc.2006;1(5):2512-6;Lin et al. 2007,Br J Pharmacol,150,pp862-872;Nishida et al.2004,Arthritis and Rheumatism,50(10),pp3365-3376)。4本の足の各々の膨脹を以下のような関節炎スコアでランク付けする:0-症状なし;1-軽度、ただし明確な赤み及び1つのタイプの関節(例えば、足首もしくは手首)の膨脹、または明らかな赤み及び個々の指に限定された膨脹(罹患した指の数にかかわらず);2-中等度の赤み及び2つ以上のタイプの関節の膨脹;3-重度の赤み及び指を含めた足全体の膨脹;4-複数の関節を伴って最大限に炎症化した肢(動物当たりの最大累積臨床関節炎スコアは16)(Nishida et al.2004)。
【0279】
複数の試験のメタ分析を可能にするために、臨床スコア値を以下のように正規化してもよい:
【0280】
臨床スコアのAUC(AUCスコア):1日目から14日までの曲線下面積(AUC)を各個々のラットに対し計算する。各動物のAUCを、その動物のデータを得た試験でビヒクルに対し得られた平均AUCで割り、100を掛ける(すなわち、AUCは、試験ごとの平均ビヒクルAUCのパーセンテージとして表現される)。
【0281】
1日目から14日までの臨床スコアの増加(エンドポイントスコア):各動物における臨床スコア差を、その動物のデータを得た試験でビヒクルに対し得られた平均臨床スコア差で割り、100を掛ける(すなわち、差は、試験ごとのビヒクルに対する平均臨床スコア差のパーセンテージとして表現される)。
【0282】
3.7.6 関節炎発症後の体重変化(%)
臨床的には、体重損失は関節炎に関連する(Rall & Roubenoff 2004 Rheumatology(Oxford);43(10):1219-23;Shelton et al.2005 Pain;116(1-2):8-16;Walsmith et al.2004 J Rheumatol.;31(1):23-9)。そのため、関節炎発症後の体重変化は、ラットモデルにおける治療効果を評価するための非特異的エンドポイントとして使用することができる。関節炎発症後の体重変化(%)は以下のように計算する:
【数1】
【0283】
3.7.7 放射線医学
各個々の動物の後肢に対し、X線写真を撮影する。ランダムな盲検的識別番号を各写真に割り当て、2名の独立した採点者が以下のような放射線医学的Larsenスコアシステムを用いて骨のびらんの重症度をランク付けする:0-正常、非損傷の骨輪郭及び正常な関節空間;1-わずかな異常、外側の中足骨のうちの任意の1つまたは2つがわずかな骨のびらんを示す;2-明らかな早期異常、外側の中足骨のうちの任意の3つから5つが骨のびらんを示す;3-中間の破壊性異常、全ての外側の中足骨が明らかな骨のびらんを示し、さらに内部の中足骨のうちの任意の1つまたは2つが明らかな骨のびらんを示す;4-重度の破壊性異常、全ての中足骨が明らかな骨のびらんを示し、内側の中足骨関節の少なくとも1つが完全にびらん状態であり、いくつかの骨関節輪郭は部分的に保存されている;4-断節性の異常、骨の輪郭を伴わない。このスコア付けシステムは、文献のプロトコル(Bush et al.2002,Arthritis and Rheumatism,46(3),802-805;Jou et al.2005,Arthritis Rheum,52(1),339-44;Salvemini et al.2001,Arthritis Rheum,44(12),2909-21;Sims et al.2004,Arthritis Rheum,50(7),2338-46)からの改変である。
【0284】
3.7.8 組織診断
放射線医学的分析の後、マウスの後肢を10%リン酸緩衝ホルマリン(pH7.4)に固定し、精細な組織診断のために迅速な骨脱灰剤(EUROBIO,Les Ulis,France)で脱灰し、パラフィン包埋する。関節炎関節の広範な評価を確実に行うため、少なくとも4つの連続切片(5μm厚さ)を切り、各連続切片の間を100μmとする。切片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色する。滑膜の炎症ならびに骨及び軟骨の損傷に対する組織学的検査を二重盲検で実施する。各足において、4点尺度を用いて4つのパラメーターを査定する。このパラメーターは、細胞浸潤、バンヌスの重症度、軟骨のびらん、及び骨のびらんである。スコア付けは以下のように実施する。1-正常、2-軽度、3-中等度、4-著明。4つのスコアを合計し、追加的スコア、すなわち「RA総スコア」として表す。
【0285】
3.7.9 踵骨(かかとの骨)のマイクロコンピューター断層撮影(μCT)分析
RAで観察される骨の分解は、特に皮質骨で生じ、μCT分析によって明らかになり得る(Oste et al. 2007;Sims et al.2004)。踵骨のスキャン及び3Dボリューム再構築の後に、骨分解を、in silicoで骨の縦軸に対し垂直に分離している、スライドごとに存在する不連続的な物体の数として測定する。骨が分解するほど、より多くの不連続的な物体が測定される。踵骨に沿って均等に分配した(約10.8μm間隔)1000枚の切片を分析する。
【0286】
3.7.10 定常状態PK
7日目以降、後眼窩洞にて、抗凝固剤としてのリチウムヘパリンを用いて、以下の時点にて血液試料を収集する:用量前、1、3、及び6時間。全血試料を遠心処理し、得られた血漿試料を未定の分析に-20℃にて保管する。LC-MS/MS法により、各試験化合物の血漿濃度を定量する。質量分析計は正エレクトロスプレーモードで操作する。WinNonlin(登録商標)(Pharsight(登録商標),United States)を用いて薬物動態パラメーターを計算し、用量前血漿レベルは24時間血漿レベルに等しいと想定する。
【0287】
3.8 MABモデル
MABモデルは、治療薬によるRA類似炎症性応答の調節に対する迅速な査定を可能にする。Khachigian,2006.DBA/Jマウスに、コラーゲンIIに対し向けられたmAbのカクテルを静脈内注射する。1日後、化合物の処置を開始する。3日後、マウスは腹腔内LPS注射(50μg/マウス)を受け、急速な炎症発生がもたらされる。化合物処置は、mAb注射から10日後まで継続する。炎症は、足の膨脹を測定し、各足の臨床スコアを記録することにより読み取る。炎症の重症度を示すために、四肢の累積臨床関節炎スコアが提示される。各肢に対し、0-4の尺度(4が最も重度の炎症)を用いたスコア付けシステムを適用する。
0 症状なし
1 軽度、ただし明確な赤み及び1つのタイプの関節(例えば、足首もしくは手首)の膨脹、または明らかな赤み及び個々の指に限定された膨脹(罹患した指の数にかかわらず)
2 中等度の赤み及び2つ以上のタイプの関節の膨脹
3 重度の赤み及び指を含めた足全体の膨脹
4 複数の関節を伴って最大限に炎症化した肢
【0288】
3.9 in vivo半月板切除(MNX)ラットモデル
3.9.1 MNXラットモデルにおけるin vivo有効性
メスのLewis半月板切除ラット(MNX)モデルにおいてin vivo有効性を試験した。MNXラットモデルは、十分に検証された変形性関節炎の疾患モデルである(Bendele,2001,J Musculoskel Neuron Interact,1(4),377-85;Janusz et al.,2002,Osteoarthr Cartilage,10,785-91;Pritzker et al.,2006,Osteoarthr Cartilage,14,13-29)。
【0289】
3.9.2 手術及び投薬
0日目に各ラットの右足に対し、内側側副靭帯の横断による半月板切除によって変形性関節炎を誘発し、4mmの靭帯を除去する。半月板の内部部分を垂直方向に横断して2つのフラップにし、これを滑膜腔の前及び後に向かって押す。シャム動物は麻酔のみを受け、皮膚及び筋肉を切開し、次いで縫合する。1日目に、均質な分配を行うため、ラットを体重に応じてランダムに処置群(群当たりn=20)に割付ける。C2から21日目まで、ラットに経口(po)で1日1回(qd)または1日2回(bid)、メチルセルロース(MC)0.5%またはHPβCD 10% pH3.0で製剤化した化合物を投与する。
【0290】
3.9.3 定常状態PKの定量(ssPK)
処置から少なくとも7日後、定常状態血漿曝露を定量するために、投与後の4つの時点:0、1、3、及び6時間(24時間は、用量前試料に等しいと想定する)で血液を試料採取する。
【0291】
3.9.4 組織診断
屠殺時に、各ラットの右脛骨を収集し、組織学的解析用に処理する。4%ホルムアルデヒド中の固定から48時間後、脛骨をOsteosoft中で7日間脱灰し、半分に切って2つの部分にしてから向かい合わせてパラフィン包埋する。5つの連続切片を200μm間隔で切り、約1.5mmの骨の中央部を網羅する。1つの連続スライドを、形態学的評価及びOARSIスコア付けのためにサフラニンO及び薄緑色で染色する。他の連続スライドは、軟骨細胞密度測定のためにDAPIと共にマウントする。
【0292】
脛骨プラトーにおける変形性関節炎を反映する軟骨傷害の程度を、軟骨びらんのグレード分類及びステージ分類に基づいたOARSI法を用いて評価及びスコア付けする(Pritzker et al,2006)。2名の異なる読取り担当者により、盲検的方式でOARSIスコア付けを評定する。各脛骨に対し、1つのスコアが、5つの切片のOARSIスコアの中央値とされる。
【0293】
統計的分析のため、群の中央値を、階層化されたクラスカル・ウォリス検定及びその後のダネット多重比較事後検定で比較する。
【0294】
有意水準:MNXビヒクルに対し、ns:統計的に有意ではない;*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。統計的分析を試験の全ての群に行う。
【0295】
3.10 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の食餌誘導性マウスモデル
このモデルは、NASHを誘発するために、60kcal%脂肪及び0.1%メチオニンからなるコリン欠乏L-アミノ酸規定高脂肪食(CDAHFD)を使用する。
【0296】
3.10.1 試験群及び用量レジメン:
C57/BL6マウス(Charles River)を以下に示すような群に分ける。マウスは誘発フェーズ開始時点で8週齢(>20
グラム)である。
【表12】
3.10.2 材料及び化合物
・CDAHFD;Research Diets Inc.,Ref.No.A06071302
・対照食餌:normal diet(VRF 1,P),Special Diets Service
s
【0297】
3.10.3 処置プロトコル:
誘発フェーズ:4週間
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を誘発するため、動物にコリン欠乏L-アミノ酸規定高脂肪食(CDAHFD)を与える。
【0298】
処置フェーズ:6週間
マウスを処置群にランダムに割付け、評価フェーズまで、上記の表に提示されるスケジュールに従って処置する。
【0299】
3.10.4 試料採取
定常状態PKの試料採取:血液をK2-EDTAチューブに収集して血漿を生成する。全ての血液試料を、収集から30分以内に遠心分離(5,000rpm、4℃にて10分間)により処理して血漿を得る。各血液試料からの血漿を液体窒素で迅速に凍結し、分析を行うまで-80℃にて冷凍庫で保管する。
【0300】
最終血液試料:プロテアーゼ阻害剤を含有する血清調製物のために血液をチューブに収集する。全ての血液試料を、遠心分離(3,500rpm、4℃にて15分間)により処理する。得られた血清試料のアリコートを、さらなる分析を行うまで-80℃にて凍結保管する。
【0301】
組織試料:肝臓を回収し、左側葉の一部をRNA遺伝子発現分析、TGアッセイ、OHプロリン測定の切片用に保管し、残りは病理組織学的評価用に10%ホルマリンに入れる。病理組織学的評価は、線維症の程度を評価するためにシリウスレッドで染色した切片と、マクロファージ蓄積を査定するためにF4/80で染色した切片とを含む。
【0302】
6つの線維症遺伝子(Col1A1、Timp1、Pai1、CTGF、TGFβ、及びActa2)、炎症遺伝子(TNFα、IL10、及びCCL2)、ならびに2つのハウスキーピング遺伝子を遺伝子発現分析に使用する。
【0303】
3.10.5 結果
化合物1は、このモデルで試験した場合、少なくとも試験対象の最高用量において、線維症遺伝子パネルにおけるPai1、TIMP1、CTGF、及びTGFβの発現レベル(
図3)に対し、ならびに炎症パネルにおける3つの遺伝子全て(
図4)に対し、有意な効果を示した。加えて、化合物1は、15mg/kg/1日1回及び15mg/kg/1日2回におけるヒドロキシプロリンレベルに対する有意な効果(
図5)、15mg/kg/1日1回及び15mg/kg/1日2回におけるシリウスレッドの線維症定量化に対する有意な効果(
図6)、ならびに15mg/kg/1日2回におけるF4/80定量化に対する有意な効果(
図7)を示した。
【0304】
4 CYP阻害
ヒトシトクロームP450アイソエンザイム(CYP1A2、2C9、2C19、2D6、及び3A4)に対する試験化合物の阻害潜在可能性を、cDNA発現ヒトシトクロームP450アイソエンザイム及び経口代謝産物に代謝される非蛍光基質を用いて査定する。
【0305】
化合物を3.3及び10μMで試験し、最終DMSO濃度を0.3%とする。化合物を15分間酵素と共にインキュベートしてから、補因子基質ミックスを添加する。CYP3A4(BD Biosciences,456202)、CYP2C9(BD Biosciences,456258)、CYP2C19(BD Biosciences,456259)、及びCYP1A2(BD Biosciences,456203)のアッセイのための補因子ミックス中の最終反応濃度は以下の通り:0.4U/mLグルコース-6-リン酸-デヒドロゲナーゼ(G6PDH,Roche,10165875001)、3.3mM MgCl2(Sigma,M2670)、3.3mM D-グルコース-6-リン酸(Sigma,G7879)、及び1.3mM NADP+(Sigma,N0505)。CYP2D6(BD Biosciences,456217)については、本アッセイにおける最終濃度は、0.4U/ml G6PDH、0.41mM MgCl2、0.41mM D-グルコース-6-リン酸、及び8.2μM NADP+とする。酵素及び基質の濃度を0で報告する。インキュベート期間後、停止溶液を添加することにより、反応を停止させる。基質としてのDBFを用いた実験については、2N NaOH停止溶液を使用し、一方他の全ての基質については、停止溶液は80% MeCN/20% 0.5Mトリス塩基とする。
【0306】
蛍光の読取りは、直ちに(CEC、AMMC、BFCの場合)または20分後(DBFを基質として使用するCYP2C9及びCYP3A4の場合)、PerkinElmer EnVision(登録商標)リーダーで適切な励起及び発光波長にて行う(0参照)。
【0307】
次いで、試験化合物によるCYPの阻害パーセンテージを、ブランク試料を基準にデータを正規化することにより計算する:100%阻害は、酵素/基質ミックスの添加前にブランク試料が停止し、0%阻害は、酵素反応が生じた後に(50分)ブランク試料が停止するということである。
試験した各CYP450アイソエンザイムに使用した阻害アッセイ条件
【表13】
AMMC:アミノエチル-7-メトキシ-4-メチルクマリン
BFC:7-ベンジルオキシ-4-トリフルオロメチルクマリン
CEC:3-シアノ-7-エトキシクマリン
DBF:ジベンジルフルオレセイン
【0308】
5 時間依存的CYP3A4阻害
プールされたHLMにおいて査定される、化合物による時間依存的CYP3A4阻害を、Grimm et al.Drug Metabolism and Disposition 2009,37,1355-1370及びdraft FDA Guidance for Industry(Drug Interaction Studies - Study Design, Data Analysis,Implications for Dosing,and Labeling Recommendations),2006(http://www.fda.gov/cder/guidance/index.htm)に従ってIC
50定量を介して定量する。テストステロンをプローブ基質として使用し、トロレアンドマイシンを陽性対照として使用する。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
式I:の化合物:
(化1)
(式中、
R
1
は、H、CH
3
、F、またはClであり、
Xは、N、CH、またはC-CNであり、
R
2
は、CH
3
またはハロゲンである)
またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物、もしくは溶媒和物の薬学的に許容される塩、またはその生物学的に活性な代謝産物。
(態様2)
R
1
がFである、態様1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(態様3)
R
2
がCH
3
である、態様1または2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(態様4)
XがCHである、態様1、2、または3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(態様5)
XがC-CNである、態様1、2、または3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(態様6)
XがNである、態様1、2、または3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(態様7)
前記化合物が以下から選択される、態様1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩:
2-アミノ-5-フルオロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド、
2-アミノ-5-メチル-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド、
2-アミノ-5-クロロ-N-[1-(5-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-ピリジン-4-カルボキサミド、
2-アミノ-N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]ピリジン-4-カルボキサミド、
2-アミノ-N-[1-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミド、
2-アミノ-N-[1-(5-シアノ-3-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミド、及び
2-アミノ-N-[1-(3-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-ピペリジル]-5-フルオロ-ピリジン-4-カルボキサミド。
(態様8)
態様1-7のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
(態様9)
医薬における使用のための、態様1-7のいずれか1項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または態様8に記載の薬学的組成物。
(態様10)
疼痛、炎症状態、心血管疾患、神経変性疾患、神経疾患、糖尿病の合併症、がん、及び/または線維性疾患の予防及び/または処置における使用のための、態様1-7のいずれか1項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または態様8に記載の薬学的組成物。
(態様11)
態様1に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物、もしくは溶媒和物の薬学的に許容される塩、またはその生物学的に活性な代謝産物を調製するためのプロセスであって、
(a)式IIの化合物:
(化2)
(式中、X及びR
2
は、態様1で定義されている通りである)
を式IIIの化合物:
(化3)
(式中、R
1
は、態様1で定義されている通りである)
またはその保護誘導体と反応させることと、
(b)式Iの化合物の保護誘導体を脱保護することと、
(c)式Iの化合物またはその保護誘導体を、さらなる式Iの化合物またはその保護誘導体に相互転換することと、
(d)任意選択で、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を形成することと
を含む、前記プロセス。
【配列表】