(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】3D印刷の方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/10 20170101AFI20221221BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20221221BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221221BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20221221BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20221221BHJP
【FI】
B29C64/10
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y50/02
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2020502188
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(86)【国際出願番号】 AU2018050799
(87)【国際公開番号】W WO2019023749
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-07
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521173867
【氏名又は名称】エフュージョンテック アイピー ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カミッレーリ,スティーブン
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/013240(WO,A1)
【文献】特開2001-166809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10
B29C 64/393
B33Y 10/00
B33Y 50/02
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の3D印刷の方法であって、
a)基板上で3次元で前記製品の部分を印刷するステップと、
b)前記部分を前記基板から離し、前記部分の向きの変更を行い、次いでそれを前記基板と再係合させるかそれを保持手段又は別の基板と係合させるステップと、
c)第1に言及された部分上で3次元で前記製品のさらなる部分を印刷するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記向きの変更が45°~180°の変更を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の基板他の基板以外に、前記製品が形成するときに前記製品のための支持体を提供すること無しに実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記製品が、スプレーヘッドから噴霧された印刷材料から構築される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記印刷材料がコールドスプレーされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記印刷がスプレーヘッドを介してであり、前記スプレーヘッド及び/又は少なくとも請求項1に記載の基板が、前記製品が構築される際にコールドスプレーとしての前記印刷材料の的を絞った配置を円滑にするように、コンピュータ制御のコントローラの影響下で動かされ、そのような動きが前記製品のための記録された形状パラメータにより案内される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記形状パラメータが、形成されることになる前記製品を異なる部分に概念上分割し、前記異なる部分の少なくとも1つが、当該部分が印刷された後に、前記第1に言及された部分又は基板を保持する手段に対して向きの変更が行われるように指定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
a)前記向きの変更が45°~180°の変更を含み、
b)前記方法が、1つ又は複数の前記基板以外、前記製品が形成するときに前記製品のための支持体を提供すること無しに実施され、
c)前記製品が、スプレーヘッドからコールドスプレーされた印刷材料から構築され、
d)前記スプレーヘッド及び/又は1つ若しくは複数の前記基板が、前記製品が構築される際に、前記印刷材料の的を絞った配置を円滑にするように、コンピュータ制御のコントローラの影響下で動かされ、そのような動きが前記製品のための記録された形状パラメータにより案内され、
e)前記形状パラメータが、形成されることになる前記製品を異なる部分に概念上分割し、異なる部分の少なくとも1つが、印刷された後に向きの変更が行われるよう指定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基板から前記第1に言及された部分を離すことが、治具において前記基板を屈曲させるか前記基板に衝撃荷重を与え前記部分とのインターフェイスに沿ってそれを砕けさせることによる、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
一方又は両方の基板が前記製品内に組み込まれる、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記印刷材料が、
・鉄合金、
・粉末の非鉄合金、及び
・溶融プラスチックフィラメント
の1つ又は複数を含む、請求項
8、
9又は
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、3D印刷により製品を作る方法に関する。望ましい形において、本発明は、3D印刷における材料の支持の必要性を最小化することに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
典型的には、3Dプリンターは印刷材料を基板に徐々に加えていくことにより製品を作り出す。そのようなプリンターは、材料がどこに置かれるかを指示することができる動作制御システムを有し得る。制御システムは、プリントヘッド(例えば、噴霧材料を分注する部品)又は基板(例えば、これは、部分形成製品をそれが構築される際に保持する)のいずれか一方、又は両方に取り付けられ得る。概して、製品が構築される際、それには様々な力が作用する(例えば、重力及び慣性力など)。したがって、プリントヘッド及び基板は、通常はしっかりと保持されている必要があり、部分形成製品は基板にしっかりと保持される必要がある。
【0003】
基板及びプリントヘッドが構成される方法は、どこに印刷材料が追加され得るかを限定し得る。例えば、プリントヘッドは、印刷材料を基板を通じて分注することにより部分形成製品に施すことは通常はできない。むしろ、印刷材料は、製品が形成される際に製品の開いている又は露出された部分にのみ施され得る。これは、所与のプリンターで印刷可能な幾何学的形状の実施可能な範囲を限定し得る。
【0004】
例えば、作り出されている製品が、重力下で変形する傾向があるかなりの片持部分を有する場合、印刷が進むにつれて印刷された材料を保持するために、基板に支持材料を補うことが必要であることも多い。概して、支持材料は、印刷ジョブの終わりに完成品から機械的に除去される。支持材料を除去する面倒は、それを印刷し捨てる費用に加えて、支持材料の使用を最小化することを意図された様々な設計哲学の原因となっている。いくつかの状況において、支持材料は溶ける物質である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の限界の1つ又は複数を対処するにあたり少なくともいくらか助けになることが本発明の好ましい実施形態の目的である。しかしながら、本発明それ自体の目的は、単純に、有用な選択肢の提供であることが理解されるべきである。したがって、任意の好ましい実施形態に当てはまる任意の目的又は利点は、より幅広く表されるクレームの範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明の一態様によると、製品の3D印刷の方法であって、
a)基板上で3次元で製品の部分を印刷するステップと、
b)当該部分又は基板を保持する保持手段に対して当該部分の向きの変更を行うステップと、
c)第1に言及された部分上で3次元で製品のさらなる部分を印刷するステップと
を含む方法が提供される。
【0007】
任意選択的に、ステップb)は、基板から第1に言及された部分を離すこと、当該部分の向きの変更を行うこと、次いでそれを基板と再係合させるかそれを保持手段若しくは別の基板と係合させることを含む。
【0008】
任意選択的に、向きの変更は45°~180°の変更を含む。
【0009】
任意選択的に、方法は、第1及び/又は第2に言及された基板以外に、製品が形成する際に製品のための支持体を提供すること無しに実施される。
【0010】
任意選択的に、製品は、スプレーヘッドから噴霧された印刷材料から構築される。
【0011】
任意選択的に、印刷材料はコールドスプレーされる。
【0012】
任意選択的に、スプレーヘッド及び/又は少なくとも第1の言及された基板は、製品が構築される際にコールドスプレーとしての印刷材料の的を絞った配置を円滑にするように、コンピュータ制御のコントローラの影響下で動かされ、そのような動きは製品のための記録された形状パラメータにより案内される。
【0013】
任意選択的に、形状パラメータは、形成されることになる製品を異なる部分に概念上分割し、異なる部分の少なくとも1つは、それが印刷された後に、部分又は第1の言及された基板を保持する手段に対して向きの変更が行われるよう指定される。
【0014】
任意選択的に、方法は、
a)ステップb)が、基板から第1に言及された部分を離すこと、当該部分の向きの変更を行うこと、次いでそれを基板と再係合させるかそれを保持手段若しくは別の基板と係合させることを含み、
b)向きの変更が45°~180°の変更を含み、
c)方法が、1つ又は複数の基板以外、製品が形成する際に製品のための支持体を提供すること無しに実施され、
d)製品が、スプレーヘッドからコールドスプレーされた印刷材料から構築され、
e)スプレーヘッド及び/又は1つ若しくは複数の基板が、製品が構築される際に、印刷材料の的を絞った配置を円滑にするように、コンピュータ制御のコントローラの影響下で動かされ、そのような動きが製品のための記録された形状パラメータにより案内され、
f)形状パラメータが、形成されることになる製品を異なる部分に概念上分割し、異なる部分の少なくとも1つが、印刷された後に向きの変更が行われるよう指定される
ようになっている。
【0015】
任意選択的に、基板から第1に言及された部分を離すことは、治具において基板を屈曲させるか基板に衝撃荷重を与え、部分とのインターフェイスに沿ってそれを砕けさせることによる。
【0016】
任意選択的に、一方又は両方の基板は製品内に組み込まれる。
【0017】
任意選択的に、印刷材料は、
・鉄合金(例えば鋼)、
・粉末の非鉄合金、及び
・溶融プラスチックフィラメント
の1つ又は複数を含む。
【0018】
図面
本発明のいくつかの好ましい実施形態が、一例として及び添付図面を参照してここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】基板上に3D印刷された製品の概略側面図及び等角立体図である、
【
図3】本発明の一実施形態による3D印刷方法における6つのステップを概略的に示す。
【
図4】
図3の方法の任意選択の製品である完成品の等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
図1を参照すると、3Dプリンターのこの実施形態は、ロボットアーム2であってそれにより把持部が動き得るロボットアーム2を含む把持部1を含む。プリンターはまたコールドスプレーヘッド3を有する。把持部1は基板を保持するとともに、基板上に3D製品を構築するためにそれをスプレーヘッド3から噴霧される印刷材料へ曝す。基板4は、
図2において、印刷材料の増分層6a~eから構築される場合の3D製品5と共に示されている。ロボットアーム2は、製品が構築される際に印刷材料が正しい角度で、及び基板の正しい部分に、又は部分形成製品に施されるように、製品が構築される際に位置及び向きを調整する。
【0021】
示されているとおり、基板は、プリントヘッドが部分形成製品の部分、すなわち基板に対して直接当てられている面に作用するのをブロックする傾向がある。また、追加的な支持無しに基板から距離をおき過ぎたところに着く噴霧材料を施すことは、材料が硬化する際に重力又は他の力を原因として材料を変形し易くし得る。これは、製品を分離した部分において作り出すことにより対処され得る。1つの部分が印刷されると、それは基板から除去され、向きの変更が行われ、基板と再係合させられ、さらなる部分が次いで、第1に言及された部分の上に徐々に構築されて製品が完成させられる。完成品は次いで基板から除去される。完成した第1部分上への構築は2つの既製部分を融合させるのとは区別可能である。
【0022】
図3を参照すると、ステップ「A」で、クランプ7が未加工基板8を保持する。スプレーノズル9が次いで基板8に制御可能に向けられ、標的3次元製品の部分10を形成し始める。部分10の完成ステージはステップ「B」で示されている。ステップ「C」で示されているとおり、部分10は次いで基板から除去され、ステップ「D」について示されるとおりスペーサ13がクランプに嵌合され、当該部分はスペーサに逆さまに取り付けられ、ステップ「E」で示されるとおり噴霧は製品の反対側15を引き続き形成し、「F」で示されるとおり、支持材料無しで両側から噴霧され完成品18がもたらされる。製品18は次いでスペーサから解放される。最終的に製造された製品は
図4において3次元で示されている。
【0023】
把持部1の動き(したがって基板の動き)、及び/又はスプレーヘッド3の動きは、コンピュータ制御のコントローラ(図示せず)により制御される。コントローラには作り出されることになる製品のための形状パラメータがプログラムされており、最適な結果のために基板又は部分形成製品に正しい角度、速度及び温度で接触するように、印刷材料がスプレーヘッドから放たれるようにする。形状パラメータは製品を分離した部分に概念上分割し、各部分は平面又は非平面で終端し得る。一例として、面は垂直に方向付けられ得るが、代替的製品については、それらは水平であっても、水平と垂直の間のどこかであってもよい。好ましくは、面は完成品において互いに面している。
【0024】
図3は完成品18を2つの分離した部分で作り出すことを示しているが、他の実施形態において、それらは、各々が形状において同じ、同様又は著しく異なる任意の複数の部分であってもよい。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の利益は、支持材料についての要件無しで、又は要件が実質的に減少した状態で、製品が複数のステージで容易に作り出され得るという点である。支持材料の不在(すなわち、基板の他に)はまた、例えば印刷後に空洞を作り出すために、事象後に支持体を取り外す必要無しに製品が製造され得ることを意味する。
【0026】
上記のとおり、及び
図3を参照すると、製品の最初の半分は、作られると、基板から除去され得、向きの変更が行われ得、次いでクランプ7又は基板8と再係合させられ得る。解放は治具において基板を屈曲させるか基板に衝撃荷重を与えそれが部分とのインターフェイスに沿って砕かれるようにすることにより達成することが可能である。代替的に、基板は製品に組み込まれてもよい。再締付は、リバーシブルな締付特徴部を組み込むとともに表面を噴霧される部分、例えば平らな領域、ラグ又はボルト面に位置付けることにより達成され得る。これらの特徴部は、任意の従来の又は便利な機械加工用固定具、例えば、ボルト、フィンガークランプ、トグルクランプ又は付勢されたクランプ及び固定具により係合され得る。リリーフが基板面に組み込まれてもよい。
【0027】
印刷材料は噴霧として上記されてきた。このために用いることができる材料の種類の例は、アルミニウム7075又はマンガン青銅など非鉄金属の粉末合金、又は粉末鋼、例えば、316ステンレス鋼などである。特に好ましい材料は、500℃の温度及び700m/sの速度でのコールドスプレーとして施されたValimet6061である。本発明の他の実施形態において、印刷材料は、例えば熱溶解積層法(FDM)において使用されている溶融プラスチックフィラメントとして施され得る。このような場合、印刷材料はABSポリマーであってもよい。
【0028】
コールドスプレー積層の場合、部分10の向きの変更が行われると、新たに現れた積層表面が好ましくは鏡面仕上げに機械加工されるとともに磨かれ、温度が実施可能な限り、概ね約100℃まで上げられた場合、後続の噴霧材料が最もよく接着され得ることが分かっている。これらのステップがとられると、このとき向きの変更が行われた/既に積層された材料と新たに積層された材料との間の接合インターフェイスは、通常より大きい引張強度、概ね材料自体のものに近い引張強度を有する傾向がある。しかしながら、このステップは必須ではない。他の「素地調整処理」、例えばポリマー3D印刷プロセス(例えばFDM)などの場合の素地予熱が用いられ得る。
【0029】
先の説明及び図面は、「反転した」部分を保持するための締付特徴部を説明する。場合により、それが反転した場合に締付のプロセスを単純化するために、犠牲的な着脱可能な印刷された材料(例えばタブ)を「反転した」部分に加えることが望ましい。この方法により部分を印刷することは、締付具の複雑さと印刷された部分の複雑さとの間で折り合いをつけ得るか釣り合いをとり得る。総生産量が一部片であり得る3D印刷の場合、締付具の複雑さを最小化することが望ましい場合が多い。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態において、部分が反転される場合、噴霧材料は様々であり得る。例えば、部分の一部が印刷され、当該部分が反転されるとともにそれに再び取り付けられ、噴霧材料が望ましい異なる特性を有するものに変えられ、次いで印刷が続けられる。放熱板はこの技術のための1つの適用である。この点において、アルミニウムは放熱板のための良好な特性を有し、銅が良好な体積特性を有することが分かっている。反転及び材料変化を伴う、両者の特性の利点を活用するハイブリッド放熱板を製造するために上の技術を使用することが可能である。
【0031】
本発明のいくつかの好ましい形が一例として説明されたが、修正形態及び改良形態が以下の特許請求の範囲から逸脱すること無しに生じ得ることが理解されるべきである。