(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】梅の花抽出物を含む微塵による皮膚細胞損傷ケア用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/736 20060101AFI20221221BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20221221BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20221221BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221221BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221221BHJP
A61K 133/00 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
A61K36/736
A23L33/105
A61K8/9789
A61P17/02
A61P43/00 111
A61Q19/00
A61K133:00
(21)【出願番号】P 2020516596
(86)(22)【出願日】2018-08-13
(86)【国際出願番号】 KR2018009253
(87)【国際公開番号】W WO2019059527
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2017-0121801
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】シム, ジンソプ
(72)【発明者】
【氏名】イ, テ リョン
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-115542(JP,A)
【文献】特開2005-097219(JP,A)
【文献】(機械翻訳)「角質は空にし保湿だけ残す 2 in 1 梅の花保湿ピーリング」(オンライン),2017年03月,https://www.beautynury.com/news/view/76182/cat/10/page/17430
【文献】Journal of Investigative Dermatology,2016年07月,136,S219, Article number 342
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/736
A23L 33/105
A61K 8/9789
A61P 17/02
A61P 43/00
A61Q 19/00
A61K 133/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梅の花抽出物を有効成分として含み、
前記梅の花抽出物は、水、C
1
~C
6
の無水又は含水低級アルコール、アセトン、ブチレングリコール、エチルアセテート、ジエチルアセテート及びクロロホルムからなる群より選択されたいずれか一つ以上の抽出溶媒で抽出されたものであり、
IL-36G(NM_019618)の発現を抑制する、
微塵による皮膚損傷ケア用組成物。
【請求項2】
前記梅の花抽出物は、組成物の総重量に対して0.000001~30重量%の範囲で含まれた、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
当該組成物は、角質形成細胞(keratinocyte)に適用される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記微塵は、粒子の大きさが2.5μm以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記梅の花抽出物は、10~500mg/kg/日の投与量で投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
当該組成物は、化粧料組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
当該組成物は、薬学的組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
当該組成物は、健康機能食品組成物である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、微塵による皮膚細胞損傷をケアする組成物が開示される。より詳しくは、正常状態の皮膚細胞と比べ、微塵によって発現程度が変化する皮膚細胞遺伝子であるバイオマーカーなどを有意に変化させて皮膚細胞損傷をケアする、梅の花(Prunus mume flower)抽出物を含む組成物が開示される。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外部環境に直接的に露出する身体部位であって、我々の身体の重要な器官を保護する保護膜の役割を果たすだけでなく、水分の蒸発を調節し、外部感染から身を保護する役割を果たす。しかしながら、いくら外部からのウイルスの侵入を防ぐ皮膚であっても、過度な紫外線や汚染物質などに露出すると、皮膚刺激を誘発するようになり、特に強い風や砂塵を伴う黄砂によって損傷を受けるようになる。
【0003】
黄砂は、中国やモンゴルなどの内陸に位置した砂漠で小さな砂や黄土が上空に巻き上げられて上層風に乗って遠くまで運ばれ、地上に落下する現象である。我が国でも毎年春期になると黄砂が周期的に発生する。黄砂は有機物と無機物の複合体であって、発生時期や場所によって物理的特性や構成成分が非常に多様であり、生物学的に影響を与え得る金属成分も含んでいる。黄砂のようなサイズの大きい粒子は主に発源地や周辺に留まり、その中の粒子サイズの小さい細塵が我が国まで運ばれてきており、該細塵を吸い込むと、下部気管支及び肺のガス交換部分にまで沈着して呼吸器系に損傷を生じさせ得ると報告されたことがある。また、黄砂や細塵の多い地域に住む人々の皮膚では皮膚細胞の損傷が増大するのが観察されたことがある。
【0004】
IL-36Gは、微塵による皮膚細胞損傷などによって生じる乾癬などにおける有用なバイオマーカーであることが知られており、S100 proteins A7、A8、及びA9のようなバイオマーカーとは異なり、IL-36Gは、乾癬性炎症(psoriatic inflammation)に特異性を持っており、AD、CE、及びLPのような他の炎症性皮膚疾患ではその発現が弱いと知られている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Kim、H.J. et al., “Transcriptome analysis of airborne PM2.5-induced detrimental effects on human keratinocytes”, Toxicology Letters 273, 26-35, 2017
【文献】AM D’Erme et al., “IL-36c(IL-1F9)Is a Biomarker for Psoriasis Skin Lesions”, Journal of Investigative Dermatology, Volume 135, 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者等は、微塵が皮膚に有害な影響を及ぼし、かかる影響によって皮膚細胞遺伝子の発現にも影響を及ぼすことで皮膚細胞損傷などのような症状が発現するようになるということを見出した。
【0007】
したがって、一側面において、本発明は、微塵による皮膚細胞の損傷ケア用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、一側面において、本発明は、梅の花抽出物を有効成分として含む組成物であって、微塵によって発現量に影響を受ける皮膚細胞内遺伝子であるIL-36G(NM_019618)の発現量を正常レベルに調節する微塵による皮膚損傷ケア用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
一側面において、本発明によって提供される微塵による皮膚損傷ケア用組成物を用いることで、微塵によって変化する遺伝子発現量を正常レベルで戻して皮膚細胞の損傷をケアすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】微塵抽出液の処理による細胞生存率を示した図であり、ここで、ADSPはアジアダストストーム粒子(Asian dust storm particle)であって黄砂を示し、PM10(Particulate matter 10)は粒子の大きさが10μmである微塵を示し、PM2.5(Particulate matter 2.5)は粒子の大きさが2.5μmである微塵を示し、グラフx軸の値は微塵水溶性抽出液の濃度(μg/ml)であって、それぞれ0μg/ml、6.3μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、及び200μg/mlを示す。
【
図2】PM2.5の微塵によって刺激された皮膚細胞内でIL-36G遺伝子のmRNA発現量が増加し、梅の花抽出物の処理によって正常レベルに戻ることを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0012】
梅は、バラ科サクラ属の落葉高木であって、中国が原産地で日本や中国、韓国などに分布する。花を梅花と呼び、その実を梅の実と呼ぶ。梅の木は高さ5~10mでその樹皮は黄色を帯びた白色、緑色を帯びた白色、赤色などを呈しており、複数本の小さい枝には細かい毛が生えているものもあり、細かい毛がないものもある。韓国の中部地方では梅の花(Prunus mume flower)が4月に葉より先に咲き、その色は淡い白色または赤色を帯び、香りを放つ。がく片は5枚であって丸い模様であり、花びらは複数枚で広いたまごを逆立ちしたような模様をしている。葉は互い違いに生え、たまご模様であるか広いたまご模様をしており、長さ4~10cmである。その縁はギザギザとなっており両面に毛が生えており、葉の柄に線がある。梅の実は球状の核果であって、緑色から7月に直径2~3cmの大きさの黄色に熟し毛がびっしり生え、酸味が強く果肉から離れ難い。
【0013】
使用用途や花色、花びらの模様に応じて種々の品種に分けられ、その使用用途によっては花梅と実梅に分類し、花梅は、さらに野生に近い品種である野梅系、野生種から変化した変種である赤色花の咲く緋梅系、そして杏との雑種である豊後系に分けられる。花びらの色にて分類すると、白色の花を咲かせる白梅と赤色の花を咲かせる紅梅に分けられ、白梅のうちでも、花びらは白色であるががくが緑色である白梅を緑鍔梅と分類する。花びらの模様によっては、花びらが5枚だけ咲くものを一重咲き梅、5枚の内部に花びらが重ねられて咲くものは八重咲き梅と分類する。
【0014】
本発明の一側面において、前記微塵による皮膚損傷ケア用組成物は、梅の花抽出物を有効成分として含んでいてよい。
【0015】
一側面において、前記梅の花は、乾燥及び粉砕されたものであってよい。
【0016】
本発明の一側面において、前記梅の花を特定の抽出溶媒で抽出して梅の花抽出物を調製してよい。
【0017】
本発明の一側面である、前記梅の花抽出物は、梅の花を水又は有機溶媒で抽出して調製されたものであってよい。具体的に、梅の花を水、C1~C6の無水又は含水低級アルコール、アセトン、ブチレングリコール、エチルアセテート、ジエチルアセテート、ジエチルエーテル、ベンゼン、クロロホルム、及びヘキサンからなる群より選択されたいずれか一つ以上の抽出溶媒で抽出して調製されたものであってよい。
【0018】
一側面において、前記梅の花抽出物は、常温抽出されたものであってよい。
【0019】
一側面において、前記梅の花抽出物は、前記抽出溶媒で抽出されてから、ろ過、濃縮、分離、又は乾燥過程の一つ以上を更に経て得られたものであってよい。特に、前記梅の花抽出物は、1回以上のろ過過程を経たものであってよく、一実施例において、2回のろ過過程を経る。
【0020】
一実施例において、前記分離過程は、遠心分離過程を含んでよい。
【0021】
具体的に、前記抽出は、水、C1~C6の無水又は含水低級アルコール、アセトン、及びブチレングリコールを含む極性溶媒、及びエチルアセテート、ジエチルアセテート、ジエチルエーテル、ベンゼン、クロロホルム、及びヘキサンを含む低極性溶媒のいずれか一つ以上を溶媒として用いることであってよい。
【0022】
より具体的に、前記溶媒は、50~90%のエタノール水溶液であってよく、60~80%又は65~75%のエタノール水溶液であってよい。前記溶媒が50~90%のエタノール水溶液である場合、梅の花から有効成分を効果的に抽出することができる。一実施例において、前記溶媒は、約70%のエタノール水溶液であってよい。
【0023】
一側面において、前記抽出物は、抽出後、冷却コンデンサ付きの蒸留装置で適正の温度に減圧濃縮されてよい。
【0024】
なお、本発明に係る梅の花抽出物は、当該技術分野における通常の方法で抽出して得てよく、前述した方法によって限定されるものではない。
【0025】
本発明の一観点である、組成物において、当該組成物は、梅の花抽出物を、組成物の総重量を基準に0.000001~30重量%の範囲で含んでいてよい。該含量が0.000001~30重量%の範囲である場合、梅の花抽出物が優れた微塵による皮膚損傷ケア効果を示した。
【0026】
具体的に、0.0000001重量%以上、0.0000005重量%以上、0.0000007重量%以上、0.0000009重量%以上、0.000001重量%以上、0.000002重量%以上、0.000004重量%以上、0.000006重量%以上、0.000008重量%以上、0.00001重量%以上、0.00003重量%以上、0.00005重量%以上、0.00007重量%以上、0.00009重量%以上、0.0001重量%以上、0.0003重量%以上、0.0005重量%以上、0.0007重量%以上、0.0009重量%以上、0.001重量%以上、0.01重量%以上、0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、9重量%以上、10重量%以上、13重量%以上、15重量%以上、17重量%以上、19重量%以上、21重量%以上、23重量%以上、25重量%以上、27重量%以上、29重量%以上、30重量%以上、31重量%以上であってよく、且つ32重量%以下、31重量%以下、30重量%以下、29重量%以下、28重量%以下、26重量%以下、24重量%以下、22重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.1重量%以下、0.09重量%以下、0.04重量%以下、0.01重量%以下、0.006重量%以下、0.001重量%以下、0.0009重量%以下、0.0007重量%以下、0.00005重量%以下、0.00003重量%以下、0.00001重量%以下、0.000009重量%以下、0.000007重量%以下、0.000005重量%以下、0.000003重量%以下、0.000001重量%以下、0.0000009重量%以下、0.0000007重量%以下、0.0000005重量%以下、0.0000003重量%以下、0.0000002重量%以下、0.0000001重量%以下、0.00000009重量%以下であってよいが、これに制限されるものではない。
【0027】
本発明の他の側面は、前記組成物の微塵による皮膚損傷ケア用途を含む。
【0028】
本発明の他の側面において、対象の微塵による皮膚損傷ケアのための方法であって、当該方法は、梅の花抽出物の有効量を、これを必要とする対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0029】
本発明の他の側面において、微塵による皮膚損傷ケアのための組成物を製造するに際する梅の花抽出物の用途を提供する。
【0030】
本発明の他の側面において、微塵による皮膚損傷ケアのための梅の花抽出物を提供する。
【0031】
本明細書で用いられる「微塵」とは、人間の目に見えない極めて小さな物質で大気中に長い間浮遊する又は飛びちる粒子状の物質のことを言い、粒径10μm以下の物質のことを言う。特に粒径が2.5μm以下の粒子状の物質は「超微塵」と言い、本願発明において「微塵」は「超細塵」をも含むものと意図される。
【0032】
本明細書で用いられる用語「ケア」とは、刺激から皮膚細胞を効果的に保護し、且つ前記刺激によって特定の遺伝子の発現量が変化することを抑制、防止又は復元することを言う。
【0033】
一側面において、本発明は、微塵によって損傷された皮膚細胞で特定の遺伝子の発現量を正常レベルに調節することで、微塵による皮膚細胞の損傷を抑制する組成物を提供する。
【0034】
具体的に、一側面において、本発明は、微塵によって発現量に影響を受ける皮膚細胞内遺伝子としては、IL-36G(NM_019618)を含む。前記IL-36G(NM_019618)は、微塵によって発現量が増加する遺伝子であるので、これらの遺伝子の発現量を抑制して正常レベルに調節することで皮膚細胞の損傷を抑制することができる(非特許文献1参照)。
【0035】
本発明で用いられる、微塵によって発現量が増加する遺伝子は表1に提示されている。該表におけるNameは、NCBIのgenebank accession IDを意味し、Gene Symbolは、公式遺伝子シンボルを意味し、Gene titleは、各遺伝子の名前を意味する。このような内容は、非特許文献1の記載から確認することができる。
【0036】
【0037】
前記遺伝子又はタンパク質の発現量の分析は、マイクロアレイ、PCR、NGS(Nest Generation Sequencing;次世代塩基配列分析)、ウエスタンブロット、ノーザンブロット、ELISA、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、組織免疫染色、免疫沈降分析法などの当業界で公知の種々の分析方法を用いて分析されてよい。
【0038】
微塵によって皮膚細胞の損傷が生じ、このときに炎症が誘導されて皮膚細胞の損傷がさらに生じるようになる。このような皮膚細胞損傷の悪循環を梅の花抽出物がケアすることで皮膚状態を改善できるようになる。
【0039】
本発明の一観点である、前記組成物は、化粧料組成物であってよく、薬学的組成物であってよく、健康機能食品組成物であってよい。
【0040】
前記化粧料組成物は、例えば、各種クリーム、ローション各種クリーム、ローション、スキンローションなどのような化粧品類と、クレンジング、洗顔剤、せっけん、美容液などがある。
【0041】
一側面において、本発明に係る前記梅の花抽出物を含有する組成物が添加された化粧料は、溶液、乳化物、粘性型混合物などの形状をとってよい。
【0042】
すなわち、一側面において、本発明の化粧料は、その剤形において特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、エッセンス、パック、ゲル、パウダー、メーキャップベース、ファウンデーション、ローション、軟膏、パッチ、美容液、クレンジングフォーム、クレンジングクリーム、クレンジングウォーター、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル、ボディーエッセンス、シャンプー、リンス、ボディー洗浄剤、せっけん、染毛剤、スプレーなどのような剤形が挙げられる。
【0043】
各剤形の化粧料組成物において、前記梅の花抽出物以外の他の成分は、その他の化粧料の剤形又は使用目的に応じて当業者が難なく適宜選定して配合してよい。
【0044】
また、一側面において、本発明に係る化粧料は、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質、及び海草エキスからなる群より選択された組成物を含んでいてよい。
【0045】
一側面において、本発明に係る化粧料には、前記必須成分とともに必要に応じて通常化粧料に配合される他の成分を配合してもよい。
【0046】
その他添加してもよい配合成分としては、乳脂成分、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水などが挙げられる。
【0047】
また、その他添加してもよい配合成分はこれらに限定されるものではなく、且つ、前記いずれの成分も本発明の目的及び効果を損傷させない範囲内で配合可能である。
【0048】
一側面において、本発明に係る梅の花抽出物を含む薬学的組成物は、当該薬学組成物の製造に通常用いる適切な担体、賦形剤、及び希釈剤をさらに含んでいてよい。
【0049】
前記梅の花抽出物を含む薬学的組成物は、その剤形として、それぞれ通常の方法に従い錠剤、カプセル、散剤、又はシロップなどの経口剤、若しくは軟膏、ゲル、クリーム、パッチ、又はスプレーなどの外用剤などを含む薬剤学的製剤に適合した如何なるものに剤形化してよい。
【0050】
一般に、前記薬学的組成物によって投与される有効成分の実投与量は、症状の重症度、選択された投与経路、対象の年齢、性別、体重、及び健康状態などの種々の関連因子に鑑みて決定されるべきであると理解されてよい。一般に、有効成分の投与量は、0.0001mg/kg/日~3000mg/kg/日、例えば、10mg/kg/日~500mg/kg/日の範囲であってよい。
【0051】
本発明の一観点である健康機能食品組成物において、健康食品は、日常食事で欠乏されやすい栄養素や人体に有用な機能を持つ原料や成分(機能性原料)を用いて製造したものであって、人体の正常な機能を維持したり生理機能活性化を通じて健康を維持し改善したりする食品を意味するものであってよいが、これに制限されない。前記健康食品は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸剤などの形態で製造、加工されてよいが、これらに限定されず、法律に則っていかなる形態でも製造、加工されてよい。
【0052】
具体的に、健康飲料組成物は、指示された割合にて必須成分として前記化合物を含有する以外に、他の成分には特別な制限がなく、通常の飲料のように各種の香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含有していてよい。天然炭水化物の例としては、モノサッカライド、ポリサッカライド、シクロデキストリンなどのような通常的な糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールが挙げられる。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリシルヒジンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を用いてよい。
【0053】
一般に、前記健康機能食品組成物によって投与される有効成分の実投与量は、症状の重症度、選択された投与経路、対象の年齢、性別、体重、及び健康状態などの種々の関連因子に鑑みて決定されるべきであると理解されてよい。一般に、有効成分の投与量は、0.0001mg/kg/日~1000mg/kg/日、例えば、0.02mg/kg/日~6mg/kg/日の範囲であってよい。
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明の構成及び効果をより具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明に対する理解を助けるための目的から例示したものに過ぎず、本発明の範疇及び範囲が下記の例によって制限されるものではない。
【0055】
[実施例1]梅の花抽出物の製造
梅の花を、精製水とエタノールとを3:7の割合で混合した抽出溶媒、すなわち、70%エタノールを抽出溶媒として常温抽出した。常温抽出後に1次ろ過を施して抽出物に含まれていた固相の材料を除去し、次いで、抽出物を濃縮してエタノールを除去した後、これを分離及び精製した。そして、遠心分離及び2次ろ過後に乾燥して、梅の花抽出物を得た。
【0056】
[実施例2]微塵の捕集及び抽出
微塵の捕集は、ローボリウムエアサンプラー(Sensidyne、Gillian、Low Volume Air Sampler、FL、U.S.a.)を利用し、フィルタパック(Filter pack)は測定日毎の午前10時前後にフィルタとデニューダを取り替えて約24時間試料を採取した。28日間に亘ってソウル市の風下地域(韓国京畿道竜仁市處仁區所在、韓国外国語大学校外国学総合研究センター生活館6階屋上)で毎日微塵を捕集し、測定時間は真空ポンプのオンと同時にタイマーを作動させ、真空ポンプのオフ時にタイマーの時間を記録した。採取流量は16.7L/minとし、測定開始時の流量計(Model 4143、TSI Inc.)で流量を測定し、測定の終了時に再度流量を測定した。フィルタパック(filter pack)に組み込まれるTeflonフィルタは、試料採取の前と後に重さを測定した。Teflonフィルタの重さを測定する前に24時間に亘って相対湿度40%のデシケーター(NIKKO、Japan)に恒量させてから、小数点5桁が表示される電子秤(DVG215CD、Ohaus)で重さを2回測定してその平均値を記録した。試料を採取した後も、重さを測定する前にデシケーターで24時間に亘って恒量させてから重さを2回測定し、採取前に測定した重さと比較して質量濃度を算出した。微塵の抽出は、Teflonフィルタを1mLのエタノールに濡らしてから14mLのDWを入れてフィルタのエアロゾル捕集面が水面に当接するようにした状態で蓋を閉じた後に超音波洗浄器で30分間超音波を与えて行った。ろ過段階で水分による誤差を最小化するために乾燥器(decicator)で48時間フィルタの水分を完全に除去した後、0.1mgまで測定可能な超精密秤(Mettler Toledo COMPANY社製)を利用してフィルタの重さを秤量し、フィルタの抽出前と後の重さを秤量した。
【0057】
[実施例3](正常ヒト)角質形成細胞株の培養
(正常ヒト)角質形成細胞株(Human normal epidermal keratinocytes)は、ロンザ社(Lonza、Inc.、米国メリーランド州ウォーカーズビル所在)から購入して継代培養した後、CO2培養器(CO2 incubator)で37℃、5%CO2条件下で培養した。細胞培養液はロンザ社の指針書に従った。500mlのKBM-2(KBMTM-2、CC-3103)培地にKGM-2ブレットキットCC-4152(KGM TM-2 Bullet kit、CC-4152)(成分:BPE(Bovine pituitary extract))、ヒト上皮成長因子(human epidermal growth factor、hEGF)、インシュリン(Insulin)、ヒドロコルチゾン(Hydrocortisone)、トランスフェリン(Transferrin)、エピネフリン(Epinephrine)、及びゲンタマイシン硫酸塩+アムホフェリシン-B(Gentamycin Suflate+Amphofericin-B:GA-1000))を添加したKGM-2ブレットキットCC-3107(KGM TM-2 Bullet Kit、CC-3107)を用いた。
【0058】
[実施例4](正常ヒト)角質形成細胞株への微塵の処理及び細胞毒性の測定
微塵処理による細胞毒性の有無を確認するために、Mossmanら(J.Immunol. Methods、65、55-63、1983)の方法で(正常ヒト)角質形成細胞株を用いたMTT実験を行った。
【0059】
具体的に、24-ウェルプレートを用い、前記実施例3で採取して得た直径2.5μmの微塵を精製水に分散させて微塵分散液を製造した後、実施例4の細胞培養条件下、2.5×10
5ウェル細胞数の条件で培養した細胞に前記微塵分散液を処理して24時間培養した後、MTT(3-4,5-dimethylthiazol-2,5-diphenyltetra zolium bromide)5mg/mlを混合し、37℃で3時間さらに培養した。次いで、培地を除去し、形成されたホルマザン結晶(formazan crystal)をDMSO 500μlに溶解した。該溶解物を96-ウェルプレートに移して分注(aliquot)し、吸光度540nmにおけるOD値を測定した。測定結果は
図1に示した。
【0060】
図1に示したように、前記細胞株において2.5μm以下の微塵を分散させた分散液による細胞毒性に対して80%の生存率を示す濃度(IC20)値は、2.5μm以下の微塵水溶性抽出液の場合に12.5μg/mlであった。
【0061】
[実施例5]次世代塩基配列分析(next Generation Sequencing)による微塵の細胞遺伝子変化の確認
RNA-塩基配列データ処理及び分析のために、Trapnell et al.(2012)によって開発された一般的な分析段階を参照した。FastQC(http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc/)を用いてRNA-seqデータ品質を確認し、FASTX(http://hannonlab.cshl.edu/fastx_toolkit/)を用いて、正確度が落ちるベース及びアダプタ配列を除去した。次いで、Tophat(Trapnell et al.、2009)とヒトゲノム(hg19)を用いてアラインメントを行い、各サンプルのデータ量をRSeQCと再命名されたEVER-seqを用いて確認した(Wang et al.、2012)。また、Cufflinksを用いて転写体(transcript)の発現レベルを定量し、微塵分散液処理サンプルと正常サンプルとの転写レベルを比較した(Trapnell et al.、2010)。FDR adjusted p-value<0.05に、≧2.0 fold-changeの厳しいカットオフを適用して、直径2.5μmの微塵の分散液の処理時の有意な発現差を示す遺伝子を決定した。測定結果は、下記の表2及び
図2に示されている。
【0062】
【0063】
[実施例6]リアルタイムRT-PCR定量
実施例2で抽出した直径2.5μmの微塵を実施例3で培養したヒト正常角質皮膚細胞に対し細胞培養培地1mlに12.5μgの量で処理し、下記の表3に表した遺伝子のプライマー(applied biosystems TaqMan(登録商標) Primers)で相対的mRNA発現量を測定した。梅の花抽出物は実施例2で製造したものを用いた。
【0064】
【0065】
培地に梅の花抽出物を20ppmの濃度で処理してから24時間経過後、培養液を除去し、2mlのリン酸塩緩衝液(Phosphate Buffered Saline、PBS)で細胞を洗浄した後、トリゾール試薬(Trizol reagent、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を用いて細胞内のRNAを分離した。分離したRNAをキアゲン社製のRNAキット(QIAGEN RNeasy kt、QIAGEN、Valencia、CA)でもう1回精製した後、エジュラント社製のバイオアナライザ2100モデル機器(Agilent 2100 BioAnalyzer、Agilent Technologies、Santa Clara、CA、USA)を用いてRNAの質(quality)を確認した。インビトロゲン社製の逆転写キット(Superscript Reverse Transcriptase(RT)kit、Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて前記RNAからcDNAを合成し、これを前記表3のプライマーを用いたリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Q-RT-PCR:real time-reverse transcription polymerase chain reaction)によって定量的に分析した。遺伝子の発現パターンの変化をアプライドバイオシステム社製のタックマン遺伝子発現システム(TaqMan gene expression assay kit、Applied Biosystems、Foster City、CA)を用いて細胞の遺伝子変化をリアルタイムPCRで評価し、その結果を[
図2]に示した。用いたQ-RT-PCRとリアルタイムPCRはいずれもライフテクノロジーから配布する標準プロトコールに従って行い、具体的に、95℃で20秒間処理した後、95℃で3秒及び60℃で30秒を処理する工程を40周期行った。
【0066】
図2に示したように、微塵によって刺激された皮膚細胞で発現量が増加又は減少する遺伝子が存在し、梅の
花抽出物の処理によってインターロイキン36ガンマ(IL-36G)遺伝子の発現量が減少することを確認することができた。
【0067】
したがって、梅の花抽出物は、微塵による刺激から皮膚細胞を効果的に保護し、且つ前記刺激によって前述した特定の遺伝子の発現量が変化することを抑制又は防止して、正常レベルの発現量を有し得るようにすることができることが分かる。
【0068】
以下、本発明に係る組成物の剤形例を説明するが、化粧料組成物、薬学的組成物及び健康機能食品組成物は種々の剤形への応用が可能であり、これらは本発明を限定するためのものではなく単に本発明を具体的に説明するためのものである。
【0069】
[剤形例1]錠剤
本発明の実施例に係る梅の花抽出物100mg、ラクトース400mg、とうもろこし澱粉400mg及びステアリン酸マグネシウム2mgを混合した後、通常の錠剤の製造方法に従い打錠して錠剤を製造した。
【0070】
【0071】
[剤形例2]カプセル剤
本発明の実施例に係る梅の花抽出物100mg、ラクトース400mg、とうもろこし澱粉400mg及びステアリン酸マグネシウム2mgを混合した後、通常のカプセル剤の製造方法に従いゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0072】
【0073】
[剤形例3]顆粒剤
本発明の実施例に係る梅の花抽出物50mg、無水結晶ブドウ糖250mg及び澱粉550mgを混合し、流動層造粒機を用いて顆粒に成形した後、分包に充填した。
【0074】
【0075】
[剤形例4]せっけん
【0076】
【0077】
[剤形例5]ローション
【0078】
【0079】
[剤形例6]クリーム
【0080】
【0081】
[剤形例7]軟膏
【0082】
【0083】
[剤形例8]美容液の製造
【0084】
【0085】
[剤形例9]健康食品
【0086】
【0087】
[剤形例10]健康飲料
【0088】