(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】組立装置
(51)【国際特許分類】
B08B 5/02 20060101AFI20221221BHJP
B08B 7/00 20060101ALI20221221BHJP
C23G 5/00 20060101ALI20221221BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20221221BHJP
H05H 1/26 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B08B5/02 Z
B08B7/00
C23G5/00
B29C65/48
H05H1/26
(21)【出願番号】P 2020533985
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2018028988
(87)【国際公開番号】W WO2020026399
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-09-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】神藤 高広
(72)【発明者】
【氏名】岩田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 陽大
(72)【発明者】
【氏名】東田 明洋
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-251971(JP,A)
【文献】特開2005-223167(JP,A)
【文献】特開2007-299822(JP,A)
【文献】特開2005-339502(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029845(WO,A1)
【文献】特開2012-212803(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0075882(KR,A)
【文献】特表2008-506796(JP,A)
【文献】特開昭56-069369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 5/02,7/00
C23G 5/00
B29C 65/48
H05H 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面を有する樹脂製の対象物に付着した油に大気圧プラズマによりプラズマ化された酸素プラズマを含むプラズマガスを
前記曲面に基づいた角度で照射する照射部と、前記プラズマガスの温度を前記対象物の融点より低い温度に制御する制御部とを有する大気圧プラズマ装置と、
前記対象物を上流の装置の作業位置から下流の装置の作業位置に移動させる移動装置と、
前記移動装置により前記大気圧プラズマ装置の作業位置から移動されてきた前記対象物の前記油が除去された部分に接着剤を
前記曲面に基づいた角度で塗布する塗布装置と、
前記移動装置により前記塗布装置の作業位置から移動されてきた前記対象物の、前記塗布装置により前記接着剤が塗布された接着面に、吸着ヘッドにより吸着した被接着物を
前記曲面に基づいた角度で接着させて装着する装着装置と、を備える組立装置。
【請求項2】
前記大気圧プラズマ装置の前記照射部は、
放電によりプラズマを発生させる1対の電極と、
前記1対の電極を内蔵し、前記1対の電極によりプラズマ化された前記プラズマガスが流出する流出口を有する反応室と、
前記反応室と連通し、前記プラズマガスが噴出するノズルブロックと、
冷却加熱ガスが流れるガス流路を有し、前記反応室を冷却する冷却器と、
前記ガス流路と連結され、前記冷却加熱ガスが流れるガス管と、
前記ガス管に配設される加熱器と、
前記ガス管と連結され、前記プラズマガスの流路に噴出口を有する連結部と、を有し、
前記加熱器により加熱された前記冷却加熱ガスが前記噴出口から前記プラズマガスに対して噴出されることにより、前記プラズマガスは加熱され、
前記大気圧プラズマ装置の前記制御部は、
前記加熱器を制御することにより、前記プラズマガスの温度を制御する、
請求項1に記載の組立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマの利用について種々の検討がされており、例えば特許文献1には、水蒸気プラズマを用いた油性成分含有物質に対する抗酸化処理方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工業製品の製造工程あるいは使用過程において、油が使用される機会は多い。また、これに付随して、油の除去が必要とされる機会も多い。
例えば、自動車製造工程においては、部品となる金属の切削が行われる場合に、切削油が使用される。切削油は一般に接着剤を用いた接着の接着性を低下させるため、成形された部品の接着に先行して除去の必要がある。しかしながら、金属の切削面は凹凸が生じている場合が多く、ふき取るなどしても除去しきれない場合があった。
【0005】
本願は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、油が付着した対象物の形状にかかわらず、油を除去できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
【0007】
【0008】
本明細書は、曲面を有する樹脂製の対象物に付着した油に大気圧プラズマによりプラズマ化された酸素プラズマを含むプラズマガスを曲面に基づいた角度で照射する照射部と、プラズマガスの温度を対象物の融点より低い温度に制御する制御部とを有する大気圧プラズマ装置と、対象物を上流の装置の作業位置から下流の装置の作業位置に移動させる移動装置と、移動装置により大気圧プラズマ装置の作業位置から移動されてきた対象物の油が除去された部分に接着剤を曲面に基づいた角度で塗布する塗布装置と、移動装置により塗布装置の作業位置から移動されてきた対象物の、塗布装置により接着剤が塗布された接着面に、吸着ヘッドにより吸着した被接着物を曲面に基づいた角度で接着させて装着する装着装置と、を備える組立装置を開示する。
【0009】
また、組立装置の大気圧プラズマ装置の照射部は、放電によりプラズマを発生させる1対の電極と、1対の電極を内蔵し、1対の電極によりプラズマ化されたプラズマガスが流出する流出口を有する反応室と、反応室と連通し、プラズマガスが噴出するノズルブロックと、冷却加熱ガスが流れるガス流路を有し、反応室を冷却する冷却器と、ガス流路と連結され、冷却加熱ガスが流れるガス管と、ガス管に配設される加熱器と、ガス管と連結され、流出口の近傍に噴出口を有する連結部と、を有し、加熱器により加熱された冷却加熱ガスが噴出口からプラズマガスに対して噴出されることにより、プラズマガスは加熱され、組立装置の大気圧プラズマ装置の制御部は、加熱器を制御することにより、プラズマガスの温度を制御するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、油が付着した対象物の形状にかかわらず、油を除去できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】プラズマガス噴出装置および加熱ガス供給装置を示す断面図である。
【
図3】大気圧プラズマ装置の制御系統を示すブロック図である。
【
図4】プラズマガス照射前および照射後のFTIRスペクトルであり、
図4(a)は油面濃度15%、
図4(b)は油面濃度10%、
図4(c)は油面濃度5%、
図4(d)は油面濃度0%の結果である。
【
図5】プラズマガス照射による切削油の分解を説明する模式図である。
【
図6】各油面濃度におけるプラズマ処理前後の引張りせん断応力の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1実施形態
(大気圧プラズマ装置)
図1に示す様に、大気圧プラズマ装置10は、不図示の保護カバーに覆われたプラズマヘッド11と、制御装置16(
図3)とを備えている。プラズマヘッド11は、プラズマガス噴出装置12および加熱ガス供給装置14を有する。以下の説明において、プラズマヘッド11の幅方向をX方向と、プラズマヘッド11の奥行方向をY方向と、X方向とY方向とに直行する方向、つまり、上下方向をZ方向と称する。
【0013】
プラズマガス噴出装置12は、上部ハウジング19、下部ハウジング20、下部カバー22、1対の電極24,26(
図2)、1対のヒートシンク27,28によって構成されている。上部ハウジング19と下部ハウジング20とは、上部ハウジング19を下部ハウジング20の上に配設させた状態で、ゴム製のシール部材29を介して連結されている。そして、連結された状態の上部ハウジング19と下部ハウジング20とが、X方向におけ
る両側面において、1対のヒートシンク27,28によって挟まれている。
【0014】
後述するように、下部ハウジング20内部に形成された反応室38によりプラズマガスが生成され、生成されたプラズマガスは下部カバー22の下面から下方に噴射される。ヒートシンク27,28は、上部ハウジング19および下部ハウジング20などを冷却する機能を有する。ヒートシンク27,28の内部には、供給口96から排気口98へ至る流路が形成されている。供給口96には、供給パイプ100を介して、冷却ガス供給装置102(
図3)から、室温程度の空気である冷却ガスが供給される。冷却ガスは、熱交換により暖められ、排気口98から排気される。
【0015】
加熱ガス供給装置14は、ガス管110と、ヒータ112と、連結ブロック114とを有している。ガス管110は、ヒートシンク27,28の内部に形成された冷却ガスが流れる流路と連結されている。詳しくは、ガス管110は、上端部において、排出パイプ116を介して、1対のヒートシンク27,28の排気口98に接続されている。排出パイプ116は、一端部において二股に分岐しており、それら二股に分岐した端部が1対のヒートシンク27,28の排気口98に連結されている。一方、排出パイプ116の他端部は分岐しておらず、ガス管110の上端に接続されている。これにより、1対のヒートシンク27,28から排出されたガスが、ガス管110に供給される。なお、ガス管110の外周面には、概して円筒状のヒータ112が配設されており、ガス管110がヒータ112によって加熱される。これにより、ヒートシンク27,28からガス管110に供給されたガスが加熱される。
【0016】
次に、
図2を用いて、プラズマガス噴出装置12の内部構造について説明する。下部ハウジング20は、メインハウジング30、放熱板31、アース板32、連結ブロック34、ノズルブロック36を含む。メインハウジング30は、概してブロック状をなし、メインハウジング30の内部には、反応室38が形成されている。反応室38は、処理ガスが流入する流入口(不図示)およびプラズマガスが流出する流出口39を有する。
【0017】
アース板32は、避雷針として機能するものであり、メインハウジング30の下面に固定されている。アース板32の下面に連結ブロック34が固定されており、連結ブロック34の下面にノズルブロック36が固定されている。放熱板31は、メインハウジング30の側面に配設されている。放熱板31は、複数のフィン(不図示)を有しており、メインハウジング30の熱を放熱する。
メインハウジング30、アース板32、連結ブロック34、およびノズルブロック36において、ガス流路50が形成されている。つまり、ノズルブロック36は反応室38と連通している。
【0018】
連結ブロック114は、ガス管110の下端に連結されるとともに、下部カバー22のY方向での加熱ガス供給装置14側の側面に固定されている。連結ブロック114には、連通路120が形成されており、連通路120の一端部は、連結ブロック114の上面に開口するとともに、連通路120の他端部は、Y方向でのプラズマガス噴出装置12側の側面に開口している。そして、連通路120の一端部がガス管110の下端に連通し、連通路120の他端部が、下部カバー22の貫通穴72に連通している。これにより、ガス管110において加熱されたガスが、下部カバー22に供給される。
【0019】
1対の電極24,26は、メインハウジング30の反応室38の内部において、対向するように配設されている。その反応室38には、ガス供給路(不図示)を介して、処理ガス供給装置77(
図3)から、酸素等の活性ガスと窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合させた処理ガスが供給される。
【0020】
大気圧プラズマ装置10の制御系統は、
図3に示すように、制御装置16と、処理ガス供給装置77、および冷却ガス供給装置102が通信可能に接続されており、制御装置16により、各部が制御されている。制御装置16は、コンピュータを主体とするコントローラ130、駆動回路132~134を有する。尚、駆動回路132は、電極24,26へ供給する電力を制御する回路である。駆動回路133は、処理ガス供給装置77および冷却ガス供給装置102が供給する各ガスの流量を制御する回路である。駆動回路134は、ヒータ112へ供給する電力を制御する回路である。
【0021】
大気圧プラズマ装置10において、プラズマガス噴出装置12では、上述した構成により、反応室38の内部で処理ガスがプラズマ化され、ノズルブロック36の下端からプラズマガスが噴出される。詳しくは、反応室38の内部に、処理ガス供給装置77によって処理ガスが供給される。この際、反応室38では、反応室38に内蔵される1対の電極24,26に電圧が印加されており、1対の電極24,26間に電流が流れる。これにより、1対の電極24,26間に放電が生じ、その放電により、処理ガスがプラズマ化され、発生されたプラズマガスが噴出される。尚、処理ガスには、活性ガスとして酸素が含まれるため、プラズマガスには酸素ラジカルが含まれる。ヒートシンク27,28を備えない場合には、プラズマ化の際、電極24,26への電圧の印加により反応室38の温度は上昇する。しかし、大気圧プラズマ装置10においては、冷却ガス供給装置102により冷却ガスがヒートシンク27,28の流路に供給され、熱交換により反応室38が冷却される。尚、ヒートシンク27,28の流路を流れ、熱交換により暖められた冷却ガスは、ガス管110に供給され、ヒータ112により加熱される。加熱された冷却ガスは、下部カバー22の内部に供給され下部カバー22の貫通穴70から、プラズマガスに対して噴出される。尚、貫通穴70はノズルブロック36の近傍にあり、ノズルブロック36の下端から噴出されるプラズマガスの流路に配設されている。そして、下部カバー22の貫通穴70から、プラズマガスが、加熱された冷却ガスとともに噴出される。プラズマガスは、噴射される加熱された冷却ガスにより加熱される。ヒータ112は制御装置16により制御されているため、プラズマガスの温度も制御されている。
【0022】
(実施例)
大気圧プラズマ装置10による大気圧プラズマガス照射による油除去の効果を検証するために、次に説明する実験を行った。まず、アルミダイカストである4つの平板状のテストピースを用意した。4つのテストピースのそれぞれに、工作機械用の切削油を0%、5%、10%、15%の油面濃度で塗布した。尚、工作機械で使用される際には、油面濃度は5~10%とされる。
【0023】
ここで、テストピースをアルミダイカストとし、除去の対象とされる油を切削油としたのは、自動車の製造工程における利用を想定しているためである。例えば、自動車のECU(engine control unit)の筐体は、アルミダイカストの複数部品からなり、切削油を
用いた切削が行われる。また、切削後切削油の除去が行われ、その後接着剤により部品が互いに接着される。尚、ここでの接着剤とは、接着性を有するものであり、併せて密閉性を有する例えばFIPG(Formed IN Place Gaskets)、シール剤などを含む概念である。
尚、切削油の成分は製造元により異なるが、主にパラフィン系鉱物油およびエステルを含む。
【0024】
次に、プラズマガス照射前のテストピースを、フーリエ変換赤外線分光光度計(以下、FTIRと記載する)を用いて分析した。次に、大気圧プラズマ装置10を用いてテストピースに所定温度のプラズマガスを照射した。次に、プラズマガス照射後のテストピースを、FTIRを用いて分析した。
【0025】
図4(a)~(d)は、プラズマガス照射前および照射後のテストピースを、FTIR
を用いて分析した結果である。
図4(a)~(d)の各図の実線がプラズマガス照射前のスペクトルであり、破線がプラズマガス照射後のスペクトルである。
図4(a)~(d)は、それぞれ、油面像度が15%、10%、5%、0%に対応する。
3000~2840cm-1のピークはアルカンのC-H伸縮に由来するものである。1750~1735cm-1のピークはエステルのC=O伸縮に由来するものである。1
600~1400cm-1のピークはアルカンのC-H変角に由来するものである。また、各ピークの強度は油面濃度が大きい程、高くなっている。
図4(a)~(d)の各図において、プラズマガス照射後のスペクトルの各ピークは小さくなっている。これは、切削油がプラズマガスの照射により分解されたことを示すものである。
【0026】
図5は、プラズマガス照射による切削油の分解の様子を模式的に描いた図である。切削油に含まれるパラフィン系鉱物油およびエステルは、プラズマガスに含まれる酸素ラジカルにより分解される。詳しくは、酸素ラジカルとの反応により、切削油に含まれる炭素元素は二酸化炭素に、切削油に含まれる酸素元素は水になったと考えられる。
【0027】
次に、プラズマガス照射後のテストピースに接着剤を塗布し、被接着物となる平板状のアルミダイカストを接着した。詳しくは、テストピースのプラズマガスが照射された面と、被接着物との間に接着剤を介在させて、テストピースと被接着物とを接着した。また、比較例として、アルミダイカストである4つのテストピースの各々に切削油を0%、5%、10%、15%の油面濃度で塗布し、プラズマガスを照射せずに、塗布面と被接着物との間に接着剤を介在させて、テストピースと被接着物とを接着した。接着剤は、ThreeeBond社製の1217Mであり、これは油面接着性を付与した脱オキシムタイプのFIPG用一液
常温硬化型シリコーン系シール剤である。次に、接着されたテストピースおよび被接着物の各々を接着面に平行であって相反する方向に引っ張り、接着面が破壊する最大荷重を測定した。
図6は、最大荷重を接着面の面積で除した引っ張りせん断応力の測定結果(n=3)である。油面濃度10%、15%において、プラズマガスが照射されたテストピース(
図6における「プラズマ処理あり」)の引っ張りせん断応力の方が、プラズマガスが照射されていないテストピース(
図6における「プラズマ処理なし」)の引っ張りせん断応力よりも大きいことがわかる。これは、プラズマガス照射により接着強度の低下の要因となる切削油が分解されたためであると考えられる。ただし、使用した接着剤は、油面接着性を付与した、つまり、接着面に一般には接着強度を低下させる油が存在しても接着強度の低下を低減する効果が得られる接着剤である。油面濃度5%の実験結果はこの接着剤の特性が反映されたものであると考えられる。また、油面濃度0%においても、プラズマガスが照射されたテストピースの引っ張りせん断応力の方が、プラズマガスが照射されていないテストピースの引っ張りせん断応力よりも大きい結果となった。これは、プラズマガスが照射されることにより、テストピースに付着していた汚れがクリーニングされたためであると考えられる。
【0028】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
プラズマガスは対象物の形状に沿って流動することができるため、プラズマガスにより対象物の油の付着部分の形状にかかわらず、油を除去することができる。また、酸素ラジカルを用いることにより、油を構成する炭素元素および水素元素をそれぞれ二酸化炭素および水に分解して除去することができる。従って、切削油に含まれるパラフィンおよびエステルを分解することができる。また、接着に先立って、接着面にプラズマガスを照射することにより、接着面に付着する油を分解し、接着強度を向上させることができる。
【0029】
第2実施形態
(組立装置)
次に、プラズマガス照射、接着剤塗布、被接着物の装着を一連に行う組立装置200について、
図7を用いて説明する。組立装置200は、大気圧プラズマ装置10、塗布装置
210、装着装置220、および移動装置230を備える。尚、大気圧プラズマ装置10は、プラズマヘッド11と、制御装置16、処理ガス供給装置77、および冷却ガス供給装置102を収納する本体部17を有する。移動装置230は、例えばベルトコンベアであり、上面に載置されたワークW1を大気圧プラズマ装置10、塗布装置210、装着装置220の各作業位置へ、この順に移動させる。尚、ワークW1は樹脂製であり、表面に油が付着している。塗布装置210は、ワークW1の接着面に接着剤Aを吐出ノズル211から吐出させて塗布する。装着装置220は、吸着ヘッド221で吸着した被接着物W2を、接着剤Aが塗布された接着面に装着する。つまり、装着装置220は、ワークW1の大気圧プラズマ装置10によるプラズマ照射により油が除去された部分と被接着物W2との間に接着剤を介在させてワークW1と被接着物W2とを接着させる。尚、大気圧プラズマ装置10から照射されるプラズマガスの温度は、制御装置16により、樹脂製であるワークW1の融点より低い温度に制御されている。
【0030】
上記実施形態にて、プラズマヘッド11は照射部の一例であり、制御装置16は制御部の一例であり、塗布装置210および装着装置220は接着部の一例である。電極24,26は1対の電極の一例である。ヒートシンク27,28は冷却器の一例であり、ヒータ112は加熱器の一例である。冷却ガスは冷却加熱ガスの一例であり、連結ブロック114および下部カバー22は連結部の一例であり、貫通穴70は噴出口の一例である。
【0031】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
大気圧プラズマ装置10により照射されるプラズマガスは、樹脂製であるワークW1の融点より低い温度に制御されているため、ワークW1の損傷を低減しつつ、油を除去することができる。また、組立装置200は、大気圧プラズマ装置10、塗布装置210、装着装置220を有するため、プラズマガス照射作業、接着剤塗布作業、被接着物W2の装着作業を流れ作業として実施することができる。
【0032】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記では、組立装置200を平板状のワークW1に対して各作業が実施される構成を図示したが、これに限定されない。例えば、プラズマヘッド11、吐出ノズル211、吸着ヘッド221の各々が多関節ロボットに備えられ、曲面を有するワークに対して、その曲面に適当な角度で、プラズマヘッド11、吐出ノズル211、吸着ヘッド221の位置が調整される構成としても良い。ワークは、各作業位置にベルトコンベアなどで移動される構成としても良いし、位置が固定されたワークに対して、多関節ロボットが移動されて各作業が実施される構成としても良い。
【0033】
上記技術の適用対象は、アルミダイカストのECUケースに限らない。例えば、アルミニウム製、樹脂製の例えば自動車のオイルバンの油除去などにも適用することができる。また、酸素プラズマは炭素元素と結合し、二酸化炭素を生成する原理によって、例えば自動車などの金属部品に付着した炭素元素を含む汚れの溶接前のクリーニングなどにも適用することができる。
【0034】
また、上記では、下部ハウジング20は、アース板32を有すると説明したが、これに限定されず、アース板32を有しない構成としても良い。
【符号の説明】
【0035】
10 大気圧プラズマ装置
11 プラズマヘッド
16 制御装置
22 下部カバー
24,26 電極
27,28 ヒートシンク
36 ノズルブロック
38 反応室
200 組立装置
210 塗布装置
220 装着装置
110 ガス管
112 ヒータ
114 連結ブロック