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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20221221BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20221221BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20221221BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221221BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221221BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221221BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/13
H01M10/48 301
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H02J7/00 P
H02J7/10 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020540998
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2019009594
(87)【国際公開番号】W WO2020049773
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2018166539
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 基巳
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴志
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189062(JP,A)
【文献】特開2008-308122(JP,A)
【文献】特開2009-118664(JP,A)
【文献】特開2010-123503(JP,A)
【文献】国際公開第2011/061811(WO,A1)
【文献】特開2015-40832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00- 3/12
B60L 50/00-58/40
H01M 10/44,10/48
H02J 7/00, 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主変換装置と、
前記主変換装置に接続された電動機と、
前記主変換装置に接続可能な二次電池型の蓄電装置と、
を少なくとも備えた鉄道車両において、
前記蓄電装置の蓄電率を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記蓄電装置の利用開始または製造時点からの経過時間の進行に従って増加する蓄電率目標値を照会基準時間毎に記録したメモリを有し、
現在時点に一致または近接する前記照会基準時間の前記蓄電率目標値を前記メモリから読み出し、読み出した当該蓄電率目標値と現在時点の蓄電率との差に応じて前記蓄電装置の充電制御または自然放電を含む放電制御を実行する
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記蓄電装置の温度を計測する計測手段を有し、
前記制御装置は、前記読み出した蓄電率目標値を現在時点の前記温度に応じて補正する
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鉄道車両において、
所定区間の走行に必要な放電電力量に基づいて前記蓄電率に対して管理下限値を設け、
前記制御装置は、前記管理下限値を基準として前記放電電力量を確保するための蓄電率である利用上限値を設定し、当該利用上限値に基づいて前記蓄電率を制御する
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鉄道車両において、
前記主変換装置に対して架線からの電力を供給する集電装置と、
前記集電装置からの電力を利用して動作する第一の駆動モードおよび前記蓄電装置からの電力を利用して動作する第二の駆動モードを切り替える制御指令を出力する指令装置と
を備える
ことを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載蓄電池によりエネルギを供給する鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池など、蓄電池のエネルギ密度の向上に伴い、電気自動車(EV)の普及が徐々に拡大し、1充電の走行距離は、乗用車タイプで400kmを超えている。
【0003】
車両1両の質量が30~40ton、また機器の車載スペースが限られる鉄道車両においては、リチウムイオン電池の開発当初より、その高出力密度特性を活用して電車(EMU)の回生エネルギの一部を吸収して回生失効を防止する回生エネルギ吸収システム、気動車(DEMU)の回生エネルギを吸収し、力行エネルギをアシストするハイブリッド気動車への適用を進めた。近年では、高エネルギ密度と高出力密度を両立するリチウムイオン電池の開発が進み、1充電で100kmを超える走行を可能とする蓄電装置を車載した電車が導入されている。
【0004】
蓄電装置を車載した電車は、通常の電車システムと比較して、架線、変電所等の地上設備が設けられていない非電化区間であっても、始発駅と終端駅、場合によりいくつかの中間駅のみ充電設備を設け、充電設備毎に蓄電池を充電することによって当該区間を走行することができる。電化路線であっても、蓄電装置を車載した電車を導入し、支線等で運用頻度の低い路線は、架線、変電所等の地上設備を廃止し、メンテナンスコストを低減できる。さらに、地上設備の故障時は、橋梁上やトンネル内など、乗客の退避が難しい区間での立ち往生を避けるため、一定距離の走行が可能である点で蓄電装置の導入のニーズは高まりつつある。
【0005】
このような、蓄電装置を車載した電車では、一回の充電で所定の距離を走り切るため、高い蓄電率まで充電することが一般的である。特に、蓄電装置を地上設備故障時の車両立ち往生を防ぐことを目的として用いる場合には、万が一発生する故障時に備え、蓄電率が高い状態を長期間維持する必要がある。
【0006】
電池走行が必要となる場合を考慮して蓄電量を確保しつつ、制動時に発生する回生電力を高効率に吸収するように、蓄電装置に蓄える蓄電量を制御する鉄道車両駆動装置を提供することを目的とした鉄道車両駆動装置としては、特開2009-183079号公報に示されている「鉄道車両駆動装置」が挙げられる。
【0007】
特開2009-183079号公報の「鉄道車両駆動装置」では、集電装置と、充放電可能な蓄電装置7とを備え、通常状態における鉄道車両の走行は集電装置と蓄電装置を併用し、異常状態における鉄道車両の走行は蓄電装置のみで行う。また、前記公報では、通常状態においては蓄電装置の蓄電量が閾値より大きくなるよう制御し、異常状態においては蓄電装置の蓄電量が閾値より小さくなることを許容し、閾値は鉄道車両の運行条件と車両条件の両方もしくはどちらかに応じて増減するように制御する鉄道車両駆動装置について述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-183079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、架線等の集電装置からの電力供給がなく、車載蓄電装置の電力により駆動される鉄道車両では、所定の走行区間、あるいは走行距離を走破するために必要なエネルギを蓄電装置に予め蓄えておく必要がある。さらに蓄電池は長時間にわたって充電した状態で維持することが求められる。
【0010】
そこで、本発明は、蓄電池の長期運用に有用な新たな蓄電池の管理方法およびこれを採用した鉄道車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決にあたり本発明は様々な実施形態をとり得るが、その一例の鉄道車両は「主変換装置と、前記主変換装置に接続された電動機と、前記主変換装置に接続可能な二次電池型の蓄電装置と、を少なくとも備えた鉄道車両において、前記蓄電装置の蓄電率を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記蓄電装置の利用開始または製造時点からの経過時間の進行に従って増加する蓄電率目標値を照会基準時間毎に記録したメモリを有し、現在時点に一致または近接する前記照会基準時間の前記蓄電率目標値を前記メモリから読み出し、読み出した当該蓄電率目標値と現在時点の蓄電率との差に応じて前記蓄電装置の充電制御または自然放電を含む放電制御を実行する」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓄電池の長期運用に有用な新たな蓄電池の管理方法およびこれを採用した鉄道車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における、鉄道車両システムの概略構成を示す。
図2(a)】駆動システムの概略構成を示す。
図2(b)】蓄電池制御ユニットの概略構成を示す。
図3】提案する蓄電率管理方式の基本的な考え方を示す。
図4】提案する蓄電池管理方式を実施する場合の処理概要を示す。
図5】提案する蓄電池管理方式における蓄電率と容量維持率の関係を示す。
図6(a)】提案する蓄電池管理方式における利用初期の蓄電容量および蓄電率の関係を示す。
図6(b)】提案する蓄電池管理方式における利用終期の蓄電容量および蓄電率の関係を示す。
図6(c)】提案する蓄電池管理方式における蓄電率の目標値と基準時間との関係を示す。
図7(a)】比較例における利用初期の蓄電容量および蓄電率の関係を示す。
図7(b)】比較例における利用終期の蓄電容量および蓄電率の関係を示す。
図8】本発明の他の実施形態における、鉄道車両システムの概略構成を示す。
図9】駆動システムの変形例の概略構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は鉄道車両の走行に利用される蓄電池を管理する手法であって、本手法により管理された蓄電池を搭載した鉄道車両を提供する。管理対象である蓄電池は、鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池などが例として挙げられ、その他の充放電可能な化学電池が含まれる。
【0015】
この手法によって管理された蓄電池は主電動機と接続可能に構成され、主電動機の型式は交流電動機と直流電動機のどちらでもよい。あるいは内燃機関を搭載し、これによって発電した電力によって走行する電気式気動車に適用してもよい。また旅客列車に限らず、貨物列車に適用することもでき、軌道上を走行可能に構成された輸送機器であって、蓄電池を走行に利用できる輸送機器に適用できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明していく。なお以降に挙げる実施例は、本発明の適用に関する一例であって、発明はこれらの例に限定されない。適用対象の条件に合わせて実施例同士の全てまたは一部を交換し組み合わせることが可能である。また適宜、採用する部品の種別の変更や組み合わせ、省略が可能である。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態である鉄道車両の駆動システムについて概略構成を示す。この鉄道車両は、いわゆる交流電車であって、機械的な駆動装置に対して交流回転機から生じた駆動力を付与し車両が走行する。
【0017】
鉄道車両の基本的構成は、車両1a、1bである。これらは列車編成を構成する車両、またはその一部であって、車両1aと車両1bは車間連結器6で連結され各車両は台車を有する。台車2a(台車2bも同様)は輪軸3a、3bを有し、それぞれの輪軸に車輪が固定され、レール面上を走行する。また車両1bも台車2c、台車2dを有し、それぞれの台車の一部である輪軸3e、3f、3g、3hによりレール面上に支持されている。
【0018】
このようにいずれの車両も台車によってレール面から支持され、またいずれか少なくとも一両の車が駆動システムを有し、駆動システムから台車に動力が伝達され、列車編成の走行を実現する。図1に挙げた列車編成においては、車両1aが駆動システムを有した駆動車であって、車両1bは駆動システムを持たない付随車としている。
【0019】
車両1aに搭載された駆動システムは、集電装置5、変圧装置7(Transformer)、主変換装置8(Traction Converter)、電動機17、蓄電装置9(Traction Battery)および統括制御装置11(Control Unit)を基本的な構成として有する。また、駆動システムには含まれない主要な電力利用機器として、主変換装置8に対して蓄電装置9と並列に補助電源装置10(APS (Auxially equipment Power Supplier))が設けられる。これは主変換装置8の交流電力Pd1を、電圧一定かつ周波数一定(CVCF)な交流電力Pa3に変換し、車両内の照明や空調システムを代表とする車両用補機19に対して電力を供給する。なお駆動システムは、1車両に集中して搭載する必要はなく、編成中のいずれかの車両(両運転台の1両編成を含む)に分散して備えてもよい。
【0020】
また、統括制御装置11は、少なくとも1基のCPU、当該CPUと通信可能に構成された記憶装置および入出力インターフェイスを有し、制御指令を生成する。被制御機器の状態は入力インターフェイスを介して取得され、それらに対する制御指令は出力インターフェイスを介して出力される。これらのインターフェイスは、具体的にはPCIバスやこれに接続されたDI/DOインターフェイス、信号ケーブル、その他に継電器を含む。また、演算機能は、CPUに加えて、ASIC、FPGA、PLD、PLCなどの論理回路を採用し、これらによる実装を含む。
【0021】
図1に示す駆動システムにおいて、電力を駆動力に変換する第1の駆動システムによる第1の駆動モードは次のように定められる。まず交流電力Pa0が架線4より集電装置5を介して変圧装置7に供給される。変圧装置7は、交流電力Pa0の電圧Va0を、より低い電圧Va1の交流電力Pa1に変換し、主変換装置8に供給する。主変換装置8は、コンバータ装置14、インバータ装置15で構成され、コンバータ装置14は、交流電力Pa1を直流電力Pd1に変換し、かつ所定の電圧Vd1となるように制御する。
【0022】
インバータ装置15は電圧および周波数を可変制御するVVVFインバータであり、直流電力Pd1を交流電力Pa2に変換して、電動機17に対して入力しそのトルクを制御する。電動機17のトルクは、輪軸3a、3b、3c、3dの全て、またはその何れかに回転トルクとして伝達され、輪軸に固定された車輪を回転させる。回転する車輪とレール面間には踏面力が作用し、この踏面力により車両1aは加速、または減速する。
【0023】
インバータ装置15はインバータ制御ユニット22によって制御され、統括制御ユニット20からの指令に応じて、車両1a、1bを加速または減速させる電動機17の駆動トルクを発生するトルク電流指令を生成する。より詳細には、交流電流検出器18で検出する電動機電流Imu、Imv、Imwを基に演算するトルク電流をトルク電流指令に追従させる定電流制御を行い、その出力を基にインバータ装置15のスイッチング回路を動作させるPWMパルスを生成し、インバータ装置15に入力する。
【0024】
蓄電池制御ユニット23は、統括制御ユニット20からの指令に応じて、蓄電電力遮断器23cを投入/釈放して蓄電手段の充放電(入出力)を制限するとともに、蓄電手段より状態情報(蓄電率:SOC、蓄電池温度Tb等)を集約し、統括制御ユニット20に伝える。
【0025】
統括制御ユニット20は、蓄電装置9の電圧Vbatを基に、蓄電装置9を充電する場合にはVbatよりΔVbatだけ大きい電圧指令Vbdを、蓄電装置9を放電する場合にはVbatよりΔVbatだけ小さい電圧指令Vbdを演算する。ΔVbatに対して発生する充放電電流の大きさは蓄電装置9の内部抵抗値により決定する。
【0026】
以上の構成により、蓄電装置9の充放電電力Pbatを調整することで、SOCを蓄電率目標値:SOC(t)と一致するように管理する。なお、蓄電率目標値:SOC(t)は、蓄電装置9の使用開始からの経過時間と、蓄電装置9の蓄電池温度Tbを基に決定する。蓄電装置9の使用開始からの経過時間は、統括制御ユニット20が備えるタイマー20bにて、蓄電装置9の使用開始からの時間を積算することで求められるが、簡易的には使用開始からの経過時間値を手動で入力してもよい。蓄電装置9の蓄電池温度Tbは、蓄電装置9からの状態情報として検出できるが、蓄電装置9を使用する環境での平均的な温度を予め記憶させておいてもよい。
【0027】
また電力を駆動力に変換する第2の駆動システムによる第2の駆動モードは次のように定められる。第2の駆動システムは蓄電装置9のみにより走行を実現するものであって、蓄電装置9が主変換装置8(より詳細には主変換装置8のインバータ装置15)に対して電力を供給する。主変換装置8に対する電力の入力以降の構成については第1のシステムと同様の機器構成が採用され、これらを利用して踏面力を発生させる。
【0028】
第2の駆動システムにおける蓄電装置9は、例えば、電力をためるリチウムイオン型の蓄電池9aを有し、蓄電電力の充放電(入出力)を制限する蓄電電力遮断器23c、蓄電電力遮断器23cを制御する蓄電制御器23aが設けられる。なお蓄電制御器23aは蓄電池9aの状態監視機能を有し、監視対象は例えば蓄電池9aの端子間電圧、蓄電池9aの内部抵抗、蓄電池9aの表面温度またはセル内部温度(いわゆる蓄電池温度)、蓄電池9aの周辺環境温度などが含まれる。図2(b)では、蓄電池9aの表面温度を計測する温度計23bを設置した例を示す。
【0029】
蓄電装置9による充放電は、主変換装置8の直流電力Pd1の電圧Vd1と、蓄電装置9の電圧Vbatとの比較に基づき、いずれの状態を取るかが決定される。充放電が不要な状況においては、蓄電制御器23aが蓄電電力遮断器23cを動作させて蓄電池9aを主変換装置8から切り離した状態とする。
【0030】
充放電制御は次のように実施される。まず主変換装置8におけるコンバータ装置14とインバータ装置15とを接続する電力バスに掛かる電圧の計測または推測に基づき電圧Vd1が取得される。なお電圧Vd1はコンバータ装置14またはインバータ装置15の制御データに基づき推測されてもよい。
【0031】
続いて、主変換装置8と接続された蓄電装置9の出力電圧が電圧Vbatとして取得される。電圧Vbatは、蓄電装置9において端子間電圧を計測したり、放電試験等によって事前に取得されたSOC(SOC : State Of Charge)および放電電圧の関係に基づく推測値を採用したりして取得される。
【0032】
このようにして取得された電圧Vd1および電圧Vbatについて、電圧Vbatが電圧Vd1よりも低くなるように主変換装置8を動作させると蓄電池9aは充電され、反対に電圧Vd1よりも電圧Vbatが高くなるように制御すると蓄電装置9による放電が実行される。
【0033】
これらの充放電制御は統括制御装置11による制御指令に基づき実行される。統括制御装置11は、蓄電装置9を、平常時において、充電する場合には電圧VbatよりΔVbatだけ大きい電圧指令Vbdを、蓄電装置9を放電する場合にはVbatよりΔVbatだけ小さい電圧指令Vbdを演算する。続いて統括制御装置11は、演算した電圧指令Vbdを主変換装置8に対して出力し、主変換装置8は電圧指令Vdbへ電圧Vd1を追従する。この際、ΔVbatに対して発生する充放電電流の大きさは蓄電装置9の内部抵抗値により決定される。
【0034】
電圧追従制御は、本実施例において、主変換装置8に含まれるコンバータ装置14が中心的役割を果たす。本実施例のコンバータ装置14は、上位装置であるコンバータ制御ユニット21によって動作を制御される。
【0035】
コンバータ制御ユニット21は、交流電圧検出器12、交流電流検出器13、直流電圧検出器51、および直流電流検出器52と接続され、これら計測手段による計測結果に基づきコンバータ装置14の動作を制御する。具体的には、交流電圧検出器12によって収集される交流電圧Va0、交流電流検出器13によって収集される交流電流Ia1を基に、直流電圧Vd1が電圧指令Vbdに追従するように制御し、SOCが蓄電率目標値(SOC(t))と一致するように管理する。
【0036】
一方、平常時ではない、すなわち何らかの事情によって集電装置5から十分な電力供給を受けられず、第2のシステムによって駆動力を得る場合は、必要とされる駆動力および現在のSOCに基づき、インバータ装置15に供給される直流電力が決定される。統括制御装置11は、この直流電力が入力されるようコンバータ装置14を動作させてインバータ装置15に対して電力を供給する。
【0037】
ここで、蓄電装置9を充電された状態で長期間にわたって運用するために、蓄電池9aに対して新たな管理手法を適用する。具体的には蓄電率目標値(以下、SOC(t)とする)を適切に調整し、平常時にておける充放電制御によって充電率をSOC(t)と一致もしくはこれに近い値で維持する。このSOC(t)の調整は、少なくとも蓄電装置9の使用開始から現在までの経過時間情報(以下、経過時間とする)を利用し、さらに蓄電装置9の蓄電池温度(Tb)を利用することが好ましい。
【0038】
それぞれの情報は、自動的に収集する機器を統括制御ユニット20や蓄電池制御ユニット23、あるいは蓄電装置9に持たせてもよいし、手動入力するように構成されてもよい。図2(b)は自動的に情報を収集する場合の一例であり、蓄電装置9の使用開始からの経過時間は、統括制御装置11の一部である統括制御ユニット20によって取得される。統括制御ユニット20はタイマー20bを有し、蓄電装置9の使用開始からの経過時間を積算することができる。時間の積算方法は、例えば、日にち単位、週単位、月単位のいずれが採用されてもよく、あるいは任意に設定した単位でカウントされるものとしてもよい。また、タイマー20bに代わり、使用開始からの経過時間が手動で入力されるように構成してもよいし、蓄電装置9がタイマー20bを有していてもよい。
【0039】
その他、蓄電装置9が、自身の製造年月日が登録された記憶部、自身の蓄電した電力を使って稼働するタイマー20bを有し、製造年月日から経過した時間を外部へ出力するように構成されていてもよい。この場合、蓄電装置9は経過時間に関する出力インターフェイスを有し、蓄電池制御ユニット23はその出力インターフェイスと接続できる入力インターフェイスを持つことがさらに望ましい。
【0040】
また、蓄電装置9の蓄電池温度Tbは、蓄電池制御ユニット23の蓄電制御器23aに温度計23bから信号が入力されるように構成し、取得した信号に基づき把握される。もし温度計測機能が無い場合は、蓄電装置9を使用する環境での平均的な温度を予め記憶させておくことで代替してもよい。特に鉄道車両であれば、運用される路線がある程度限定されるため、インターネットや公共機関によって公開されている過去の気象データを基に、運用路線周辺地域の温度情報を取得することもできる。
【0041】
これらの情報を蓄電池制御ユニット23は、蓄電装置9との通信が可能となった時点、すなわち蓄電装置9の運用が開始された時点から取得し、図3に示される蓄電装置9の管理を始める。
【0042】
蓄電池制御ユニット23は、蓄電装置9の運用が始まると、蓄電率(SOC)を経過時間に応じて変化させる。図3は、蓄電池9aの容量維持率の推移と、それに応じた蓄電率の推移を示した図である。横軸においてT0が蓄電装置9の利用開始時点を示し、縦軸は蓄電装置9の容量維持率を示す。なお、容量維持率は、利用開始時点における蓄電容量を100とした場合に、それぞれ時点における蓄電容量を相対的に表す容量比である。
【0043】
図3に示されるように、蓄電池制御ユニット23は、T0→T1の区間ではSOC(t)を50%に、T1→T2の区間では60%に、T2→T3の区間では70%に、T3→T4の区間では80%に維持する。このような管理を実現するために、蓄電池制御ユニット23は、SOC(t)およびSOC(t)を更新すべき基準時間の情報が登録されたメモリ20c、およびこれらの情報に基づき蓄電装置9に対するSOCを出力する演算装置20aを有する。
【0044】
基準時間の設定は任意に定めてよい。例えば、蓄電装置9の運用期間を16年とするならば、それぞれの区間を4年としてもよい。あるいは等間隔ではなく、T0→T1を7年、T1→T2を5年、T2→T3を3年、T3→T4を1年と設定してもよい。
【0045】
SOC(t)の更新処理は、一例として、図4に示すような処理ステップによって実行される。
【0046】
まず、蓄電池制御ユニット23は、蓄電装置9の利用開始を示す情報が入力されると、タイマーを動作させる(Step 1)。合わせて、統括制御ユニット20は、メモリ20cに登録された基準時間の中から最も現在に近い基準時間(T1)を呼び出し、照会すべき基準時間(照会基準時間)として保持する(Step 2)。仮に基準時間をシリアル値として保持し、タイマーを周期的なクロック信号のカウント値によって実装する場合は、そのシリアル値を照会基準時間として設定する。その他、統括制御ユニット20が蓄電装置9の利用開始時期を記憶し、適宜、現時点との差分を演算することによって運用期間を取得するように構成してもよい。また利用開始時期は、蓄電装置9の運用を始めた時点に代わって、蓄電池9aの製造年月日を採用してもよい。
【0047】
演算装置20aは、周期的にタイマー20bから値(タイマー値)を取得し、タイマー値と照会基準時間とを比較する(Step 3)。比較の結果、タイマー値が照会基準時間と一致または超えた場合に、照会基準時間に対応するSOC(T1)を読み出す(Step 4)。演算装置20aはSOC(T1)の情報を統括制御ユニット20へ送信する(Step 4)。この際に蓄電率の現在値も統括制御ユニット20に対して送信される。蓄電率の現在値は、蓄電池9aの端子間電圧や、既存の推定アルゴリズムを利用して取得される。
【0048】
統括制御ユニット20は、蓄電池制御ユニット23から受信したSOC(T1)および最新の蓄電率の情報を比較し(Step 5)、SOC(T1)が最新のSOCよりも大きい場合は、蓄電装置9の充電制御を実行する(Step 6)。反対にSOC(T1)が最新のSOCよりも小さい場合は、自然放電によってSOC(T1)と最新のSOCが一致することを待つものとし、SOC(t)の更新処理そのものは終了する。もし架線に電力を送ることや走行に利用可能であれば、そちらに向かって蓄電装置9から放電が実行されてもよい。なお比較演算は蓄電池制御ユニット23によって実行されてもよい。
【0049】
充電制御または放電制御が実行され、蓄電装置9のSOCがSOC(T1)と一致または予め定められた許容範囲に入った場合は、統括制御ユニット20はSOC(t)の更新処理を終了し、次回の更新を待機する状態へ移行する(Step 7)。
【0050】
さらに、統括制御ユニット20は照会基準時間を更新する。具体的には、直前まで設定されていた照会基準時間に対して、これに最も近い将来の基準時間をメモリから読み出し、新たな照会基準時間として保持する(Step 8)。すでに利用歴のある基準時間は、誤って再度設定されないようにデータを削除し、あるいは設定不可のフラグを割りつける。その他、SOC(t)や照会基準時間は、現在の設定値よりも増大する場合のみ新たに設定できるとしてもよい。このようにすることで、誤って低いSOC(t)が設定され、必要な蓄電量を下回ってしまう可能性を抑制できる。
【0051】
また、以上において説明した処理のうち、充電制御の処理のみを車両にて実行し、その他の処理を車両とは別に設けられた管理装置によって実行することもできる。この場合、管理装置側に、蓄電装置9の識別情報や利用開始時点、当該蓄電装置9が搭載された車両が運用される線区の情報を記憶したデータベースを持たせ、地上―車上の無線通信等によってSOC(t)の更新指令を通知する。管理装置を地上に集約し、車両側は管理装置から通知される情報に基づき動作するように構成することで、タイマーの故障や、メモリの破損といった管理の継続を困難なものとする事象を回避し、長期的な蓄電池の管理をより実現しやすくできる。その他、充電制御以外の処理を、人手によって実行することも可能であり、適用対象に応じて、適宜、人手によって実行する処理と計算機等によって実行する処理を組み合わせてよい。
【0052】
上述の蓄電池制御ユニット23による蓄電池管理方式によって、蓄電量が適切に保有される機序は次のように説明される。
【0053】
図5は、蓄電池について、蓄電率を一定に維持した場合における、経過時間に対する蓄電池の容量維持率の一般的な変化を示した特性図である。図5では、SOCを50%、60%、70%、80%を維持した場合それぞれについて、T0~T4における容量維持率の変化を示している。リチウムイオン電池など、一般的な高容量大出力蓄電池では、容量維持率100%の初期状態(T0)から時間が経つほど(すなわちT0→T1→T2→T3→T4と進むほど)、容量維持率が低下していく傾向を示す。
【0054】
加えて特にSOCが50%を超すと、SOCを高い状態で維持するほど、時間の経過に対する容量維持率の低下が大きい。このことから、概ねSOCが50%以上の領域では、SOCを下げることにより、時間経過に対する容量維持率の低下を抑えられる。
【0055】
一方で、SOCを下げることは、使用可能な蓄電量を限定することを意味する。したがって時間の経過により容量維持率の低下が進んだ状態において、蓄電率を下げると必要な蓄電量の確保ができなくなる恐れがある。
【0056】
この状況を回避するため、必要な蓄電量を確保する範囲内で、蓄電装置9は運用初期においてSOC(t)をできるだけ小さく設定し、SOC(t)を経過時間に応じて変化させることが望ましい。(図5における点線による表記を参照)
【0057】
図3において示した蓄電池管理方式は、時間がT0→T1、T1→T2、T2→T3、T3→T4と進むに従い、SOC(t)を50%、60%、70%、80%と徐々に増加させる。本管理方式を採用することで、運用期間が短いうちは容量維持率の低下を緩慢にでき、蓄電率を80%一定に保つ場合よりも劣化を抑制できる。なお、T0→T1、T1→T2、T2→T3、T3→T4の各区間における容量維持率の変化は、図5の該当するSOCにおける容量維持率の変化と同等である。
【0058】
なお図5に示した、時間経過に対する蓄電池の容量維持率は、蓄電率に加え、蓄電池の温度によっても異なる特性を示す。リチウムイオン蓄電池では、一般的に蓄電率が高いほど、また周囲温度が高いほど、蓄電池の劣化が進行(すなわち容量維持率が低下)しやすい特性があり、SOCが50%、周囲温度25℃で劣化を最小とするように設計されることが多い。
【0059】
また、図3に示すSOCを時間経過に応じて変化させる場合も、長期間にわたる管理であるため、それぞれの時点に関する蓄電池の容量維持率の推移も蓄電池の温度毎に異なることが想定される。この影響を考慮し、その時の蓄電池の温度に応じてSOC(t)を逐次変更し、または温度変化の長期トレンド(例えば季節変動)に応じて、SOC(t)を補正するように、蓄電池制御ユニット23を構成してもよい。
【0060】
SOC(t)の設定についてより詳細には、図6(a)(b)に示す蓄電率の管理上限値S1、蓄電率の管理下限値S2(以降、管理上限値S1、管理下限値S2とする)を使う。
【0061】
図6(a)(b)は蓄電池の容量維持率と、利用が許される蓄電率の範囲との関係を示し、図6(a)は蓄電装置9の利用開始時点(T0)における関係を示し、図6(b)は例えば利用終期における関係を示す。図6(b)においては、領域Rに相当する部分が、運用初期における蓄電容量に対して消失した容量である。
【0062】
蓄電池制御ユニット23は、蓄電装置9の運用が開始された時点で、SOCについて管理上限値S1および管理下限値S2が設定される。これら管理上限値S1および管理下限値S2は、蓄電池の安全性、健全性、および車両1a、1bを所定の距離または区間について走行させるために必要な放電電力量E1(以降、電力E1とする)に基づき決定される。
【0063】
具体的には、管理上限値S1は、SOC100%を基準として、蓄電池の健全性・安全性の観点から利用が推奨されないSOCの領域(例えば90%以上)からマージンをとった値として設定される。また利用終期はSOCを初期よりも高く維持するため、常温下でも劣化が促進される可能性があり、管理上限値S1はこの可能性を考慮した値を設定することが望ましい。例えば運用環境の周囲温度が例えば-10~40℃で変動するとした場合、40℃を考慮して管理上限値S1が定められると、冷却ファンなどの別段の冷却設備が設けられなくとも、蓄電池9aを劣化しづらい状態に置くことができ、車載時の搭載空間に関する制約が緩和させる。
【0064】
一方、管理下限値S2は、蓄電装置9による放電が適切に実施できる蓄電率の下限値に対してマージンを付加した値として設定される。なお利用終期は蓄電池9aの内部抵抗が上昇し、端子間電圧が低下する可能性があるため、管理下限値S2を利用初期よりも利用終期において高く設定してもよい。
【0065】
このように利用終期において電力E1を確保可能な管理上限値S1、管理上限値S2を決定した後に、この条件を満たす蓄電池の容量を特定する。例えば、利用終期における蓄電容量が、利用初期における蓄電容量に対して20%小さくなり、その時点における管理上限値S1を70%、管理下限値S2を20%とするのであれば、利用初期(すなわち導入時)蓄電池に求められる容量は電力E1の2.5倍と求められる。なお搭載した蓄電池に応じて走行距離を決定する場合、電力E1、管理上限値S1および管理下限値S2は、蓄電装置9が車両に搭載された後に設定してもよい。
【0066】
管理上限値S1、管理下減値S2の設定後、原則として、蓄電装置9の運用はSOCが管理上限値S1を超える充電がされること、または管理下限値S2を下回るような放電が生じないように管理される。すなわち、SOCにおいて領域N1および領域N2で表される部分は、蓄電装置9の運用上は利用されない容量である。
【0067】
電力E1、管理上限値S1、管理下限値S2の設定後、統括制御ユニット20は図6(a)に示すように、管理下限値S2を基準として電力E1を確保するように利用上限値LC(Limit of Charge)を設定する。この利用上限値LCは図6(c)に示すように、基準時間の個数(T0、T1、T2・・・)に応じて保持し、基準時間と関連付けた状態でSOC(T1、T2、T3・・・)として保有する。利用初期のおける利用上限値LCは、SOC(T0)に相当する。利用上限値LCは基準時間ごとに異なる値を設定してもよいし、利用開始から運用中期まではSOCの設定によっては一定の値を保持してもよい。
【0068】
図6(b)は蓄電池の使用終期を示し、時間経過により容量維持率は低下している。しかし、管理下限値S2に対して利用上限値LCを基準時間(T0)のときよりも高く設定し、ほぼ管理上限値S1と同等とすることで電力E1は確保される。この状態は容量維持率がより低下しやすい状態でもあるが、使用終期であるため蓄電装置9の利用目的上は問題となりづらい。
【0069】
一方、比較例として図7(a)(b)に、管理上限値S1を基準として利用下限値LD(Limit of discharge)を更新するケースを挙げる。図7(a)(b)においても、確保すべき電力E1は同様である。しかし、このような管理方法を採用すると、SOCが蓄電装置9の運用初期から高く設定されてしまい、蓄電装置9はより劣化しやすい。初期段階から劣化しやすい状態に置かれた蓄電装置9を長期にわたって運用しようとするため、必然的に蓄電池の容量は大きなものが求められ、初期段階においては過剰な蓄電量を持つことになる。
【0070】
より具体的には、リチウムイオン蓄電池やニッケル水素蓄電池といった二次電池は、一般的に蓄電率が高いほど、さらに周囲温度が高いほど、蓄電池の劣化が進行しやすい特性があり、この劣化の進行を考慮し、例えば、蓄電率50%、周囲温度25℃で劣化の進行が最小となるように製造されることが多い。ここで、劣化の進行を最小とする場合、例えば蓄電率を50%で維持するためには、蓄電システムとして蓄電率50%における蓄電容量の倍の容量を準備することが求められる。
【0071】
しかし、提案する新たな管理手法、すなわち蓄電池使用初期における管理下限値S2を基準として、必要な電力E1を確保できる利用上限値LCを設定し、蓄電量使用終期に向けて徐々に利用上限値LCを管理上限値S1に向かって近づけるように調整することによって、容量維持率の低下を抑制し、長期にわたる蓄電池の運用が可能となる。
【0072】
また、本管理方法によれば、電力E1を保持するために適した蓄電容量を持つように蓄電装置9を設計することができる。これによって蓄電容量のマージンを小さくすることができ、それに伴い蓄電装置9の小型化を図ることができるため、鉄道車両の車載機器の小型化、軽量化にも寄与する。特に、鉄道車両の場合は、車載スペースが限定的であるため、蓄電池の大きさは小型であることが望ましく、その点において提案する管理方法は有用である。
【0073】
なお、図6(a)(b)に示す例は、管理上限値S1と利用上限値LCとを別個のパラメータとしたが、これらを区別せず一つの蓄電率に関する上限値として取り扱ってもよい。また管理下限値S2は固定せず、時間経過に応じて変更するように構成してもよい。
【実施例2】
【0074】
図8は本発明の第二実施形態における、鉄道車両駆動システムの概略構成を示す。実施例1と異なり、この駆動システム直流電力が架線4から供給され駆動するタイプの電車である。
【0075】
大まかな構成は実施例1と同様であって、車両1a、1bは、列車編成を構成する車両、またはその一部である。車両1aと車両1bは車間連結器6で連結されている。
【0076】
車両1aは、台車2aを介して輪軸3a、3bにより、また、台車2bを介して輪軸3c、3dにより、図示していないレール面上に支持されている。車両1bは、台車2cを介して輪軸3e、3fにより、また、台車2dを介して輪軸3g、3hにより、図示していないレール面上に支持されている。
【0077】
また直流電力Pd0は、架線4より集電装置5を介して、インバータ装置15、直流コンバータ装置25、補助電源装置10に供給される。
【0078】
インバータ装置15は、直流電力Pd0を、電圧可変、周波数可変(VVVF)な交流電力Pa2に変換し、図示していない電動機17のトルクを制御する。電動機17のトルクは、輪軸3a、3b、3c、3dの全て、またはその何れかに回転トルクを伝達し、輪軸とレール面間に踏面力を作用させ、この踏面力により車両1aを加速、または減速させる。
【0079】
直流コンバータ装置25は、直流電力Pd0の電圧Vd0を、電圧Vd1の直流電力Pd1に変換する。
【0080】
蓄電装置9は、リチウムイオンバッテリ等の蓄電手段、蓄電電力の充放電(入出力)を制限する蓄電電力遮断器、蓄電手段の状態を監視し、蓄電電力遮断器を制御する蓄電制御器で構成される。蓄電手段は、直流コンバータ装置25の出力する直流電力Pd1の電圧Vd1と、蓄電装置9の電圧Vbatとの大/小に応じて、充電/放電される。
【0081】
補助電源装置10は、主変換装置8の交流電力Pd1を、電圧一定、周波数一定(CVCF)な交流電力Pa3に変換し、図示していない車両用補機(空調、証明、空気圧縮機等)に供給する。
【0082】
統括制御装置11は、蓄電装置9の電圧Vbatを基に、蓄電装置9を充電する場合にはVbatよりΔVbatだけ大きい電圧指令Vbdを、蓄電装置9を放電する場合にはVbatよりΔVbatだけ小さい電圧指令Vbdを演算する。ΔVbatに対して発生する充放電電流の大きさは蓄電装置9の内部抵抗値により決定する。
【0083】
直流コンバータ装置25は、直流電圧Vd1が電圧指令Vdbに追従するように定電圧調整し、蓄電量SOCが蓄電量目標値SOC(t)と一致するように管理する。
【0084】
蓄電量目標値SOC(t)は、実施例1と同様に管理する。すなわち蓄電装置9の使用開始からの経過時間と、蓄電装置9の蓄電池温度Tbを基に、蓄電池容量維持率予測手段を参照して決定する。蓄電装置9の使用開始からの経過時間は、統括制御ユニット23に備える時間計測手段にて、蓄電装置9の使用開始からの時間を積算することで求められるが、簡易的には使用開始を起点とした経過時間値を手動で入力してもよい。蓄電装置9の蓄電池温度Tbは、蓄電装置9からの状態情報として検出できるが、蓄電装置9を使用する環境での平均的な温度を予め記憶させておいても良い。特に鉄道車両は、運用される路線がある程度限定されるため、インターネットなどで公開されている過去の気象データを基に、運用路線周辺地域の温度情報を利用することもできる。
【0085】
また、本実施例では、車両1a、1bによる2両編成を示しているが、編成車両の両数は限定しない。本発明の鉄道車両駆動システムは、1車両に集中して搭載する必要はなく、編成中のいずれかの車両(両運転台の1両編成を含む)に分散して備えてもよい。
【0086】
図9は、本発明の第二実施形態における、蓄電量管理方式を実現する構成を示す図である。
【0087】
直流電力Pd0は、図示していない架線4より集電装置5を介して、リアクトル24に供給される。リアクトル24は、コンデンサ16とともにフィルタ回路を構成して直流電力Pd0の高調波を除去し、その出力をインバータ装置15、直流コンバータ装置25、補助電源装置10に供給する。
【0088】
インバータ装置15は、直流電力Pd0を、電圧可変、周波数可変(VVVF)な交流電力Pa2に変換し、図示していない電動機17のトルクを制御する。電動機17のトルクは、輪軸3a、3b、3c、3dの全て、またはその何れかに回転トルクを伝達し、輪軸とレール面間に踏面力を作用させ、この踏面力により車両1aを加速、または減速させる。
【0089】
直流コンバータ装置25は、直流電力Pd0の電圧Vd0を、電圧Vd1の直流電力Pd1に変換する。蓄電装置9は、リチウムイオンバッテリ等の蓄電手段、蓄電電力の充放電(入出力)を制限する蓄電電力遮断器、蓄電手段の状態を監視し、蓄電電力遮断器を制御する蓄電制御器で構成される。蓄電手段は、直流コンバータ装置25の出力する直流電力Pd1の電圧Vd1と、蓄電装置9の電圧Vbatとの大/小に応じて、充電/放電される。
【0090】
補助電源装置10は、主変換装置8の交流電力Pd1を、電圧一定、周波数一定(CVCF)な交流電力Pa3に変換し、図示していない車両用補機(空調、証明、空気圧縮機等)に供給する。
【0091】
統括制御装置11は、コンバータ制御ユニット21、インバータ制御ユニット22、蓄電池制御ユニット23、統括制御ユニット20で構成される。
【0092】
コンバータ制御ユニット21は、統括制御ユニット20からの指令に応じて、直流電圧検出器51で検出する直流電圧Vd1を電圧指令Vdbに追従させる定電圧制御を行い、その出力を基に生成する直流電流指令に直流電流検出器52で検出する直流電流Id1を追従させる定電流制御を行い、その出力を基にコンバータ装置26のスイッチング回路を動作させるPWMパルスを生成し、コンバータ装置26に入力する。
【0093】
インバータ制御ユニット22は、統括制御ユニット20からの指令に応じて、車両1a、1bを加速または減速させる電動機17の駆動トルクを発生するトルク電流指令を生成し、交流電流検出器18で検出する電動機電流Imu、Imv、Imwを基に演算するトルク電流をトルク電流指令に追従させる定電流制御を行い、その出力を基にインバータ装置15のスイッチング回路を動作させるPWMパルスを生成し、インバータ装置15に入力する。
【0094】
蓄電池制御ユニット23は、統括制御ユニット20からの指令に応じて、蓄電電力遮断器を投入/解放して蓄電手段の充放電(入出力)を制限するとともに、蓄電手段より状態情報(蓄電量、蓄電池温度等)を集約し、統括制御ユニット20に伝える。
【0095】
以上の構成により、蓄電装置9の充放電電力Pbatを調整することで、SOCがSOC(t)と一致するように管理する。
【0096】
SOC(t)は、蓄電装置9の使用開始からの経過時間と、蓄電装置9の蓄電池温度Tbを基に、蓄電池容量維持率予測手段を参照して決定する。蓄電装置9の使用開始からの経過時間は、統括制御ユニット23に備える時間計測手段にて、蓄電装置9の使用開始からの時間を積算することで求められるが、簡易的には使用開始からの経過時間値を手動で入力してもよい。蓄電装置9の蓄電池温度Tbは、蓄電装置9からの状態情報として検出できるが、蓄電装置9を使用する環境での平均的な温度を予め記憶させておいてもよい。
【0097】
また、以上に挙げた各実施例において、統括制御装置11は、統括制御ユニット20、コンバータ制御ユニット21、インバータ制御ユニット22、蓄電池制御ユニット23を個別の制御ユニットを含むものとして例示されているが、この区分は便宜上のものであって、一つの制御ユニットまたは複数の制御ユニットの組み合わせによってそれらの制御が実装されてよい。また、それぞれの制御ユニットにおける制御内容についても、実施例に限られず、任意の実装形態を採用できる。例えば、統括制御ユニット20が、実施例においてそれぞれの制御ユニットが生成していた制御指令を一括して生成するものとし、それぞれの他の制御ユニットは、被制御対象の状態を統括制御ユニット20に対して通知する機能に特化していてもよい。
【0098】
また、統括制御装置11は、基本機能として主変換装置8の動作を列車制御指令に基づき制御し、それに加えて、第1の駆動モードおよび第2の駆動モードの切り替えを実行する。なお、第1の駆動モードおよび第2の駆動モードの切り替え機能は、運転台に指令装置を設け、この指令装置から統括制御装置11に対して出力される指令情報に基づき実現されるものとしてもよい。
【0099】
さらに上述の各実施例は、車載型の蓄電装置が提案する管理方法によって管理される場合を示したが、この管理方法を地上側の電力供給設備に設けられた蓄電装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0100】
1a、1b…車両、2a、2b、2c、2d…台車3a、3b…輪軸、4…架線、5…集電装置、6…車間連結器、7…変圧装置、8…主変換装置、9…蓄電装置、9a…蓄電池、10…補助電源装置、11…統括制御装置、12…交流電圧検出器、13…交流電流検出器、14…コンバータ装置、15…インバータ装置、16…コンデンサ、17…電動機、18…交流電流検出器、19…車両用補機、20…統括制御ユニット、20a…演算装置、20b…タイマー、20c…メモリ、21…コンバータ制御ユニット、22…インバータ制御ユニット、23…蓄電池制御ユニット、23a…蓄電制御器、23b…温度計、23c…蓄電電力遮断器、24…リアクトル、25…直流コンバータ装置、51…直流電圧検出器、52…直流電流検出器。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7(a)】
図7(b)】
図8
図9