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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/10 20060101AFI20221221BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20221221BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B29C39/10
G02F1/1333
G09F9/00 302
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021075274
(22)【出願日】2021-04-27
(62)【分割の表示】P 2017068082の分割
【原出願日】2017-03-30
(65)【公開番号】P2021130308
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】橋本 孝夫
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-272107(JP,A)
【文献】特開2004-109816(JP,A)
【文献】特開2002-341792(JP,A)
【文献】特開2017-026887(JP,A)
【文献】特開2015-200724(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207091(JP,U)
【文献】特開2001-154592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00 - 39/44
B29C 45/00 - 45/84
G09F 9/00
G02F 1/133
G02F 1/1333
G02F 1/1334
G02F 1/1339- 1/1341
G02F 1/1347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材と、
開口部を有し、上記光学部材の表面を保護する光透過性のカバー部材と、
上記カバー部材と上記光学部材との間に積層され、光透過性を有する硬化樹脂層とを備え、
上記光学部材は画像表示部材であり、
上記カバー部材は、上記画像表示部材の表示領域を覆うとともに、断面視において全幅にわたって湾曲し、
上記開口部は、上記カバー部材の湾曲した面の一部に形成され、
上記開口部と上記画像表示部材との間には上記硬化樹脂層が形成されておらず、
上記硬化樹脂層は、上記開口部と上記画像表示部材との間を除き、上記画像表示部材の表示領域を被覆する光学装置。
【請求項2】
上記開口部は、上記画像表示部材の表示面の一部に応じた位置に形成されている請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
上記カバー部材と上記画像表示部材との間に上記硬化樹脂層が形成されていない凹部を有する請求項1又は2に記載の光学装置。
【請求項4】
上記画像表示部材は、表示面が平坦面とされ、
上記硬化樹脂層は、上記カバー部材側が上記カバー部材の形状に応じた湾曲面をなし、
上記画像表示部材側が平坦面をなす、請求項1~のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項5】
上記開口部から上記画像表示部材上記表示領域の一部が直接露出されている請求項1~のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項6】
上記開口部から部品が直接外方に露出されている請求項1~のいずれか1項に記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、液晶表示パネル等の光学部材と、その表面側に配される保護シート等のカバー部材とが、硬化樹脂層を介して積層されている光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来スマートフォーンやカーナビゲーション等の情報端末に用いられている液晶表示パネル等の画像表示装置は、光透過性カバー部材に光硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線を照射して仮硬化させて仮硬化樹脂層を形成した後、この仮硬化樹脂層を介して液晶表示パネルや有機ELパネル等の画像表示部材を積層し、次いで仮硬化樹脂層に対して紫外線を再度照射することにより本硬化させて光硬化樹脂層とすることにより製造されている(特許文献1)。
【0003】
光硬化性樹脂組成物を光透過性カバー部材に塗布する方法としては、移動するスリットノズルから光透過性カバー部材の表面に全幅にわたって吐出していく方法や、スクリーン印刷により塗布する方法等が用いられている。また、画像表示装置の意匠性やタッチ感を向上させるために、一方向に湾曲した光透過性カバー部材も提案されており、このような湾曲した光透過性カバー部材に対しては、ディスペンサーにより凹状に湾曲にした光透過性カバー部材表面に充填する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-119520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、画像表示装置の意匠性や操作性も多様化し、例えば光透過性カバー部材の一部に開口部を設け、画像表示部材の機構を当該開口部を介して露出させる構成や、画像表示部材の表示面が凹状に湾曲し、光透過性カバー部材の光硬化性樹脂組成物が塗布される表面が凸状に湾曲する構成等も提案されている。
【0006】
このように、一部に開口部が形成された光透過性カバー部材や、光硬化性樹脂組成物の塗布面が凸状に湾曲する光透過性カバー部材に対して、略均一な光硬化樹脂層を形成することは、上述した従来の工法によって困難である。
【0007】
そこで、本技術は、カバー部材の形状に関わらず、所望の硬化樹脂層を形成できる光学装置の製造方法及び光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本技術に係る光学装置は、光学部材と、開口部を有し、上記光学部材の表面を保護する光透過性のカバー部材と、上記カバー部材と上記光学部材との間に積層され、光透過性を有する硬化樹脂層とを有し、上記光学部材は画像表示部材であり、上記カバー部材は、上記画像表示部材の表示領域を覆うとともに、断面視において全幅にわたって湾曲し、上記開口部は、上記カバー部材の湾曲した面の一部に形成され、上記開口部と上記画像表示部材との間には上記硬化樹脂層が形成されておらず、上記硬化樹脂層は、上記開口部と上記画像表示部材との間を除き、上記画像表示部材の表示領域を被覆するものである。

【発明の効果】
【0009】
本技術によれば、カバー部材と型部材との積層体の中空部に硬化性樹脂を充填、硬化させることで、一部に開口部が形成されたカバー部材や、硬化性樹脂が供給される面が凸状に湾曲するカバー部材に対しても、略均一な硬化樹脂層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、カバー部材と光学部材とが硬化樹脂層を介して積層された光学装置を示す側面図である。
図2図2は、カバー部材の外観斜視図である。
図3図3は、カバー部材と型部材とが密着積層された積層体を示す側面図である。
図4図4は、カバー部材と型部材とが密着積層された積層体を示す断面図である。
図5図5は、型部材の外観斜視図である。
図6図6は、型部材に形成された密着凸部がカバー部材に密着された積層体を示す断面図である。
図7図7は、嵌合凸部を開口部に嵌合させるように、カバー部材と型部材とを密着積層させる工程を示す外観斜視図である。
図8図8は、積層体の中空部に液状の硬化性樹脂を充填させる工程を示す外観斜視図である。
図9図9は、嵌合凸部が開口部に嵌合された積層体を示す外観斜視図である。
図10図10は、積層体の型部材側から硬化光を照射する工程を示す外観斜視図である。
図11図11は、硬化樹脂層が形成されたカバー部材と型部材とが密着積層された積層体を示す断面図である。
図12図12は、硬化樹脂層が形成されたカバー部材を示す断面図である。
図13図13は、硬化樹脂層が形成されたカバー部材と光学部材とを貼り合わせる工程を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術が適用された光学装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
本技術は、図1に示す光学部材3とカバー部材1とが、硬化樹脂層7を介して積層されている光学装置30の製造方法であり、開口部2を有するカバー部材1に、開口部2に嵌合する嵌合凸部11を有する型部材4を、開口部2に嵌合凸部11が嵌合するように密着積層し、硬化性樹脂6が充填可能な中空の積層体5を形成する工程(A)と、積層体5の中空部に硬化性樹脂6を充填する工程(B)と、硬化性樹脂6を硬化させてカバー部材1に硬化樹脂層7を形成する工程(C)と、型部材4をカバー部材1から剥離する工程(D)と、硬化樹脂層7と光学部材3と貼り合わせる工程(E)とを有する。
【0013】
[カバー部材/開口部]
カバー部材1は、光学部材3との貼合せ面に型部材4が密着積層され、硬化樹脂層7が形成された後、硬化樹脂層7を介して光学部材3と貼り合わされるものである。
【0014】
カバー部材1としては、例えば光透過性カバー部材を例示できる。光透過性カバー部材の材料としては、光学部材に形成された画像が視認可能となるような光透過性があればよく、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の樹脂材料が挙げられる。これらの材料には、片面又は両面ハードコート処理、反射防止処理などを施すことができる。また、後述する光学部材がタッチパネルの際には、当該タッチパネルの部材の一部をカバー部材として使用することもできる。
【0015】
また図2に示すように、カバー部材1は、開口部2が形成されている。開口部2は、後述する光学部材3を直接外方に露出させるためのものであり、光学装置30は開口部2において光学部材3との間に硬化樹脂層7が設けられていない。開口部2の形状は特に限定されず、例えば略矩形状に形成されている。また、開口部2は光学部材3の露出位置に応じた位置に一又は複数形成され、例えば矩形状に形成されたカバー部材1の略中央部に一つ形成されている。
【0016】
また、カバー部材1の形状は特に限定されず、例えば平坦な形状としてもよく、あるいは図2に示すように一方向に湾曲した形状や、回転放物面、双曲放物面、その他の二次曲面形状としてもよく、さらに湾曲した形状及び二次曲面形状の一部に平坦な部分を有していてもよい。
【0017】
本技術は、開口部を有するカバー部材が湾曲した形状や二次曲面形状を有していても開口部を除いた領域に硬化樹脂層を形成できる点に効果を奏する。したがって、例えば、図3に示すように、型部材4に対して断面凸条に湾曲する凸面形状とされていてもよく、また、反対に、図4に示すように、型部材4に対して断面凹条に湾曲する凹面形状とされていてもよい。
【0018】
なお、カバー部材の湾曲の形状や厚さなどの寸法的な特性、弾性などの物性は、使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0019】
また、カバー部材1は、外側縁に凹部等の変形部8を形成してもよい。変形部8は、例えば光学部材3に実装されたフレキシブル基板やICチップ等の実装部品が対峙する領域であり、開口部2と同様に硬化樹脂層7が形成されず、開放させておく必要のある部位である。変形部8の位置や形状、個数は、光学部材3の実装部品の形状、配置等に応じて様々であり、例えば図2に示すように、カバー部材1の上側縁の中央に矩形状に凹む領域として形成されている。
【0020】
[光学部材]
光学部材3は、例えば液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル、タッチパネル等の画像表示部材を例示できる。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた画像表示・入力パネルを意味する。このような光学部材のカバー部材側の表面形状は特に限定されないが、平坦であることが好ましい。また、光学部材の表面に偏光板が配置されていてもよい。
【0021】
[型部材]
カバー部材1と密着積層されることにより積層体を構成する型部材4は、カバー部材1の光学部材3への貼合せ面に密着積層されることにより、硬化性樹脂6を充填可能な中空の積層体5を形成するものである。カバー部材1は、型部材4との間に充填された硬化性樹脂6が硬化することにより、光学部材3への張り合わせ面に硬化樹脂層7が形成される。
【0022】
型部材4は、弾性部材により形成されることが好ましい。型部材4は、弾性を備えることにより、カバー部材1との密着性が向上されるとともに、硬化樹脂層7を形成した後にカバー部材1から離型可能となり、また復元性を備え繰り返し使用可能となる。このような型部材4の材料としては、例えばシリコーンラバー材が好適である。
【0023】
型部材4は、例えば略矩形板状に形成され、カバー部材1の貼合せ面と対向される主面部4aと、主面部4aの側縁から立ち上がり、カバー部材1の貼合せ面に密着される側壁10と、カバー部材1の開口部2に嵌合する嵌合凸部11が形成されている。
【0024】
側壁10は、図8に示すように、カバー部材1との積層体5に硬化性樹脂6を注入、保持可能に主面4aを囲むように形成され、矩形状の主面部4aでは3つの側縁に形成されている。型部材4は、カバー部材1と密着積層されると、側壁10に3方が囲まれた硬化性樹脂6が充填される中空部を形成する。また型部材4は、側壁10が形成されていない一側面に、積層体5の中空部内に硬化性樹脂6を注入するための注入口となる開放端部9が形成されている。なお、側壁10は、積層体5に硬化性樹脂6を注入可能な注入口となる開放端部9が一部に開放されるならば、主面部4aの全側縁に立設されていてもよい。また、側壁10は、カバー部材1と密着される上面がカバー部材1の面形状に応じて適宜湾曲され、隙間なく密着可能とされている。
【0025】
型部材4は、図3に示すように、側壁10の高さが積層体5の中空部の高さとなる。すなわち型部材4は、側壁10の高さHによって、カバー部材1の貼合せ面に形成される硬化樹脂層7の厚さを制御することができる。
【0026】
嵌合凸部11は、主面部4aの開口部2に対応した位置に形成されている。また、嵌合凸部11は、開口部2の形状に応じた凸状形状を有し、例えば矩形状の開口部2に嵌合可能な略立方体形状をなす。
【0027】
また、嵌合凸部11は、断面視において主面部4a側の基部11aから開口部2への挿入端となる先端部11bに向かって外径Wが漸次縮径し、立設方向の側面がテーパ状に形成されていることが好ましい。嵌合凸部11は、主面部4a側の基部11aが開口部2よりも大きく、先端部11bが開口部2よりも小さい。これにより嵌合凸部11は、開口部2へ挿入しやすくなるとともに、開口部2に挿入されるとテーパ状の側面が開口部2の内側面2aに密着し、隙間なく嵌合させることができる。したがって、積層体5は、カバー部材1の開口部2の内側面2aに硬化性樹脂6が付着することを防止できる。
【0028】
なお、型部材4は、カバー部材1の開口部2の数に応じて嵌合凸部11を一又は複数形成してもよい。
【0029】
また、型部材4は、カバー部材1に形成された変形部8に嵌合し、カバー部材1に硬化樹脂層7が形成されない領域を作る変形凸部12が設けられている。変形凸部12の位置や形状、個数は、カバー部材1の変形部8の位置や形状、個数等に応じて様々であり、例えば図5に示すように、型部材4の上側縁に矩形状に突出する凸部として形成されている。そして、型部材4は、変形凸部12の両側が開放端部9とされ、カバー部材1に密着された積層体5において硬化性樹脂6が注入される注入口が形成される。
【0030】
型部材4は、図6に示すように、カバー部材1の貼付け面と密着し、カバー部材1に硬化樹脂層7が形成されない領域を作る密着凸部15を設けてもよい。密着凸部15は、例えば略立方体形状をなし、型部材4がカバー部材1に密着積層されると、カバー部材1の貼合せ面に当接され、当該当接領域に硬化性樹脂6が流入して硬化樹脂層7が設けられることを防止する。したがって、カバー部材1の貼合せ面に形成された硬化樹脂層7には、密着凸部15の密着面に応じた形状で、硬化樹脂層7が形成されない凹部が形成される。そして、光学部材3は、当該凹部に対応した位置に電子部品等が実装され、硬化樹脂層7との接触を避けることができる。なお、密着凸部15は、カバー部材1の貼合せ面に密着する天面部15aがカバー部材1の貼合せ面の湾曲形状に応じた曲面形状を有することが好ましい。
【0031】
また、型部材4は、光透過性を有することが好ましい。型部材4が光透過性を備えることで、後述するように、積層体5内に充填される硬化性樹脂6として、光硬化性樹脂を用いた場合、積層体5の型部材4側から紫外光等の硬化光を照射することができ、カバー部材1に遮光部が形成された場合にも確実に硬化性樹脂6を硬化させることができる。
【0032】
[硬化樹脂層]
カバー部材1と光学部材3との間に介在される硬化樹脂層7は、例えば光透過性を有し、画像表示部材等の光学部材3が表示する画像を視認可能する。
【0033】
硬化樹脂層7を構成する硬化性樹脂6は、例えば熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂組成物は、液状であり、具体的にはコーンプレート型粘度計で0.01~100Pa・s(25℃)の粘度を示すものである。
【0034】
このような光硬化性樹脂組成物は、ベース成分(成分(イ))、アクリレート系モノマー成分(成分(ロ))、可塑剤成分(成分(ハ))及び光重合開始剤(成分(ニ))を含有するものを好ましく例示することができる。
【0035】
<成分(イ)>
成分(イ)のベース成分は、光透過性硬化樹脂層の膜形成成分であり、エラストマー及びアクリル系オリゴマーの少なくともいずれか一方を含有する成分である。両者を成分(イ)として併用してもよい。
【0036】
エラストマーとしては、好ましくはアクリル酸エステルの共重合体からなるアクリル共重合体、ポリブテン、ポリオレフィン等を好ましく挙げることができる。なお、このアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5000~500000であり、ポリブテンの繰り返し数nは好ましくは10~10000である。
【0037】
他方、アクリル系オリゴマーとしては、好ましくは、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリブタジエン等を骨格に持つ(メタ)アクリレート系オリゴマーを挙げることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートとメタクリレートとを包含する。
【0038】
ポリイソプレン骨格の(メタ)アクリレートオリゴマーの好ましい具体例としては、ポリイソプレン重合体の無水マレイン酸付加物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物(UC102(ポリスチレン換算分子量17000)、(株)クラレ;UC203(ポリスチレン換算分子量35000)、(株)クラレ;UC-1(分子量約25000)、(株)クラレ)等を挙げることができる。
【0039】
また、ポリウレタン骨格を持つ(メタ)アクリル系オリゴマーの好ましい具体例としては、脂肪族ウレタンアクリレート(EBECRYL230(分子量5000)、ダイセル・サイテック社;UA-1、ライトケミカル社)等を挙げることができる。
【0040】
ポリブタジエン骨格の(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、公知のものを採用することができる。
【0041】
<成分(ロ)>
成分(ロ)のアクリル系モノマー成分は、光学装置の製造工程において、光硬化性樹脂組成物に十分な反応性及び塗布性等を付与するために反応性希釈剤として使用されている。このようなアクリル系モノマーとしては、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0042】
なお、光硬化性樹脂組成物中の成分(イ)のベース成分と成分(ロ)のアクリル系モノマー成分との合計含有量は、好ましくは25~85質量%である。
【0043】
<成分(ハ)>
成分(ハ)の可塑剤成分は、硬化樹脂層に緩衝性を付与するとともに、光硬化性樹脂組成物の硬化収縮率を低減させるために使用され、紫外線の照射では成分(イ)のアクリレート系オリゴマー成分及び成分(ロ)のアクリレート系モノマー成分と反応しないものである。このような可塑剤成分は、固体の粘着付与剤(1)と液状オイル成分(2)とを含有する。
【0044】
固形の粘着付与剤(1)としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、天然ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン等のロジン樹脂、テルペン系水素添加樹脂を挙げることができる。また、前述のアクリレート系モノマーを予め低分子ポリマー化した非反応性のオリゴマーも使用することができ、具体的には、ブチルアクリレートと2-ヘキシルアクリレートおよびアクリル酸の共重合体やシクロヘキシルアクリレートとメタクリル酸の共重合体等を挙げることができる。
【0045】
液状オイル成分(2)としては、ポリプタジエン系オイル、又はポリイソプレン系オイル等を含有することができる。
【0046】
なお、光硬化性樹脂組成物中の成分(ハ)の可塑剤成分の含有量は、好ましくは10~65質量%である。
【0047】
<成分(ニ)>
成分(ニ)の光重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、1-ヒドロキシ-シクロへキシルフェニルケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ社)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピロニル)ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア127、チバ・スペシャリティケミカルズ社)、ベンゾフェノン、アセトフェノン等を挙げることができる。
【0048】
このような光重合開始剤は、成分(イ)のベース成分及び成分(ロ)アクリル系モノマー成分の合計100質量部に対し、少なすぎると紫外線照射時に硬化不足となり、多すぎると開裂によるアウトガスが増え発泡して不具合が生ずる傾向があるので、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部である。
【0049】
また、光硬化性樹脂組成物は、分子量の調整のために連鎖移動剤を含有することができる。例えば、2-メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメチルカプト-1-プロパノール、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0050】
また、光硬化性樹脂組成物は、更に、必要に応じて、シランカップリング剤等の接着改善剤、酸化防止剤等の一般的な添加剤を含有することができる。また、光硬化性樹脂組成物の成分(イ)~(ニ)に関し、成分(ロ)及び(ハ)を工夫すれば、成分(イ)を使用しなくても良い。
【0051】
[製造工程]
次いで、光学装置の製造工程について説明する。
【0052】
[工程A]
先ず、図7図3に示すように、カバー部材1に型部材4を密着積層し、中空の積層体5を形成する。積層体5は、例えば図示しない一対の板状体によってカバー部材1と型部材4の両外側が挟持されることにより密着積層される。
【0053】
積層体5は、型部材4の側壁10がカバー部材1の貼合せ面に密着することにより、外側縁の一辺が開放された中空部が形成されている。また、積層体5は、カバー部材1に形成された開口部2に型部材4の嵌合凸部11が嵌合する。積層体5は、型部材4がシリコーンラバー等の弾性体により形成されることで、カバー部材1の貼合せ面に隙間なく密着され、液状の硬化性樹脂6の漏洩を防止することができ、また、開口部2の内側面2aにも嵌合凸部11が密着し、硬化性樹脂6の付着が防止されている。
【0054】
また、カバー部材1に変形部8が形成され、型部材4に当該変形部8に嵌合する変形凸部12が形成されている場合は、当該変形部8に変形凸部12が嵌合することにより、硬化性樹脂6の付着が防止されている。
【0055】
[工程B]
次いで、図8図9に示すように、ディスペンサー13等により、液状の硬化性樹脂6を積層体5の開放端部9より注入し、中空部内に充填する。このとき、積層体5は、開放端部9が鉛直上向きとなるように支持され、液状の硬化性樹脂6を注入、充填可能とされている。
【0056】
[工程C]
次いで、図10に示すように、積層体5内に充填された硬化性樹脂6を硬化させて、図11に示すように、カバー部材1の貼合せ面に硬化樹脂層7を形成する。具体的に、硬化性樹脂6として光硬化性樹脂を用いた場合には、硬化性樹脂6に対し紫外線UVを照射して硬化させて硬化樹脂層7を形成する。
【0057】
ここで、型部材4が光透過性を備えている場合、積層体5内に充填された光硬化性の硬化性樹脂6に対して、積層体5の型部材4側から紫外光等の硬化光を照射することができる。したがって、カバー部材1に遮光部が形成されているような場合にも確実に硬化性樹脂6を硬化させることができる。
【0058】
なお、積層体5のカバー部材1側から、あるいはカバー部材1側及び型部材4側から、硬化光を照射することによって硬化性樹脂6を硬化させてもよいことは勿論である。
【0059】
硬化性樹脂6は、少なくとも型部材4をカバー部材1から剥離した際に硬化樹脂層7の形状が維持されている程度に硬化されることが必要である。このような硬化度は、硬化性樹脂6の硬化率(ゲル分率)が好ましくは10~90%、より好ましくは40~90%となるようなレベルである。また、硬化率(ゲル分率)とは、紫外線照射前の光硬化性の硬化性樹脂6中の(メタ)アクリロイル基の存在量に対する紫外線照射後の(メタ)アクリロイル基の存在量の割合(消費量割合)と定義される数値であり、この数値が大きい程、硬化が進行していることを示す。
【0060】
なお、硬化率(ゲル分率)は、紫外線照射前の樹脂組成物層のFT-IR測定チャートにおけるベースラインからの1640~1620cm-1の吸収ピーク高さ(hx)と、紫外線照射後の樹脂組成物層のFT-IR測定チャートにおけるベースラインからの1640~1620cm-1の吸収ピーク高さ(hy)とを、以下の数式に代入することにより算出することができる。
【0061】
[数1]
硬化率(%)={(hx―hy)/hx}×100
【0062】
紫外線の照射に関し、硬化率(ゲル分率)が好ましくは10~80%となるように仮硬化させることができる限り、光源の種類、出力、累積光量などは特に制限はなく、公知の紫外線照射による(メタ)アクリレートの光ラジカル重合プロセス条件を採用することができる。
【0063】
また、紫外線照射条件に関し、上述の硬化率の範囲内において、後述する工程(E)の貼合せ工程における貼り合わせ操作の際、少なくとも硬化樹脂層7の液だれや変形が生じないような条件を選択する。そのような液だれや変形が生じないような条件を粘度で表現すると、20Pa・S以上(コーンプレートレオメーター、25℃、コーン及びプレートC35/2、回転数10rpm)となる。
【0064】
勿論、硬化性樹脂6を本硬化させることにより硬化樹脂層7を形成してもよい。硬化性樹脂6の硬化度は、硬化性樹脂の物性や充填条件、後述する光学部材3との貼合せ工程の条件等の各種条件、環境に応じて適宜設定される。
【0065】
なお、硬化性樹脂6として熱硬化性樹脂を用いた場合には、積層体5を加熱処理することにより、硬化性樹脂6を硬化させて硬化樹脂層7を形成する。
【0066】
[工程D]
次いで、型部材4をカバー部材1から剥離する。型部材4は、シリコーンラバー等の弾性体を用いて形成することにより容易にカバー部材1から剥離することができ、また、復元性を備えているため、繰り返し使用することができる。また、カバー部材1には貼合せ面に硬化樹脂層7が形成されている。図12に示すように、硬化樹脂層7は、型部材4の側壁10の高さに応じた厚さを有する。また、カバー部材1は、嵌合凸部11が嵌合されていた開口部2及び開口部2の内側面2aには硬化樹脂層7は付着されていない。同様に、カバー部材1は、変形凸部12が嵌合されていた変形部8の内側面にも硬化樹脂層7は付着されていない。また、カバー部材1は、型部材4に密着凸部15が形成されている場合には、当該密着凸部15が密着した領域にも硬化樹脂層7が形成されていない。
【0067】
[工程E]
次いで、図13に示すように、カバー部材1の硬化樹脂層7と光学部材3と貼り合わせる。これにより光学装置30が形成される。カバー部材1と光学部材3との貼合せ工程は、公知の圧着装置を用いて、所定の温度、圧力で加圧することにより行うことができる。なお、この貼合せ工程は、硬化樹脂層7や、光学部材3及びカバー部材1の各界面に気泡が入らないようにするために、いわゆる真空貼合法で積層を行うことが好ましい。また、貼合せ工程の後に、カバー部材1と光学部材3との貼合せ物に公知の加圧脱泡処理(処理条件例:0.2~0.8MPa、25~60℃、5~20min)を行ってもよい。
【0068】
[工程F]
なお、上記工程Cにおいて硬化性樹脂6を仮硬化させた場合には、カバー部材1と光学部材3を貼り合せた後、更に硬化樹脂層7を本硬化させる処理を行う。本工程において本硬化させることにより、硬化樹脂層7を十分に硬化させて、光学部材3とカバー部材1とを接着し積層するためである。このような本硬化のレベルは、硬化樹脂層7の硬化率(ゲル分率)が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上となるようなレベルである。
【0069】
このように、本技術が適用された製造工程によれば、カバー部材1と型部材4との積層体5の中空部に硬化性樹脂6を充填、硬化させることで、一部に開口部2が形成されたカバー部材1や、硬化性樹脂が供給される面が凸状に湾曲するカバー部材1に対しても、型部材4の主面部4aや側壁10の寸法に応じて例えば平坦化された略均一な硬化樹脂層7を形成することができる。
【0070】
[光学装置30]
光学装置30は、開口部2と光学部材3との間に硬化樹脂層7が形成されず、開口部2を介して光学部材3が直接外方に露出されている。また、図13に示すように、光学装置30は、開口部2に面する位置には、例えばスイッチ機構等の光学部材3以外の部品14が設けられていてもよい。これらの場合、光学装置30は、光学部材3に設けられている各種機構の部品14や光学部材3の画像等を、開口部2を通して直接外方に露出させることができ、多様化する光学装置30の意匠性や操作性に対応することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 カバー部材、2 開口部、2a 内側面、3 光学部材、4 型部材、4a 主面部、5 積層体、6 硬化性樹脂、7 硬化樹脂層、8 変形部、10 側壁、11 嵌合凸部、12 変形凸部、13 ディスペンサー、30 光学装置
図1
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