IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノンライフケアソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図1
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図2
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図3
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図4
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図5
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図6
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図7
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図8
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図9
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図10
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図11
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図12
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図13
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図14
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図15
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図16
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図17
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図18
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図19
  • 特許-滅菌装置、および制御方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】滅菌装置、および制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20221221BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
A61L2/20
A61L101:22
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021100487
(22)【出願日】2021-06-16
(62)【分割の表示】P 2019226334の分割
【原出願日】2014-12-26
(65)【公開番号】P2021137645
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2013272533
(32)【優先日】2013-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392022064
【氏名又は名称】キヤノンメドテックサプライ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 高志
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-224198(JP,A)
【文献】特開2013-094394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被滅菌物を格納する滅菌室内を所定の圧力まで減圧する滅菌前減圧動作を行った後に、滅菌剤を用いて前記被滅菌物を滅菌する滅菌処理を実行する滅菌装置であって、
前記滅菌室を減圧する減圧手段と、
前記減圧手段が前記滅菌室の減圧を開始してからの経過時間を計測する計測手段と、
前記減圧手段が前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達していない場合に、前記滅菌室に大気を導入させて前記滅菌室の圧力を大気圧に戻すように制御し、前記減圧手段が前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達している場合に、前記滅菌室の圧力を大気圧に戻さずに滅菌を開始する制御を実行する制御手段と、
前記減圧手段が前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達していない場合に、ユーザに被滅菌物に対する作業を推奨するメッセージを表示部に表示させる表示制御手段と、
を備える滅菌装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記減圧手段が前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達している場合に、自動的に前記滅菌を開始する制御を実行する、請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項3】
前記制御手段が前記滅菌を開始する制御を実行するか否かの設定を受け付ける第1の受付手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記第1の受付手段により前記滅菌を開始する制御を実行することを指示する第一の設定を受け付けた場合に、前記滅菌を開始する制御を実行する、請求項1又は2に記載の滅菌装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の受付手段により前記滅菌を開始する制御を実行しないことを指示する第二の設定を受け付けた場合には、前記滅菌室の減圧を停止する制御を実行する、請求項3に記載の滅菌装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記滅菌を開始する制御を実行する場合には、前記滅菌室が減圧されている現在の圧力から、さらに前記減圧手段により前記滅菌室を減圧して前記滅菌処理を始めるように制御する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の滅菌装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記滅菌室内の水分除去を行う制御を実行する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の滅菌装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記滅菌室を所定の圧力まで減圧し一定期間減圧状態を維持することにより前記滅菌室内の水分除去を行う、請求項6に記載の滅菌装置。
【請求項8】
前記滅菌室内の水分除去を行うか否かの設定を受け付ける第2の受付手段をさらに備える、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の滅菌装置。
【請求項9】
前記制御手段が前記滅菌を開始しかつ前記滅菌室内の水分除去を実行することを指示する第三の設定を受け付ける第3の受付手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記第三の設定を受け付けた場合には前記水分除去を実行した後に前記滅菌を開始する制御を実行する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の滅菌装置。
【請求項10】
被滅菌物を格納する滅菌室内を所定の圧力まで減圧する滅菌前減圧動作を行った後に、滅菌剤を用いて前記被滅菌物を滅菌する滅菌処理を実行する滅菌装置の制御方法であって、
前記滅菌室を減圧する減圧工程と、
前記減圧工程で前記滅菌室の減圧が開始されたからの経過時間を計測する計測工程と、
前記減圧工程で前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達していない場合に、前記滅菌室に大気を導入させて前記滅菌室の圧力を大気圧に戻すように制御し、前記減圧工程で前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達している場合に、前記滅菌室の圧力を大気圧に戻さずに滅菌を開始する制御を実行する制御工程と、
前記減圧工程で前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達していない場合に、ユーザに被滅菌物に対する作業を推奨するメッセージを表示部に表示させる表示制御工程と、
を含む制御方法。
【請求項11】
前記制御工程は、前記減圧工程で前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達している場合に、自動的に前記滅菌を開始する制御を実行する、請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記制御工程で前記滅菌を開始する制御を実行するか否かの設定を受け付ける第1の受付工程をさらに含み、
前記制御工程は、前記第1の受付工程で前記滅菌を開始する制御を実行することを指示する第一の設定を受け付けた場合に、前記滅菌を開始する制御を実行する、請求項10又は11に記載の制御方法。
【請求項13】
前記制御工程は、前記第1の受付工程で前記滅菌を開始する制御を実行しないことを指示する第二の設定を受け付けた場合には、前記滅菌室の減圧を停止する制御を実行する、請求項12に記載の制御方法。
【請求項14】
前記制御工程は、前記滅菌を開始する制御を実行する場合には、前記滅菌室が減圧されている現在の圧力から、さらに前記減圧工程で前記滅菌室を減圧して前記滅菌処理を始めるように制御する、請求項10乃至13のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項15】
前記制御工程は、前記滅菌室内の水分除去を行う制御を実行する、請求項10乃至14のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項16】
前記制御工程は、前記滅菌室を所定の圧力まで減圧し一定期間減圧状態を維持することにより前記滅菌室内の水分除去を行う、請求項15に記載の制御方法。
【請求項17】
前記滅菌室内の水分除去を行うか否かの設定を受け付ける第2の受付工程をさらに含み、請求項10乃至16のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項18】
前記制御工程で前記滅菌を開始しかつ前記滅菌室内の水分除去を実行することを指示する第三の設定を受け付ける第3の受付工程をさらに含み、
前記制御工程は、前記第三の設定を受け付けた場合には前記水分除去を実行した後に前記滅菌を開始する制御を実行する、請求項10乃至17のいずれか1項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌装置、および制御方法に関し、特に、テスト減圧を行う場合でも滅菌処理時間を短縮することが出来る滅菌装置を提供することが可能な仕組みに関する。
【背景技術】
【0002】
注射器や手術道具などの医療器具は、使用後に滅菌しなければ病原菌が付着していることがあり、人体に影響を及ぼすおそれがあるため再使用することができない。そのため、医療器具等の滅菌が必要な対象物を滅菌処理する滅菌装置がある。
【0003】
しかしながら、とりわけ高い真空度まで減圧する工程を持つ滅菌器において、滅菌が必要な対象物の材質内に含有しているガス(マイクロポアと呼ばれるミクロの孔に入り込んでいる)が、高真空下(100Pa(abs))において材質から放出され、減圧を阻害することがある。なお、このガスは、最初から対象物の材質内に含有していることもあれば、滅菌コンテナに滅菌ガスを投入時や、滅菌コンテナに大気を導入時に、材質内に含有することもある。
【0004】
ガスが高真空下において材質から放出され減圧が阻害されることにより、以下のような問題が生じている。
1)滅菌処理時間が長くなってしまう。
2)医師のスケジュールが狂う。(極端な例では手術の開始が遅れる)
3)程度によってはエラーとなり、滅菌処理が中断してしまう。その場合、滅菌剤とそこまでの時間が無駄になる。また、処理物を減らすなどしてやり直す必要があり、煩雑である。
【0005】
また、同様の課題は、滅菌が必要な対象物に水分が多い場合(主に滅菌の前に行う洗浄時の乾燥不良による)にも発生する。その原因としては、中真空下(2000Pa(abs))において水分が気化することで減圧が阻害されるためである。
【0006】
特許文献1には、滅菌が必要な対象物が入ったチャンバ(滅菌コンテナとも言う)を、水または他の液体の飽和圧力未満である大気圧以下の所定の圧力まで減圧し、その圧力まで達するのに経過した時間が、所定の時間以上である場合に、滅菌が必要な対象物等に水分が残っていると判断する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表平6-511085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、滅菌が必要な対象物の材質内に含有しているガスについては、記載されていない。そのため、特許文献1の圧力(水または他の液体の飽和圧力未満である大気圧以下の所定の圧力)では、材質内のガスを検出することができず、依然として、高真空下において材質からガスが放出されることで、減圧が阻害されてしまう。
【0009】
そこで、本出願人らは、滅菌コンテナ内を所定の気圧までテスト減圧し、所定圧力まで減圧されるまでにかかる時間を計測し、計測した時間により、滅菌処理物が高真空下において材質からガスが放出されないことを確認する仕組みを検討している。
【0010】
ところで、本出願人らの滅菌装置においては、そもそも滅菌処理の前に滅菌コンテナ内の圧力を所定の圧力まで減圧する滅菌前減圧という処理を行っている。
【0011】
そのため、滅菌前減圧に加えて、テスト減圧を行うとすると、まず、テスト減圧を行い、テスト減圧が終了すると、滅菌前工程を行うことになるため、滅菌処理に時間がかかることになるので、好ましくない。
【0012】
本発明は、テスト減圧を行う場合でも滅菌処理時間を短縮することが出来る滅菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、被滅菌物を格納する滅菌室内を所定の圧力まで減圧する滅菌前減圧動作を行った後に、滅菌剤を用いて前記被滅菌物を滅菌する滅菌処理を実行する滅菌装置であって、前記滅菌室を減圧する減圧手段と、前記減圧手段が前記滅菌室の減圧を開始してからの経過時間を計測する計測手段と、前記減圧手段が前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達していない場合に、前記滅菌室に大気を導入させて前記滅菌室の圧力を大気圧に戻すように制御し、前記減圧手段が前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達している場合に、前記滅菌室の圧力を大気圧に戻さずに滅菌を開始する制御を実行する制御手段と、前記減圧手段が前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達していない場合に、ユーザに被滅菌物に対する作業を推奨するメッセージを表示部に表示させる表示制御手段と、を備える。
【0014】
本発明は、被滅菌物を格納する滅菌室内を所定の圧力まで減圧する滅菌前減圧動作を行った後に、滅菌剤を用いて前記被滅菌物を滅菌する滅菌処理を実行する滅菌装置の制御方法であって、前記滅菌室を減圧する減圧工程と、前記減圧工程で前記滅菌室の減圧が開始されたからの経過時間を計測する計測工程と、前記減圧工程で前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達していない場合に、前記滅菌室に大気を導入させて前記滅菌室の圧力を大気圧に戻すように制御し、前記減圧工程で前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達している場合に、前記滅菌室の圧力を大気圧に戻さずに滅菌を開始する制御を実行する制御工程と、前記減圧工程で前記滅菌室の減圧を開始してから所定の経過時間内に所定の減圧状態に達していない場合に、ユーザに被滅菌物に対する作業を推奨するメッセージを表示部に表示させる表示制御工程と、を含む。
【0015】
また、本発明は、ユーザにより設定された閾値時間を含むテスト減圧条件と、当該テスト減圧条件で前記滅菌コンテナ内を減圧する圧力とを記憶する記憶手段を備え、被滅菌物を格納する滅菌コンテナ内を所定の圧力まで減圧する滅菌前減圧動作を行った後に、滅菌剤を用いて前記被滅菌物を滅菌する滅菌処理を実行する滅菌装置で読み取り実行可能なプログラムであって、前記滅菌装置を、前記滅菌コンテナ内を減圧する減圧手段と、前記減圧手段により、前記記憶手段で記憶されたテスト減圧条件の圧力まで、前記閾値時間内に減圧ができたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段で閾値時間内に減圧できたと判定された場合に、前記滅菌前減圧動作を行うことなく滅菌処理が行われるように制御する実行制御手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、テスト減圧を行う場合でも滅菌処理時間を短縮することが出来る滅菌装置を提供することが可能な仕組みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る滅菌装置の外観を正面から見た図である。
図2】本発明に係る滅菌装置のハードウエアの構成の一例を示す図である。
図3】滅菌装置100の表示部102に表示される画面の一例を示す図である。
図4】本発明に係る滅菌装置による滅菌処理の各工程の一例を示す図である。
図5図4のS111に示す滅菌処理の詳細処理の一例を示す図である。
図6図5のS501に示す滅菌前工程の詳細処理の一例を示す図である。
図7図5のS502に示す滅菌工程の詳細処理の一例を示す図である。
図8図5のS503に示す換気工程の詳細処理の一例を示す図である。
図9図4のS114に示す滅菌排出処理の詳細処理の一例を示す図である。
図10】本発明に係る滅菌装置100の濃縮炉208、弁(V1)211、弁(V3)212、弁(V4)213、計量管214、弁(V2)215、気化炉216、弁(V5)217、弁(V9)227のハードウエア構成に係るブロック構成図の一例を示す図である。
図11】滅菌装置100の表示部102に表示されるカートリッジ取付要求画面1101の一例を示す図である。
図12】本発明に係る、滅菌装置に用いられる滅菌剤のカートリッジ205を横側から見た図である。
図13】本発明に係るカートリッジの断面1の断面図である。
図14】滅菌装置100の表示部102に表示される滅菌物減圧特性確認画面の一例を示す図である。
図15図4のS122に示す滅菌物減圧特性確認の詳細処理の一例を示す図である。
図16図15の滅菌物減圧特性判定の詳細処理の一例を示す図である。
図17図14の1411に表示される、滅菌物減圧特性判定による判定結果ごとのメッセージの一例を示す図である。
図18図4のS122に示す滅菌物減圧特性確認の詳細処理の一例を示す図である。
図19図4のS122に示す滅菌物減圧特性確認の詳細処理の一例を示す図である。
図20図14の1411に表示される、滅菌物減圧特性判定による判定結果ごとのメッセージの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を用いて、本発明の滅菌装置、及び滅菌方法、プログラムについて、説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、図面を用いて、本発明に係る滅菌装置における第1の実施の形態について説明する。
図1の説明>
【0020】
まず、図1を用いて、本発明に係る滅菌装置の外観について説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る滅菌装置の外観を正面から見た図である。
【0022】
100は、本発明に係る滅菌装置であり、101は、カートリッジ取付用扉であり、102は、表示部であり、103は、印刷部103であり、104は、滅菌室の扉である。
【0023】
カートリッジ取付用扉101は、滅菌剤(過酸化水素、又は過酸化水素溶液の液体)が充填された容器であるカートリッジを取り付けるための扉である。カートリッジ取付用扉101を開くと、カートリッジの取り付け場所があり、ユーザは、そこにカートリッジを取り付けることができるようになる。
【0024】
表示部102は、液晶ディスプレイなどのタッチパネルの表示画面である。
【0025】
印刷部103は、滅菌処理の履歴や滅菌結果を印刷用紙に印刷するプリンタであり、適宜、滅菌処理の履歴や滅菌結果を印刷用紙に印刷する。
【0026】
滅菌室の扉104は、例えば医療用器具などの被滅菌対象物(被滅菌物)を滅菌するために、該被滅菌物を滅菌室に入れるための扉である。滅菌室の扉104を開くと、滅菌室があり、そこに該被滅菌物を入れて、滅菌室の扉104を閉じることで、滅菌室内に被滅菌対象物を入れることができる。
【0027】
滅菌室は、所定の容量の筐体である。滅菌室内の気圧(圧力)は大気圧から真空圧までの圧力を維持することが可能である。また、滅菌室内の温度は、滅菌処理中において、所定の範囲の温度に維持されている。
図2の説明>
【0028】
次に、図2を用いて、本発明に係る滅菌装置のハードウエアの構成の一例について説明する。
【0029】
図2は、本発明に係る滅菌装置のハードウエアの構成の一例を示す図である。
【0030】
本発明に係る滅菌装置100は、演算処理部(MPU等)201と、表示部102と、印刷部103と、ロック動作制御部202と、抽出針動作制御部203と、カートリッジ取付用扉101と、液センサ204と、カートリッジ205と、RF-IDリーダ/ライタ206と、液送ロータリーポンプ207と、濃縮炉208と、気送加圧ポンプ209と、吸気用HEPAフィルタ210と、弁(V1)211と、弁(V3)212と、弁(V4)213と、計量管214と、弁(V2)215と、気化炉216と、弁(V5)217と、弁(V9)227と、弁(V7)226と、滅菌室(真空チャンバーとも言う)219と、気送真空ポンプ220と、排気用HEPAフィルタ221と、滅菌剤分解装置222と、液送ロータリーポンプ223と、排気蒸発炉224とから構成されている。
滅菌装置100は、滅菌剤が入っているカートリッジ205の中から、滅菌剤を取り出して対象物を滅菌する装置である。
【0031】
演算処理部(MPU等)201は、演算処理を行い、滅菌装置100を構成する各ハードウエアを制御する。
【0032】
表示部102、印刷部103、カートリッジ取付用扉101は、既に図1を用いて説明しているため、ここでは説明を省略する。
【0033】
ロック動作制御部202は、カートリッジ取付用扉101の施錠、開錠の動作を行う部であり、カートリッジ取付用扉101を施錠することにより、カートリッジ取付用扉101を開かないようにし、また、カートリッジ取付用扉101を開錠することにより、カートリッジ取付用扉101を開けることができるようにする。
【0034】
カートリッジ205は、滅菌剤(過酸化水素、又は過酸化水素溶液の液体)が充填され、密閉された容器である。また、カートリッジ205の下側にはRF-IDの記憶媒体を備えており、その記憶媒体には、該カートリッジを識別する情報としてのシリアル番号と、該カートリッジの製造年月日、該カートリッジが初めて滅菌装置で使用された日時(初回使用日時)、該カートリッジ内に充填されている滅菌剤の残量が記憶されている。
【0035】
このRF-IDは、カートリッジ205の中の滅菌剤の廃棄に係るデータ(シリアル番号、製造年月、初回使用日時、滅菌剤の残量の全て、またはいずれかのデータ)を記憶した記憶媒体である。
【0036】
抽出針動作制御部203は、カートリッジ内の滅菌剤を吸引するための抽出針(注射針)をカートリッジの上部から刺すために、当該抽出針を動作する部である。
【0037】
すなわち、カートリッジ内の滅菌剤を吸引するための抽出針(注射針)をカートリッジの上部から刺す場合は、抽出針(注射針)をカートリッジに向けて、該カートリッジの上部から降ろすように動作することで、抽出針(注射針)をカートリッジの上部から刺すことができる。また、抽出針(注射針)をカートリッジから抜く場合は、該カートリッジの上部に抽出針(注射針)を上げるように動作することで、抽出針(注射針)をカートリッジから抜くことができる。
【0038】
抽出針は、カートリッジ内の滅菌剤を吸引するためのストロー(細い筒)である。
【0039】
液センサ204は、カートリッジ205内の液体の滅菌剤が、抽出針(注射針)から液送ロータリーポンプ207、液送ロータリーポンプ223に導通(連結)している管(導管)を通っているかを検出する装置である。具体的には、該管に赤外線を照射して得られるスペクトルから滅菌剤が該管を通っているかを検出することができる。
【0040】
RF-IDリーダ/ライタ206は、カートリッジ205の下側に備え付けられているRF-IDから、シリアル番号、製造年月、初回使用日時、滅菌剤の残量を読み取ることができる装置である。また、RF-IDリーダ/ライタ206から、カートリッジ205の下側に備え付けられているRF-IDに、初回使用日時、滅菌剤の残量を書き込むことができる装置である。また、RF-IDリーダ/ライタ206は、カートリッジ取付用扉101の裏にあるカートリッジの取り付け場所の下部に設置されており、カートリッジ205の下側に備え付けられているRF-IDを読み取ること、及び初回使用日時、滅菌剤の残量等のデータをRF-IDに書き込むことが可能である。
【0041】
液送ロータリーポンプ207は、濃縮炉208と導管により導通して(繋がって)おり、また、液センサ204と導管により導通している。液送ロータリーポンプ207は、カートリッジ205内の液体の滅菌剤をポンプにより吸引して、導管を通して滅菌剤を濃縮炉208に送る装置である。また、液送ロータリーポンプ207は、液センサ204と連携して、カートリッジ205から、滅菌剤の所定量を吸引することができる。
【0042】
濃縮炉208は、液送ロータリーポンプ207と、気送加圧ポンプ209と、計量管214と、排気用HEPAフィルタ221と、それぞれ導管により導通している。濃縮炉208は、後述する図10でも説明するが、液送ロータリーポンプ207から導管を通じて送り込まれた滅菌剤を、ヒータを用いて加熱し、滅菌剤に含まれる水分などを蒸発(気化)させ滅菌剤を濃縮する。また、気化した水は、気送加圧ポンプ209から導管を通して送り込まれる空気により、排気用HEPAフィルタ221に導通している導管に押し出され、濃縮炉208内から排気される。また、計量管214と濃縮炉208との間の導管の間には弁(1)211が設けられている。
【0043】
気送加圧ポンプ209は、それぞれ、濃縮炉208と、吸気用HEPAフィルタ210と、導管により導通している。気送加圧ポンプ209は、滅菌装置100の外気(空気)を、吸気用HEPAフィルタ210を介して、吸気用HEPAフィルタ210との導管により導通して濃縮炉208に送る装置である。
【0044】
吸気用HEPAフィルタ210は、それぞれ、気送加圧ポンプ209と、滅菌室219と、気化炉216と、導管により導通している。吸気用HEPAフィルタ210は、滅菌装置100の外の外気(空気)中のちりやほこり、雑菌などを、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルタでフィルタリングして空気を清浄する。そして、その清浄された空気は、気送加圧ポンプ209により導管を通して濃縮炉208に送られる。また、清浄された空気は、気化炉216との導管により導通して気化炉216に送り込まれたり、滅菌室219との導管により導通して滅菌室219に送り込まれたりする。すなわち、吸気用HEPAフィルタ210は、滅菌装置100の外の外気(空気)と導通している。そのため、気送加圧ポンプ209と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管と、滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管と、気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管は、吸気用HEPAフィルタ210を介して、外気(空気)と導通している。
【0045】
また、吸気用HEPAフィルタ210と気化炉216との間の導管には、弁(V9)227が設けられている。また、吸気用HEPAフィルタ210と滅菌室219との間の導管には、弁(V7)226が設けられている。
【0046】
弁(V1)211は、濃縮炉208と計量管214との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで濃縮炉208と計量管214との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで濃縮炉208と計量管214との間の導管による導通を不可能にする弁である。
【0047】
弁(V3)212は、計量管214と滅菌室219との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで計量管214と滅菌室219との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで計量管214と滅菌室219との間の導管による導通を不可能にする弁である。また、この弁は、計量管214の近くに設けられており、少なくとも後述する弁(V4)よりも計量管214側の位置に設けられている。
【0048】
弁(V4)213は、計量管214と滅菌室219との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで計量管214と滅菌室219との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで計量管214と滅菌室219との間の導管による導通を不可能にする弁である。また、この弁は、滅菌室219の近くに設けられており、少なくとも後述する弁(V3)よりも滅菌室219側の位置に設けられている。
【0049】
本実施例では、弁(V4)212、弁(V3)213の開け閉めにより、計量管と滅菌室との間の導管の導通を可能にするか、不可能にするかを行っているが、弁(V4)213、弁(V3)213のどちらか一方の弁の開け閉めにより、計量管と滅菌室との間の導管の導通を可能にするか、不可能にするかを行うようにしてもよい。
【0050】
すなわち、弁(V4)213、弁(V3)213のどちらか一方の弁のみを設け、そのどちらか一方の弁の開け閉めを行うことにより、計量管と滅菌室との間の導管の導通を可能にするか、不可能にするかを行うようにすることもできる。
【0051】
計量管214は、濃縮炉208と、気化炉216と、滅菌室219のそれぞれとの間の導管により導通している。
【0052】
計量管214は、弁(V1)211を開くことにより、濃縮炉208から滅菌剤が流入し、弁(V3)212、及び弁(V4)213を開くことにより、カートリッジ205内から吸入した不要な空気、及び/又は、吸気用HEPAフィルタ210から濃縮炉208内に流入して濃縮炉208内から計量管214内に流入した不要な空気を、計量管214により取り除く装置である。計量管214の詳細については、図10を用いて、後で説明する。
【0053】
弁(V2)215は、計量管214と、気化炉216との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで計量管214と気化炉216との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで計量管214と気化炉216との間の導管による導通を不可能にする弁である。
【0054】
気化炉216は、計量管214と、吸気用HEPAフィルタ210と、滅菌室219とのそれぞれとの間の導管により導通している。気化炉216は、本発明の気化室の適用例である。
【0055】
気化炉216は、気送真空ポンプ220により減圧されることで、滅菌剤を気化させる装置である。
【0056】
弁(V5)217は、気化炉216と、滅菌室219との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで気化炉216と滅菌室219との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで気化炉216と滅菌室219との間の導管による導通を不可能にする弁である。
【0057】
弁(V9)227は、気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管による導通を不可能にする弁である。すなわち、弁(V9)227は、気化炉216と外気(大気)との導通を開閉できる弁である。
【0058】
弁(V7)226は、滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管による導通を不可能にする弁である。すなわち、弁(V7)226は、滅菌室219と外気(大気)との導通を開閉できる弁である。
【0059】
滅菌室(真空チャンバーとも言う)219は、図1でも説明したが、例えば医療用器具などの被滅菌対象物を滅菌する所定の容量の筐体である。滅菌室内の圧力は大気圧から真空圧までの圧力を維持することが可能である。また、滅菌室内の温度は、滅菌処理中において、所定の範囲の温度に維持されている。また、滅菌室219内には、圧力センサが備えられており、圧力センサにより滅菌室219内の圧力(気圧)を測定することができる。滅菌装置100は、この圧力センサにより測定された滅菌室219内の気圧を用いて、滅菌室219内等の圧力(気圧)が所定の気圧になっているかを判定する。
【0060】
気送真空ポンプ220は、滅菌室219内、気化炉216内、計量管214内、計量管214と気化炉216との間の導管内、気化炉216と滅菌室219との間の導管内、計量管214と滅菌室219との間の導管内の空間の気体を吸引して、それぞれの空間内を減圧し真空状態(大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態)にする装置である。
【0061】
気送真空ポンプ220は、滅菌室219との間で導管により導通されており、排気用HEPAフィルタ221との間で導管により導通されている。
【0062】
排気用HEPAフィルタ221は、気送真空ポンプ220との間で導管により導通されている。また、排気用HEPAフィルタ221は、排気蒸発炉224との間で導管により導通されている。また、排気用HEPAフィルタ221は、滅菌剤分解装置222との間で導管により導通されている。また、排気用HEPAフィルタ221は、濃縮炉208との間で導管により導通されている。
【0063】
排気用HEPAフィルタ221は、気送真空ポンプ220により、滅菌室219内等から吸引された気体を、気送真空ポンプ220との間の導管から送られてきた気体内のちりやほこり、雑菌などを、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルタでフィルタリングして、吸引された気体を清浄する。そして、清浄された気体は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通り、滅菌剤分解装置222に送られ、滅菌剤分解装置222により該気体に含まれる滅菌剤の分子を分解し、分解後の分子を滅菌装置100の外に放出する。
【0064】
また、排気用HEPAフィルタ221は、濃縮炉208と排気用HEPAフィルタ221との間の導管により濃縮炉208から排気される気体を清浄する。この気体は、濃縮炉208で、滅菌剤が加熱されて、気化された水であるが、微量の滅菌剤を含むため、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通り、滅菌剤分解装置222に送られる。そして、滅菌剤分解装置222により該気体に含まれる滅菌剤の分子を分解し、分解後の分子を滅菌装置100の外に放出する。
【0065】
また、排気用HEPAフィルタ221は、排気蒸発炉224から、排気蒸発炉224と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通り送られてくる気化された滅菌剤を清浄する。そして、その洗浄された滅菌剤(気体)は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通り、滅菌剤分解装置222に送られ、滅菌剤分解装置222により該気体に含まれる滅菌剤の分子を分解し、分解後の分子を滅菌装置100の外に放出する。
【0066】
排気用HEPAフィルタ221は、導管を通り送られてくる気体を清浄することで、滅菌剤分解装置222にほこりやごみが溜まりにくくし、滅菌剤分解装置222の製品寿命を延ばすことができる。
【0067】
滅菌剤分解装置222は、排気用HEPAフィルタ221との間の導管により導通されている。滅菌剤分解装置222は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管から送られてくる気体に含まれる滅菌剤の分子を分解して、分解して生成される分子を滅菌装置100の外に放出する。
【0068】
滅菌剤分解装置222は、滅菌剤を分解する装置であって、例えば、滅菌剤が過酸化水素、又は過酸化水素溶液である場合、気化された過酸化水素を、二酸化マンガンを触媒として用いて、水と酸素に分解することができる装置である。
【0069】
液送ロータリーポンプ223は、排気蒸発炉224と導管により導通しており、また、液センサ204と導管により導通している。
【0070】
液送ロータリーポンプ223は、カートリッジ205内の全ての液体の滅菌剤をポンプにより吸引して、液センサ204と液送ロータリーポンプ223との間の導管を通して送られるその全ての滅菌剤を、液送ロータリーポンプ223と排気蒸発炉224との間の導管を通して、排気蒸発炉224に送る装置である。
【0071】
排気蒸発炉224は、液送ロータリーポンプ223と導管により導通しており、また、排気用HEPAフィルタ221と導管により導通している。
【0072】
排気蒸発炉224は、液送ロータリーポンプ223と排気蒸発炉224との間の導管を通して送られる、カートリッジ205内の全ての液体の滅菌剤を、排気蒸発炉224に備え付けられたヒータにより加熱し、その滅菌剤の全てを気化させる。そして、気化された滅菌剤は、排気用HEPAフィルタ221と排気蒸発炉224との間の導管を通して、排気用HEPAフィルタ221に送られる。
【0073】
図4の説明>
【0074】
次に、図4を用いて、本発明に係る滅菌装置による滅菌処理の各工程の一例について説明する。
【0075】
図4に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
【0076】
すなわち、滅菌装置100の演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することにより、各装置の動作を制御して、図に示す各工程(処理)を実行する。
【0077】
図4は、本発明に係る滅菌装置による滅菌処理の各工程の一例を示す図である。
【0078】
滅菌装置100は、電源が入れられると、まず、RF-IDリーダ/ライタ206(読取部/書込部)が、カートリッジ205の下側に設けられたRF-ID(記憶媒体)から、データを読み取る(ステップS101)。
【0079】
RF-IDリーダ/ライタ206は、本発明の読取手段の適用例である。
【0080】
ステップS101で、RF-ID(記憶媒体)から読み取られるデータとしては、該カートリッジを識別する情報としてのシリアル番号と、該カートリッジの製造年月日と、該カートリッジが滅菌装置で初めて使用された日時(初回使用日時)と、該カートリッジ内に充填されている滅菌剤の残量とがある。すなわち、カートリッジ205に設けられたRF-ID(記憶媒体)には、予め、シリアル番号、製造年月日、初回使用日時(初回使用日時情報)、滅菌剤の残量が記憶されている。なお、滅菌装置で初めて使用されるカートリッジのRF-IDには、初回使用日時(カートリッジが滅菌装置で初めて使用された日時)が記憶されていない。そのため、初めて使用されるカートリッジのRF-IDには、シリアル番号、製造年月日、滅菌剤の残量が記憶されているが、2回目以降に使用されるカートリッジのRF-IDには、シリアル番号、製造年月日、初回使用日時、滅菌剤の残量が記憶されている。したがって、ステップS101では、初めて使用されるカートリッジのRF-IDからは、シリアル番号、製造年月日、滅菌剤の残量が読み取られる。また、2回目以降に使用されるカートリッジのRF-IDからは、シリアル番号、製造年月日、初回使用日時、滅菌剤の残量が読み取られる。
【0081】
そのため、ステップS102では、初めて使用されるカートリッジのRF-IDから初回使用日時が読み取れなかったとしても、シリアル番号、製造年月日、滅菌剤の残量が読み取ることが出来れば、RF-IDからデータが読み取れたと判定する。
【0082】
次に、滅菌装置100は、ステップS101でRF-IDからデータが読み取れたと判定された場合は(ステップS102:YES)、滅菌装置100内のカートリッジの取り付け場所にカートリッジが設置されていると判断し、カートリッジ取付用扉101を施錠(ロック)する(ステップS103)。すなわち、カートリッジを取り出すことが出来ないようにロック(施錠)する。このように、読取手段によりデータを読み取れた場合に、カートリッジ205を取り出すことが出来ないようにロックする。
【0083】
また、たとえば、カートリッジに挿入される注射針を抜かないようにすることで、カートリッジを取り出すことが出来ないようにすることもできる。
【0084】
すなわち、ステップS103で注射針をカートリッジに挿入することで、カートリッジ内の滅菌剤を抽出することが可能となると共に、カートリッジを取り出すことが出来ないようにすることができる。
【0085】
このように、滅菌装置100内のカートリッジの取り付け場所にカートリッジが取り付けられた場合、カートリッジを取り出すことが出来ないようにロック(施錠)する。
【0086】
滅菌装置100内のカートリッジの取り付け場所に、滅菌剤の余りが入っているカートリッジが取り付けられている場合、カートリッジを取り出すことが出来ないようにロック(施錠)しているため、ユーザに滅菌剤を触れさせないようにすることが出来るようになる。
【0087】
以上のように、滅菌装置100が、カートリッジが滅菌装置に取り付けられている場合に、カートリッジを取り出すことが出来ないようにロックする。これは、本発明のロック手段の適用例である。
【0088】
そして、滅菌装置100は、カートリッジ内に滅菌1回分の滅菌剤の所定の量(例えば、8ミリリットル)があるか否かを判定する。具体的には、RF-IDから取得した滅菌剤の残量が、滅菌1回分の所定の量よりも多いか否かを判定する。すなわち、滅菌剤の残量が、滅菌1回分の所定の量よりも多いと判定された場合は、カートリッジ内に滅菌1回分の滅菌剤の所定の量がある(十分な滅菌処理を実行できる)と判断し(ステップS104:YES)、ステップS105の処理を行う。一方、滅菌剤の残量が、滅菌1回分の所定の量(例えば、8ミリリットル)よりも少ないと判定され場合は、カートリッジ内に滅菌1回分の滅菌剤の所定の量がない(十分な滅菌処理を実行できない)と判断し(ステップS104:NO)、ステップS112の処理を行う。
【0089】
滅菌装置100は、ステップS105において、RF-IDから取得したカートリッジの製造年月日から、所定の期間(例えば、13か月)を経過しているかを判断する。
【0090】
そして、製造年月日から所定の期間を経過していると判定された場合は(ステップS105:YES)、十分な滅菌処理を実行できないと判定し、ステップS112の処理を行う。一方、製造年月日から所定の期間を経過していないと判定された場合は(ステップS105:NO)、十分な滅菌処理を実行できると判定し、ステップS106の処理を行う。
【0091】
滅菌装置100は、ステップS106において、RF-IDから取得した初回使用日時から、所定の期間(例えば、2週間)を経過しているかを判断する(ステップS106)。
【0092】
そのため、例えば、ステップS101では、初めて使用されるカートリッジのRF-IDからは、初回使用日時が読み取られないため、ステップS106において、RF-IDから取得した初回使用日時から、所定の期間(例えば、2週間)を経過していないと判定する(ステップS106:NO)。
【0093】
そして、RF-IDから取得した初回使用日時から、所定の期間(例えば、2週間)を経過していると判定された場合は(ステップS106:YES)、十分な滅菌処理を実行できないと判定し、ステップS112の処理を行う。一方、所定の期間(例えば、2週間)を経過していないと判定された場合は(ステップS106:NO)、十分な滅菌処理を実行できると判定し、ステップS107の処理を行う。
図3の説明>
【0094】
滅菌装置100は、ステップS107において、滅菌開始画面(図3の301)を表示部102に表示する。
【0095】
図3は、滅菌装置100の表示部102に表示される画面の一例を示す図である。
【0096】
滅菌開始画面301には、「滅菌開始ボタン」と「滅菌物減圧特性確認ボタン」が表示されている。ステップS107で表示される滅菌開始画面301内の「滅菌開始ボタン」302は、ユーザにより押下可能に(アクティブに)なっている(本発明におけるユーザから滅菌処理の開始指示を受け付ける受付手段の一例)。
【0097】
そして、滅菌装置100は、ユーザにより、図3の「滅菌開始ボタン」302が押下された場合は(ステップS108:YES)滅菌モード選択画面(図3の303)を、「滅菌物減圧特性確認ボタン」306が押下された場合は(ステップS120:YES)、滅菌物減圧特性確認画面(図3の307)を表示部102に表示する。
滅菌物減圧特性確認画面については、図14で説明する。
図14の説明>
【0098】
図14は、滅菌装置100の表示部102に表示される画面の一例を示す図である。
【0099】
図14の画面は、滅菌室の扉104を開閉するためのボタン(1401)、滅菌物減圧特性確認後に自動的に滅菌を開始するか否かを選択するボタン(1402)、滅菌を自動開始する時の判定値を設定するボタン(1403)、滅菌を自動開始した時に滅菌前工程の省略を選択するボタン(1404)、滅菌物減圧特性確認を開始するためのボタン(1405)、現在の圧力値の表示(1406)、滅菌物減圧特性確認を開始してからの経過時間の表示(1407)、滅菌物減圧特性確認の判定結果の表示(1408)、その判定基準の一覧の表示(1409)、予測滅菌処理時間(1410)、アドバイス(1411)および、水分除去を行うかを設定するボタン(1413)を有する。
【0100】
ドア開閉ボタン(1401)は、滅菌室の扉104を開け閉めすることが出来る。吸着特性テストを行う機材を入れる場合や、吸着特性テストの結果に応じて機材を減らしたり増やしたりの出し入れにも使用する。
【0101】
滅菌物減圧特性確認後に自動的に滅菌を開始するか否かを選択するボタン(1402)は、滅菌物減圧特性確認後に結果に応じて、滅菌を自動的に開始させるかしないかを設定することが出来る(本発明におけるユーザから滅菌処理の開始指示を受け付ける受付手段の一例)。
【0102】
滅菌を自動開始する時の判定値を設定するボタン(1403)は、滅菌の自動開始する判定値を任意に設定することが出来る。悪い判定値の場合、滅菌処理に時間を要したり、場合によってはエラーとなるため、選択式になっている。
【0103】
滅菌物減圧特性確認を開始するためのボタン(1405)は吸着特性テストを開始するためのボタンである。滅菌物減圧特性確認中にはキャンセルボタンにかわる。
【0104】
1406には、滅菌物減圧特性確認中の圧力が表示される。
【0105】
1407には、滅菌物減圧特性確認を開始してからの経過時間が表示される。
【0106】
1408には、判定結果をA~Eの5段階で表示する。
【0107】
1409には、滅菌物減圧特性確認の判定基準となる時間および判定の一覧が表示される。図ではA判定を一番好ましいとしている。なお、1409の判定基準は、表示部102をユーザが操作して設定してもよいし、デフォルトで設定されていてもよい。
【0108】
1411には、判定結果に応じたメッセージが表示される。例えば、判定Dの場合は、「滅菌物が多いです。滅菌物を減らしてください。」というメッセージが表示される。その他、判定結果ごとのメッセージの一例を図17に示す。
【0109】
水分除去を行うかを設定するボタン(1413)は、滅菌物減圧特性チェックを実行する前に滅菌室内の水分除去処理をするかを設定できる。
このように滅菌物減圧特性チェックを行う場合、後述する滅菌前工程のように、予め決められた時間(ユーザが任意で設定できない時間)になっても所定の気圧まで減圧されない場合にエラーとするのではなく、所定の気圧まで減圧されない場合にエラーとする基準となる時間をユーザが任意で設定することが出来る。
【0110】
図4の説明に戻る。
【0111】
ステップS121において、滅菌装置100は、表示部102に表示された滅菌物減圧特性確認画面(図3の307)を介して、滅菌物減圧特性確認後に自動的に滅菌を開始するか否かの選択(1402)、滅菌を自動開始する時の判定値の設定(1403)、および滅菌を自動開始した時に滅菌前工程の省略をするか否かの選択(1404)、および水分除去を行うかの設定(1413)をユーザから受け付ける。ステップS121は、本発明における、ユーザにより設定された閾値時間を含むテスト減圧条件と、当該テスト減圧条件で前記滅菌コンテナ内を減圧する圧力とを記憶する記憶手段の一例である。
【0112】
ステップS122において、滅菌装置100は、滅菌物減圧特性確認を行う。ステップS122の処理の詳細は、後述する図15を用いて説明する。
【0113】
滅菌モード選択画面303には、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304と、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305とが表示されている。
【0114】
滅菌装置100は、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304と、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305のどちらか一方の選択をユーザから受け付け(ステップS110)、ユーザにより選択されたボタンのモードに従った滅菌処理(ステップS111)を行う(本発明における、ユーザから滅菌処理の開始指示を受け付けることにより、滅菌処理を実行する実行手段の一例)。滅菌処理(ステップS111)の詳細は、図5を用いて、後で説明する。
【0115】
このように、ユーザの指示により、滅菌処理するモードを1台の滅菌装置で切り替えて使用することが可能となる。すなわち、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304がユーザにより押下された場合は、滅菌剤を濃縮して、滅菌処理を行い、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305が押下された場合は、滅菌剤を濃縮しないで、滅菌処理を行う。
【0116】
そして、滅菌装置100は、滅菌処理(ステップS111)が終了すると、ステップS101に処理を戻す。
【0117】
また、滅菌装置100は、ステップS112において、滅菌開始画面(図3の301)を表示部102に表示する。ただし、ステップS112で表示される滅菌開始画面(図3の301)内の「滅菌開始ボタン」302は、ユーザにより押下出来ないように表示されている(「滅菌開始ボタン」302がアクティブではない)。そのため、ユーザによる、滅菌処理の開始指示を受け付けないようにすること可能となる。
【0118】
そして、滅菌装置100は、ステップS101でRF-IDから取得したシリアル番号から、カートリッジの取り付け場所に設置してあるカートリッジが、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであるか否かを判定する(ステップS113)。具体的には、滅菌装置100内のメモリ(記憶部)には、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジを識別するシリアル番号が記憶されており、ステップS101でRF-IDから取得したシリアル番号が、該メモリ(記憶部)に記憶されているシリアル番号に一致するか否かを判定することにより、現在、滅菌装置100に取り付けられているカートリッジが、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであるか否かを判定する。
【0119】
また、滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであるか否かを判定する他の例についても、ここで説明する。
【0120】
滅菌装置100は、ステップS114の滅菌剤排出処理を行うと、カートリッジ205のRF-IDに、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジである旨を示す情報を記録する。
【0121】
また、滅菌装置100は、ステップS113では、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジである旨を示す情報を読み取ることがステップS101で出来たか否かを判定し、当該情報を読み取ることが出来たと判定された場合は(S113:YES)、ステップS115に移行し、当該情報を読み取ることが出来なかったと判定された場合は(S113:NO)ステップS114に処理を移行する。
【0122】
このようにして、現在、滅菌装置100に取り付けられているカートリッジが、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであるか否かを判定することも可能である。
【0123】
現在、滅菌装置100に取り付けられているカートリッジが、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであると判定された場合は(ステップS113:YES)、ステップS115の処理を行う。一方、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジではないと判定された場合は(ステップS113:NO)、カートリッジ内に残っている液体の滅菌剤の残量の全てを吸い取り、その全ての滅菌剤を分解処理して、滅菌装置100の外に放出する、滅菌剤の排出処理(ステップS114)を行い、その後、ステップS115の処理を行う。ステップS114の滅菌剤の排出処理の詳細は、図9を用いて、後で説明する。
【0124】
ステップS114は、カートリッジの中の過酸化水素水溶液を廃棄する廃棄手段の適用例である。すなわち、廃棄手段は、カートリッジの中の全ての過酸化水素溶液を、触媒を利用して、分解することにより廃棄する。
【0125】
ステップS101で読み取られたデータが、ステップS104、ステップS105、ステップS106で、所定の条件を満たすと判定された場合は、廃棄手段により、カートリッジ205の中の前記滅菌剤を廃棄する。
【0126】
すなわち、ここで、所定の条件とは、1回の滅菌処理で用いられる前記滅菌剤の量が前記カートリッジ内に残っているかの条件、カートリッジの製造日から所定時間経過しているかの条件、カートリッジの初回使用日から所定時間経過しているかの条件を含む条件である。
【0127】
ステップS114の処理を行うと、滅菌装置100内のメモリ(記憶部)に、既に滅菌剤の排出処理(廃棄処理)済みのカートリッジを識別するシリアル番号として、ステップS101で読み取ったシリアル番号を記憶する。
【0128】
滅菌装置100は、ステップ115において、カートリッジ取付用扉101を開錠する。
【0129】
ステップS115は、ロック手段によるロックを解除する解除手段の適用例である。
【0130】
例えば、カートリッジに挿入されている注射針をカートリッジから抜くことで、ロックを解除することができる。
【0131】
このように、ロックを解除する前に、カートリッジ205内の全ての滅菌剤を吸い出して廃棄する処理(S114)を行うため、ユーザに滅菌剤を触れさせないようにすることができ、安全性が向上する。
【0132】
また、滅菌装置100は、ステップS102において、ステップS101でRF-IDからデータが読み取れなかったと判定された場合は(ステップS102:NO)、滅菌装置100内のカートリッジの取り付け場所にカートリッジが設置されていないと判断し、図11に示すカートリッジ取付要求画面1101を表示する(ステップS116)。
図11の説明>
【0133】
図11は、滅菌装置100の表示部102に表示されるカートリッジ取付要求画面1101の一例を示す図である。
【0134】
カートリッジ取付要求画面1101には、「OK」ボタン1102が表示されている。
【0135】
そして、滅菌装置100は、カートリッジ取付要求画面1101の「OK」ボタン1102がユーザにより押下されたかを判定し(ステップS117)、「OK」ボタン1102が押下された場合は(YES)、カートリッジ取付用扉101を開錠し(ステップS118)、処理をステップS101に戻す。一方、「OK」ボタン1102が押下されていない場合は(NO)、カートリッジ取付要求画面1101を表示し続ける。
【0136】
カートリッジ取付用扉101の開錠、及び施錠は、ロック動作制御部202による動作により行われる。

図5の説明>
【0137】
次に、図5を用いて、図4のS111に示す滅菌処理の詳細処理の一例について説明する。
【0138】
図5は、図4のS111に示す滅菌処理の詳細処理の一例を示す図である。
【0139】
図5に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
【0140】
すなわち、滅菌装置100の演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することにより、各装置の動作を制御して、図に示す各工程(処理)を実行する。
【0141】
図5に示すステップS501に示す工程を開始する際は、滅菌装置100の全ての弁(弁(V1)211、弁(V2)215、弁(V3)212、弁(V4)213、弁(V9)227、弁(V7)226)は、閉じている状態である。
【0142】
まず、滅菌装置100は、ステップS501において、気送真空ポンプ220を動作し、滅菌室219の気体を吸引し、滅菌室219内の気圧が所定の気圧(例えば、45パスカル)になるまで減圧する滅菌前工程の処理を行う。滅菌前工程の処理の詳細な処理は、図6を用いて後で説明する。
【0143】
そして、滅菌装置100は、ステップS502において、滅菌室219に、滅菌剤を入れて、被滅菌対象物を滅菌する滅菌工程の処理を行う。滅菌工程の処理の詳細な処理は、図7を用いて後で説明する。
【0144】
次に、滅菌装置100は、ステップS503において、滅菌室219内、及び気化炉216内に含まれている滅菌剤を取り除くための換気工程の処理を行う。換気工程の処理の詳細な処理は、図8を用いて後で説明する。
図6の説明>
【0145】
次に、図6を用いて、図5のS501に示す滅菌前工程の詳細処理の一例について説明する。
【0146】
図6は、図5のS501に示す滅菌前工程の詳細処理の一例を示す図である。なお、図6の処理は、本発明における、被滅菌物を格納する滅菌コンテナ内を所定の圧力まで減圧する滅菌前減圧動作の一例である。
【0147】
図6に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
【0148】
すなわち、滅菌装置100の演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することにより、各装置の動作を制御して、図に示す各工程(処理)を実行する。
【0149】
まず、滅菌装置100は、気送真空ポンプ220を動作し、滅菌室219の気体を吸引する処理を開始する(ステップS601)。
【0150】
そして、滅菌装置100は、ステップS602において、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(例えば、45パスカル)まで減圧されているかを判定する。具体的には、滅菌室219内に備えられた圧力センサにより測定されている滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(例えば、45パスカル)まで減圧されているかを判定する。
【0151】
ステップS602において、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(例えば、45パスカル)まで減圧されていないと判定された場合は(NO)、ステップS603に進み、減圧開始から3分経過するまで、気送真空ポンプ220を引き続き動作させ、滅菌室219の気体を吸引し、滅菌室219内の圧力(気圧)を減圧する。
【0152】
一方、ステップS602において、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(例えば、45パスカル)まで減圧されていると判定された場合は(YES)、気送真空ポンプ220を引き続き動作させ、滅菌室219の気体を吸引し、ステップS502の処理を開始する。
【0153】
ステップS603において、滅菌装置100は、減圧開始から3分が経過したかを判定する。減圧開始から3分経過していれば、ステップS604へ進み、減圧開始から3分経過していなければ、減圧開始から3分経過するまで、気送真空ポンプ220を引き続き動作させ、滅菌室219の気体を吸引し、滅菌室219内の圧力(気圧)を減圧する。
【0154】
ステップS604において、滅菌装置100は、ステップS602で基準としていた所定の圧力を変更する。具体的には、滅菌室219内に備えられた圧力センサにより測定されている滅菌室219内の圧力(気圧)が、例えば、50パスカルまで減圧されているかを判定するように判定基準を緩くする。
【0155】
ステップS605において、滅菌装置100は、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(本実施例では、50パスカル)まで減圧されているかを判定する。具体的には、滅菌室219内に備えられた圧力センサにより測定されている滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(本実施例では、50パスカル)まで減圧されているかを判定する。
【0156】
ステップS605において、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(本実施例では、50パスカル)まで減圧されていないと判定された場合は(NO)、ステップS606に進み、減圧開始から15分経過するまで、気送真空ポンプ220を引き続き動作させ、滅菌室219の気体を吸引し、滅菌室219内の圧力(気圧)を減圧する。
【0157】
一方、ステップS605において、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(本実施例では、50パスカル)まで減圧されていると判定された場合は(YES)、気送真空ポンプ220を引き続き動作させ、滅菌室219の気体を吸引し、ステップS502の処理を開始する。
【0158】
ステップS606において、滅菌装置100は、減圧開始から15分が経過したかを判定する。減圧開始から15分経過していれば、ステップS607へ進み、減圧開始から15分経過していなければ、減圧開始から15分経過するまで、気送真空ポンプ220を引き続き動作させ、滅菌室219の気体を吸引し、滅菌室219内の圧力(気圧)を減圧する。
【0159】
ステップS607において、滅菌装置100は、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(本実施例では、50パスカル)まで減圧されているかを判定する。具体的には、滅菌室219内に備えられた圧力センサにより測定されている滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(本実施例では、50パスカル)まで減圧されているかを判定する。
【0160】
ステップS607において、菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧まで減圧されないために、ステップS502の処理に進めない旨のエラーを表示し本処理を終了する。
なお、滅菌前工程におけるすてぷS602およびステップS605の判定の基準となる所定の気圧(45パスカルや50パスカル)は、滅菌装置100ごとに予め決まっており、ユーザが任意に設定することは出来ない。
図7の説明>
【0161】
次に、図7を用いて、図5のS502に示す滅菌工程の詳細処理の一例について説明する。
【0162】
図7は、図5のS502に示す滅菌工程の詳細処理の一例を示す図である。
【0163】
図7に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
【0164】
すなわち、滅菌装置100の演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することにより、各装置の動作を制御して、図に示す各工程(処理)を実行する。
【0165】
まず、滅菌装置100は、弁(V5)217を開けて、滅菌室219と気化炉216との間の導管を導通させる(ステップS701)。これにより、現在、気送真空ポンプ220により滅菌室219の気体を吸引し減圧しているため、滅菌室219内、及び気化炉216内の減圧を開始する(ステップS702)。
【0166】
そして、滅菌装置100は、ステップS110で、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304と、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305のどちらが押下されたのかを判定する(ステップS703)。「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304が押下されたと判定された場合は(YES)、ステップS704の処理を行い、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305が押下されたと判定された場合は(NO)、ステップS728の処理を行う。
【0167】
ここでは、まず、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304が押下された場合(滅菌剤を濃縮して滅菌処理する場合)について、説明する。
【0168】
滅菌装置100は、ステップS704において、液送ロータリーポンプ207を動作し、カートリッジ205内の滅菌剤を、所定量(例えば、2ミリリットル)吸い取る。そして、吸い取られた所定量の滅菌剤を、濃縮炉208に入れる。ここで吸い取る所定量の滅菌剤は、例えば、滅菌室219内の空間を滅菌剤で飽和状態にさせることができる量である。
【0169】
そして、滅菌装置100は、ステップS705において、カートリッジの取り付け場所に取り付けられているカートリッジ205のRF-IDに、カートリッジ205内に残っている滅菌剤の残量を書き込む。具体的には、ステップS101で読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS704でカートリッジ205から吸い取った所定量(例えば、2ミリリットル)を引いた値をRF-IDに記憶する。
【0170】
すなわち、ステップS101で読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS704でカートリッジ205から滅菌剤を吸い取った量の累計を引いた値を、ステップS705ではRF-IDに記憶する。
【0171】
また、滅菌装置100は、ステップS101でRF-IDから読み取られた初回使用日時(カートリッジが滅菌装置で初めて使用された日時)に、日時を示す情報が含まれていない場合は、今回、カートリッジが滅菌装置で初めて使用されたと判定する。すなわち、滅菌装置100は、ステップS101でRF-IDから初回使用日時を読み取ることが出来なかった場合には、今回、カートリッジが滅菌装置で初めて使用されたと判定する。
このようにカートリッジが滅菌装置で初めて使用されたと判定された場合のみ、現在の日時情報もRF-IDに書き込む。
【0172】
次に、滅菌装置100は、滅菌装置100に電源が入っているときは、常に、濃縮炉208に備え付けられたヒータを加熱するため、ステップS704で濃縮炉208に入れられた滅菌剤は、そのヒータの熱により、加熱され、濃縮炉208内の滅菌剤に含まれる水分を蒸発させる(ステップS706)。
【0173】
滅菌装置100に電源が入っているときに、常に、濃縮炉208に備え付けられたヒータを加熱する理由としては、例えば、手術室で、いつでも直ぐに滅菌装置を使用することができるようにするためである。このように、濃縮炉のヒータを加熱するためにかかる時間を無くすことで、いつでも直ぐに滅菌装置を使用することが出来るようになる。
【0174】
すなわち、滅菌剤が過酸化水素水(過酸化水素水溶液とも言う)である場合、濃縮炉208に備え付けられたヒータを、ここでは、具体的には、例えば、80度で温める。これにより、主に水分を蒸発(気化)させることができ、滅菌剤を濃縮させることが可能となる。
【0175】
次に、滅菌装置100は、ステップS707において、ステップS704で濃縮炉208に滅菌剤を入れてから所定の時間(例えば、6分)が経過したかを判定する。そして、濃縮炉208に滅菌剤を入れてから所定の時間が経過したと判定されると(YES)、ステップS708の処理を行う。一方、濃縮炉208に滅菌剤を入れてから所定の時間が経過していない場合は(NO)、引き続き、濃縮炉208に滅菌剤を入れたままにしておき、引き続き滅菌剤を濃縮する。
【0176】
次に、滅菌装置100は、ステップS708において、滅菌室219内、及び気化炉216内の気圧が、所定の気圧(例えば、500パスカル)まで減圧されたかを判定する。
【0177】
そして、滅菌装置100は、滅菌室219内、及び気化炉216内の気圧が、所定の気圧まで減圧された場合は(YES)、ステップS709において、弁(V3)212と、弁(V4)213とを所定時間開ける(弁(V3)212と、弁(V4)213とを所定時間(例えば、3秒)開けて弁(V3)212と、弁(V4)213を閉じる)ことで、計量管214内を減圧する。一方、滅菌室219内、及び気化炉216内の気圧が、所定の気圧まで減圧されていない場合は(NO)、引き続き滅菌剤の濃縮を行う。
【0178】
そして、次に、滅菌装置100は、ステップS710において、ステップS709で、弁(V3)212と弁(V4)213とを所定時間開けて弁(V3)212と弁(V4)213を閉じた後に、弁(V1)を所定時間(例えば、3秒)開けると、濃縮炉208(外部)の気圧よりも計量管214内の気圧の方が低いので濃縮炉208に入っている滅菌剤が計量管214に吸い込まれて入る(ステップS710)。ここでは、弁(V1)を所定時間開けて閉じることで、濃縮炉208に入っている滅菌剤が計量管214に吸い込まれて入る。ここでは、滅菌剤だけではなく、濃縮炉208内の空気も一緒に計量管214内に吸い込まれてくる。
【0179】
そして、この後も、引き続き、気送真空ポンプ220により、滅菌室219内が減圧されている。
【0180】
そのため、滅菌室219内の気圧は、計量管内の気圧よりも低くなる。具体的には、滅菌室219内の気圧は、400Pa位であり、計量管内の気圧は大気圧(101325Pa)位の値である。計量管内の気圧は大気圧近くまで上がる理由は、滅菌剤だけではなく、濃縮炉208内の空気も一緒に計量管214内に吸い込まれてくるためである。
【0181】
次に、滅菌装置100は、ステップS711において、弁(V3)212と、弁(V4)213とを所定時間(例えば、3秒)開けて、計量管内の空気(液体の滅菌剤は含まない)を滅菌室219に吸い出される。すなわち、ここでは、弁(V3)212と弁(V4)213とを開けて該所定時間が経過すると、弁(V3)212と弁(V4)213とを閉じる。
【0182】
次に、滅菌装置100は、滅菌室219内、及び気化炉216内の気圧が所定の気圧(例えば、80Pa)まで減圧されているかを判定し、減圧されていると判定された場合に(ステップS712)、弁(V5)217を閉める(ステップS713)。
【0183】
そして、滅菌装置100は、弁(V2)215を開ける(ステップS714)。これにより、計量管214内の滅菌剤は、気化炉216に吸い込まれ、気化炉216内で気化する。
【0184】
ここで、滅菌剤は、分子クラスターとして気化炉内で気化する。
【0185】
滅菌室内は、気化炉よりも大きい容積であり、気化炉内では、滅菌剤は、分子クラスターとして気化される。これは、気化炉の容積が滅菌室内より小さいため、滅菌室内の滅菌剤の分子間の距離が近く分子間力により、分子クラスターを形成しやすいためである。
【0186】
このときも引き続き、気送真空ポンプ220は、滅菌室219内の気体を吸引し、滅菌室219内を減圧している。計量管214内の滅菌剤が吸い込まれた気化炉216内は、気圧が上昇する。
【0187】
すなわち、気化炉216内の気圧は、滅菌室219内の気圧よりも高くなる。
【0188】
次に、滅菌装置100は、滅菌室219内の気圧が、所定の気圧(例えば、50Pa)まで減圧され、かつ、ステップS714で弁(V2)215を開けてから所定時間が経過したかを判定し(ステップS715)、滅菌室219内の気圧が、所定の気圧(例えば、50Pa)まで減圧され、かつ、ステップS714で弁(V2)215を開けてから所定時間が経過した場合は(YES)、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を停止して(ステップS716)、弁(V5)217を開ける(ステップS717)。これにより、滅菌室219内に気化した滅菌剤が拡散し、被滅菌対象物を滅菌することができる。
【0189】
これは、気化炉216内の気圧よりも、滅菌室219内の気圧(例えば、50Pa)の方が、低いため拡散する。
【0190】
ここで拡散する滅菌剤は、気化炉内の分子クラスターが更に細分化され、より滅菌剤を滅菌室内に拡散させることができ、滅菌作用を高めることが可能となる。
【0191】
また、被滅菌対象物などの細かい内腔などを効果的に滅菌することが出来るようになる。
【0192】
そして、ステップS717で弁(V5)217を開けてから、所定時間(例えば、330秒)が経過したかを判定し、弁(V5)217を開けてから、所定時間(例えば、330秒)が経過したと判定されると(ステップS718:YES)、弁(V9)227を開ける(ステップS719)。
【0193】
これにより、滅菌装置100の外の気圧よりも気化炉216内、及び滅菌室219内の気圧の方が低いため、吸気用HEPAフィルタで清浄された、滅菌装置100の外の外気(空気)が、気化炉216内に吸い込まれる。そして、気化炉216内に送り込まれた空気により、気化炉216内に気体として充満している滅菌剤、及び、気化炉216の内部の表面に付着した滅菌剤が、滅菌室219内に送り込まれ、滅菌室219内にある被滅菌対象物に対する滅菌作用が高まる。すなわち、例えば、これにより、被滅菌対象の細いチューブなどの奥などの滅菌し難い部分についての滅菌作用が高まる。
【0194】
そして、滅菌装置100は、ステップS719で、弁(V9)227を開けてから所定の時間(15秒)が経過すると、弁(V7)226を開けて、更に、吸気用HEPAフィルタ210で清浄された、滅菌装置100の外の外気(空気)が、滅菌室219内に吸い込まれる。これは、滅菌装置100の外の気圧よりも滅菌室219内、気化炉216内の気圧の方が低いため、滅菌装置100の外の外気(空気)が、滅菌室219内に吸い込まれる。
【0195】
これにより、被滅菌対象の細いチューブなどの奥などの滅菌し難い部分(特に内腔部分)についての滅菌作用が高まる。
【0196】
次に、滅菌装置100は、滅菌室219内、及び気化炉216内が大気圧まで上昇したかを判定し、大気圧まで上昇したと判定した場合に(ステップS721:YES)、弁(V2)215を閉める(ステップS722)。
【0197】
次に、滅菌装置100は、弁(V7)226を閉め(ステップS723)、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を再開する(ステップS724)。これにより、吸気用HEPAフィルタ210で清浄された、滅菌装置100の外の外気(空気)が、吸気用HEPAフィルタ210と気化炉216とが導通している導管を通じて、気化炉216内に吸い込まれる。そして、気化炉216内に送り込まれた空気により、気化炉216内に気体として充満している滅菌剤、及び、気化炉216の内部の表面に付着した滅菌剤が、更に、滅菌室219内に送り込まれる。
【0198】
これにより、被滅菌対象の細いチューブなどの奥などの滅菌し難い部分(特に内腔部分)についての滅菌作用が高まると共に、気化炉216内の滅菌剤を効果的に減少させることが可能となる。
【0199】
そして、滅菌装置100は、ステップS724で、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を再開してから、所定時間(例えば、15秒)後に、弁(V9)227を閉める(ステップS725)。
【0200】
このときも引き続き、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を行っており、ステップS725により、滅菌室219内、及び気化炉216内が密閉され、滅菌室219内、及び気化炉216内を減圧することとなる(ステップS726)。
【0201】
次に滅菌装置100は、所定回数(例えば、4回)、ステップS702からステップS726の処理を実行したかを判定し(ステップS727)、実行したと判定された場合は(YES)、ステップS503の処理を行う。一方、ステップS702からステップS726の処理を、所定回数実行していないと判定された場合は、ステップS702以降の処理を再度行う。このように、所定回数、ステップS702からステップS726の処理を実行することで、被滅菌対象物に対する滅菌作用の効果が高まり、被滅菌対象物を十分に滅菌することが可能となる。
【0202】
次に、ステップS703で、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305が押下されたと判定された場合(滅菌剤を濃縮しないで滅菌処理する場合)について、説明する。
【0203】
滅菌装置100は、ステップS703で、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305が押下されたと判定された場合(NO)、滅菌室219内と気化炉216内の気圧が所定の気圧(例えば、1000Pa)にまで減圧されたかを判定する(ステップS728)。
【0204】
そして、滅菌装置100は、滅菌室219内と気化炉216内の気圧が所定の気圧(例えば、100Pa)にまで減圧されたと判定された場合に(ステップS728:YES)、液送ロータリーポンプ207を動作し、カートリッジ205内の滅菌剤を、所定量(例えば、2ミリリットル)吸い取る。そして、吸い取られた所定量の滅菌剤を、濃縮炉208に入れる(ステップS729)。
【0205】
ここで吸い取る所定量の滅菌剤は、例えば、滅菌室219内の空間を滅菌剤で飽和状態にさせることができる量である。
【0206】
次に、滅菌装置100は、ステップS730において、カートリッジの取り付け場所に取り付けられているカートリッジ205のRF-IDに、カートリッジ205内に残っている滅菌剤の残量を書き込む。具体的には、ステップS101で読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS729でカートリッジ205から吸い取った所定量(例えば、2ミリリットル)を引いた値をRF-IDに記憶する。
【0207】
また、カートリッジ205から滅菌剤を吸い取った1回あたりの所定量が例えば2ミリリットルの場合であり、ステップS727で所定回数実行していない(NO)と判定され、ステップS702以降の処理を行うことが例えば2回目の場合において、ステップS729でカートリッジ205から滅菌剤を吸い取った量の累計は、(2ミリリットル(所定量)×2回目=)4ミリリットルであるため、ステップS101で読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS729でカートリッジ205から滅菌剤を吸い取った量の累計である4ミリリットルを引いた値を、ステップS730ではRF-IDに記憶する。
すなわち、ステップS101で読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS729でカートリッジ205から滅菌剤を吸い取った量の累計を引いた値を、ステップS730ではRF-IDに記憶する。
【0208】
また、滅菌装置100は、ステップS730において、ステップS101でRF-IDから読み取られた初回使用日時(カートリッジが滅菌装置で初めて使用された日時)に、日時を示す情報が含まれていない場合は、今回、カートリッジが滅菌装置で初めて使用されたと判定する。すなわち、滅菌装置100は、ステップS101でRF-IDから初回使用日時を読み取ることが出来なかった場合には、今回、カートリッジが滅菌装置で初めて使用されたと判定する。
【0209】
このようにカートリッジが滅菌装置で初めて使用されたと判定された場合のみ、現在の日時情報もRF-IDに書き込む。
【0210】
そして、滅菌装置100は、ステップS730の処理を行うと、既に説明したステップS709以降の処理を行う。
【0211】
ステップS728では、滅菌室219内が所定の気圧(例えば、1000Pa)になったら、ステップS729で滅菌剤を吸い始め、ステップS729で滅菌剤を吸い終わる頃には500Paを下回るため、効率的にS709へ移行することができる。
【0212】
このように、滅菌室219内、及び気化炉216内の気圧が、計量管214内の減圧を開始する所定の気圧(例えば、1000パスカル)まで減圧された後に、吸い取られた所定量の滅菌剤を濃縮炉208に入れ、直ぐにステップS709で計量管214内を減圧することができ、その後、ステップS710で濃縮炉208内の滅菌剤を計量管に入れるので、濃縮炉208から、計量管214に直ぐに滅菌剤を入れることが可能となる。すなわち、滅菌剤が濃縮炉208でほぼ濃縮されることなく、計量管214に入れることが可能となる。
図8の説明>
【0213】
次に、図8を用いて、図5のS503に示す換気工程の詳細処理の一例について説明する。
【0214】
図8は、図5のS503に示す換気工程の詳細処理の一例を示す図である。
【0215】
図8に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
【0216】
すなわち、滅菌装置100の演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することにより、各装置の動作を制御して、図に示す各工程(処理)を実行する。
【0217】
まず、滅菌装置100は、弁V(7)226を開ける(ステップS801)。
【0218】
そして、滅菌装置100は、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を引き続き行う(ステップS802)。
【0219】
ステップS801で弁V(7)226を開けてから、ステップS802で気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を行い、所定時間が経過すると(ステップS803:YES)、弁V(7)226を閉めて(ステップS804)、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を引き続き行う。これにより、滅菌室219内が減圧される。
【0220】
次に、滅菌装置100は、滅菌室219内が所定の気圧(50Pa)まで減圧されると(ステップS806:YES)、弁V(7)226を開ける(ステップS807)。これにより、吸気用HEPAフィルタ210で清浄された、滅菌装置100の外の外気(空気)が、滅菌室219内に吸い込まれる。これは、滅菌装置100の外の気圧よりも滅菌室219内の気圧の方が低いため、滅菌装置100の外の外気(空気)が、滅菌室219内に吸い込まれる。
【0221】
そして、滅菌装置100は、滅菌室219内の気圧が、大気圧まで上昇したかを判定し、滅菌室219内の気圧が、大気圧まで上昇したと判定された場合(ステップS808:YES)、ステップS804からステップS808の処理を所定回数(例えば、4回)行ったかを判定し(ステップS809)、ステップS804からステップS808の処理を所定回数(例えば、4回)行った場合は(YES)、弁V(7)226を閉めて(ステップS810)、換気工程を終了する。
【0222】
一方、ステップS804からステップS808の処理を所定回数(例えば、4回)行っていない場合は(NO)、再度、ステップS804の処理から行う。
【0223】
これにより、滅菌室219内の表面に付着している滅菌剤、及び、滅菌室219内に気体として残っている滅菌剤を気送真空ポンプ220により吸引される。ここで吸引された気体(滅菌剤を含む)は、排気用HEPAフィルタ221を通り、滅菌剤分解装置222で滅菌剤は分解され、分解後の分子が外部に放出される。
図9の説明>
【0224】
次に、図9を用いて、図4のS114に示す滅菌排出処理の詳細処理の一例について説明する。
【0225】
図9は、図4のS114に示す滅菌排出処理の詳細処理の一例を示す図である。
【0226】
図9に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
すなわち、滅菌装置100の演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することにより、各装置の動作を制御して、図に示す各工程(処理)を実行する。
【0227】
まず、滅菌装置100は、液送ロータリーポンプ223により、カートリッジ205内の全ての液体の滅菌剤をポンプにより吸引して、液センサ204と液送ロータリーポンプ223との間の導管を通して送られるその全ての滅菌剤を、液送ロータリーポンプ223と排気蒸発炉224との間の導管を通して、排気蒸発炉224内に送る(ステップS901)。
【0228】
そして、滅菌装置100は、排気蒸発炉224により、液送ロータリーポンプ223と排気蒸発炉224との間の導管を通して送られる全ての液体の滅菌剤(排気蒸発炉224内に溜められた滅菌剤)を、排気蒸発炉224に備え付けられたヒータにより加熱し、その滅菌剤の全てを気化させる。そして、気化された滅菌剤は、排気用HEPAフィルタ221と排気蒸発炉224との間の導管を通して、排気用HEPAフィルタ221に送られる(ステップS902)。
【0229】
ここで、排気蒸発炉224に備え付けられたヒータは、例えば、滅菌剤(過酸化水素)の沸点(過酸化水素の沸点は141度)よりも高い温度に加熱されている。そのため、排気蒸発炉224により、滅菌剤は全て気化されることとなる。
【0230】
そして、滅菌装置100は、排気用HEPAフィルタ221により、排気蒸発炉224と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通り送られてくる気化された滅菌剤を清浄し、清浄された気体(滅菌剤を含む)は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通り、滅菌剤分解装置222に送られる。
【0231】
そして、滅菌剤分解装置222は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管から送られてくる気体に含まれる滅菌剤の分子を分解して、分解して生成される分子を滅菌装置100の外に放出する(ステップS903)。
図10の説明>
【0232】
次に、図10を用いて、本発明に係る滅菌装置100の濃縮炉208、弁(V1)211、弁(V3)212、弁(V4)213、計量管214、弁(V2)215、気化炉216、弁(V5)217、弁(V9)227のハードウエア構成に係るブロック構成について説明する。
【0233】
図10は、本発明に係る滅菌装置100の濃縮炉208、弁(V1)211、弁(V3)212、弁(V4)213、計量管214、弁(V2)215、気化炉216、弁(V5)217、弁(V9)227のハードウエア構成に係るブロック構成図の一例を示す図である。
【0234】
図10に示す各ハードウエアは、図2に示す各ハードウエアと同一のハードウエアについては、同一の符号を付している。
【0235】
ステップS704、ステップS729で、液送ロータリーポンプ207を動作し、カートリッジ205内の滅菌剤を、所定量(例えば、2ミリリットル)吸い取り、吸い取られた所定量の滅菌剤を、濃縮炉208に入れる。
【0236】
ステップS706では、濃縮炉208は、図10に示すように、濃縮炉208の下部にヒータが設けられており、このヒータの熱により、滅菌剤が加熱される。滅菌剤が過酸化水素水溶液の場合、このヒータの熱により、水が気化される。そして、気化した水は、気送加圧ポンプ209から導管を通して送り込まれる空気により、排気用HEPAフィルタ221に導通している導管に押し出され、濃縮炉208内から排気される。これにより、滅菌剤(過酸化水素水溶液)が濃縮される。
【0237】
図7で説明した通り、ステップS710で、濃縮炉208内の滅菌剤は、計量管214内に入る。
【0238】
この計量管214は、図10に示すように、直管部1001と枝管部1002とから構成されている。
【0239】
直管部1001は、直線の管状の部分である。直管部1001の管は、重力方向に配置されている。
【0240】
また、枝管部1002は、直管部1001の中間部又は上部から、枝状に延びた管状の部分である。
【0241】
直管部1001は、直管部の軸心と、枝管部1002の軸心とが垂直になる様に据え付けられる。
【0242】
このような構成にしているため、濃縮炉208から入ってきた滅菌剤は、計量管214内の直管部1001に溜まるように構成されている。直管部1001に滅菌剤が溜まる部分を滅菌剤溜まり部1003と言う。
【0243】
すなわち、滅菌剤溜まり部1003は、濃縮炉208から入ってくる滅菌剤が入るために十分な空間を有する。
【0244】
そのため、濃縮炉208から入ってきた滅菌剤は、滅菌剤溜まり部1003に溜まり、滅菌剤と共に濃縮炉208から入ってきた空気は、滅菌剤溜まり部1003に溜まっている滅菌剤の空間以外の空間に、充満することとなる。すなわち、その滅菌剤の空間以外の空間は、枝管部1002内の空間でもり、枝管部1002内の空間と通じた空間であるため、ステップS711で弁(V3)212と弁(V4)213とを開けることで、滅菌室219内にその空気が吸い取られる。
【0245】
そして、ステップS714で弁(V2)を開けることで、滅菌剤溜まり部1003に溜まっていた滅菌剤が、気化炉216に吸い込まれて、気化する。図10に示すように、気化炉216の上部から液体の滅菌剤が気化炉216に入ることで、滅菌剤が気化しやすい。
【0246】
また、吸気用HEPAフィルタ210と気化炉216との間の導管は、図10に示すように、気化炉216の上部に備え付けられている。そのため、ステップS719で弁(V9)を開けると、空気(外気)が気化炉216の上部から、気化炉216の下部にある滅菌室219に抜けるため、気化炉216の内部に付着している滅菌剤、及び気化炉216内の気化した滅菌剤を広範囲に取り除きやすくなり、その取り除いた滅菌剤をより多く滅菌室219に流すことが可能となる。
図12の説明>
図13の説明>
【0247】
次に、図12図13を用いて、カートリッジ205、及びカートリッジ205に抽出針が挿入された様子について説明する。
【0248】
図12は、本発明に係る、滅菌装置に用いられる滅菌剤のカートリッジ205を横側から見た図である。
【0249】
図12に示すカートリッジは、1つのボトルに滅菌処理を複数回行える量の滅菌剤が入ったカートリッジである。
【0250】
図12に示すカートリッジには、滅菌剤として用いられる過酸化水素などの薬液が格納される。
【0251】
図12に示すように、カートリッジは、第1の容器と、その第1の容器の蓋とから構成されている。
【0252】
第1の容器の外観は、コップの形状をしている。また、この第1の容器の材質(材料)は、滅菌剤である過酸化水素に対して耐性のあるポリプロピレン(プラスチック)である。この第1の容器は、後述する第2の容器を保護するためにも設けられている。
【0253】
蓋は、第1の容器の上側に第1の容器を閉じるため蓋である。すなわち、蓋は、第1の容器の外周の淵と接着している。また、この蓋の材質は、滅菌剤である過酸化水素に対して耐性のあるポリプロピレン(プラスチック)である。
【0254】
カートリッジの上側から見て、カートリッジの中心点でのカートリッジの断面を断面1とする。
【0255】
次に、図13を用いて、本発明に係るカートリッジの内部にカートリッジ内の滅菌剤を吸引するための抽出針(注射針)を挿入した際の構造について説明する。
【0256】
図13は、本発明に係るカートリッジの断面1の断面図である。
【0257】
滅菌装置100が、抽出針(注射針)をカートリッジに向けて、該カートリッジの上部から降ろすように動作することで、蓋の穴、キャップの穴に抽出針(注射針)が挿入される。
【0258】
このとき、滅菌装置100は、注射針が蓋の穴、キャップの穴を貫通し、第2の容器409に下部に注射針の先端が来るように動作する。
【0259】
図13に示すように、ステップS103では、注射針をカートリッジに挿入することで、カートリッジ内の滅菌剤を抽出することが可能となると共に、カートリッジを取り出すことが出来ないようにすることができる。
【0260】
図15の説明>
【0261】
図15は、本発明の第1の実施例における滅菌物減圧特性確認処理の前後の処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0262】
図15に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
【0263】
すなわち、滅菌装置100の演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することにより、各装置の動作を制御して、図に示す各工程(処理)を実行する。
【0264】
なお、図15の処理を実行する前に、ユーザが滅菌室の扉104を開け、滅菌室219内に滅菌物減圧特性確認を行いたい機材、もしくは、滅菌物減圧特性確認後に滅菌を行いたい機材を設置し、滅菌室の扉104を閉じた状態であるものとする。
【0265】
ステップS1501において、滅菌装置100は、ユーザにより滅菌物減圧特性確認を開始するためのボタン(1405)が押下されたか否かを判定する。ユーザにより滅菌物減圧特性確認を開始するためのボタン(1405)が押下された場合には、ステップS1519に進む。
【0266】
ステップS1502において、滅菌装置100は、すべての弁を閉じ、気送真空ポンプ220を作動させ、滅菌室の減圧を開始し、経過時間のカウント始める。ステップS1502は、本発明における、滅菌コンテナ内を減圧する減圧手段の一例である。経過時間のカウントは、滅菌コンテナ内が所定の圧力に減圧されるまで行う(本発明における計測手段)。
【0267】
ステップS1503において、滅菌装置100は、滅菌室の圧力と経過時間とを、表示部102に表示する。なお、滅菌室の圧力と経過時間は常に表示部102に表示される。また、滅菌装置100は、真空ゲージ(ブロック図には不図示)より出力される圧力値をモニターしつづける。
【0268】
ステップS1504において、滅菌装置100は、所定の圧力(今回は滅菌サイクルでの減圧値と同じ50Paとしているが、所定の圧力は、滅菌前工程の所定の圧力と同じもしくは、ステップS1504の所定の圧力のほうが高い。)まで減圧されたか否かを判断する。所定の圧力まで減圧されていればステップS1504にすすみ、所定の圧力まで減圧されていない場合は、所定の圧力に減圧されるまで、減圧を繰り返す。ステップS1504における所定の圧力とは、テスト減圧条件で前記滅菌コンテナ内を減圧する圧力のことである。
【0269】
ステップS1505において、滅菌装置100は、所定の圧力まで減圧されるまでに経過した時間により滅菌物減圧特性の判定処理を行う。ステップS1505の処理の詳細は、図16を用いて説明する。
図16の説明>
【0270】
図16は、滅菌物減圧特性確認処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0271】
図16に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
【0272】
すなわち、滅菌装置100の演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することにより、各装置の動作を制御して、図に示す各工程(処理)を実行する。
【0273】
なお、本実施例では、判定Aを最も良い判定結果とし、判定Eを最も悪い判定結果とする。
【0274】
より具体的な例としては、判定Aおよび判定Bは滅菌処理物の量が少ないため、このまま滅菌開始しても良いし、滅菌処理物の追加も可能とする判定である。判定Cは滅菌処理物の量が十分であるため、これ以上の滅菌処理物の増加は好ましくなく、このまま滅菌開始することが良いとする判定である。判定Dは滅菌処理物の量が多いため、滅菌処理物の量を減らした上で滅菌開始したほうが好ましい判定である。判定Eは滅菌処理物が過多であり、滅菌処理物の量を相当量減らした上で滅菌開始する必要がある判定である。判定Eの状態のまま滅菌開始した場合、所定の滅菌処理時間に完了しない、もしくは、エラーとなる可能性が高い。
【0275】
ステップS1601において、滅菌装置100は、ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が3分00秒以内か否かを判断する。
【0276】
ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が3分00秒以内であれば、判定Aと判定し(ステップS1602)、図16の処理を終了する。ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が3分00秒よりも時間が経過している場合には、ステップS1603に進む。
【0277】
ステップS1603において、滅菌装置100は、ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が3分01秒~3分30秒以内か否かを判断する。
【0278】
ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が3分01秒~3分30秒以内であれば、判定Bと判定し(ステップS1604)、図16の処理を終了する。ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が3分30秒よりも時間が経過している場合には、ステップS1605に進む。
【0279】
ステップS1605において、滅菌装置100は、ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が3分31秒~4分00秒以内か否かを判断する。
ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が3分31秒~4分00秒以内であれば、判定Cと判定し(ステップS1606)、図16の処理を終了する。ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が4分00秒よりも時間が経過している場合には、ステップS1607に進む。
【0280】
ステップS1607において、滅菌装置100は、ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が4分01秒~5分00秒以内か否かを判断する。
ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が4分01秒~5分00秒以内であれば、判定Dと判定し(ステップS1608)、図16の処理を終了する。ステップS1504で、所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が5分00秒よりも時間が経過している場合には、判定Eと判定し、(ステップS1609)、図16の処理を終了する。
【0281】
以上で、図16の処理の説明を終了する。
【0282】
図15の説明に戻る。
【0283】
ステップS1506において、滅菌装置100は、ステップS1505で行った滅菌物減圧特性の判定処理の結果を表示部102の1408(図14)に表示する。
【0284】
ステップS1507において、滅菌装置100は、図15の処理を実行する際にユーザが滅菌室内に投入した機材を滅菌するのに要すると予測される時間(予測滅菌処理時間)を、表示部102の1410(図14)に表示する。
【0285】
ステップS1508において、滅菌装置100は、ステップS1505で行った滅菌物減圧特性の判定結果に応じたメッセージ(アドバイス)を表示部102の1411(図14)に表示する。例えば、判定結果が、Eの場合(所定の圧力まで減圧されたと判定されるまでに経過した時間が5分00秒よりも時間が経過している場合)に、「滅菌処理物が多すぎます。滅菌処理物を減らしてください。」というメッセージを表示する(本発明における、計測手段によって計測された時間が所定の時間以上である場合に、前記滅菌コンテナ内の被滅菌物が前記滅菌処理を実行するのに適していない旨のメッセージを出力する出力手段の一例)。
【0286】
ステップS1509において、滅菌装置100は、図4のS121で、滅菌の自動開始を行う設定をユーザが行ったか否かを判断する。滅菌の自動開始を行う設定をユーザが行っていれば、ステップS1512に進み、滅菌の自動開始を行う設定をユーザが行っていなけれ、ステップS1510に進む。
【0287】
ステップS1510において、滅菌装置100は、滅菌室の減圧を停止する。
【0288】
ステップS1511において、滅菌装置100は、滅菌室に大気を導入し、滅菌室内を大気圧に戻す。そして、図15の処理を終了する。
【0289】
ステップS1512において、滅菌装置100は、ステップS1505で判定した結果が、図4のS121でユーザが設定した滅菌の自動開始条件(2403)を満たす判定結果であるかを判定する。
ステップS1512は、本発明における、減圧手段により、前記記憶手段で記憶されたテスト減圧条件の圧力まで、前記閾値時間内に減圧ができたか否かを判定する判定手段の一例である。
【0290】
ステップS1505で判定した結果が、図4のS121でユーザが設定した滅菌の自動開始条件を満たす判定結果である場合には、ステップS1513へ進み、ステップS1505で判定した結果が、図4のS121でユーザが設定した滅菌の自動開始条件を満たす判定結果でない場合には、ステップS1510へ進む。つまり、そのまま滅菌処理を実行しても大きく支障をきたさないと考えられる場合に、その後の滅菌処理を行い、そのまま滅菌処理を実行すると大きく支障をきたすと考えられる場合に、その後の滅菌処理を中断する。つまり、計測手段による計測結果に従って前記滅菌処理を実行するかを決定する(本発明における、判定手段で閾値時間内に減圧できたと判定された場合に、前記滅菌前減圧動作を行うことなく滅菌処理が行われるように制御する実行制御手段の一例)。
【0291】
より具体的な例としては、図4のS121でユーザが設定した滅菌の自動開始条件が「判定C」であれば、ステップS1505で判定した結果が「判定A」、「判定B」、「判定C」の場合に、ステップS1513に進む。
【0292】
ステップS1513において、滅菌装置100は、図4のS121で、滅菌前工程を省略する設定(1404)をユーザが行ったか否かを判断する。滅菌前工程を省略する設定をユーザが行っていれば、ステップS1517に進み、滅菌前工程を省略する設定をユーザが行っていなけれ、ステップS1514に進む。つまり、滅菌前工程を省略する設定をユーザが行っていれば、滅菌前工程(手段)を行うことなく滅菌処理を実行する。
【0293】
なお、本実施例では、ユーザが滅菌前工程を省略するかを設定するとしたが、他の実施例として、ユーザから、図4のステップS121で滅菌前工程を省略するかの設定を受け付けることなく、ステップS1512でユーザが設定した滅菌の自動開始条件を満たす判定結果であると判定されると、自動で滅菌前工程を省略する(滅菌処理を実行すると決定されると、滅菌前手段を行うことなく滅菌処理を実行する)としてもよい。
【0294】
ステップS1514において、滅菌装置100は、滅菌室の減圧を停止する。
【0295】
ステップS1515において、滅菌装置100は、滅菌室に大気を導入し、滅菌室内を大気圧に戻す。
【0296】
ステップS1516において、滅菌装置100は、滅菌前工程を開始する。ステップS1516の処理の詳細は、図6の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0297】
なお、本実施例では、ユーザが滅菌前工程を省略するかを設定するとしたが、他の実施例として、ユーザから、図4のステップS121で滅菌前工程を省略するかの設定を受け付けることなく、ステップS1512でユーザが設定した滅菌の自動開始条件を満たす判定結果でないと判定されると、自動で滅菌前工程を実行する(滅菌処理を実行しないと決定されると、前記滅菌処理を実行する前に、前記滅菌コンテナ内を所定の圧力まで減圧する)としてもよい。
【0298】
ステップS1517において、滅菌装置100は、滅菌工程を開始する(本発明における、ユーザから滅菌処理の開始指示を受け付けることにより、滅菌処理を実行する実行手段の一例)。ステップS1517の処理の詳細は、図7の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0299】
このように、滅菌の自動開始を行う設定で、かつ、自動開始の判定以上の場合で、かつ、滅菌前工程を省略する設定の場合に、滅菌前工程を省略することにより、滅菌処理に要する時間が短縮され(約3分)、使用者の利便性が向上する。
【0300】
ステップS1518において、滅菌装置100は、換気工程を行い、図15の処理を終了する。ステップS1518の処理の詳細は、図8の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0301】
ステップS1519において、滅菌装置100は、滅菌室内の水分除去を行うか否かを判断する。水分除去を行う場合には、ステップS1520へ進み、水分除去を行わないのであれば、ステップS1502に進む。滅菌室内の水分除去を行うか否かは、図4のステップS121で、滅菌装置100の表示部102に表示された滅菌物減圧特性確認画面(図3の307)を介して、ユーザが設定する(図14の1413)。なお、他の実施例として、ユーザが滅菌室内の水分除去を行うか否かを設定することなく、必ず水分除去の工程を行うとしてもよい。
【0302】
ステップS1520において、滅菌装置100は、すべての弁を閉じ、気送真空ポンプ220を作動させ、滅菌室の減圧を開始し、経過時間のカウント始める。ステップS1520は、本発明における、滅菌コンテナ内の液体が気化する所定の圧力まで前記滅菌コンテナを減圧することにより、当該液体を除去する液体除去手段の一例である。
【0303】
ステップS1521において、滅菌装置100は、滅菌室の圧力と経過時間とを、表示部102に表示する。なお、滅菌室の圧力と経過時間は常に表示部102に表示される。また、滅菌装置100は、真空ゲージ(ブロック図には不図示)より出力される圧力値をモニターしつづける。
【0304】
ステップS1522において、滅菌装置100は、所定の圧力(今回は水分を除去することが可能な気圧である1000Paとしている)まで減圧されたか否かを判断する。所定の圧力まで減圧されていればステップS1504に進み、所定の圧力まで減圧されていない場合は、所定の圧力に減圧されるまで、減圧を繰り返す。
【0305】
ステップS1523において、滅菌装置100は、滅菌室に大気を導入し、滅菌室内を大気圧に戻す。この処理を行う理由は、滅菌物減圧特性の判定処理が、大気圧から所定の圧力まで減圧されるまでの経過時間に基づいて滅菌物減圧特性を判定しているためである。
【0306】
ステップS1524において、滅菌装置100は、所定時間待機する。これは、ステップS1520の処理を行った場合、それに応じて微細孔のガスも一部排出され、その後、ステップS1523で大気を導入した際に、微細孔にガスが入り込むが、その量が飽和(大気圧での安定状態)するまでに多少の時間を要するためである。
ステップS1519~ステップS1524までの処理を行うことで、滅菌室内の水分(液体)が除去される。したがって、滅菌物減圧特性判定による判定結果が良くない場合に、その要因が液体によるものではなくガスによるものであるということが分かり、その結果、よりユーザに適切なアドバイスを行うことが可能となる。
【0307】
以上で図15の処理の説明を終了する。
【0308】
次に、図18を用いて、本発明の第2の実施形態における滅菌物減圧特性確認処理の前後の処理のフローチャートについて説明する。
図18は、本発明の第2の実施形態における滅菌物減圧特性確認処理の前後の処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0309】
図15の第1の実施形態における滅菌物減圧特性確認処理の前後の処理のフローチャートでは、図4のステップS121で滅菌前工程を省略するかの設定を受け付け、滅菌前工程を省略しない指示を受け付けた場合には、ユーザが設定した滅菌の自動開始条件を満たす判定結果であってもステップS1513~ステップS1516までの処理を実行するとしたが、図18の第2の実施形態における滅菌物減圧特性確認処理の前後の処理のフローチャートでは、図4のステップS121で滅菌前工程を省略するかの設定を受け付けることなく(つまり、図15のステップS1513~ステップS1516までの処理を実行することなく)、ステップS1812でユーザが設定した滅菌の自動開始条件を満たす判定結果であると判定されると、自動で滅菌前工程をする。
【0310】
なお、図18のステップS1801~ステップS1812までの各処理は、図15のステップS1501~ステップS1512までの各処理と同様の処理であり、ステップS1813~ステップS1820までの各処理は、図15のステップS1517~図15のステップS1524までの各処理と同様の処理であるため説明は省略する。
以上で、図18の説明を終了する。
【0311】
次に、図19を用いて、本発明の第3の実施形態における滅菌物減圧特性確認処理の前後の処理のフローチャートについて説明する。
【0312】
図19は、本発明の第3の実施形態における滅菌物減圧特性確認処理の前後の処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0313】
図15の第1の実施形態における滅菌物減圧特性確認処理の前後の処理のフローチャートでは、ステップS1515のあとに、ステップS1516の滅菌前工程を実行するとしたが、本実施例では、ステップS1515と同様の処理であるステップS1915のあとに、滅菌処理物の追加投入をユーザが行った場合には、図19のフローチャートの最初の処理に処理を戻す。
【0314】
また、図15の第1の実施形態における滅菌物減圧特性確認処理の前後の処理のフローチャートでは、ステップS1511の処理が終了すると図15の処理を終了するとしたが、本実施例では、ステップS1511と同様の処理であるステップS1911のあとに、滅菌処理物を減らす行為をユーザが行った場合には、図19のステップS1902(図15のステップS1502と同様)の処理に処理を戻す。
【0315】
ステップS1901~ステップS1910までの各処理は、図15のステップS1510の各処理と同様の処理であり、ステップS1912~ステップS1914までの各処理は、図15のステップS1512~ステップS1514の各処理と同様の処理であり、ステップS1916~ステップS1924までの各処理は、図15のステップS1516~ステップS1524までの各処理と同様の処理であるため説明は省略する。
【0316】
ステップS1911において、滅菌装置100は、滅菌室に大気を導入し、滅菌室内を大気圧に戻すと、ステップS1925に進む。
【0317】
ステップS1925において、滅菌装置100は、滅菌処理物を減らしたか否かの選択をユーザから受け付けるボタンを含む画面を滅菌装置100の表示部102に表示する。
【0318】
ステップS1926において、滅菌装置100は、ステップS1925で滅菌装置100の表示部102に表示した画面を介して、ユーザから滅菌処理物を減らしたという選択を受け付けた場合には(ステップS1926でYES)、ステップS1902に戻り、ユーザから滅菌処理物を減らしていないという選択(終了指示)を受け付けた場合には(ステップS1926でNO)、本処理を終了する。
【0319】
ステップS1912で、滅菌処理物が滅菌処理を自動で開始するのに適していないと判定された場合に、ステップS1925、ステップS1926の処理を実行することにより、ユーザは、ステップS1925の処理の後に、滅菌室の扉104を開け、滅菌室内にセットした滅菌処理物を減らし、図4のステップS101~ステップS108、ステップS120~ステップS121間での処理を省略して、再度、滅菌物減圧特性判断を滅菌装置100に実行させることが出来る。また、その際、ステップS1902で滅菌コンテナ内が減圧されることにより、すでに滅菌室内の水分が除去されているため、ステップS1919~ステップS1924までの水分除去の工程を省略することができ、滅菌処理にかかる時間を短縮することが出来る。
【0320】
ステップS1915において、滅菌装置100は、滅菌室に大気を導入し、滅菌室内を大気圧に戻すと、ステップS1927に進む。
【0321】
ステップS1927において、滅菌装置100は、滅菌処理物を追加したか否かの選択をユーザから受け付けるボタンを含む画面を滅菌装置100の表示部102に表示する。
【0322】
ステップS1928において、滅菌装置100は、ステップS1025で滅菌装置100の表示部102に表示した画面を介して、ユーザから滅菌処理物を追加したという選択を受け付けた場合には(ステップS1928でYES)、ステップS1901に戻り、ユーザから滅菌処理物を減らしていないという選択(滅菌前工程実行指示)を受け付けた場合には(ステップS1928でNO)、ステップS1916に進む。
【0323】
ステップS1913で、滅菌前工程を省略しない判定された場合に、ステップS1927、ステップS1928の処理を実行することにより、ユーザは、ステップS1927の処理の後に、滅菌室の扉104を開け、滅菌室内にセットする滅菌処理物を追加し、図4のステップS101~ステップS108、ステップS120~ステップS121における処理を省略して、再度、滅菌物減圧特性判断を滅菌装置100に実行させることが出来る。
以上で、図19の説明を終了する。
【0324】
次に、図20を用いて、本発明の第4の実施形態における図14の1411に表示される、滅菌物減圧特性判定による判定結果ごとのメッセージについて説明する。
【0325】
図20は、本発明の第4の実施形態における図14の1411に表示される、滅菌物減圧特性判定による判定結果ごとのメッセージの一例を示す図である。
【0326】
図16のステップS1602で判定Aと判定された場合、ステップS1604で判定Bと判定された場合、および、ステップS1602で判定Cと判定された場合には、「滅菌処理に遅れはありません」というメッセージを表示する。
【0327】
図16のステップS1608で判定Dと判定された場合には、「滅菌処理に遅れが発生する可能性があります。可能であれば滅菌処理物を減らしてください。」というメッセージを表示する。
【0328】
図16のステップS1609で判定Eと判定された場合には、「滅菌処理にかなりの遅れが発生する可能性があります。滅菌処理物を減らしてください。」というメッセージを表示する。
以上で、図20の説明を終了する。
【0329】
以上、本発明によれば、テスト減圧を行う場合でも滅菌処理時間を短縮することが出来る滅菌装置を提供することが可能な仕組みを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0330】
100 滅菌装置
101 カートリッジ取付用扉
102 表示部
103 印刷部
104 滅菌室の扉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20