IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-電動駆動装置 図1
  • 特許-電動駆動装置 図2
  • 特許-電動駆動装置 図3
  • 特許-電動駆動装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】電動駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/55 20100101AFI20221221BHJP
   F16H 37/06 20060101ALI20221221BHJP
   F16H 3/44 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B62M6/55
F16H37/06 D
F16H3/44 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021118401
(22)【出願日】2021-07-19
(62)【分割の表示】P 2019565015の分割
【原出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2021191673
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】102017208714.5
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017215349.0
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デプナー エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】オプロー アミール
(72)【発明者】
【氏名】シュトール ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルト クリスティアン
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0137086(US,A1)
【文献】仏国特許発明第1124985(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/20, 6/55,
11/06,11/14-11/18
F16H 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車(1)用の電動駆動装置(2)であって、
ドライブシャフト(8)を有する電動モータ(5)と、
前記自転車(1)の車輪駆動装置(4)に連結するための作動ギヤ(11)と回転固定に連結されたドリブンシャフト(6)と、
前記ドライブシャフト(8)と前記ドリブンシャフト(6)とを駆動連結するトランスミッション(7)と、を備え、
前記トランスミッション(7)は、
前記ドリブンシャフト(6)に、回転駆動方向に回転固定に連結された被動ギヤ(12)と、
前記被動ギヤ(12)を駆動するために、該被動ギヤ(12)に、互いに周方向(16)にオフセットした状態で係合する第1出力ギヤ(14)及び第2出力ギヤ(15)の少なくとも2つの出力ギヤと、
前記出力ギヤ(14,15)に前記電動モータ(5)の動力を分散する動力分散機構(17)と、
を有し、
前記トランスミッション(7)は、サンギヤ(21)と、少なくとも2つのプラネットギヤ(22)と、プラネットキャリア(23)と、リングギヤ(24)とを有する遊星トランスミッション(20)を有し、
前記リングギヤ(24)は、前記第1出力ギヤ(14)と回転固定に連結されていることを特徴とする電動駆動装置(2)。
【請求項2】
請求項に記載の電動駆動装置(2)において、
前記プラネットキャリア(23)は、前記第2出力ギヤ(15)に係合される中間ギヤ(25)と回転固定に連結されていることを特徴とする電動駆動装置(2)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動駆動装置(2)において、
前記サンギヤ(21)は、入力ホイール(27)と回転固定に連結されるサンシャフト(26)と回転固定に連結され、
前記ドライブシャフト(8)は、入力ギヤ(27)に係合される駆動ギヤ(28)と回転固定に連結されていることを特徴とする電動駆動装置(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用の電動駆動装置又は補助駆動装置、並びに、電動駆動装置又は補助駆動装置を備えた自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
電動駆動装置を備えた自転車は一般的に「eバイク」として知られている。電動駆動装置は、唯一の駆動装置、すなわちメイン駆動装置として機能するだけでなく、好ましくは補助駆動装置として機能する。本明細書において、「駆動装置(drive)」の語は、メイン駆動装置及び補助駆動装置と理解される。電動駆動装置が補助駆動装置である場合、電動モータは、各自転車の乗員による動力をサポートする。所謂「pedelec(電動アシスト自転車)」の場合、そのような駆動のサポートのみが行われる。pedelecの場合、自転車の乗員による動力なしには、該自転車の電動モータの動力は供給されない。このような駆動装置がメイン駆動装置として設けられている場合、自転車は電動駆動装置のみを介して駆動することが可能である。本明細書において、「自転車」の語は、二輪車のみでなく、三輪車や四輪車としても理解される。
【0003】
このような電動駆動装置は、通常、ドライブシャフトを有する電動モータを備えている。作動ギヤと回転固定に連結されたドリブンシャフトが更に設けられる。作動ギヤは、自転車のチェーン式駆動装置、ベルト式駆動装置、又はその他の自転車の車輪駆動装置と結合するための機能を有する。車輪駆動装置は、後輪のような自転車の駆動輪を駆動するための機能を有する。言い換えると、組み付けられた状態で、作動ギヤは、チェーンやベルトやその他のカップリングを介して、自転車の後輪と駆動連結されている。電動駆動装置は、ドライブシャフトとドリブンシャフトとを駆動連結するトランスミッションを更に備える。これにより、電動モータの比較的高速の動作が、ドリブンシャフトの比較的低速の動作に減速される。すなわち、同時に、電動モータの補助と共に供給されるトルクが増加するようになる。トランスミッションは、例えば、ドリブンシャフトと回転駆動方向に回転固定に連結された被動ギヤを有する。トランスミッションの「ホイール」は、好ましくはギヤホイールである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動駆動装置がペダルシャフトの部分に配置されている場合、自転車の地上高に悪景況を及ぼさないように、被動ギヤの直径が制限される。したがって、この被動ギヤには比較的高いトルクが与えられる必要がある。このために、トランスミッションは、例えば、被動ギヤと係合する出力ギヤを有する。従来の電動駆動装置の場合、被動ギヤと出力ギヤとは大きな動力を伝達するために金属製である必要がある。金属製ホイールは、比較的高価でかつ運転中の騒音問題を引き起こす。
【0005】
本発明は、前述の電動駆動装置又はそれらを備えた自転車の改善された形態を提供するという課題を扱う。これは、特に費用効果の高い生産性及び/又は騒音の低減により特徴づけられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、独立請求項の主題に係る発明によって解決される。有利な実施形態は従属項の主題である。
【0007】
本発明は、被動ギヤを駆動する機能を有し、この目的のために、被動ギヤとそれぞれ個別に係合する少なくとも2つの出力ギヤを有するトランスミッションを備えるという思想に基づいている。この目的のために、少なくとも2つの出力ギヤは、被動ギヤの周上に、互いに該周方向にオフセットした状態でそれぞれ配置される。電動モータの動力を少なくとも2つの出力ギヤに分散する動力分散機構は、トランスミッションにより実現される。この手段は、被動ギヤに全体として与えられるトルクが、少なくとも2つの係合点、すなわち少なくとも2つの出力ギヤの係合点に分散されるという結果をもたらす。これにより、被動ギヤの負荷及び各出力ギヤの負荷は、それぞれの係合で十分に低減される。ちょうど2つの出力ギヤに均一に動力を分散するときには、トルクは各係合点で半分になる。少なくとも2つの出力ギヤ、以下、「第1の出力ギヤ」及び「第2の出力ギヤ」と呼ばれる2つの出力ギヤは、動力の一部を被動ギヤにそれぞれ個別に導入する。各係合点におけるトルクは十分に低減されるため、出力ギヤ及び被動ギヤの少なくとも一方をプラスチック製にすることができる。これにより、製造コストを削減することができる。さらに、ノイズが発生するリスクが低減される。
【0008】
有利には、トランスミッションの内側に、第1出力ギヤが回転する第1回転軸と、第2出力ギヤが回転する第2回転軸と、が定位置で配置されるということが考えられる。これにより、コンパクトな設計を容易に実現することができる。
【0009】
第1出力ギヤが回転する第1回転軸と、第2出力ギヤが回転する第2回転軸とが、幾何的に、ドリブンシャフトが回転する出力軸と、ドライブシャフトが回転する入力軸との間に配置されている場合には、特に有利な実施形態になる。第1に、これにより、コンパクトな設計がサポートされる。他にも、これにより、駆動領域における自転車の地面高を増やすことができる。組み付け状態において、駆動装置は、自転車が地面に対して起立したり移動したりするときには、基本的に自転車のペダルシャフトの上側に配置される。この組み付け状態において、ドリブンシャフトは、ペダルシャフトの領域に位置するとともに、駆動装置の最低領域を形成する。すなわち、出力ギヤは、組み付け状態において、ドリブンシャフトよりも上側でかつドライブシャフトよりも下側に位置する。
【0010】
特に有利な実施形態によると、トランスミッションは遊星トランスミッションである。この遊星トランスミッションは、例えば、入力側において、対応する歯や変速用歯車を介してドライブシャフトに結合されているとともに、出力側において、動力分散機構を介して出力ギヤに結合されている。このとき、動力分散機構は、最終的に、出力ギヤ及び遊星トランスミッションの出力側により形成されるか、遊星トランスミッションの出力側への出力ギヤの接続により形成される。
【0011】
このような遊星トランスミッションは、サンギヤと、少なくとも2つのプラネットギヤと、プラネットキャリアと、リングギヤとを有する、サンギヤ及びリングギヤは、通常、プラネットキャリアに支持されたプラネットギヤを介して互いに駆動連結されている。このような遊星トランスミッションは、極めてコンパクトな設計及び大きな動力伝達により特徴づけられる。遊星トランスミッション内において、遊星トランスミッションの入力側を形成するサンギヤは、プラネットキャリア上及び/又はリングギヤ上のプラネットギヤを介して内部動力分散を行う。出力側の遊星トランスミッションの動力を出力ギヤに分散するという課題において、動力分散に加えて内部動力分散が供給される。これにより、遊星トランスミッションの出力側は、プラネットキャリア及びリングギヤの少なくとも一方により形成される。
【0012】
言い換えると、ここで説明した出力ギヤに動力を分散する動力分散機構は、遊星トランスミッション内に形成される動力分散機構に加えて存在する。
【0013】
リングギヤが第1出力ギヤと回転固定に連結されている場合には有利な実施形態となる。これにより、サンギヤは電動モータを介して駆動される。このとき、リングギヤは、十分に減らしたスピードでもって第1出力ギヤを駆動する。
【0014】
プラネットギヤが、第2出力ギヤと係合する中間ギヤと回転固定に連結されている場合には、更に有利である。この実施形態の場合、サンギヤが回転するときに回転するプラネットキャリアが、第2出力ギヤを駆動するために利用される。これにより、トランスミッションの動力分散が遊星トランスミッションの内部で実行される。そのため、2つの出力ギヤの回転方向をそろえるために中間ギヤが必要となる。2つの出力ギヤの動力分散の比率は、中間ギヤの直径や歯の数といった寸法、及び、結果として、第2出力ギヤの寸法を介して調整される。これにより、2つの出力ギヤがそれぞれ駆動力の50%を被動ギヤに伝達するように、1:1の比率の出力分散が優先される。
【0015】
他にも、サンギヤが、入力ギヤと回転固定に連結されたサンシャフトと回転固定に連結されるという更なる展開が提案される。同様に、電動モータの駆動軸は、入力ギヤと係合する駆動ギヤに連結される。駆動気やと入力気やとの係合は、有利には、平歯車トランスミッションとして構成される。平歯車トランスミッションの場合、2つのホイールは、それぞれの歯を介して、互いに径方向に係合している。被動ギヤと2つの出力ギヤとの係合も、平歯車トランスミッションとして構成される場合に有利になる。第2出力ギヤは、中間ギヤとも平歯車トランスミッションを構成し得る。
【0016】
特に有利な実施形態によると、出力ギヤはプラスチックギヤであり得る。これに加えて又はこれに代えて、被動ギヤはプラスチックギヤであり得る。このとき、繊維強化プラスチックを使用できることは明らかである。
【0017】
有利には、被動ギヤは、該被動ギヤからドリブンシャフトに回転駆動方向のトルクを伝達しかつ被動ギヤとドリブンシャフトとの間での、回転駆動方向に対する反回転駆動方向の相対回転を可能にするフリーホイールアセンブリを介してドリブンシャフトに結合され得る。すなわち、ドリブンシャフトは、被動ギヤより速く回転駆動方向に回転することができるようになる。
【0018】
その他、ドリブンシャフトが、中空シャフトで構成されるとともに、ペダルシャフトに同軸に挿通されているという実施形態が提案される。すなわち、自転車に組み付けられた状態では、このペダルシャフトは、その長手方向の各端部にそれぞれペダルクランクを備えており、各ペダルクランクはペダルを支持している。これにより、自転車の乗員は、ペダル、ペダルクランク、及びペダルシャフトを介して、自分の駆動力を入力することができる。この目的のために、ペダルシャフトは、回転駆動方向に回転固定にドリブンシャフトと連結される。
【0019】
好ましくは、ペダルシャフトは、該ペダルシャフトからドリブンシャフトに回転駆動方向のトルクを伝達しかつペダルシャフトとドリブンシャフトとの間での、回転駆動方向に対する反回転駆動方向の相対回転を可能にするフリーホイールアセンブリを介してドリブンシャフトに結合されている。このフリーホイールアセンブリの手助けにより、ドリブンシャフトは、ペダルシャフトよりも速く回転駆動方向に回転することができるようになる。同様に、ペダルシャフトは、ドリブンシャフトの回転方向とは反対向きの回転方向に回転され得る。
【0020】
他にも、ドライブシャフトが入力軸回りに回転する一方で、ドリブンシャフトが出力軸回りに回転するという実施形態が提案される、これにより、電動モータとドリブンシャフトとの配置は、入力軸が出力軸に対して平行に延びる一方で、入力軸と出力軸との径方向の距離が十分に維持されるように設計される。自転車の組み付け状態に基づいて、特に電動モータは、ドライブシャフト上、すなわち、自転車が地面の上に起立した状態において、ドリブンシャフトの地面側とは反対側に配置される。
【0021】
本明細書において、「シャフト(shaft)」は、物理的な構成要素と理解される一方で、「軸(axis)」は、仮想的な直線と理解される。回転シャフトの場合は、対応する回転軸はシャフトの中心軸と一致する。
【0022】
有利には、出力ギヤは、幾何的に、ドライブシャフトとドリブンシャフトとの間に配置されている。被動ギヤとは離間して、トランスミッションはドリブンシャフトの上側にのみ構築されるため、自転車の地上高に有利になる。
【0023】
本発明に係る自転車は、少なくとも1つの前輪及び少なくとも1つの後輪に加えて、ペダルシャフトと、例えば、チェーン式駆動装置やベルト式駆動装置のような車輪駆動装置と、電動駆動装置と、を備える。これにより、ペダルシャフトも、駆動装置の構造体積に属するようになる。車輪駆動装置は、後輪のような、自転車の駆動輪を駆動する機能を有する。
【0024】
出力ギヤが、自転車が地面の上に起立した状態又は地面の上を移動している状態において、ドリブンシャフトの地面側とは反対側に配置されている場合には、好ましい設計となる。これにより、自転車は、駆動装置の領域における地面高を増やすことができる。
【0025】
トランスミッションが、自転車が地面の上に起立した状態又は地面の上を移動している状態において、被動ギヤとは離間して、ドリブンシャフトの上側に配置されている場合には、特に有利な設計となる。
【0026】
本発明のさらに重要な特徴及び効果は、従属クレームと、図面と、図面に基づく図面の説明とから得られる。
【0027】
前述及び後述の特徴は、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、前述の各組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又は単独でも用いることができると理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】電動駆動装置の概略図である。
図2】駆動装置の等角図である。
図3図2とは異なる視点で見た、駆動装置の等角図である。
図4図2及び図3とは異なる視点で見た、駆動装置の等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の好ましい例示的実施形態は、図面に示され、以下の記載において詳細に説明される。ここで、同一の符号は、同一、類似、又は機能的に同一の構成要素に関する。
【0030】
図1は、自転車1の電動駆動装置2の領域のみを示す。自転車1は、ペダルシャフト3及び車輪駆動装置4を備える。車輪駆動装置4は、好ましくは、チェーン式駆動装置4、又は、ベルト式駆動装置4で構成される。車輪駆動装置4は、あらゆるものが考えられる。車輪駆動装置4は、自転車1における不図示の駆動輪を駆動させる機能を有する。駆動輪は、好ましくは自転車1の後輪である。自転車1は、前述の電動駆動装置2を更に備える。自転車1が完全に組み立てられた状態で、駆動装置2の構造体積の一部であるペダルシャフト3は、その長手方向の各端部において、不図示のペダルをそれぞれ有する不図示のペダルクランクと回転固定にそれぞれ連結されている。
【0031】
図1図4によると、電動駆動装置2は、電動モータ5と、ドリブンシャフト6と、トランスミッション7とを有する。電動モータ5は、入力軸9回りに回転するドライブシャフト8を有する。ドリブンシャフト6は、出力軸10回りに回転するとともに、作動ギヤ11と回転固定に連結されている。作動ギヤ11は、好ましくはギヤホイールである。駆動装置2は、作動ギヤ11を介して、車輪駆動装置4、特に、チェーン式駆動装置4、ベルト式駆動装置4、その他のあらゆる車輪駆動装置4のそれぞれに連結されている。
【0032】
トランスミッション7は、好ましくはギヤホイールである被動ギヤ12を備える。被動ギヤ12は、出力シャフト6に対して、矢印で示す回転駆動方向13に回転固定に連結されている。被動ギヤ12は第3回転軸35回りに回転する。第3回転軸35は、ドリブンシャフト6の出力軸10と一致する。トランスミッション7は、好ましくはそれぞれギヤホイールで構成された少なくとも2つの出力ギヤである第1出力ギヤ14及び第2出力ギヤ15を更に備える。他の実施形態では、2つ以上の出力ギヤ14,15が存在し得る。各出力ギヤ14,15は、被動ギヤ12と係合していて、被動ギヤ12を駆動する機能を有する。これにより、2つの出力ギヤ14,15は、図2に矢印で示す被動ギヤ12の周方向16において、互いにオフセットして配置されている。これにより、第1出力ギヤ14は第1回転軸33回りに回転する一方、第2出力ギヤ15は第2回転軸34回りに回転する。これらの回転軸33,34は定位置である。すなわち、2つの回転軸33,24は、トランスミッション7の内側に定位置で配置されている。言い換えると、2つの回転軸33,34は、駆動装置2の作動中でも、トランスミッション7の内側における空間的な位置が変わらない。トランスミッション7は動力分散機構17を備える。動力分散機構17は、電動モータ5の駆動力を出力ギヤ14,15に分散することができる。
【0033】
図2を参照すると、2つの出力ギヤ14,15が、それぞれ、周方向16に互いに間隔を空けて被動ギヤ12とどのように係合しているかをよく見ることができる。これにより、各係合点における負荷は十分に低減される。第1出力ギヤ14と被動ギヤ12との間の第1係合点は符号18で特定されており、第2出力ギヤ15と被動ギヤ12との間の第2係合点は符号19で特定されている。第1出力ギヤ14と被動ギヤ12との間の第1係合点18は、概略化された図1において直接見ることができる。対照的に、第2出力ギヤ15と被動ギヤ12との間の第2係合点19は、この概略図からは直接見ることはできないため、破線により示唆される作動接続により象徴化して示されている。
【0034】
更に図2を参照すると、出力ギヤ14,15は、幾何的に、ドライブシャフト8とドリブンシャフト6との間に配置されていることを見ることができる。駆動装置2が組み付けられた状態において、ドライブシャフト8は、自転車1が地面の上に起立したとき又は地面の上を移動しているときに、ドリブンシャフト6の地面側とは反対側に位置している。すなわち、トランミッション7における被動ギヤ12から離れた部分は、ドリブンシャフト6の上側に位置する。
【0035】
この好ましい例示の場合、トランスミッション7は遊星トランスミッション20を有する。この遊星トランスミッション20は、サンギヤ21と、少なくとも2つのプラネットギヤ22と、プラネットキャリア23と、リングギヤ24とを有する。全てのギヤは、好ましくはギヤホイールである。サンギヤ21は、リングギヤ24と同軸に配置されていて、プラネットギヤ22を介してリングギヤ24に駆動連結されている。プラネットギヤ22は、径方向の内側でサンギヤ21と係合しかつ径方向の外側でリングギヤ24と係合している。本実施形態では、4つのプラネットギヤ22が設けられている。
【0036】
リングギヤ24は、第1出力ギヤ14と回転固定に連結されている。この結果、リングギヤ24は、第1出力ギヤ14を介して被動ギヤ12を駆動する。ここで、プラネットキャリア23は、中間ギヤ25と回転固定に接続されている。この中間ギヤ25は、第2出力ギヤ15と係合している。すなわち、プラネットギヤ23も、中間ギヤ25及び第2出力ギヤ15を介して被動ギヤ12を駆動する。動力分散機構17は、有利には、電動モータ5の駆動力が2つの出力ギヤ14,15に均等に分散されるように設計されている。このため、中間ギヤ25は、2つの出力ギヤ14,15の回転方向の同期と速度の同期とが生じるように、直径及び歯の数が選択される。
【0037】
サンギヤ21は、有利には、サンシャフト26と回転固定に連結される。サンシャフト26は、入力ギヤ27と回転固定に連結される。入力ギヤ27は、好ましくはギヤホイールである。電動モータ5のドライブシャフト8は、駆動ギヤ28と回転固定に連結されている。駆動ギヤ28は入力ギヤ27と係合している。サンシャフト26は、遊星トランスミッション20のサン軸29と同軸に延びている。サン軸29は、入力軸9及び出力軸10と平行に延びている。
【0038】
係合点18,19の機械的負荷が低減されることで、有利な実施形態において、2つの出力ギヤ14、15及び/又は被動ギヤ12をプラスチックギヤで構成することが可能となる。
【0039】
有利には、被動ギヤ12は、フリーホイールアセンブリ30を介してドリブンシャフト6に連結される。このフリーホイールアセンブリ30は、回転駆動方向13に被動ギヤ12からドリブンシャフト6にトルクを伝達する。対照的に、フリーホイールアセンブリ30は、図2の矢印で示す、回転駆動方向13とは反対向きの反回転方向31において、被駆動ギヤ12とドリブンシャフト6との間の相対回転を可能にする。例えば、ドリブンシャフト6が回転駆動方向13に回転する一方で、被動ギヤ12を停止させたり、ドリブンシャフト6よりも遅い速度で回転駆動方向13に回転させたりすることができる。
【0040】
有利には、ドリブンシャフト6は、中空シャフトで構成されるとともに、ペダルシャフト3に同軸に挿通される。ペダルシャフト3は、ドリブンシャフト6に対して回転駆動方向13に回転固定に連結される。有利には、ペダルシャフト3は、更なるフリーホイールアセンブリ32を介してドリブンシャフト6に連結されている。更なるフリーホイールアセンブリ32は、被動ギヤ12とドリブンシャフト6との間における前述のフリーホイールアセンブリ30と同じように作動する。更なるフリーホイールアセンブリ32は、回転駆動方向13にペダルシャフト3からドリブンシャフト6にトルクを伝達する一方で、反回転駆動方向31におけるペダルシャフト3とドリブンシャフト6との間の相対回転を可能にする。これにより、ドリブンシャフト6が回転駆動方向13に回転する一方で、ペダルシャフト3を停止させたり、反回転方向31に回転させたり、ドリブンシャフト6よりも遅い速度で回転駆動方向13に回転させたりすることができる。
【0041】
有利には、入力軸9と出力軸10とは、互いに平行に延びているだけでなく、互いに径方向に離間している。サン軸29も、入力軸9及び出力軸10と平行に延びている。特にサン軸9は、幾何的に、入力軸9と出力軸10との間で延びている。図2に集約するように、入力軸9、出力軸10、及びサン軸29は、好ましくは共通の平面上に延びる。さらに、電動モータ5とトランスミッション7との配置は、出力ギヤ14,15が、幾何的に、ドライブシャフト8とドリブンシャフト6との間に位置するようにすることができる。組み付け状態において、出力ギヤ14,15はドリブンシャフト6の上側に位置する。電動モータ5は、ドリブンシャフト6の上側に位置しているが、ドライブシャフト8を駆動する。これにより、ドライブシャフト8は、有利には、電動モータ5の内部ロータの一部となる。
図1
図2
図3
図4