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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】落下性能が改善されたガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20221221BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C3/083
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021153991
(22)【出願日】2021-09-22
(62)【分割の表示】P 2018565390の分割
【原出願日】2017-06-13
(65)【公開番号】P2022000412
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】62/349,802
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】パスカル オラム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィトール マリーノ シュナイダー
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/127483(WO,A2)
【文献】特表2015-511573(JP,A)
【文献】特表2011-527661(JP,A)
【文献】特表2015-500194(JP,A)
【文献】特表2012-500177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0147574(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C15/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスの強化方法であって、
前記ガラスは第1のアルカリカチオンを含み、第1の表面と、前記第1の表面の反対側の第2の表面と、厚さtと、t/2における中心部とを有し、
前記ガラス物品はある応力プロファイルを有し、
前記応力プロファイルは:前記ガラス物品の前記第1の表面から前記ガラス内へと深さd1まで延在し、d1≦0.025tであり、前記表面において最大圧縮応力CS1を有する、第1の領域と;少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、d2≦0.0625tであり、圧縮応力最大値CS2を有する、第2の領域と;前記ガラスの第3の深さd3から前記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3である、第3の領域とを備え、
前記方法は:
a.第1のイオン交換浴中に前記ガラスを浸漬するステップであって、前記第1のイオン交換浴は、第1のアルカリカチオン及び第2のアルカリカチオンを含み、前記第1のイオン交換浴は、20重量%~30重量%の前記第1のアルカリカチオンのうちの少なくとも1つの塩を含み、前記第2のアルカリカチオンは前記第1のアルカリカチオンとは異なり、前記イオン交換浴に由来する前記第2のアルカリカチオンが、前記ガラス物品中の前記第1のアルカリカチオンを置換する、ステップ;
b.前記第1のイオン交換浴中に前記ガラス物品を浸漬する前記ステップの後に、前記ガラスを第2のイオン交換浴中に浸漬するステップであって、前記第2のイオン交換浴は前記第1のアルカリカチオン及び前記第2のアルカリカチオンを含み、前記第2のイオン交換浴は、60重量%~80重量%の前記第1のアルカリカチオンの少なくとも1つの塩を含む、ステップ;
c.前記第2のイオン交換浴中に前記ガラス物品を浸漬する前記ステップの後に、前記ガラスを第3のイオン交換浴中に浸漬するステップであって、前記第2のイオン交換浴は前記第1のアルカリカチオン及び前記第2のアルカリカチオンを含み、前記第3のイオン交換浴は、75重量%~100重量%の前記第2のアルカリカチオンの少なくとも1つの塩を含む、ステップ;並びに
d.前記第1のイオン交換浴中に前記ガラス物品を浸漬する前記ステップ及び前記第2のイオン交換浴中に前記ガラス物品を浸漬する前記ステップのうちの少なくとも一方に続く、熱拡散ステップ、
を含み、
前記熱拡散ステップは、前記ガラスを400℃~500℃の温度まで加熱するステップを含み、
前記熱拡散ステップは、前記ガラスを前記温度で少なくとも16時間加熱するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記最大圧縮応力CS1は少なくとも280MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
125MPa≦CS2≦250MPaである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガラス物品はアルカリアルミノシリケートガラスを含み、
前記アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも4モル%のP を含み、
モル%/R Oモル%<1であり、
=Al +B であり、
Oは、前記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する1価及び2価カチオン酸化物の合計である、請求項1から3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ガラス物品をフュージョン成形するステップを更に含む、請求項1から4いずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下で、2016年6月14日出願の米国特許出願第62/349,802号の優先権の利益を主張するものであり、上記特許出願の内容は信頼できるものであり、その全体が参照によって本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は強化ガラスに関する。より詳細には、本開示は、研磨材表面上への落下時の損傷に対する耐性を有する強化ガラスに関する。
【背景技術】
【0003】
イオン交換によって強化されたガラスは、相補誤差関数又は放物線関数に類似した応力プロファイルを示す傾向を有する。このような応力プロファイルは、急激な衝突等の特定のタイプの損傷に対して十分な保護を提供するものの、ある高さからの研磨材表面上への落下等の特定のタイプの損傷に対しては十分な保護を提供しない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、研磨材表面への落下時の損傷に対する優れた耐性を示す化学強化ガラス物品を提供する。上記強化ガラス物品は、上記物品内の圧縮及び引張応力が上記ガラス物品の厚さtに応じて変化する応力プロファイルを有する。上記応力プロファイルは:上記ガラス物品の表面から上記ガラス内へと深さd1まで延在し、d1≦0.025t又はd1≦20μmであり、上記表面において少なくとも約280MPaの最大圧縮応力を有する、第1の領域と;少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、局所的圧縮応力最大値を有する、第2の領域と;上記ガラスの第3の深さd3から圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3かつDOC≧0.15tである、第3の領域とを有する。ガラス物品を強化して落下時の損傷に対する耐性を提供する方法も提供する。
【0005】
従って、本開示の一態様は、ガラス物品を提供することである。上記ガラス物品は、厚さtと、上記ガラスの表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層とを有する。上記ガラス物品内の応力は上記厚さtに応じて変化して、ある応力プロファイルを形成する。上記応力プロファイルは:上記ガラス物品の表面から上記ガラス内へと深さd1まで延在し、d1≦0.025tであり、上記表面において少なくとも約280MPaの最大圧縮応力CS1を有する、第1の領域と;少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、d2≦0.0625tであり、圧縮応力最大値CS2を有し、125MPa≦CS2≦250MPa又は50MPa≦CS2≦300MPaである、第2の領域と;上記ガラスの第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3かつDOC≧0.10tである、第3の領域とを備える。
【0006】
本開示の第2の態様は、ガラス物品を提供することである。上記ガラス物品は、厚さtと、約50GPa~約120GPaのヤング率と、ガラスの表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層とを有する。上記ガラス物品内の応力は上記厚さtに応じて変化して、ある応力プロファイルを形成する。上記応力プロファイルは:上記ガラス物品の表面から上記ガラス内へと深さd1まで延在し、d1≦20μmであり、上記表面において少なくとも約280MPaの最大圧縮応力CS1を有する、第1の領域と;少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、20μm≦d2≦50μmであり、圧縮応力最大値CS2を有し、125MPa≦CS2≦250MPa又は50MPa≦CS2≦300MPaである、第2の領域と;上記ガラスの第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3かつDOC≧0.15tである、第3の領域とを備える。
【0007】
本開示の第3の態様は、厚さtと、約50GPa~約120GPaのヤング率と、ガラスの表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層とを有する,ガラス物品を提供することである。上記ガラス物品内の応力は上記厚さtに応じて変化して、ある応力プロファイルを形成し、上記応力プロファイルは:上記ガラス物品の表面から上記ガラス物品内へと深さd1まで延在し、d1≦20μmであり、上記表面において少なくとも約280MPaの最大圧縮応力CS1を有する、第1の領域と;少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、20μm≦d2≦50μmであり、圧縮応力最大値CS2を有し、125MPa≦CS2≦250MPa又は50MPa≦CS2≦300MPaであり、上記応力プロファイルは、上記深さd1における圧縮応力から上記圧縮応力最大値CS2まで上昇し、上記圧縮応力最大値CS2から上記第2の深さd2における第2の圧縮応力まで低下する、第2の領域と;上記ガラスの第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3かつDOC≧0.15tである、第3の領域とを備える。
【0008】
本開示の第4の態様は、ガラスの強化方法を提供することである。上記ガラスは第1のアルカリカチオンを含み、第1の表面と、上記第1の表面の反対側の第2の表面と、厚さtと、t/2における中心部とを有する。上記ガラスはある応力プロファイルを有し、上記応力プロファイルは:上記ガラス物品の上記第1の表面から上記ガラス内へと深さd1まで延在し、d1≦0.025tであり、上記表面において最大圧縮応力CS1を有する、第1の領域と;少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、d2≦0.0625tであり、圧縮応力最大値CS2を有する、第2の領域と;上記ガラスの第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3である、第3の領域とを備える。上記方法は:第1のアルカリカチオン及び第2のアルカリカチオンを含む第1のイオン交換浴中に上記ガラスを浸漬するステップであって、上記第2のアルカリカチオンは上記第1のアルカリカチオンとは異なり、上記イオン交換浴に由来する上記第2のアルカリカチオンが、上記ガラス物品中の上記第1のアルカリカチオンを置換し、上記第1のイオン交換浴は、約20重量%~約30重量%の上記第1のアルカリカチオンのうちの少なくとも1つの塩を含む、ステップ;上記第1のイオン交換浴中に上記ガラス物品を浸漬する上記ステップの後に、上記ガラスを第2のイオン交換浴中に浸漬するステップであって、上記第2のイオン交換浴は上記第1及び第2のアルカリカチオンを含み、上記第2のイオン交換浴は、約60重量%~約80重量%の上記第1のアルカリカチオンの少なくとも1つの塩を含む、ステップ;並びに上記第2のイオン交換浴中に上記ガラス物品を浸漬する上記ステップの後に、上記ガラスを第3のイオン交換浴中に浸漬するステップであって、上記第3のイオン交換浴は、約75重量%~約100重量%の上記第1のアルカリカチオンの少なくとも1つの塩を含む、ステップを含む。
【0009】
上述の及び他の態様、利点及び顕著な特徴は、以下の「発明を実施するための形態」、添付の図面及び添付の請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】強化ガラス物品の概略断面図
図2】ガラスに関して得ることができる応力プロファイルの概略図
図3】ガラス物品の最適な落下性能のための、応力プロファイルに関する統計的目標のプロット
図4図3に示すプロットの詳細
図5】拡散モデリングによって得られた推定応力プロファイルのプロット
図6図5に示すプロットの詳細
図7】2段階イオン交換プロセスを用いて得られた応力プロファイルのプロット
図8】3段階イオン交換プロセスの第3の段階を使用して表面付近に圧縮スパイクを発生させる方法を実証する、プロット
図9】消費者向け電気製品の概略図
図10】化学強化ガラス試料に対して実施した落下試験の概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の記載では、同様の参照記号は、図面において示す複数の図を通して、同様の又は対応する部分を指す。特段明記されていない限り、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「外向き(outward)」、「内向き(inward)」等の用語は、利便性のための単語であり、限定的な用語として解釈してはならないことも理解される。更に、ある群が、複数の要素の少なくとも1つの群及びその組み合わせを含むものとして記載されている場合は常に、上記群は、列記されている要素のうちのいずれの個数のもの(個別に又は互いに組み合わせて)を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなることが理解される。同様に、ある群が、複数の要素の少なくとも1つの群及びその組み合わせからなるものとして記載されている場合は常に、上記群は、列記されている要素のうちのいずれの個数のもの(個別に又は互いに組み合わせて)からなってよいことが理解される。特段明記されていない限り、値の範囲が記載されている場合、これは上記範囲の上限及び下限並びにその間のいずれの範囲を含む。本明細書中で使用される場合、不定冠詞「a」「an」及びこれに対応する定冠詞「the」は、特段明記されていない限り、「少なくとも1つの(at least one)」又は「1つ以上の(one or more)」を意味する。また、本明細書及び図面中で開示される様々な特徴は、いずれの、及びあらゆる組み合わせで使用できることも理解される。
【0012】
本明細書中で使用される場合、用語「ガラス物品(glass article)」及び「複数のガラス物品(glass articles)」はその最も広い意味で使用され、全体又は一部がガラス又はガラスセラミック製であるいずれの物体を含む。特段の記載がない限り、全ての組成はモルパーセント(モル%)を単位として表される。
【0013】
用語「略、実質的に(substantially)」及び「約(about)」は本明細書では、いずれの量的比較、値、測定値又は他の表現に付随し得る不可避的な不確実性を表すために使用される場合があることに留意されたい。これらの用語はまた、ある量的表現が、問題となっている主題の基本的な機能を変化させることなく、言明されている基準から変動できる程度を表すためにも使用される。よって、「LiOを含まない(free of LiO)」ガラスは、LiOがガラスに能動的に添加又は混入されないものの、汚染物質としてごく少量(例えば400ppm以下)存在し得る、ガラスである。
【0014】
圧縮応力は、当該技術分野において公知の手段を用いて測定される。上記手段としては、限定するものではないが、有限会社折原製作所(日本、東京)製FSM‐6000等の市販の機器を用いた表面応力(FSM)の測定が挙げられる。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関係する応力光係数(SOC)の正確な測定に左右される。SOCは、ASTM規格C770‐98(2013年)「ガラスの応力光係数の測定のための標準試験方法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress‐Optical Coefficient)」(その内容はその全体が参照によって本出願に援用される)に記載されている手順Cの修正バージョン(これ以降「修正版」と呼ぶ)に従って測定される。手順Cの修正版は、厚さ5~10mm及び直径12.7mmのガラスディスクを試験片として使用するステップを含む。上記ディスクは等方性かつ均質であり、研磨された互いに平行な両主表面をコアドリル加工されている。上記修正版はまた、上記ディスクに印加される最大の力Fmaxを算出するステップを含む。上記力は、少なくとも20MPaの圧縮応力を生成するために十分なものでなければならない。Fmaxは、以下の等式を用いて算出される:
Fmax=7.854・D・h
ここで:Fmaxはニュートンを単位とする最大の力であり;Dはミリメートル(mm)を単位とする上記ディスクの直径であり;hは、これもまたミリメートルを単位とする光路の厚さである。印加される各力に関して、応力は以下の等式を用いて計算される:
σ(MPa)=8F/(π・D・h)
ここで:Fはニュートンを単位とする最大の力であり;Dはミリメートル(mm)を単位とする上記ディスクの直径であり;hは、これもまたmmを単位とする光路の厚さである。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「圧縮深さ(depth of compression)」及び「DOC」は、応力が実質的にゼロとなる強化ガラス内の深さ、即ちガラス内の応力がガラスを圧縮状態から引張状態に又はその逆に変化させる深さを指す。
【0016】
化学強化ガラス内の応力プロファイルは、測定光の直交偏光に関する屈折応力プロファイルの測定から推定でき、両方の偏光状態に関する屈折率プロファイルの差は複屈折を表す。本明細書に記載の応力プロファイル及び中心張力は、屈折近視野(refractive near field:RNF)法を用いて決定される。RNFシステム及び方法は、測定されるガラス物品に接触する基準ブロックを利用する。化学強化ガラスの応力プロファイルは、ガラスを通過する偏光切り替え光ビームを走査して、透過した偏光切り替え光ビームを画定することによって測定される。上記方法はまた、偏光切り替え光ビーム中の力の量を測定することによって、偏光切り替え基準信号を形成するステップを含む。偏光切り替え光を検出して偏光切り替え検出信号を形成し、これを偏光切り替え基準信号で除算して、正規化偏光切り替え検出信号を得る。次にこの正規化された信号を用いて、応力プロファイルを決定する。応力プロファイルを測定するためのシステム及び方法は、Norman H. Fontaine及びVitor M. Schneiderによる2013年10月16日出願の米国特許第8,854,623号明細書「ガラス試料のプロファイル特性を測定するためのシステム及び方法(Systems and Methods for Measuring a Profile Characteristic of a Glass Sample)」に記載されており、上記特許は、2012年10月25日出願の米国仮特許出願第61/718,273号に対する優先権を主張するものであり、上記特許及び上記仮特許出願の内容は、その全体が参照によって本出願に援用される。
【0017】
表面下の圧縮深さDOC及び圧縮応力は、上述のRNF法を用いて得られた応力プロファイルから決定できる。あるいは、圧縮深さDOC、中心張力CT及び(表面下の圧縮応力を含む)応力プロファイルは、当該技術分野において公知の偏光測定法及び機器を用いて決定できる。例えば、EXICOR(登録商標)BIREFRINGENCE MICROIMAGER(商標)(Hinds Instruments, Inc.、米国オレゴン州ヒルズボロ)等の複屈折撮像顕微鏡を用いて、強化ガラスの複屈折を評価でき、これにより圧縮深さDOC、中心張力CT及び応力プロファイルを決定できる。強化ガラス内の元素の濃度プロファイルを決定するために使用できる電子マイクロプローブ分析を、圧縮深さDOC及び応力プロファイルを決定するための手段として使用してもよい。
【0018】
本明細書中で説明されるのは、研磨材表面への落下時の損傷に対する優れた耐性を示す強化ガラス物品である。上記強化ガラス物品は、上記物品内の圧縮応力及び引張応力が上記ガラス物品の厚さtに応じて変化する、応力プロファイルを有する。
【0019】
図面全体、特に図1に関して、これらの図示は、特定の実施形態を説明する目的のものであり、本開示又は添付の特許請求の範囲を限定することを意図したものではないことが理解されるだろう。これらの図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、図面の特定の特徴部分及び特定の視野を、明瞭さ及び簡潔さのために、拡大して又は概略的に示す場合がある。
【0020】
強化ガラス物品の概略断面図が図1に示されている。ガラス物品100は、厚さt、第1の表面110、及び第2の表面112を有する。いくつかの実施形態では、ガラス物品100は、約50μm~約3000μm(3mm)の厚さtを有する。いくつかの実施形態では、厚さtは約100μm~約2000μm(2mm)であり、他の実施形態では約300μm~約1300μm(1.3mm)である。図1に示されている実施形態は、ガラス物品100を平坦な平面状シート又はプレートとして示しているが、ガラス物品100は、3次元形状又は非平面構成といった他の構成を有してもよい。ガラス物品100は、第1の表面110からガラス物品100の体積内へと圧縮深さ(DOC)dまで延在する、第1の圧縮層120を有する。図1に示す実施形態では、ガラス物品100は、第2の表面112から第2の圧縮深さdまで延在する、第2の圧縮層122も有する。特段の記載がない限り、d=d=DOCである。いくつかの実施形態では、圧縮深さDOCは少なくとも約0.10t(DOC≧0.10t)であり、いくつかの実施形態では少なくとも約0.15t(DOC≧0.10t)である。いくつかの実施形態ではDOCは0.25t以下(DOC≦0.25t)である。第1の圧縮層120及び第2の圧縮層122はそれぞれ、圧縮応力CS下にある。いくつかの実施形態では、第1の圧縮層120及び第2の圧縮層122はそれぞれ、第1の表面110及び第2の表面112において、最大圧縮応力CSを有する。ガラス物品はまた、dからdまで延在する中心領域130も有する。中心領域130は、引張応力又は物理的中心張力(CT)下にあり、これは層120及び122の圧縮応力を平衡させるか又は上記圧縮応力に反作用し、また多くの場合、ガラスの中心部、即ちt/2における引張応力として測定される。第1の圧縮層120及び第2の圧縮層122の圧縮深さd、dは、ガラス物品100を、ガラス物品100の第1の表面110及び第2の表面112に対する中心領域130への急激な衝突によって導入される傷の伝播から保護し、その一方で上記圧縮応力は、第1の圧縮層120及び第2の圧縮層122の圧縮深さd、dを通って傷が貫入する可能性を最小化する。
【0021】
ある態様では、強化ガラス物品は、厚さtに応じて変化する応力プロファイルを有する。このような応力プロファイルの概略的かつ非限定的な例が、図2に概略図で示されている。応力プロファイル200は第1の領域Aを含み、これはいくつかの実施形態では、表面及び表面のすぐそばに、圧縮応力の急激な増大、即ち「スパイク」をもたらす。第1の領域Aは、強化ガラス物品100の表面(図1の110、112)から、ガラス内へと、少なくとも約0.007t(d1≧0.0t)又は少なくとも約0.010t(d1≧0.010t)である第1の深さd1まで延在する。いくつかの実施形態では、d1は0.025t以下(d1≦0.025t)である。領域Aは、ガラス物品の表面(図2の位置=0μm)において、少なくとも約280MPaの最大圧縮応力CS1を有する。
【0022】
応力プロファイル200は更に、少なくともd1の深さから、ガラス物品の表面下の第2の深さd2まで延在する、圧縮下の第2の領域(図2の領域B)を含み、d2は約0.0625t以下(d2≦0.0625t)である。いくつかの実施形態では、d2は約20μm~約50μm(20μm≦d2≦50μm)である。応力プロファイルは、深さd1における圧縮応力から局所的圧縮応力最大値CS2まで上昇し、この圧縮応力最大値CS2から、第2の深さd2における第2の圧縮応力まで低下する。「埋没した(buried)」局所的最大値CS2は、ガラスの表面の下方の、d1より大きくd2より小さい深さにおいて、領域B内に発生し、CS1>CS2である。いくつかの実施形態では、局所的最大圧縮応力CS2は、約125MPa~約250MPa(125MPa≦CS2≦250MPa)又は50MPa~約300MPa(50MPa≦CS2≦300MPa)である。局所的最大値CS2が発生する地点を越えると、深さが増大すると共に圧縮応力は低下する。
【0023】
応力プロファイル200はまた、圧縮応力下の第3の領域C(図2)も含む。第3の領域Cは、表面の下方の第3の深さd3(図示せず)(ただしd2≦d3)から圧縮深さDOCまで延在し、即ちd2≦d3<DOCである。いくつかの実施形態では、圧縮深さDOCは少なくとも約0.10t(DOC≧0.10t)であり、いくつかの実施形態では少なくとも約0.15t(DOC≧0.10t)である。いくつかの実施形態では、DOCは0.25t以下(DOC≦0.25t)である。
【0024】
応力プロファイル200は更に、引張領域(図2のD)を含み、これは、圧縮深さDOCから、強化ガラス物品の厚さtの半分(t/2)にある中点又は中心まで、延在する。いくつかの実施形態では、引張応力又は物理的な中心張力は、強化ガラス物品の中心t/2において、約100MPaの最大絶対値を有する。あるいは、引張応力をゼロ未満とする慣例を用いる場合、引張応力はt/2において、-100MPaの最小値を有する。
【0025】
3段階イオン交換プロセスを用いて、上述の応力プロファイル200を達成する。従って、ガラスをイオン交換して上述の応力プロファイルを得る方法を提供する。
【0026】
第1の段階では、第1のアルカリカチオンを含むガラス物品を、第1のイオン交換浴中に浸漬する。第1のイオン交換浴は、上記第1のアルカリカチオン及び第2のアルカリカチオンを含み、第2のアルカリカチオンは第1のアルカリカチオンとは異なり、第1のアルカリカチオンよりサイズが大きい。いくつかの実施形態では、第1のカチオンはNaであり、第2のカチオンはKである。Na及びKカチオンは、本明細書に記載の全てのイオン交換浴に、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩等の塩として導入される。硝酸塩KNO及びNaNOが最も一般的に使用される。いくつかの実施形態では、第1のアルカリカチオンは、Li及びNaを含んでよい。いくつかの実施形態では、第2のカチオンは、K、Rb及びCsのうちの少なくとも1つを含んでよい。いくつかの実施形態では、第1のアルカリカチオンはLiであってよく、第2のアルカリカチオンは、Na、K、Rb及びCsのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0027】
第1のイオン交換浴中において、第1のアルカリカチオンの塩は、浴の50重量%未満、いくつかの実施形態では約20重量%~約30重量%を構成し、浴の残部は、第2のアルカリカチオンの塩と、少量(<5重量%)の安定剤等の添加剤とで構成される。第1のイオン交換段階は、約450℃~約470℃で約18時間~約30時間実施される。特定の実施形態では、第1のイオン交換段階は、約20重量%~約30重量%のNaNO及び約70重量%~約80重量%のKNOを含むイオン交換浴中で、460℃で約24時間実施される。
【0028】
第1のイオン交換浴中でのイオン交換後、ガラスを、第1のアルカリカチオン及び第2のアルカリカチオンを含む第2のイオン交換浴中に浸漬する。第2のイオン交換段階は、第1のイオン交換段階において導入されたガラス表面付近の第2のアルカリカチオンの一部を、第1のアルカリカチオンで置換する。第1のアルカリカチオンがNaであり、第2のアルカリカチオンがKであるこれらの例では、例えば第2のイオン交換段階は、ガラス表面付近のKイオンをNaイオンで置換する。よって第2のイオン交換段階は、上述の応力プロファイルの領域B(図2)において、ガラス物品の表面の下方に「埋没した」、局所的圧縮応力及びK濃度最大値を生成する役割を果たす。
【0029】
第2のイオン交換浴は、約60重量%~約70重量%の第1のアルカリカチオンの塩を含み、浴の残部は、第2のアルカリカチオンの塩と、少量(<5重量%)の安定剤等の添加剤とによって構成される。第2のイオン交換段階は、約450℃~約470℃で約4時間~約8時間実施される。特定の実施形態では、第2のイオン交換段階は、約65重量%のNaNO及び約35重量%のKNOを含むイオン交換浴中で、460℃で約6時間実施される。
【0030】
第2のイオン交換段階の後、ガラスを第3のイオン交換浴中でイオン交換する。この第3のイオン交換段階は、ガラスの表面及びそのすぐそばの領域(上述の第1の領域A)に追加量の第2のアルカリカチオンを導入することにより、表面に圧縮応力最大値、即ち「スパイク」を生成する。
【0031】
第3のイオン交換浴は、75重量%~約100重量%の第2のアルカリカチオンの塩を含み、浴の残部は、第1のアルカリカチオンの塩と、少量(<5重量%)の安定剤等の添加剤とによって構成される。第3のイオン交換段階は、約380℃~約400℃で約0.15時間~約0.8時間実施される。特定の実施形態では、第3のイオン交換段階は、約15重量%~約25重量%のNaNO及び約75重量%~約85重量%のKNOを含む浴中で、390℃で約0.2時間~約0.6時間実施される。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラス物品は、約50ギガパスカル(GPa)~約120GPaのヤング率を有する。いくつかの実施形態では、ヤング率は約55GPa~約100GPaであり、更に他の実施形態では約60GPa~約90GPaである。
【0033】
いくつかの実施形態では、上記方法は更に、第1及び第2のアルカリカチオンをガラス物品中に更に深く拡散させる、少なくとも1つの熱拡散段階を含む。いくつかの実施形態では、拡散済みカチオンが深さt/2のガラスの中心部に至るまで、第1のアルカリカチオン及び第2のアルカリカチオンをガラスの対向する表面から拡散させる。いくつかの実施形態では、上記熱拡散段階は、ガラスを0.5時間~40時間にわたって約400℃~約500℃まで加熱するステップを含む。上記熱拡散段階は、第1のイオン交換段階と第2のイオン交換段階との間、及び/又は第2のイオン交換段階と第3のイオン交換段階との間に行ってよい。上述の3段階イオン交換プロセスのためのイオン交換パラメータを表1に列挙する。3段階イオン交換の研究において使用したガラス試料は、800μmの厚さと、約58モル%のSiO、約16モル%のAl、約6モル%P、約17モル%のNaO及び約3モル%のMgOの公称組成とを有していた。
【0034】
【表1】
【0035】
典型的な180グリット及び30グリットのサンドペーパーの表面の統計的分析を実施して、研磨材表面への落下時の強化ガラス物品の性能を決定し、また研磨材表面の平均粒径(寸法及び高さを含む)を分析した。統計モデルは、180グリット及び30グリットサンドペーパーの寸法及び高さ並びに密度の測定に基づいて得られた。本明細書に記載のガラスを組み込み、ある落下高さから落下させられる、ハンドヘルド電子デバイス等のデバイスの所与の質量に対して、ある程度の量のエネルギが移動することになる。従って最適な応力プロファイルはある程度、落下試験において表面として使用されるサンドペーパーの特徴部分の分布に左右される。
【0036】
厚さ800μmのガラス物品の最適な落下性能のための、30グリット及び180グリットサンドペーパーの表面形態に基づく応力プロファイルの統計的目標を、図3に示す。不完全ではあるが、類推によって、単一段階(SIOX)又は2段階イオン交換(デュアルIOX若しくはDIOX)プロセスによって容易には実現できない独特の応力プロファイル目標が得られる。しかしながら3段階(トリプルIOX又はTRIOX)イオン交換プロセスは、この経験的な目標プロファイルに相当近づくことができる。上記目標応力プロファイルは、材料のヤング率にも左右される。図3に示されている、ヤング率が約65GPaのガラスに関する目標応力プロファイルは、3つの誤差関数(erfc)に基づく統計モデルを用いて算出された、理想的なプロファイルである。
【0037】
図4は、図3に示されている最適な性能のための応力プロファイルの統計的目標のプロットの詳細であり、上記応力プロファイルの、表面(0μm位置)からガラス内の300μmまでの部分を示す。この目標は、3つの誤差関数(erfc)に基づく統計モデルを用いて算出された、理想的なプロファイルである。
【0038】
統計的目標付近で実施された、表1に列挙した4つのイオン交換の試行に対して、拡散モデリングも実施した。上記目標は、3つの誤差関数(erfc)に基づく統計モデルを用いて算出された、理想的なプロファイルである。拡散モデリングによって得られた推定応力プロファイルが図5にプロットされている。図6は、図5にプロットされたモデル化応力プロファイルの、0~300μm領域の詳細を示す。ガラスが熱強化またはテンパリングされ、約100MPaの中心張力CTを有する場合に得られる、放物線状の応力プロファイル(図5及び6のA)も、比較のために図5及び6に含まれている。本明細書に記載の3段階イオン交換プロセスは、これらの図に示されているモデル化プロファイルをたどり、熱強化ガラスに関する放物線状プロファイルは、圧縮応力の表面「スパイク」及び圧縮応力の局所的な、即ち「埋没した」最大値を有しない。
【0039】
落下試験を、表1に列挙し上で説明したイオン交換済み試料に対して実施した。2段階イオン交換を用いてイオン交換した、同一の組成及び厚さの基準試料も、落下試験に供した。2段階イオン交換プロセスは:46~50重量%のNaNOを含有する浴(この浴の残部はKNOで構成される)中での、450℃で7.15時間の第1のイオン交換と;0.5~3重量%のNaNOを含有する浴(この浴の残部はKNOで構成される)中での、390℃で12分間の第2のイオン交換とを含む。典型的な落下試験を図10に概略図で示す。化学強化ガラス310の各試料を、一般的な「スマート」フォンのサイズ、質量及びバランスを近似した標準試験ビヒクル320に取り付け、落下高さhから、研磨材表面335を有するサンドペーパー330のシート上に落下させた。いくつかの実施形態では、研磨材表面は、180グリット炭化ケイ素サンドペーパー表面であった。落下高さhは、高さ増分が0.1メートルで、約0.2メートル~2.2メートルであった。いくつかの実施形態では、ガラス物品は、約220cmの高さから180グリット炭化ケイ素サンドペーパー上への落下時、少なくとも10個の試料の落下に基づいて、少なくとも約80%又は少なくとも約90%の残存率を有する。落下試験はまず、180グリットの炭化ケイ素サンドペーパー表面を用いて実施した。180グリットのサンドペーパー表面に対する落下試験に、目視で観察できる損傷(例えば破断、割れ、擦傷等)なしに耐えた試料を、次に、30グリットのサンドペーパー表面を用いた同一の試験手順に供する。落下試験の結果を表2にまとめる。
【0040】
【表2】
【0041】
表2に見られるように、3段階又はトリプルイオン交換済みの試料は全て、基準試料より良好な性能を示した。30グリット落下試験では、表1のパラメータセット4を用いてイオン交換した試料は、基準に関して観察されたもののおよそ2.5倍の平均破損高さを示した。
【0042】
180グリットサンドペーパー落下表面を用いた落下試験の実験も、異なる複数の方法を用いて化学強化した試料に対して実施した。全てのガラスは同一の組成(約58モル%のSiO、約16モル%のAl、約6モル%のP、約17モル%のNaO及び約3モル%のMgOの公称組成)並びに厚さ(0.5mm)のものであった。上述のように、各試料を、増分を0.1メートルとして、約0.2メートル~2.2メートルの高さから、サンドペーパー表面へと落下させた。落下試験の結果を表3にまとめる。試料グループAは、単一イオン交換(SIOX)プロセスによって得られた応力プロファイルを有するガラス試料からなり;試料グループBは、ダブルイオン交換(DIOX)プロセスによって得られた応力プロファイルを有するガラス試料からなり;試料グループCは、SIOXプロセス及びそれに続く熱的焼鈍によって得られた応力プロファイルを有するガラス試料からなり;試料グループDは、SIOXプロセスによって得られた応力プロファイルを有し、かつ表面において比較的小さい圧縮応力を有する、ガラス試料からなる。
【0043】
試料グループEは、ガラスの表面の下方の局所的な又は「埋没した」圧縮最大値を生成するために上述の表1に記載の第1及び第2のイオン交換段階を用いてイオン交換したガラス試料からなる。試料グループEのガラスの応力プロファイルは、図7に示されている応力プロファイルに近いものとなり得、この図7に示されている応力プロファイルは、80重量%のNaNO及び20重量%のKNOを含有する溶融塩浴中での、410℃で16時間の第1のイオン交換と、これに続く、10重量%のNaNO及び90重量%のKNOを含有する溶融塩浴中での、410℃で10時間の第2のイオン交換とを含む、2段階イオン交換プロセスを用いて得られたものである。既に上述したRNFシステム及び方法を用いて、完全な応力プロファイルを測定した。図7に示されている応力プロファイルは、約20μm~約50μmの深さにおける約140MPaの埋没した局所的圧縮応力最大値と、105μmの圧縮深さDOCとを示す。図7の応力プロファイルの表面における応力は限定されているものの、上記応力プロファイルは、本明細書に記載のガラスの中間領域、即ち第2の領域Bの態様(埋没した圧縮最大値及びDOC)を示し、従って領域Bの上記ガラスのプロファイルの近似に使用できる。
【0044】
グループEの試料に関する破損時の平均落下高さは90.5cmであり、一方DIOXガラス(試料グループB)及びSIOXガラス(試料グループA)に関する破損時の平均落下高さは、それぞれ48cm及び35.2cmである。よって、試料グループEの落下は、DIOXによって得られる応力プロファイルに関して観察される落下性能の約2倍優れており、またSIOXプロセスによって得られる応力プロファイルに関して観察される落下性能の2.5倍優れている。
【0045】
【表3】
【0046】
図8は、3段階イオン交換プロセスの第3の段階を使用して、全体的な応力プロファイルをガラスの粉砕性限界未満に維持しながら、表面及び表面のすぐそばに急激な圧縮「スパイク」を発生させる方法を示す、プロットである。図8は、2段階即ちデュアルIOXプロセスを通して改善された性能を提供できる、0.55mmの厚さに関する複数の推定応力プロファイルを含む。この厚さに関するデュアルIOX(DIOX)プロファイル(A)も、比較のために図8に示す。得られる応力プロファイルは、80μm超のDOC、約600MPa~約850MPaの最大値を有する圧縮応力スパイク、及びこれに続く約20μm~約50μmの中間領域を有し、上記中間領域では、上記圧縮応力が、同一の中心張力CTを有する同一のガラスに関してデュアルIOX非粉砕性レシピによって提供されるものより大きくなる。
【0047】
本明細書に記載のガラスは、イオン交換性アルカリアルミノシリケートガラスである。一実施形態では、アルカリアルミノシリケートガラスは、SiO、Al、P、及び少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物(RO)を含み、0.75≦[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]≦1.2であり、M=Al+Bである。いくつかの実施形態では、アルカリアルミノシリケートガラスは:約40モル%~約70モル%のSiO;0モル%~約28モル%のB;0モル%~約28モル%のAl;約1モル%~約14モル%のP;及び約12モル%~約16モル%のROを含むか又は基本的にこれらからなり、また特定の実施形態では:約40~約64モル%のSiO;0モル%~約8モル%のB;約16モル%~約28モル%のAl;約2モル%~約12モル%のP;及び約10~約16モル%のRO又は約12モル%~約16モル%のROを含むか又は基本的にこれらからなり、ROはNaOを含む。いくつかの実施形態では、11モル%≦M3≦30モル%であり;いくつかの実施形態では、13モル%≦RO≦30モル%であり、ROは、ガラス中に存在するアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び遷移金属一酸化物の合計である。いくつかの実施形態では、ガラスはリチウム非含有である。他の実施形態では、ガラスは、最大約10モル%のLiO、又は最大約7モル%のLiOを含んでよい。これらのガラスは、Dana Craig Bookbinderらによる、2011年11月28日出願の米国特許第9,346,703号明細書「深い圧縮層及び高い損傷閾値を有するイオン交換性ガラス(Ion Exchangeable Glass with Deep Compressive Layer and High Damage Threshold)」に記載されており、これは、2010年11月30日出願の同一タイトルの米国仮特許出願第61/417,941号からの優先権を主張するものであり、上記特許及び仮特許出願の内容は、その全体が参照によって本出願に援用される。
【0048】
特定の実施形態では、アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約2モル%のP又は少なくとも約4モル%のPを含み、(M(モル%)/RO(モル%))<1であり、M=Al+Bであり、ROは、アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する1価及び2価カチオン酸化物の合計である。いくつかの実施形態では、上記1価及び2価カチオン酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ガラスはリチウム非含有であり:約40モル%~約70モル%のSiO;約11モル%~約25モル%のAl;約2モル%のP、又は約4モル%~約15モル%のP;約10モル%のNaO、又は約13モル%~約25モル%のNaO;約13~約30モル%のRO(ここでROは、ガラス中に存在するアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び遷移金属一酸化物の合計である);約11モル%~約30モル%のM、(ただしM=Al+B);0モル%~約1モル%KO;0モル%~約4モル%のB;並びに3モル%以下の、TiO、MnO、Nb、MoO、Ta、WO、ZrO、Y、La、HfO、CdO、SnO、Fe、CeO、As、Sb、Cl及びBrのうちの1つ以上を含むか又は基本的にこれらからなり、1.3<[(P+RO)/M]≦2.3であり、ROは、ガラス中に存在する1価カチオン酸化物の合計である。いくつかの実施形態では、ガラスはリチウム非含有であり、他の実施形態では、最大約10モル%のLiO、又は約7モル%のLiOを含む。このガラスは、Timothy M. Grossによる2012年11月15日出願の米国特許第9,156,724号明細書「高い割れ開始閾値を有するイオン交換性ガラス(Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold)」、及びTimothy M. Grossによる2012年11月15日出願の米国特許第8,756,262号明細書「高い割れ開始閾値を有するイオン交換性ガラス(Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold)」に記載されており、これらの特許はいずれも、2011年11月16日出願の米国仮特許出願第61/560,434号に対する優先権を主張するものである。上記特許及び出願の内容は、その全体が参照によって本出願に援用される。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルカリアルミノシリケートガラスは、スロットドロー及びフュージョンドロープロセスといった当該技術分野において公知のダウンドロープロセスによって成形可能である。
【0050】
フュージョンドロープロセスは、薄型ガラスシートの大規模製造に使用されている産業的技法である。フロートプロセス又はスロットドロープロセスといった他のフラットガラス製造技法に比べて、フュージョンドロープロセスは、平坦性及び表面品質が優れた薄型ガラスをもたらす。その結果、フュージョンドロープロセスは、液晶ディスプレイのための、及びノートブック、エンターテインメントデバイス、タブレット、ラップトップ等といった個人用電子デバイスのためのカバーガラスのための、薄型ガラスの製作において、支配的な製造技法となっている。
【0051】
フュージョンドロープロセスは、典型的にはジルコン又は別の耐火材料製である、「アイソパイプ」としても公知であるトラフ上に、溶融ガラスを流すことを伴う。溶融ガラスはアイソパイプの上部の両側から溢れ、アイソパイプの底部で出会って単一のシートを形成し、最終的なシートの内部のみがアイソパイプと直接接触していたことになる。最終的なガラスシートの露出した表面はいずれも、ドロープロセス中にアイソパイプ材料に接触していないため、ガラスの外側表面は美しい品質を有し、後続の仕上げを必要としない。
【0052】
本明細書に記載のガラスは、ダウンドロープロセスで使用されるジルコンアイソパイプ及び他のハードウェアに化学的に適合しており、即ち上記ガラス溶融物は、感知できる程度にジルコンと反応して、ドロー加工されたガラス中にジルコニア等の固体包有物を発生させるジルコンの分解を引き起こすことがない。このような実施形態では、ジルコンが破壊されてガラス溶融物と反応する温度であるTbreakdownは、ガラス又はガラス溶融物の粘度が35キロポアズ(kP)となる温度であるT35kPよりも高く、即ちTbreakdown>T35kPである。
【0053】
フュージョンドロー加工できるものとなるためには、ガラスは十分に高い液相粘度(即ち液相線温度における溶融ガラスの粘度)を有していなければならない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスは、少なくとも約100キロポアズ(kP)の液相粘度を有するか、又はいくつかの実施形態では少なくとも約130kPの液相粘度を有する。いくつかの実施形態では、ガラスの液相粘度は少なくとも約200キロポアズ(kP)であり、他の実施形態では少なくとも約500kPである。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラス物品及びイオン交換済みガラス物品は、携帯電話又はスマートフォン、ラップトップコンピュータ、タブレット等の消費者向け電気製品の一部分を形成する。消費者向け電気製品(例えばスマートフォン)の概略図を図9に示す。消費者向け電気製品900は典型的には、前面912、背面914及び側面916を有するハウジング910を備え、少なくとも部分的にハウジング910の内部にある電子構成部品(図示せず)を含む。上記電子構成部品は少なくとも、電源、コントローラ、メモリ及びディスプレイ920を含む。いくつかの実施形態では、ディスプレイ920はハウジングの前面912に、又は前面912に隣接して設けられる。本明細書に記載のイオン交換済みガラスを含むカバーガラス930を、ハウジング910の前面912に、又は前面912に隣接して設けることにより、カバーガラス930はディスプレイ920を覆うように位置決めされて、ディスプレイ920を、衝突によって引き起こされる損傷から保護する。いくつかの実施形態では、ディスプレイ920及び/又はカバーガラス930は曲げることができる。いくつかの実施形態では、カバー基板930、又はハウジング910の一部分のうちの少なくとも一方は、本明細書中で開示されている強化物品のうちのいずれかを含んでよい。
【0055】
態様(1)は、厚さtを有するガラス物品を含み、上記ガラス物品は、上記ガラス物品の表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層を備え、上記ガラス物品内の応力は上記厚さtに応じて変化して、ある応力プロファイルを形成し、上記応力プロファイルは:
上記ガラス物品の表面から上記ガラス内へと深さd1まで延在し、d1≦0.025tであり、上記表面において最大圧縮応力CS1を有し、上記最大圧縮応力CS1は少なくとも約280MPaである、第1の領域;
少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、d2≦0.0625tであり、圧縮応力最大値CS2を有し、上記応力プロファイルは、上記深さd1における圧縮応力から上記圧縮応力最大値CS2へと上昇し、上記圧縮応力最大値CS2から第2の深さd2における第2の圧縮応力へと低下する、第2の領域;及び
上記ガラス物品の第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3かつDOC≧0.10tである、第3の領域
を備える。
【0056】
上記ガラス物品は約50GPa~約120GPaのヤング率を有する、態様(1)に記載の態様(2)。
【0057】
125MPa≦CS2≦250MPa又は50MPa≦CS2≦300MPaである、態様(1)又は(2)に記載の態様(3)。
【0058】
上記応力プロファイルは、上記圧縮深さDOCから、t/2における上記ガラス物品の中心まで延在する、引張領域を含み、上記引張領域は、t/2において最大約100MPaの最大引張応力を有する、態様(1)~(3)のいずれか1つに記載の態様(4)。
【0059】
50μm≦t≦3000μmである、態様(1)~(4)のいずれか1つに記載の態様(5)。
【0060】
0.15t≦DOC≦0.25tである、態様(1)~(5)のいずれか1つに記載の態様(6)。
【0061】
上記ガラス物品は、高さ約220cmから180グリットの炭化ケイ素サンドペーパー表面上への落下試験に供した場合に、少なくとも10個の試料の落下に基づいて少なくとも約90%の残存率を有する、態様(1)~(6)のいずれか1つに記載の態様(7)。
【0062】
上記ガラス物品はアルカリアルミノシリケートガラスを含む、態様(1)~(7)のいずれか1つに記載の態様(8)。
【0063】
上記アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約4モル%のPを含み、(M(モル%)/RO(モル%))<1であり、M=Al+Bであり、ROは、上記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する1価及び2価カチオン酸化物の合計である、態様(8)に記載の態様(9)。
【0064】
上記アルカリアルミノシリケートガラスは:約40モル%~約70モル%のSiO;約11モル%~約25モル%のAl;約2モル%~約15モル%のP;約10モル%~約25モル%のNaO;約10~約30モル%のROを含み、ROは、ガラス中に存在するアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び遷移金属一酸化物の合計である、態様(8)に記載の態様(10)。
【0065】
上記ガラス物品はフュージョン成形できるものである、態様(1)~(10)のいずれか1つに記載の態様(11)。
【0066】
態様(12)は:
前面、背面及び側面を有するハウジング;
少なくとも部分的に上記ハウジングの内部にある電子構成部品であって、上記電子構成部品は少なくとも、コントローラ、メモリ及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの前面に、又は前面に隣接して設けられる、電子構成部品;
上記ディスプレイを覆うように配置されたカバーガラス
を備える、消費者向け電子デバイスを含み、
上記ハウジングの一部分又は上記カバーガラスのうちの少なくとも一方は、態様(1)~(11)のいずれか1つに記載のガラス物品を含む。
【0067】
態様(13)は、厚さtと、約50GPa~約120GPaのヤング率とを有するガラス物品を含み、上記ガラス物品は、上記ガラスの表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層を備え、上記ガラス物品内の応力は上記厚さtに応じて変化して、ある応力プロファイルを形成し、上記応力プロファイルは:
上記ガラス物品の表面から上記ガラス物品内へと深さd1まで延在し、d1≦20μmであり、上記表面において最大圧縮応力CS1を有し、上記最大圧縮応力CS1は少なくとも約280MPaである、第1の領域;
少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、20μm≦d2≦50μmであり、圧縮応力最大値CS2を有し、上記応力プロファイルは、上記深さd1における圧縮応力から上記圧縮応力最大値CS2へと上昇し、上記圧縮応力最大値CS2から第2の深さd2における第2の圧縮応力へと低下する、第2の領域;及び
上記ガラス物品の第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3かつDOC≧0.15tである、第3の領域
を備える。
【0068】
125MPa≦CS2≦250MPa又は50MPa≦CS2≦300MPaである、態様(13)に記載の態様(14)。
【0069】
上記応力プロファイルは、上記圧縮深さDOCから、t/2における上記ガラス物品の中心まで延在する、引張領域を含み、上記引張領域は、t/2において最大約100MPaの最大引張応力を有する、態様(13)又は(14)に記載の態様(15)。
【0070】
50μm≦t≦3000μmである、態様(13)~(15)のいずれか1つに記載の態様(16)。
【0071】
0.15t≦DOC≦0.25tである、態様(13)~(16)のいずれか1つに記載の態様(17)。
【0072】
上記ガラス物品は、高さ約220cmから180グリットの炭化ケイ素サンドペーパー表面上への落下試験に供した場合に、少なくとも10個の試料の落下に基づいて少なくとも約90%の残存率を有する、態様(13)~(17)のいずれか1つに記載の態様(18)。
【0073】
上記ガラス物品はアルカリアルミノシリケートガラスを含む、態様(13)~(18)のいずれか1つに記載の態様(19)。
【0074】
上記アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約4モル%のPを含み、(M(モル%)/RO(モル%))<1であり、M=Al+Bであり、ROは、上記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する1価及び2価カチオン酸化物の合計である、態様(19)に記載の態様(20)。
【0075】
上記アルカリアルミノシリケートガラスは:約40モル%~約70モル%のSiO;約11モル%~約25モル%のAl;約2モル%~約15モル%のP;約10モル%~約25モル%のNaO;約10~約30モル%のROを含み、ROは、ガラス中に存在するアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び遷移金属一酸化物の合計である、態様(19)に記載の態様(21)。
【0076】
上記ガラスはフュージョン成形できるものである、態様(13)~(21)のいずれか1つに記載の態様(22)。
【0077】
態様(23)は:
前面、背面及び側面を有するハウジング;
少なくとも部分的に上記ハウジングの内部にある電子構成部品であって、上記電子構成部品は少なくとも、コントローラ、メモリ及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの前面に、又は前面に隣接して設けられる、電子構成部品;
上記ディスプレイを覆うように配置されたカバーガラス
を備える、消費者向け電子デバイスを含み、
上記ハウジングの一部分又は上記カバーガラスのうちの少なくとも一方は、態様(13)~(22)のいずれか1つに記載のガラス物品を含む。
【0078】
態様(24)は、厚さtと、約50GPa~約120GPaのヤング率とを有するガラス物品を含み、上記ガラス物品は、上記ガラス物品の表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層を備え、上記ガラス物品内の応力は上記厚さtに応じて変化して、ある応力プロファイルを形成し、上記応力プロファイルは:
上記ガラス物品の表面から上記ガラス物品内へと深さd1まで延在し、d1≦0.025tであり、上記表面において最大圧縮応力CS1を有し、上記最大圧縮応力CS1は少なくとも約280MPaである、第1の領域;
少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、d2≦0.0625tであり、圧縮応力最大値CS2を有し、50MPa≦CS2≦300MPa又は125MPa≦CS2≦250MPaであり、上記応力プロファイルは、上記深さd1における圧縮応力から上記圧縮応力最大値CS2へと上昇し、上記圧縮応力最大値CS2から第2の深さd2における第2の圧縮応力へと低下する、第2の領域;及び
上記ガラス物品の第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3かつDOC≧0.15tである、第3の領域
を備える。
【0079】
上記ガラス物品は、高さ約220cmから180グリットの炭化ケイ素サンドペーパー表面上への落下試験に供した場合に、少なくとも5個の試料の落下に基づいて少なくとも約90%の残存率を有する、態様(24)に記載の態様(25)。
【0080】
上記応力プロファイルは、上記圧縮深さDOCから、t/2における上記ガラス物品の中心まで延在する、引張領域を含み、上記引張領域は、t/2において最大約100MPaの最大引張応力を有する、態様(24)又は(25)のいずれか1つに記載の態様(26)。
【0081】
50μm≦t≦3000μmである、態様(24)~(26)のいずれか1つに記載の態様(27)。
【0082】
0.15t≦DOC≦0.25tである、態様(24)~(27)のいずれか1つに記載の態様(28)。
【0083】
上記ガラス物品は、高さ約220cmから180グリットの炭化ケイ素サンドペーパー表面上への落下試験に供した場合に、少なくとも10個の試料の落下に基づいて少なくとも約90%の残存率を有する、態様(24)~(28)のいずれか1つに記載の態様(29)。
【0084】
上記ガラス物品はアルカリアルミノシリケートガラスを含む、態様(24)~(29)のいずれか1つに記載の態様(30)。
【0085】
上記アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約4モル%のPを含み、(M(モル%)/RO(モル%))<1であり、M=Al+Bであり、ROは、上記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する1価及び2価カチオン酸化物の合計である、態様(30)に記載の態様(31)。
【0086】
上記アルカリアルミノシリケートガラスは:約40モル%~約70モル%のSiO;約11モル%~約25モル%のAl;約2モル%~約15モル%のP;約10モル%~約25モル%のNaO;約10~約30モル%のROを含み、ROは、ガラス中に存在するアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び遷移金属一酸化物の合計である、態様(30)に記載の態様(32)。
【0087】
上記ガラス物品はフュージョン成形できるものである、態様(24)~(32)のいずれか1つに記載の態様(33)。
【0088】
態様(34)は:
前面、背面及び側面を有するハウジング;
少なくとも部分的に上記ハウジングの内部にある電子構成部品であって、上記電子構成部品は少なくとも、コントローラ、メモリ及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの前面に、又は前面に隣接して設けられる、電子構成部品;
上記ディスプレイを覆うように配置されたカバーガラス
を備える、消費者向け電子デバイスを含み、
上記ハウジングの一部分又は上記カバーガラスのうちの少なくとも一方は、態様(24)~(33)のいずれか1つに記載のガラス物品を含む。
【0089】
態様(35)は、ガラスの強化方法を含み、上記ガラスは第1のアルカリカチオンを含み、第1の表面と、上記第1の表面の反対側の第2の表面と、厚さtと、t/2における中心部とを有し、上記ガラス物品はある応力プロファイルを有し、上記応力プロファイルは:上記ガラス物品の上記第1の表面から上記ガラス内へと深さd1まで延在し、d1≦0.025tであり、上記表面において最大圧縮応力CS1を有する、第1の領域と;少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、d2≦0.0625tであり、圧縮応力最大値CS2を有する、第2の領域と;上記ガラスの第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3である、第3の領域とを備え、上記方法は:
a.第1のイオン交換浴中に上記ガラスを浸漬するステップであって、上記第1のイオン交換浴は、第1のアルカリカチオン及び第2のアルカリカチオンを含み、上記第1のイオン交換浴は、約20重量%~約30重量%の上記第1のアルカリカチオンのうちの少なくとも1つの塩を含み、上記第2のアルカリカチオンは上記第1のアルカリカチオンとは異なり、上記イオン交換浴に由来する上記第2のアルカリカチオンが、上記ガラス物品中の上記第1のアルカリカチオンを置換する、ステップ;
b.上記第1のイオン交換浴中に上記ガラス物品を浸漬する上記ステップの後に、上記ガラスを第2のイオン交換浴中に浸漬するステップであって、上記第2のイオン交換浴は上記第1のアルカリカチオン及び上記第2のアルカリカチオンを含み、上記第2のイオン交換浴は、約60重量%~約80重量%の上記第1のアルカリカチオンの少なくとも1つの塩を含む、ステップ;並びに
c.上記第2のイオン交換浴中に上記ガラス物品を浸漬する上記ステップの後に、上記ガラスを第3のイオン交換浴中に浸漬するステップであって、上記第2のイオン交換浴は上記第1のアルカリカチオン及び上記第2のアルカリカチオンを含み、上記第3のイオン交換浴は、約75重量%~約100重量%の上記第2のアルカリカチオンの少なくとも1つの塩を含む、ステップ
を含む。
【0090】
上記第1のイオン交換浴中に上記ガラス物品を浸漬する上記ステップ及び上記第2のイオン交換浴中に上記ガラス物品を浸漬する上記ステップのうちの少なくとも一方に続く、熱拡散ステップを更に含み、上記熱拡散ステップは、上記ガラスを約400℃~約500℃の温度まで加熱するステップを含む、態様(35)に記載の態様(36)。
【0091】
上記熱拡散ステップは、上記ガラスを上記温度で少なくとも約16時間加熱するステップを含む、態様(35)又は(36)に記載の態様(37)。
【0092】
上記最大圧縮応力CS1は少なくとも約280MPaである、態様(35)~(37)のいずれか1つに記載の態様(38)。
【0093】
125MPa≦CS2≦250MPa又は50MPa≦CS2≦300MPaである、態様(35)~(38)のいずれか1つに記載の態様(39)。
【0094】
上記ガラス物品はアルカリアルミノシリケートガラスを含む、態様(35)~(39)のいずれか1つに記載の態様(40)。
【0095】
上記アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約4モル%のPを含み、(M(モル%)/RO(モル%))<1であり、M=Al+Bであり、ROは、上記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する1価及び2価カチオン酸化物の合計である、態様(40)に記載の態様(41)。
【0096】
上記アルカリアルミノシリケートガラスは:約40モル%~約70モル%のSiO;約11モル%~約25モル%のAl;約2モル%~約15モル%のP;約10モル%~約25モル%のNaO;約10~約30モル%のROを含み、ROは、ガラス中に存在するアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び遷移金属一酸化物の合計である、態様(41)に記載の態様(42)。
【0097】
上記ガラス物品をフュージョン成形するステップを更に含む、態様(35)~(42)のいずれか1つに記載の態様(43)。
【0098】
例示を目的として典型的な実施形態を記載したが、以上の説明は、本開示又は添付の請求項の範囲に対する限定と考えられるものではないものとする。従って、本開示又は添付の請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正、適合及び代替例が当業者には想起され得る。
【0099】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0100】
実施形態1
厚さtを有するガラス物品であって、
上記ガラス物品は、上記ガラス物品の表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層を備え、
上記ガラス物品内の応力は上記厚さtに応じて変化して、ある応力プロファイルを形成し、
上記応力プロファイルは:
上記ガラス物品の表面から上記ガラス内へと深さd1まで延在し、d1≦0.025tであり、上記表面において最大圧縮応力CS1を有し、上記最大圧縮応力CS1は少なくとも約280MPaである、第1の領域;
少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、d2≦0.0625tであり、圧縮応力最大値CS2を有し、上記応力プロファイルは、上記深さd1における圧縮応力から上記圧縮応力最大値CS2へと上昇し、上記圧縮応力最大値CS2から第2の深さd2における第2の圧縮応力へと低下する、第2の領域;及び
上記ガラス物品の第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3かつDOC≧0.10tである、第3の領域
を備える、ガラス物品。
【0101】
実施形態2
上記ガラス物品は約50GPa~約120GPaのヤング率を有する、実施形態1に記載のガラス物品。
【0102】
実施形態3
125MPa≦CS2≦250MPaである、実施形態1又は2に記載のガラス物品。
【0103】
実施形態4
上記応力プロファイルは、上記圧縮深さDOCから、t/2における上記ガラス物品の中心まで延在する、引張領域を含み、
上記引張領域は、t/2において最大約100MPaの最大引張応力を有する、実施形態1~3のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0104】
実施形態5
50μm≦t≦3000μmである、実施形態1~4のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0105】
実施形態6
0.15t≦DOC≦0.25tである、実施形態1~5のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0106】
実施形態7
上記ガラス物品は、高さ約220cmから180グリットの炭化ケイ素サンドペーパー表面上への落下試験に供した場合に、少なくとも10個の試料の落下に基づいて少なくとも約90%の残存率を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0107】
実施形態8
上記ガラス物品はアルカリアルミノシリケートガラスを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0108】
実施形態9
上記アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約4モル%のPを含み、
モル%/ROモル%<1であり、
=Al+Bであり、
Oは、上記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する1価及び2価カチオン酸化物の合計である、実施形態8に記載のガラス物品。
【0109】
実施形態10
上記アルカリアルミノシリケートガラスは:約40モル%~約70モル%のSiO;約11モル%~約25モル%のAl;約2モル%~約15モル%のP;約10モル%~約25モル%のNaO;約10~約30モル%のROを含み、
Oは、ガラス中に存在するアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び遷移金属一酸化物の合計である、実施形態8に記載のガラス物品。
【0110】
実施形態11
上記ガラス物品はフュージョン成形できるものである、実施形態1~10のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0111】
実施形態12
前面、背面及び側面を有するハウジング;
少なくとも部分的に上記ハウジングの内部にある電子構成部品であって、上記電子構成部品は少なくとも、コントローラ、メモリ及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの前面に、又は前面に隣接して設けられる、電子構成部品;
上記ディスプレイを覆うように配置されたカバーガラス
を備える、消費者向け電子デバイスであって、
上記ハウジングの一部分又は上記カバーガラスのうちの少なくとも一方は、実施形態1~11のいずれか1つに記載のガラス物品を含む、消費者向け電子デバイス。
【0112】
実施形態13
厚さtと、約50GPa~約120GPaのヤング率とを有するガラス物品であって、
上記ガラス物品は、上記ガラスの表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層を備え、
上記ガラス物品内の応力は上記厚さtに応じて変化して、ある応力プロファイルを形成し、
上記応力プロファイルは:
上記ガラス物品の表面から上記ガラス物品内へと深さd1まで延在し、d1≦20μmであり、上記表面において最大圧縮応力CS1を有し、上記最大圧縮応力CS1は少なくとも約280MPaである、第1の領域;
少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、20μm≦d2≦50μmであり、圧縮応力最大値CS2を有し、上記応力プロファイルは、上記深さd1における圧縮応力から上記圧縮応力最大値CS2へと上昇し、上記圧縮応力最大値CS2から第2の深さd2における第2の圧縮応力へと低下する、第2の領域;及び
上記ガラス物品の第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3かつDOC≧0.15tである、第3の領域
を備える、ガラス物品。
【0113】
実施形態14
125MPa≦CS2≦250MPaである、実施形態13に記載のガラス物品。
【0114】
実施形態15
上記応力プロファイルは、上記圧縮深さDOCから、t/2における上記ガラス物品の中心まで延在する、引張領域を含み、
上記引張領域は、t/2において最大約100MPaの最大引張応力を有する、実施形態13又は14に記載のガラス物品。
【0115】
実施形態16
50μm≦t≦3000μmである、実施形態13~15のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0116】
実施形態17
0.15t≦DOC≦0.25tである、実施形態13~16のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0117】
実施形態18
上記ガラス物品は、高さ約220cmから180グリットの炭化ケイ素サンドペーパー表面上への落下試験に供した場合に、少なくとも10個の試料の落下に基づいて少なくとも約90%の残存率を有する、実施形態13~17のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0118】
実施形態19
上記ガラス物品はアルカリアルミノシリケートガラスを含む、実施形態13~18のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0119】
実施形態20
上記アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約4モル%のPを含み、
モル%/ROモル%<1であり、
=Al+Bであり、
Oは、上記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する1価及び2価カチオン酸化物の合計である、実施形態19に記載のガラス物品。
【0120】
実施形態21
上記アルカリアルミノシリケートガラスは:約40モル%~約70モル%のSiO;約11モル%~約25モル%のAl;約2モル%~約15モル%のP;約10モル%~約25モル%のNaO;約10~約30モル%のROを含み、
Oは、ガラス中に存在するアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び遷移金属一酸化物の合計である、実施形態19に記載のガラス物品。
【0121】
実施形態22
上記ガラスはフュージョン成形できるものである、実施形態13~21のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0122】
実施形態23
前面、背面及び側面を有するハウジング;
少なくとも部分的に上記ハウジングの内部にある電子構成部品であって、上記電子構成部品は少なくとも、コントローラ、メモリ及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの前面に、又は前面に隣接して設けられる、電子構成部品;
上記ディスプレイを覆うように配置されたカバーガラス
を備える、消費者向け電子デバイスであって、
上記ハウジングの一部分又は上記カバーガラスのうちの少なくとも一方は、実施形態13~22のいずれか1つに記載のガラス物品を含む、消費者向け電子デバイス。
【0123】
実施形態24
厚さtと、約50GPa~約120GPaのヤング率とを有するガラス物品であって、
上記ガラス物品は、上記ガラス物品の表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層を備え、
上記ガラス物品内の応力は上記厚さtに応じて変化して、ある応力プロファイルを形成し、
上記応力プロファイルは:
上記ガラス物品の表面から上記ガラス物品内へと深さd1まで延在し、d1≦0.025tであり、上記表面において最大圧縮応力CS1を有し、上記最大圧縮応力CS1は少なくとも約280MPaである、第1の領域;
少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、d2≦0.0625tであり、圧縮応力最大値CS2を有し、125MPa≦CS2≦250MPaであり、上記応力プロファイルは、上記深さd1における圧縮応力から上記圧縮応力最大値CS2へと上昇し、上記圧縮応力最大値CS2から第2の深さd2における第2の圧縮応力へと低下する、第2の領域;及び
上記ガラス物品の第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3かつDOC≧0.15tである、第3の領域
を備える、ガラス物品。
【0124】
実施形態25
上記ガラス物品は、高さ約220cmから180グリットの炭化ケイ素サンドペーパー表面上への落下試験に供した場合に、少なくとも5個の試料の落下に基づいて少なくとも約90%の残存率を有する、実施形態24に記載のガラス物品。
【0125】
実施形態26
上記応力プロファイルは、上記圧縮深さDOCから、t/2における上記ガラス物品の中心まで延在する、引張領域を含み、
上記引張領域は、t/2において最大約100MPaの最大引張応力を有する、実施形態24又は25に記載のガラス物品。
【0126】
実施形態27
50μm≦t≦3000μmである、実施形態24~26のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0127】
実施形態28
0.15t≦DOC≦0.25tである、実施形態24~27のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0128】
実施形態29
上記ガラス物品はアルカリアルミノシリケートガラスを含む、実施形態24~28のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0129】
実施形態30
上記アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約4モル%のPを含み、
モル%/ROモル%<1であり、
=Al+Bであり、
Oは、上記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する1価及び2価カチオン酸化物の合計である、実施形態29に記載のガラス物品。
【0130】
実施形態31
上記アルカリアルミノシリケートガラスは:約40モル%~約70モル%のSiO;約11モル%~約25モル%のAl;約2モル%~約15モル%のP;約10モル%~約25モル%のNaO;約10~約30モル%のROを含み、
Oは、ガラス中に存在するアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び遷移金属一酸化物の合計である、実施形態29に記載のガラス物品。
【0131】
実施形態32
上記ガラス物品はフュージョン成形できるものである、実施形態24~31のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0132】
実施形態33
前面、背面及び側面を有するハウジング;
少なくとも部分的に上記ハウジングの内部にある電子構成部品であって、上記電子構成部品は少なくとも、コントローラ、メモリ及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの前面に、又は前面に隣接して設けられる、電子構成部品;
上記ディスプレイを覆うように配置されたカバーガラス
を備える、消費者向け電子デバイスであって、
上記ハウジングの一部分又は上記カバーガラスのうちの少なくとも一方は、実施形態24~32のいずれか1つに記載のガラス物品を含む、消費者向け電子デバイス。
【0133】
実施形態34
ガラスの強化方法であって、
上記ガラスは第1のアルカリカチオンを含み、第1の表面と、上記第1の表面の反対側の第2の表面と、厚さtと、t/2における中心部とを有し、
上記ガラス物品はある応力プロファイルを有し、
上記応力プロファイルは:上記ガラス物品の上記第1の表面から上記ガラス内へと深さd1まで延在し、d1≦0.025tであり、上記表面において最大圧縮応力CS1を有する、第1の領域と;少なくともd1の深さから第2の深さd2まで延在し、d2≦0.0625tであり、圧縮応力最大値CS2を有する、第2の領域と;上記ガラスの第3の深さd3から上記圧縮深さDOCまで延在し、d2≦d3である、第3の領域とを備え、
上記方法は:
a.第1のイオン交換浴中に上記ガラスを浸漬するステップであって、上記第1のイオン交換浴は、第1のアルカリカチオン及び第2のアルカリカチオンを含み、上記第1のイオン交換浴は、約20重量%~約30重量%の上記第1のアルカリカチオンのうちの少なくとも1つの塩を含み、上記第2のアルカリカチオンは上記第1のアルカリカチオンとは異なり、上記イオン交換浴に由来する上記第2のアルカリカチオンが、上記ガラス物品中の上記第1のアルカリカチオンを置換する、ステップ;
b.上記第1のイオン交換浴中に上記ガラス物品を浸漬する上記ステップの後に、上記ガラスを第2のイオン交換浴中に浸漬するステップであって、上記第2のイオン交換浴は上記第1のアルカリカチオン及び上記第2のアルカリカチオンを含み、上記第2のイオン交換浴は、約60重量%~約80重量%の上記第1のアルカリカチオンの少なくとも1つの塩を含む、ステップ;並びに
c.上記第2のイオン交換浴中に上記ガラス物品を浸漬する上記ステップの後に、上記ガラスを第3のイオン交換浴中に浸漬するステップであって、上記第2のイオン交換浴は上記第1のアルカリカチオン及び上記第2のアルカリカチオンを含み、上記第3のイオン交換浴は、約75重量%~約100重量%の上記第2のアルカリカチオンの少なくとも1つの塩を含む、ステップ
を含む、方法。
【0134】
実施形態35
上記第1のイオン交換浴中に上記ガラス物品を浸漬する上記ステップ及び上記第2のイオン交換浴中に上記ガラス物品を浸漬する上記ステップのうちの少なくとも一方に続く、熱拡散ステップを更に含み、
上記熱拡散ステップは、上記ガラスを約400℃~約500℃の温度まで加熱するステップを含む、実施形態34に記載の方法。
【0135】
実施形態36
上記熱拡散ステップは、上記ガラスを上記温度で少なくとも約16時間加熱するステップを含む、実施形態34又は35に記載の方法。
【0136】
実施形態37
上記最大圧縮応力CS1は少なくとも約280MPaである、実施形態34~36のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
実施形態38
125MPa≦CS2≦250MPaである、実施形態34~37のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
実施形態39
上記ガラス物品はアルカリアルミノシリケートガラスを含む、実施形態34~38のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
実施形態40
上記アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約4モル%のPを含み、
モル%/ROモル%<1であり、
=Al+Bであり、
Oは、上記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する1価及び2価カチオン酸化物の合計である、実施形態39に記載の方法。
【0140】
実施形態41
上記アルカリアルミノシリケートガラスは:約40モル%~約70モル%のSiO;約11モル%~約25モル%のAl;約2モル%~約15モル%のP;約10モル%~約25モル%のNaO;約10~約30モル%のROを含み、
Oは、ガラス中に存在するアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び遷移金属一酸化物の合計である、実施形態39に記載の方法。
【0141】
実施形態42
上記ガラス物品をフュージョン成形するステップを更に含む、実施形態34~41のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0142】
100 ガラス物品
110 第1の表面
112 第2の表面
120 第1の圧縮層
122 第2の圧縮層
130 中心領域
200 応力プロファイル
310 化学強化ガラス
320 標準試験ビヒクル
330 サンドペーパー
335 研磨材表面
900 消費者向け電気製品
910 ハウジング
912 前面
914 背面
916 側面
920 ディスプレイ
930 カバーガラス、カバー基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10