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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ダンプトラックのドライブシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/10 20060101AFI20221221BHJP
   H02P 9/00 20060101ALI20221221BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20221221BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20221221BHJP
   H02P 101/45 20150101ALN20221221BHJP
   H02P 103/20 20150101ALN20221221BHJP
【FI】
H02P9/10 A
H02P9/00 C
H02P9/04 L
F02D29/06 D
H02P101:45
H02P103:20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021174190
(22)【出願日】2021-10-25
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】吉村 正利
(72)【発明者】
【氏名】松尾 興祐
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡彦
(72)【発明者】
【氏名】池上 ▲徳▼磨
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特許第6923722(JP,B1)
【文献】特開2021-48671(JP,A)
【文献】国際公開第2020/116272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/10
H02P 9/00
H02P 9/04
F02D 29/06
H02P 101/45
H02P 103/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主巻線と補助巻線とを含む一次巻線を有する誘導発電機と、
前記主巻線に生じた交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、
前記整流器に接続された主機側負荷と、
前記補助巻線に接続され、前記誘導発電機の二次巻線を励磁するとともに、前記補助巻線に生じた交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、
前記コンバータに接続された補機側負荷と、
前記コンバータを制御する制御装置とを備えたダンプトラックのドライブシステムにおいて、
前記制御装置は、前記補機側負荷の要求電力に応じて前記補機側負荷の直流電圧を制御し、前記主機側負荷の要求電力と前記コンバータの電流容量であるコンバータ容量とに応じて前記主機側負荷の直流電圧を制御する
ことを特徴とするダンプトラックのドライブシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のダンプトラックのドライブシステムにおいて、
前記制御装置は、
前記補機側負荷の直流電圧値と直流電圧指令値との偏差に基づいて前記誘導発電機のq軸電流指令値を算出し、
前記主機側負荷の要求電力と直流電圧と前記コンバータ容量とに基づいて前記誘導発電機のd軸電流指令値を算出し、
前記d軸電流指令値と前記q軸電流指令値とに応じた制御信号を前記コンバータへ出力する
ことを特徴とするダンプトラックのドライブシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のダンプトラックのドライブシステムにおいて、
前記制御装置は、前記コンバータ容量が変更された場合に、前記主機側負荷の要求電力と前記主機側負荷の直流電圧と変更後の前記コンバータ容量とに基づいてd軸電流指令値を算出する
ことを特徴とするダンプトラックのドライブシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のダンプトラックのドライブシステムにおいて、
前記コンバータは、複数のコンバータで構成され、
前記制御装置は、
前記複数のコンバータのそれぞれから出力される直流電流を検出するセンサを有し、
前記複数のコンバータのそれぞれから直流電流が出力されている場合は、前記複数のコンバータの合計容量を前記コンバータ容量として算出し、
前記複数のコンバータに含まれる特定のコンバータから直流電流が出力されなくなった場合は、前記複数のコンバータから前記特定のコンバータを除いたコンバータの合計容量を前記コンバータ容量として算出する
ことを特徴とするダンプトラックのドライブシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のダンプトラックのドライブシステムにおいて、
前記主機側負荷の直流電圧は、前記補機側負荷の直流電圧より高い
ことを特徴とするダンプトラックのドライブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主巻線と補助巻線とを含む一次巻線を有する二巻線誘導発電機を備えたドライブシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山では鉱石や剥土を積込場から放土場まで運搬するため、積載量が100トン以上のダンプトラックが多数稼動している。積込場から放土場の経路は予め決められており、ダンプトラックは同じ経路を繰り返し往復走行する。1つの経路には同じ車格のダンプが複数台走行しており、稼働時間は24時間である。このように、大型で長時間かつ複数台稼動するダンプトラックでは、単位コスト(イニシャルコスト+ランニングコスト)当りの仕事量で示される搬送効率が重要視されている。そこで、ダンプトラックでは、この指標の向上を目指して、できるだけイニシャルコストが抑えられ、かつランニングコストが低減されるように各種方策が施されている。このうち、ランニングコストを低減するためには、燃料消費量を低減することが必要である。そのため、効率が良く、かつメンテナンスコストを抑制できる駆動システム(ドライブシステム)が求められる。このような駆動システムの一つに、電気駆動システムがある。電気駆動システムは、機械式駆動システムがエンジンの動力をトルクコンバータと変速機を介してタイヤに伝達しているのに対し、エンジンで発電機を駆動し、発電された電力を用いてタイヤ軸に連結された走行モータを駆動する。そのような電気駆動システムを開示する先行技術文献として、例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1に記載の電気駆動システムは、エンジンにより駆動される主発電機および補助発電機と、主発電機が発電した三相交流電力を直流電力に変換する高圧整流回路と、高圧整流回路から出力された直流電力を三相交流電力に変換して走行モータへ出力するインバータと、補助発電機が発電した三相交流電力を直流電力に変換して補機へ出力する低圧整流回路とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-48671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の駆動システムは、走行に用いられる電力を発生する主発電機と補機駆動に用いられる電力を発生する補助発電機とを備えている。これらの発電機は特に種類を限定されるものではないが、例えば、界磁巻線を回転子に設けた界磁巻線型発電機とすれば、発電電力を直流に変換する際に必要となる変換器を安価な整流器とすることができる。一方、主発電機と補助発電機とが別体で構成されているため、それぞれ回転子に界磁電流を供給するためのブラシも必要となり、発電機全体の体格が大型化し、コストも増加することとなる。そこで、これらを解決する手段として、主発電機および補助発電機に代えて、主発電機の巻線と補助発電機の巻線とを一体型(2巻線型)とし、さらにブラシを不要とする誘導型とした2巻線誘導発電機を用いることが考えられる。2巻線誘導発電機を用いた場合、電圧制御を行うためのコンバータを新たに設ける必要がある。ここで、ダンプトラックは車体重量が数100tに達するような大型の車両であり、それを駆動する走行モータは数1000kWの容量となる。そのため、コンバータの電流容量(コンバータ容量)が大きくなることでコストが増加するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、2巻線誘導発電機を励磁するコンバータの小容量化およびコンバータ容量に応じた出力制御が可能なダンプトラックのドライブシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、主巻線と補助巻線とを含む一次巻線を有する誘導発電機と、前記主巻線に生じた交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、前記整流器に接続された主機側負荷と、前記補助巻線に接続され、前記誘導発電機の二次巻線を励磁するとともに、前記補助巻線に生じた交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、前記コンバータに接続された補機側負荷と、前記コンバータを制御する制御装置とを備えたダンプトラックのドライブシステムにおいて、前記制御装置は、前記補機側負荷の要求電力に応じて前記補機側負荷の直流電圧を制御し、前記主機側負荷の要求電力と前記コンバータの電流容量であるコンバータ容量とに応じて前記主機側負荷の直流電圧を制御するものとする。
【0008】
以上のように構成した本発明によれば、誘導発電機の二次巻線を励磁するコンバータを補助巻線に接続することにより、コンバータを小容量化することが可能となる。また、補機側負荷の要求電力に基づいて補機側負荷の直流電圧を制御することにより、補機側負荷の要求電力を出力することが可能となる。さらに、主機側負荷の要求電力とコンバータの電流容量であるコンバータ容量とに基づいて主機側負荷の直流電圧を制御することにより、コンバータ容量を越えない範囲で主機側負荷の直流電圧を制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2巻線誘導発電機を備えたダンプトラックのドライブシステムにおいて、2巻線誘導発電機を励磁するコンバータの小容量化およびコンバータ容量に応じた出力制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】鉱山向けダンプトラックの構成を示す図である。
図2】従来技術におけるドライブシステムの構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施例に係るドライブシステムの構成を示す図である。
図4】エンジン回転数と主機側DCバスおよび補機側DCバスの電圧との関係を示す図である。
図5】制御装置の処理のうち励磁コンバータの制御に関わる部分を示すブロック図である。
図6】電流指令決定部の処理を示すブロック図である。
図7】本発明の第2の実施例に係るドライブシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例1】
【0012】
まず、本発明の実施形態に係るドライブシステムが搭載される鉱山向けダンプトラックについて説明する。鉱山向けダンプトラックは、積み込み場で土砂を積載し、積み込み場から放土場まで走行し、放土場で放土し、放土場から積み込み場まで走行するという一連の作業サイクルを繰り返し行う。
【0013】
図1に鉱山向けダンプトラックの構成を示す。図1において、鉱山向けダンプトラックは、発電機20(図3に示す)の動力源であるエンジン1と、車体の上側後方に上下方向に回転可能に取り付けられた荷台7と、上側前方に設けられた運転席6とを備えている。また、車体下方前側には左右一対の従動輪4L,4Rが配置されており、車体下方後側には左右一対の駆動輪5L,5Rが配置されている。駆動輪5L,5Rは、発電機20から電力が供給される走行モータ3によって駆動される。
【0014】
次に、駆動輪5L,5Rを駆動する電気駆動式のドライブシステムについて説明する。
【0015】
図2に従来技術におけるドライブシステムの構成を示す。図2において、ドライブシステム100Xは、エンジン1によって駆動される主発電機(MG:Main Generator)2および補助発電機(SG:Sub Generator)14と、駆動輪5L,5Rを駆動する走行モータ3と、補機用モータ13と、主機側負荷である走行用インバータ9と、補機側負荷である補機用インバータ12と、整流器8と、補助整流器11と、放電抵抗器15と、主発電機2および補助発電機14を制御する制御装置30Xとを備える。
【0016】
主発電機2および補助発電機14は、エンジン1の回転エネルギーを電気エネルギー(交流電力)に変換する。整流器8は、主発電機2から供給される交流電力を直流電力に整流し、走行用インバータ9に供給する。走行用インバータ9は、整流器8から供給される直流電力を交流電力に変換し、走行モータ3に供給する。
【0017】
補助発電機14は、冷却機器等の補機を駆動する補機系システムの電源として利用される。補助整流器11は、補助発電機14から供給される交流電力を直流電力に整流し、補機用インバータ12に供給する。補機用インバータ12は、補助整流器11から供給される直流電力を交流電力に変換し、補機用モータ13に供給する。補機用モータ13は、例えばブロア等の冷却機器(図示せず)を駆動する。なお、図2では、補機系システムとして、補機用インバータ12と補機用モータ13の1組のみを示しているが、実際の車両においては、補機に相当する機器が複数存在するため、容量が異なる複数の補機用インバータと補機用モータが搭載される。
【0018】
なお、電気自動車等の2次電池が搭載されたシステムでは、走行モータ3の制動時に発生する回生電力は、2次電池に回収(充電)され、加速時など瞬間的に大きなパワーが必要な際に放電される。一方、本発明で対象とするダンプトラックでは、搬送効率の低下につながるような重量物の搭載は避ける傾向にあり、2次電池などは搭載されないシステムが多い。そのようなシステムでは、放電抵抗器15を搭載することで、制動時に発生する走行モータ3から発生する回生電力を消費することにより、走行モータ側(主機側)のDCバス部分の過電圧を抑制しながら、走行モータ3から電気的な制動力を得ることが可能となる。
【0019】
上述のドライブシステム100Xは基本的にディーゼルエレクトリック式のドライブシステムであって、機械式ダンプのようにエンジンの回転動力を用いてトルクコンバータやトランスミッションを介し、タイヤを直接駆動することはなく、エンジンの回転駆動は発電機の発電に利用される。ドライブシステム100Xは、走行に用いられる電力を発生する主発電機2と補機駆動に用いられる電力を発生する補助発電機14とを備えている。これらの発電機は特に種類を限定されるものではないが、例えば、界磁巻線を回転子に設けた界磁巻線型発電機とすれば、図2に示すように発電電力を直流に変換する際に必要となる変換器を安価な整流器とすることができる。しかしながら、界磁巻線型発電機を用いた場合、主発電機2と補助発電機14とが別体で構成されており、それぞれ回転子に界磁電流を供給するためのブラシも必要となり、発電機全体の体格が大型化し、コストも増加することとなる。
【0020】
そこで、これらを解決する手段として、主発電機2および補助発電機14に代えて、主発電機2の巻線と補助発電機14の巻線とを一体型(2巻線型)とし、さらにブラシを不要とする誘導型とした2巻線誘導発電機を用いることが考えられる。
【0021】
図3に本実施例におけるドライブシステムの構成を示す。図3において、ドライブシステム100は、2巻線誘導発電機(IG:Induced Generator)20と、走行用インバータ9と、補機用インバータ12と、整流器8と、励磁コンバータ21と、放電抵抗器15と、励磁コンバータ21、走行用インバータ9、および補機用インバータ12を統括的に制御する制御装置30とを備える。
【0022】
整流器8は、交流側が二巻線誘導発電機20の主巻線に接続され、直流側が主機側DCバス16を介して走行用インバータ9および放電抵抗器15に接続されている。整流器8は、主巻線に生じた交流電力を直流電力に整流し、主機側DCバス16に供給する。走行用インバータ9は、走行モータ3に接続されており、主機側DCバス16の直流電力を交流電力に変換し、走行モータ3に供給する。放電抵抗器15は、走行モータ3の回生動作時(リタード時)に通電し、走行モータ3の回生動作によって発電される電力(回生電力)を消費する。励磁コンバータ21は、交流側が二巻線誘導発電機20の補助巻線に接続され、直流側が補機側DCバス17を介して補機用インバータ12に接続されている。励磁コンバータ21は、補助巻線に生じた交流電力を直流電力に変換し、補機側DCバス17に供給する。補機用インバータ12は、補機用モータ13に接続されており、補機側DCバス17の直流電力を交流電力に変換し、補機用モータ13に供給する。走行用インバータ9および補機用インバータ12はいずれも電圧型インバータであるため、各インバータの入力側となるDCバスの電圧を主機側、補機側の各々の電力を安定して供給できる電圧に制御することが求められる。そのために、主巻線側と補助巻線側の電圧を励磁コンバータ21で安定的に制御することが必要である。
【0023】
ここで、2巻線誘導発電機20の主巻線は、バッテリや大容量のキャパシタを接続することなく整流器8のみを介して走行用インバータ9に接続されていること、あるいは、電力系統に接続されていないことから、二巻線誘導発電機20の主巻線の出力は定電圧にする必要はない。また、二巻線誘導発電機20の主巻線と補助巻線の電圧は概ね比例する。そのため、補助巻線に接続された励磁コンバータ21で補助巻線を励磁することにより、補助巻線と主巻線の双方の電圧を変化させることができる。このように、励磁コンバータ21で二巻線誘導発電機20の補助巻線を励磁する構成とすることで、主機側と補機側を含めた発電機のブラシレス化が可能となる。なお、本実施形態におけるドライブシステム100では、走行用インバータ9の容量が補機用インバータ12の容量より大きいため、整流器よりも高価なコンバータは、走行用インバータ9に接続するよりも、要求される電力の小さい補機用インバータ12に接続したほうがコスト的に有利である。
【0024】
図4は、エンジン回転数と主機側DCバス16および補機側DCバス17の電圧との関係を示す図である。図4において、横軸はエンジン回転数、縦軸は主機側DCバス電圧および補機側DCバス電圧を示す。補機側DCバス電圧は、アイドリング時のエンジン回転数(Nmin)からエンジンの最大回転数(Nmax)までVminで一定となる。これに対して主機側DCバス電圧は、アイドリング時に最低電圧(>Vmin)となり、車両の駆動に必要な電力の増加(エンジン回転数の増加)に伴い上昇する。さらに、車両のリタード(電気制動)時は、主機側DCバス電圧は最大電圧Vmax付近に達する。また、車両の通常走行時は、主機側DCバス電圧はこの電圧範囲で変化する。なお、主機側DCバス16の電圧特性は図4に示すものに限られず、走行用インバータ9で必要な電力が安定的に出力される電圧特性とすればよい。なお、補機側DCバス電圧は、補機装置がほぼ一定の電力を消費することから、ほぼ一定となるように制御することが望ましい。制御装置30は、このような車両の動作と電圧範囲において2巻線誘導発電機20の主機側出力(負荷)と補機側出力(負荷)がバランスするように、励磁コンバータ21を介して2巻線誘導発電機20の電流を制御する。
【0025】
図5は、制御装置30の処理のうち励磁コンバータ21の制御に関わる部分を示すブロック図である。図5において、制御装置30は、電圧偏差演算部31と、電圧制御部32と、電流指令決定部33と、電流制御部34とを有する。制御装置30は、演算処理機能を有するコントローラ、外部機器との間の信号入出力を行う入出力インタフェース等で構成され、ROM等の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより各部の機能を実現する。
【0026】
電圧偏差演算部31は、制御装置30内に予め設定された補機側DC電圧指令値と補機側DC電圧との差分(電圧偏差)を算出し、電圧制御部32へ出力する。電圧制御部32は、補機側DC電圧指令値と補機側DC電圧との差分(電圧偏差)に基づいて補機側電流指令(q軸電流指令値)を算出し、電流指令決定部33および電流制御部34へ出力する。電圧制御部32の具体的な演算内容は特に本発明に関わるところではなく、例えば、通常よく用いられる比例積分演算を実施すればよい。ここで、電圧制御部32から出力される補機側電流指令を2巻線誘導発電機20に対するq軸相当の電流指令とするのは、補助巻線に接続された励磁コンバータ21が直接補機側負荷に接続されていることから、補機側負荷の大きさによって変動する補機側DCバス17の電圧は補助巻線の有効パワーで補償する必要があるためである。
【0027】
電流指令決定部33は、コンバータ容量(電流容量)、主機側DC電圧、主機側要求電力、および補機側電流指令(q軸電流指令値)に基づいて、2巻線誘導発電機20に対する補機側電流指令(d軸電流指令値)を算出し、電流制御部34へ出力する。ここで、電流指令決定部33から出力される補機側電流指令をd軸相当の電流指令とするのは、補助巻線に接続された励磁コンバータ21において、巻線の電圧を制御できるように磁束の調整を行うためである。
【0028】
電流制御部34は、補機側電流指令(d軸電流指令値およびq軸電流指令値)に基づいて励磁コンバータ21の入力電圧を算出し、当該入力電圧に応じた制御信号を励磁コンバータ21へ出力する。なお、電流制御部34の演算内容は特に本発明に関わるところではなく、例えば、通常よく用いられる比例積分演算を実施すればよい。
【0029】
図6は、電流指令決定部33の処理を示すブロック図である。図6において、電流指令決定部33は、目標DC電圧決定部33aと、目標界磁電流決定部33bと、発電機電流演算部33cと、電流制限部33dとを有する。
【0030】
目標DC電圧決定部33aは、主機側負荷9の要求電力に応じた主機側DC電圧の目標値(目標DC電圧)を決定し、目標界磁電流決定部33bおよび発電機電流演算部33cへ出力する。目標DC電圧は、主機側負荷9の要求電力に応じた直流電圧と必ずしも等しくなく、走行用インバータ9が出力可能な範囲で設定される。仮に主機側DC電圧が非常に低電圧になると、走行用インバータ9に流れる電流が過大となり、それに伴い損失が大きくなる可能性があるため、主機側DC電圧ができるたけ高くなるように目標DC電圧を調整する。ここでは予め2巻線誘導発電機20と走行モータ3の特性を考慮し、走行モータ3の要求電力に応じた目標DC電圧を目標DC電圧決定部33aにて決定する。なお、目標DC電圧の決定方法としては、予め計算で求めた結果をテーブルデータ化して、テーブル検索してもよいし、実際の特性方程式を解くことにより求めてもよい。
【0031】
目標界磁電流決定部33bは、目標DC電圧に応じた目標界磁電流(Idtgt)を決定し、発電機電流演算部33cへ出力する。目標界磁電流の決定方法としては、予め計算で求めた結果をテーブルデータ化して、テーブル検索してもよいし、実際の特性方程式を解くことにより求めてもよい。
【0032】
発電機電流演算部33cは、q軸電流指令値(Iqref)と目標界磁電流(Idtgt)とに基づいて、2巻線誘導発電機20の電流の大きさ(I1)を算出する。2巻線誘導発電機20の電流の大きさ(I1)は、以下の式(1)で算出される。
【0033】
【数1】
【0034】
ここで、発電機電流演算部33cは、実際の主機側DC電圧と目標DC電圧とが大きく乖離している場合は、適宜、目標界磁電流(Idtgt)を増減し、主機側DC電圧が目標DC電圧値に近づくように調整を行う。
【0035】
電流制限部33dは、2巻線誘導発電機20の電流の大きさ(I1)がコンバータ容量(電流容量)を超える場合は、式(1)に従い、2巻線誘導発電機20の電流の大きさ(I1)をコンバータ容量(電流容量)以下となるように目標界磁電流(Idtgt)を制限し、制限後の目標界磁電流(Idtgt)をd軸電流指令値(Idref)として決定する。このように、励磁コンバータ21の容量を越えない範囲で目標DC電圧にもとづいてq軸電流指令値(Iqref)を決定することにより、2巻線誘導発電機20の補助巻線に接続された励磁コンバータ21の容量を越えない範囲で主機側負荷9のDC電圧を制御することが可能となる。
【0036】
(まとめ)
本実施例では、主巻線と補助巻線とを含む一次巻線を有する誘導発電機20と、前記主巻線に生じた交流電圧を直流電圧に変換する整流器8と、整流器8に接続された主機側負荷9と、前記補助巻線に接続され、誘導発電機20の二次巻線を励磁するとともに、前記補助巻線に生じた交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ21と、コンバータ21に接続された補機側負荷12と、コンバータ21を制御する制御装置30とを備えたダンプトラックのドライブシステム100において、制御装置30は、補機側負荷12の要求電力に応じて補機側負荷12の直流電圧を制御し、主機側負荷9の要求電力とコンバータ21の電流容量であるコンバータ容量とに応じて主機側負荷9の直流電圧を制御する。
【0037】
以上のように構成した本実施例によれば、誘導発電機20の二次巻線を励磁するコンバータ21を補助巻線に接続することにより、コンバータ21を小容量化することが可能となる。また、補機側負荷12の要求電力に基づいて補機側負荷12の直流電圧を制御することにより、補機側負荷12の要求電力を出力することが可能となる。さらに、主機側負荷9の要求電力とコンバータ21の電流容量であるコンバータ容量とに基づいて主機側負荷9の直流電圧を制御することにより、コンバータ容量を越えない範囲で主機側負荷9の直流電圧を制御することが可能となる。
【0038】
また、本実施例における制御装置30は、補機側負荷12の直流電圧値と直流電圧指令値との偏差に基づいて誘導発電機20のq軸電流指令値(Iqref)を算出し、主機側負荷9の要求電力と直流電圧と前記コンバータ容量とに基づいて誘導発電機20のd軸電流指令値(Idref)を算出し、d軸電流指令値(Idref)とq軸電流指令値(Iqref)とに応じた制御信号をコンバータ21へ出力する。これにより、補機側負荷12の大きさによって変動する補機側DCバス17の電圧を補助巻線の有効電力で補償することが可能となる。
【0039】
また、本実施例における主機側負荷9の直流電圧は、補機側負荷12の直流電圧より高い。これにより、主機側負荷9の直流電圧が補機側負荷12の直流電圧よりも高いダンプトラックのドライブシステムにおいて、2巻線誘導発電機を励磁するコンバータ21の小容量化およびコンバータ容量に応じた出力制御が可能となる。そして、コンバータ容量に応じて出力制御を行うことで、エネルギー損失や熱によるダメージを抑制することが可能となる。
【実施例2】
【0040】
本発明の第2の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。第1の実施例に係るドライブシステム100では、2巻線誘導発電機20の補助巻線に接続した励磁コンバータ21のみで主機側負荷9と補機側負荷12への電力供給を実施している。そのため、励磁コンバータ21が故障すると、主機側の電圧制御が困難となり、車両の動作に支障を来たす可能性がある。本実施例は、励磁コンバータが故障した際に縮退運転を可能とするものである。
【0041】
図7に本実施例におけるドライブシステムの構成を示す。図7において、第1の実施例との相違点は、励磁コンバータ21が2台のコンバータ21a,21bで構成されていることである。なお、コンバータの台数は2台に限定されるものではない。
【0042】
本実施例における制御装置30は、複数のコンバータ21a,21bの出力電流をセンサ22a,22bで計測する。そして、電流が出力されなくなったコンバータを故障と判定し、当該コンバータのゲートをOFFにする。このとき、電流制限部33d(図6に示す)は、正常なコンバータの容量のみを合算した値でコンバータ容量を更新し、d軸電流指令値(Idref)を再計算する。
【0043】
例えば、図7に示す2台のコンバータ21a,21bが同一の電流容量であった場合、コンバータ容量は故障前の1/2となる。ここで、コンバータ容量が1/2となった場合、式(1)に示す2巻線誘導発電機20の電流の大きさ(I1)の上限が1/2になるため、最終的に算出されるd軸電流指令値(Idref)もそれに応じて制限される。制御装置30は、新たに制限されたd軸電流指令値(Idref)で実現される主機側負荷9のDCバス電圧に応じた走行用インバータ9の要求電力を算出し、当該要求電力に応じた制御信号を走行用インバータ9へ出力する。このとき、新たに制限されたd軸電流指令値(Idref)で実現される主機側負荷9のDC電圧は相応に低い電圧となるため、主機側負荷9に供給される電力は正常時に比べて小さくなる。これにより、複数のコンバータ21a,21bのいずれかが故障した場合でも、縮退運転により車両の駆動を継続することが可能となる。
【0044】
(まとめ)
本実施例における制御装置30は、コンバータ容量が変更された場合に、主機側負荷9の要求電力と主機側負荷9の直流電圧と変更後のコンバータ容量とに基づいてd軸電流指令値(Idref)を変更する。
【0045】
以上のように構成した本実施例によれば、コンバータ容量が変更された場合に、変更後のコンバータ容量を越えない範囲で主機側負荷9のDC電圧を制御することが可能となる。
【0046】
また、本実施例におけるコンバータ21は、複数のコンバータ21a,21bで構成され、制御装置30は、複数のコンバータ21a,21bのそれぞれから出力される直流電流を検出するセンサ22a,22bを有し、複数のコンバータ21a,21bのそれぞれから直流電流が出力されている場合は、複数のコンバータ21a,21bの合計容量をコンバータ容量として算出し、複数のコンバータ21a,21bに含まれる特定のコンバータから直流電流が出力されなくなった場合は、複数のコンバータ21a,21bから前記特定のコンバータを除いたコンバータの合計容量をコンバータ容量として算出する。これにより、複数のコンバータ21a,21bのいずれかが故障した場合に、正常なコンバータの合計容量を越えない範囲で主機側負荷9のDC電圧を制御することが可能となる。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…エンジン、2…主発電機、3…走行モータ、4L,4R…従動輪、5L,5R…駆動輪、6…運転席、7…荷台、8…整流器、9…走行用インバータ(主機側負荷)、11…補助整流器、12…補機用インバータ(補機側負荷)、13…補機用モータ、14…補助発電機、15…放電抵抗器、16…主機側DCバス、17…補機側DCバス、20…2巻線誘導発電機、21…励磁コンバータ、21a,21b…コンバータ、22a,22b…センサ、30,30X…制御装置、31…電圧偏差演算部、32…電圧制御部、33…電流指令決定部、33a…目標DC電圧決定部、33b…目標界磁電流決定部、33c…発電機電流演算部、34…電流制御部、100,100X…ドライブシステム。
【要約】
【課題】2巻線誘導発電機を励磁するコンバータの小容量化およびコンバータ容量に応じた出力制御が可能なダンプトラックのドライブシステムを提供する。
【解決手段】主巻線と補助巻線とを含む一次巻線を有する誘導発電機20と、前記主巻線に生じた交流電圧を直流電圧に変換する整流器8と、整流器8に接続された主機側負荷9と、前記補助巻線に接続され、誘導発電機20の二次巻線を励磁するとともに、前記補助巻線に生じた交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ21と、コンバータ21に接続された補機側負荷12と、コンバータ21を制御する制御装置30とを備えたダンプトラックのドライブシステムにおいて、制御装置30は、補機側負荷12の要求電力に基づいて補機側負荷12の直流電圧を制御し、主機側負荷9の要求電力とコンバータ21の電流容量であるコンバータ容量とに基づいて主機側負荷9の直流電圧を制御する。
【選択図】 図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7